シロガネが…いたような気がした

 あの感じ、間違いなくシロガネだった

 真琴も戻ってきたように、シロガネも私の元に戻ってきたんだど

 最初は思った……

 けど、私の知るシロガネは…全てが変わっていた。

 憎しみと殺意に満ちていた…明らかに邪気に満ち溢れていた…

 妖狐は、その人間の魂ほ食らわなければ本当の人間にはなれない…

 陣内さんを殺そうと向けられた…刃が、それを本当だと言う事を感じさせた

 そして、陣内陽介さん…

 私が心の中で憧れていた、先輩……どうしても手の届かない人…

 中学の時は無愛想で冷たい性格だけど、内に暖かく優しい心を持っていた。

 いつも、私の相談に乗ってくれた…優しい先輩

 その憧れが、シロガネは彼と同じ顔で私に会いに来たのかもしれない…

 そして、同じ顔をした二人の少年が殺気立って刃を交えている……

 私の…私のせいなの?

 彼を好きにならなければ、この同じ顔を持つ二人は刃を交えずに済んだの…


「美汐ちゃん…見てたのか」
 表情から察するに、俺とシロガネの会話を聞いたのだろう…いや、これは確実に聞かれたな。


機動狩猟者
ウォーハンター『陣』
ミッション03『美汐と真琴』


 まずいな……言い訳のしようがない。俺はそう思い…刀を仕舞い、彼女に近づいた。
「何処ら辺からみていた…」
「…忘れろと言うのですか…それとも口止めですか?」
「残念ながら二つとも違う……と言っても忘れろと言うのが無理だ、違うか?」
 俺の話しを聞きながら、美汐ちゃんは明らかに動揺しているようで俯いていた。
「それに、俺は口止めなんて要求するほど、鬼ではない……」
「そうですね……」
「……じゃあな」
 俺は何事も無かったかのように、その場を立ち去ろうとして後ろを向くと美汐ちゃんが俺の制服の裾を掴んだ。
「聞かないんですか?シロガネが……なぜ自分と同じ顔だと言う事を…」
「……俺も、もう戻れない場所まで来てしまったそう言いたいのか?」
「シロガネの話を聞きましたでしょう、妖狐が人間となるには、その人の魂を食らう事…つまり、あなたはシロガネに命を狙われている身なんですよ」
 美汐ちゃんの声が、明らかに涙声になっているのが解る…そりゃそうだ。好きだった奴が豹変して、それで他人の命を狙うんだからな。
「…そうだな……」
「陣内さんは、怖くないのですか?」
「俺は自分の身は自分で守れる……それより、美汐ちゃん…君の方が俺は心配だ…」
「えっ!?」
 美汐ちゃんは驚いたように、見上げた。
「…あいつは君が自分を求めていると言った…だから、奴が君を奪いに来るかもしれない…それが不安だ」
「…陣内さん、あなたはあまりにも知らな過ぎます」
「知らない、そうかもな……俺はいつも君の事を知っているようで、色々相談に乗ってやったが、結局何も解っていなかったな…だけど自分のかたは自分でつける…それだけだ」
 そう言い、俺は美汐ちゃんに背を向けて中庭から出て行った。少しの罪悪感が残った…あの子の気持ちを知ったから、シロガネや俺に対する気持ちを……なら尚更…あの子に悲しい思いはさせたくない…この戦いには巻き込んではいけないと俺は思った。
 戻れなくなる…妖狐を深く知ってしまえば………二度と戻れない。だが、魔物との戦いから、俺がもう戻る事ができない戦いの中に身を投じた。自ら戒めの力……白狼に戻る事も考えた…。だけど、あの子は俺とは違う…そんなに強い物ではない。シロガネと俺との戦いに抵抗が見られる…だから俺も戦いにくい……
 けど、美汐ちゃんが自分の口から言ってくれれば突破口は開けるんじゃないか?

「…おう、どこ行ってたんだ陣内」
 クラスに戻ると、まず最初に北川が話しかけてきた。
「ふん、こう言う時でも勉学にいそしむのも悪くはないと思ってな、図書室に行ってた」
「珍しいわね、滅多に図書室なんて行かないでしょ」
 美坂がもう保健室から戻っている…大丈夫みたいだな…
「センコーどもが職員会議で、今日のあれで警察を呼ぶかどうか決めてるらしいぜ」
「そうか……」
 今回の事件だったら、彼等も動き出しているかもしれないな…G3ユニットも…また世話になるのかな。
「陽介君、首から…血が出てるよ」
「ん?」
 名雪が、心配そうに俺の首を指差して俺は、首元に手をやって見たらやっぱり血が出ていた。
「本当だ…さっきか」
 シロガネのナイフで、傷がついたのだろう……
「さっきって?」
「いやな、さっき図書室で本棚の本がばさばさーって落ちてきてな……全弾命中した」
「わ、それは痛いよ〜大丈夫?」
「俺は丈夫だって、言わなかったか?」
 俺はあえて、嘘を言った、こうも言わないと名雪は納得はしないだろうが…さらに心配をかけさせてしまったようだ。
「対した事はない、難しく考えるなよ……」
「うん、そうするよ〜」
 それで、俺は自分の席に座ると…
「うまく言い包めたわね…嘘なんでしょ?」
 美坂に確信をつかれたが…ここは会えて冷静に…
「本当に図書室の本棚からばさばさーって落ちてきたんだよ…」
「そう?」
「何度も言わせんなよ…」
 俺はそう言い、しばしの眠りについた…少し疲れたからかな……

 果たして、美汐ちゃんは俺に話してくれるか?俺を先輩として見ないで……
 満月の日は…明後日か……

「ばいばい〜陽介君」
「じゃな……」
 部活が終わり、名雪と別れて俺は帰路へとついた。帰ったら、電話でいろいろ聞かなきゃな、極東支部の人達に今日の事件の事を、詳細に調べたはずだから。
 そして、商店街に差し掛かった所で……
「あれ?あの子は……」
 商店街のコンビニの前でぽけーっとその中の何かに熱い視線を送っている少女がいた。何度か視線を送った後に自分の財布に目を落としてあう〜と言っている。
「…真琴……ちゃんか?」
 確かにあれは、相沢の所で居候している真琴ちゃんだ。
「あう〜後一つなのに、お金が少ないよ〜」
 純粋な瞳からは、あのシロガネの同族とは考えられない。けど、彼女は違う……敵意も悪意もない…それは解る。彼女はあいつの察するに人間の魂を食わずに人となった…それは何故だろう……妖狐とは、人の魂を食らわなければ人とはならない。だけど何が彼女を人へと…
 それにしても、もう夏だってのに(7月です)肉まん売ってる所がまだあったなんてな。
「うーんどうしよう…もうここだけなのに〜」
「お困りのようですね、お嬢さん」
 俺は何だか見るに見かねて、真琴ちゃんに紳士的に話しかけた。
「あう?」
「さっきから、店の中をじっと見てたからな…気になってな」
「あ、あうっ、あんた誰よぅ〜」
「相沢祐一の知り合いと言ったら良いだろう。でも、名乗るならまずは自分からじゃないのか?」
「あうっ、そりゃ…そうだわ…沢渡真琴よぉ、さあ名乗ったわよあんたは一体何者よ」
 武士道はそれなりにあるようだな……さすがは狐と言った方がいいか…関心してしまう。
「陣内陽介だ、陽介とでも好きに呼べ」
「あう、よろしく…ってああっ、祐一の知り合いって言ったでしょ……あう〜このまま何かする気?」
 うん…何だか、少し勘違いされているようだな……それ以前に相沢の私生活が段々疑問視されているぞ…そんな奴の中に、母親と妹を置いておいて、いいのか?
「俺は別にそんな気はない……それより、どうした?」
「あう…肉まん買いたいのに、お小遣いが少なくて……」
 やはりそれが目当てだったか……
「おし、俺に任せろ…」
 俺は店にづかづかと入り、千円の札をレジに出して…
「これで、買えるだけの肉まんをくれっ」
 と単刀直入に、その店員に申し入れた。店員の女の人は驚きながらへっと言う顔をしていたが、無言で頷いて千円分の肉まん(10個)を買い占めると…
「つりはいらん、取っておけ」
 そう言い残して、店を後にした。久しぶりに素の俺が出たな、俺らしくもない……
「かっ…かっこいい…」
 出てきた店からそう言う声が聞こえたと思ったが、この際気にしないでおくとしとくか。

 そして、彼女の待つ場所にまで来ると、肉まんの入った袋を彼女の前に付き付けた。
「ほらよ…お嬢様」
「うわ、本当に買ってきた…」
 意外そうに、俺の買ってきた肉まんの袋を受け取る。
「俺の奢りだ、好きなだけ食え」
「あう〜…物で吊ろうったってそうは行かないからね〜」
「そう言っておいて真っ先に食っているのは誰だ?」
「あう〜」
 真琴ちゃんはすでに、袋の中の肉まんを一つ口にしていた…少し困ったような顔をして上目遣いになる。まだまだ、俺は疑り深い奴らしいな……仕方ない…
「さあ、次行くぞ…」
「あうっ!?やっぱり、真琴をとって食おうっての?」
「俺はそんなやましい気持ちは微塵もない…手篭めにしようとも取って食おうとも思わん…安心しろ」
「う〜何だか…信用して良いのか悪いのか…何だか、目つきも怖いし…祐一の仲間だし…」
 何だ、俺は相沢と同類項とみなされているのか…少し嫌な感じだな…
「男がみな相沢と同じような助平とは違うぞ…それにさっきも言ったように俺はそんな気は無いからな…とにかく、行くぞっ!」
「あうっ、まっ待ってよぅ〜」
 俺はなぜか、真琴ちゃんの持っている肉まんの袋を取り上げて先に進むと真琴ちゃんも自動的に着いてきた。言ってみるなら、釣りだ……
 そして…俺は真琴ちゃんと共に、商店街珍道中としゃれ込んで…色々な場所に連れて行った……その間に、相沢の事を話してもらい…取って置きのイタズラグッズのあるおもちゃ屋へ行ったり、1時間500円だが店員にばれなければ、何時間でもいられるマンガ喫茶の死角を見切る方法やらと色々伝授してやった。ほとんど北川から教えてもらったんだが……
 その内、俺と真琴ちゃんは…後1つとなった肉まんを食いながら歩いているとゲーセンの前に差し掛かった。
「ん?どうした、真琴ちゃん」
「…あう……」
 真琴ちゃんは立ち止まり…じーっと、プリント機を遠くからじーっと恨めしそうに見つめていた。プリント機では何人かの俺の学校の女生徒達がいて取っていた。
「興味あるのか?」
「ふぇ?ちっ、違うわよー」
 真琴ちゃんはイタズラグッズの入ったビニールを持ちながら両手をぶんぶんと振った。
「あう〜…」
 でも恨めしそうにまた視線をそっちに向けている。しばらくして、取り終えたのか女の子達は立ち去って行った。チャンス…
「……来い」
「あうっ?」
 俺は真琴ちゃんの手を引っ張って…空となったプリント機に向かって行った。真琴ちゃんは軽くて俺に引きずられて行った。
「あう〜やーだーっ!」
「…いいから、俺と一緒に撮れば怖くない」
「そーじゃなくてーっ!」
『フレームを選んでねっ♪』
 と言っている内に、モニターが4つのフレームを選択するようになっている。うーん、この機種は鮫島が開発した『アニマルプリンター!』こと、アニプリだな…
 鮫島って何でもやるな、感心してしまう……一部では、某大手企業のメイドロボを人型に変えた張本人とも言える…
 とっ言っている内に…
「いーやーっ!」
「真琴ちゃん、どのフレームがいい…?」
「じゃあ、この狐さん♪…ってちがーうっ!」
「狐だな…よし」
 親近感か?
「ちーがーうーっ!」
「ほら、撮るぞ…笑え」
「にっこり♪」
かしゃっ
「だーかーらーっ!」
「もう一度来るぞっ!すごくいい顔で笑えっ!」
「笑顔っ♪」
かしゃっ
「あうーっ!」
「これでラストだ、今までで一番の笑いで行けっ!」
「あうっ♪」
かしゃっ
「あうーーっ!(怒)」
「解った解った…おっ、出てきたぞ」
 真琴ちゃんとのノリツッコミを楽しみながら、撮られたシールが出てきた。うん、度の笑顔も可愛くてよろしい…俺的に見て…
「よしっ、笑顔がかわいいっ合格っ!100点」
「あうーっ、100点だーっ!……って、何一人で盛り上げてんのよ、あんた」
「何だ、不服か?いい顔で撮られてるぞ…」
 俺はそう言い、真琴ちゃんと撮ったプリクラを見せてやった…真琴ちゃんはあうーと言いながらも…
「あう…本当にいい顔…ぷりてぃー」
「自分で言うか?」
「あう〜一方的に撮ったのはヨースケでしょーっ」
 真琴ちゃんがまた怒り出すと、俺は…はにかんで……
「ふん、やっと…俺の名前を呼んでくれたな…」
「……あう…」
 真琴ちゃんの頬が少なからず赤く紅潮したように見えた…そして…
「ありがとう…ヨースケ…」
「ん?」
「今日は本当に楽しかったわよ〜、色々な所に行ったり…色んなこと教えてもらって…」
「……俺も楽しかったぞ、真琴ちゃんと会えて」
「あっ…う〜」
 俺が真琴ちゃんの頭を撫でてやると、更に真琴ちゃんは頬を赤くして縮こまってきた。
「ははっ、面白い奴だな…」
「あう〜遊ばないでよ〜」
「すまんな…ははっ」
 何だか、不思議だな…この子といると自然な笑いがでる…俺らしくもないが…嫌いではない気分にしてくれる…
「向こうっ」
 真琴ちゃんは、商店街の向こうを指差した。
「ん?」
「真琴の一番お気に入りの場所があるのよーっ!真琴はもう家に帰る時間だから帰るから、後は自分で見つけなさいよ〜」
「ああ…ご親切にどーも…」
「勘違いしないでよ〜色々教えてくれた借りを返すだけよ〜」
「はいはい」
「あう〜…」
 少し素直ではないが…無邪気で表情がコロコロと変わりやがる…まったく可愛いくて騒がしい居候がいて…秋子母さんも大迷惑(満足)だろうな。
 あの人は賑やかが好きだからな……
「それじゃあねっ!もう二度と会うことはないわよ〜」
「俺はもう一度会いたいけどな…」
「あう〜…」
「怒るな怒るな…じゃあな」
「またね〜」

 そう言い、真琴ちゃんと別れると、俺は真琴ちゃんから言われたルートを辿った。真琴ちゃんも二度と会うことは無いと言っておいて、結局またねって言ってるし…
 はにかみながら、進むと…俺は広い丘へと到着した。
「……ここは…」
 夕日で赤く染まる小高い丘…高い所まで来ると、さっきまで歩いていた街が一望できるここは、ものみの丘…彼女のお気に入りの場所だと言う事も頷ける、ここは彼女や…シロガネの産まれた場所でもあるからだ…俺は腰を下ろしてみる…そうだ…相沢や…美汐ちゃんがここで彼等と会ったのも……
「ここです……」
「…!?」
 振り返ると、そこには美汐ちゃんが立っていた。
「……そう、ここで私はシロガネと出会いました」
「美汐ちゃん…」
 この様子じゃ、話す気になったんだな…
「陣内さんは悲しいお話が好きではないと仰いましたね…でも」
「ああ、俺は『話したくなければ無理はするな』と言っただけで、本気で聞きたくないなんて一言も言ってはいない……」
「そうですね…意地悪ですね、陣内さんも案外…」
 美汐ちゃんはそう言うと、俺の隣に腰を下ろした。
「まあそう言うな……良いだろう…聞かせてくれ。全てを…」
「はい……」
 美汐ちゃんは、それから遠くの街を見ながら…表情を変えずに…眈々と話し始めた。まずは、彼との…シロガネとの出会い……それは、美汐ちゃんが中学に入学したての時、友達付き合いの苦手だった美汐ちゃんは、この丘で一匹の珍しい銀色の子狐が人の仕掛けた罠にかかっている所を見つけて助けてやり、家で手当てをした……そして、銀色と言う事から『シロガネ』と言う名を付け…怪我が治るまで美汐ちゃんはシロガネを家で飼った。
 シロガネは、当時の美汐ちゃんにとって本当の友達で、話し相手だった…そして俺の存在をシロガネに教えてやった数日後、シロガネは突如として美汐の前から姿を消したのだ……狐としてのシロガネはだ…
 その半年後…彼女の前にシロガネは戻ってきた、人として…俺の顔でだ。シロガネは自分の記憶を一切無くして…ただ、美汐ちゃんに会う為だけに戻ってきたと言う。ただし、それは束の間の一瞬でしかなかった…妖狐の掟、完全なる人となるには…人となった自分の顔と同じ人物…もしくは心を通わせた人物の魂を最高でも4週間以内に食らわないと人にはなれずに…その存在は消えると言う…
 ただ、シロガネは銀色の狐…彼等の中では異端児的な存在で…普通では、自我が薄れて行く(真琴の場合、幼児化が例)はずだが…シロガネは自我は薄れず逆に無くしたはずの記憶が戻って行ったのだ。そして、自分の運命に気づき…当時のシロガネは俺の魂も当然美汐ちゃんの魂も食らう事を拒んだ…人の魂を食らうんだったら、死んだ方がましだと言った……その後、シロガネは…ここで光の粒子となって消えた。
 美汐ちゃんが見守る中……
「シロガネは…光になる時笑ってました、安らかでしたよ…とても」
「……そうか」
 最終的には、夢と同じ内容だったが…そんな事をあいつは言っていたとは…
「おとぎ話みたいでしょう」
「ああ……けど、君はそのおとぎ話の主人公だったとはな…」
 そう言ったっきり、美汐ちゃんは黙り込んでしまった…やはり、悲しかったのか…情を移せば移すほど、待ちうける終幕は悲しき物だ……
 恋香が神奈だった頃の話しをして貰った時も同じ気持ちだった…、ちっ…やはり、俺はこの手の話しは好かない……だが、これで突破口は開けたのか?……
「私の…私のせいなんです…」
「何だと…」
 沈黙が続きやっと口が開いた美汐ちゃんから出た言葉は意外な物だった。
「私が…シロガネに情を移さなければ………こんな事には…」
「やめろ…」
「シロガネに陣内さんの事を教えなければ……」
「言うな……」
 美汐ちゃんは俺が止める声を聞き入れずに、小さな声でのその呟きは俺の耳に痛く感じられる……これは、美汐ちゃんの心の叫びか…今まで押さえていた、心の…叫びか?
「私が……」
 美汐ちゃんはそう言いながら俺の体に倒れこむように…ふわりと覆い被さってくる。一瞬バランスが崩れ倒れそうになったが、美汐ちゃんの体を片手で抱きとめて…余った左腕で支える…それでも、美汐ちゃんは身を絡めて…
「……あなたを好きにならなければ………こんな事には…」
 …上目で俺を見る…もう、瞳には大粒の涙が溜まっていた。何を求めているのか、俺にはわかった……彼女は、自分の為にこの同じ顔を持つ二人は刃を交え…殺し合う運命、それを直視した悲しみ……それは絶えがたい物だ…
 もう、慰めの言葉なんざ…浮かばなかった。
「……それでも、私はだめなんです…無理なんです…あなたもシロガネも嫌いなれない…どちらかを選ぶなんて、できません……これは罪なの?二人の男性を好きになった私の…罪なの……教えてください、陣内さん……」
 美汐ちゃんが俺の胸の中で泣いている……彼女はこれほどまでに小さな物だったのか…俺は片手で彼女の頬をゆっくりと上げ…
「人を好きになる気持ちを罪と考えるな……」
「え……」
「君は、俺を好きになった事を罪と思うのは間違いだ…」
「…それは、違うのですか?」
 俺は、美汐ちゃんの頬を撫でながら続けた。
「誰かを好きになるのは自由……それが人であろうと無かろうと、その気持ちに間違いは無い…シロガネは今回の事に、幾重にも偶然が重なった結果でしかない…だから、君が俺を好きになったのも、シロガネを好きになったのも…罪ではないんだ…それで……君を咎める者がいれば、俺は絶対に許さない!」
 強く、俺は彼女に言い放った瞬間…丘に風が吹いた…美汐ちゃんの頬を涙が伝う。
「だけど、こんな事言っても…俺は君の気持ちにこたえる事などできないがな…」
「解っています……あなたにはもう、好きな人がいると言う事は…」
 そこまで悟られていたか……
「ああ、君と同じように心に深い傷を負った者だ……俺は彼女を一生かかってでも、守りぬくと決めた………だがな…」
 俺はそう言うと、美汐ちゃんの体をぎゅっと抱きしめて…
「その人と同じ傷を持った者は大勢いる…俺はそんな人達を守りたい…君を守りたい…」
 佐祐理さんや舞さん…今まで俺が会ってきた人達はみんなそうだった、心のどこかで傷を持っている……名雪もそうだし…かと言う俺もそうだ……恋香も…
 美汐ちゃんは、俺の言葉の後…再び俺に目線を合わせる…
「陣内さん…私…」
「言ってくれ……君の口から…」
 この子はそれを言わなかったから…今までこんなにつらい思いをして来たんだ…心を押し潰されそうなくらいに……伝えたかったんだ、今まで君は俺に……だけど、俺まで巻き込むことを君は恐れてそれで………だが俺はもう、既に戻れない所まで来ているさ…
 …だから言ってくれ、そうすれば楽になれるよ…
「好きです……陣内さんが、あなたが好き…」
 美汐ちゃんは涙を流しながら枯れる声でそう言った。そして目を閉じた。
「……美汐…」
 何を求めているのかは、俺にはわかった……心の声が聞こえたと言う類ではない…ただ、彼女の表情がそう物語っていた。ここで、それを答えれば彼女の諦めはつくのか?もっと深い場所に行ってしまう……そんな気がして、少し不安だった…
 でも、これは…美汐ちゃん自身の勇気、何年かの苦しみから…解放できるチャンスでもある…それに答えてやれないのは男としては不出来だろう…
 彼女の顎を引いて自分の唇を彼女の唇に当てた…触れ合うだけでも彼女の柔らかな唇の感触は伝わってきた。
 よく頑張ったな……美汐ちゃん…

 長い時間、ここに居たのかもしれない、既に日は暮れて月が照らしていた。ここは太陽の光も、月の光もよく照らす場所なんだな…。
「斬ってください……シロガネを…」
「……何?」
 俺が衣服を整えて、立ち去ろうとした時…後ろで美汐ちゃんが呟いた。
「あれは、以前のシロガネでは無い事は解っています…ですから、あなたの手で楽にさせてあげてください」
 美汐ちゃんが取った苦渋の選択だっただろう……変わり果てたシロガネへの決別は、よほど重い選択だったに違いない。
 楽にしてくれと言うのは、邪悪な物となった魂を浄化してくれと言う意味でもあるだろう……
 俺は刀を持って……美汐ちゃんの方を一瞬振り向いて…また戻ると来た道に視線を戻す。
「解った……」
 その場に彼女を残して、俺はものみの丘を後にした。

 夜の風が少し冷たく感じた……


 NEXTミッション⇒



 また長くなってしまった。しかも戦闘シーンもない…ラブメインだ…でも18禁に達していないから良いだろうっ!(泣)
 それにしても、真琴ちゃんって不思議な子ですね〜陽介君も、自然に笑顔が出てしまうほど…
 真琴ちゃんに関してはまずウラタンダー事態はなゆちゃんエンド後だと私は考えて、全ての人が助かっていることになって…水瀬家には祐一君、あゆちゃん、真琴ちゃんの三人の居候に娘一人の名雪…そして家主の秋子さんが居る事となっています。真琴ちゃんはなぜ戻ってくる事ができたのか……それは次回に明らかとされるっ!

 えっと……今度は美汐ちゃんとのラブシーンですが…あの間はそれなりの事をやったつもりっなんですが、これ以上書いたら全国の美汐ちゃんファンが石どころか、爆発物メール出されそうなので…しかも18禁シーンに行きそうなのでカットしました!

 Y(ヤクト)団的にこれは不味いっ!おいしーシュチュエーションなのに……命が不味いっ!私は味より命を取る主義っ!

 さて次回は絶対に戦闘シーンとウォーハンターを出すっ!絶対にっ!この遅れをとりもどすのじゃーっ!



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