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 榊がアグルストーンを奪いに、『神の間』へと赴く数分前…

 

 神の間の前には、戦闘員が数名と、幹部怪人である川澄が集結していた。

 しばらくして、蛇の管轄下にある量産型怪人の入った檻が到着する。

「いい、ネズミ一匹も入れちゃだめよ!ここへ入るルート、全部塞ぐのよっ!」

「ははっ!」

「量産怪人を配置につかせて。黒狼が来たら殺さないで、捕獲を最有線にね」

 川澄が戦闘員一人一人に指示を出す。そして、檻から量産型怪人が吸う体這い出てくる。

 神の間の門前に、蛇の実行部隊が全面的に集結した。

「……いつ来てもいいわよ、陣内君…あたしからは逃げられないからね…」

 腕を組んで、榊を迎え撃とうと待つ川澄、だが……その時、向こうから悲痛な叫び声が場内に轟いた。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーっっ!!!」

「何っ!来たの!?」

 榊が来たにしては様子がおかしい…新月で、変異は出来ないはずなのにこの叫び声は尋常じゃない……その後も、ライフルを撃つ音が鳴るがその音は叫び声と変わって行く。

「黒狼……いや違うわ、変異できない陣内君にここまでの戦闘能力は無いはず…だったら」

「グハッ…へ…蛇…様……」

 川澄の傍に、戦闘員の一人が血塗れで駆けこんで来る。川澄は優しく抱きとめて、そして横にする。

「大丈夫…すぐに楽になるから……何が起きたの?襲ってきたのは誰?」

「……お…鬼…塚…」

 鬼塚!?その言葉に川澄は驚愕した。

「しくじったわね、あの子……」

「前線部隊は……ほぼ壊滅…進路…はこ…ここ、気をつけて…ブハッ!」

 その戦闘員は、血を吐いて倒れこんだ。

「よく頑張ったわね……みんな、聞いての通りよ」

 そして、戦闘員たちの叫び声が響く方から、赤く染まったバッタ人間が現れる。

「鬼塚先生……来たわね、ミレニアムストーンの力であんなに変わり果てて…」

『川澄…私はその中のアグルストーンに用がある…退いてもらおう』

「それはできない相談ね、この中にはネズミ一匹としていれるわけにはいかないのよ……例え、あなたを倒す事になろうとも…ねえ、鬼塚先生考え直さない?」

 川澄は、赤い魔人と化した鬼塚に話しかけるも、鬼塚の視線にはもう室内のアグルストーンにしかなかった。

『零…お前の命を助けてやったのは私だぞ……その恩忘れたわけではあるまいな…』

「忘れてない…でもあたしは、あなたにそんな姿になれとは頼んでないわ……儀一」

『そうか、恩を仇で返すと言うのか……良いだろう。何匹かかって来ようと、私には敵わん』

 その後、鬼塚の手により、その場は灰塵と化した。ほぼ一瞬の出来事…その場にいた31人くらいの戦闘員と5匹の量産型怪人は、赤い鬼神と化した鬼塚の爪に掛かりすべて感覚のない、肉の塊と化した。残った川澄は……

 
仮面ライダー・黒狼
第7章前編『鎖蛇』

 

 『世紀末王の間』

 世紀末王の間では、榊にアグルストーンが奪われ、完全体と化した事と鬼塚の戦意喪失、そして護衛に当たった蛇、川澄 零の部隊が鬼塚により半壊した事の報告が幹部怪人、蜘蛛と蝙蝠、そして世紀末王にされた。ちなみに臨戦体制で、蜘蛛も蝙蝠も人間体になっている。

『そうであったか、…ご苦労下がれ…』

「ははっ!」

 偵察に当たった、蜘蛛の指揮下の戦闘員は下がって行った。

「けけけっ、あの蛇の部隊が鬼塚一人に半壊か!笑わせるぜ!」

「…しかも、その鬼塚も黒狼の完全体との戦闘で戦意喪失、森林に倒れていた所を確保か」

「蛇まで失踪だとよ、おれ様の子分どもがその辺散策しても死体すらみつからねえと」

「それだけでも、世紀末王様は……何のために我等を召集したのでしょうか…」

「アグルストーンを盗まれてから、これからの事を話すんだろうよっ!」

 二人が相談していると、世紀末王が重い口を開く…

『蜘蛛の言う通り、アグルストーンも奪われ……科学班も協力者鬼塚は戦意喪失でごたごたしている…そして主力だった幹部の一人である蛇を欠いた。残る幹部で主力となるのはは蜘蛛と蝙蝠…だけだ』

「完全体になった黒狼の手によって、幹部怪人の蛇…そして奴の代理であった鬼塚も欠いた……やはり危険と言えど、『奴』を出すべきでは」

『あやつは切り札だ……まだ出すわけには行かない…問題は、黒狼の事だ…』

 世紀末王の言葉の後に、昨夜現れて、鬼塚を倒した黒狼完全体の姿が映し出されていた。

 映像は、神の間の監視カメラに撮られた映像であった。場面は、アグリュームを身に付け変身する姿が映し出されていた。

『仮面ライダーッ!黒!狼っ!』

………

…………

……………

………………

カチャ

 映像は、黒狼がルガーで鬼塚ごと室内の壁を突き破った所で終わりになっていた。

『……あの姿は黒狼本来の姿だが、黒狼は我等を裏切り…『悪魔の戦士』の名を語っている……これは我等に対する宣戦布告でもある。よって…今後の作戦に影響を及ぼすだろう黒狼は、捕獲ではなく抹殺を命ずる!見つけ次第殺せ…』

「ははっ!」

「仰せの通り……」

「世紀末王さま……蛇はどうします?鬼塚との戦闘でダメージを負っていると思われます……」

『蛇か…解った、蛇担当の残党戦闘員、及び量産型怪人はAグループ、Bグループと別けて蜘蛛…そして蝙蝠がそれぞれ担当しろ。蛇は我が探索しよう…』

「探索なら私目に……」

 蝙蝠こと、空魔怪冶が蛇探索に乗り出そうとするが、後ろから蜘蛛こと雲海 有が肩を叩く。

「蝙蝠よぉ、おれらは与えられた仕事があるじゃねえか…ふられた女の事なんか忘れちまえよ……」

「五月蝿い……世紀末王様、是非!」

『……ならぬ、我らは戦力の四分の一を失いかけている…早急に黒狼を片付けないと我の命も危うい……』

「……くっ…失礼する」

 空魔はただ狼狽して、世紀末王の間を出ていった。

「けけっ、例え蛇が生きて帰って来れても、黒狼にアグルストーンを渡した罪で降格され……鬼塚同様、あいつは処罰されるさ…けけっ、小娘がでしゃばるからこうなるのだ!そうでしょ、世紀末王様!」

 雲海は、けけけっと笑いながら世紀末王の間を出ていった。

『……黒狼…』

 

 心臓……止まってるよな…脈も止まっている(それ以前に月影の石のおかげで、脈が取れない)アグリュームを着けて、仮面ライダー黒狼となってから、もう一週間以上…つまり改造されてから寿命の3週間はもう経っているんだ、心臓はその時に止まってしまったが……まだ生きている、しかも顔色の血色もよく血は流れているようだ…

 腹に入っているアグリューム…その中にある生命が俺の体に血を循環しているのかもしれない……

「俺は不死身の体になった!」

 思わず、学校の屋上から叫んでしまった。そう、今はもう9月……長いようで短い夏休みは終わり……俺はまた生きて登校できた。

「自分の体に過信しない方が身のためですよ……榊」

「そうだぞ…心臓は段々と脈が戻ってんだぜ…」

 俺の事情を知っている、咲耶や西川とこうして屋上に来るのも変な感じだな。

 二人とも俺のクラスメートで咲耶と久しぶりに会っている所に西川が来て、今こうして俺は西川の事を紹介したら、咲耶はいつものようにぺこりと頭を下げたのだ。

「って、西川…お前、ネメシスの戦闘員だろがここにいて大丈夫かよ…」

「いいって、学校の情報は出していないんだからよ」

「へぇ…ご苦労な事だ……」

 ネメシスでは、黒狼、つまり俺の抹殺命令が出ているらしい。前まで捕獲しようとしていたのに今度は抹殺しようとしているんだ…まったくたちの悪い奴等だぜ。

「西川さんも意外でしたけど川澄先生が幹部の怪人だったのも意外ですね…」

「ああ……」

「余計なお世話だけど……ははは」

 咲耶が何気なく言われ西川は苦笑する。川澄が…幹部怪人、蛇だった……あの後から姿も見せていないし、学校でも姿を見ていないのだ。

「川澄先生は今日休みです……やはり、この事と関係あるのでしょうか…」

「その事だが、蛇はお前がアグリュームを盗んだ時から行方が解らなくなっている」

「なんだって!?」

 あの時から、川澄はいなくなっているという事か……

「鬼塚と戦って、負傷して基地を出たのかも…もしくはもう」

「縁起でもないこというんじゃねえ……」

「幹部の一人がいなくなって、お前は嬉しいんじゃないのか?」

 確かに、西川の言う通り幹部の一人が消えるのは、奴らの戦力の大幅な低下が期待できるだが……俺は川澄が死んだなんて考えたくなかった。

「あいつは、何か訳があるのかもしれない……俺や西川みたいに事情があるのかも知れない」

「そうだな、幹部怪人も元は人間だ、オレの仲間も量産型怪人に変えられた者もいるし、川澄にも同じような感じはあるんだ……」

「川澄先生が幹部についたのはいつか、西川さんは知ってますか?」

 咲耶の質問に、西川は少し考えてから…

「……いや、その時はオレも入っていなかったからな、多分鬼塚と同じ時期に幹部怪人になったんだろうよ…」

「鬼塚は俺がぶっ倒してから、どうしているんだ?殺さないように、手加減したけどよ」

「…鬼塚はあれから、独房に幽閉されてる。第三の眼を潰されたのが要因かもしれないけど、もう生ける屍になっているような物だ、酷い顔していたぜ……世紀末王への暴挙で、処刑されるはずだけど、なぜか生かしている」

「どういう事だ……」

「あいつの研究素材を科学班が解析中だ。近い内に、量産型怪人が鬼塚の研究で強化されるしミレニアムストーンの加工も可能になるだろうよ……それに、陣内が前に戦ったと思う、改造兵士レベル2…あれも強化され量産される予定になっている」

「酷いですね……まるで人間を道具にしか思っていない…」

「ああ…最悪さ……だから潰さなきゃならないんだ…」

 俺は拳をぱんっと鳴らした。もしかしたら川澄も鬼塚も、奴等に利用されていただけの捨て駒なのかもしれない。

 そう思うと無償に腹が立った……世紀末王ドラゴノソード…お前はこの俺が必ず潰してやる!

 

………

 

 あの時、神の間の前では戦闘員と量産型怪人の屍の中、一人だけ鬼塚と対峙する幹部怪人、蛇……川澄は、狂気の鬼塚のスパインカッターに斬り付けられた腹部から、多量の血が流れ…痛みを堪えながら押さえている。が、川澄は立ちつづけていた。

『まだ、立つか……』

「ふっ…ここにはネズミも入れるなって言われたからね…」

『当初の目的を忘れたのか…零?お前は、世紀末王への復讐する筈だったのだろう…お前の両親の仇なのだろう……なぜ、あいつの肩を持つ』

「何で……だろう…今でも、あいつは憎いわよ…でも……儀一にも勝てないようじゃ…あいつにも勝てない…」

 川澄は人間の姿に戻って、血の出る横腹を押さえながら立ちすくんだ。

『甘いな……そんな考えじゃ、私が助けた意味がない……』

「…儀一、あたしを殺すの?」

『……私は最初からお前の復讐に協力している訳ではない…研究の為だからな……あの時お前を助けたのも偶然に過ぎない…それに復讐は自分の手で付ける物だ……』

「……儀一…」

『……私の部屋にお前の剣がある、それを持ってどこへなりと行くがいいさ』

「えっ!?どういう事よ……痛っ…」

『このままでは、任務失敗でお前は降格…処分からは逃げられないさ……ここに入る意味もないし、私が加担するまでもない……私は私の手で蹴りを付ける、お前は自分の道を歩むがいいさ……だが、その怪我では長くはもたんだろう…ふふっ』

「あたしを……逃がしてくれるの?…」

『……逃がすのではない、勘違いをするな…私とはもう縁を切るというのだ、さっさと私の前から姿を消せ……さもなくば殺すまで…』

「儀一……解った、あたしもこれで、自由の身って訳ね…」

『……喋りすぎは傷に触るぞ…』

「ありがと…痛っつ…」

 

 あれから、川澄は…足を引きずりながら…基地を出ていった。

 しばらく森林を徘徊し抜けようと思ったが、何かと何かか激しくぶつかり合う衝撃音が聞こえ、物陰に身を潜めながらその様子を確認した。赤い者と黒い者の死闘が繰り広げられていた。

「あれは……黒狼!?…完全体になってる…儀一と戦っているの…」

 それは、鬼塚と完全体となった黒狼との死闘だった、黒狼のキックが鬼塚の第三の目を潰し…暴走した鬼塚に…黒狼は猛烈なキックを浴びせた。

「黒狼キィィーーーックッ!!!」

 

そのキックは鬼塚に直撃して、鬼塚は人間の姿に戻って倒れこんだ。ピクリとも動かなく死んだように地面に倒れていた。
「……儀一…」

 黒狼は着地と同時に、人間の姿……榊の姿に戻った。その榊の姿に川澄 零の記憶から子供の頃に体験したおぞましい光景を思い出した。

 炎の中6本の腕で、両親を殺した…あの光景を…そいつは自分を殺さずに消えたが、家が燃えて炎が自分に迫っていた。そこを助けたのは鬼塚儀一だった……鬼塚は零にとって、命の恩人だった。

 だが、その鬼塚は…死んだ……殺された…陣内 榊に……殺された…と零は思った。

「許さない…許さないわよ……陣内君…黒狼っ…殺してやる…殺してやる…」

 榊への憎悪を募らせて……零は、深い森の中へと消えて行った。

 

  ToBe

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データ編

 

アイテム集

 

アグリューム(変身ベルト)

 アルティメット・コアの心臓部分となるアグルストーンに溜めた、1000人分の命をアルティメット・コアに循環させるために鬼塚儀一が開発したベルト状の循環器。アグルストーンの持つ、人間に宿る神秘の力を引き出す能力を最大に利用して、黒狼を変異体から完全体へと変える事が可能。また、万が一心臓停止しても、心臓の変わりに『命』が体内の血流を助けてくれるので、一度停止した心臓を4日程で再動させるが、決して不死身になったわけではない……。

 

怪人集0?

 

サイボーグ兵士レベル3(改)

 

主体 バッタ

人間名 鬼塚儀一

身長 200センチ

体重 150キロ

パンチ力 4トン

使用武器 スパインカッター、ハイバイブネイル

必殺技 念動力(第三の眼から発せられる、強力な念力)

 

魂の赤い石ミレニアムストーンのある『死神の間』に踏み入った鬼塚が、第三の目の再生と同時にその力を手にし、強化した姿。それは他の幹部怪人を凌駕する強力な物だが、仮面ライダー黒狼により第三の目を破壊され、元の姿へと戻ったが、意思を保つ為の第三の目を失い暴走する。だが、変異体の黒狼では、赤い鬼神と化した鬼塚とまともに戦えばまず死だっただろう……アンチテレキネシスがあって始めて勝つ事が出来た。

 

後書きでぃす!

 

ゲスト:西川君と美汐ちゃん

 

おいっす!Y(ヤクト)団の首領ちゃんです。今回は一本にまとめるはずの話しでしたが、長くなりそうなので、短く前後編と別けちゃいました!

西川「後の話しと一緒に読んでくれよな!」

美汐「………誰、ですか?」

西川「なぬっ!オレの存在を解らないと…仮面ライダー黒狼の最大の情報屋…西川 和だ、仮面ライダーで言ったら、滝 和也みたいな約所だ」

美汐「………そういえば、居たような…」

西川「だぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!オレってそんなに目立たないのか!?」

まあまあ、ともかく今回はちゃーんとテーマがあります!

 それは、鬼塚のその後です!元々黒狼は『真・仮面ライダー〜序章〜』との大部分のクロスで、真ライダーの二年前の話しとして、鬼塚を登場させました。

 

 黒狼の前回の話しで、第3の目を破壊され鬼塚が暴走して、倒されました。そして、度々の暴走でネメシスの下部組織である研究施設ISSへと強制輸送され、そこで密かに改造兵士の強化案、『レベル4〜5』までの研究を進められます。殆ど暴走の危険性で監禁状態でそれを2年間続けられて、そして真ライダーの話しで、完全にCIAのセーラ深町によって完全に殺されてしまいます。

 

美汐「はぁ、ISSに送られたのは、暴走の危険性による強制的な監禁だったんですか…」

西川「この他にも、ネメシスは世界中に基地を設けて居やがり、ニューヨークに本部が設置されているらしいぜ!」

設定では、世界の数カ所に小規模の基地がありまして、黒狼第一篇では試験的に日本の月影町に戦力を集中させてました。その理由は不明…

ですが、世界各地の大きな基地は、量産怪人のプラントと遺跡調査が主で、戦闘員育成の支部が小規模に存在します。

 

世界の基地

@本部 ニューヨーク ※後に本部移動で日本に…

A第2支部 日本:月影町地下施設 ※後のネメシス本部として、規模増大

B第3支部 タイ:遺跡調基地

C第4支部 オーストラリア:量産怪人製造プラント

D第5支部 イースター島:遺跡調査基地

E第6支部 北極:ミサイル製造工場

F第7支部 南極:量産怪人製造プラント ※後に機能停止

 

っと大きな支部はこれくらいです。後は世界各地に小規模な基地があるだけです。

あっ次の後書き書く為に…これで失礼します!

西川「ってもう終わりかよっ!オレ様の活躍をまた期待しろよ!」

次回は後編!川澄の復讐に榊はどう対処するか!?…

 …生命の咆哮が、夜の闇に木霊する

西川「だぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!」

 

つづく


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