ガシャァァァーーーーーーーッ!!!
「何だとぉぉーーーっ!」
 精神世界が、崩壊して俺は真琴ちゃんを抱えて飛び出てきた。
「……はっ、あれは…」
 どうやら2時間10分って所か……
「まったく、とんだ浦島太郎ごっこをさせてくれたな、シロガネ…」
「貴様っ!?まさか……」
「陣内、陽介さん……」

 ふっ、美汐ちゃんが驚くのも無理は無いな……変身した俺を姿を始めて見るんだからな。
 雲が晴れ…丸い月がものみを丘を照らし…俺は月光を背に……
「闇を斬り裂く一筋の光源……」
 そう言いながら、マフラーを翻し…
“ 狩 人  推 参 ”
「ウォーハンター『陣』推参っ!」
 そして驚く奴に刃を向け……
「反撃開始…」


機動狩猟者
ウォーハンター『陣』
ミッション05『七夕に思いを……』


 時間は少し前、10分ほど前にさかのぼる……
ピト…
「ん…んん……」
 気絶していた美汐は、異様な寒さと肌に触れた冷たい物の感触に目を覚ました。
「やっと起きたね…美汐」
 頭を抱えて、横を見るとシロガネがにこりと笑って自分の隣に座っていた。
「しろ…がね…」
「面と向かって会うのは久しぶりだね…美汐……見ろよ、これ…」
 シロガネが手を空に差し述べ美汐はその先を見ると…空から白く冷たい物がしんしんと舞降りてきていた。
「これは…雪?」
「そう……季節外れの雪だ、夏だってのに雪がふってるんだ」
「……そうね、寒い…」
 自分が夏服の制服のままだったと言う事に気付き、美汐は両手で体を覆った。シロガネはそんな美汐を暖めるようにそっと抱きしめた。
「あっ…」
「こうすれば、寒くない……」
 シロガネの優しさに触れて、美汐は思い切った事を聞いて見た…
「シロガネ…あなたは、あの時のシロガネなの?」
「俺は、美汐の知ってるシロガネのままだよ……あの時と全然変わっていない」
「そう……ん…」
 美汐は安心したかのようにシロガネに身を寄せてくる。そんな美汐の首筋にシロガネは牙を突き立てようとした、だが…美汐は大事な事に気がつき彼を突き放した。
「どうした……美汐…」
「陣内さん……彼はどこ?」
 美汐に質問され……シロガネは…薄笑いを浮かべて…
「陣内?誰だよ…そいつ」
「とぼけないでシロガネ、彼を何処にやったの?」
 更に強く言うと、シロガネは立ち上がり……
「もういない奴の事なんか忘れろよ、美汐…もっと喜べよ…俺に会いたかったんだろう」
 そう言いシロガネは手を広げるが、美汐はシロガネから離れ距離を取って…
「……いない?あなた、彼に何を…」
「ちっ…あいつなら、うざったいから…2時間前に俺の作った精神世界に取りこんでやったのさ」
「精神世界にっ!?」
「俺が作り出した、絶対虚無の世界……時間の流れが非常に遅くてな、こっちでの1時間が向こうでは1分って割合で流れている世界さ」
「それでは、もう…」
 時間はもう7時を回っている…陽介と来たのが5時過ぎ2時間が過ぎているが向こうでは入ってまだ間も無い2分と言う事になる…
「そう言えば、真琴っていう俺の幼馴染も数時間前…その精神世界に引きずり込んだ…今ごろ、二人は落ち合ってる頃だろう……」
「真琴!?あの子まで……」
「何だ、知り合いだったのか」
「どうして、そんな所に二人を送り込んだりしたのっ!?」
 美汐の怒りの叫び声が、シロガネの耳に届く……が薄く不気味な笑いを浮かべると…
「精神世界は時間がまったく遅い場所、あいつ等に対して2時間は120分……つまりこっちでは120時間後…そう5日後に解放してやるつもりだ…その時はもう俺は人間になっている姿をあいつ等は拝むはずだ……」
「そんな…どうして……まさか、あなた」
 美汐はその言葉の意味に驚愕して、ぺたんと座りこんだ…
「陣内陽介の魂なんて最初から副食としか考えていない……主食は、君だ美汐…」
「最初から、私が狙いで……」
 シロガネが近づくにつれて、美汐も段々と恐怖が出て…足で這いながら距離を取る。
「ああ…陣内を呼びこんだのもすべて計算済みさ…騒ぎをあいつの回りで大げさにすれば、美汐…君もかかる…」
「そんな…事って…」
 恐怖より、裏切られた気持ちが美汐の中で渦巻き…悲しさがあふれてきた。
「回りくどく行かなくても、直に美汐をさらえば簡単だったけど……あいにく欲張りなんでね…俺か人間に必要な魂はもう一つ揃えてあった方が良いだろう」
「あなたは、もう……シロガネの心はもう無いの?どこにも、あの時のシロガネはいないのっ!?」
 悲痛な叫びが、シロガネの耳に入るが……
「目覚めたのさ…あの時、美汐の中で消えた時に…一族の人間に対する怨念が…俺を目覚めさせたのさ…人間に復讐するためにな…その時から昔の心なんて捨てた…今はもう、君の知るシロガネはいない……」
「……そう…なの…」
 美汐の中で悲しみが絶望へと変わって行った…全てのシロガネとの思い出がこの言葉により、打ち砕かれた…ように…
 だけど、美汐は…涙を流しながら…シロガネの足にしがみついて…
「魂を食べるなら…私だけにして……陣内さんと真琴は…食べないで…あの子は人になれたのよ…あの子の命を無駄にしないで」
「………なら、尚更だ…真琴は何故人間になったのか興味があるのもやまやまだが、ようやく人になれた同族の魂も…美味そうだ…」
「もう…何も言っても無駄なのね…もうシロガネは戻ってこないのね…」
「そう言う事になる……陣内陽介も、美汐の魂を食って人となった俺を見て…絶望の淵に入る時の魂の味は…格別だろうな……ふふふ、ははははっ!」
 シロガネは笑いがこらえきれなくなり笑い出した…だが美汐も薄笑いを浮かべて…
「ふふ…多分その時はあなたが最後よ…悪魔…」
「何っ?!諦めたのか?命乞いとも取れないが……」
「そうとって貰えて良いわ……私の魂を食べて人間になっても、あの人は絶対にあなたを許しはしないっ!あの人は必ずっ…あなたのような魔を斬る。あなたには、あの人を殺す事は…不可能よっ!」
「くっ…減らず口をっ!!」
 そして、シロガネの爪が美汐に向かって振り下ろされた。
「(さようなら……真琴、…さようなら、一番好きだった人…)」
 美汐の脳裏に…真琴と陽介の顔が浮かんだ瞬間……空間が裂けた。

ガシャァァァーーーーーーーッ!!!


 そして話しは今に戻り…
「美汐ちゃん、無事なようだな……」
 って…そうでもないか……後少しでシロガネに襲われそうになっている。
「あうーっ、美汐も来てたの〜」
「待て、真琴ちゃん……」
 俺の後ろから美汐ちゃんに走り寄ろうとした真琴ちゃんを制してやる…
「真琴っ!陣内さんっ!くっ…」
 だが、走り寄ろうとした美汐ちゃんの首にシロガネは腕を巻きつけ締め上げた。良そう通りそう来たか…首を折る気だ
「近づいたら首を折るぞ…変身を解いて刀を置けっ!」
「あっ、美汐っ!ちょっと、美汐を離しなさいよ…」
「真琴ちゃん落ち付け……解った、刀を置いてから、変身を解こう…」
「えっ!?どう言う事?」
 真琴ちゃんがきょとーんとしながら俺に聞いてきた…だが俺は、刀を地面に突き立てた。
「けっ、何がウォーハンターだ…単なるこけおどしか…さあ、次は変身を解け…」
「……ヨースケぇ、どーすんのよ〜」
「じ…じんな…いさ…ん…」
「美汐ちゃん、安心してそのままの体制でいろ……今からそいつを倒すから…」
 俺は美汐ちゃんにそう言うと…美汐ちゃんは安心したかのように目を閉じた。
「何を言っている…丸腰になり、気でも狂ったか!?」
「気狂いで回りが見えないのはどっちだ……」
 俺はそう言い放ち…刀を地面に突き立てたまま柄を逆手に持ち替えて…
「土団鉄爪っ!!」
 一気に地面から刃を振り上げた途端、地面を爪のような物が三本の道を築きながら…シロガネと美汐ちゃんに向かって伸びて行った。
「何っ!!ぐぁぁぁーーッ!」
ズバァァァァァーーーーン!
 美汐ちゃんを突き放して彼女を犠牲に逃げようとしたが、土の爪は美汐ちゃんを避けてシロガネを追尾して直撃した。
「やったぁっ!」
「……ふっ、決まったな対魔一神流奥義の系『爪』の一つ……土の爪、土団鉄爪…爪は地を這い、敵を引き裂くまで追尾する。お前は、この爪から逃れる事はできない…」
 そして、真琴ちゃんと一緒に倒れこんだ美汐ちゃんの元へと走り寄る…
「美汐ーっ!だいじょーぶっ!?あいつに変な事されなかった?」
「うん、大丈夫よ…真琴、安心して…」
「良かったぁ…」
 安心して美汐ちゃんに抱き付く真琴ちゃん…俺は、シロガネの亡骸の方へと目を向けた。何とか倒したが、あっけない奴だった…卑怯者だったけど、またあの精神世界に連れて行かれたら厄介だったな。目的の為なら、かつて好きだった者や仲間の魂まで奪おうと言う卑劣さ…万死に値する物だ……
「さあ…奴は死んだ…後は俺に任せてくれ」
「よ…ヨースケ…し、本当に倒したんじゃ…なんで、起きあがってるの?」
「何っ!?」
 真琴ちゃんの表情が恐怖でゆがんでいるのを確認して、俺は振り返った……そこには、シロガネがゆらりと立ち上がっていた。爪を食らって、顔から体にかけて巨大な爪痕があり…右目はぬけ…視神経でぶら下げている…まるでゾンビみたいな姿だ…
「あっ…ああ…」
「それで倒したつもりかよ、陣内…」
「爪を食らってまだ生きているなんて…」
 そう言うと、シロガネは身構えて…四つんばいになると…
「やっぱ、戦局は五部と五部でやらなきゃ割に合わんだろう……」
「…何をするつもりだ?」
「こうするのさ……がっ…がはぁぁ…ぐぅぉぉっ!」
 シロガネがそう言うと、急に奴の体の筋肉が増強し倍化して行った。躍動し…顔の形も段々と変わって行く…いや体自体が変形しているんだ。
『がぁぁぁ…食らうにはやはりこの姿でないとな…陣内陽介ぇーーっ!』
 俺達の目の前で、シロガネは段々と3メートルもある巨大な狐へと変貌して行った。
『殺す…殺してやるっ!全て人の魂を食い散してやる!』
 もう、理性を失っていやがる……それに凄まじい妖気の暴走を感じる、心を読むのを止めて、強行で来るか…そっちの方が尚更厄介だっ!
「真琴ちゃん、美汐ちゃんを安全な場所に避難させてくれっ!」
「あうっ…うんっ!」
「陣内さん…気をつけて、シロガネは心はおろか、姿さえも捨てて来ます」
「そんな事、見れば解る!」
 俺は刀を握る手に力を込め…妖狐の姿へと変化して行くシロガネと対峙した。美汐ちゃんは真琴ちゃんの肩を借りて俺とシロガネの戦いが見えやすく安全な場所へと移動した。
 それを確認すると……シロガネの方へと向き直る。
「怨念が渦巻いている…これは、人によって殺された幾多の妖狐の念…憎しみはこれだけお前を変えるかっ!!」
『がぁぁぁ…貴様の命運は尽きた……陣内陽介ぇーっ!』
 両足には、狐火をまとい…尻尾は九つに割れ、鬣は恨みの炎が燃えあがるように逆立っていた。伝説上の妖怪…『九尾の狐』そのままではないか、これが怨念の集まった銀色の妖狐の最終形態か…
『ぐぉぉぉーーーっ!』
 シロガネは俺に向かって牙と爪を向けて襲いかかって来た。
ガギィィィーーン!
 俺はその襲い掛かる牙を、刀で押さえるが…腕は奴に捕まれた。
ベキッ!ガシュゥッ!
「くっ!装甲がっ!!ぐぁぁっ!」
『ぐぅぅっ!』
 奴の爪が光波粒子でできた特殊装甲を突き破り、爪が腕に食いこんで血が流れ出る。なんて強さだ、パワーなら向こうが上かっ!!
「離せっ!」
バキッ!
 刀の柄で、シロガネの顔面を殴り付け…一瞬ひるませてジャンプして逃れる…
『ぎゃぁぁっ!』
ゴォォォーーーーッ!!
 口からこれまでにない凄まじい炎を吐いてきた。俺は刀を回転させて、その炎を風圧で避ける…ちっ、腕をやられて思うように回らない、余波がきつい…。
「くっ!」
『ぐおおっ!』
バシッ!
 シロガネは俺が炎をいなしている隙をついて体当たりを仕掛けてきた。
「ぐっ!倍返しだっ!」
バシッ!!
 俺は体当たりしたシロガネの顎を斬り上げる、ハイタイムを叩きこんで…上を向かせてその遠心力を使い高くジャンプをして、奴の頭部に向けて兜割りを食らわせた。
『ぎゃうっ!』
ザシュゥッ!
 兜割りが奴の頭部ではなく、肩を斬り裂き……奴の爪が俺の肩の装甲を突き破り…肩の肉を抉る。双方の肩から血が吹き出た。
「ぐっ!」
『ぐあぁぁーっ!』
 互いにダメージを食らい、着地して……奴は9本の尾の先端に、炎の弾を作る。もしかして、あの9本の尾が炎の源…ならば全て斬り落とす!俺も土に刀を突き刺して…
『鬼火魂!』
「土団鉄爪!」
ズバァァァーーーーーーンッ!!
 炎の弾と土を引き裂く爪が、互いに交差しあい…相殺するが、9つの炎魂の内3つは消しきれなく、俺はジャンプして、奴との間合いを空中で計り…体の回転を利用して刀を振るう。
「飛翔鉄爪!」
バシュッ!バシュッ!バシュッ!
 空中回転を利用した、爪技が奴の尾を3本斬り落として…俺は着地して振り向いた瞬間には既に遅かった。
『大豪爆炎!』
ゴォォォーーーーーッ!
 刀を回転させる隙も作らず…奴の炎に飲まれた。
「ぐぁぁぁーーーーーーっ!!」
 俺は吹き飛ばされ、美汐ちゃん達の居る所に倒れこんだ。
「陣内さんっ!」
「ヨースケぇっ!」
 美汐ちゃんと真琴ちゃんが、俺に駆け寄ってくる……身に纏っている強化服の装甲が灼熱の炎により熱せられて熱くなっている。体が焼けるように熱い……
 くっ、奴はさすがに強い、シロガネはもう一人の俺でもある…戦闘能力が殆ど同じ者同士がぶつかり合ってるんだ……自分が敵か、厄介過ぎる…
「陣内さん…しっかりっ!」
「気を持ってっ!立ち上がってっ!」
 それは向こうだって同じはず……だが、何かが違う。欲求と憎しみだけで…奴はあそこまで戦闘能力を上げている…
 俺は二人の声に押され…上体を起こし、刀を杖代わりに…して立つ。
「陣内さん…」
「ヨースケッ!」
“スーツ破損率52%…危険レベルに到達…離脱せよ…”
「誰が、離脱するかっ!」
 コンピューターの声を無視して、俺は…前を向いた、そこには丘の草を燃やしながら、こちらに近づいてくるシロガネの姿が見えた。
『尾を狙って斬るのは正解だが……ここまでだ、まだ6本ある…』
「はぁ…はぁ、美汐ちゃん達に手を出すと、殺す…」
 ここまで飛ばされたのは大誤算だったな……二人を巻き込まないように二人を背中に庇って…刀を手に取る、肩と腕のダメージで両腕に力が入らない手に力を込める。
 だが、シロガネは予想外な行動に出た。
『……なあ、真琴…』
「あう?」
『……俺と…一緒に来いよ…』
「はっ!」
 シロガネは、その視線を真琴ちゃんに向け…まるで誘うように手招きしている。真琴ちゃんは殺気立っているシロガネの視線にびくっとしたが、シロガネの視線と合わさり…段々と、目を離さない…まさか、精神に入りこんで…
「あ…う…」
「真琴…聞いちゃ駄目っ!」
 真琴ちゃんの瞳の生気が失われて行くのを、美汐ちゃんが必死で呼びかけた。
『人と言うものはつくづく愚かな生き物だに自らの力を示す為に…同族同士争い…殺し合ってきた…そして、自らが最高の生物と言い…自然を荒らす、やがてはここも魔の手がかかる……お前はそんな人間に干渉する事はないだろう…』
「やめろ…シロガネ…」
『人には見きりを付けて、俺と来い……』
「あ……」
「やめろぉぉっ!!」
「あっ!」
 真琴ちゃんが歩き出したのを俺は制して、先に俺は刀の切っ先を突き立てシロガネに突進した。
『うざいんだよ…』
バシィィーーッ!!
「がぁぁっ!」
 冷淡な笑みを浮かべ、シロガネは突進して来た俺を殴り飛ばした。ダメージを負っていた為、力が出ず糸も簡単に飛ばされてしまい、刀から手を離してしまった。
 手から離れた刀は…真琴ちゃんの足元に突き刺さり……刃は多少真琴ちゃんの頬を傷付け、小さな傷を付けた。
「あうっ」
 丁度それた視線が俺が倒れ込んだ場所に行った。
「ヨースケが…陽介がやられる…」
『なあ、真琴…俺と一緒に、人を全て殺して魂を食らおうぜ……』
 真琴ちゃんはその言葉にギリっとシロガネを睨み付け……
「断るわよっ!そんな事っ!!」
ドスッ!
『ぐっ、ぐぉぉーっ!』
 その言葉に俺はバッと立ちあがり、丸腰の状態のまま…シロガネの喉元に拳を突き刺していた。腕が刺さった部分から大量の血が俺に振りかかり、シロガネはもがく…その間にも真琴ちゃんは続ける。
「人の魂も命もいらない…、真琴そんなの食べるより肉まん食べていた方がずっといいもんっ!」
『がるるっ…ならば何故、お前は人間になれたっ!魂を食わずにっ!!それで何故俺は人間にはなれないっ!!同族なのに…何故違うっ!!』
「勘違いしないでよっ!真琴はあんたの仲間じゃないわよぉーっ、最初から人間のつもりよぉーっ!!」
 真琴ちゃんの一括は、それまで張っていたシロガネの精神操作を全て一掃させ、シロガネに殆ど帰ってきて、よろめいた所を俺は蹴りをいれて突き放す。
『がうっ…解ったよ…ならば、お前も一人の人間として、死ねぇぇっ!!』
 シロガネは真琴ちゃんと美汐ちゃんに向かって、尾から狐火を放ってきた。
「あうっ!!」
「真琴っ!!」
 美汐ちゃんが真琴ちゃんを庇う様に押し倒して…それでも炎の弾丸は二人に向かって行った。
「(みんな…美汐…ヨースケ………祐一ぃ…)」
ガシャァァァーーーンッ!!
「ぐぁ…」
 大音響の後…光の粒子が二人に降り注いだ……俺が背中で炎の弾丸を全て受け止めた為、スーツが砕け光の粒子となってしまったためだ。
「……がはっ…」
「陣内さんっ!」
「ヨースケっ」
 体中が悲鳴を上げている…俺はその場に膝をついた。強化服も砕け…今の爆発で…更に遠くに刀は飛ばされちまった。
 だけど、俺はまだここで歩みを止めるわけにはいかないっ!諦めたらもう終わりなんだ。
「陣内さん、もうやめてっ!これ以上戦ったら…あなたの体が…」
 美汐ちゃんが俺を止めるが、俺はどこうとはしない確かに体中の至る所から出血して…段々と気分も悪くなってきたが、俺は美汐ちゃんの頭を撫でて…
「守るって言ったろ…」
 そう笑いかけた、手のひらで、体から出てくる血を集めながら…
『ふ…さっきとは形成が逆転したな、変身は解け…刀は向こうへと飛ばされた。無様な姿だな、陣内陽介……最後に言う事はあるか?』
 シロガネがすぐ後ろに近づいてくる……だけど、真琴ちゃんが前に出て、俺達を庇うように両手を広げた。
『何故だ、お前はその人間どもに干渉する……こいつらは、自分勝手な理由で我々同族を殺したり、自然を荒らしている人間に…お前は憎くないのか?』
「いい加減にしなさいよ、シロガネっ!確かに、人間は自分勝手な事をする奴も多いけど……人間の全てがそんな心が歪んだ人じゃないっ。真琴人になって色々な人と出会った…みんな、変な人ばっかりだったけど、みんな大好きっ!」
「真琴ちゃん……」
「真琴…」
 今まで会ってきた人達…水瀬家の人達、…美汐ちゃんや俺…そして相沢のことか…
「あの人達は真琴が人間だって言ってくれる……居場所ができたから。真琴がいてもいい場所を見付けたからっ、だから真琴は帰ってきただけ!」
『…それだけで、ただそれだけで…お前は人間になれたのか…』
 段々と、シロガネがよろめき始めた…そして今度は美汐ちゃんがシロガネの方を見て…
「シロガネ、あなたが今している事は…あなたの言う身勝手な人間と同じ事よ……」
『何だと……』
「回りを御覧なさい」
 美汐ちゃんの言葉にシロガネは回りを見渡す。自分が生まれ育ったものみの丘は自分が放った炎により大半が焼かれていた。
『あ…ああ…』
「そう、今ここを荒らしているのは、紛れもない…あなたよっ!」
『黙れっ!黙れ…黙れ…人間など、みんな食い殺してくれるわっ!!』
「よく言ったっ!二人ともっ!!」
「わきゃっ」
 俺は、そう言って立ちあがって…真琴ちゃんを美汐ちゃんの方へと押し倒して…半狂乱になっているシロガネに向かう。
『丸腰のお前に何ができるっ!!』
「手に刃無くとも、戦う方法はあるっ!」
 手に溜まった俺の体から流れた血をシロガネに向かって投げ付けた。その血は、空中で三本の爪となりシロガネの体と喉元、そして左目を引き裂いた。
『ぎゅわぁぁーっ!』
「無刃血爪…刃無くしても、その血は爪となる」
『何ぃ…自らの血を爪に変えたか…』
「これが、俺の切り札だ……はぁ…身を削るから、気分が悪くなる…」
 刀が無いからな、相打ちを狙う……刺し違えても倒すつもりだ。
「それに、二度と変身できないわけでもない…ロンギヌゥゥーーーース!!」
 俺は天にブレスをかかげ、光が夜の雲を切り裂いて…空へと上がって行った。その光は、SUP極東支部から、俺の専用機…天槍を呼び、風を切り…俺の上空へと現れた。
「スーツは壊れたように見えて、緊急防御システムで収納されただけだ。これが俺の本当の変身だっ!!」
 俺はマフラーを天高く投げ……ブレスを天槍に向けて掲げて…
「光波っ!招来っ!!」
 俺は一度、破損した強化服へとなり…天槍から放たれた光波が破損した部分へと吸収され…修復されて行った。
「光電子修復……100%完了…『狩人』修復完了…」
 俺の強化服は、完全に修復された…そして、落ちてきた黒いマフラーを首に再び巻き付け……
「闇を斬り裂く一筋の光源……ウォーハンター『陣』…推参っ!」
 刀が無くとも、血は流さなくとも…肉弾戦のみで十分戦えるっ!だけど、あいつに使った無刃血爪のせいで体力が十分じゃないがな…
「はぁぁぁぁーーーっ!」
『しゃらくさいっ!!』
 俺は奴に向かって走り…シロガネは向かってくる俺に炎を吐きかけた。避けずに俺は炎の中に飛びこんで奴を押さえこむ。
『殺すっ!殺してやるっ!!』
「…心無き人間が、お前達の命を無下に扱ったことは事実……だが…人間全てが心の無い者だとは限らない」
バシィッ!
 俺はシロガネにそう言いながら、殴り付ける。シロガネも俺の攻撃にカウンターを加えるが、俺は攻撃を続けながら言いつづけた。
「シロガネ、お前が会ったのはお前の言う心無い人間だったか!?」
『ぐぁぁぁーーっ!』
「少なくとも、俺はそうだとは思わない!美汐ちゃんが心が無いなんて思いたくない…」
『貴様に解るはずはないっ!俺が味わった…仲間が味わった痛みっ!』
 シロガネは腕を振り上げて俺に攻撃を仕掛けてきた。俺は…それを避け、シロガネの顔面を殴り付ける。
「お前はそう言って、新たな憎しみを呼ぶのか?憎しみは…また更なる憎しみを呼ぶだけだっ!……」
『余計な悲しみが増えるよりまだマシだろう!』
 その言葉は俺の怒髪点をつくのには十分な言葉だった……
「お前が異端児だと言う事がよくわかった……心の無い人間が、儚い命を粗末に扱うのは許されない行為だ……だが、さっきも言ったように…人が皆そうではない事が解らないのかっ!…俺はその人達の命を死しても守り通すっ!…お前にその命まで刈り取ろうとする権利はないっ!!」
ズガァァァァーーーンッ!
 俺の懇親の拳が、シロガネを吹き飛ばし…シロガネは地面に叩きつけられる。
『ぐぅぅぅっ!なぜだ…解らない、お前は何故…そこまでして、それだけの力があるのに…それを支配する為に使わないっ!』
「確かに俺は、以前白狼として…自分の力で人々を混乱に落とし入れる大破壊を起こしたさ……人も沢山殺したさ…今更その罪は償える物じゃないと言う事は解っている…」
 そのせいで、恋香という悲しみの魂を呼び起こしちまったのも事実…
『白狼…ならば、何故…貴様も今更……人間に干渉する…』
「真琴ちゃんの言った事と同じ事を言う……最初から俺も人間のつもりだっ!!だからこそ、お前達のような悪から儚き命を守り…俺は悪を狩る…『狩人』だっ!」
 強く、言い放ち…シロガネは見をたじろがせる…言ってみたものの…もう体力の限界が近いか…やはり刀で一撃で仕留めたい。
「陣内さんっ!!」
 後ろから声がして、俺は振り返ると刀が俺の足元の地面に突き刺さった。美汐ちゃんが俺の刀を探してくれて、投てきしてくれたのだ。
「ありがとうっ!美汐ちゃんっ!!」
 俺は、刀を地面から引き抜き…奴を睨み付けた。これで、十分に戦える。
『がぉぉぉーーーーっ!!』
 もはや、自我が保てずにただ人を捕食するだけの獣と化したシロガネは俺に全身に炎を身にまとって突進して来た。理性も何も無いか、好都合だっ!!
「俺はこんな所で歩みは止めない……お前の先にある、更に巨大な悪を狩るために…」
 あいつの先にあるのは、虚空よりの支配者、ギャラクシアン…そして…親父、黒狼の姿が…俺は鉄血無爪のかまえを取り、大ジャンプをして…奴の尻尾に向けて飛ぶ爪を放つ。
「その爪は空を舞う鷹の如し飛翔する…飛翔鉄爪っ!」
ザシャァァァーーーッ
 回転しながらの空中で爪を発生させて、シロガネの尻尾を4本切り落とす。後二本…俺は地面に着地して地面に刀を突き刺して…
「地を這う蜥蜴の爪から、逃れられる者はいない…土団鉄爪っ!」
 刀を地面から引き抜き様に俺は奴に爪を放った……爪は、奴を正確に捉え…引き裂いた。
『ぐぎゃぁぁぁあーーっ!!』
「地獄の番犬の爪が、地獄へと誘う…参重殺爪っ!」
 俺が刀を縦に振り下ろすと、左右と真上から同時に三つの爪が襲い、系9回の斬撃をシロガネに与えた。同時に爪の発生はシロガネには防御、回避も不可能……俺の爪技の内でも最も高度な技量が必要な技である。
バシュッ!ガシュッ!ドシュッ!
『がぅぅ…』
「これで、終いだ…戦う相手を間違えたな……」
 俺はシロガネの喉元に着地すると、刀を下から遠心力を加えて思いっきり振り上げた。
「ハイタイムっ!」
ザシュゥゥゥゥゥーーーーーーッ!!
 俺の放ったハイタイムは、シロガネの首を一瞬で寸断して…切り落とした。首が無くなったシロガネの体は…段々と煙に包まれて、小さくなって行った。

 煙から現れたのは、俺の爪技で体がぼろぼろになったシロガネだった。もう狐火を出す妖気も…抵抗する体力もないだろう……
 俺も変身を解く…怪我をした体で無理をしたからか…俺も刀を杖代わりにして膝をついてしまう。
「ヨースケッ!」
「陣内さん……倒したんですか?」
「ああ……もう、抵抗はできないだろう…俺も、もう限界だ…再生するなよ」
 刀を渡した後物陰で隠れていた真琴ちゃんと美汐ちゃんが俺の元へと駆け寄ってきた。シロガネは…美汐ちゃんをみるなり…にこりと、優しい笑顔を浮かべて…
「……ありがとう、同族達の怨念で…俺は大切な事を忘れてしまっていた…」
「シロガネ、あなたは…あの時のシロガネなのっ!?」
「…陣内…怪しい行動を取ったら、すぐに殺して構わない……俺の為に傷つく者が出たら嫌だからな……」
「…お前が、シロガネなのか?本当の…」
「……少なくとも、本当でもあるが…真実ではない…一族の怨念はまだ俺の中で暴れようとしているからな…」
 口調といい、性格といい…なによりもあの時の殺気が失せている…
「手遅れにならない内に、止めてくれてありがとう……さあ、浄化してくれ…俺が同族の怨念を押さえているのも長くは……ない」
「しゃべるな……」
 苦しそうに喋ろうとする、シロガネに俺は…
「お前…謝る時間はあるだろう……」
 少なくとも二人まではな…こいつが生きているうちの謝れる人間の数だろう…
「陣内…君が言いたい事は解った……だが、俺がした事はとりかえ…」
「…カッコつけるな、俺は気が短い」
 俺はそう言うと、刀の切っ先をシロガネに向ける…いつでも殺せる余裕はまだあると言う事だ……そう言うとシロガネは悲しそうな笑顔を浮かべて…
「ああ、恩にきる…」
「シロガネ…あんたほんとーに、あの時のシロガネ?」
 真琴ちゃんが、疑いながら聞いてきた。
「すまんな、俺が大迷惑をかけたようだ…」
「あう〜、またそう言って真琴を変な所に連れて行こうって魂胆?」
「それを行う体力はもうない……でも、お前で良かった、人間になれたのが…」
「えっ?」
「純粋で無垢な心を持つ…お前なら、きっとなれると思っていた…」
 そう言い、シロガネは真琴ちゃんの髪をなでる…
「いい奴を見つけたんだな…良かったな」
「あう…あんただって、見付けたでしょ……」
 真琴ちゃんはそう言うと、自分の後ろにいる美汐ちゃんの所へ行きとんっと背中を押してやった。
「…美汐……すまない、本当に…俺は最低な奴だな。怨念なんかに縛られて…お前の大切な人達を手にかけようとした」
「………」
 美汐ちゃんはシロガネを前に押し黙っている……が、シロガネは続けた。
「許してもらおう等考えていない……俺は、取り返しのつかないことをしたのだからな…結局、ここを荒らしたのは俺だったな」
「シロガネ…」
 シロガネは涙を流した…自分の炎が焼いた、ものみの丘を見て…銀色の狐は泣いている。
「同族だなんだ言っていたが…俺はその同族からも捨てられたんだよな……その腹いせもあったのかもな…心に一点の曇りがあったから…俺は怨念に縛られ…悪の色に染まったのかもしれない……情けないよ、まったく」
「なら、あの時何故…陣内さんの斬撃をわざと受けたの……」
 なに…シロガネはあの時俺の刀をわざと受けたと言うのか……少しの理性が残っていたとは思えないのに…どれ程力が必要だったんだ。
「……バレバレだな」
「それは、悪の中にまだあなたが居たからでしょ…」
「…そう、かもな…それは美汐に会ったおかげだと思う…俺が悪に染まっても一点の理性が残っていたのは…ぶはっ!ゲホゲホッ!」
 シロガネはそう言うと、口から血を吐き…咽込んだ。
「シロガネっ!」
「また…俺の中の悪が動き出した……陣内、時間切れだ…」
 苦しそうに、シロガネは胸を手で押さえる…俺は刀を杖代わりに立ちあがり…
「解った…」
「あう…シロガネ、もうこれで最後なの?」
「俺はどの道こうなる運命だった……が、運命を超えた真琴は凄いよ…俺の分まで生きて」
ヴゥゥン…
「あう…」
 シロガネに頭を真琴ちゃんは触れられた瞬間、彼女は糸を切った人形のように倒れ込んだ……俺はとっさに彼女を受け止めた。
「何をしたっ!」
「心配するな……真琴には、俺の魂の欠片を分けただけだ、俺の分まで生きてもらう為に…人間として」
「どう言う意味だ?」
「おのずと解る……さあ、俺が再び悪に支配される前に…」
「……ああ」
 俺は立ちあがり…刀の刃をシロガネに向ける。
「美汐、お別れだ…本当にすまない……お前には数年間も俺の事でいろいろ悩ませて…今回の事も酷過ぎた……俺に会わなければ…こんな事には」
「私は後悔していないわよ……あなたに会えて色々な事を教えてもらったから、ありがとう……」
 美汐ちゃんは優しい笑顔で頷きながら言った…その涙からは悲しさは伝わってこない。
「もう…いいよな」
 そう聞くとシロガネは頷いた…俺は刀を振りかざして……
「陣内陽介……お前と戦って解ったよ、どう頑張っても俺はお前には勝てないって解った…お前は、俺より酷な過去を抱えてながら……未来に向かって歩いているから。俺の先にある最も過酷な未来に……歩みを止めるなよ、絶対に…つまづいても絶対に逃げるな…」
「……ああ!」
 まるで自分がそう言いかけているように感じられた…こいつは同じだ、白狼になったときの俺と……悲しき堕天使…白狼と…あれと同じ者は作り出したらいけないんだ。
 白狼が分離した時もこんな状況だったのかな……
「陣内さん、お願いします」
「………」
 俺は無言で刀の刃をシロガネに向けて……深層心理にいる、もう一人の人間に話しかけた。恋香…頼む、この悲しき銀色の狐を浄化してくれ……
『うん解ったよ……。銀の狐に住む闇の魂よ…光の浄化を受けよ…』
 恋香の声が聞こえて…刀が白い神々しいまでの光を放ち…その光は水のようにシロガネの体に降り注いだ…
「ケアスピリットレイ……」
キュゥゥーーッ
 刀の光を浴びたシロガネの体は足から徐々に光となって消えて行った。
「シロガネ…これでさよならなの?」
「…美汐…悲しむな、また会えるさ……今度は人間として…サヨナラは言わないぜ…」
「えっ?」
 そして、段々と居なくなって行くシロガネは…満面の笑みで…
「また会おう……み…しお……」
 そして…光となってシロガネが消えた後…不幸の内に人間を恨み悪と化した妖狐の魂が黒い塊となった…それは消える事に悲痛な叫び声をあげていた。
『ぎゃぁぁぁぁーーーーっ!いやだぁぁーーーっ!』
「消えうせろ……憎しみを生むだけの存在…お前に現実の空気を吸う資格などないっ!無へと帰れっ!」
ザシュゥゥゥゥーーーーッ!!
 鉄血無爪が、闇の塊を引き裂き……闇は完全に斬られ…消滅した。

 シロガネは完全に闇を引っ張り消滅してから、俺と眠る真琴ちゃん…そしてシロガネが居た所をいつまでも見つめる美汐ちゃんが居た。
 美汐ちゃんの今の状態を察し、俺は声をかけようにもかけれなかった…だけど、美汐ちゃんは自分から俺の方を向いて…
「陣内さんっ?…」
 満面の笑顔で聞かれたので、少し拍子抜けしたが…
「どうした…」
「……泣いても良いですか…」
 俺の胸に額を付けてそう言ってきた…笑っているのも、凄くつらい状態なんだ…俺は彼女の肩を抱いて……
「泣きたい時は思いっきり泣けよ、そうでなきゃ壊れちまう」
「は…はい……うっ…うわぁぁ…」
 美汐ちゃんは俺の胸の中で、思いっきり泣いた……青く染める月光が、ものみの丘を優しく写す…まるで、今の俺達の心を移す鏡のように…


あれから4日後…7月7日……七夕
 俺の体の傷は、SUPの医療斑によりすっかり直され…今日は、街の七夕祭りである人に呼ばれていた。
「それでは行ってきます…」
「はい〜、いってらっしゃいっ」
 靴の紐を結び…佐祐理さんに笑顔でそう言うと、俺は家から…商店街へと向かう事にした。この街は本当に……祭事が好きなんだな…
 商店街の一角で、俺は待ち合わせしていた奴等と合流した。
「遅れてすまないな……美汐ちゃん、&真琴ちゃん」
 そこで、真琴ちゃんと美汐ちゃんが浴衣姿で待っていた。
「ヨースケェ!遅いわよぉ〜」
「遅いです…陣内さん」
「俺は、時間にちゃんと来たつもりだがな……」
 時計を見てみたら予定の時間より2分しか過ぎていない。
「あう〜っそれでも遅いの〜っ!」
「とにかく行こう……」
「誤魔化してません?」
「ふん…」
 俺は空を見上げる…七夕の空、天の川……そして1年に一度だけこの時だけ、会える二つの恒星…織姫と彦星……まるで、今回の美汐ちゃんとシロガネを意味するように…
「ったく、夏になったってのに、肉まんの屋台があるとは…物好きな奴もいるもんだ…」
「いいじゃありませんか、真琴も喜んでいる事ですし……」
 真琴ちゃんは、屋台の肉まん屋の前で負けてもらうようにぎゃーぎゃー言っている。
「……覚えていないのか?」
「はい、あの子はシロガネの事は最初からいなかったように……」
 あの後、重症の俺はものみの丘に真琴ちゃんを探しに来た相沢と名雪が俺達を見つけてくれ…俺は、病院に担ぎ込まれた。その後SUPの医療斑に引き渡されて…ものの3日で傷は完治した……その後、美汐ちゃんに聞いた話は、真琴ちゃんはこの事件の事をすっかり忘れて最初の状態へと戻ったのだと言う……シロガネの事だけ都合よく忘れていた…
「妙だな…シロガネは最後の力で真琴ちゃんに魂の欠片を授けたんだろ…なぜ、当の本人は覚えていないんだ?」
 聞くと、美汐ちゃんは真琴ちゃんを見て優しく微笑んで…
「私には解りますよ……シロガネが真琴に、魂を授けた理由」
「ん?」
「あの子がいつか産む子供が…シロガネの魂の生まれ変わりだと思います」
「でも、もし…今回のように……」
「子供の頃から、知っていれば……先祖の怨念に対する抗体となると思いますよ…」
 そう言う事か…いつか産まれてくるシロガネの生まれ変わりに、子供の頃から妖狐の事を教えていれば、悪に染まる事は無い。
「産まれてくるのは当分先だと思うがな」
「そうですねっ、ふふ……でも待ちますよ、私は…」
「……そうかい…」
「ヨースケぇー、美汐っー早くぅ〜」
「行きましょう…」
 美汐ちゃんは、俺の手を引いて…呼ぶ真琴ちゃんの方へと走って行った。あれから、美汐ちゃんは前よりも表情が砕けて、明るい笑顔を見せるようになった。特に俺の前では…
 まだ、俺の事を好きなのかな……

 そして、今回のメインイベント、短冊に願い事だ…真琴ちゃんは始めてなので美汐ちゃんが手ほどきをしている。
「真琴ちゃん、なんてお願いするんだって?」
「『ユーイチをてっけつむそーでやっつけてやるっ!』って書いてありました」
「…彼女は俺に、剣を習いたいのかな…」
「程ほどにしてくださいね、相沢さんが死んでしまうから……」
 呆れたように美汐ちゃんはそう言った…鉄血無爪では相沢の命がないからな…
「まあ相沢の方は自分でかたを付けるだろ…それより君はなんて願いをしたんだ?」
 俺は美汐ちゃんの願い事を聞いて見た……
「……私は…教えません」
 少し間を置いて言ったため少し頭にきて…
「先輩の命令だ、教えろっ」
「いいえ、教えませんっ…先輩の頼みでも、教えません」
 美汐ちゃんは札を持ってぷいっとそっぽを向いた…こう言う所は可愛いんだけどな…
 ふっ…どう言っても見せてくれないようだな……
「まあいいか……」
 俺はそう言うと天の川を見上げた…数千…数億となす星の川…この宇宙から虚空よりの使者が数千…数億と…地球に攻め込んでくるのか……そして、この地球自身の脅威もある…そして、シロガネのような闇に縛られ悪となる者が出てくるかもしれない。そんな奴等から儚き命を守り…悲しき運命の者を守り…そして悪を狩る…それが、俺の正義…
「絶対、守ってやるよ……」
「どうしたんですか?」
「いや、何でも無い…それより、なんて書いたんだ?」
「見せませんっ!」

 美汐が星の川に向けて書いた願い事は…

『大好きなあなたに…この想いが届きますように……』


妖狐編…完結
 NEXTミッション⇒



設定資料集

敵人物設定

シロガネ
 正体は過去に美汐のが助けた、銀色の子狐。彼女が…中学時代に想いを寄せていた陣内陽介の様相を仮の姿として、人間となり美汐の前に再び現れたが…妖狐の宿命により死亡する。だが、彼が死んだ後ものみの丘に宿っていた身勝手な人間を恨みながら死んで行った妖狐達の怨念に縛られてしまい、人間に復讐をする為に生まれ変わった。美汐と会っていた善のシロガネは優しく包容力がある少年だったが。怨念が縛っている時は残虐な性格が剥き出しで、目的の為なら手段をも選ばない卑劣な性格…人間体でも狐火が使え…心を読む力がある…それを利用した精神攻撃も得意。

シロガネ(妖狐形態)
体長:5.3m 全高:3.4m 体重:520k ジャンプ力:100m 走力:100m3秒
武装:狐牙(45t)狐爪(39t)
必殺技:鬼火魂(9本の尻尾から繰り出される炎の弾…人魂と同じような物。1個20t)
    大豪爆炎(口から強力な炎を吐き、敵を焼き尽くす。50t)
ウォーハンターに対して取ったシロガネの最終形態…刀をあまり通さない鋼鉄の筋肉と灼熱の炎を思わせる鬣が特徴的。前足や後ろ足にも炎を纏い…戦闘能力はウォーハンターに匹敵する程だ、ただ理性のコントロールが効かずに精神攻撃ができなくなった。



後書き
 いやー長きに渡った、妖狐編がついに完結しましたべっ!
佐祐理「今回のコンセプトは一体なんだったんですか?」
 今回は、人間には二つのタイプが居ると言う事と悪の魂を売った者の違いって感じです。
 真琴ちゃんが祐一君に必要以上に復讐するのと、これは全然違いますが…言って見るなら、妖狐は…根に持つタイプなんじゃないかと言う事です。

 さて、次回は…アグルストーンの欠片争奪戦。第三勢力…オルグ…そして、新たな戦隊、ガオレンジャー!陽介は彼らと共に…強敵…黒狼オルグに立ち向かう。
 巨大ロボ戦闘もあるぞっ!
次回っ!『黒狼激闘編』

 

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