漢の道
 バームとの戦いを終えたロンド=ベルは補給も兼ねて横須賀に戻ろうとした。だがここで通信が入ってきた。
「やあ、久し振りだね」
 出て来たのは冬月であった。
「長官」
「ミサト君か。そっちはどうかね」
「はあ」
 ミサトはそれに応えた。
「やはり居心地がいいですね。皆伸び伸びとやっていますよ」
「それは何よりだ。ところで赤木博士はどうしているかね」
「リツ子ですか?」
「そうだ。今そこにいるかな」
「ええと」
 見回すとラー=カイラムの艦橋にはいなかった。彼女は参謀としてこの艦に移っていたのである。ネルフの面々も同じであった。
「ちょっといませんね。グランガランに言ったわけでもないし」
「グランガランに?」
「あの、彼女猫好きですよね」
「ああ、確かそうだったな」
「マサキ君のファミリアのクロちゃんとシロちゃんに夢中でして。それでちょくちょくあっちに行くんですよ」
「ミサト、私ならここよ」
 モニターにリツ子も出て来た。
「リツ子」
「私はグランガランに移ったから。よろしく」
「ちょっと、何時の間に」
「だってクロちゃんとシロちゃんがいるでしょ。だから移ったのよ」
「シーラ様には許可とったの?」
「私の方は構いませんが」
 シーラも出て来た。
「レイさん達もこちらに移られましたし」
「何時の間に」
 これにはミサトも驚いた。
「そういうことだから宜しく。貴女もここに来たら?」
「私はちょっと」
 しかしミサトはそれを受けようとしなかった。
「色々と事情があってね」
「アムロ中佐かね」
 冬月がポツリと呟いた。
「ウッ」
 これにはギクリ、とした。
「君は確か彼のファンだったな」
「ま、まあそういう噂もありますね」
 図星だけにこの突っ込みは効果があった。
「あくまで噂ですけれど」
「そうか。あとはカトル君達かな」
「それも噂です」 
 今度は表情にまで変化が出た。焦ったものになった。
「ですから御気になさらずに」
「わかった。それでは本題に入ろう」
「はい」 
それを受けてミサトの顔が元に戻った。
「湘南で出たというあのマシンだが」
「あれが何かあるのでしょうか」
「うむ。あれがゼオライマーだ」
「あれが」
 それを聞いてミサトもリツ子も表情を一変させた。
「我々が到着した時にはもう戦闘は終わっていましたが」
「かなりの戦闘力を持っているようだな」
「ええ。傷一つ受けてはおりませんでしたし。それは間違いないかと」
「そうか」
 冬月はそれを聞いて考え込んだ。
「あの」
 そんな彼にブライトが話し掛けてきた。
「冬月司令」
「おお、ブライト大佐。暫くだね」
「ええ、お元気そうで何よりです。ところで」
「わかっているよ。聞きたいことは」
 冬月はそれに対して微笑んでから応えた。
「そのゼオライマーだが」
「はい」
「それについて細かい話をしたい。申し訳ないが第二東京市まで来てくれるか」
「わかりました。それでは今から予定を変更してそちらに向かいます」
「うむ、頼む。そうだ」
 ここで彼は思い出したことがあった。
「葛城三佐」
 そしてミサトに声をかけた。
「チルドレン達は今どうしているかな」
「シンジ君達ですか?」
「ああ。元気でいるかな。少し心配なんだ」
「それは御心配なく。元気ですよ」
「そうか、それは何よりだ。安心したよ」
「私も元気ですよ」
 ミサトはにこりと笑ってそれに応えた。
「やっぱりロンド=ベルは雰囲気がいいですから」
「アムロ中佐がいるからかしら」
「だからそれは違うって」
「うふふ」
 リツ子はミサトをからかって少し楽しんでいた。だがそれはミサトも同じであった。
「貴女もクロちゃんとシロちゃんの側にいたいだけでしょ」
「それは違うわ」
 リツ子は表面上はそれを否定した。
「私がここに移ったのは大空魔竜が手狭になってきたしそれに・・・・・・」
「それでだ」
 ここで冬月が彼女達の話を遮るようにして言った。
「色々とゼオライマーについて話したいことがある。いいか」
「は、はい」
「わかりました」
 二人は慌ててそれに応えた。そしてロンド=ベルは冬月の要請に応え第二東京市へ向かうのであった。

 その頃地下の宮殿において一人の少女が報告を受けていた。
「耐爬が!?まさか」
 幽羅帝はそれを聞き驚きの声をあげた。
「残念ながら」
 報告する男は彼女の前に跪きそのまま報告を続ける。
「湘南において。立派な最期だったということです」
「そうか・・・・・・」
 顔では何事もないことを装った。だが心では違っていた。
「わかった。さがれ」
「ハッ」
 男はそれを受けて下がる。幽羅帝はそれを見届けると後ろに控える髭を生やした老人に対して声をかけた。
「ルラーン」
「はい」
 老人は彼女に応えた。
「耐爬がやられた。これをどう見るか」
「あのマシンの力ならば」
「そうか」
 彼女はそれを聞きまずは頷いた。
「本来ならば私が乗る筈であったあのマシンの力はそこまであるというのか」
「はい」
 ルラーンは答えた。
「木原マサキの開発したものです。まだ力はあるかも知れませぬ」
「オムザックはどうなっているか」
 幽羅帝はそれを聞きながらルラーンにまた問うた。
「もう暫くお待ち下さい」
「そうか」
 彼女はそれを聞いて頷いた。
「それでは今あれを出すのは止めよう」
「はっ」
 ここで幽羅帝は前を見据えた。そして言った。
「シ=アエン、シ=タウ」
「はっ」
 それに応え二人の女が姿を現わした。
「そなた達に次の作戦を任せる」
「わかりました」
 二人はそれに頷いた。
「ゼオライマーを倒せ。よいな」
「はい」
「そなた達二人の力ならばできる筈だ。違いないな」
「はい」
「・・・・・・・・・」
 アエンが頷く。だがタウはそれに対して沈黙していた。
「タウ」
 そんな彼女にアエンが声をかけてきた。
「貴女も応えなさい」
「はい」
 タウはそれに応えた。幽羅帝はそれを受けて頷いた。
「期待しているぞ。見事ゼオライマーを倒して参れ。いや」
 だがここで彼女は考えを変えた。
「木原マサキをここに連れて来るように」
「木原マサキをですか」
「そうだ」
 彼女は二人の問いに答えた。
「よいな。あの男自身をここへ連れて来るのだ」
「わかりました」
「御命令のままに」
「うむ。では行け」
「ハッ」
 こうして二人は姿を消した。そして後には幽羅帝だけが残った。ルラーンも何処かへ姿を消してしまっていた。
「木原マサキ・・・・・・許さん」
 怒りに満ちた声でそう呟いた。その身体には蒼い炎が宿っていた。

「何か学校へ来るのも暫くぶりだね」
 シンジ達は学校に戻るとそんな話をはじめた。
「こんなに早く戻って来るとは思わなかったけれど」
「あんた何言ってるのよ。どうせすぐにまたどっかに行くことになるわよ」
 それにアスカが突っ込みを入れた。彼等は今体操服を着て体育の授業に出ていた。
「それまで精々学園生活を楽しんでいることね」
「そうそう、やっぱり学校は楽しいからな」
 ここで甲児の声がした。
「甲児さん」
「あんた確か高校生じゃなかったっけ」
「ああ。ちょっと遊びに来たんだ」
 彼はそうしたことは一切気にしていないといった態度でそう返した。
「だから気にするな」
「気にするわよ」
 しかしアスカは彼とは違っていた。
「あたしの体操服姿でも覗きに来たのね。やらしいんだから」
「今更半ズボン見てあれこれは言わねえよ」 
 見ればシンジ達の学校の体操服にも変化があった。男子は同じだが女子のそれはブルマーから半ズボンに変わっていたのである。
「大体おめえみてえなガキを見てどうしろっていうんだよ」
「フン、あたしみたいな美女によくそんな失礼なことが言えるわね」
「それはもっとおしとやかになってから言えよ。そんなんだからグランガランでもキーンと喧嘩したんだよ」
「あれはキーンが悪いのよ」
「おめえが悪いに決まってる」
「何ですってえ!?」
「まあまあ二人共」
 今度はカトルがやって来た。
「あ、カトルさん」
 シンジが最初に彼に顔を向けた。
「カトルさんもここに」
「うん。ちょっと日本の学校がどんなのか見たくて」
「僕も一緒ですよ」
 見ればウッソ達も一緒だった。
「保護者はいないがな」
 ヒイロも当然のようにいた。
「かわりにリリーナがいる」
「シンジさん、どうも」
「あ、はい」
 シンジはリリーナに挨拶を返した。
「日本の学校も独特の雰囲気があっていいですね」
「そうでしょうか」
「はい。私はこの雰囲気が気に入りました。できればこうした学校に通いたいですね」
「はあ」
 シンジはそれを聞きながら少し力のない言葉を漏らした。
「けれどこれといって何もないですよ」
「私はそうは思いませんけれど」
「そうでしょうか」
「はい」
 やはりリリーナは普段と全く変わってはいなかった。よく言えばマイペースであり、悪く言ってもやはりマイペースであった。それがリリーナであった。
「ところでリリーナさんはどうしてここにいるんですか?」
 アスカが甲児との喧嘩を中断して彼女に問うた。
「私がですか?」
「はい」
「火星でのバーム星人との交渉が不首尾に終わりまして。そしてナデシコでここまで来ました」
「ナデシコで」
「ええ。それが何か」
「いや、ナデシコってあまり知らなかったから」
「そういえばアスカはグランガランからあまり出ないよね。あと大空魔竜にいた時もそうだったし。何で」
「たまたまよ、たまたま」
 シンジにそう反論した。
「あたしだってそりゃ他の艦に行きたいわよ。けれど何か嫌な予感がするのよね」
「嫌な予感?」
「ええ。何かとんでもないのに出会いそうで」
「ナデシコにはそんな方はおられませんわよ」
「というのは嘘だ」
 すぐにウーヒェイがリリーナの言葉に突っ込みを入れた。
「あの艦長には注意しておけ」
「確かユリカさんやったっけ」
「そうだ」
 トウジにそう答えた。
「いきなり何をするかわからん。それだけは覚えておけ」
「ウーヒェイが言うと説得力があるな」
「あんたより無茶なのもいるのね」
 アスカが甲児に突っ込みを入れたが彼はそれを今は珍しくスルーした。
「それでだ」
「まだ何かあるのか」
 ヒイロが問うた。
「ここにはあとどれだけいられるんだろうな」
「一週間ってとこじゃねえのか。早けりゃ明日にでも出なくちゃいけないだろうな」 
 デュオが答えた。
「それだけか」
「嫌なの?」
 レイがシンジに問うた。
「正直に言うとね。やっぱり学校にいるのは楽しいし」
「そういうものなのか」
 トロワの言葉はいささか感情を欠いていた。
「俺にはよくわからないが」
「まあ俺だって学校にいたら何かと楽しいしな」
「甲児君は給食とかお弁当だけでしょ、楽しみなのは」
「ちぇっ」
 さやかのその言葉に口を尖らせた。彼等はそんな話をしながら学校での生活を過ごしていた。それを遠くから見る二つの影があった。
「ここでいいんだな」
「ええ」
 それは一組の男女であった。
「ここに出る」
「そう聞いているわ」
 見れば黒い髪の男と茶の髪の女である。男はやや鋭い目をしており女は整った顔立ちの美女であった。とりわけ女の声が澄んで美しかった。
「ではそろそろ行くか」
「えっ、もう?」
 女は男が歩みはじめたのを見て声をあげた。
「ああした連中は待ってはくれないからな」
「じゃあ行きましょ」
「ああ」
 こうして彼等は何処かへ姿を消した。そしてシンジ達は体育の授業を終え教室に戻った。次の授業に入ったその時であった。街にサイレンが鳴った。
「敵か!?」
 教室にいたシンジ達はすぐにそれに反応した。ここで携帯が鳴った。
「はい」
「シンジ君ね」
 それはミサトの声であった。
「はい」
「いいわ。すぐにグランガランに戻って。敵よ」
「敵ですか」
「そうよ。パターン青、わかるわね」
「パターン青!?」
 それを聞いてアスカとトウジが驚きの声をあげた。
「おい、それは嘘やろ」
「そうよ、そんな筈がないわ。だって」
「詳しい話は後」
 ミサトは電話の向こうの二人に対してそう言った。
「いい。今はそれよりも戦わなくちゃいけないから」
「それはそうだけれど」
「ミサトさんの言う通りよ」
 まだ戸惑うアスカに対してレイがそう述べた。
「行きましょう。ここでお話する前に」
「そうね」
「ほな行くか」
「カトル君達にも声をかけておこうか」
「その必要はないわ」
「えっ!?」
 シンジはミサトの声を聞いて眉を少し上げた。
「彼等ならもう出ていると思うから」
「ホンマや」
「って何処に!?」
「窓見てみい」
 トウジはそう言って窓の向こうを指差す。するとそこにはもう五機のガンダムがいた。
「早いわねえ、やっぱり」
「流石は工作のエキスパートやな」
「そういう問題じゃないと思うけれど」
「シンジ君」
「カトル君」
 カトルがコクピットの中からシンジに声をかけてきた。
「まずは僕達が防ぐから。君達は早くグランガランに戻って」
「うん」
「そして一緒に戦おう。いいね」
「頼むよ、カトル君」
「うん、こちらこそ。それじゃあ」
 こうして五機のガンダムが出撃した。そのまま市街地へ向かって行く。
「じゃああたし達も行くわよ」
「ほな行こうか。自転車でな。それしかないしな」
「中学生だから仕方ないよ」
「あら、洸さんは中学生でもバイクに乗ってるわよ。勝平の奴も」
 アスカは早速勝平とも喧嘩していたのである。だからここで憎まれ口のようなものになったのである。
「それは気にしては駄目よ。じゃあ行きましょう」
「了解」
 こうしてチルドレン達はそれぞれの自転車でグランガランに向かった。それを遠くから見る白い髪の少年がいた。
「シンジ君、頑張るんだよ」
 彼はシンジを見ながらそう呟いた。その瞳はどういうわけか異様に温かい目であった。
 その間に戦いははじまろうとしていた。既に異形の者達がロンド=ベルの前に姿を現わしていた。
「シンジ君、来たわね」
「はい」
 シンジ達はグランガランに到着すると待っていたリツ子に挨拶をした。
「準備はできているわ。すぐに出て」
「わかりました」
 モニターにミサトが出て来た。
「頼んだわよ」
「ええ」
 彼等は口々に挨拶をしながらエヴァに乗り込んだ。そして出撃する。そこには既にロンド=ベルの面々がいた。
「来たな、シンジ」
 ショウがまず彼に声をかけてきた。ダンバインは上にいた。
「使徒はもう出ている。頼むぞ」
「わかってます」
 シンジはその言葉に頷いた。
「相手が使徒ならエヴァが一番いいですから」
「そうだな。どうも俺達じゃ勝手がわからないからな」
 ダバがそれに応えた。
「メインで頼むわね。フォローはあたし達がするから」
 アムも言う。ヘビーメタルはエヴァのサポートに回る。そしてロンド=ベルは四機のエヴァを中心に進む。その先に使徒達がいた。
「さて、と」
 アスカが彼等を見据えて声をあげる。
「どうしてまた復活してきたのかは知らないけれど出て来たからにはやるわよ」
「ふっきれとんなあ」
「当たり前でしょ。言ってもはじまらないじゃない」
「さっきと言ってること違うけれど」
「あんた達は黙ってて」
 そう言ってシンジとトウジを黙らせた。
「どの道やらなくちゃいけないのはかわりないんだし」
「確かにな。ほな行こか」
「そういうこと・・・・・・ん!?」
 アスカはここで目の前に誰かがいることに気付いた。
「ちょっと待って」
「!?何かあるのか!?」
 アムロがそれに応える。
「前に人が」
「人!?」
 皆それを聞いて驚きの声をあげた。
「馬鹿な、市民達は既にシェルターに避難している筈だ。そんなことは」
「けれど実際に」
「・・・・・・確かに」
 ブライトは前にいる一人の男の姿を認めて頷いた。そこにはマントを羽織った一人の男がいた。
「いるな」
「そうでしょ。変な格好して」
「格好は言ってもはじまらないが。とりあえず避難するように言わなくちゃね」
 万丈が前に出る。そしてその男に声をかけた。
「おおい、そこの君」
「俺のことか?」
 男はそれを受けて顔をあげた。学校の前にいたあの鋭い目の男であった。
「そう、そこの君だよ」
 万丈は彼に対してそう言った。
「ここは危ないからすぐに避難した方がいい。僕が送るから」
「その必要はない」
 だがその男はそれを断った。
「いや、そういうわけにはいかないよ。君は非戦闘員だからね」
「俺は戦える」
「えっ!?」
 シンジがそれを聞いて驚きの声をあげた。
「俺はドモン=カッシュ。相手が誰であろうが戦う」
「ドモン=カッシュ」
 鉄也はその名を聞いて思い出した。
「ネオ=ジャパンのガンダムファイターか」
「その通り」
 ドモンは彼にそう答えた。
「シャッフル同盟キング=ザ=ハート」
 そう言いながら全身に力を溜める。
「今その力を見せてやる!ガンダァァァァァァァァムッ!」
「何ィッ!」
 するとそこにガンダムが姿を現わした。
「ハァッ!」
 そしてそこに飛び込む。ガンダムの全身が強い気に覆われた。
「ガンダムファイト」
「レェェェェェェェェェェディ」
「ゴォォォォォォォォォォォッ!」
 それと共に別の四機のガンダムも姿を現わした。彼等はエヴァの前に颯爽と姿を現わしたのであった。
「シャッフル同盟参上!」
 五機のガンダムが姿を現わした。彼等はそれぞれ構えを取りロンド=ベルの前に出て来たのであった。
「何かすげえのがまた出て来たな」
 デュオが彼等を見てそう呟いた。
「おうよ、俺はネオ=アメリカのジボデー。ジボデー=クロケットだ」
 まずはボクサーの構えをとるガンダムが名乗った。ワイルドな雰囲気の男が名乗る。
「シャッフル同盟クイーン=ザ=スペードだ。ガンダムマックスターに乗ってる。宜しくな」
「あれがジボデーか。話には聞いていたけれど」
 デュオは言いながらもまだ呆気にとられていた。
「また派手な兄ちゃんだな。ぶったまげたぜ」
「ドラゴンガンダム、サイ=サイシー。国はネオ=チャイナ」
 少林寺の構えをとるガンダムには小柄な少年が乗っていた。
「あれがサイ=サイシーか」
 それを見てウーヒェイが呟いた。
「シャッフル同盟、クラブ=ザ=エース」
「ふむ、噂通りの実力のようだな」
「ネオ=フランス、ジョルジュ=ドーサンド。ガンダムローズに乗っております」
 優雅な物腰の赤茶色の若者が名乗った。
「面白い兄さんね」
 シモーヌは彼の声を聞きながらそう思った。
「シャッフル同盟においてはダイヤ=イン=ジャックを務めさせて頂いております。以後お見知りおきを」
「キザだが実力は本物みたいね」
「ボルトガンダムに乗っている。アルゴ=ガルスキ。国籍はネオ=ロシア」
「ロシア人か」
 ゲンナジーがポツリと呟いた。
「ブラック=ジョーカーだ」
「ふむ」
「何かゲンちゃんと似てるね。同じロシア人だからかしら」
「気にするな、ミオ」
「我等シャッフル同盟」
 彼等はまだ名乗っていた。言葉を続ける。
「義によりロンド=ベルに助太刀させてもらおう!」
「助太刀!?」
「そうだ」
 ドモンがアスカに答える。
「今地球には多くの危機が訪れようとしている。俺達はそれを防ぐ為に御前達に力を貸そうというのだ」
「力を!?」
「そうだ。嫌か」
「嫌かも何もいきなり出て来て言われても何て言っていいかわからないでしょーーーが」
「HAHAHA,アスカは心配性ですね」
 ここでジャックがアスカをそう笑い飛ばした。
「じゃあどうすればいいと思ってるのよ、あんたは」
「ここは快くその申し出を受け入れるべきデーーーーーース。人の好意は素直に受け取りましょう」
「こんな胡散臭い連中の!?」
「おい、そりゃないぜ。おいら達はなあ」
「ちゃんとしたそれぞれの国のガンダムファイターだぜ。それを胡散臭いなんて」
 サイシーとジボデーがそれに突っ込みを入れる。だがアスカはそれでも言った。
「形はいいわよ。とりあえず」
 まずはそれぞれのガンダムの形は無視することにした。見れば海賊に似たものやナポレオンに似た帽子を被ったものまである。さしものアスカもそれには突っ込む気にはなれなかった。
「けれどそのシャッフル同盟って何なのよ。初耳よ」
「昔から世界を守ってきた戦士達だ。れっきとしたな」
 ドモンが答えた。
「これ以上はない程胡散臭く聞こえるのだけど」
「それが嘘じゃないことを今から見せよう。行くぞ、皆!」
「おう!」
 他の四人がドモンの言葉に頷く。そして一斉に動いた。
「使徒の好きにはさせん!」
「あ、ちょっと待ちなさいよ!それはあたしの獲物よ!」
 アスカが止めるより先に彼等は動いていた。そして第三使徒サキエルに突進していた。
「ハアアッ!」
 まずはドモンが拳を繰り出す。そして使徒のATフィールドを何なく貫いた。
「一撃で貫くなんて」
 シンジはそれを見て驚きの声をあげた。
「あの人、凄いよ」
「フン、あれ位誰だってできるわよ」
 だがアスカはそれを見ても強がっていた。
「あたしよりずっと弱いじゃない」
「そうかなあ」
 ドモンは使徒を押していた。そして他の四機もそれぞれ使徒に向かっていた。ジボデーがシャムシェル、サイシーがマトリエル、ジョルジュがバルディエル、そしてアルゴがゼルエルに立ち向かう。彼等はそれぞれの攻撃を使徒達に対して攻撃を仕掛けていた。
「喰らいなっ!」
 ガンダムマックスターの攻撃を受けシャムシェルが大きく後ろに飛ぶ。ドモンの攻撃に勝るとも劣らない威力であった。
「ハイハイハイハイハイハイッ!」
 ドラゴンガンダムの蹴りを続け様に放たれる。マトリエルは為す術もなかった。
「これはどうですっ!」
 ガンダムローズの剣裁きはまるで疾風の様であった。それでバルディエルを切り裂く。
「うおおっ!」
 ボルトガンダムのハンマーがゼルエルを打つ。さしもの使徒達も彼等の攻撃の前に為す術もなかった。
「止めだあっ!」
 五人は一斉に攻撃を放った。
「ゴッドスラッシュタイフーーーーーン!」
「バーニングパンチ!」
「フェイロンフラッグ!」
「ローゼススクリーマー!」
「ガイアクラッシャー!」
 それで止めであった。使徒達は結局為す術もないまま彼等に倒されてしまったのであった。
「使徒をあっという間に・・・・・・」
「何て強さだ」
「これでわかっただろう」
 ドモンは爆発する使徒を背にしてロンド=ベルの面々に対して言った。
「俺達が味方だということがな」
「何か強引な説明だな」
 洸はそれを見て少し呆れたような声で答えた。
「他にどうやって説明しろというんだ?」
「いや」
 ドモンの言葉に首を振る。
「そう言われるとないけれど」
「そういうことだ。では今から俺達もロンド=ベルに参加させてもらうぞ。いいな」
「了解」
「まあ新しい仲間が入るのはいいけれど」
 ここでアスカが突っ込みを入れた。
「何だ?」
「まだ使徒がいるんだけれど」
「ムッ!?」
 見れば第五使徒ラミエルと第七使徒イスラフェルがいた。イスラフェルは既に二体に分裂していた。
「両方共厄介なのよ」
 アスカはエヴァでその使徒達を指差しながらドモンに対して言う。
「どうするのよ」
「知れたこと」
 ドモンはそれに対して即答した。
「倒すまで。他に何がある」
「・・・・・・聞いたあたしが馬鹿だったわ」
 これにはアスカも呆れてしまった。
「あいつ等が何をして来るか知らないみたいね」
「フン、何をしてこようが俺のこのゴッドガンダムは倒せはしない」
「だといいけれど」
 ここでラミエルが攻撃を放ってきた。ゴッドガンダムがその前に出る。
「この程度っ!」
「まさか!」
 それを受け止めようとする。これを見たロンド=ベルのメンバーは流石に驚きの声をあげた。だがそれを受け止めることはできなかった。
「ドモン、今からあまり楽しむでない!」
 ラミエルの光線を何かが打ち払った。そしてその前に一人の老人が姿を現わした。
「今度は何だ!?」
「師匠!」
 ドモンはその老人の姿を認めて叫んだ。見れば彼の前に拳法着を着、長い白髪を束ねた老人がいた。
「師匠!?」
「如何にも」
 その老人はロンド=ベルの面々に対して言った。腕を組みビルの上に立っている。
「我が名はマスターアジア。流派東方不敗の伝承者にして先代シャッフル同盟のキング=オブ=ハート」
「要するにドモンのお師匠さんってことか」
「一言で言うとそうなる」
 勝平の質問に答える。
「以後見知っておくことを願う。よいかな」
「それはわかったけれど」
「一つ御聞きしたいことがあるのですけれど」
「何かな」
 宇宙太と惠子の質問に顔を向ける。
「今何をしたんですか?」
「今!?」
「はい。何か使徒の光線を布か何かで弾き返したように見えるんですけれど気のせいですよね」
「そんなこと・・・・・・できないですよね」
「ふふふ」
 マスターアジアはその質問に対して不敵に笑った。
「おい、あの爺さん笑ってるぞ」
 勝平がそれを見て言う。
「まさか・・・・・・」
「その通り!」
 そしてマスターアジアはそれを認めた。
「今あの使徒の攻撃はわしが払った。この手の布でな」
「な・・・・・・」
 それを聞いたミサトの顔が大きく崩れた。
「綾波やシンジ君があんなに苦労したのを布で・・・・・・」
「ちょっとお、そんなことできる筈ないでしょうが!」
 アスカがそれを聞いて激昂した。
「一体どうやったら生身の人間が使徒の攻撃を防ぐことができるっていうのよ!」
「どうやら東方不敗の凄さがわかっておらんようだな」
 だが彼はアスカのその言葉を聞いても余裕を崩さなかった。
「ではそこでゆうるりと見ておるがいい。ふふふふふ」
「今度は何をするつもりなのよ」
「知れたこと。今からあの使徒達を屠ってくれよう」
「まさか素手で!?」
「そんなことできる筈が!」
「まあ見ておるがいい」
 シンジの制止も無駄であった。
「東方不敗の力をな」
 そしてまずはラミエルに向かって突進する。そこにまた光線が襲い掛かる。
「甘いわあっ!」
 それを跳躍でかわす。そして宙に跳んだ。
「未熟未熟未熟っ!」
 間合いに入ると攻撃を繰り出す。連続で蹴りを繰り出した。
「なっ・・・・・・!」
 それを見てさしものブライトも驚きの声をあげた。
「ちょっとお、何なのよあれ!」
 アスカは最早半分ヒステリー状態であった。目の前で起こっていることをどうしても認めたくはないようであった。
「ははははははははははははっ!」
「素手でATフィールド破壊するってどういうことよ!」
「だからそれだけの威力があるってことだろ」
 シンジがそれに答える。
「そんなこたあどうだっていいのよ!」
「どうだってええのなら構わへんのとちゃうか?」
「あんた達、今目の前で起こっていること見て何とも思わないの!?」
「ううん・・・・・・と」
 それにシンジが答える。
「格好いいかなあ」
「人間じゃないとか化け物とかそういう言葉でしょうがこの場合!」
「まあアスカ君、落ち着いて」
 騒ぐアスカを万丈が嗜める。
「万丈さん」
「まあ世の中には色んな人がいるからね」
「そういう問題かなあ」
「まあ元気なお爺ちゃんっていうところかしら」
「そうそう。まあ確かに驚きだけれど」
 ゴーショーグンチームはこんな時でも軽口を忘れなかった。だがやはりそんな彼等もいささか驚きは隠せなかった。
「元気どころじゃないと思うけれど」
「けれど今実際に使徒を押しているよ」
「・・・・・・・・・」
 認めたくはないが認めるしかなかった。マスターアジアは実際に使徒を押しているのだ。そして遂には止めの一撃を放った。
「甘いわあっ!」
 そしてラミエルは爆発した。彼は何と素手で使徒を一体粉砕してしまったのである。
「何とまあ」
 皆それを見て呆気にとられたままであった。彼は爆発を前にして立っていた。
 だがそこにイスラフェルが来る。二体一組になってやって来た。
「フン」
 だが彼はそれを前にしてもやはり余裕であった。ニイイ、と不敵な笑みを漏らした。
「いでよ、クーロンガンダム!」
「クーロンガンダム!?」
「師匠のガンダムだ」
 ドモンがロンド=ベルの面々に対してマスターアジアに代わって答えた。
「ネオホンコンのモビルファイターだ」
「ネオホンコンの」
 それを聞いて眉を少し顰める者も中にはいた。
「確か今の国家元首はウォン=ユンファだったな」
「そうだが。それがどうかしたのか」
「いや」
 リーが首を横に振って答えた。
「何でもない。気にしないでくれ」
「そうか、わかった」
 彼等が話をしている間にマスターアジアはガンダムに乗り込んでいた。鎧に身を包んだガンダムであった。
「フフフフフフフ」
「今度は何をしようってのよ」
 アスカは観念した顔でそれを見守っていた。
「こうなったらヤケよ、最後まで見てやるわ」
「アスカも意地っ張りだな」
 甲児がそこに突っ込みを入れる。だがいつものカウンターはなかった。さしものアスカもマスターアジアを前にしてはそれは不可能であった。
「行くぞ小童共!」
 そのままイスラフェルに踊り込もうとする。だがそこにドモンが来た。
「師匠!」
「ドモン!」
 彼等は互いの顔を見て笑みを浮かべ合った。
「あれをやるか」
「はい!」
 ドモンは答えた。そしてマスターアジアがドモンの前に来た。
「行くぞ、ドモン!」
「はい!」
 彼等はそれぞれ身構えた。そして攻撃に入る。
「超級覇王・・・・・・」
「電影弾−−−−−−−−-ッ!」
「何ッ!」
「今度はっ!」
 ロンド=ベルのメンバーはまた度肝を抜かされた。何とマスターが巨大な気となったのである。顔だけ出し、その身体を台風の如き気が覆っていたのだ。
 ドモンはそのマスターアジアを放った。そして彼はそのまま二体の使徒に襲い掛かる。
 一瞬であった。一瞬で二体の使徒は消え去った。あまりにも激しい攻撃であった。
「また一撃で・・・・・・」
「何とまあ」
 エルとルーが呆然とした声をあげた。見ればもう使徒達は一体も残ってはいなかった。シャッフル同盟、そしてマスターアジアによる完全勝利であった。結局ロンド=ベルは殆ど動かないまま戦いは終わった。
「あの」
 ブライトが一同を代表してマスターアジアに声をかける。
「東方不敗マスターアジアさんでしたね」
「如何にも」
 彼はその言葉に対して頷いた。
「後は我が弟子とその者達に聞くがいい」
 だが彼はブライトに言われる前にシャッフル同盟に顔を向けてそう述べた。
「わしは少し用があってな。これで失礼させてもらう」
「師匠、どちらへ」
「香港だ」
 彼は答えた。
「香港で待っておる。よいな」
「わかりました」
「それではさらばだ。風雲再起!」
 今度は白い馬のモビルファイターが姿を現わした。見ればそれには白馬が乗っていた。
 クーロンガンダムはそれに乗った。騎馬の姿でロンド=ベルに顔を向けた。
「また会おう。さらばだ!」
 空を駆った。そしてそのまま空へと消えていった。
「香港か」
「それにしてもまた派手な退場の仕方ね。それまでも充分に派手だったけれど」
 シンジとアスカがそれぞれ呟く。それが終わってからロンド=ベルは集結した。そして今後のことについて話し合うことになった。
「今後のことだが」
 まずはブライトが口を開く。
「さっきあのマスターアジア氏が香港で待っていると言っていたが」
「香港に何かあるんですか?」
「それはわからない。だが何かあると思った方がいいな」
「はい」
「それでだ諸君」
 ここで大文字が話に入ってきた。
「今ニュースが入ってきた。ティターンズとギガノスが地球に降下を開始したらしい」
「彼等が」
「うむ。前の大戦の時と同じくな。そして東ヨーロッパにオーラバトラーの大軍が姿を現わしたらしい。オーラシップのようなものも三隻いるらしい」
「ドレイクか」
 ショウがそれを聞いて呟いた。
「おそらくな。彼等は早速オデッサの辺りを占拠したらしい。あの辺りの連邦軍は今黒海を渡って撤退中だ」
「まずいですね」
 ブライトはそれを聞いて顔を顰めさせた。
「あの辺りは資源の宝庫ですから。彼等に押さえられるのは」
「その通りだ」
 モニターにいかめしい顔立ちの男が出て来た。
「御父様」
 ユリカがその顔を認めて声をあげた。
「元気してるう?」
「おお、ユリカ」
 その男はユリカの姿を認めるとその顔を急に綻ばせた。彼はユリカの父ミスマル=ゲンイチロウである。連邦軍の重鎮として知られている。
「元気にしているな。それが何よりだ」
「元気ですよお。アキトも一緒ですし」
「うむ」
 だが彼はそれを聞くと少し不機嫌になった。
「まあそれはいいとしよう。ブライト大佐」
「はい」
「今後の君達のことだが頼みたいことがある」
「何でしょうか」
「そのオデッサのことだ。悪いことが重なりあそこにティターンズの主力も降下しているのだ」
「ティターンズもですか」
「うむ。彼等がバイストンウェルの者達と衝突してくれればそれに越したことはないのだが」
「手を結ぶ可能性もある」
「そうだ。彼等は互いに孤立している。手を結ぶ可能性は大いにある」
「そうですね。それは充分考えられます」
 ティターンズは先の戦いの後覇権の掌握に失敗しセダンの門に逃れていた。地球圏においては孤立し連邦政府から見れば完全に叛乱軍となっていた。そしてドレイク達は異邦人である。やはり彼等も孤立しているのである。
「便宜的とはいえ手を組む可能性もある。そうなれば厄介なことになる」
「それだけは阻止しなくてはなりません。ただ」
「ただ、何かね」
「ギガノスのことですが」
「それなら心配はない」
 ミスマルは厳しい顔のままそう述べた。
「実は彼等もそのオデッサに近い場所に展開していてな」
「近い場所」
「中央アジアだ。何でもグン=ジェム隊という先発部隊にマイヨ=プラート大尉を指揮官とする精鋭部隊が合流したらしい」
「またギガノスの鷹か」
 ケーンがそれを聞いて声をあげた。
「知っているか」
「知っているも何も今まで何度も俺達とやり合ってきたからな」
 ケーンはそう答えた。
「そこにいるなら好都合だ。今度こそ叩き斬ってやるぜ」
 そういきまく。だがリンダはそれを聞いて暗い顔をしていた。
「君の名は何というのかね」
 ミスマルはそれを興味深げに聞いていたがやがてケーンに対してそう問うた。
「俺ですか?」
「そうだ。よかったら教えてくれ」
「ケーン=ワカバ。階級は准尉です」
「ワカバ准尉か」
「はい」
「もしかしてオースチン参謀の御子息か」
「親父を知っているんですか」
 それを聞いたケーンの顔がみるみるうちに不機嫌なものとなっていく。
「一応はな。今はインド洋方面にいるが。かっては私の同僚だったこともある」
「そうだったのですか。今はインド洋に」
「うむ。元気にしておられるぞ。機会があったら会いにいくといい。御父上も喜ばれるぞ」
「生憎そんな気はさらさらないんで」
 ケーンは顔を顰めてそう述べた。
「俺はあいつだけは許さないんで」
「ううむ、いかんな」
 ミスマルはそれを聞いていかめしい顔をさらにいかめしくさせた。
「親は大切にしなければ。御父上がそれを聞かれたら悲しまれるぞ」
「あいつはそんなタマじゃありませんよ」
 ケーンはまだ言った。
「仕事のことしか頭にないんだから。どうせならギガノスにでも・・・・・・」
「ケーン准尉」
 だがそんな彼をベンが制止した。
「それ以上は。それよりも今は今後の作戦のことを御考え下さい」
「チェッ、わかったよ」
 ケーンは舌打ちしながらもそれに従った。
「それでだ」
 ミスマルは言葉を続ける。
「確か君はメタルアーマーに乗っていたな」
「ええ」
 今度は素直に答えた。
「なら話が早い。まずは君達には重慶に行ってもらいたい」
「重慶にですか」
「そうだ。そこで量産型メタルアーマーの開発を行っていてな。君達にもそれぞれ貰い受けて欲しいのだ」
「というと俺達にもピッカピカの新型が!?」
「そういうことだ」
 ライトにそう答える。
「というかこれで軍ともおさらば・・・・・・。うう」
「何か言ったかね」
「え、いや」
 タップは慌てて失言を引っ込めた。
「何でもないです」
「だったらいいがな。さて」
 まだ話は続いた。
「香港から入ってくれ。あちらのウォン=ユンファ主席が君達に話したいことがあるそうでな」
「彼が」
「そうだ。頼めるか」
「ええ。こちらも香港に行きたいと思っておりましたので。好都合です」
「それならばよかった。ではそれも頼むぞ」
「はい。それではこれより我々は重慶及びオデッサに向かいます」
「頼む。我々もいずれオデッサに関しては反撃に移りたい。その時は頼むぞ」
「はい」
 こうしてロンド=ベルは日本を離れ大陸に向かうことになった。その先にはまた新たな戦雲が広がっていた。


第二十一話    完


                                     2005・5・7