体の痛みが激しい…陽介を通じて、私の胸に斬られた痛みを感じる。

 血も沢山出てる…このままじゃ、私も陽介も死んじゃいそう……ここまでなの?まだ、やる事がいっぱい残ってるのに…ここまでなの?
「…俺には守りたい人が沢山、居る…だからその人達の為にも、今は負けられない」
 陽介が言ったとおり、奴はもう佳乃ちゃんや羽に関係する者には手を出さないと約束してくれた。
 陽介ほど、私は戦士じゃないから解らないけど、ギャラクシー8の一人ギャレールは嘘をつく様な人じゃない限り、多分彼は大丈夫だと思う。陽介の願いはかなった…
 それでいいんだ…十分だった。
『…ふふふ……』
 え?この声…心の中から伝わってくる、酷く懐かしく…混沌の闇から這い出してくるような、不気味な声…
『ようやく俺の時間が来たな…』
 よ、陽介じゃない…私が、あの時…あの冬の夜に、心の奥底に封印して、それ以来触れることの無かった私や、白狼とは別の、陽介のもう一つの人格…陽介が受けた『翼人』の千年の呪いの形…

 陽介の性質を光とするなら、彼を…『影』…いや、まさに陽介とはま逆の存在で、人間なのかどうかもあやぶまれる存在…
 もしかしたら、白狼の因子がまだ残って生まれた存在…?

 それが…あのギャレールの技の直撃で私の力が弱まって、再び動き出したとしたら…

 影が…

機動狩猟者
ウォーハンター『陣』
ミッション13『影再動』


「……どうするか…」
 ギャレールは血の海に倒れるウォーハンターを見下ろして悩んでいた。正直言って、ウォーハンターの実力は、宇宙を渡り歩いてきて、七本の剣を使って相手にして来た相手の中でも…ここまで追い詰めた相手は久しぶりだったからだ…連れて帰って仲間にすれば…正直殺すには惜しい相手…
だが後でギュレルのお小言を聞いていたら、きりがないし…ギュレルはこの男を嫌っていたはずだ。
仕方なく諦め踵を返しその場から去ろうとして後ろを振り向くと、神社の鳥居の近くにさっきまで見なかった男が立っていた。
 その男は夏だと言うのに黒いコートを着込んで、狼のような眼差しでギャレールを睨みつけている…
「……」
「んあ?なんだお前」
「何者でもないさ、ただそこに倒れている小僧の 落とし前を付けに来ただけだ…」
 その男は腕から液体金属の塊を巨大な剣に作り変えた。
「変身…」
漆黒のボディに銀色のストライプ…その男は、液体金属の体をGクリスタルの核で支える、偽りの体…だがその技はオリジナルと寸分たがわない、いやそれ以上の『技』を持った…メタル黒狼へと変えた。
血溜まりのなかで倒れている、陽介を見て…その目には明らかなる怒りが見えていた、メタル黒狼に巨大な剣の切っ先を向けて…ギャレールを睨みつける。
「ふ、喧嘩を売られて黙っていられないか…」
ジャ!
 ギャレールも7本の剣を更に抜き放って、メタル黒狼に応戦しようとした。メタル黒狼は剣を振り上げようとすると、目に何かが映り…その手を止めた。
「ん?どうした?」
 メタル黒狼が自分とは、違う方向を向いてる事に気づいてギャレールもその方向を見ると、自分の目を疑うような事態が起こっていた。
 全くありえない事だった…ギャレールの一撃は、ウォーハンターの胸、心臓を貫いたはずだった、即死する攻撃の筈だった。だったら何故立っていられる…
「……おいおい、どういう事だよ…」
「……」
 スーツの胸部を破壊されて、そこから大量の血が流れてだしている…立つ事なんて不可能なはず…だが、何故…

「陣内君、立つな!君の傷は、深い!動くと死ぬぞ!」
 霧島診療所の通信室でウォーハンターの再起動を確認した聖は驚きながらも陽介を止めようとした。帰ってきた言葉は…
『うるさい…』
バキ!
 明らかに何時もの優しい調子の陽介の台詞とは180°違った声を出すと同時に通信装置が破壊されるような音が響き…通信は途切れた。
「…まさか、『影』か、くそ!」
 聖はモニターまでも破壊された事を悟ると、耳に当てていたイヤホンを投げ捨てると診療所の通信室を走り出した。
「陣内君に居る人格は、主人格である陽介の人格、新月と共に現われる少女…恋香の人格。分離と同時に消えた白狼の人格。そして…彼の千年の呪いが生み出した、彼の『影(シャドウ)』…陣内君の話では一度『影(シャドウ)』は川澄君との協力で、消えた筈…いや、影に戻ったと言った方がいいか…」
 宇宙からの敵と、メタル黒狼…しかも、影が出てきたとなると、妹は愚かこの田舎町なぞ、一時間ともつか解らない。
「…佳乃……ああ、あの小僧!どこまで私の手を煩わせれば、気が済むのだ!?」


「……(まさか、こんな所でこんな形で陽介の『影』と対面するとはな…)」
 存在は知っていたが、メタル黒狼は陽介の『影』と直接対面するのは…初めてだ。性質としては、白狼のそれとは全く違う…白狼から生まれた恋香とも違う、まさに陽介の影の存在、榊の陣内として…その部分が、幹部怪人となりそうだったのだが…

「ウォーハンター、いや…違うな…何者だ?」
「……何者でもない、俺は陣内陽介…その者だ」
 7本の剣を構えるギャレールは、ウォーハンターのスーツが放つ邪悪な気に、少し気おされていた。いまでも心臓から大量の血が流れているのに…こいつは平然と立っていられる。こいつは化け物と呼ぶに他に形容はあるか?
「ウォーハンターか、元はあいつ(陽介)が『白狼』とか言う奴の力を取り戻す為の力、本当その為に、よく鍛え上げたもんだ…お陰で今の一撃で完璧目が覚めたぜ」
「……あの男とは違う奴ってことか?お前…」
 メタル黒狼は息を呑んだ…この戦い、どう出るんだ?どちらにせよ、自分には割り込めない空間であることは、確かだって事を肌で感じた。
「おい、誰だか知らんが……そいつを手荒く扱うなよ、何せ次戦う時、その体が壊れていたんじゃ、意味が無いからな」
「!?」
 何を言いだすんだ?この宇宙人は…影が陽介と別人格と判断したからか、陽介の体を気遣ってる…また戦いたい、それだけの理由で?陽介の体を占領している影を…
 メタル黒狼は、しばらく高みの見物をする事にした…
ベキ!
「その必要は無いさ…何せお前は、今ここで俺に殺されるのだからな…」
 影は、マスクの右目の部分を破壊して、強化ガラスの奥にある赤い目を開けた。
「…あの目」
 メタル黒狼が見たその赤い右目は、陽介に掛けられた千年の呪いであり、彼自身が過去の記憶と影と共に封印した、呪いの産物。
 全てのあらゆる物を透視する能力と、人の未来、過去までも見透かし…しかも、その目が会ったら、どんな者も悪夢の世界へと引き込んでしまい、最悪の場合…目を合わせただけで、自殺に追い込んだりもする、まさに呪いの悪夢を見せる右目…『呪眼』
 陽介が、影と共にこの恐ろしい目をカッターナイフで切って封印したのも納得が行く、影と呪眼…下手をすれば、世界中の人間に悪夢を見せ、殺す事ができるかもしれない。
「お前の過去が見える…何人も人をその剣で斬って来たな」
「俺は自分がやってきた事に後悔など微塵も感じていない、今もそれにこれからもな…」
「否、お前の未来はここで終わりを迎える……相手が悪かったな」
 影は手を前に出して、呪眼を…開眼させ…手の平に力を集中させる、呪文らしき言葉をぶつぶつと言いながら、その手に暗黒の影を集中させて、その影を黒い両刃の刀へと変えていく。
 骸骨が刃を抱いたような象った装飾がなされた、黒い異形の諸刃の刃、それはまるで…影の怨念を模した形をしている。
「ん?」
「はぁぁ…」
 剣がどす黒い妖気を放ちながら、強烈な殺気を放ち、赤黒い色の『狩人』のスーツをだんだんと黒く変色していった。
「黒きウォーハンターか…」
「ほう、それなりに楽しめそうな形になったな…」

「あいつが、強くなるとこちらも都合がいい。呪眼の力で、こんな剣を具現化できる」
「(陽介が対魔一神流を覚えて強くなるに連れて、影も強くなるというのか?もしかして、白狼に着実と近づいてるのか?)」
 剣をまじまじと見ながら影は、ギャレールの方を向き直る。
「この剣を『反逆』…そう名づけよう。あいつからこの体を奪うまでは丁度いい」
「……そうか…お前には、丁度いいかもな…だが、ウォーハンターには勿体無い程だ」
 ギャレールは、先程陽介に鉄血無爪・旋風陣を斬りつけられた所に致命的なダメージを負ってて、踏み込みが上手く行かない…それは向こうも同じ条件。
 瀕死の重傷を陽介も負っているはず…だったら…
「…余所見をするなよ、うぉぉぉーーーーーー!!」
「何!?ぐぅぅぅ!!」
ズゥゥゥーーーーン!!
 『反逆』の刀身から伸びた一筋の光の帯が、ギャレールに振り下ろされてギャレールは両手の剣で受け止める。
「ぐぅぅ!?」
 陽介の剣より重い一撃…鉄血無爪でできた傷から血が流れ出て、脚に力が入らなくなっていった。
「白狼の技も、一通り覚えているつもりだ……ギガンティックソード、この技の重みに耐えられるか!?」
「くおおお!!」
 ギャレールも剣を押さえるのに精一杯の様子で、反撃する力さえ残っていない。それに大量に流れる血が体力をそぎ落としていく…幾ら、宇宙剣法・七刀流を極めようと、熱帯の過酷な自然の中で生きていたとしても…それは関係が無い…
「真正面から受け止めるなんて、あいつ(陽介)が思ってた通りお前は単細胞なのか!?はははははは!」
「まあ、ウォーハンターに思われても仕方あるまいな…ギャドーのように、任務に忠実じゃねぇし…過去に未練もゆかりもない…俺は今までそうして、宇宙の剣豪達を相手にして狩って来た、ウォーハンターともな…」
「ふん…あいつに勝ったからと言って、俺にも勝てると思うたか?」
「いや、俺が今まで剣を交えた相手の中で、あの男ほど戦い甲斐のある男は始めてだ……何かの為に我武者羅になってまで戦える。俺にゃぁ…そんな奴が一番新鮮で面白い相手だ…今まで宇宙で剣を交えた相手は、自分が上に上がろうとする愚か者ばかりだった…俺もその一人だ!宇宙剣法・七刀流はそうして強くして来た…ウォーハンター『陣』俺は奴にまだ勝ったつもりも負けたつもりもない…」
ギリギリギリ
「類は友を呼ぶ……単細胞ばかりを相手にすれば、自らも単細胞となる……もう詭弁とその耳障りな声を消してやろう」
ズン
 ギガンティックソードをさらに深く沈みこませる影…ギャレールは鎧の間から血が噴水のように吹き出た。
「(先程から気になっていたが、あの宇宙人…後ろの神社をギガンティックソードから守ろうとしているのか?)」
 後ろで見ていたメタル黒狼が、そう思う。確かにギガンティックソードの威力ならあの神社を羽ごと真っ二つにできる力があるのは、本人が一番よく解っている。
 それに、あそこには…陽介の友達(往人と佳乃)がいた…まさか、あいつは陽介がしよいとした事を…
「ああ、お前からすれば…ウォーハンターも馬鹿と思うだろう…だがな俺からすれば、お前は奴とは違う…お前もその『上を目指す愚か者』と全然変わらないんだよ!」
ガキィィーーーン!!
 ギャレールの気合が、ギガンティックソードを弾き飛ばす。
「(ギガンティックソードを弾き返した…、やるなあの宇宙人…)」
メタル黒狼の過去に、白狼と戦った時のギガンティックソードの威力を思い出す、それをあの剣と、気合だけで…吹き飛ばすとは、対した物だと思った。
 ギガンティックソードを使っていたのが影だからか…それとも…
「く…この異星人風情が……グゥゥゥ……」
「おっと、俺ももう限界のようだな……」
「簡単に逃げられると思うなよ!」
 影が剣を振り上げた所を、一機のトーラスが上空から空を切ってギャレールと影の間をふさいで…ギャレールを拾い上げて何処へともなく、飛び去ってしまった。
 赤く形が若干違う、初めて見るタイプだった。
「あれは…有人型か……ギャラクシアン…何処まで舐めてくれるんだ…くぅぅぅーーーがぁぁぁぁぁーーー!!」
 影は頭を抱えて、トーラスが飛び去った天空に向けて、怒りと憎しみを咆哮にして解き放った。狂振…この咆哮には生物と言う生物が凍り付いてしまうくらいの咆哮だ。

ザッザッザ…
「ふ、確かもう一人居たっけ?」
「……」
 影はその足音に、笑い声を上げながら振り向く…剣を携えたメタル黒狼に…
「親父…と言っておこうかな?いや…今は、違うか…」
 影は敵を倒せなかった事への苛立ちと、満たされない欲求に非情に危険な状態に陥っているのは目に見えて解った。
 放っておけば、先日のようにこの大気丘市を全て破壊尽くすまで止まる事はないだろう。
 メタル黒狼は剣を手にして、影に対峙する。正直メタル黒狼も今の影とは五分と五分だが……陽介が重症を追ってるならば…今もスーツの破損部分から大量の血が流れているのに…影はそれを構うことなくメタル黒狼に歩を進めた。
「…あ、そうだ…やりあう前に返す物がある」
 影はそう言って手に持っていた物をメタル黒狼に投げ渡した。
「!?」
「それがあれば、あんたも何も囚われることなく戦う事ができるだろう?」
 メタル黒狼の手にあるのは、ウォーハンターの最初の戦いの後に自分が陽介に託したはずの青い半球状の物体、『技』のアグルストーンだった。
「……」
 アグルストーンを液体金属の体に埋め込んで…メタル黒狼の目が赤く輝いた。
「まさか、息子に渡したアグルストーンを息子の手で返されるとはな…思わなんだ…」
 氷解…それが今のメタル黒狼…陣内榊の心の中の心境だった。何にも囚われることなく、ただただ…戦う為だけに生きて…野性に戻りたい気持ち…
 人に飼いならされた犬より、野生の狼に戻りたい…そしてそんな願いが今かなった気がしたのだ。
 心が闇に沈んでいく……怖いようで、どこか開放感があった。
「確かに、あんたの本当の息子は俺(影)なんだけどな……こいつが持ってても意味無いだろう?」
「ああ……陽介、お前に感謝するよ。こうして自分を取り戻す事ができたんだからな」
「俺も同じさ、親父…こうしてあいつから、この体を取り戻す事ができたし……やるか?史上最悪の親子喧嘩」
 影がそう言って剣を振り上げ、メタル黒狼に切っ先を向け挑発的に手を招く。…場内に緊張が走るが…メタル黒狼は変身を解いて、榊の姿に戻ると不適な笑みを浮かべて首を振って。
「お前も消耗してるだろう……それに、お前の相手は俺じゃない。今日はいいものを見せてもらった事だ、俺は退散する事にする」
「逃げるのかよ…親父、待て!」
「今は…違うだろう?」
 榊はそう継げた後、剣をメタルソーダーへと変えてそれに乗って…神社の鳥居を抜けるとそのまま遥か彼方へと猛スピードで消えていった。

ガシン!ガシン!
 ギャレールに逃げられ、メタル黒狼にさえも逃れられた影の憤りはストレスと怒りなって無作法に剣を振り回す。
「くそう、どいつもこいつも……俺は戦いたいんだよ!壊したいんだよ!全て、全て…この俺の…ストレスをどう解消させてくれんだよ!うがぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」
 狂気と戦慄、それだけでもこの街を破壊つくさんとする獣とならんとする影の後ろに不意に立つ何かを察知した。
 マスクを壊した部分から見える呪眼の目線が届く範囲に居なくても、影には解る…

 俺の後ろにいる……そう、ギャレールや…メタル黒狼が言ってた俺の相手……俺と戦ってくれる相手…

ブオン!チャキ!
「かぁぁぁーーーーーっっ!!!?」
「……」
 影は後ろに居た奴の首に剣を振り下ろすが……瞬間に刃を首に当たる寸前に止めた。

「……」
「お前……」
 赤い、呪眼を通して見る…それは、虚ろな目をした…霧島佳乃の姿だった。刃が当たる瞬間、影の目が…彼女のうつろな瞳と目線が合わさった瞬間、急ブレーキを駆けられたように刃を止めたのだ。
「あいつ(陽介)が守ろうとした…女か…」
普通の女なら……首を一瞬で跳ねられるくらいの剣を首に寸止めされても、この女は引くどころか、逆にこちらにその目を合わせている。
「(何故だ…何故俺は、この小娘如きを殺せないんだ…あいつが守ろうとしたからか?まだ俺は奴を引きずって……いや、違う…なんだこの感じ。この小娘…なんだ!?これは…俺を押さえ込む力…月代恋香と同じ…)」
ガチャン
 影の手から剣が離れて地面に落ち…その後突然の胸の痛みが走る。陽介が受けたギャレールにやられた胸の傷が突然出血をし始めた。
「うが!?(なんだ、この女の目…俺を全く写して居ない…それに俺に、この女の過去も未来も見えない!?)」
 佳乃がこっちに近づいてくるからだろう。『狩人』の変身が解けて、影状態の陽介に戻る。
「ああ…あ、来るな!俺に、俺に…近づくな!」
 剣は地面に落ちて、影の一部になり…消えた。武器を無くした影は爪を佳乃に向かってつき立てるが、やはり寸でで止めてしまう。余波が佳乃の髪の毛を数本切るが…佳乃は虚ろで、聞き取れないような声を出した。
「……ならばいっそ、わたくしの手で…」
 両手が持ちあがり、影の首を掴み上げる…影はその手を振り解くことができない。今まで1度だけ感じた事のあるが、この感じは自分を押さえ込む恋香とは違う…全く違う物…それは、『恐怖』
「やはり、この嫌な感じは…月代恋香の物と同じ?いや、違う…俺を押さえ込む力だけじゃない…俺自身を完全に消せるほどの物……殺ら無ければ、俺が…俺が再び、あいつの影に…影に…消えてしまう…やめろ!俺に近づくなぁ!」
 影は手で頭を押さえながら発狂して、佳乃を拒絶する。もがき苦しみながら…次第に立ち上がっていた髪の毛が元の状態に戻り、手の爪も短くなった。
「き…えて…しま……」
 …影は影に吸い込まれ、影から陽介が自分の体に戻って行く。
「あ……ああ」
 光と影が逆転して行く……まるで、恋香と陽介が入れ替わったあの時と同じように眩い光に影が押し戻されるように…影と陽介は入れ替わった。
「……佳乃ちゃ…ぐふ!」
 入れ替わった、陽介は目の前の佳乃に気付くと同時に口から吐血して、地面に膝をついた、今までのことが頭に蘇る、佳乃ちゃんを守ろうとして、最後は行きぬく為…ギャレールの技を受けた。宇宙剣法七刀流…恐ろしい技だ…自分の胸からおびただしい出血の後、あれがまた…自分の外に現れた。
 しばらく出血しながら…影は戦ってたと言う事だ。命知らずが…
「……」
 血が…足りない…陽介の意識は暗い闇へと入っていった。
「陣内!佳乃は…う、これ」
 耳に国崎往人の声が聞こえたような気がしたが…陽介の意識は、既に死んだように無くなってしまっていた。



……
同刻
 大気丘市から数キロ離れた山間に、赤い円盤が飛来して木の間を縫って、着陸する。トーラスは着地する前に人型に変形、腕に抱えていた何かを地上に下ろした。
「ぐふ……ぐるぅ…余計な真似を…ギャリーナァァ」
 下ろされたギャレールは肩の傷を押さえながら叫ぶと、トーラスのコックピットが横に開閉して中から派手な服装の女が降り立ってくる。
「こっぴどくやられたわね、ギャレール…ちょっとは感謝しなさいよ。あんたが、あそこまで追い込まれたら、やられてたわよ」
「血を流しすぎたからな…まあ、感謝の言葉は言ってやるよ。だが…この食らい、傷の内には入らんさ…直ぐ治る」
「まったく、これだから野生児の男は嫌いよ…。ほら、傷見せてみな」
 溜息をつきながら、その女は強制的にギャレールを口で座らせて、後ろに回って傷を見る。鎧を脱がせて、傷を見る…鎧の中の服は傷から出た緑色の血で染まっていた。
「あっせくせー…しかも血の匂いも最悪ね」
「じゃやんな!」
「こんな美人に傷手当てしてもらってんのよ」
 悪く言ってるのとは裏腹に、女はギャレールの傷の具合を見て、腰につけていた数々の薬の瓶を選んで傷薬を取り出して…傷にぬったくる。
「いで!もちょっと優しくやれねぇのか!?」
「あんたね、このあたしが…宇宙看護婦免許を取得してるって事知らなかったでしょ?ふーふーん♪」
 鼻歌を混じらせながら、女は言葉とは裏腹に嬉しそうに、傷に薬を塗って…包帯らしき物を取り出して縫った患部にぐるぐると回す。
「……その歌は?」
「地球の歌よ。どう?戦ばかりしてるあんたにゃわからんでしょうけど」
「ふん、悪かったな」

「それよりも、誰よ……あんた程の男にこれ程の大怪我負わす奴って…」
ぱんぱん
 手で包帯をきつく巻いた肩を叩いて治療を完了させて、ギャレールに聞く。
「ウォーハンター『陣』って言う剣士だ…面白い奴だ、文句無しでいい腕をしていやがった。また再戦願いたい物だ」
「ふぅん、いい男?」
「どーかな、てか俺に聞くことか!?」
「その前に、あんた羽は!?それに羽の記憶を受け継ぐ『継承者』って言う女の子達はどうしたのよ!威勢良く出たわりには、自分から連れてった軍勢をほっぽいて…お土産無し?ギュレルが聞いたらうっさいわよ」
 説教臭く、その女はギャレールを問いただし、その気迫にギャレールも段々後退させられる。
「ふぅ、まぁ…あいつ(ギュレル)の命令を真面目に聞こうなんて、あたしは嫌だけどね。あんたはその点良いよ、あいつの命令無視してまで青い星に来るもんだから」
「弱いしあいつ…」
「あいつが言い渡した任務を真面目に聞く奴って、ギャドーとかギャレローぐらいしかいないし」
「って、お前ここに何しに来たんだ?土星に居た初期メンバー(ギュレル・ギャドー・ギャレール(俺))じゃないお前が…」
「不本意ながら、あたし達はギュレルの命令で派遣されたのよ。あたしは、『羽奪取作戦』と同じ時にギュレルに召集かけられて、ここにこのトーラスで来たのよ。最も、こことは違う場所でいい男を探してたんだけど〜。ま、本当はあたしもソノ作戦に参加しろって命令だったけどね」
 秘密裏に送られたこの女のことは解ったが、まさか命令無視して違う場所に行ってたなんて、ギュレルでさえ知らなかっただろう。
「んじゃあ、俺が知らない間に…」
「いんや、あんたが地球に言った後すぐにギュレルが地球に降下した仲間は、ギャドーにギャラン…そしてギャルサース…土星にはもうギャレローやギャリムも居るけど…ギュレルは相変わらず土星で高みの見物よ、もう自分が正室の子だからって威張り過ぎなのよ、弱いくせに…」
 それじゃあ、8の殆どが地球打倒に向けて動き出したという事とかわらないと言う事だろう…ギャレールはギュレルには何も知らされていない。あいつの馬鹿が祟って忘れ去られたか…それとも命令違反の逆恨みか…。
「忍者に巨人に死刑囚と女王様…が降下…」
「だーから、宇宙看護婦免許取得って言ってんでしょ、あほトカゲ!」
ビシィ
 何処からとも無くでた鞭でギャレールの頭を引っぱたく女。
「いで!だから、その鞭が時々出るから女王様ってよばれんだよ!馬鹿女!」
 いーっと睨み合う、両者…これでは夫婦喧嘩に間違えられても仕方が無い。
「兎に角、後のロボとオタク…そして司令官は土星で待機組って訳か…こりゃ、少しばかり急がないとな…横取りされちまう」
「おっほん、何であたしの方をみるのかしらん?」
 いい男なら身栄えが無いこの女をギロリとにらむ。
「こっちは別の意味で気をつけんとな。後の4人は…獲物を横取りしかねんな…」
「ギャドーやギャランはどうか知らないけど、ギャルサースは確実に来るわね…あんたのそのウォーハンターって言う戦士に…」
「……け、ギュレルの奴…もしかして嫌がらせのつもりか?」
「そんな不足の事態が無いように、ちゃんとあたしが檻に鍵かけといて近くの山中に捨ててきたわよ。これでちょっとは時間稼げるけどその間にやれるのかしら?」
「お前も嫌がらせのつもりだろう…?」
 眉間にしわ寄せて女ににじり寄るギャレールにけらけらと女は笑いながら…
「ははは、何の事かしらん!?あたしはあんたは、高く買ってるつもりよギャレール」
「け、どうだか…」
「とも角、今あたしが興味ある男は、二人よ…この前あの作戦時、見つけたからね」
 むふーっと変な息を吐く女。こっちはこっちでやる気満万みたいだから…ギャレールも溜息をつく。
「だけど、あいつ等に言っておいてくれるか?あいつ(ウォーハンター)は俺の獲物だからな…ギャリーナ」
「ぞっこんなのねぇ、妬けちゃうわねぇ」
「ん?なんか言ったか?」
「別にー」
 その女ギャリーナはつまんなそうに言うと、少し嬉しそうに自分の乗ってきたトーラスに戻って行った。
 逢魔ヶ刻の紫の空が一層闇に染まって行った。

 そして……時は、1週間と少しした後に戻り…いや、これは過ぎたと言った方がいい…


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