第八話           超電磁の力
 厚木においてダンクーガと合流した大空魔竜隊はビッグファルコンに向かっていた。そこでコンバトラーX及びボルテスXと合流する為である。そしてそれは順調に進んでいた。だがこれを快く思わない者達もいた。
「恐竜帝国も敗れたようだな」
 地下深く、岩で覆われた暗い一室に設けられた人骨の玉座においてククルはイキマ達と話していた。篝火が彼等を照らし出している。
「はい、そのようで」
 それにミマシが答える。
「その結果奴等はダンクーガと合流しました」
「さらに戦力を増強したということか」
「残念ながら」
 不機嫌を露わにするククルにもそう答えるしかない三人であった。
「そして奴等は今どうしておる」
「既にビッグファルコンに入りました」
「ビッグファルコンにか」
「はい。そこでコンバトラーX及びボルテスXと合流する予定のようです」
「まずいのう」
 ククルはそれを聞いて顔を顰めさせた。
「これ以上奴等に戦力を増強させてはならんぞ」
「それはわかっております。しかし」
「しかし。何じゃ?」
「今我等は謎の敵にこの基地を襲撃されその回復に努めなければなりません。今動くのは」
「できぬというのか」
「はい」
 アマソが答えた。
「これはミケーネ帝国も同じようです」
「あの者達もか」
「彼等の基地もかなり手痛いダメージを受けたようでして」
「まことか」
「どうやら。その結果各地に送り込んでいた将軍達が戻っております。そして暗黒大将軍自ら基地の修復にあたっております故」
「深刻なようじゃな」
「はい。こればかりは如何ともできませぬ」
「よい。わかった」
 ククルはそこまで聞くと三人に対してこう言った。
「下がれ。そなた達は引き続きこの基地の修復に当たれ」
「はい」
「わらわは用事が出来た。暫くここを離れるぞ」
「何処に行かれるのですか」
「少しな」
 答えずに微笑むだけであった。氷の様に冷たい微笑であった。
「すぐ戻る故。安心しておれ」
「わかりました」
 彼等は戸惑いながらもそう答えるしかなかった。
「その間我等にお任せ下さい」
「わかっておる。では頼むぞ」
「ハッ」
 ククルは優美な動作で立ち上がった。そして地下から出るとそのままマガルガを駆り何処かへと姿を消した。彼女が何処に行ったのか誰も知らなかった。

 ビッグファルコンに到着した大空魔竜隊はすぐにこの基地の責任者である剛健太郎博士達と会った。既にコンバトラーもボルテスもそれぞれの機体及びパイロットを集結させていた。
「そうですか、ダンクーガも合流したのですか」
「はい」
 大文字は青い髪と髭の端整で気品のある顔立ちの男にそう答えた。この男こそ剛健太郎であった。本来ならばボアダンの皇帝になるべき男であったが弟に陥れられ牢に入れられた。だが何とか脱出し今ではこの基地の責任者となっている。ボルテスのパイロットのうち三人の父親でもある。
「このところ何かと物騒ですし。戦力を集結させる意味でも」
「そうだったのですか。ではこちらに来た理由も」
「はい。コンバトラーとボルテスの力をお借りしたいのですが。宜しいでしょうか」
 大文字はそう申し出た。剛はそれを聞いてすぐに答えた。
「喜んで」
「おお」
 大文字はそれを聞いて顔を綻ばせた。
「宜しいのですか」
「少なくともボルテスは平和の為にあるのですから」
「それはコンバトラーとて同じですからな」
 剛の側にいる頭の禿た口髭の男がそれに応えた。彼は四谷博士、コンバトラーチームをまとめる人物である。
「喜んで力を貸しますぞ。なあ御前達」
「勿論だぜ、おっちゃん」
 色とりどりの服に身を包んだ五人の少年少女がそれに応えた。黒い髪で赤い服の少年が葵豹馬、長髪で青い服の少年が浪花十三、オレンジの服のがたいのいい少年が西川大作、緑の髪の美しい少女が南原ちずる、そして眼鏡をかけた小柄な少年が北小介であった。彼等がコンバトラーチームであった。
「元々甲児達とは仲間だしな。今回も一緒に戦おうぜ」
「嬉しいこと言ってくれんじゃねえか、豹馬」
 甲児はそれを聞いて目を細めた。
「じゃあまた一緒にやろうぜ」
「おう、こっちこそな」
「隼人、これからまたよろしゅうな」
「ああ」
 十三が隼人にそう言った。隼人もそれに応えた。
「何か十三さんと隼人さんって声が似てますね」
 小介がそれを聞いてふと呟いた。
「全くでごわすな」
 大作がそれに相槌を打った。
「けどそれなら」
 ちずるが口を開いた。
「あたしとめぐみだってそうよ」
「ねえ」
 黒く長い髪を後ろで束ねた黄色い服の凛とした顔の少女がちずるに相槌を打った。彼女は岡めぐみ、ボルテスチームの紅一点である。
「おいどんもよくそう言われますたい」
 緑の服の大男がそれに応えた。剛三兄弟の次男剛大次郎である。
「何か筋肉質の昔の映画タレントにそっくりの声だと」
「兄さんはシュワルツネガーとかスタローンだよね。おいらはどういうわけかエリザベス=テーラーに似てるって言われるんだよな」
 茶色い髪の小柄な少年が言った。三兄弟の末っ子剛日吉である。
「似ていないか、何処か」
 これに青い服のキリっとした顔の男が言った。ボルテスチームの一人峰一平である。
「俺もそう思う」
 それに黒い髪に凛々しい顔の少年が頷いた。三兄弟の長男剛健一である。ボルテスのメインパイロットでもある。尚コンバトラーのメインパイロットは豹馬である。
「何か時々本当にそう聞こえるからな」
「それは俺もよく言われるな」
 宙が二人に対して言った。
「何か左ピッチャーや聖闘士の声そっくりだって。どういうわけか全くわからないんだが」
「その前に宙の声ってアムロ少佐に似てるよなあ」
「ああ、そっくりだぜ」
 忍と豹馬がヒソヒソとそういう話をしていた。
「まあそれはいいとしよう。ところでだ」
「はい」
 大文字は話を戻した。
「どうやら彼等のことは私より君達の方がよく知っているようだな」
「ええ、それはまあ」
「一緒に戦った中ですからね」
 甲児や忍達はそれに答えた。
「なら心配はいらないな。剛博士」
「はい」
 剛に顔を戻した。
「宜しいでしょうか。どうやら話は我々がするより彼等がした方が早いようですが」
「そのようですな。どうやら我々が出る幕はないようです」
 彼も苦笑しながらそう答えた。
「そでれは決まりですな。彼等のことはお任せ下さい」
「はい。こちらこそ彼等の力を平和の為に役立てて下さい」
「わかりました」
「少なくとも三輪長官に預けるよりはましですからな」
 ここで四谷博士が言った。
「四谷博士、それは」
 これには大文字も剛も少し引いた。
「いや、おっちゃんの言う通りだぜ」
 しかしここで豹馬が四谷に同意した。
「あんなのの下じゃやってられねえよ」
「それだけは豹馬に同意やな」
 十三もであった。
「わいかてあんなやばいおっさんの下ではやりたないで。どんな命令されるかわかったもんやないからな」
「そうそう、何かといえば非国民だからね」
 雅人が相槌を打つ。
「一体何であんなのが長官になったんだか。常識じゃ考えられないよ」
「沙羅が言ってもねえ」
「貴女だって相当無茶やってるじゃない」
 ちずるとめぐみが彼女に突っ込みを入れた。だが沙羅はその程度では怯まなかった。
「あれは別格よ。普通考えられないでしょ。あんなのをトップに置くなんて」
「連邦軍環太平洋区司令官だからな。地球の約半分があのおっさんの手の中にあるんだよな」
 健一も眉を顰めさせていた。
「連邦政府は何であんなとんでもない奴を長官にしたんだ?岡長官でもよかった筈だ」
「隼人、それは言い過ぎだぞ」
 竜馬が彼をたしなめた。だが一平がそんな彼に対して言った。
「いや、言い過ぎじゃない。あいつは本当にとんでもないことを次々に平気でやる。この前宇宙に展開するロンド=ベルに何て命令したか知っているか」
「いや」
「月を核攻撃しろと言ったんだ」
「核攻撃!?それは本当か」 
 普段は冷静な鉄也もそれを聞いて驚きの声をあげた。
「ああ、本当だ。流石にそれはブレックス准将に止められたが」
「当然だな」
 一同それを聞いて胸を撫で下ろした。
「大体そんな命令する方が異常だぜ。確かに月にはギガノスがいるけれどよ」
「それでも一般市民を巻き添えにしていいってもんじゃねえだわさ。おいらだってそんな無茶はしないわ」
「確かにな。ボスはそれだけはしねえ」
 甲児はボスの言葉を聞いてそう言った。
「大体ボロットには核なんてないだわさ」
「普通はないわよ、そんな物騒なもの」
「そうね。私も鉄也も核を使ったことはないわ」
 さやかとジュンもその話を聞いて呆れていた。
「それにしてもつくづくとんでもないおっさんだな、あのおっさんは」
「ああ」
 健一がそれに頷いた。
「他の管轄にまで平気で口出しするしな。当然ここにまで口を出して来る」
「私がボルテスを大空魔竜に派遣するのに同意したのはそこにも理由がある」
 ここで剛が言った。
「三輪長官の介入を防ぐ為だったのですか」
「はい」
 大文字にそう答えた。
「俺達もかなり色々言われたからなあ」
 サンシローがそれを聞いてぼやいた。
「だが命令に従わなくては何も出来ないからな。それは仕方ない」
「リーの言う通りだ」
 ピートの考えはやはりかって軍人だっただけのことはあった。
「サンシロー、御前は何かと無茶が過ぎるんだ。それはわきまえるんだ」
「ちぇっ、また小言かよ」
「皆サンシローさんを心配してくれているんですよ」
 だがここでブンタがすかさずフォローを入れる。
「まあ何かあったら俺が助けてやるからよ」
「ヤマガタケさんが一番問題かも」
 ミドリは誰にも聞こえないようにポツリと呟いた。
「血の気が多過ぎるのだろうな、あの御仁は」
 サコンはその冷静な観察眼を発揮してそう述べた。
「だからこそああした過激な言動や行動に走るのだ。誰もがああなる可能性はある」
「それでもあの人は極端過ぎるな」
 亮がそれを聞いてこう言った。
「水で頭を冷やしてみたらどうかと思う時があるよな。それか野球でもしてストレスを発散させるか」
「HAHAHA,弁慶は本当にベースボールが好きね」
「そういう兄さんだって。人のこと言えるの?」
「宙さんも野球好きだったわね」
「・・・・・・まあな。さっき話したが変なことも言われるが」
「まあまあ」
 一同何だかんだと言いながら和気藹々としだしていたそれを見て大文字も剛も顔を綻ばせていた。
「早速仲良くやっておりますな」
「どうやらそのようで」
「そのかわり喧嘩も絶えませんがな、ははは」
 四谷は何時の間にかその手に酒を持っていた。
「どうですか、一杯」
「いや、私は」
 大文字はそれをやんわりと断った。
「これから指揮を執らなければなりませんので。お酒は控えさせて頂きます」
「博士は飲み過ぎなんですよ」
「そうでごわすな」
 小介と大作が彼に突っ込みを入れた。
「うちのお父さんは真面目なのにね」
「お母さんも。厳しいですたい」
 日吉と大次郎がそれを見て言う。
「まあそんなことはどうでもいいのじゃ」
 四谷は彼等の突っ込みから逃れる為かあえて大声でそう言った。
「これからうちの小僧共とボルテスチームのお別れ会じゃ。皆パッといくぞ!」
「お酒はなしでね」
「ええい、豹馬、御前はちっとは大人しくせんかい!」
 こんな調子でそのままパーティーに入ろうとした。だがその時であった。基地のサイレンが鳴った。
「ムッ!?」
 その場にいた全ての者がそれにすぐに反応した。
「敵か!?」
「恐竜帝国か!?」
「イエ、違イマス」
 赤いロボット、ロペットがここで出て来た。
「見タコトモナイ敵デス。コレヲ御覧下サイ」
 そう言いながらモニターのスイッチを入れた。そこには奇妙な形をした鳥型のロボットが映っていた。
「何だありゃ」
「見たこともないロボットだな」
 ここにいる誰もがそう言った。
「ミケーネノモノデモ恐竜帝国ノモノデモアリマセン。マシテヤドクターヘルが作ッタモノデモナイヨウデス」
「じゃあ何なんだ」
「次ニコレヲ見テ下サイ」
 映像を切り替えた。そこには巨大な土偶が空に浮かんでいた。
「邪魔大王国!?いや、違うか」
 宙がそれを見て言った。
「ハイ、識別信号ハ明カニ邪魔大王国ノモノデハアリマセンデシタ」
 ロペットは彼にそう答えた。
「じゃあ何だ」
「それがわからないから困ってるんだろうが」
「それもそうだが」
 皆頭を悩ませようとしていた。だがここにはそれより先に動く手合いの方が遥かに多かった。そして彼等は即座にそれに従った。
「うだうだ考えても仕方ねえ。行こうぜ」
 最初にそう言ったのはやはり甲児であった。
「そうだな。敵がいたら倒す、それだけで充分じゃねえか」
 そして士官ながらまだるっこしい思考を一切しない忍がそれに同意した。ここで意外な人物が続いた。
「よし、そうと決まれば全員すぐに出撃だ」
「ピート君」
 大文字がそれを聞いて思わず驚きの声をあげた。
「博士、驚かれることはありませんよ」
 そんな彼に対してサコンがそう言った。
「ピートらしいじゃないですか。敵ならば倒す。それだけです」
「そうだろうか」
「それもピートですよ。それに連中が敵なのは間違いないでしょう」
「確かにな」
「だったら結論は出ていますよ。俺達も行きましょう」
「よし」
 彼はそれを聞いて頷いた。
「では大空魔竜隊出撃だ。パーティーは後でたっぷりとやるぞ」
「そうですね、戦いの後の方が飯が上手い」
「ヤマガタケさん、そう言ってもう食べてるじゃないの」
 ミドリがもうおにぎりを口にしているヤマガタケを呆れた顔で見ていた。
「まあまあ。話は後で。皆さん行きましょう」
 ブンタがそんな彼をフォローする。そして他の者に出撃を急かした。
「よし。すぐに一匹残らずやっつけようぜ」
「それで後は楽しいパーティーだ」
 豹馬と健一が言った。そして皆駆け足でその場を後にした。後には剛と四谷、そして剛の妻である光代の三人だけが残った。見れば気の強そうな顔をした美人である。
「また戦いに行くのか、健一達は」
 剛は出て行った息子達のことを思いながらそう呟いた。
「ええ。けれどそれがあの子達の運命です」
 光代はそれでも気丈にそう言った。その表情の通り気の強い女性であった。
「それはもう貴方もわかっていいることでしょう」
「ああ、それはそうだが」
 だが彼はそれでも思うところがあった。
「しかしそれでもな。あの子達の辛さを思うと」
「けれど誰かが戦いに行かないと。そしてあの子達にはその力があります」
「力か。その為にハイネルも。今もこの宇宙の何処かで戦っているのだろうな」
 ここで彼はもう一人の誇り高い息子のことを思った。
「息子達よ。戦うのだ。そして」
 彼は言葉を続けた。
「地球の、宇宙の平和を守ってくれ。それが地球とボワダンの血を引く御前達の務めだ」
 そして彼等は戦場に目をやった。既にそこでは戦闘がはじまっていた。
「行くぜ、皆!」
「おう!」
 コンバトラーもボルテスも既に合体していた。そして彼等はそのはじめて見るロボットに向かっていた。
 コンバトラーとボルテスは並んで敵に向かう。まずはボルテスがバズーカを出した。
「ボルテスバズーカ!」
 そしてそれで敵を撃った。まずは一機撃墜した。
 次はコンバトラーであった。敵に近付くと二本の槍を出した。
「ツインランサァーーーーーーッ!」
 豹馬が叫ぶ。そしてそれで敵を切り裂いた。それにより敵を倒した。
「ふむ、腕は落ちておらんようですな」
 四谷はそれを見て安心したように笑った。
「そうでうな。健一も。やはり戦いのない間トレーニングを続けさせた介がありました」
 剛もそれを見て答えた。
「ですが油断はなりませんな。わしはどうもあいつが気にかかるのです」
 四谷はそう言いながら敵の後方にいる巨大な土偶のメカを指差した。
「あれが一体何をするかですな、問題は」
「はい」
 剛も同じ考えであった。
「どうもあれは敵の母艦のようですが」
「それだけではないでしょうね」
 光代も口を開いた。
「装備もあるようですし。何より」
「何より?」
「戦いだけを求めているようではないようです。見て下さい」
「!?」
 二人はその言葉を受けその土偶に目を集中させた。見れば住宅地区に向かっている。
「何をするつもりじゃ!?」
「まさか!」
 剛はそれを見て思わず叫んだ。そして慌てて大空魔竜隊に通信を出した。
「皆、聞いてくれ!」
「父さん、どうしたんですか!?」
「おっちゃんも。何があったんだい?」
 健一と豹馬がすぐにそれに応えた。
「あの土偶を見ろ!とんでもないことをするつもりだぞ!」
「!?土偶!?」
 四谷が彼等にそう叫んだ。それを受けて皆土偶に顔を向けた。
「なっ!」
 皆それを見て思わず声をあげた。何とその土偶は住宅地区に攻撃を仕掛けようとしていたのだ。既にミサイルを放っている。だがそれは幸いにして外れ海に落ちた。
「腕は悪いようだわさ」
「ボス、呑気なこと言ってる場合じゃねえぞ!」
 甲児がボスに対して言った。
「そうよ。このままだと関係ない人にまで被害が出るわよ!」
 さやかも叫んだ。彼等のうち何人かが土偶に向かおうとする。しかしその前に敵が立ちはだかった。
「クッ!」
「どきやがれ!」
 ゲッターとダンクーガが斧と剣で彼等を両断し大空魔竜がその間に突っ込む。だが敵はさらに姿を現わし彼等の行く手を阻む。
「クソッ、キリがねえぜこりゃ」
「まずいぞ、このままでは」
 豹馬も健一も焦っていた。何とか土偶に向かおうとするが敵に阻まれ進むことができないのだ。その間に土偶は住宅地区にさらなる攻撃を仕掛けようとしていた。
「まずいぞ、このままでは」
「攻撃はとても届かない。どうしようもないか・・・・・・」
「諦めるにはまだ早い」
 だがここで一人の男が動いた。
「ムッ!?」
 皆そちらに顔を向けた。そこにはゼンガーの乗るグルンガストがいた。
「俺が行く。皆はここで敵を頼む」
「ゼンガー」
 彼等はそれを受けてその名を呼んだ。
「馬鹿言え。あんなに離れてるんだぞ。間に合う筈がない」
「それに一機であんなデカブツに向かうってのか。無茶するんじゃねえ」
「無理は承知のこと」
 だがゼンガーは他の者に対して落ち着いてそう答えた。
「それに俺のグルンガストにはこれがある」
 そう言うと機体を変形させた。そして航空機の形態になった。
「なっ」
「では行って来る。後ろを頼むぞ」
 そう言うと土偶に向かった。敵を振り切り一直線に向かう。
「我が名はゼンガー=ゾンバルト」
 目の前で今にも住宅地区に攻撃を仕掛けようとする土偶に向かって呟いた。
「悪を絶つ剣なり!」
 そしてグルンガストに戻った。そしてその剣で思いきり切りつけた。土偶はそれを受けて動きを停止した。
「ムオッ!?」
 土偶の艦橋から声がした。
「誰じゃ、わしの楽しみの邪魔をしたのは」
「俺だ」
 ゼンガーはその声に対して答えた。
「力を持たぬ罪のない者達を傷つけるのは許さん。俺が倒してやろう」
「フォフォフォ、面白いことを言う」
 声は低い男のものであった。無邪気そうではあったがそこにはえも言われぬ残忍さがこもっていた。
「貴様一人で何が出来るというのじゃ」
「悪を討つことが出来る」
 ゼンガーは怖れることなくそう答えた。
「もう一撃、行くぞ!」
「フン、返り討ちにしておくれるわ!」
 土偶はミサイルを放った。しかしグルンガストはそれを切り払った。
「ムオッ!」
「この程度の攻撃が示現流に通用するか」
 ゼンガーは言った。
「そしてこれが今の攻撃への返答だ」
 グルンガストは剣を振り被った。そしてそれを大上段に振り下ろす。
「死ねい、邪なる者共よ!」
 それで両断せんとした。だがそれでも土偶は空に浮かんでいた。かなりのダメージを負いながらもそれでも生きていた。
「まだ生きているか」
「グググ、甘く見てもらっては困るのう」
 中にいる男も何とか生きているようであった。
「この程度でバンドックを沈められると思うなよ」
「バンドック!?」
「フォフォフォ、貴様が知らんでもよいことじゃ」
 男はそう答えた。そしてグルンガストと距離を開けた。
「さらばじゃ。ここは貴様の勝ちにしておいてやるわ」
「待て」
 ゼンガーは追おうとする。だがその前に敵が立ちはだかった。
「ムッ」
 そちらの相手をするしかなかった。その間に土偶は何処かへ姿を消した。そしてゼンガー達が敵を全て倒し終え戦いは終った。
「行ったか」 
 健一は大空魔竜の側に集まりながら周りに敵がいなくなったのを見て呟いた。
「何だったんだ、あいつ等は」
「それはわからん。とりあえず今サコンが敵の破片を調べているが」
 甲児にリーが答えた。
「詳しいことはそれが終ってからだな」
「そうか。それまではとりあえず休息だな。ビッグファルコンに戻ろう」
「そうだな。パーティーもあるしな」
 健一に促され皆ビッグファルコンに戻った。そしてそこでパーティーを開いた後大空魔竜に戻った。そしてそこでサコンの説明を受けた。
「さっき俺達が戦った奴等だが」
 サコンの説明がはじまった。
「今まで戦ったどの敵のものとも違うな。かといってバルマー帝国のものでもない」
「じゃあ何なんだ?」
「どうも真空状態の場所を通ってきたようだがな。調べてみると」
「真空・・・・・・宇宙か」
「おそらくな。それを考えると宇宙から来た奴等らしい」
「宇宙怪獣でもないんだな」
「それはない」
 サコンは答えた。
「奴等は曲がりなりにも生物だ。しかしこれは機械だ。生物も乗ってはいないようだな」
「そうか。道理で動きが単調だった筈だ」
 鉄也がそれを聞いて呟いた。
「そういえばそうね。動き自体は単調だったわ」
 ジュンもそれに同意した。
「数だけで大した強さじゃなかっただわさ。陸にいる奴もボロットで簡単にやっつけられただわさ」
「ボス、久し振りに戦えたでやんすね」
「よかったですね」
 二人の子分がそれに合わせた。彼等もここにいたのである。
「じゃああの土偶が遠隔操作でもしていたのか」
「それかAIだな。しかしそれもあまり性能はよくなさそうだ」
 サコンは亮の問いに答えた。
「どうも質より量で押すやり方らしいな」
「そうなのか」
 宙がそれを聞いて頷いた。
「だが奴等のやり方で一つ他の連中とは違うところがあるな」
「ああ」
 これは皆よくわかっていた。
「一般市民を狙っていた。あんなやり方は他の勢力にはない」
「恐竜帝国も邪魔大王国もまずは軍事基地を狙うからな。これはミケーネも同じだ」
「とすると奴等は一般市民をも優先的に狙っているということか。とんでもない奴等だな」
「ああ。だがまだまだ情報が足りない」
 サコンは意見をまとめるようにして言った。
「まだ敵の名すらわかってはいない。全ては」
「これからということか」
「そうだな。だが一つだけは言える」
「ああ」
 皆また頷いた。
「厄介な敵が一つ増えたということだ。そして俺達はより多くの仲間が必要だ」
「そうだな」
 こうして彼等の次の行く先が決定した。今度はチバシティのムートロン研究所であった。そこでライディーン及びコープランダー隊と合流することにした。大文字は早速彼等に連絡をとった。すると研究所の方で快諾してくれた。これでライディーンの合流も決定した。
「それでは」
「はい」
 次の日の朝大空魔竜隊はすぐにチバシティに向かった。そしてそれは次なる戦いはじまりもであった。それでも彼等は行かなければならなかった。それが彼等の務めであったからだ。


第八話    完



                               2005・2・15