そして……時は、1週間と少しした後に戻り…いや、これは過ぎたと言った方がいい…

 浦谷や鮫島が騒ぎを起してから、早くてもう少しで1週間過ぎる、舞さんが持ってくる…浦谷が召還した異世界の人が持ってきた、薬(宝珠)の光にも結構慣れてきて、大分体力的に回復して行くのを感じていた。と言っても…あと2.3日はこのままだと聖さんは言ったが…意外と早く治って俺としてはほっとしている。
「そうか、影を止めたのは佳乃ちゃんだったのか…」
「いや、正確には君の影を止めたのは佳乃の中にいる、『彼女』だろう。『彼女』の性質は恋香君と似てる所があったらしい。影もそれに恐れて消えたんだろう」
 聖さんが俺に、一週間前に起こったことを語った。まさか、影が…ギャレールの技を食らった後、俺が瀕死の重症を負って…意識が無くなったのをいい事に…俺の体から表に出てきたなんて…。
「あれから、影はまた恋香が押さえつけています……ですが、また現れる可能性は高いと思います」
 俺が回復して、恋香もまた俺の思念で状態を戻したらしく、影を制御して居るらしい。影がまた出てきた事を恋香は、何度も謝ったっけ?恋香のせいじゃないんだから、気にする事無いのに……
 聖さんは続ける。
「君が、あの冬に自分の影に飲み込まれそうになったあの時の衝動と同じ事が、また起きるのか?」
 以前に聖さんに、あの冬の出来事をあらかた教えた。自分の中にある凶暴性…反転する暗黒面、影の存在…そして、千年の呪いが産み出した存在…恋香の存在に始めて気付いたのが…あの冬だった。いや、聖さんはそれ以前にも俺の中に影や恋香がいた事を知っていた。あの冬に俺は始めて恋香と…影と…であったんだ…

 実際、恋香が出てきたのが中学2年の時だったと、知ったのは今年が始めてで教えてくれたのも聖さんだ。
「多分ですが……前より活発には出てこなくなるかもしれません」
「…少なくとも、佳乃や…『羽の継承者』が居るこの町では…ということか?」
「そうでしょうね……」
 多分、この町で影が現れることは無いと思う、今の奴が俺から体を奪えるならとっくに奪っている頃だろうが、それをしないとなると…影はやはり何かを恐れているのは確かだ。
 あの時、『彼女』となっていた佳乃ちゃんに恐れた影は…
『俺自身を完全に消せるほどの物…』
 と言っていた……佳乃ちゃん、いや『彼女』に影を完全に消滅させるだけの力があったと言うのか?
 いや、影の消滅は俺自身の消滅を意味する…光と影は常に表裏一体。切っても切り離せない存在なんだから。


機動狩猟者
ウォーハンター『陣』
ミッション14『方術と羽と剣…』


 今、俺は近くの竹やぶまで来て、佳乃ちゃんの要望であるソーメン(流しと言ったけど、聖さんの以降で却下された)の皿となる為の竹を取りに行っていた。
「………」
 傷が薬のお陰で完治し、体力も動けるほど戻ってリハビリがてら…そこら辺を散歩がてら、ここまで来たわけだ。
 流しが却下されたのは、佳乃ちゃんが風邪を引いたからだ…毎日の飼育係の仕事や、加えて俺の看病などを1週間も続けてりゃ疲れも溜まるのは当然だと聖さんは言っていた。果たして、それだけなら良いんだけど…
「これぐらいか…」
 兆度良いくらい竹を見つけての腰に下げた名刀『正幸』の柄を握る……そして精神を統一させて…しゅっと、素早く抜いて…目の前の竹に刃を滑らせた。
 竹が兆度3つに切れて俺は『正幸』を鞘に仕舞った。
「……」
 手の震えが止まっていない……3日前の聖さんの話しが頭に蘇る。無論、佳乃ちゃんに眠る、『彼女』の事についてだ…



「佳乃の事で…君には、まだ話していないことがあったな……」
 確かに俺は佳乃ちゃんの事を知っていて、なにも知らなかった…実際佳乃ちゃんの中に居るだろう『彼女』はみちるちゃん…神尾観鈴さん…あゆ…そして俺と同じ『羽の運命を背負う者』…には違いないが…それがなんなのか、全く解らない。
 聖さんが語ってくれたのは、佳乃ちゃんの母親が亡くなってからの話しだった……実際俺が佳乃ちゃんと会ったのは7年前、俺が自分でこの右目『呪眼』を、潰した後…だったから、彼女達の父親である俺を担当してくれた霧島医師は知っていても、二人の母親までは知らなかった。
 7年前は1ヶ月に1度といわずに、1週間に1度…夏休みは泊り込みで、霧島診療所に居た記憶がある。そんな時に、ここに居た佳乃ちゃんと知り合った…俺はその時から彼女に自分と何らか共通する部分を見つけていたんだろう…友達となるには時間はさほどかからなかった。佳乃ちゃんはその時からあのバンダナを付けていた…
「……まさか、そんな事が…」
「あれは…佳乃じゃない、別の何かが佳乃に入っているんだと…」
 俺が出会う前、佳乃ちゃんがした事…俺は自分の右目のある部分に手を当てた。久しぶりに右目の古傷が疼いた。
 佳乃ちゃんは母親を亡くした後…あの神社にある『羽』に触れた…それからだったんだ…佳乃ちゃんに『彼女』が入って来たのは、俺のように遺伝とか覚醒とかそんなんじゃない、佳乃ちゃんの場合は、羽に触れただけの偶発的な物だったのかも、今の俺なら解った。
「私が父の跡を継ごうと思ったのもその時だった……医者になれば、きっと佳乃を救えると思ってな……そんなある日、君が現れた……その時君は右目を包帯でぐるぐる巻きにされた状態だったが一目で…佳乃と同じ顔をして居ると思ったよ」
 聖さんの目が俺にむけられた…余り印象に残っていないが霧島医師の隣に聖さんがいたことを何となく覚えてる気がした。
「兆度父が担当していた患者である君は…症状も佳乃に良く似ていた。目を傷付ける以前に君の日記は、目を通した事があるだろう?」
「はい…」
 何かが俺の体の奥から段々と出てくるような、恐ろしい悪夢を何度も見て…右目が写す他人の過去…そして未来…、最後のページでは影自身が俺の手を取って書いたような呪いの言葉…俺はその日記を書いた後、カッターナイフで右目を潰し、1部の記憶と共に俺は影を封印した。
「ただ、佳乃の場合と違うのは影は君自身の『心の闇』…佳乃の場合は誰でもない…ただ、『彼女』を呼び寄せたのも…佳乃の『心の闇』だとすれば…」
「だとしたら…」
 ……佳乃ちゃんが、空の彼方に居ると言う母親に会いたい…それが彼女を呼んだのなら、それは佳乃ちゃんの純粋な願いだ…『心の闇』なんかじゃないと俺は思った。
「いつか、佳乃ちゃんが俺に教えてくれた事があるんです……もし魔法が使えて、空へ飛べるようになったら、お母さんに会いたいって……」
 全く持ってメルヘンチックは願いだと当時の俺はその時思ったが…それが佳乃ちゃんの純粋な願いだった。いつかあのバンダナを取る時、魔法が使えるようになったら…母親に会いたいと…
 何時でも羽の者は空への執着を持っていた……俺もそうだった。何処までも続く空をぼーっと眺めていたら……飛べてもおかしくないんじゃないのかって…
「だから、佳乃ちゃんは俺と違いますよ……多分」
「間を置いて多分ってつけるか…君は…」
 むっとして聖さんは言うが、しばらくして…
「すまなかったな、陣内君……私はどこかで、君を佳乃の症状を治す為に利用していたの
かもしれない……死んだ父の仕事を受け継いで、君を治す事ができれば、佳乃も救う事ができる…そう信じていた…だが、私は君も佳乃も救えないでいる…」
 その目が、聖さん自身の存在の意味は何だと…言っているみたいだった。
 その為にSUPの医療班主任の資格も取って…いままでやって来たのに…やはり、今の医学で、俺や佳乃ちゃんのような羽の者を…救う事は出来ないと…
「聖さんのやってる事は…決して意味が無い物じゃなかった筈ですよ……」
「…多分はつけないんだな」
「つけませんよ、それに聖さんは俺を利用してまで…佳乃ちゃんを助けたいって気持ち……本当に妹思いの良い姉だって思えますよ」
 俺はそう言って聖さんの肩に手を置いた、俺の主治医のこんな姿は見たくなかったからだ。しばらく沈黙が続いて…聖さんが口を開く。
「君は……実は良い男なんだな」
 真顔で大関心の眼差しで見た。
「…良い奴なのは解るけど、良い男だってのは…」
「いや、始めてあった時のむくれて愛想の無いクソがきだった君が、ここまでいい男に成長してくれたのは、長年担当医をして来た私としては、嬉しい限りだ」
「ちょっと前のクソがきの当たりを言いなおしてくれませんでしょうか?」
 いつもの聖さんらしくなってきたけど…何だかなって気はする。
「いや、世辞のつもりじゃなしに君を誉めたのだ…まあ、さっきの台詞は医者としての不出来だったか…詫びよう。父も、そう思っているさ……」
 俺は、聖さんの前俺を担当してくれて今は亡くなってしまった、霧島医師の事を思い出した。彼が居なければ、佳乃ちゃんにも聖さんにも会えず…俺の体に掛かった呪いの事も知る事はできず……もしかしたら、霧島医師が居なかったら俺は今頃、『影』に取り込まれていたかもしれない。
「父は君を本当の息子のように思っていた……だからこそ、父は君をここに連れてきた、私はそう信じたい」
 運命付けられた物とは…思えない、霧島医師は俺を自分の意思でここに連れてきたと…そう信じたい。



……

 場面は再び竹林に戻る。
「………」
ざージャジャジャ
 刀を振った後に、カマイタチが爪のようになって、俺の周りの竹を切り刻む。
「……」
 数本の竹が地面に落ち、俺を中心とした空間ができる。
 切り落した竹を拾いに行く…俺の手に迷いがある、刀を握る手が、震えていた。
 あの話しの後、聖さんは俺に…こう言った。

「みちる君の言うように、終わりが近いなら……佳乃を…羽がもたらした幾多の悲しき運命を…救えるのは、君かもしれない…」

 刀を鞘にしまって、竹を拾って…俺は体を起こした。
「…迷い、か…」
 確かに迷いは無いわけじゃない……神奈の魂の生まれ変わり達…それぞれに振りかかる、悲しい運命…千年の呪い…。
 みちるちゃんの言うように、終わりを迎えるのか……それとも…俺達が終わらせるのか?

 自然と足が、あの神社に行った…ギャレールとの戦いの後SUPの処理班により、俺が流した大量の血液はすっかりなくなっていたが、どのくらい血が流れたのは知らないが、後で佐祐理さん達に聞いたところ、地面いっぱいに広がっていたという。
余り記憶にない物のギャレールとの戦闘の凄まじさを物語る爪痕が生々しい。
 神社の前まで来ると…南京錠がまっぷたつになっている…誰だこんな罰当たりな事したのは…(お前だ)
 そう思いつつも俺は、扉を開けて神社の御神体である羽の前まで行く。
 神奈の羽と…もしくはそれと同類だと思われる翼人の羽……佳乃ちゃんはこれに触れた為、俺と同じ悲しい運命を辿る事となってしまった。
 何故…佳乃ちゃんが…
「く!」
ジャ!
 俺の刃が羽の寸でで止まる……刃が、震えているのがわかる、刀に迷いがありすぎる。今の俺では鉄血無爪のような奥義はおろか、技でさえ満足に出来ないかもしれない。
 聖さんが言うように羽の運命を終わらせる者が居るとしたら……それは俺じゃないといけない…そう思った。
 俺は、刀を鞘にしまって…羽に歩み寄り手でその羽を触れて見る。
「……」
 何も起きない、羽に俺が手を触れたとしても…佳乃ちゃんの身に起きたような事は全く起きない。強いて言えば、聖さんが最初に羽に触れたときの印象…『悲しい』に似ている。
 しかし、どこか引っかかる。

 神奈……君はこの空の何処かで、泣いているのか? 永遠の未来永劫の悲しみを抱えて…そして、その涙の一つずつが…俺達に…

「ん?陣内か?」
「……」
 振り向くと、神社の入り口から顔を覗かせる、背の高い男…国崎往人の姿があった。
「国崎か……」
「国崎か…じゃねぇよまったく。怪我の調子はどうだよ…ものすごい大怪我してたじゃないか…あの時の血の量は半端じゃなかったぞ」
 来て早々呆れたように、国崎は聞いてきた。そういや、国崎だったな、重症の俺を診療所まで運んでくれたのって。
「心臓に穴が空いていた」
「マジか?」
「マジだ……聖さんと、薬のお陰で、今じゃ傷跡が目立たないくらいまでに治ってきているんだ。だが、一番に…俺を診療所に運んでくれた国崎にも感謝してるぞ」
 取り合えず、真っ先にこの国崎には礼の一言を言っておきたかったからな。
「見舞いには来てくれなかったけどな」
「美凪達が行っただろ?俺は店番だったんだよ」
「……そか、国崎も大変だな…」
 俺と国崎は、神社から出て…石段まで歩く。
「5日前までここで、お前が居る組織が立ち入り禁止にしてた…まあ、あんなに血が出たんだし、あんな戦闘があったからな」
「…すまんな、迷惑掛けて」
「謝る事じゃないさ、お前は精一杯戦って、この田舎町を守ったじゃないか2度も…」
「……」
 一度目はギュレルが送ってきた部隊と、俺と浦谷…鮫島の戦闘…そこで始めて奴の召還を見た。
奴の突飛押しのない力がなければ助からなかったに違いない、鮫島の計算能力と奴が召還した、数体のスーパーロボット…。俺だけの力で、勝った訳じゃない…
 あの後、聖さんからまた華音市に向けてトーラスの部隊が来たと聞いているが、何かしらの力が一瞬でトーラス部隊を消滅させたと聞く。
 その力を放った者が俺の傷を癒してくれた、『薬』を持ってきたと言う事だ。
 もしまた、浦谷の奴が召還した誰かがしたと言うのなら……その召還された者より俺が考えている以上に浦谷は、もしかしたら…化け物かもしれない。
 敵には絶対まわしたくは無いが……浦谷はどうやら、俺を嫌っている。

「俺だけの力じゃないさ」
「だが、あの時佳乃を救ったのは、お前だろう?」
 救った?いや…佳乃ちゃんを完全に救った事にはならない、彼女に『羽の運命』がある限り…佳乃ちゃんを救ったと言うわけにはならない。
 だが俺の力だけでは、佳乃ちゃんを…いや、佳乃ちゃんや俺を含めるこの輪廻を繰り返す悲しき『運命の輪』を終わらせる事はできない。
聖さんは俺なら佳乃ちゃんを救えると言ったが、この俺でも佳乃ちゃんを救う事は……できない。

「すまない……なあ、国崎…お前は、何で旅をしていたんだっけ?」
「………」
 隣にいた国崎に、ふと聞いて見る…佳乃ちゃんの事と、国崎の事は全く関係ないと思うけど、何となく何かで気を紛らわせたかった…。
それで、前から気になっていた国崎は元はこの町の人間じゃなく、人形芸で路賃を稼いで旅する旅芸人……にしては、人形芸のセンスは無いと思った。
あいつと前話した内容では、みちるちゃんや美凪さんの事で色々あったらしい。一度は街を離れ…そして、国崎はここに戻って旅の終幕を迎えた。
「この空の向こうには、翼を持った少女がいる……
 それはずっと昔から、そして、今、この時も……
 同じ大気の中で、翼を広げて風を受け続けている……俺が母親から教わった言葉だ」
 その国崎から出た言葉に俺は、正直驚いた…『翼を持った少女』それは多分、『神奈』の事だろう。いやそうとしか考えられない…、国崎はもしかして『神奈』を探して旅をしていたのか?それとも……
「……機会があったら紹介してほしい」
「それは無理だな、俺の母親はまだ俺が小さい頃死んだ」
「……すまない」
「お前が誤る事なんて無いさ……旅ももう終わったしな、この言葉の意味も無い」
 それって、もしかしてみちるちゃんのような、『羽の運命を持つ者』と出会って…国崎はみちるちゃん……本来、美凪さんの妹であるみちるちゃんとの運命を見て来たに違いない。
 もし、国崎の旅の目的が神奈を救う事…形は違えど、俺と同じ目的なら…
「何故、終わったと思うんだ?」
「みちるが戻ってくるって解っていたからな、それを信じてこの街を出て戻ってきた時初めて…終わったと思った。お前も知ってんだろ?みちるの事」
「ああ、聖さんから大体聞いた」
 と言うより、本人に会ったとでも付け加えておこうか……
「だけどな、正直お前が戦ってる時……まだ俺の旅は終わってないんじゃないのか…って最近思うようになった」
「何故?」
「佳乃の中に居るっていう『彼女』に会った、そしてお前の戦いを見た。だからだ、俺の旅の目的も、達成してないんじゃないかって思った」
 国崎はそう言って、青く澄んだ空を見上げた…この空の向こうで、この空のどこかで泣いているだろう、翼人最後の一人…その涙から生まれた者達を、国崎は救うために旅をしていたんじゃないのか?
 形は違えど、俺が戦う理由と、国崎が旅をしていた目的は同じだ。国崎が言うように、国崎の旅はまだ終わっちゃ居ないとしたら、いや気づいたんだ…
「国崎…お前確か、不思議な力で人形を動かしていたな」
「本当に、種も仕掛けも無いぞ…あれは」
「そうか……」
 国崎が『方術』っと俺に教えてくれた、最初華音市に居た時に見た…人形劇、国崎にとって生計を立てる為の力……
「国崎、お前の考えあながち間違いじゃない。お前の言うとおり、『空に囚われている少女』は存在する。俺はその少女を助ける為、守る為に戦っている」
「……」
 国崎もうすうす気付いてるんだ、みちるちゃんの他にも救うべき人間がまだ他に居るという事を……そして、国崎はその一人に俺が居る事も、知ってるんだ。
「だが、俺の力だけじゃ…彼女達を救う事や、守る事もできない」
 俺だけじゃ、彼女達を…自分自身を救う事など出来ない……ましては神奈自信も救う事は不可能に近いんだ。
「……陣内」
「助けてくれ……」
 国崎の力なら…もしかしたら、佳乃ちゃんを……神奈を…『羽の運命を背負う者』を救う事が出来るとしたら。
 俺は縋るような気持ちで、国崎にそう言った。国崎は沈黙したままそこを動かない。
「すまないな、お前の旅はもう終わってるのに、自分がやるべき事を押し付けようとして……国崎、お前は自分の居るべき場所を見つけたのに、無理な相談をしてしまった」
 考えてみると、国崎の居るべき場所は美凪さんやみちるちゃんが居るんだ、また旅に出してしまったら、二人に申し訳が立たない。
「……国崎自身で決めてくれ。俺と一緒に旅に戻るか…、はたまた今までの生活を続けるか…俺が決める事じゃないからな」
「ああ、そうさせてくれ……」
 しばらく、国崎は沈黙した後…何も言わずに自然と足が動いた。俺はその後を静かに着いていった。
「……」
「……」
 国崎は俺の前を歩きながら、沈黙を守りながら進んでいった。

 辿り着いた場所は、自分の家である『遠野精米』じゃなかった…
「いいんだな、国崎…ここまで来て」
「あの時、お前が戦ってる姿を見てから腹は決まっていたさ」
 それを意味する事は、国崎が再び旅に戻るという意味だ。旅に出てここに戻れるかどうかも、保障は無い。
 だから、国崎には出来れば…来て欲しくなかったけど……
「頼む……」
 やはり、俺は国崎の力を求めてしまうんだろうか?いや、国崎が旅をしていた意味がそこにあるんだったら、俺と国崎が居なくては……この運命を乗り越えられない。
「俺の戦いに巻き込むかもしれないけど……」
 それを言うと、国崎が俺の頭をぐしゃぐしゃと、撫で回してから。
「バカ言ってろ、俺だってやっと旅から解放されたと思ったらこれだからな。開放させなきゃ終わらないんだろ?この旅も…お前の戦いも…」
「………」
 本当、国崎の言葉に俺は手で眼を押さえた。嬉しい?解らない…
「お前、泣いてんのか?」
「…何でもない、んじゃ行くぞ!」
 俺は顔をごしごしと拭いてから、国崎を連れて、霧島診療所へと入った。


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