第九話      宇宙からの来訪者
 ドラグナーチームとの合流を決定したラー=カイラムはその宙域に向けて航行を続けていた。その間さして目立ったことはなかった。
「ティターンズやアクシズで動きはないか」
 ブライトはラー=カイラムの艦橋でトーレスに問うた。
「今のところは何もありませんね」
 彼は通信やレーダーを見ながらそれに答えた。
「やはりシャングリラやフロンティアでの戦いはほんの先遣部隊だったようです。どちらも主力はゼダン及びアクシズから動かしてはおりません」
「そうか、それは何よりだ」
 ブライトはそれを聞いて頷いた。
「だがもう一つ勢力がいるからな」
「ギガノスですね」
「そうだ。彼等が月にいることは大きいな」
「まともにこちらに圧力をかけていきていますからね。彼等も今のところは静かですが」
「だがギルトール元帥は連邦軍でも切れ者で知られた人物だ。油断はできないぞ」
「それはわかっております。ただ一つわからないことがあるんですよ」
「わからないこと?何だ」
 ブライトはそれを受けて問うた。
「いえね、ギルトール将軍っていえば連邦軍でも良識派だったじゃないですか」
「ああ」
 実際にそれで有名であった。有能であり人望も篤かった。連邦軍においては一年戦争のレビル大将に匹敵する人気を誇っていた。岡長官と並んで連邦軍を支える逸材の一人であったのだ。
「そんな人が反乱を起こすなんてどういうことでしょうね」
「真面目過ぎたのだろうな」
 ブライトはそれに対してこう答えた。
「あの人は優秀なだけではなかった。理想も持っていた」
「はあ」
「だがそれが暴走に繋がった。理想に燃え、正義感を持っているが故に今の連邦を許せなかったのだ」
 よくある話といえばそうなる。それ程連邦の官僚主義、地球至上主義は問題であったのだ。
「ましてや今の連邦軍は」
「艦長、それ以上は」
 ここでサエグサが止めた。
「おっと、そうだったな」
 ブライトはそれを受けて慌てて口を塞いだ。軍人として上層部批判はできないからだ。
「まあ気持ちはわかりますがね」
「ジュドー達なんかもう言いたい放題ですから」
「あいつ等はな。ちょっと勝手が過ぎるが」
「忍達は軍籍なのに言いたい放題ですけれどね」
「あの連中はまた特別だろ」
 トーレスとサエグサはそう話していた。ブライトはそれを聞きながら考え込んでいた。
「艦長、どうしたんですか」
 そんな彼にサエグサが声をかけてきた。
「あ、いや」
 ブライトはそれに応えて顔を上げた。
「いや、今度合流するドラグナーチームだがな」
「何かあったんですか?」
「彼等も本来は軍籍ではないそうなのだ」
「そうなのですか」
「ほんの偶然で乗り込んでそのままパイロットになったらしい。アムロやカミーユと似ているな」
「それでパイロットになるんだから世の中不思議ですよね」
「だがパイロットとしての技量はそれなりにあるらしい。一応将校待遇ということになっている」
「パイロットですからね」
 連邦軍においてはパイロットは将校となっている。責任が伴うからである。
「だが実際は下士官にかなりしごかれているようだがな」
「ははは、軍じゃよくある話ですよ」
「そうそう、軍といえば鬼軍曹ですからね」
 実際に軍隊においては士官より下士官の方が重要視されるのだ。将校で戦争をするわけではない。下士官で戦争をするのである。その為先任下士官ともなればその発言力はかなりのものである。彼等がいなくては軍は成り立たないのだ。
「よくわかったな。その三人を鍛えているのは軍曹だ」
「誰ですか?」
「ベン=ルーニー軍曹だ。知っているか」
「知らないですねえ」
「別の部隊でしょう。ちょっと聞いたことが」
「そうか。部隊では何でも鬼軍曹で名を馳せているそうだがな。その三人をしごきにしごいているらしいぞ」
「それでその三人は言う事を聞いているんですか?」
「甚だ疑問らしい」
「でしょうね」
「うちの小僧達もたいがいなものですから」
 二人はそれを聞いて納得したように頷いた。
「アムロ少佐みたいに素直な人ばかりじゃないからなあ」
「アムロだって最初はどうしようもない奴だったぞ」
 ブライトはそれを聞いて苦笑しながら言った。
「そうだったんですか」
「ああ、一年戦争の頃はな。いじけてばかりいて本当にな。軍人としての意識も全くなかった」
「意外ですね。ロンド=ベルの伝説のエースパイロットが」
「よく喧嘩もしたさ。時には殴り合いになった」
「艦長も若かったんですね」
「そうだな・・・・・・と何を言わせる。私はまだ二十代だぞ」
「あ、これは失礼」
「全く」
 ブライトは年齢のことを話に出され少しムッとした。
「確かに老けているとは言われているがな」
「はあ」
「だがあの頃は私も若かったな。士官学校を出たばかりで」
 そう言いながら昔を懐かしむ目をした。
「何だかんだ言って自分で認めてるんじゃないか?」
「ああ。何かそういうところがアムロ少佐とそっくりだな」
「行動がいつも一緒だったから似るんだろ」
「成程」
 二人はヒソヒソとブライトに聞こえないように話をしていた。ブライトはそんな二人に気付かず昔を思い出していた。
「思えば頼りない艦長だったと思う。だが多くの戦いを乗り越えて私もアムロも変わった」
「とりわけアムロ少佐は」
「そうだな。あそこまで凄い奴になるとは正直思わなかった」
「そうだったんですか」
「連邦の白い流星。今ここにいないのが残念だ」
「確かに。アムロ少佐もいるとグッと楽になるでしょうね。今何処におられるんですか?」
「丁度今ニューガンダムの再調整中だ」
「そうなんですか」
「合流はもう暫く先になりそうだ。まあゆっくり待てばいい」
「そうですね。ところで話は変わりますが」
「何だ」
「火星の話は聞いていますか」
「ああ、何でもバーム星人というのが来ているそうだな」
「ええ。何でも母星が爆発してここまで来たとか。火星に移住を求めているそうですよ」
「そうそう簡単にはいかないだろう。火星には我々も移住を進めている」
「はい。ですから今連邦政府と交渉中です。とりあえずは彼等はここまでの航海に使った宇宙船にいるそうです。何でも小バームとかいうそうです」
「そうなのか。宇宙人といっても困っている相手には手を差し伸べたいな」
「普通はそう考えますよね」
 トーレスはここで少し嫌そうな顔をした。
「ああ。何かあるのか?」
「いえ、三輪長官がね。今回の件で強硬に反対しておられるそうなんです。異星人を太陽系に入れるとは何事だと」
「馬鹿馬鹿しい。じゃあうちのミリアはどうなるんだよ」
 サエグサがそれを聞いてそう言った。
「ミリアやマクロスについてもかなり文句を言っていたらしいぜ、あの人は。周りが止めたらしいが」
「だろうな。周りの者も大変だ」
 サエグサはそれを聞いて妙に納得した。
「火星の方は今交渉が行われている最中らしいな。向こうからは最高指導者であるリオン大元帥という方が自ら出ているらしい」
「へえ、最高指導者御自らからか」
「ああ、でこっちは竜崎博士だ。火星開発の責任者のな」
「あの人なら問題はないな」
 ブライトはそれを聞いて言った。
「落ち着いた理性のある人だ。交渉は順調にいくだろう」
「そうなんですか」
「ああ。だからこそ火星の開発の責任者になったしな」
 ブライトは二人にそう答えた。
「そちらは安心していいな。木星よりも安心できる位だ」
「ああ、木星ですか。あっちはナデシコが活躍したらしいですね」
「ホシノ=ルリ少佐だな。連邦軍で最年少の艦長らしいな」
「そうらしいですね。何でもえらく可愛いとか」
「へえ、そりゃ会ってみたいな、一度」
「止めておいた方がいいと思うがな」
 ブライトは二人にそうクギを刺した。
「何でですか?」
「綺麗な薔薇には棘があるぞ」
「そういえばそうですね」
「うちなんか特に」
「そういうことだ。結城やリューネで懲りているだろう」
「あんなジャジャ馬はもう御免ですよ」
「あとアスカも。何かうちの部隊って問題児ばかりですからね」
「おい、そんなこと言ってるとまた会うぞ」
「うわ、縁起でもねえ」
 トーレスとサエグサはそんな話をしていた。ここで通信が入った。
「こちらアイダホ」
「こちらラー=カイラム。状況はどうか」
「こちらは異常はない。そちらはどうか」
「こちらも異常なし」
「了解。それではパイロットの合流をこれより執り行う。用意はいいか」
「こちらの準備はいい。では予定通り執り行おう」
「了解」
 こうしてパイロットの合流がはじまった。まずは一機のシャトルがラー=カイラムに入った。
「ダグラス中尉とルーニー軍曹が来られました」
「よし。後は問題のドラグナーだな」
「今出撃が確認されました」
 モニターを見れば三機のロボットがいた。それぞれ装備が違う。
「一つは接近戦用、一つは遠距離戦用、一つは偵察用かな」
 それを見たブライトは呟いた。
「その通りです」
 ここで横に来た一人の金髪の男が答えた。もう一人はいかつい顔立ちの男であった。
「はじめまして。ダグラスです。階級は中尉です」
「ベン=ルーニーです。階級は軍曹です」
 二人は敬礼してそれに答えた。
「この艦の艦長ブライト=ノアだ。階級は大佐だ」
 ブライトも返礼して答えた。
「以後宜しくな」
「ハッ」
 二人も返礼した。そしてモニターに目を移した。
「あれがドラグナーです。それぞれの戦闘目的に合わせて作られました」
「見たところ三機が一組になって戦うのに向いているな」
「そうですね。確かに」
 これにはダグラスも同意した。
「ただパイロットはまだまだヒヨッ子ですがね」
「ほう」
「態度も大きいですし。命令違反なんかしょっちゅうですよ。階級だけはいっちょまえですがね」
 ベンがここでこう言った。
「まあおかげでしごきがいがあるというものですよ、ははは」
「何かここまで台詞がピッタリな人も珍しいな」
「ホント。軍曹になる為に生まれてきたような人だな」
 トーレスとサエグサはベンを見てヒソヒソとそう話し合った。
「メタルアーマーはまだ試作の段階でして」
 ダグラスはブライトに説明を行っていた。
「あの三機はその試作機なのです」
「それに今のパイロット達が偶然乗り込んだらしいな」
「はい。しかもパイロット登録させまして。止むを得ず軍歴にしたのです」
「本来なら兵士にするのですが。何しろパイロットということで。仕方なく准尉の階級を暫定的に与えることになりました」
「そういえばロンド=ベルには軍に籍を置いていないパイロットが大勢いますな」
「ああ、その通りだ」
 ブライトはダグラスにそう答えた。
「だが特にこれといって問題は起こっていないがな」
「そうなのですか。ではあいつ等もそうした方がよかったかもな、ベン軍曹」
「同意です。全く奴等ときたら」
「どうやら相当な連中のようだな」
「否定はしません」
 ベンはそれに答えた。
「今までギガノスのメタルアーマーやマスドライバーよりもあいつ等に手を焼いていた程ですから。難民も乗せているというのに」
「アイダホは難民船に偽装しているのだったな」
「はい。実際に難民も乗っております。こちらに協力してくれる技官と学校の先生、あと月から逃れてきた少女ですが」
「また妙な組み合わせだな」
「他の難民は安全な場所で降ろしましたので。三人だけとなりました。その三人もラー=カイラムに来ております」
「そうか」
「三人共軍への協力を希望しておりますが。如何致しましょうか」
「喜んで迎えると伝えてくれ」
 ブライトはダグラスの問いに対してそう答えた。
「どうも昔からそういうことには縁があってな。慣れている」
「そうですか。それなら」
「うむ。三人の名を聞いておきたいのだが」
「リンダ=プラート、ローズ=パテントン、ダイアン=ランスの三人です」
「そうか、わかった。では三人には後で皆に挨拶するように言ってくれ。ドラグナーのパイロットの三人、そして君達と一緒にな」
「ハッ」
「了解しました」
 二人は再び敬礼してそれに答えた。
「まずはドラグナーの収容が終ってからだ。さて、と」
 ここでレーダーに反応があった。
「艦長、レーダーに反応が」
 すぐにトーレスが報告した。
「まさか」
 それを聞いたダグラスとベンの顔が一変した。
「敵か」
「この反応は」
 トーレスはブライトの問いに対してレーダーから目を離さずに答えた。
「間違いありません。数十機程です」
「やはりな。いつもこうした時にこそ来るからな」
 敵と聞いてもブライトの態度は変わらなかった。
「モビルスーツ隊及びバトロイド隊に出撃させろ。すぐにだ」
「わかりました」
 ブライトはすぐに指示を下した。
「ドラグナー達を守れ。いいな」
「はい」
 こうしてすぐにモビルスーツ達の出撃がはじまった。ブライトはその指示を下しながら別の指示を出していた。
「本艦はアイダホの護衛に回る。いいな」
「わかりました」
「アイダホを」
「当然だ」
 ブライトはダグラスとベンの問いにそう答えた。
「アイダホは武装は弱いと聞いている。ならばラー=カイラムで援護するのが当然だ」
「はい」
「心配はいらない。アイダホは必ず守る。安心してくれ」
「わかりました」
 彼等はブライトのその態度にかなり驚いていた。連邦軍の将校には味方を見捨てて逃げる者も多いからだ。三輪に至っては戦えない者は不要とまで言う始末であった。それを考えるとブライトの様に常識のある態度は連邦軍においては常識ではなかったのである。
(この人は信用できる)
 二人はそれを見てそう確信した。そして彼の指示に従い艦橋に残った。ドラグナー達に命令を出す為である。
 その頃三機のドラグナーは敵に囲まれようとしていた。
「ちぇっ、ここでも敵かよ。次から次にときやがって」 
 白いドラグナーに乗る東洋人の青年が不満を爆発させた。彼の名はケーン=ワカバという。元々はコロニーのスクールの落ちこぼれ不良訓練生であったが偶然ドラグナーに乗り込みパイロットとなった。いささか短気で直情的な青年である。
「もてる男は辛いね」
 これに青い両肩に砲を装備したメタルアーマーに乗る黒人の青年が少し茶化しながら答えた。彼はタップ=オセアノ、ケーンと同じスクールの訓練生である。やはり同じ理由でドラグナーに乗り込んでいる。見たところかなりお気楽な青年のようである。
「あの中に女の子がいるとはとても思えないがな」
 そして円盤に似た頭のメタルアーマーに乗る白人の若者が最後にそう言った。彼もやはり訓練生でライト=ニューマンという。先の二人よりは気品があるようである。
「どうせまたあのギガノスの蒼き鷹なんだろうな」
「タップ、あのキザ野郎の名前出すのは止めろ」
 ケーンがすぐにそれに突っ込む。
「けどよお、実際に目の前にいるぜ、ほら」
「おやおや、マギーちゃんもそう言ってるよ」
 ライトがそれを受けて応えた。
「あのお坊ちゃん達も一緒だぜ。どうする?」
「どうするって一つしかねえだろうが」
「ほんじゃ戦いますか、いつも通り」
「俺達も軍人になってきたなあ」
「・・・・・・タップの何処が軍人なんだよ。ラッパーの方がピッタリくるじゃねえか」
「そうそう、俺ってパッパラパーだから・・・・・・ってケーン、何言わせるんだよ」
「自分で言ってるじゃねえか。おい、そんなことよりもう来たぜ。相変わらず動きの速い奴等だ」
「タップ、まずは御前さんの仕事だぜ!ドラグナー2の力見せてくれよ」
「わかってますって。ほいさ」
 ここでタップは両肩の砲で発砲した。これによりまず一機撃墜した。
「よし、行くぜライト!」
「わかってますって!」
 そして他の二機のドラグナーが剣を抜いた。
「俺はここでいつも通りバカスカ撃つからよお」
「ケーンは突っ込め!フォローは俺がする!」
「よし来た!じゃあいつものフォーメーション行くぜ!」
「おう!」
 他の二人がそれに応える。こうして三機は敵に向かって行った。
「素人らしいと聞いて驚いてこっちに向かったけど」
 戦場に到着したモビルスーツ隊の中でキースがポツリと呟いた。
「あの三人かなり強くないか?押しまくってるじゃん」
「それもたった三機で五十機程に向かってるし。相当腕に自信があるのか?」
 コウもそれを見て首を傾げた。
「それか単に無鉄砲なだけか。アムロ少佐でもあんなことはしないぞ」
 バニングが呆れたように言った。それが正解であった。
「まあとにかく彼等を援護しよう。あのままだと危ないしな」
「そうだな。じゃあスカル小隊でまず突っ込むぞ」
「了解」
 フォッカーが通信で他の者に対して言う。皆それに頷く。
「よし、スカル小隊突撃だ!道を開けるぞ!」
「はい!」
 フォッカーの指示に従いバトロイド達が動く。まずはイサムとガルドの乗機が変形してファイターからバトロイドになる。そして
敵に肉弾攻撃を仕掛ける。
「ほらよ!」
「食らえ」
 イサムとアラドのバトロイドの攻撃を受けた敵が吹き飛び爆発する。そしてそこに開いたところにバルキリー達が雪崩れ込む。これで戦線が崩れた。モビルスーツ隊がそこに続く。
「大尉、このままでは!」
 メタルアーマー隊の中央にいる青い三機のメタルアーマーがそのすぐ後ろの紫の機体のパイロットに言った。
「わかっている。バルキリーは私が引き受ける」
 金髪をオールバックにした男が答えた。彼こそギガノス帝国きってのエースパイロット、ギガノスの蒼き鷹ことマイヨ=プラートであった。
「見たところロイ=フォッカー少佐や一条輝少尉もいるな」
「はい」
「相手にとって不足はない。御前達プラクティーズはいつもの三人に向かえ」
「わかりました」
 青い機体に乗る三人の青年将校達がそれに頷いた。
「それでは行きます」
「うむ、頼むぞ」
 マイヨとプラクティーズは別れた。そしてそれぞれの敵に向かった。
「何でえ、ギガノスの蒼き鷹は向こうに行っちまったぜ」
「で、来るのはいつもの三人組か」
「懲りないねえ、御前さん達も」
「馴れなれしく言うな!」
 それを聞いたプラクティーズの面々が怒って応えた。
「我々は貴様等とは違う!」
 黒髪の青年が言う。ウェルナー=フリッツという。
「ギガノスの理想を背負っているのだ!」
 金髪の青年が続く。名をカール=ゲイナーという。
「その通り、我々は選ばれたのだ!」
 そしてオールバックの青年が最後に言った。ダン=クリューガーである。
「貴様等地球の者と一緒にするな!」
 彼等の青い機体は見ればそれぞれタイプが違っていた。ケーン達のそれがそれぞれドラグナー1、2、3のそれぞれのタイプであるのに対して彼等のそれはゲルフと呼ばれるギガノスのメタルアーマーの派生型でゲルフ=マッフ、ヤクト=ゲルフ=マッフ、そしてレビ=ゲルフ=マッフの三タイプであった。なおマイヨの乗っているのはファルゲン=マッフという特別な機体であった。見ればドラグナーにもモビルスーツにも匹敵する火力と機動力があるようである。
「ヘン、何言ってやがる」
 しかしケーンは彼等の言葉を聞いても怯まなかった。
「言ってることがジオンと全然変わらねえじゃねえか」
「何っ、我々を奴等と一緒にするか!」
「だったらどう違うんだよ」
 タップもそう反論した。
「そうそう。御前さん達の主張はあんた達の嫌いなティターンズやネオ=ジオンと全く一緒だぜ。どうして気付かないのかね」
 ギガノスは連邦政府だけでなくティターンズやネオ=ジオンとも敵対関係にあるのだる。彼等は宇宙で互いに抗争を繰り返しているのだ。ライトはそれを知ったうえで彼等を皮肉ったのだ。
「まあナチスとソ連もそうだったし。案外人間ってのは似た者同士だとかえって仲が悪くなるもんかねえ」
「おい、それ位にしておけ」
 ダンが我慢しきれなくなり言う。
「我がギガノスをこれ以上侮辱することは許さんぞ」
「おやおや、言葉に暴力ですか」
「暴力はんた〜〜い」
 タップが茶化す。
「といいつつ御前の手に持っているのは何だよ」
 ケーンがタップのドラグナーの手にあるレーザーソードを指摘する。
「これか?まあ正当防衛ってとこかな」
「ヘッ、よく言うぜ」
「とにかくだ」
 プラクティーズは彼等の軽薄ともとれるやりとりにさらに怒りを増した。
「貴様等に我がギガノス、ギルトール閣下の崇高な意志がわかってたまるか」
「本当にジオンそっくりだな」
「ケーン、それは禁句だぞ」
 ライトは制止しているようで実は彼等を挑発していた。
「今それを見せてやる。今度こそ覚悟しろ!」
「それを言ってもう何回会ったのやら」
「タップ、まだ五回目だ」
「あれ、まだそれだけか。意外と少ないな」
「他はあのギガノスの蒼き鷹だったからな。多く見えるんだよ」
「じゃあお話はここまで。あちらさんもやる気満々だし」
「やりますか」
「おうよ!」
 こうして三対三の戦いがはじまった。互いに一歩も譲らない。それはフォッカー達も同じであった。
「ほお、これが噂に聞くギガノスの鷹か」
 フォッカーはマイヨの乗るファルゲン=マッフの攻撃をかわし嬉しそうに呟いた。
「噂以上の動きだな。これは面白い」
「あれがロイ=フォッカーか」
 それはマイヨも同じであった。
「見事な動きだ。マクロスきってのエースと謳われただけはある」
 彼もまたフォッカーの腕を冷静に見極めていた。
「私の相手はどうやらあの男のようだな」
「おう」
 フォッカーも周りの者に声をかけていた。
「あいつは俺に任せろ。いいな」
「はい」
 皆それに従う。そして両者は互いに睨み合った。
「行くぜ」
「参る!」
 激しい移動を展開しながらドッグファイトに入った。まるで二匹の猛禽が戦う様な凄まじい一騎打ちが幕をあけた。
「くらいなっ!」
「何のっ!」
 フォッカーのバルキリーの攻撃をかわす。そしてミサイルを放つ。だがフォッカーはそのミサイルを巧みにかわした。
「まだまだっ!」
 その間にも戦いは続く。戦局は次第にロンド=ベルに有利になろうとしていた。だがその時異変が起こった。
「ムッ!?」
 レーダーを見ていたトーレスが声をあげた。
「どうした」
「新たな敵です」
 ブライトにそう答える。
「敵!?ギガノスか」
「いえ、違います。これは」
 トーレスは反応を見ながら答える。

「これは・・・・・・」
 そして言う。
「バルマーのものです」
「何だと!」
 ブライトはそれを聞いて思わず叫んだ。そして戦場の左方に謎の敵が姿を現わした。
 そこには数十機の人型のマシンが姿を現わした。見たところそれはバルマーのものではなかった。
「また被占領地の星からのものか!?」
「どうやらそのようですね。キャンベル星やボアダン星のものではないようですが」
「では一体」
 ブライトは首を傾げた。ここでラー=カイラムに通信が入った。
「こちらエルガイムマークU、通信は届いているか」
「エルガイム!?」
 皆それを聞いて首を傾げた。
「新型のモビルスーツか!?」
「聞いたことないぞ」
「ではメタルアーマーか」
「まだ三機しか製造していないのにか。テストタイプを」
 皆口々にそう言い合った。ここでモニターに映像が入った。
「地球の船ですか!?」
 そこに黒い髪の青年が映った。見ればアジア系の顔に近い。
「地球の!?そうだが」
 ブライトはその問いにいささか戸惑ったが冷静にそう答えた。
「君は一体。地球の者ではないのか」
「はい、僕はダバ=マイロード。ペンタゴナの者です」
「ペンタゴナ!?」
「ここから遠くにある星です。実はゼ=バルマリィ帝国の侵略を受けまして」
「やはり」
 これはブライトにも容易に想像がつくことであった。
「今その軍が地球にも来たのです。僕達はここまで逃れてきました」
「君の他にもまだいるのか」
「はい」
 ここで二人の少女が姿を現わした。
「あたしファンネリア=アム。宜しくね」
「ガウ=ハ=レッシィ。宜しく」
 黒髪と赤髪の少女が出て来た。
「あたしはエルガイムに乗ってるの」
「あたしはヌーベルディザート。覚えてくれた?」
「あ、ああ」
 いきなり言われたがブライトはとりあえず彼女達の名と機体のことを頭に入れた。
「それで君達はこれからどうするつもりだい」
「今目の前に出て来た部隊がありますね」
「ああ」
 それこそ左手に現われたバルマーの部隊であった。
「彼等と戦います。それが僕達の仕事ですから」
「仕事か」
「ええ。とりあえず貴方達には危害を加えさせはしないので御安心下さい」
 そう言うと彼等は左手の敵に向かった。見れば銀色の鋭角的なマシンと丸みを帯びたマシン、そして赤いマシンの三体のマシンがいた。
「あれが彼等のマシンか」
「そのようですな」
 ダグラスがそれに応えた。46
「見たところ地球のマシンにも似ているが」
「それに彼等の姿形も。艦長、どうしますか?」
「何をだ」
「彼等をです。流石に三機では辛いでしょうから。援護しますか」
「そうだな」
 ブライトはメタルアーマー達との戦闘を見ながら考えた。
「あちらの状況は最早決定的だな。バルキリーとメタルアーマーの部隊を残して彼等の援護に向かえ。いいな」
「はい」
「モビルスーツはすぐにバルマーの部隊に向かえ。いいな」
「わかりました」
 こうして指示が下された。そしてモビルスーツ隊がバルマーに向かった。
「ムッ」
「何処へ行くつもりだ!」
 プラクティーズはそれを見てすぐに反応した。そして他の機に命令を出そうとする。
「逃がすな、追え!」
「待て」
 だがマイヨがフォッカーとの戦闘を続けながらそれを制止した。
「大尉」
「見たところあれは我々の敵でもあるようだ。バルマーの可能性もある」
「バルマーの」
「そうだ。見たこともないマシンばかりだ。ここは彼等を行かせろ。それに」
「それに」
「今の我々には戦力がない。ここは退く必要もある」
「退く」
「そうだ。周りを見ろ」
 見ればギガノスのメタルアーマーは大きく数を減らしていた。満足に戦える状況にあるのは最早マイヨとプラクティーズの機体だけであった。
「損害が大きい。遺憾だがこれ以上の損害が出た場合撤退するぞ」
「クッ」
「わかりました」
 彼等とて軍人、しかも将校である。引き際は心得ていた。
「よいな。あの三人は何時でも倒せる。退くことも戦いのうちだ」
「了解」
 彼等は次第に戦線を縮小させた。そしてマイヨを中心として一つにまとまりバルキリー及びドラグナーに対抗していた。
 その左手ではバルマーのマシンとダバ達のエルガイムが戦闘に入っていた。
「行けっ!」
 まずダバの乗るエルガイムマークUが巨大なライフルのような重火器を取り出す。そしてそれを敵に向けて放つ。
 巨大な光が彼等を襲った。それにより何機かが炎に包まれ散った。
「あたしも行くよ!」
「あたしもだよ!」
 アムとレッシィもそれぞれ攻撃を加える。右腕に装着したライフルに似たものからビームを放ち敵を撃つ。
 これを受けた敵はいささかビームを弾きながらも貫かれる。そして爆発して果てていく。
「ん、何かおかしいな」
 その様子を見たシーブックが呟いた。
「バルマーの奴等はTフィールドでも着けているのか」
「ビームコートを着けているんだよ」 
 それにダバが答えた。
「ビームコートを」
「そうさ、ヘビーメタルはね。ビームコートが標準装備なのさ。俺達のものにも着いているよ」
「そうなのか、成程」
 シーブックだけでなく他の者もそれを聞いて頷いた。
「そして君達の乗っているマシンはヘビーメタルというのか」
「ああ」
 今度はコウの問いに答えた。
「ペンタゴナで作られているマシンさ。そういうんだよ」
「また強そうな名前だな」
 ジュドーがそれを聞いて呟いた。
「強いか弱いかは戦ってみればわかるさ。だがビームに強いとなると」
「それはそれで戦い方があるよ」
「そういうこと」
 プルとプルツーはシーブックに応えるかのように前に出た。
「こうやってね!」
「行くよ!」
 そしてファンネルを放った。それで前にいたヘビーメタルを数機たちどころに撃墜した。
「バズーカもあるぜ!」
 ビーチャの百式改がバズーカを放つ。エマやフォウもそれに続く。これもかなりの効果がありヘビーメタルを次々と撃墜していく。
「何か地球のマシンもかなり強いね」
 アムがそれを見て言った。
「バルマーを一度は退けただけはあるよ」
 レッシィがそれに相槌を打つ。
「ダバ、こっちも負けちゃいられないぜ」
 ここでダバのエルガイムマークUのコクピットの後ろに乗る男がダバに囁いた。金髪をリーゼントにした若者である。
「キャオ、ダバを急かさないで」
 それを赤い髪の妖精が止めた。何処となくバイストンウェルのフェラリオに似ていた。
「焦ったら駄目だから」
「わかってるさ」
 ダバはその妖精に答えた。
「リリスもキャオもじっとしていてくれよ」
「わかってるわ」
「おう」
 リリスと呼ばれたその妖精は答えた。キャオと呼ばれた青年もである。彼等もまたペンタゴナから来ている。リリスはミラリーと呼ばれるペンタゴナにいる一族である。キャオは本名をミラウー=キャオという。ダバの親友でありメカニック担当でもあるのだ。
「じゃあ行くぞ。どうやら十三人衆はいないようだな」
「珍しいわね」
「あいつ等も何かと忙しいんだろ。まあどうせすぐにギャブレー辺りが出て来るだろうけれどな」
「だろうな」
「ちょっとキャオ」
 ここでアムから通信が入った。
「あの食い逃げ男の名を出すのは止めてよ」
「そうは言ってもどうせまたすぐに出て来るぜ、あいつは」
「だからといって出すのは止めてくれ」
 レッシィも話に参加してきた。
「あいつのことは思い出したくもない」
「そうかなあ。何か何時か一緒に戦うことになる気がするし。根っからの悪人じゃないだろ、あいつは」
「確かにそうかも知れないな」
 これにはダバが同意した。
「何処か抜けたところがあるし」
「あ、それ言えてる」
「いつもあたし達に負けているしな」
 アムとレッシィもそれに頷く。
「だが手強いことには変わりがない。ここにいないのは幸いだ」
「そういうもんか」
「ああ。だから今は目の前の敵を倒すことに専念しよう。アトールやそんなものしかないようだし援軍も来てくれている。ここは
一気にいこう」
「よしきた!」
「行くよ!」
 こうしてダバ達とラー=カイラムのモビルスーツ達の連合部隊とヘビーメタルの戦いがはじまった。戦い自体は呆気無く終わりヘビーメタル達はその数を大きく減らして何処かへ退却した。
「こっちはこれで終わりだな」
「はい、有り難うございます」
 ダバはバニング達に礼を述べた。
「おかげで助かりました」
「それは何よりだ」
 ここでフォッカー達も来た。ケーン達も一緒である。
「そっちも終わりましたか」
「ああ。ギガノスの連中は撤退した。中々骨のある奴等だったぜ」
 フォッカーはカミーユの問いに答えた。
「こっちはわりかし楽だったみたいだな」
「そういうわけでもありませんよ」
 だがカミーユはそれを否定した。
「敵はビームコートを標準装備にしていますから」
「ほお、それはちと厄介だな」
「まあそれでも勝てましたけれどね。実弾兵器やファンネルで」
「じゃあバルキリーだと問題ないようだな。しかしビームに強いとはオーラバトラーみてえだな」
「どちらかというとモビルスーツに近いみたいですけれどね」
「そうなのか。どちらにしろ新しい敵ってわけだな」
「はい」
「で、そちらさんは」
 フォッカーはここでダバ達に顔を向けた。
「見たところ見ない顔だが」
「はい」
 ダバはそれに答えた。
「僕はダバ=マイロード。ペンタゴナから来たバルマーへの反乱軍です。この地球まで彼等の戦艦を奪って逃げて来ました」
「ここまでか」
「ええ。そしてここで言います。彼等はまた地球に兵を向けてきています。今のポセイダル軍がそれです」
「ポセイダル」
「はい」
 ダバはそれに答えた。
「そいつ等が今度のバルマーの尖兵か。ところで」
 フォッカーは質問を続けた。
「詳しい話を聞きたい。来てもらえるか」
 こうしてダバ達はラー=カイラムに入った。まずは嘘発見器等によるチェックを受けた。
「すまないが決まりでな」
「わかっています」
 ブライトの言葉にも彼等は快く応えた。そして検査を受けた。綿密な検査のうえ出た結果はシロであった。
「嘘はついていませんね。彼等はバルマーに抵抗する組織の者です。そしてポセイダル人に他なりません」
 トーレスがブライトにそう報告する。
「体格は我々より少し大柄の傾向がありますがその他は全く変わるところがありません。血液型等も全く一緒です」
「それではバルマー星人達とも同じということだな」
「そうなりますね。他に何かお聞きしたいことはありますか」
「いや」
 ブライトは首を横に振った。
「彼等が信用できるのならそれでいい。それでは彼等の話を聞くとしよう」
「わかりました」
 こうしてブライトはブリーフィングルームに向かった。部屋に入ると既に主だった者達が集まっていた。その中には当然ダバ達もいた。
「それではダバ=マイロード君」
「はい」
 ダバはブライトの声に答えた。
「詳しい話を聞きたい。まず君のことだが」
「ペンタゴナから来ました」
「そのペンタゴナとは。さっきも聞いたが」
「ここから遠く離れた場所にある惑星です。バルマーの侵略を受けまして」
「やはり」
 それはブライトにも想像がついた。
「僕はその星の王家の者だったのですが。それが故に身を隠していました」
「へえ、あんた王子様だったのかよ」
「格好いい!」
 ジュドーとプルがそれを聞いて声をあげた。ブライトはそんな二人を嗜めた。
「静かにな」
「はいはい」
「ちぇっ」
「それで偶然が重なりまして。盗賊団に入ったりあちこちを転々としていたのですが何時しかポセイダル軍と対立するようになりまして」
「あたしも入ったのよ、盗賊から」
 アムがここで皆に対して言った。
「俺は田舎からずっとダバと一緒だったぜ」
「私も」 
 リリスとキャオもそう言った。
「あれ」
 リリスを見た多くの者がそれで声をあげた。
「あんたフェラリオに似てるな」
「フェラリオ?」
「ああ、バイストンウェルってところにいる種族なんだ。簡単に言うと妖精かな」
「そうなの」
「しかも声がチャムそっくりだな。偶然なんだろうけれど」
「そのチャムって人の声が私に似てるの」
「ああ、そっくり」
「性格は全く違うみたいだけれどね」
「それは面白いね」
 レッシィが声をあげた。
「あたしの声もリリスにそっくりだってよく言われるけれど」
「確かに」 
 それを聞いて皆納得したように頷いた。
「同じ人の声にしか思えないよな」
「ユングさんやベルトーチカさんともそっくりだし」
「いや、クェスにもそっくりだぞ。偶然にしては出来過ぎだよ」
「よく聞いていたらプルやプルツーの声もアムの声とそっくりだよなあ」
「タップ、御前の声あのキャオとそっくりだぞ」
「ケーン、そういう御前はイーノと同じじゃないのか?」
 彼等はヒソヒソとそんな話をしていた。ダバ達はそれを見て不思議そうな顔をしていた。
「いや、気にしないでくれ」
 ブライトはそんな彼等にそう言って落ち着かせた。
「どうも我々の中には声が似ている者が多くてな。こうした話をすることが多くなるんだ」
「そうなのですか」
「けれどあの双子の女の子達とあたしの声ってそっくりよね。不思議な位」
「まあそれは置いといて。あたしなんか何人同じ声の人がいるかわからなくなってきたよ」
「何はともあれ本題に戻ろうぜ」
「ああ」
 皆キャオの言葉で本題に戻った。
「それで戦っている間に戦局が悪化しまして」
「ふむ」
「彼等の戦艦を奪って戦力を拡充したり武器商人から調達したりしていました。そしてその間に彼等の主力がこの地球に向かうという話を聞きました」
「それがさっきの部隊だな」
「はい」
 ダバは答えた。
「彼等は戦力の殆どを地球に派遣することにしたらしいのです。そしてそれを率いるのはオルドナ=ポセイダル自身」
「オルドナ=ポセイダル」
「バルマーからペンタゴナの統治を任された人物です。詳しいことは謎に包まれています。男か女かすらわかってはいません」
「全てが謎に包まれた者ということか」
「噂ではバルマー星人だとも言われていますが。確かなことは何一つわかっていないのが現状です」
「バルマー星人かも知れないというのが引っ掛かるな」
 ブライトはそこまで聞いてそう呟いた。
「バルマー星人は本来は間接統治を行なう筈だからな」
「そうなのですか」
「少なくとも今まで地球に攻め込んできたバルマーの者達はそうだった」
 ブライトはそう答えた。
「もっともそのポセイダルが本当にバルマー星人かどうかはまだわからないが」
「はい」
「ただ一つ言えることはそのポセイダルがバルマーからの命令でこの地球に攻撃を開始したということだ。それは間違いないようだな」
「そうですね」
 バニングがそれを聞いて同意の言葉を出した。
「ただ気になることがある」
「それは」
「何故君達がいるのに母星を空けてまで彼等はこの地球に来たから」
「バルマーからの命令だからじゃないかな」
 バーニィが言った。
「本星からの命令は絶対らしいし」
 クリスもそれに続いた。
「確かにそれは事実だろう」
 バニングは彼等の意見をある程度まで正しいと認めた。
「だがそれでも星を空けるとは思えない。違うか」
「確かにな。大尉の言う通りだ」
 ブライトは彼の意見に同意した。
「君達はそれを聞いてどうしたんだい?」
 そしてあらためてダバ達に問うた。
「はい」
 彼等はそれを受けて答えた。
「ポセイダルも行くということを聞きまして。地球に向かいました」
「途中で逆に追撃させて戦艦を沈められちゃったけれど」
「それでもここまで何とか辿り着いたんだぜ」
 ダバだけでなくアムとキャオもそれに答えた。
「ふむ、成程な」
 ブライトはそこまで聞いて顎に手を当てて頷いた。
「ダバ君、君達はどうやら彼等に行動を読まれていたらしいな」
「というと」
「そのポセイダルはどうやら自分が動くことで君達も動くと考えていたようだ。そしてこの地球に来た」
「じゃあ俺達はあいつにここにおびき出されたってわけかよ」
「そうみたいね」
 キャオとレッシィが不満そうな声をあげた。
「地球共々一網打尽にするつもりか」
「おそらくなそれにここに向かっているバルマーの勢力は彼等だけではないだろうしな」
「他にもいると」
「ああ。君達もバルマーの事は知っていると思う」
「はい」
 彼等は頷いた。バルマーが広大な勢力圏を持つ銀河規模の帝国でありその支配下に多くの惑星とその星人達を従えていることは彼等も知っていた。
「おそらくこの地球にはポセイダル軍の他にもバルマーの勢力が向かってきている。その力も借りて君達を倒すつもりなのだ。我々と一緒にな」
「じゃあ僕達は」
「ダバ君」
 ここでブライトがダバ達に声をかけた。
「よかったら我々に協力してくれないか」
「いいんですか!?」
「ああ。我々はポセイダルについては全く知らない。それにバルマーのことについてもまだ知らない部分が多い」
「はい」
「そして共にバルマーと戦う立場にいる。協力させてくれないだろうか」
「お願いできますか」
 ダバはそう言って右手を差し出してきた。
「ポセイダルを、そしてバルマーを倒す為に」
「ああ」
 そしてブライトと手を握り合った。こうしてダバ達はロンド=ベルに客人として入ることとなった。彼等はまた新たな仲間を加えたのであった。
「艦長」
 ダバ達を迎え入れた彼等に新たな情報が入って来た。
「どうした」
 ブライトは艦橋に戻るとトーレスとサエグサに声をかけた。
「火星のことですが」
「会談のことか。どうなったのだ」
「それが」 
 だが彼等の顔は晴れなかった。
「会談は決裂しました」
「何故だ!?」
「バーム側の代表であるリオン大元帥が急に倒れられまして。毒殺だったようです」
「馬鹿な、そんなことが」
 ブライトはその話を信じることができなかった。
「竜崎博士はそのようなことをされる筈が。他にこちら側の代表はいなかったのか」
「リリーナ=ピースクラフト次官が」
「彼女までいたのか。それで何故」
「わかりません。問題はそれで終わりではありませんでした」
「他にもあるのか」
「はい。その席で竜崎博士は激昂したバーム側の代表であるリヒテル元帥に射殺されました!」
「何っ!」
 流石に声をあげずにはいられなかった。
「そうなってはもう取り返しがつかないぞ。そしてリリーナ次官は」
「ヒイロ達に救われかろうじてその場を逃れられました。火星への移住者達は彼等と竜崎博士が惑星開発用に開発されていたダイモスに護られかろうじて火星を脱出しました」
「そうか、不幸中の幸いだったな」
 それを聞いていささか胸を撫で下ろした。
「しかし火星は」
「わかっている。だが今は彼等の無事がわかっただけでもよしとしよう」
「はい」
 ここでモニターにスイッチが入った。
「何だ!?」
「本部からの通信です」
 サエグサがそれを開いた。すると金髪に細いきつい目をした端整な顔立ちの青年が姿を現わした。背中に翼を生やしてるのを見ると地球人ではなかった。
「あれは」
「愚かなる地球人共よ」
 ハリのある高い声が響いてきた。
「余はバームの元帥であるリヒテルである。この度の会談で貴様等に殺されたリオン大元帥の息子だ」
「何っ」
「よりによって息子かよ」
 それはブリーフィングルームのテレビにも入っていた。ジュドー達もそれを見ていた。
「何かまた派手な奴が出て来たなあ」
「ケーン、御前と一緒だな」
 だがこうした時でもドラグナーの面々はいつもの調子であった。
「我が父は平和的に会談を求めながらその席において貴様等の卑劣な謀略により命を落とした。余はこれを許すことはできない」
 強い声が続く。彼が正義感により怒りを抱いてるのは明らかであった。
「よって余は今ここにバーム十億の民の為に愚かなる地球人共に正義の鉄槌を下すことにする。只今よりそれを開始することを宣言する!」
「何!」
「宣戦布告かよ!」
「言うにことかいて!」
 カミーユ達も激昂した。コウもそうであった。
「地球人を一人残らず殲滅するまで我等の戦いは続く。我が正義の裁きを受けるがいい!」
 それで放送は終った。それを聞き終えたブライトはトーレスとサエグサに問うた。
「ロンド=ベルで今動ける艦はあるか」
「はい、シナプス大佐のアルビオンでしたら」
「よし、それでは大佐にすぐ連絡してくれ。火星に共に向かって欲しいと」
「何故ですか」
「リリーナ次官と難民達を救出する。ヒイロ達だけでも何かと苦しいだろう。ダイモスというマシンもあるようだが」
「今すぐ行かれますか」
「当然だ」
 彼は即答した。
「彼等を救わなくてはならない。行くぞ」
「わかりました」
 彼等はブライトの強い声に応えて頷いた。
「では進路変更ということで」
「うむ」
「総員に告ぐ」
 ここでトーレスは放送を艦内にかけた。
「我が艦はこれより火星に向かい難民達を保護する。そしてその途中でアルビオンと合流するものとする」
「よし!」
「そうこなくちゃな!」
 皆それに頷いた。誰もがそれに賛同した。
 こうしてラー=カイラムは火星に向かった。そしてそこでまた新たな戦いがはじまるのであった。


第九話    完



                                      2005・2・21

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