第二話  悪を裁つ剣
 宇宙においても各勢力がそれぞれの勢力圏を築き不穏な空気が流れている中で地球も例外ではなかった。やはり戦いが行われており戦士達は戦いに狩り出されていた。
 それは日本においても同じであった。今富士の上を数機のロボットが飛んでいた。マジンガーZにグレートマジンガーとそのパートナー達、そしてゲッターロボの他にも数機ある。どれも日本、いや地球を守る偉大なロボット達であった。
「ちぇっ、またかよ」
 空を飛ぶ鉄の巨人マジンガーZに乗る少年が何か嫌そうな顔をして舌打ちしていた。
「三輪のおっさんにも困ったもんだぜ」
 黒い髪にもみあげをたくわえている。癖のある髪なのか上に向き、そしてその量も異様に多かった。
「甲児君、そうも行ってはいられないぞ」
 その隣を飛ぶやはり黒い巨人グレートマジンガーの頭から通信が入って来た。
「今俺達は地球を守る為に戦っている。それはわかるな」
「ええ、それは」
 その男兜甲児は彼に答えた。見ればそのコクピットには濃い眉をした男らしい顔立ちの青年がいた。年齢は甲児より幾分か上であるようだ。
「けれど鉄也さんもあいつには頭にきているでしょう」
「それは否定しない」
 グレートマジンガーに乗る剣鉄也もそれについては甲児と同じ考えであった。
「俺は確かに戦士だ」
 彼は幼い頃より戦士として育てられてきた。それこそが彼のアイデンティティである。
「間違っても狂人ではない」
「そうですよね」
 甲児はその言葉に同意した。
「ったく、何であんなのが環太平洋区の長官になるんだか。わからねえよな」
「それは俺も同意する」
 彼等の後ろから声がした。見れば馬に似た身体に緑の頭を持つ黄色い身体のロボットである。いや、どうやらロボットではないようである。
「宙」
 二人は彼の名を呼んだ。
「いや、今は鋼鉄ジーグと呼んでくれ」
「ああ、わかった」
「それでだ」
 鋼鉄ジーグは二人に話をはじめた。
「邪魔大王国との戦いに勝ったらいきなり呼び出されたんだ。母さん達を人質にとられてな」
「まじかよ。本当にやることが滅茶苦茶だな」
「地球の為に戦えってな。それで今回あんた達の仲間に加わることになったんだ。よろしくな」
「ああ、こちらこそな」
 甲児が彼にそう答えた。
「俺もな」
 鉄也も彼に声をかける。
「お互い頑張ろう。どのみち戦わなくちゃいけないのは事実だ」
「そうだな」
 彼等も長い間様々な地球、そして人類を脅かす勢力と戦ってきた。だからこそわかることであった。この男鋼鉄ジーグこと司馬宙も同じであった。彼は邪魔大王国との戦いに備えて父にサイボーグに改造されていた。そして多くの苦難を乗り越えて彼等に勝ったのである。そうした経緯があった。
「宙さんも成長したわね」
 そこで後ろから女性の声がした。
「ミッチー」
 ジーグはそちらに顔を向けた。
「前はあんなに嫌だったのに」
「前はな」
 ジーグは少し渋い顔をした。
「あの時は色々と思うこともあったさ。父さんにも憤りがあった」
「それはわかるわ。けど」
「ああ、今ではわかっているさ。これは俺の運命なんだ」
 ジーグの声は決意に満ちたものであった。
「だからもう俺はそれについては迷わない。地球の平和を脅かす悪がいれば戦う。それだけだ」
「わかったわ」
 後ろに飛ぶ戦闘機でありジーグのサポートメカであるビッグシューターに乗る卯月美和は彼の言葉に頷いた。茶色の髪をした清楚な少女である。
「何か重たいもん背負ってるな」
 甲児はそれを聞きながら呟いた。
「俺とはえらい違いだ」
「いや、それは違うぞ」
 だが哲也が彼に対してこう言った。
「甲児君も色々あったじゃないか」
「そうでしたっけ」
「何とぼけたこと言ってんのよ」
 ここでまた少女の声がした。
「甲児君程色々ある人もいないじゃない」
 マジンガーのすぐ後ろを飛ぶピンク色の女性型メカ、アフロダイAからであった。
「さやかさん」
 甲児はマジンガーの首を振り向かせ彼女を見た。そこに茶色い長い髪をした少女がいた。やや甲児より大人びている。そしてその余裕に基づく落ち着きがある。やはり顔は整っている。
「お祖父さんが亡くなられてるしドクターヘルとの戦いがあったし。そんなに境遇は変わらないと思うわ」
「そうかなあ」
「哲也もね」
 アフロダイAの隣のオレンジのマシンに乗る褐色の肌の女が鉄也に声をかけた。このマシンはヴィーナスA、そしてこの褐色の肌に彫の深い顔立ちの女は炎ジュンという。
「ジュン、御前だってそうじゃないか」
 鉄也はそんなジュンにそう言葉を返した。
「幼い頃から戦う為に育てられてきたんだからな」
「ええ」
 ジュンはそこで少し暗い顔になった。
「皆同じだわさ。そういうところは似た者同士ということさ」
 地上から彼等に声を掛ける者がいた。ピンクの丸い頭にオレンジの身体を持つ変わった形のロボットがそこにいた。
「ボス」
「へへへ」
 それに乗る大きなアゴの男、ボスはハンドルを回しながら笑った。
「ボスだけじゃないよ」
「そうそう、俺達も」
 ここで鼻をたらした少年と前髪を変に伸ばした少年が出て来た。
「何だ、ヌケにムチャもいるのかよ」
「俺達を忘れるんじゃねえよ、兜」
「そうだそうだ、いつも自分ばっかり目立ちやがって」
 二人は甲児にそう反論した。
「御前等もかなり目立ってると思うがなあ」
「その通りだな」
 鉄也も甲児の言葉に同意した。
「大体君達の本当の名前は何というんだ?聞いたことがないが」
「えっ、そ、それは」
 三人はそれを聞いて急に慌てだした。
「まあそれはいいってことよ」
 ボスは咄嗟に誤魔化しにかかった。
「おいら達には関係ない話だわさ」
「そういうもんか?」
「大変なことだと思うが」
 だがボスは甲児と鉄也のそんな言葉をスルーした。ここで後ろに飛ぶ赤いマシンがやって来た。ゲッター線を使うマシン、ゲッターロボである。その改良型のドラゴンだ。
「まあそう言うな」
 そこから高く若い声がした。
「ボスにも色々と事情があるんだ」
 茶色い髪をした精悍な若者であった。ゲッタードラゴンのパイロット流竜馬である。
「そういうことだな」
 同じくゲッターに乗るパイロットの一人がそれに同意する。黒く長い前髪を持ったいささか斜に構えた印象の男だ。彼は神隼人、ゲッターのもう一つの姿、ゲッターライガーのパイロットである。
「それについてとやかく詮索するのはよくないぜ」
「そうだよな。俺もそれには同意するよ」
 ここでもう一人パイロットが出て来た。ゲッターの第三の姿ゲッターポセイドンのメインパイロット車弁慶である。
「俺だって詮索されたら困ることあるからな」
「弁慶にもそういうことがあるのか」
「おい、リョウ」
 弁慶は怒った声で竜馬に声を向けた。
「それは一体どういう意味だよ」
「おっと、悪い悪い」
 竜馬はすぐに謝った。
「悪意はなかったんだが」
「ならいいけれどな」
 弁慶も本気で怒っているわけではなかった。彼の謝罪をすぐに受け入れた。
「しかしゲッターも凄いロボットだよな」
 地上からボスがまた言った。
「ん、そうか!?」
 隼人がそれに応えた。
「ああ。三機の戦闘機が合体してなるんだからな。それも空でも陸でも海でも戦えるじゃねえか。おいらのボロットなんか陸でしか戦えねえからな」
「そういうものかな」
「そうだよ。だから頼りにしてるぜ大将」
「おいおい、おだてたって何も出ないぞ」
 竜馬はその言葉に苦笑した。
「俺達だって財布は軽いんだからな」
「御前さんはこの前牛丼を食べ過ぎたからだろうが」
 隼人が突っ込みを入れる。
「三杯も食べるなんて異常だぞ」
「仕方ないだろ。美味いんだから」
 竜馬はそう反論した。
「何でかわからないけれど牛丼が好きなんだよ」
「まあいいさ。そういえばこれから合流する奴の中にも牛丼が好きな奴がいるそうだな」
「それは本当か!?」
 竜馬は隼人の言葉に反応した。
「ああ。大空魔竜隊のエースパイロットでな。何でもツワブキ=サンシローというらしい」
「ツワブキ=サンシロー・・・・・・何処かで聞いた名前だな」
 竜馬はそれを聞いて呟いた。
「それってレッドサンのピッチャーだった奴じゃないのか!?」
 弁慶がここで叫んだ。
「レッドサン・・・・・・ああ、あのチームか」
 甲児もそのチームのことは知っていた。
「最近特に強くなっているチームよねえ」
「あれ、さやかさんも知ってたの?」
「贔屓のマリンシャークとはリーグが違うけれどね。知ってるわよ」
「へえ、そうなんだ。俺はあまり知らないなあ」
「甲児君は同じ赤でもレッドバイソンのファンだったわね」
「ああ」
「だったらあまり知らないのも無理はないわ。リーグが違うし」
「何だ、二人は大西洋リーグのファンだったのか」
 弁慶はそれを聞いて言った。
「だったら無理はないな。リーグが違うと」
「そうだな、それはわかる」
 竜馬がそれに同意した。彼はサッカーファンだが野球も見ないわけではないのだ。
「俺も案外他のチームのことは知らないからな」
「そういうもんだよ」
 弁慶が言った。
「俺だってそうだしな。実はレッドサンのファンなんだ」
「ほう、それは意外だな」
 隼人がそれを聞いて声をあげた。
「俺はてっきりシースターズかと思っていたぞ」
「何でシースターズなんだ!?」
「何となくだ」
「というか御前がファンだけじゃないのか」
「そう言うかも知れないな、ははは」
 彼は笑ってそう答えた。そこで前から何かが見えて来た。
「あれは」
 見れば巨大な戦艦である。青い恐竜の形をしている。その頭部は金色の角を生やした髑髏に似たものであった。
「あれがガイキングよ」
 ミッチーが皆に言った。
「大空魔竜隊の母艦なの」
「戦艦まで持っていたのかよ」
 皆それを聞いて言葉を飲んだ。
「何で大きさだ。まるで山だな」
 その周りに二機の戦闘機が飛んでいる。その二機の戦闘機も恐竜の形をしている。
「翼竜と首長竜だな」
 鉄也がそれを見て呟いた。
「どうやら全て恐竜みたいだな」
 地上にもいた。剣竜の形をしている。ここでその大空魔竜に動きがあった。
「ガイキング、パート1、パート2、ゴーーーーーッ!」
 アナウンスがかかる。女の声である。
 それと共に二つのマシンが飛び出す。そして空中で合体した。
 そこに大空魔竜の首の部分が外れ合体する。そして一体のロボットが完成した。
「ガイキング、合体完了!」
 声が響いた。それは竜馬の声と酷似していた。
「似てるな」
 それは彼にもわかった。思わずそう呟いてしまった。
「よお」
 声がした。そして五つの画像がそれぞれの機体のモニターに入って来た。
「はじめてだな。俺はツワブキ=サンシロー。今合体したガイキングのパイロットだ」
 癖のある髪にモミアゲの男がそう言った。
「俺はファン=リー。スカイラー、翼竜のパイロットだ」
 細面の男が名乗った。
「僕はハヤミ=ブンタ。海竜ネッサーのパイロットです」
 体格がいいが穏やかな顔立ちの男である。
「で、俺がヤマガタケ。剣竜バゾラーのパイロットだ」
 アゴの異様に大きな男が出る。そしてもう一人いた。
「俺が大空魔竜のメインパイロットピート=リチャードソンだ。キャプテンも務めている」
「へえ、こんなにいたのか」
「少し驚きだな」
「おっと、まだいるぜ」
 サンシローが彼等に言った。ここでモニターが増えた。
「大文字洋三。この隊の指揮官です」
 濃い髭を生やした中年の男であった。
「サコン=ゲン。メカニックだ」
 細い目をした端整な顔の男であった。
「ん?俺の声に似てるな」
 それを聞いた隼人が思わず呟いた。
「そしてフジヤマ=ミドリです。オペレーターです」
 長いブラウンの髪の美しい女性であった。
「おほお、可愛い子ちゃんじゃないのお」
 ボスなどは彼女の顔を見ていきなりこう言った。
「以上が大空魔竜隊のメインだ。以後宜しくな」
「ああ、こちらこそ」
 竜馬がサンシローに答えた。やはり声が似ていた。
「ではこれから宜しくな一緒にミケーネや恐竜帝国の奴等と戦おう」
「よし」
 彼等は空中で手を握り合った。そして一先大空魔竜の中に入ろうとする。その時であった。
「ムッ!?」
 樹海の中から何かが急に出て来た。
「あれは!?」
 それは奇怪な形をしたロボットであった。
「ハニワ幻人だ!」
 ジーグがそれを見て叫ぶようにして答えた。
「ハニワ幻人!?」
「ああ、あれこそが邪魔大王国の兵器なんだ。古代の呪術を使って作られたものだ」
「あれがか」
「まさかまだ残っていたとは。俺全部やっつけた筈なのに」
「フフフ、その通りだ」
 ここで巨大な壷の様な形をしたものが空中に出て来た。多くの髑髏がある。幻魔要塞ヤマタノオロチである。
「生きていたのか!」
「そうだ、俺達はな」
 その中から声がした。
「久し振りだな、司馬宙。いや、鋼鉄ジーグよ」
 そして三人の化け物に似た外見の男達の映像が空中に映し出された。
 一人は緑の肌に黄色い髪と髭をたくわえている。そしてその右には岩石の様な顔と髪をした男が。そのまた右には左半分に肌がなく剥き出しの男が。どれも異形の者達であった。
「イキマだ」
「アマソだ」
「ミマシだ」
 彼等は左から名乗った。
「鋼鉄ジーグよ、貴様がここに来ることはわかっていたのだ」
「そして俺達を待ち伏せていたというのか」
「その通り」
 彼等は答えた。
「ヒミカ様の仇、とらせてもらうぞ」
「待て、ヒミカは死んだのか」
「フン、何を言うか」
 それに対して彼等は怒気を強めた。
「貴様に倒されたのだろうが」
「それは覚えている」
 ジーグはそう返した。
「だがそれは貴様等もそうだ。何故今ここにこうしている」
「生き返ったのよ」
「生き返った!?」
「そうだ、この御方の御力でな」
 彼等は不敵に笑いながらそう言葉を返した。
「貴様等にも教えてやろう。その御方をな」
「我等が新しき女王」
「女王だと」
 それを聞いたジーグ達は思わず声をあげた。
「まさかそれは・・・・・・」
「そう、ヒミカ様の跡を継がれた邪魔大王国の新しき主」
「それがこの方よ!」
 古代日本の女神にも似た独特の形を持つロボットが姿を現わした。それは天から舞い降りて来た。まるで舞を舞う様に優雅な動きであった。
「そのロボットは」
「マガルガという」
 そこから女の声がした。そしてやはり宙に映像が浮かぶ。
「待っておったぞ、地上の戦士達よ」
 灰色の髪をした美しい女であった。その髪を古代日本風に結い、服もそれに倣っていた。顔立ちは確かに美しいが何処となく冷酷さが漂っていた。氷の美貌であった。
「我が名はククル。邪魔大王国の新たな主である」
「ククル」
「そうだ。鋼鉄ジーグ、貴様に倒されたヒミカ様の後継者だ」
「まさかヒミカに後継者がいたなんて」
 美和がそれを聞いて思わず呟いた。
「知らぬのも道理。わらわのことは王国の中でもごく一部の者しか知らなかったのだからな」
 ククルはやはり氷の様に冷たい声でそれに答えた。
「だがわらわは貴様等のことをよく知っている」
 そしてこう言った。
「鋼鉄ジーグよ。貴様にはその仇がある」
「だからどうしたというんだ」
 だがジーグも引くつもりはなかった。
「どのみち俺に用があるんだろう。この身体の中の銅鐸に」
「その通り」
 ククルは頷いた。
「それがわかっているのなら話は早い。今ここでその銅鐸貰い受けてやろう」
「やれるものならな」
「そして他の者達にも恨みはないが」
 宙に浮かぶその巨大な影が甲児やサンシロー達を見回した。
「ここで死んでもらおう。どのみち貴様等は我等のこれからに邪魔となるのでな」
「へっ、問答無用ってわけかい」
「貴様等はいつもそうだな」
「何とでも言え」
 だがククルはそれには全く動じていなかった。
「わらわはあくまでこの国の為にある。そして国の為ならどの様なことでもやる」
 言葉を続けた。
「例えそれが悪鬼の道でもな」
「じゃあ御前は鬼になるのか」
「そう受け取るなら受け取るがいい」
「よし、ならばもう何も言わない。俺も鬼退治はしたことはないが」
 ジーグは身構えながら彼女に言う。
「今からしてやろう。来い!」
「望むところよ」
 ククルはそう言って冷たい笑みを浮かべた。
「行け」
 そしてハニワ幻人達をむかわせる。ハニワ幻人は四方八方からあらたに姿を現わしジーグ達に襲い掛かる。
「来たか!」
 スーパーロボット達はそれを見て再び身構えた。
「敵は多いが」
 見ればかなりの数である。彼等の十倍はいるだろうか。
「だが負けるわけにはいかない。行くぞ!」
「おう!」
 竜馬の言葉に皆応える。そして一斉に散った。
 まずはマジンガーがハニワ幻人達の前に出る。そしてその手を向けた。
「ロケットパァーーーーーンチッ!」
 右手を発射する。そしてそれで敵を撃ち抜く。撃ち抜かれたハニワ幻人は爆発四散する。
「ダイアナンミサイル!」
 ダイアナンAもミサイルを放つ。そしてそれで先程ロケットパンチを受けた敵のすぐ後ろにいるハニワ幻人を撃った。やはりかなりの威力があるのか敵は四散した。
 ボスもいた。彼はハンドルを器用に動かしながら敵に向かう。
「ジャンジャジャーーーーーン!いいいくわよお!」
 そう叫びながら左手をブンブンと振り回す。
「ボロットパァーーーーーンチッ!」
 そして思いきり敵を殴りつけようとする。だがそれは見事にかわされてしまった。
「あらっ!?」
 そこに敵の反撃が来る。一撃で吹き飛ばされる。だがそれでもボスボロットはすぐに立ち上がった。
「いってえなあ、何するんだよ」

 起き上がりながら文句を言う。そしてその敵に向かおうとする。だがそれは出来なかった。
「マジンガーーーブレーーードッ!」
 鉄也のグレートマジンガーが剣を抜きその敵を両断していた。その横にいるヴィーナスAはビームでその側にいる敵を撃破していた。
「何でえ、おいらの出番はなしかよ」
「ボス、そう言うな」
 そこで上にいる甲児がそう慰めた。
「御前の出番はたっぷりあるさ。これからな」
「いつもそう言うけれどよ」
 ボスはここで上を見上げた。
「おいらはいつもこんなんだぜ。ちょっとは格好いい場面が欲しいぜ」
「それならボス」
 ここでジュンの声がした。
「何だ!?出番か!?」
「ええ。ちょっと前に出て」
「おうよ」
 ボスはそれに従い嬉々として前に進んだ。そこにゲッターが来た。
「おい、まさか出番って」
 ボスはそれを見てあからさまに嫌そうな顔をした。
「ええ、そうよ」
 ジュンは微笑んだ声で答えた。
「ボス、悪いな」
 竜馬が声をかけてきた。
「回復させてくれ」
「大至急な」
 隼人と弁慶の声がする。ボスはそれを聞いてはああ、と溜息をついた。
「結局ボロットは補給役かよ」
「ボス、そう落ち込まないで」
「そうですよ」
 後ろからヌケとムチャが出て来た。
「頑張ってればきっといいことありますって」
「いつもそう言うけれどな」
「あれ、不満ですか?」
「当たり前だよ!何でおいらはいつも兜や剣にいいことさらわれてばっかりなんだよ!おいらは引き立て役じゃねえぞ!」
 それを聞いて二人はポツリと頷いた。
「そのものじゃん」
「俺達はその引き立て役だけれどな」
「何か言ったか!?」
「いや」
「別に」
 二人は咄嗟に誤魔化した。彼等がそうした緊張感のない話をしている間にも戦いは続いていた。
「行くぞ!」
 ファン=リーの声が響く。そしてスカイラーからミサイルが放たれる。
 スカイラーだけではない。ネッサーとバゾラーも同時に攻撃を仕掛ける。
 そして三機のハニワ幻人を仕留める。しかしそれで終わりではなかった。
「グウオオオオオオッ!」
 一機残っていた。そしてその一機がスカイラー達と共にいたガイキングに襲い掛かる。
「甘いぜ!」
 だがサンシローは余裕のある態度を崩さなかった。敵を前にしても不敵に笑っていた。
「行くぞ」
 彼は叫んだ。そして腹から光の弾を取り出した。
「ハイドロブレイザァアアアアアアアアーーーーーーーッ!」
 それを右手で投げた。放たれた光の弾は複雑な動きをしながら敵に向かって行く。そして敵を直撃した。
「ガアオオオオオオオンンンッ!」
 直撃を受けた敵は絶叫した。そして爆発の中に消えた。
「すげえな」
 甲児はそれを見てこう呟いた。
「何でなの?」
「決まってるじゃねえか」 
 問うたさやかに答えた。
「元野球選手だっただけはあると思ってな。あんな技は野球選手じゃなきゃできねえよ」
「それを言ったら巴先輩も一緒だぜ」
 ここで前線に戻って来たゲッターから弁慶の声がした。
「大雪山おろしがあるからな」
「おっと、そうだった」
 甲児はうっかりとしていたことを思い出したように言った。
「あいつのあの技は凄いよなあ。よくあんなのできるよ」
「全くだ。海ではあいつの独壇場だからな」
 鉄也がそれに同意した。
「グレートも海でも戦えないわけじゃないけれどな」
「それでも限界があるな」
 隼人がそれに答えた。
「俺のライガーは特にそうだ。海ではてんで駄目だ」
「俺のドラゴンのだ」
 竜馬もここでこう言った。
「空はいいけれど海はな。どうしてもドラゴンの性能が落ちる」
「その点ジャックのあれは大丈夫だけれどな」
「ジャックってテキサスマックか」
「ああ」
 甲児の問いに竜馬が答えた。
「テキサスマックは何処でも戦えるんだ。汎用性の高いメカなんだ」
「そうだったんだ。以外だな」
「そういえばジャックは今どうしてるの?」
 ジュンが三人に問うた。
「えっと、どうしてたっけ」
 弁慶はとぼけた声を出した。
「おい、何言ってるんだ。アメリカにいるだろうが」
「あっ、そうだったか」
「おいおい、頼むぜ」
 隼人がそれを聞いて呆れたような声を出した。
「戦友の所在位覚えておいてくれよ」
「HAHAHAHAHA!その通りデーーーーーース!」
 ここで胡散臭い英語混じりの日本語が聞こえてきた。
「その声は」
 皆それが誰の声であるかすぐにわかった。
「ジャック、来たのか」
 皆そちらに顔を向けた。するとアメリカのガンマンの様な格好の銀色のロボットがそこにいた。
「そうYO!ミーを入れないのは寂しいね!」
 彼は不自然な程明るい声でそう言った。
「おい、ジャック」
 だが竜馬がそんな彼に冷静な声で返した。
「一体何時日本に来たんだ?」
「HAHAHA,それはね」
「もう兄さん」
 ここで帽子の方から声がした。
「ちょっと静かにして。話が進まないわ」
「OH,SORRY」
 ジャックはやはり笑ってそう答えた。
「まあ来てくれたんなら有り難いよ」
「ジャック、宜しくな」
「これからも頼むぜ」
 三人は彼に対してそう言った。ジャックはそれに応え早速敵に攻撃を開始した。
「シューーーーーートッ!」
 手に持つ銃を発砲する。それで敵を撃った。
 それで倒した。見かけによらずかなりの破壊力だ。
「へええ」
 ジーグはそんなテキサクマックを見て思わず感嘆の声を漏らした。
「思ったよりやるな。見かけによらないもんだ」
「HAHAHA、その通りね」
 それを聞いてやはり笑うジャックであった。
「ミーはグレイトYO!それは覚えといて!」
「もう、また兄さんたら」
 帽子からまた声がした。
「なあ」
 ジーグはそれを受けて竜馬に問うた。
「さっきから帽子から声が聞こえるんだが」
「ああ、あれか」
「中に誰かいるのか?」
「いるよ。ジャックの妹が」
「妹!?」
 ジーグはそれを聞いて思わず叫んだ。
「あいつ妹がいるのか!?」
「驚くことか?さっきから兄さんって言ってるじゃないか)
 竜馬はそれを聞いて不思議そうな顔をした。
「君にも妹がいる筈だが」
「あ、ああ」
 ジーグにも妹がいる。まゆみという可愛らしい少女だ。
「だったら不思議じゃないだろう」
「しかし」
「信じられないと言いたいんだな、ジャックにいることが」
「まあな」 
 その通りであった。あの話し方からは信じられないのであった。
「美人だぜ。この戦いが終わったら会ってみるといい」
「わかった」
「何を話しているのデスか!?」
 ここでまたジャックの声がした。
「ミーの妹のメリーは美人ですよ」
 やはり変な日本語であった。
「それは後でじっくり見て下さいね、HAHAHAHA」 
「もう、兄さんたら」
 またメリーの声がした。困った様な声であった。ジーグはそれを聞いて変な兄を持つと大変だと思った。
(俺も人のことは言えないか)
 ここでふとこう思う彼であった。
 戦いはスーパーロボット達に有利になってきていた。既にハニワ幻人達はその数を大きく減らしていた。
「まだまだ!」
 だが彼等も怯んではいない。戦意は衰えず戦いを続けていた。
 ククルの乗るマガルガは後方にいる。先頭にはヤマタノオロチがいた。
「おのれ、これで終わりと思うな!」
「我等がいる限り!」
 ヤマタノオロチの中にいる彼等は必死に指揮を執る。そして目の前にいる大空魔竜を見た。
「あれをやるぞ!」
「おう!」
「わかった!」
 イキマの声に他の二人も従う。そしてヤマタノオロチを突っ込ませた。
「行けっ!」
 竜の首を出して襲い掛かる。それで大空魔竜を破壊せんとする。だがそれを見るピートの目は冷静であった。
「来たな」
「ピート君、どうするつもりだね」
 大文字は彼に問うた。信頼しているのか落ち着いた声であった。
「ジャイアントカッターでいきます」
「あれを使うのか」
「はい」
 ピートは頷いた。
「それでいいですね」
「うむ、君に任せる」
 彼はそれを認めた。ピートはそれを受けて言った。
「ジャイアントカッターーーーーーッ!」
 竜の腹から巨大なカッターを出す。そしてそれを出したままヤマタノオロチに突撃した。
「食らえっ!」
 その刃が切り裂く。直撃を受けたヤマタノオロチは真っ二つとなった。
「ぬうう!」
「致し方ない、撤退だ!」
「ククル様、宜しいでしょうか!」
 三人は敗北の悔しさに身を震わせながらククルに問うた。
「止むを得ん、退け」
 ククルはそれを認めた。三人はそれを受けてヤマタノオロチから脱出した。そしてその直後要塞は爆発して消え失せた。
「終わったか」
 サンシローはそれを見て言った。
「いや、まだだ」
 だがすぐにサコンの声が返って来た。
「あの女がいるぞ」
「邪魔大王国の新しい女王か」
「そうだ、気をつけろ」
 サコンの声は警戒を促すものであった。見ればマガルガは空中でまるで女神の様に立っていた。
「見たところあいつはかなり手強い。御前でもそうそう楽には勝てないぞ」
「おい、何を言ってるんだ」
 サンシローは勝てないという言葉に反応した。
「俺が負けるとでも言うのか」
「いや、それは違うぞサンシロー」
 ピートとリーが同時に彼に言った。
「敵を知れ。俺達はあいつのことをまだ何も知らないんだ」
「ピートの言う通りだ。それにあいつからは得体の知れないものを感じる」
「得体の知れないもの」
 それはサンシローにはよくわからなかった。
「それは何だ」
「そこまではわからん。だがな」
 サコンは彼だけでなく他のパイロット達全てに言った。
「気をつけなければならないのは事実だ。皆油断するな」
「ああ」
「わかった」
 竜馬と鉄也はそれに頷いた。
「確かにな」
 ジーグもであった。
「ヒミカとはまた違う。あいつにはかなりの気を感じる」
「そうだな」
 甲児もそれに同意した。
「ここは用心しねえとな。下手するとこっちがやられるぜ」
 いつもの無鉄砲さは何処にもなかった。
「ボス、わかってるな」
「お、おう」
 不意にそう言われて慌てた。実は彼は突っ込むつもりであった。
「四方から囲め、いいな」
「了解」
 ピートの指示に従いマガルガを取り囲もうとする。だがマガルガはそれを見ても動かない。
「ふふふ」
 ククルはその中で笑っていた。
「何時でも来るがいい、弱き者達よ」
 そう言った。囲まれてもまだ余裕を崩さなかった。
「誰にもわらわを倒すことは出来ぬ。それを今から教えてやろう」
「言ってくれるんじゃねえか」
 甲児がそれを聞き口を尖らせた。
「だがな、そう簡単にはそっちの手には乗らねえぞ」
「そう言うか」
「何度でも言ってやらあ。御前の手には乗るもんか」
「それならばそれでよい」
 ククルはそれに返した。
「ならばこちらから仕掛けるまで」
 動きをはじめた。まるで舞を舞う様に優雅な動きであった。
「来るか」
 皆それを見て身構えた。だがこおで新たな声がした。
「待てっ!」
 大空魔竜の後ろから声がした。そして何かが飛んで来る。
「何だっ!?」
「敵かっ!?」
 皆そちらに顔を移す。だがそこにいるのは敵ではなかった。
「あれは・・・・・・」
 それは赤い巨大ロボットであった。ここにいる多くの者がそのロボットに見覚えがあった。
「グルンガスト!」
 サンシローやジーグもその名は聞いていた。かってバルマー戦役にて活躍したスーパーロボットである。最早その名は伝説と化していた。
「じゃあ中にいるのはクスハかブリットか!?」
「残念だが違う」
 中から男らしい低い声が聞こえて来た。
「我が名はゼンガー=ゾンバルト。かってディバイン=クルセイダーにいた」
 男はそう名乗った。灰色の髪と瞳を持つ精悍な顔立ちの男である。赤い軍服を身に纏っている。
「そして今邪魔大王国及び多くの地下からの侵略の手に立ち上がった。義により助太刀致そう」
「俺達にか!?」
「そうだ」
 ゼンガーは甲児に答えた。
「他に誰がいるというのだ」
「そりゃまあそうだけれどよ」
「しかし突然言われても」
「事情は連邦軍に聞くがいい。後でな」
 彼はそう言うとグルンガストを前に出して来た。
「少なくとも敵ではない。今それを見せよう」
 グルンガストは手を前に出す。そしてそこに液体が浮かび上がる。
「受けてみよ、斬艦刀」
「残酷刀!?」
「斬艦刀だ」
 リーがヤマガタケに突っ込みを入れる。
 グルンガストはマガルガに向かって行く。ククルはそれを見て妖しげな笑みを浮かべていた。
「来たな、愚か者が」
 彼女はやはり動かない。ゼンガーを見てもまだ余裕であった。
「わらわに勝てると思うておるのか」
 マガルガは優雅な舞をはじめた。そしてグルンガストの前に出る。
「受けてみよ」
 舞いながらグルンガストに向かう。そして叫んだ。
「黄泉舞!」
 グルンガストに襲い掛かる。華麗な動きでその全体を撃つ。だがグルンガストは怯んではいなかった。
「まだまだっ!」
 ゼンガーは機体を襲うダメージにも怯むことはなかった。むしろそれを受けてさらに戦意を高揚させていた。
「先程も言ったな」
 ゼンガーはその刀をククルに向けてから言う。
「我が名はゼンガー=ゾンバルト」
 その声は剣の様に鋭い。
「悪を断つ剣なり!」
 そう叫ぶとマガルガに向けて突進する。そしてその巨大な刀で斬りつけた。
「ムッ!」
 マガルガはそれを避けようとする。だが斬艦刀の方が速かった。それはマガルガの右腕を一閃した。
「ぬうっ!」
 右腕が断ち切られた。ククルはそれを見て苦悶の声をあげた。
「おのれっ!」
「我が太刀筋、見切れるものではない」
 ゼンガーは怒りに顔を歪める彼女に対してそう言った。
「女よ」
 そして言った。
「この勝負、俺の勝ちだ。潔く敗北を認めよ」
「認めよだと」
 ククルはそれを聞きさらに怒りを高めた。その白く整った顔が紅潮し、醜く歪む。
「わらわに敗北を認めよだと」
「そうだ」
 ゼンガーは彼女にそう言い放った。
「貴様は今俺に右腕を切り落とされた。それが敗北でなくて何だというのだ」
「ヌヌヌ・・・・・・」
「敗北を認めぬのならそれでよい。だが」
 彼は言葉を続けた。
「俺に腕を切り落とされたのは事実。これは言い繕うことができぬぞ」
「戯れ言を」
 ククルは怒りに身体を打ち震わせながらも言葉を返した。
「この程度でわらわに勝ったなどとは」
「やるつもりか」
「無論」
 左腕だけで構えをとった。
「そこになおれ。今すぐその戯れ言への褒美をくれてやろう」
「褒美か」
「そうじゃ。わらわの舞をもう一度受けてあの世に行くがよい。そしてそこで永遠に悔やむがよい」
「面白い」
 だがゼンガーはそれでも動じてはいなかった。
「我が剣、もう一度見せてやろう」
 再び斬艦刀を取り出す。そしてそれを構える。だがここで新たな敵が姿を現わした。
「待て、ククルよ」
 遠くから声がした。
「その声は」
 甲児と鉄也は咄嗟に声がした方に目をやった。そこにあの男がいた。
 そこには巨大な身体をした巨人がいた。宙に立ち、腹にある髭の生えた男の顔がこちらを睨んでいる。
「暗黒大将軍!」
「貴様もここに!」
「フフフ」
 暗黒大将軍は二人を見て笑った。
「久し振りだな、二人共」
「ああ、全くだ」
「まさかまた会うとはな。これで三度目だ」
「三度目!?」
 暗黒大将軍はその言葉にふと気付いた。
「それは違うな。わしが貴様等に会うのはこれが二度目だ」
「それは俺達の話だ」
「貴様には関係のないことだ」
「ふむ」
 やはり彼にはわからなかった。彼は甲児達が未来に行っていたことを知らないのである。
「まあいい。わしがここに来た理由はわかるな」
「俺達とやり合うつもりか」
「貴様等がそう望むのならな」
 彼は悠然とそう答えた。
「しかし今はそのつもりはない。ククルよ」
「何だ」
 声をかけられたククルは彼に顔を向けた。
「今は退け。よいな」
「何故だ」
 彼女はそれを受けて暗黒大将軍を睨みつけた。
「わらわはまだ戦える。余計な助太刀は無用だ」
「無論それはわかっておる」
 彼はそう言葉を返した。
「では何故だ」
「今我等の帝国に敵が向かっておる。すぐに戻って欲しいのだ」
「何、敵!?」
 彼女はそれを聞いて眉を顰めさせた。
「連邦軍か」
「いや、どうやら違うのだ」
 暗黒大将軍は彼女の問いに首を横に振った。
「かといって恐竜帝国でもない」
 彼等と恐竜帝国は中立関係にあるのだ。
「では何じゃ?」
 ククルは少し苛立った声で暗黒大将軍に問うた。
「それはわからん。だが今は七大将軍は全て出払っていてな。お主の力を借りたいのじゃ」
「そういうことならわかった」
 彼女はようやく頷いた。
「では行こう。そしてその敵を倒すぞ」
「うむ、闇の帝王様に何かあってはいかぬからな。すぐに行くぞ」
「わかった」
 ククルは風の様な動きで抜けた。そして最後にゼンガーの方に振り向いた。
「ゼンガー=ゾンバルトといったな」
「そうだ」
 彼はそれに応えた。
「今はこの勝負預けておこう。じゃが今度会う時は」
 その目が赤く光った。
「その命貰い受ける。よいな」
「望むところだ」
 ゼンガーも退いてはいなかった。そう返した。
「俺は何時でも貴様が来るのを待っている。思う存分来い」
「その言葉、忘れるでないぞ」
 そう言い放つと姿を消した。見れば他の邪魔大王国のハニワ幻人達も全て消えていた。
「終わったな」
 甲児は敵がいなくなった戦場を見てそう呟いた。
「ああ、とりあえずはな」
 ピートがそれに返した。
「だが奴等はしつこい。どうせまた来るぞ」
「ああ、それはわかっている」
 ここにいる誰もがわかっていることであった。
「ミケーネも恐竜王国もな。そう簡単には退きはしない」
「だが負けるわけにもいかないぞ」
 竜馬が鉄也に言った。
「奴等がどれだけしつこくてもな」
「それもわかっている」
 やはり鉄也は冷静であった。そう返した。そしてその冷静さを別のところに向けた。
「今ここにいるだけでは奴等を相手にするのは難しいな」
「そうだな」
 サコンも同じ考えであった。
「とりあえずは戦力を集めるか。誰かいるか」
「それなら心当たりがあるぜ」
 甲児が答えた。
「ダンクーガにコンバトラーにボルテスだ。あいつ等なら力を貸してくれる筈だぜ」
「おお、彼等がか」
 大文字はそれを聞き思わず声をあげた。
「彼等が参加してくれるとなると心強いな」
「あとは大介さんか。今何処にいるのかな」
「スペインの方に行っているらしいぞ」
 鉄也がそえに答えた。
「ひかるさんやマリアちゃんと一緒にな」
「へえ、そうだったんだ。暫く見ないと思ったら」
「大介さん?」
 サンシローはそれを聞いて不思議そうな声をあげた。
「それは誰だい?」
 そして甲児達に尋ねた。
「あ、すまねえ。知らなかったか」
「ああ。よかったら教えてくれ」
「グレンダイザーのパイロットさ。UFOみたいな形に変形できる」
「そしてスペイザーっていう戦闘機と合体するのさ。色々な形になるんだ」
「へえ、そりゃ面白そうなロボットだな」
 サンシローは甲児と鉄也の話を聞いて興味深そうに頷いた。
「後で大介さんにも連絡しておこう。スペインの方の事情にもよるが」
「お願いします」
 甲児は鉄也に頼み込んだ。これで話はおおよそ終わった。そして次の問題であった。
「とりあえずこれからどうするかだな」
 大文字が大空魔竜の側に集結して来たパイロット達に声をかけてきた。
「まずは甲児君の言う通り戦力を増強させよう」
「はい」
 皆それに頷いた。
「まずは何処に行くかだな」
「それでしたら厚木に行きましょう」
 鉄也が提案した。
「厚木に」
「丁度そこに獣戦機隊がいるんです。彼等と合流しましょう」
「そうか、ならそうしよう」
 大文字は彼の提案に首を縦に振った。それから他の者に対して言った。
「ではこれから我々は厚木に向かう。いいか」
「はい」
「了解」
「わかりました」
「合点だ」
 皆それに頷いた。こうして彼等の行く先は決定した。
「決まりだな。では向かうとしよう」
 大空魔竜にロボット達を収容すると厚木に向かった。新たな力を加える為に。
 ゼンガーは大空魔竜の中に入るとすぐに他の者と離れた。そして一人窓の側に佇んでいた。
「・・・・・・・・・」
「何だ、あいつあんなにクールな奴だったのか」
 甲児達はそれを見ながら話をしていた。
「意外だったな。戦っている時はかなり熱い奴だと思っていたが」
 サンシローもそれは同じ考えであった。
「戦っている時は変わるんだろ。よくあることだ」
「リーはそんなに変わらねえけれどな」
「まあな」
 サンシローの言葉を否定しなかった。
「俺はそれでいいと思っているしな。だからといって御前のその熱さも悪いとは思わん」
「そうなのか」
「人それぞれだ。少なくとも俺はそう考えている」
 彼は落ち着いた声でサンシローにそう語った。
「ブンタにもヤマガタケにもそれぞれのキャラがあるかな」
「そういうものですか」
「俺はそんなに個性は強くはねえぜ」
 皆ヤマガタケのそんな言葉を聞いてを言ってやがる、と思ったがそれは口には出さなかった。
「それにしても獣戦機隊が入るのか」
 ピーとが少し困ったような顔をしてそう語った。
「知っているのか?」
「知っているも何もあの連中は有名過ぎるからな」
 ピートは当然といった口調でそう答えた。
「命令違反の常習犯ばかりで構成されているからな。否が応でも知っているさ」
「ああ、そういう意味だったか」
 これには甲児も竜馬達も同意した。
「確かにあいつ等はな。気性が滅茶苦茶激しいからな」
「特に忍はな。ダンクーガのパイロットには合ってはいるが」
「何でも厚木には三輪長官が直接来るように命令したらしいな」
「それは本当か、隼人」
「ああ、本当だ」
 隼人は鉄也にそう答えた。
「北米に配属されていたらしいがとにかく命令を聞かなくてな。それでこっちに呼び寄せたらしい。ついでに東京防衛も兼ねてな」
「成程な。毒を以って毒を制すというわけか」
 竜馬はそれを聞いて納得した。
「あの長官にしては珍しく頭の回ることじゃねえか」
「実際は葉月博士の提案らしいがな」
 隼人は甲児にそう説明した。
「厚木は東京に近いからな。もしもの時に備えたのだろう」
「そうか、それなら話がわかるな」
 鉄也はその説明に深く納得した。
「だがそれだと問題があるぞ」
 大文字が彼等にそう言った。
「彼等は軍属だ。我々に協力してくれるものかどうか」
「それは御心配なく」
 鉄也が言った。
「葉月博士は話のわかる人ですから。事情を話せば協力してくれますよ」
「そうなのか」
「ええ、それに北米から呼び寄せたのは獣戦機隊だけじゃありませんから。厚木の戦力はかなり充実したものになっていますよ。ですから御安心下さい」
「そういうことならいいが」
 彼はそれを聞いて安心した。
「ならば予定通り向かうとしよう。ミドリ君、いいな」
「はい」
 ミドリはそれに頷いた。そしてそのまま大空魔竜は厚木に向かった。
 ゼンガーはその中でもやはり何も語らない。ただ夕焼けの空を眺めているだけであった。 
「ククルか・・・・・・」
 彼はあの女の名を呟いた。だがそれ以上は何も語ろうとはしなかった。


第二話   完



                               2005・1・17


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