『仮面ライダー』
第六章 密林の刺客

 「まさかアマゾンが一緒に来てくれるなんて思わなかったよ」
 旧ソ連製の古い航空機の中で一人の少年が隣の青年に言った。歳は十四五といったところか。黒髪でやや小柄な少年であり白いカッターと青のジーンズを着ている。
 「本当、ブラジルからわざわざ来てくれるなんて」
 その少年の横に座る長身の女性が同調した。淡い青の半袖のシャツに青のスラックスを穿いている。黒く長い髪を持つ美しい女性である。
 「まさひこもりつ子さんもアマゾンの友達。アマゾン友達大切にする」
 まさひこと呼ばれた少年の隣に座っていた耳が完全に隠れ肩にまでかかりそうな長髪の白スーツ姿の青年が答えた。細面で非常に引き締まった顔をしている。細い眉と一重の瞳は野性味と共に暖かさと優しさをも含んでいる。ジャガーやチーターといった大型のネコ科を思わせる精悍な身体つきをしている。彼の名は山本大介、通称アマゾン、仮面ライダーアマゾンその人である。
 日本人の両親も元に生まれた。だが彼がまだ赤ん坊の時に彼の乗る旅客機がアマゾンの
奥地に墜落し彼だけが一命を取り留めたのである。
 その場に住んでいた部族に拾われた彼はジャングルの野生生物達に囲まれ生きることに
なる。そこで彼は常人のそれを遥かに超越した驚異的な五感と運動能力を身に着けた。
 そして彼は自身を拾ってくれた部族に住んでいた。その部族であるが古代インカ帝国の秘術を受け継ぐ者達であったのだ。部族の指導者長老バゴーはその秘術を全て知る唯一の者だった。
 これに目を付けたのが今まで多くの組織を陰から操ってきたあの者であった。彼はバゴーの弟子である勇猛だが残虐で粗暴な戦士ゴルゴスを唆し反乱を起こさせた。彼を通じてその技術を全て手に入れんとしたのだ。ゴルゴスは自らの身体を改造し九人の悪人の首を埋め込んだ人面岩と合体し『十面鬼ゴルゴス』と名乗り自らを首領とする『ゲドン』という組織を結成した。
その目的は世界征服、その為にインカの技術を全て手中にせんとした。
 ゴルゴスの襲撃を受けた部族は一瞬にして壊滅した。密林の奥地で人目を避け平和に暮らしていた彼等は野獣達から身を護る為の最低限の武器しか持っておらず次々ゲドンの凶悪な獣人達に食い殺されていった。
 インカの技術の中でも最も重要なもの、それは『超エネルギー』と呼ばれるものであった。その秘密を狙うゴルゴスは秘密の鍵となっている『ガガの腕輪』を手に入れた。だが秘密は解き明かされなかった。解き明かすにはガガの腕輪と対になるもう一つの腕輪『ギギの腕輪』が必要だったのだ。
 ギギの腕輪をも狙うゴルゴス、しかし腕輪は彼の手には渡らなかった。インカの技術と超エネルギーがゴルゴスの手に渡る事を恐れたバゴーはアマゾンに改造手術を施したのだ。その力はギギの腕輪を源としていた。彼にギギの腕輪を、インカの技術を、そして世界を悪の手から護ってもらう為に。改造手術の後アマゾンに自らの知人でありインカの謎を知るただ一人の男高坂教授のいる日本へ行くよう催眠暗示をかけると彼は息絶えた。
 日本へ辿り着いたアマゾンだがそこへゲドンが追ってきた。ゲドンが次々と送り出して来る残忍かつ凶暴な獣人達と彼は闘い続けた。彼が闘ったのはゲドンだけではなかった。
 見た事も聞いた事も無い機械、文明社会、周囲の誤解や偏見ーーー。言葉も解らず唯一の理解者であった高坂教授もゲドンに殺され社会の中にたった一人となった彼はアマゾンへ帰ろうと考えた。
 しかしその彼をたすける仲間達が現われた。高坂教授の甥である純粋な少年まさひこ、最初はアマゾンを誤解していたものの彼の素朴さと優しさに触れ彼のよき理解者となったまさひこの姉リツ子。この二人によってアマゾンも心を開く事が出来た。
 彼等だけではなかった。歴代のライダー達の父親代わりだった立花藤兵衛、最初はゲドンの獣人であったがアマゾンに命を救われ彼の『トモダチ』となったモグラ獣人、彼等の力を得てアマゾンはゲドンの獣人達を次々に倒していった。
 次第に戦力を消耗していくゲドンを首領は見限った。そして粗暴なだけで求心力に欠ける十面鬼の替わりに古代パルティア王朝の血を引くゼロ大帝を首領とする『ガランダー帝国』を設立した。
 ゲドンに内部分裂を起こさせアマゾンに滅ぼさせる事に成功したガランダーはガガの腕輪も手に入れ自らの計画に着手する。それはやはり世界征服であった。
 ガランダーの力はゲドンのそれを凌いでいた。戦友モグラ獣人も倒れた。しかしそれでもガランダーに立ち向かい続けたアマゾンは捕われの身となりながらもゼロ大帝を倒し遂にガガの腕輪を取り戻した。
 そのアマゾンの前に白い影が姿を現わす。影は言った。自分こそガランダー帝国の真の支配者なのだと。
 その正体はゼロ大帝だった。アマゾンが倒したのは影武者に過ぎなかったのだ。彼こそが悪の根源であり十面鬼をそそのかした張本人だったのだ。
 対峙する両者。しかしインカの超エネルギーを身に着けたアマゾンの敵ではなかった。ガランダー帝国
もここに滅びアマゾンは故郷へ帰っていった。
 「暫く会わなかったけれど元気みたいだね。どうしてたの?」
 「世界を旅してた。そして悪い奴等いっぱいやっつけた」
 まさひこの問いに屈託無く答えた。
 「世界にいる悪い奴等を倒すのがライダーの仕事。だからアマゾン世界を旅した」
 「けど連絡位入れて欲しいわ。返事が無いから諦めて二人で行こうとしたら空港で待っているんですもの」
 「御免、リツ子さん」
 楽しく和気藹々と談笑しながら三人は空の旅を楽しんでいた。
 「そうか、アマゾンがホーチミンにいたのか」
 壁に大きな世界地図が掛けられ床に魔法陣が描かれた部屋で例の黒服の男が戦闘員からの報告を
受けていた。
 「ハッ、それから空よりカンボジアに入ったそうです」
 戦闘員が敬礼し報告を続ける。
 「カンボジアか。シンガポールの基地をV3に潰され中国での作戦をXライダーに阻止された我々は今
あの場所には一人もいない。目的は単なる観光か」
 「どうやらその様です。他に連れもいる様ですし」
 「だとすれば刺客を送り始末しておきたいな。ライダーは一人でも減らしておきたい」
 「それでしたら既にキバ男爵と鬼火司令が行かれました。御二人共改造人間を連れておられます」
 「キバ男爵と鬼火司令か」
 男は戦闘員に尋ねた。
 「はい」
 「キバ男爵はともかく鬼火司令は頭に血が登り易い。大丈夫か」
 「それですがもう一人行かれてますが」
 「まだいるのか。誰だ?」
 「隊長ブランクです」
 「・・・・・・・・・あの男か。これは望み薄かもしれぬな」
 失望をあえて滲ませて言った。
 「今はこの地での作戦行動に忙しい。ここには奴もいる。俺も下手には動けぬ」
 「では傍観いたしますか」
 「うむ。奴の身が危うくなった場合のみ行く。あの様な者でも今は大切な駒だ」
 そう言うと男は部屋の隅に掛けてある黒いマントを手に取り羽織った。
 「それよりも今はこの地での作戦を成功させる方が先だ。油断していると奴に先を越されてしまうからな」
 「ハッ」
 男は部屋を後にした。戦闘員がそれに続く。灯りが消され部屋は闇の中に覆われていった。

 「そうか、奴は動かぬか」
 足下に白い霧が立ち込める一室で赤いテーブルに白服の男は座していた。座したままで戦闘員の報告を受けていた。
 「ならばこちらも動く必要は無い。ここでの行動に専念出来る」
 サッとトランプのカードを一枚引いた。クローバーの7だ。
 「カードは温存しておこう。いざという時の為にな。フフフフ、ハハハハ」
 そう言うと不敵に笑った。笑いさけが部屋の中に木霊した。

 タイ、ベトナムという二つの国家に挟まれたカンボジアの歴史は動乱に揺れ動いた時期が多い。フランスの植民地から脱却し得たもののベトナム戦争に巻き込まれアメリカの傀儡政権が打ち立てられた。汚職と腐敗にまみれたこの政権が倒れると極左政権であるポル=ポト派が政権を握る。
 日本の一部のマスコミや知識人が『アジア的優しさを持つ』と賛美したこの政権の正体は狂気の殺戮集団だった。知識人や技術者、都市生活者達を『反革命的』、『共産主義に反する』という理由さけで虐殺していった。
その犠牲者は一説には三百万、カンボジアの人口の約八分の三に当たる。かってこれ程の割合で自国民を虐殺した例はない。ナチスやソ連ですら及ばない空前絶後の狂気であった。
 この狂気の集団による暴虐の限りが皮肉にも隣国ベトナムの軍事侵攻で幕を下ろすとアメリカや中国といった諸外国も介入し泥沼の内戦状態となった。十年以上こういった状況が続いたが遂に国連の仲介により内乱に終止符が打たれた。国連の監視の下選挙が行われる事となったがこれに反対する勢力があった。
クメール=ルージュ、すなわちポル=ポト派であった。
 かっての悪行が裁かれる事を怖れた彼等は選挙を妨害せんとした。その為にはテロをも辞さなかった。
 しかし国民の支持を全く得られない彼等は孤立しジャングルの奥深くに逃げ込んだ。討伐の軍隊が差し向けられ指導者であるポル=ポトも死んだ。ジャングルの中で朽ち果てようとしているのが実状である。
 いまだ政情は不安定である。しかしかっての屈託のない笑顔が戻り始めている。悪夢は去ろうとしている。
 そのカンボジアで最も有名なのがアンコール=ワットである。ジャングルの奥にあるこの石造りの仏教寺院は国旗にも描かれている程でありカンボジアの象徴と言える存在である。古来より多くの人々の崇拝の対象となっている。
 「こうして見ると所々壊れたままになってるね」
 アンコール=ワットを見回りながらまさひこが言った。足下には寺院の欠片や石の仏像の頭が転がり石畳の間からは草が生い茂っている。
 「内乱が長かったせいね。今修繕しているらしいけれどかなり手間がかかっているそうよ」
 リツ子が言った。欠片につまずき転びそうになる。
 「リツ子さん、気をつけて」
 アマゾンがそれを受け止める。
 「あ、有り難う」
 少し顔を赤らめた。
 「けれどカンボジアまで来たかいがあったね。凄い建物だよ」
 「ええそうね。アマゾンはどう?」
 「アマゾン石の建物好き。南米にも石の建物いっぱいある」
 「そういえばそうね。マヤのピラミッドとか」
 「森の中に石の建物ある。これとても神秘的。いい」
 アマゾンは満足そうである。彼はジャングルの中で石の文化を持つインカの末裔達に育てられたからであろう。
 「こういうの見ると落ち着く。アマゾンこの建物気に入った」
 「意外ね、ふふふ」
 談笑しながら三人は寺院を見て回る。政情が影響しているのか三人以外には観光客もまばらである。外れに来た時だ。
 「ん!?」
 不意にアマゾンが動きを止める。表情が一変しまさひことリツ子の前に飛び出た。
 「!?」
 「どうしたの!?アマゾン」
 そこへ数本の槍が飛んで来た。アマゾンはその槍を全て叩き落した。
 「フン、この程度は通用しないか」
 「誰だっ!?」
 森の中から戦闘員達を引き連れ一人の男が出て来た。マンモスの様な生物の骨で造られた兜を被った中年の男である。険のある顔付きが何処かしら不吉な印象を与える。
 青いタイツの様な服を見に纏いその上から豹に似た柄の毛皮を着け骨のベルトで止めている。首や腕には骨のネックレスやブレスレットで飾られ何かしらの獣の皮から造られた大きな槍を手に持っている。デストロンキバ一族の長キバ男爵である。

 帝政ロシアのコサックの流れをくむ貴族の家に生まれた。代々軍人として名を馳せ幼い頃より父から闘い方を教え込まれた彼は戦場で敵を倒しその血の染まる喜びを知り一日に一度は血を見ないと気が済まない残忍な人物となった。戦争があれば喜び勇んで参加し敵を屠った。それは彼の唯一の喜びであった。
 帝政ロシアが崩壊し共産革命が起こるとコサックである事から白軍に参加し赤軍の将兵を殺し続けた。その為赤軍からは殺人鬼と呼ばれ怖れられた。一日で一つの村を滅ぼす事もあったという。
 内乱終結直前にイギリスへ亡命する。そこで彼はアフリカの奥地に未知の邪教が存在しているという噂を聞く。
 それに興味を持ちアフリカに渡った彼はその邪教徒達が潜むと言われるザイール川上流に入った。ジャングルの中を一人探し回り遂に彼はその邪教を信奉する者達と巡り会う事が出来た。
 その邪教の名はドーブー教。この一帯で数百年に渡って栄え続ける生贄や黒魔術等を使う暗黒宗教であった。
その頂点にいるのは魔術を極めた一人の男だった。
 自身の前に現われたこの異邦人を見て魔術師はこの男の持つ唯ならぬ残忍さと魔道の才を感じ取った。そしてその場でこの男を弟子として迎え入れたのである。
 魔術師の眼に狂いはなかった。男は全ての魔術を瞬く間に身に着け片腕と言える存在となった。魔術師が世を去ると彼がドーブー教の頂点に立った。そして魔術と恐怖でアフリカの奥地を支配した。
 それがあの男の耳に入らない筈はなかった。ゲルショッカー崩壊後新たな組織デストロンを設立した首領は彼をデストロンへと誘った。その野望と残忍さに魅せられた彼はその誘いを了承した。彼にドーブー教の全ての者が従った。以後彼等はキバ一族と呼ばれ世界各地を荒らし回った。血生臭い儀式を好み勇猛にして残忍な男である。
 「デストロンキバ一族の長キバ男爵、この名は知っていよう」
 「キバ・・・・・・男爵・・・・・・」
 「そうだ。アマゾンライダー、貴様の首を貰い受けにこのジャングルまで参った。覚悟せよ!」
 キバ男爵が槍を振るうと戦闘員達がアマゾン達を取り囲んだ。
 「まさひこ、リツ子さん、大丈夫。アマゾンこんな奴等に負けない」
 二人を後ろに庇いつつ励ます。
 戦闘員達が骨の槍を手に襲い掛かる。それに対しアマゾンは引っ掻き、噛み付いて倒していく。
 「やはり戦闘員では無理か。だがこの者達ではどうだ」
 再び槍を振るう。後ろの密林から二体の怪人が現われた。
 ショッカーの人食い怪人イソギンチャック、ゲルショッカーの暗殺怪人クモライオン、どちらも人の血を好む残虐な怪人である。
 「死ねぇいアマゾンよ、貴様の命で以って我等が組織の清めにしてくれよう!」
 「組・・・・・・織・・・・・・・・・」
 ガランダー帝国崩壊後もアマゾンは世界の陰で暗躍する悪の組織と闘い続けてきた。そしてその全てを操ってきた者の事は良く知っていた。もしやーーー考えが巡ろうとした時数本のナイフが飛来してきた。
 「ガゥッ!!」
 まさひことリツ子を抱きかかえると跳躍した。人間のものとは思えぬジャンプ力であった。そして寺院の上へと降り立った。
 「誰だっ、鬼火司令かっ!!」
 キバ男爵が怒鳴る。するとナイフが飛んで来た密林の方からナイフを飛ばした本人が出て来た。
 「俺だ。俺以外がアマゾンライダーを倒す事は許さない」
 上半身を鉄の鎧で覆った傷のある醜い鋼鉄の顔の男が現われた。下には黒いズボンをはき手には先端にナイフを付けた
ライフルを持っている。デルザー軍団のスナイパー、隊長ブランクである。
 スイスに一人の貴族がいた。名をフランケンシュタインという。代々高名な学者を輩出した伯爵家の嫡男である。
 ドイツの大学に学んだ彼は医学を身に着ける。若くしてその才を遺憾なく発揮した彼は博士号を手にする。
 天才の名を欲しいままにする彼には一つの野心があった。富でも名誉でもなかった。名家の出身で何不自由なく暮らしてきた彼にとってそのようなものは興味が無かった。彼の野心はそういった世俗的なものとは別の次元にあった。神にのみ許され為し得る事、新たなる生命の創造であった。
 死者の身体を繋ぎ合わせ脳と心臓を入れた。そしてその身体に電気によるショックを与えエネルギーを送り込んだ。
雷雨の夜この怪物は目を覚ました。
 この世に生を受けた怪物であるが彼はつぎはぎだらけの巨大な怖ろしい容貌を持ちながらも繊細な心を持っていた。
心優しい博士の妹に触れながら人の心を知り草原に咲く花や小川のせせらぎの美しさも知った。同時に鏡に映る自分の醜さも知ってしまった。
 彼は悲しんだ。悲しみは憎悪へと変わりそれは自分自身を創り出した博士へと向けられた。だが殺せなかった。人間が持つ心も彼は持っていたからであった。
 雪と氷に覆われた北の地で彼は博士とその妹に永遠の別れを告げ去っていった。後には後悔の念に苛まれる博士とそれを気遣う妹だけが残された。
 博士達の前から姿を消した怪物は森の中へと入りそこに隠れ住んだ。その森の中で彼は動物達に囲まれ静かで優しい人生を送ったという。目覚めぬ眠りについた彼の顔はとても安らかだったという。
 その彼を再び世の悪夢へと誘おうという愚かな者達がいた。ナチスと並び称され世界を全体主義の赤い血で覆わんとしていたソ連である。
 怪物の眠る森の場所を探り当てた彼等は森に入り彼の骨の一部を手に入れた。そして細胞やDNAを研究し政治犯達の身体を使い実験及び研究を続けた。人の心を持たぬ無敵の兵士を産み出す為に。ソ連の科学力の全てを結集して研究は続けられた。
 多くの罪無き人々の犠牲の下遂に新たなる怪物が生まれた。残忍で粗暴な者の脳を持つこの怪物に洗脳を施そうとした時であった。
 怪物は突如暴れ始め研究所を脱走した。そしてシベリアの荒野の中へ姿を消した。ソ連側も追っ手を差し向けたが遂に見つからなかった。この時の脱走により研究所は完全に破壊され研究員達も皆死亡してしまった為研究は頓挫した。以後ソ連の衰退と崩壊による混乱の為その事を知る者も資料も歴史の闇の中へ消えていってしまった。最早そういった事があった事さえ知っている者はいない。唯一人を除いて。
 これを知った首領がこの怪物を魔の国へと招いた。そして彼に改造手術を施し改造魔人としたのである。百発百中のライフルの腕前と怪力を誇る。
 「貴様、邪魔をするつもりか」
 「黙れ、俺の獲物を横取りする事は許さんぞ」
 ブランクもライフルを肩に担ぎ前に出て来た。その後ろには彼と同じくナイフを付けたライフルを手に持つ戦闘員達がいる。
 「どうしてもというのならばこの俺を倒してからにしろ」
 ズィッと前に出て来た。
 「この愚か者が・・・。わしと争うつもりか?」
 槍を強く握った。後ろの怪人と戦闘員達がそれに倣い構えを取る。
 「ドーブーの魔術見せてくれようぞ」
 後ろに跳び間合いを取る。頭の上で槍をゆっくりと回そうとする。その時だった。
 「来い、まとめて相手する!」
 「ムゥッ!」
 双方共睨み合いを止め声がした塔の方を見る。その頂上に彼はいた。
 鋭い牙の生えた蜥蜴の如き緑と赤の歪んだ縞の仮面、紅い両眼と胸、仮面と同じ模様の身体、白と赤のベルト、そして何よりも特徴的な鰭のある黒い手袋とブーツ。獣と見間違う様な異形の戦士、仮面ライダーアマゾンであった。
 「ケケーーーーーーーーーーッ」
 奇声を発し地に飛び降りる。その降り立つ様はさながら密林のジャガーを思わせる。
 「アマゾンライダー、来たか」
 キバ男爵が槍の旋回を止めアマゾンへ身体を向ける。隊長ブランクも双方の部下達も同じであった。
 「功はアマゾンを倒した方のものだ、行けいっ!」
 「臨むところ、掛かれっ!」
 「イーーーーーーーーッ!」
 二人の号令の下怪人と戦闘員達が一斉に襲い掛かる。
 「ケーーーーーーーーーッ!!」
 アマゾンが雄叫びと共に突進する。背を屈め顔を上げつつ突進するその姿は獣そのものであった。
 両手の爪で戦闘員達を切り裂いていく。右に左に切り裂いていき戦闘員達が鮮血を噴き上げ倒れていく。
 槍をかわしその槍を繰り出してきた戦闘員の頭を掴むとそのまま放り投げた。千切られはしなかったものの首の骨が外れる嫌な音を立てた後その戦闘員は寺院の石の壁に叩きつけられた。
 「アーーーーエアエアエア!」
 イソギンチャックが叫び声と共に来る。間合いに入ると鞭となっている右手を振り下ろしてきた。
 「ケアーーーーーーーーッ」
 アマゾンはそれを左手で受け止めようとする。いや受け止めるのではなかった。左手にある鰭で迎え撃たんとしていた。
 アマゾンの左手が振り払われた。イソギンチャックの右手が吹き飛び地で血の海の中に蛇の様にのたうつ。
 「ゲァァ・・・・・・」
 血がほとぼしり出るのを押さえようとする。だがそこへアマゾンの左手が再び襲い掛かる。
 イソギンチャックの首が吹き飛んだ。首から間欠泉の如く血を噴出させつつ怪人は膝から倒れていった。
 「クモラアアアーーーーーー」
 クモライオンが口から赤い糸を吐き出してきた。糸はアマゾンの首に絡みつく。そしてじわじわと絞めだした。
 「グググ・・・・・・」
 両手で引き千切ろうとするがかなわない。徐々にアマゾンの首へくい込んでいく。
 左右から戦闘員達が襲い来る。だがアマゾンの敵ではなく爪と鰭で次々と切り倒されていく。
 その間にも糸はアマゾンの首を絞めていく。アマゾンの身体が前に倒れてきた。後少しで倒せる、そう感じた時であった。
 「ゲゲェーーーーーーーーーッ!」
 奇声を発するとアマゾンは赤い糸を両手でもって渾身の力で引き寄せた。勝利を感じようとしていたクモライオンはその思わぬ行動に体勢を崩してしまった。
 糸を口で咥えるとすぐさま噛み千切った。首に絡まっていた糸を剥ぎ取ると体勢を戻したばかりのクモライオンに襲い掛かった。
 「ガウゥゥゥーーーーーーーーーッ!」
 怪人の首筋に噛み付く。そして喰らいついた肉片を喰い千切った。傷口から鮮血が飛び出しアマゾンの身体を紅く染め上げた。クモライオンは手で傷口を押さえるが止まらない。ゆっくりと倒れていった。
 「何という奴だ、まさか怪人に喰らいつくとは」
 鮮血に染まるアマゾンを見てキバ男爵は呻く様に言った。
 「最早奴に対抗出来る力は無い。忌々しいがここは撤退だ」
 槍を振り上げ残った戦闘員達を集める。そして槍から白い煙を発するとその中へ消えていった。
 「ふん、キバ一族といってもその程度か。やはりアマゾンを殺るのはこの俺の役目だな」
 隊長ブランクがライフルを構える。それに対しアマゾンも身構える。今将にライフルが撃たれんとしたその時だった。
 何かが隊長ブランクのライフルを弾き飛ばした。ライフルは空中で回転しつつ地に落ちた。
 「誰だッ!」
 ライフルを弾き飛ばされ隊長ブランクは檄昂した。
 「私です」
 若い男の声だった。寺院の陰からコートとスーツを着たアジア系の青年が出て来た。右手には拳銃が握られている。
 「貴様は・・・・・・」
 「役清明。インターポールより派遣されてきました。どうぞ宜しく」
 ライフルを弾いたのはこの男だった。その銃でブランクを牽制しつつ前に出て来た。
 「この地にまた怪しげな連中が入って来ているとの情報があったので来たのですがその通りでしたね」
 「ムゥ・・・・・・」
 「アマゾンライダー、貴方に協力させて頂きます」
 アマゾンの方へ顔を向け微笑んだ。
 「クソッ、思わぬ邪魔が入ったわ」
 ブランクは苦々しげに舌打ちした。
 「ここは一先仕切り直しだ。一時撤退する!」
 戦闘員達がブランクの下に集まる。そして電撃と共に姿を消した。
 「意外とあっさり退いてくれましたね」 
 電撃の残した焼け跡を見ながら役が言った。
 「インター・・・ポール?」
 アマゾンが変身を解き役に尋ねた。アマゾンに安全な場所に退避させられていたまさひことリツ子も出て来た。
 「はい。ここでは何ですからホテルに帰ってゆっくりとお話しましょう」
 拳銃を懐に収め役はアマゾン達に言った。
 
 「ほお、キバ男爵も隊長ブランクもアマゾンライダーを討つのに失敗しおったか」
 長い恐怖政治と内乱の爪痕が未だ強く残っている国である。うち棄てられたまま朽ち果てた建物も多い。獣すら寄りつかなくなったその中の一つでその男は部下からの報告を聞いていた。
 骨を模した兜と鎧、赤い服と腰までのマントを身に着けた筋骨隆々の大男である。長い金髪を生やし顔には不気味な険がある。炎を模した短い杖を持つこの男の名を鬼火司令という。
 テキサスは男権が強いと言われるアメリカでも特にそれが強い地である。西部開拓史やカウボーイ等の歴史的事情がそうさせるのであろうが現在でもそれは同じである。
 この地に生まれた彼も強い男に憧れるようになった。そして長ずるとアメリカ軍の中でも特に実戦行動が多い海兵隊に入った。
 海兵隊で彼は次々と戦功を挙げた。将校としての能力も高く買われ次々と階級を上げていった。
 ベトナムにおいても彼は活躍した。ジャングルに潜み奇襲を仕掛けて来るベトコンに対しても臆することなく次々と倒していった。彼の行く所敵兵の屍が累々と横たわっていた。
 ベトナム戦争が終結すると彼は海兵隊を退役した。常に戦場に身を置く事を欲するようになった彼は傭兵となったのである。
 世界を転々として戦う彼の前に一人の老人が現われた。ドグマの帝王テラーマクロである。
 テラーマクロは優秀な選ばれた者達による理想国家の建設を考えていた。その目に彼は選ばれたのである。彼はその誘いに乗った。選ばれたからではなかった。常に戦場に身を置けるという言葉に魅せられたからであった。
 ドグマにおいて彼はメガール将軍と共に実戦部隊を率いた。どちらかと言えば慎重で思慮深いメガール将軍と違い彼は直情的で猛将タイプだった。その為に隠密的な行動を好む傾向があるテラーマクロと意見が衝突する事もあった。
 悪魔元帥がテラーマクロと袂を分かちジンドグマを設立するとそれに従った。陰気なテラーマクロよりも陽気で豪放磊落な悪魔元帥の方が気が合ったからであった。
 ジンドグマにおいて彼は四大幹部の一人として知られた。勇猛にして過激な人物として怖れられている。
 「そしてアマゾンは今何処にいる?」
 報告し目の前で直立不動の姿勢を取る戦闘員に尋ねた。
 「はっ、アマゾンは連れの少年、及び若い女と共にプノンペンのホテルにおります。あのインターポールから来た男も一緒です」
 戦闘員は敬礼し答えた。
 「そうか、ホテルか」
 鬼火司令は満面の笑みを浮かべた。
 「すぐに行くぞ。アマゾンの首はわしのものだ」
 杖を振りかざし周りの部下達に言った。部下達はそれに従い司令の後に続いて部屋を後にした。
 
 「そうか、アマゾン狙われているか」
 アマゾン達が泊まプノンペンのホテルの一室で役の話を聞き終えアマゾンは言った。
 「はい。奴等の狙いは貴方の命です」
 役は話を終えもう一度言った。
 かってポル=ポト派は都市を破壊し尽くした。原始共産主義にとって都市なぞ不要であったからだ。それにより文化や経済は完全に崩壊した。
 首都であったプノンペンはとりわけ酷かった。娯楽も芸術も何もかもが消え失せてしまったのである。廃墟も同然であった。
 その傷跡は容易には癒されない。国を立て直すべき人さえ狂気の殺戮にさらされていたのだ。復旧はそれ程進んでいないのも実情である。このホテルも他の東南アジアのホテルから見れば信じられぬ程簡素である。しかしそれでもこの国では最高のホテルの一つである。
 「東南アジアの基地は風見さんが完全に破壊しましたし中国での作戦も神敬介さんにより阻まれています。本来ならばこの国において作戦行動を取る予定は無かったのです」
 「けどアマゾンがここにいるから奴等来た。アマゾンを倒す為に」
 「はい、その通りです」
 そう言うとアマゾンの顔を見た。細身で締まった顔つきである。
 「アマゾン降りかかる火の粉は払う。悪い奴等が来るならそいつ等全部やっつける」
 アマゾンは強い声で言った。その言葉に役は微笑んだ。
 「そう言うと思いましたよ。流石はライダーです」
 表情を戻した。真摯な顔になった。
 「微力ながら協力させて頂きます。火の粉を払い悪を倒す為に」
 「ありがとう。けど役さん何故アマゾンに協力する?インターポールの仕事だからか?」
 「それもあります。そして・・・・・・」
 言葉を続けようとしたその時だった。何者かがドアを蹴破って現われた。
 「誰だッ!!」
 現われたのは鬼火司令だった。
 「貴様、鬼火司令か」
 立ち上がる二人を見て傲然と言った。
 「ほお、わしの名を知っておるとはな、殊勝な奴だ」
 「ジンドグマの大幹部、その名を知らない者がいると思うか」
 「ふっふっふ、その通りだ。ではわしの名をあの世でも広めてもらおうか。やれい!」
 司令の号令が下されるとドアの後ろから戦闘員達が現われた。わらわらと二人を取り囲んだ。
 「イイーーーーーーーーッ!」
 叫び声を発し襲い掛かる。アマゾンと役は素手で彼等と闘い始めた。
 生身であろうとアマゾンの闘い方は変わりはない。噛み付き、引っ掻く。野生のままの闘い方だ。
 意外なのは役であった。拳銃だけでなく素手の格闘も得意だったのだ。それも独特の動きだった。摺り足で動き相手の懐へ当て身を入れる。攻撃を手の平で受けるか払うかし急所に攻撃を入れる。相手の力を利用し投げる。空手や柔道とはまた違った動きである。
 「むう、古武術か」
 日本には空手や柔道の他に独自の格闘技が存在する。それが古武術である。戦場での戦いから生まれたこの格闘技は多くの流派が存在する。素手のものだけでなく剣等武器を使用するものもある。流れるような動きをするものが多い。
 「あの男は赤心少林拳だったが。つくづくわしは日本の格闘技と縁がある」
 にやりと笑いつつ言った。
 「この連中を連れて来て正解だったな。思う存分相手をしてやれ」
 後ろから二体の怪人が現われた。ゴッドの女怪人ムカデヨウキヒとネオショッカーの毒蛇怪人コブランジンである。
 「ケーーーーッ」
 まずムカデヨウキヒが来る。ダーツを投げるとアマゾンに飛び掛って来た。中国の拳法の動きである。
 それに対しアマゾンの闘い方は変わらない。噛み付き引っ掻く。だが流石に怪人には通用しない。
 「ハッハッハ、そんなものが通用するか」
 鬼火司令は笑った。怪人に指示を出した。
 「変身する前に倒せ、さもないと面倒だ」
 その指示にムカデヨウキヒは頷いた。アマゾンを掴むと窓へ放り投げた。
 「アマゾン!」
 役が叫ぶ。だがそれも空しくアマゾンは窓ガラスを割り外へ放り出された。
 「ハッハッハ、これで手柄はわしのものだ」
 高らかに笑う鬼火司令。だがそれには早過ぎた。
 「ガゥッ!」
 空中でアマゾンが叫ぶ。すんでのところで窓の縁に手を掛けた。
 「アーーーーマーーーーゾーーーーンッ!!」
 雄叫びの様な絶叫が響いた。叫びと共にアマゾンが部屋の中へ跳び戻った。
 その姿は仮面ライダーだった。何と空中で一瞬のうちに変身したのだ。
 「ケーーーーーッ!」
 両手の鰭を素早く交差させる。激しい摩擦音が部屋に響き渡る。
 「おのれっ、まさか一瞬で変身するとは」
 鬼火司令は歯噛みした。攻撃を仕掛けた戦闘員が次々に倒されていく。
 再びムカデヨウキヒが襲い掛かる。だが攻撃をかわされてしまう。信じ難い速さだ。
 「ゲッ!?」
 慌ててアマゾンを探す。すぐ後ろにいた。
 「ケーーーーーーーーーッ!!」
 絶叫と共にアマゾンが右手の鰭を横に一閃させた。ムカデヨウキヒは真っ二つとなり床に落ちた。
 「シャーーーーーーーーッ!」
 コブランジンが左手のコブラの口から赤い液を発射させた。アマゾンと役は素早くそれをよけた。
 椅子やテーブルに液が付着した。すると椅子もテーブルも煙を発し蒸発した。
 「・・・毒液か」
 コブランジンは次々に毒液を放って来る。それに対し二人はよけるだけだった。
 「ガアアァァァッ!」
 アマゾンが飛び掛った。 また毒液を放つがそれを身を屈めてかわす。
 上体を起こし下から飛び掛る形で襲い掛かった。その喉元に喰らいついた。
 「ガーーーーーッ!」
 喉笛を食い千切った。喉から鮮血を噴き出しコブランジンも倒れた。
 「クッ、何という奴だ。瞬く間に二体の怪人を倒すとは」
 「この勝負わしの勝ちのようだな」
 後ろから声がした。
 「何ッ!?」
 声の主はキバ男爵だった。鬼火司令に対し不敵な笑いを浮かべ立っていた。
 「貴様は策というものを知らぬ。ただ闇雲に動けばいいというものではない」
 「ほざけっ、貴様とて突き進むだけだろうが」
 キバ一族は正攻法を好む事で知られていた。
 「言ってくれるな。わしとて策を使わぬ訳ではない」
 「何っ!?」
 「こういうことだ」
 槍を振りかざすと戦闘員達が出て来た。まさひことリツ子を捕らえている。
 「まさひこ、リツ子さん・・・・・・」
 「アマゾン・・・」
 「御免なさい、部屋を急に襲われて」
 二人は申し訳なさそうに言う。
 「アマゾンライダーよ、二人の命が惜しければ降伏せよ。そうすれば命だけは助けてやる」
 それはすなわち脳の再改造手術をされるということであった。それは正義を愛するライダーにとって死を意味する。
 「・・・・・・・・・」 
 アマゾンは沈黙していた。動きも止めた。
 「アマゾン、私達に構わないで」
 「そうだよ、こんな奴等やっつけちゃってよ」
 「二人共・・・・・・」
 アマゾンは二人の気持ちが痛い程解かっていた。だからこそ動けなかった。時として非常にならなければならぬ時もある。
しかしそれができる程アマゾンは非常ではなかった。例え野獣の如き姿と動きをしていても彼の心は純粋で優しいものであった。
 だが自分が悪の軍門に降ればどうなるか。世界はどうなるか。アマゾンは動けなかった。
 「アマゾンライダー、案ずる必要はありませんよ」
 誰かが言った。役だった。
 「何!?」
 「何かと思えばいつもの常套手段ですか。いつも破られているのに懲りない人達だ」
 軽蔑を含んだ声で言った。
 「貴様、どわかっているのか。我々は人質を取っているのだぞ」
 キバ男爵が役を睨み付けた。
 「それをわかっているから言っているのですが。何時でも破る事が出来る事がね」
 「貴様、この者達の命が惜しくはないのか」
 槍をまさひこへ突き立てる。
 「それは大事ですよ。けれどもう取り返しています」
 「何っ!?」
 「ほら」
 左手をかざした。すると二人を捕らえていた戦闘員達がもんどり打って倒れた。
 「なっ・・・・・・!?」
 「アマゾンライダー、今です」
 言われるまでもなくアマゾンは動いていた。素早い動きで二人を救い出していた。
 「貴様、一体何をした」
 「念を飛ばしたのですよ」
 キバ男爵に対し役は不敵に言った。
 「念!?」
 「そう。古武術には念をよく使う流派もあります。中国拳法でいう“気”の様な感じでね」
 人間は誰でも多かれ少なかれ念を持っている。それを武術を通じて鍛えたものである。油断している相手ならば気絶さ
せることも可能である。
 「さて、これで人質は無くなりましたね。どうします?」
 「ふん、そうなれば力で潰すまでの事」
 槍をアマゾンへ向けて言った。するとドアの後ろの方から不気味な叫び声が轟いてきた。
 「ガルルルルルルルーーーーーー」
 ドグマの光線怪人ライオンサンダーである。右手には剣、左手には鉄の爪がある。
 剣を振り回しつつアマゾンへ襲い掛かる。まさひことリツ子を役に託すとアマゾンは怪人へ向かっていった。
 剣撃をかわす。飛び掛かり喉を食い千切らんとするが鉄の爪に阻まれる。その間にキバ男爵と鬼火司令は部屋から出る。
 「待てっ!」
 アマゾンと役は彼等を追おうとする。しかしその前にライオンサンダーが立ち塞がる。剣と爪で二人を牽制しつつ自身も部屋を退いていく。
 「くっ、逃がすか!」
 二人は追う。敵は上へ上へと逃れていく。
 ホテルの屋上に出た。そこでキバ男爵も鬼火司令も向き直る。新たな戦闘員達がいた。
 「誘い込んだという訳か」
 「ふふふ、その通りだ」
 キバ男爵は残忍な笑みを浮かべた。
「ここが貴様等の墓場になる。覚悟しろ」
 戦闘員達が散る。それぞれ手に骨の槍を持っている。
 「鬼火司令、そこでキバ一族の闘いをよく見ておくがいい」
 「ふん、何をいまさら」
 鬼火司令は忌々しげに言った。
 「わしの戦力はもう無い。何故ここで貴様が手柄をたてるのを見なければいかんのだ」
 「ほう、嫌と言うのか」
 「この作戦わしは失敗した。戦力を立て直す為にもうこの国から撤退させてもらう」
 「ふん、面白くない」
 「ほざけ、ではこれで失礼する」
 顔を手で下から上へ拭う様な動作をすると鬼火に変化した。そしてそのまま天へと飛んでいった。
 「帰りおったか、つまらん奴だ。まあ良い、今は貴様の首が所望だ」
 アマゾンへ槍を向ける。
 「やれい!」
 号令一下ライオンサンダーと戦闘員達が襲い掛かる。無数の槍がアマゾンと役へ突き立てられる。
 だが戦闘員ではアマゾンと役を倒す事は出来ない。戦闘員達を倒しつつ二人はジリジリとキバ男爵へと近付いていく。
 しかしその前にライオンサンダーが来る。役が行くが流石に怪人が相手では分が悪い。嘗掌を左手でなんなく受け止め放り投げた。
 「くっ!」
 役はそれを脚で受身をとった。衝撃を膝を屈め殺す。
 振り向く。既にアマゾンが怪人と対峙していた。
 「ガアーーーーーーーーーッ」
 雄叫びをあげアマゾンが威嚇する。それに対し怪人は臆するところが無い。
 「ふん、ライダー如きに臆するキバ一族ではないわ」
 ライオンサンダーを見てキバ男爵は自身に満ちた声で言った。
 「ガォーーーーーーッ」
 こちらも雄叫びを出す。額から光線を発する。
 それをかわす。コンクリートの床が破壊される。
 剣で切りつける。たちまち両者は接近戦に入った。
 接近戦においてもライオンサンダーは強かった。その爪でアマゾンを寄せ付けない。
 だが隙があった。左手を大振りした時にアマゾンに手を掴まれた。
 思い切り空中に投げる。天高く飛ばされコンクリートに叩き付けられた。
 「ケケーーーーーーッ」
 アマゾンはその機を逃さなかった。天高く跳んだ。
 「ケーーーーーーーーッ!」
 空中で激しく回転する。その動きはまるで駒の様であった。
 蹴りがライオンサンダーを直撃した。アマゾンの大技の一つスピンキックである。
 「グォーーーッ」
 これは効いた。さしものライオンサンダーも倒れた。断末魔の叫びと共に爆死した。
 「おのれっ、あのライオンサンダーを倒すとは・・・」
 「ガルル・・・・・・」
 怪人を倒したアマゾンはキバ男爵へ身体を向けてきた。
 「ふん、ならばわしが相手をしてやろう」
 槍をかざす。そして何やら怪しげな呪文の詠唱を始めようとする。その時だった。
 「待てキバ男爵、アマゾンライダーは俺が倒す」
 声の主は隊長ブランクだった。ホテルの貯水タンクの上にいた。
 「隊長ブランク・・・」
 「何しに来おった、この様な奴等わし一人で充分だ」
 キバ男爵は呪文の詠唱を止め隊長ブランクへ顔を向けて言った。激しい抗議の色が含まれている。
 「怪人も戦闘員もいない。その状況で勝ってもこの俺が倒してやる」
 「くっ、貴様やるつもりか」
 槍をタンクの上のブランクへ向けた。
 「止めておけ、どちらかが死ぬことになる」
 「くっ・・・・・・」
 忌々しいがその通りだった。直情的なキバ男爵も槍を収めた。
 「ならば貴様がアマゾンライダーを倒して見せよ、そこまで言うのならばな」
 「ふん、俺の他に誰が出来るというのだ」
 「ふんっ、自信だけはあるようだな」
 強力な改造魔人の集まりで知られたデルザーである。彼もまた己の強さへの自信は絶大であった。
 「後は貴様の好きにしろ。わしは退かせてもらう」
 苦々しい声を出しつつキバ男爵は杖を振りかざした。そして瞬間移動の術で消えた。
 「アマゾンライダー、いずれまた会おう。その時こそ貴様の最後だ」
 「くっ、待て!」
 だがキバ男爵は消えていった。後には塵一つ落ちていなかった。
 「残念だったな、アマゾンライダー。だが安心しろ。貴様の相手は俺だ」
 アマゾンを見下ろしつつ隊長ブランクは言った。
 「グルル・・・・・・」
 アマゾンが唸り声を出す。背中の背鰭が動く。
 「待て、ここで勝負をするつもりは無い」
 「何!?」
 その言葉に役も思わず声をあげた。
 「勝負は明日だ。明日の正午このプノンペン近郊のジャングルで待っている」
 「ジャングル?一体どういうつもりだ!?」
 アマゾンで生まれ育ったアマゾンライダーにとって密林での闘いは最も得意とするものである。その場で勝負を挑むとは正気の沙汰とは思えなかった。
 「俺が言うことはそれだけだ。では明日その場所で待っているぞ」
 「待てっ!」
 だがその言葉に耳を貸さず隊長ブランクはタンクから飛び降りると姿を消した。
 「撤退したか、外見に似合わず素早いな」
 役は歯噛みしつつ言った。
 「しかし勝負を挑むにしてもジャングルとはどういうつもりだ?アマゾンライダーに対して」
 何か罠がるか、とも考えたが隊長ブランクは鋼鉄参謀や岩石男爵と同じくデルザー軍団の中では正攻法を好む人物として知られている。
 「確かに格闘戦は奴も定評がある。だが接近戦でアマゾンに挑もうなどと・・・・・・」
 ブランクの真意が読めなかった。様々な憶測が脳裏を巡る。
 「そんなこと関係ない。例えどんな罠や策略があってもアマゾン負けない」
 変身を解きアマゾンは言った。
 「アマゾン・・・・・・」
 「罠や策略は絶対に破る。そして悪い奴等倒す。アマゾンがやる事はそれだけ」
 「・・・そうか、そうでしたね」
 その言葉に役は微笑んだ。例えどんな策を弄しようともアマゾンならば破る事が出来る、そう感じた。
 「それでは部屋に戻りましょう。連中に荒らされましたがね」
 「うん。役さん休む」
 二人は屋上から姿を消した。それを遠く離れたビルの屋上から見る一つの影。
 あの黒服の男だった。
 「これでよし。後はあいつ次第だ」
 ニヤリと笑った。だがここでふとある事が脳裏をよぎった。
 「だがアポロガイストめ、何故アマゾンライダーの密林での戦闘のデータを欲しいなどというのだ?奴のデータならば既に揃っているというのに」
 いぶかしんだがそこで考えを止めた。
 「まあ良い。奴には奴の任務と考えがある。俺が気にする事ではない」
 男はビルの陰に姿を消した。

 翌日アマゾンと役は隊長ブランクが指定した密林に来た。そこは見渡すところ鬱葱と茂った木々ばかりであった。
 「さて、と。そろそろ正午ですよ」
 腕時計を眺めつつ役が言った。いつものコート姿である。密林での闘いには明らかに不向きであるがこのスタイルを崩すつもりは無いらしい。
 「・・・・・・・・・」
 闘いを前に気が昂ぶっているのだろうか。アマゾンは黙して語らない。ただ木々を見ている。服は白いスーツから黒地に
赤い縞模様の上着と半ズボンである。かって日本でいつも着ていた服装だ。
 「・・・・・・来る」
 アマゾンが呟いた。すると役の腕時計の針が正午を指した。
 「よく来たな、アマゾンライダー」
 前から隊長ブランクが出て来た。後ろには戦闘員達がいる。皆手にライフルを持っている。
 怪人もいた。デストロンの吸血怪人プロペラカブトとゲドンの滑空怪人獣人吸血コウモリである。
 「ここが貴様の墓場になる。覚悟はいいか」
 戦闘員からライフルを受け取りつつ言った。そのライフルにはナイフが既に装填されていた。
 「・・・・・・・・・」
 まだアマゾンは黙して一言も発しない。ただ敵を見ているだけである。
 「俺は多くは言わぬ。行くぞ!」
 その言葉と共に戦闘員と怪人達が散った。ジャングルに入っていく。役も身構えた。
 「行きましょう、アマゾン」
 「・・・・・・・・・」
 まだアマゾンは動こうとしない。だがその気が充ちてくるのがわかる。眼に強い光が宿った。

 アーーーーーーーー
 叫び始めた。指を爪の様な形にし肩の高さで両手を上げる。指から手がバトルボディに包まれていく。
 マーーーーーーーー
 両手を胸の高さで交差させる。胸も脚もバトルボディに包まれようとしている。
 ゾーーーーーーーン
 腕を開きもう一度広げる。顔以外は既にバトルボディに包まれていた。
 両目が紅く光る。それと共に顔が白い光に包まれた。
 光が消えた時顔はあの獣の仮面となっていた。

 変身を終えるとアマゾンは跳躍し光もささぬ密林の中へと入っていった。そこには無数の敵が潜んでいる。
 「ギ、ギ」
 木の上に座す戦闘員達が狙いを定めライフルを撃とうとする。だがその前にアマゾンが現われる。
 「ケケッ」
 右手を一閃させる。戦闘員の首が飛び血が緑の葉を紅く染めていく。
 別の戦闘員が木の陰からアマゾンを撃とうとする。アマゾンはその後ろへ跳ぶと首筋を噛み千切った。
 「流石ですね。密林での闘いはお手のものか」
 アマゾンの闘いぶりを見つつ役は感嘆の言葉を漏らした。
 「では私もやるか」
 拳銃にサイレンサーを取り付ける。遠くからナイフを撃たんとする戦闘員の額を撃ち抜いた。
 次々と戦闘員を倒していくアマゾンの前に怪人が現われた。獣人吸血コウモリである。アマゾンの目の前の木の枝にぶら
下がっている。
 「ギィーーーーーーーーッ!」
 耳に残る嫌らしい声を発しアマゾンに飛び掛かる。両手の爪で引き裂かんとする。
 アマゾンはそれを両手で受けた。そして後ろに投げる。
 だが獣人は投げ飛ばされた方にあった木を両足で蹴った。その反動で再びアマゾンに襲い掛かる。
 それに対しアマゾンも飛び掛かった。両者が空中で交差した。
 アマゾンは木の上に着地した。振り返らずそのまま飛び去っていった。
 獣人吸血コウモリは動かない。やがて額から血を噴き出し前へ倒れていった。
 密林の中を走るアマゾンを一枚の激しく回転するプロペラが襲う。屈んでそれをかわす。
 プロペラはブーメランの様な動きで飛んできた方へ戻っていく。そこにはプロペラカブトがいた。
 「プーーーーーローーーーー」
 不気味な叫び声をあげる。右手にプロペラが戻って来た。暗い密林の中その銀の身体が鈍い光を発した。
 右手のプロペラが旋回を始める。今度は飛ばそうとしない。木の端や葉がそのプロペラに切られ散っていく。
 回転する右手をアマゾンに叩き付ける。アマゾンはそれを右にかわした。
 怪人は次々に攻撃を繰り出す。それに対しアマゾンは防戦一方である。
 だがアマゾンの紅い両眼は死んではいなかった。何かを待っている眼だった。
 背が大きな木に当たった。逃げ道は無い。怪人が渾身の力で右腕を振り下ろした。
 アマゾンは屈んだ。プロペラが空を切る。そして木に当たった。
 「ム!?」
 プロペラは木に深々と刺さった。複雑に喰い込み抜けようとしない。
 それがアマゾンの狙いだった。右に逃げるとそのままの動きで左の鰭を振った。
 怪人の胸が切り裂かれる。今度は右手を振った。背中からも鮮血を出し右手を気に切り込ませたまま怪人は死んだ。
 二体の怪人を倒した後もアマゾンは密林の中を駆けていた。戦闘員達ももういない。自分の他に役も相当数倒したようである。
 数本のナイフが飛んで来た。駆けたままなので当たりはしない。木に刺さっていく。
 「俺の狙撃をかわすか。やはり鬼火司令やキバ男爵の攻勢を退けただけはある」
 奥の方から声がした。そこからアマゾンを狙った張本人が姿を現わした。やはり隊長ブランクであった。
 「そうでなければ面白くない。誇り高きフランケンシュタインの血には強き獲物こそ相応しい」
 ライフルは既に構えられている。それはアマゾンの心臓を寸分違わず狙っていた。
 「ガルルルルル・・・・・・」
 アマゾンは背を屈めた。今にも飛び掛ろうとしている。背鰭が動く。
 だが容易には動けなかった。一瞬でも隙を見せればそれで心臓が撃ち抜かれる事がわかっていたからである。
 それはブランクも同じであった。下手に撃つとかわされる。それは死を意味する。
 彼等の他は誰もいない。鬱葱と茂り日もささぬ密林を重苦しい静寂が支配する。
 時間だけが過ぎていく。だがその過ぎた時間が一瞬なのか永遠なのかはわからない。二人には時が過ぎている事さえも
関係が無かった。
 先にしびれを切らしたのはブランクであった。ライフルを持つ右肩が僅かに動いた。
 アマゾンはそれを見逃さなかった。上へ跳んだ。
 ブランクのライフルからナイフが放たれる。だが空を飛ぶアマゾンには当たらない。
 ライフルを捨てる。飛び掛って来るアマゾンへ拳を打ちつけんとする。
 だがアマゾンは一撃引っ掻いただけであった。しかしブランクの鉄の鎧の前に阻まれる。それが失敗すると密林の中へ逃げ込んだ。
 「おのれっ、何処だ」
 左右を見渡す。だが気配すら感じられなかった。
 「・・・俺を獲物に仕立てるつもりか」
 自分の防御力と戦闘力には自信がある。鉄の鎧にはあの鰭さえ通用しないと確信している。先程も怪人すら倒す爪を退けた。
 「来い。俺の鉄の身体の前には貴様の爪も牙も鰭も通用せぬぞ」
 自信に満ちた声で言った。この密林の中の何処かに潜んでいるアマゾンを挑発し自身の力を誇示する為だった。
 しかし彼は自分の同僚達が何故敗れていったのか学ぶべきであった。そうすれば油断しなかったであろう。
 後ろから物音がした。不意にこちらへ襲い掛かって来る。
 「そこか!」
 右肩を突き出しチャージを仕掛ける。一撃で吹き飛ばすつもりであった。
 「な!?」
 だがそれはアマゾンではなかった。赤いボディと緑の両眼、大きな背鰭を持つ奇妙なマシン、ジャングラー。アマゾンの愛車であった。
 「くっ、謀ったか」
 苦しい呻き声にも似た怒りの声を出す。この時彼は自分の運命を悟った。
 「ケケーーーーーーーッ」
 頭上の木の上からアマゾンが叫び声と共に急降下して来る。右足をこちらに向けられている。
 避けられなかった。受けるしかない。この場でブランクが出来る事は最も堅胸で受け止める事だけだった。
 アマゾンのキックがブランクの胸を撃った。凄まじい衝撃が密林に響き渡る。
 アマゾンは着地した。ブランクはまだ立っていた。だがゆらりと体勢を崩すと片膝をついた。
 「グッ、衝撃までは抑えられなかったか・・・・・・・・・」
 急所こそ外したもののダメージは大きかった。キックの衝撃が容赦なく胸を撃ったのだ。
 「今まで見なかったジャングラーを奇襲に使うとはな。戦術でも俺の負けか」
 アマゾンは身体をこちらに向けてきた。
 「・・・止めを刺すつもりか。いいだろう、俺の負けだ。好きにするがいい」
 アマゾンは構えを取った。鰭で首を刎ねるつもりだった。脚に力を入れる。
 その時だった。不意に何処からか銃弾が放たれた。アマゾンはそれを咄嗟にかわした。
 「ガゥッ!?」
 辺りを見回す。燃える様な気が感じられるが姿は見えない。
 「あやつか。俺に逃げろと言いたいか」
 銃撃を見てブランクは呟いた。
 「ならばそうさせてもらおう。アマゾンライダー、この借りは必ず返す」
 そう言うと密林の中へ姿を消していった。
 追おうとする。だがそこへ再度銃弾が襲い掛かる。
 気配を探る。だがその主も既に密林から姿を消していた。
 「今あの男を失うわけにはいかんのでな」
 不気味な男の声がした。それと共に気配は完全に消え去った。
 役が現われた。互いに無事と健闘を讃え合う。

「アマゾン、行っちゃうんだね」
 空港でまさひこは縞の服を着たアマゾンに対し残念そうに言った。
 「まさひこ心配する必要無い。アマゾン悪い奴等倒しに行く。それだけ。それが終わればまた会える」
 寂しそうな顔をするまさひこに微笑んで言った。
 「・・・そうだね、また会えるよね」
 「そう、今度は日本で会いたい」
 「そうね、楽しみにしてるわ」
 リツ子も声をかけた。
 「今度会う時は私の手料理を御馳走するわ。腕によりをかけてね」
 「手料理・・・・・・熊の手か?」
 その言葉に二人は思わず吹き出した。
 「違うわよ、私が作った料理の事よ。こう見えても特異なんだから」
 「アマゾン魚が食べたい」
 「わかったわ。楽しみにしてて」
 「うん。アマゾンその時を楽しみにしてる」
 「じゃあ」
 「またね」
 二人は手を振りながら飛行機に乗った。アマゾンは二人が乗った飛行機が見えなくなるまで手を振っていた。
 「行きますか」
 後ろから声がした。役である。
 「行く。そして悪い奴等倒す」
 アマゾンはジャングラーに乗った。その後ろに止めてあったジープに役も乗った。
 ジャングラーとジープが駆けて行く。やがてその姿は見えなくなり後には遠くに見える密林だけがあった。

 密林の刺客 完
H15・10・11 

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