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西川と咲耶とで…屋上で寛いでいると、咲耶が不意に口を開いた。
「9月ですね…」
「ああ……こうして寝ていると平和だよな〜」
「戦闘員のお前が言うな…あ〜あ、でも新学期になって一つ残念な事がある」
「なんだ?そりゃ…」
「観奈美の弁当が食えないからだよっ!」
「ほーっ…やっぱ、まだ名残があるのか……」
でもあながち嘘じゃないんだよな…俺は観奈美の幸せを願ったんだよな…
「うるせ…」
なんか自分でもずるい奴だな……
「次からは私が作ってきます…」
「おっ、ありがたい!期待してるぜっ!」
「オレの分も頼むぜっ天野っ」
西川が咲耶に頼んだ丁度その後、昼休みの終わりを継げる予鈴が鳴り響いた。
「予鈴です…二人とも、早く行きましょう」
「あっおおっ」
行こうとすると、西川が、俺に耳打ちする。
「なあ陣内、天野って生真面目だな……」
「ん?咲耶はいつもああだけど、まっお前もすぐにわかるさ」
「……そだな」
そう言い、俺は屋上のドアを開けようとした。が、ドアノブに触れた瞬間、電撃を走らせたような嫌な感覚が走った。
「咲耶…西川、どうやら次の授業には間に合いそうにねえな……」
「えっ?」
「どうしたんだ?陣内……」
なんだ、この感覚は俺に対する激しい憎悪が表れている、ドアの向こうに何かいる!
「咲耶っ!西川っ!下がれっ!」
俺が、二人を押し戻した瞬間、2本の鎖がドアを突き破って俺達に襲いかかってきた。
仮面ライダー・黒狼
第7章後編『解呪』
「ちぃぃっ!」
「きゃっ!」
「のわっ!こっコイツは…」
あの鎖に見覚えがある……あれは、川澄!?幹部怪人…蛇の技だ!
そいつは鎖を戻すと、ドアを蹴破って屋上に現れた。
「…やっと…見つけたわよ……陣内君…」
「かっ川澄!!」
手には両刃の細身の剣を携えて、腹を押さえながら、川澄は俺達の前に姿を現した。
「ん?西川君もいたのね、やっぱり陣内君と情報交換していたのはあなたね……」
「……ばれちまってるし…」
西川と咲耶を交互に睨みつけながら、川澄は苦し紛れに言い放つ。あいつ…腹に怪我をしている……
「何の様だ、川澄……」
「陣内君を殺しに来たの……あたしの大切な人を殺した仇としてね」
「……俺が?仇?」
「とぼけないで!あんたは完全体になって儀一…鬼塚を殺した!その仇討ちに来たのよ!」
「鬼塚だと!?………あいつは」
確か俺に第三の目を潰されて、それから黒狼キックを食らわせて倒した。だが俺は加減して殺していない……まさか、川澄はその事を知らないのか!?
「待て!鬼塚は、死んでない!意識は朦朧としているが生きている!」
後ろから西川が、叫んだ。だが川澄はフッと微笑み…
「見え透いた嘘ね……ふざけないでよ、あんたはあたしの両親を殺したように、儀一も殺したのよ…」
「違うっ!鬼塚は基地の独房でまだ治療を施されている!陣内は殺していない!」
「榊は、人を殺すような人ではありません……」
咲耶も俺に加勢してくれるが、川澄は聞き入れようとせず、その体を幹部怪人『蛇』の姿に変え手に持っていた剣の切っ先を向け…
「減らず口が減らない子達ね……まずはあなたから…」
「おい、お前の相手は俺だろ…この二人に手を出したら容赦しないぜ」
俺は二人の前に出て蛇を睨みつけた。
「戦う気になったのね……いいわよ、あたしも容赦しないつもりだから、本気で来てよ黒狼!」
「はなっから俺は手加減しないつもりだぜ!変身!」
俺の腹から変身ベルト、アグリュームが出現して青い閃光を放った。
『ぐぅぅぅっ!ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!』
閃光の中、俺は変異体から、咆哮をあげながら完全体へと弐段変身を遂げた。
「仮面ライダーっ!黒!狼っ!!」
「勝負よっ!ライダーっ!ブレイキングチェーンッ!」
ジャッ!
蛇の両手の甲から鎖が伸び、俺に向かってきた。俺は腰に装備された、ナイフを抜き奴の鎖と対峙した。
「黒狼ナイフ!」
ジャァァァーー!!
鎖とナイフが激しく交差して、熱い火花を放ち、鎖は後ろの咲耶と西川を掠め屋上の地面に突き刺さる。
「ちっ!外した……」
「西川っ!咲耶を連れて後ろで、伏せてろ!」
「ああっ!天野、行こう」
西川が咲耶を後ろへつれて避難しようとすると、咲耶は俺に…
「榊、殺してはいけません……彼女からは憎悪の他に、深い悲しみが満ちています」
「……解っている!あいつは俺だけしか助けられないって事がよ!」
「余所見している暇なんて、無いんじゃないの!?」
蛇の神出鬼没に動き回る鎖が俺に向かってきた。俺はナイフを巧みに使い、鎖をいなすが、双頭の蛇のように動く伸縮自在な鎖は俺の攻撃を妨害するかのような動きをして、俺を蛇に寄せ付けない。
「くっ!前より強くなってやがる!」
「怒り!憎悪!悲しみ!絶望!…全ての負の感情が高まると、『殺意』に変わり、幹部怪人は力を増すのよっ!今のあたしはあんたを殺す事しか頭に無いわ……」
厄介な野郎だぜ……ナイフが届かなければ、黒狼ガンで…
「黒狼ガン!ショット!!」
バシュッ!バシュッ!
俺の腰に装備された銃に力を込め、標的に向け発砲した。多分、鎖を操っている蛇にアンチテレキネシスの弾丸を撃ち付ければ、鎖は動かなくなり有利になる。
カイーン!カイィーン!!
「何っ!」
黒狼ガンの弾丸は、蛇の鎖によって跳ね返されてしまった。そして、一気に間合いに踏み込まれて…
「何をしようとしたか解らないけど、そんな銃じゃあたしは倒せないわよ!」
ギィィン!
蛇は右手に持っていた剣で、俺を斬り付けた。俺はとっさにナイフで受けとめるが足がすくんでしまう。
「掛かったわね、サーペントチェーン!」
「しまっ…ぐはっ!」
バシュッ!
屋上を突き破って、鎖が俺の体を思いっきり打ちつけた。
「榊っ!」
「陣内っ!」
咲耶と西川の声が耳に響く。だが、鞭の如く俺を撃ちつける鎖の攻撃力は半端じゃない。
こいつが、幹部怪人の本気なのか……?蛇は俺の胸を足で押さえつけて、剣の切っ先を向けた。
「西川君、あなた…あたしが陣内君と同じようだって言ってたわね……案外似ているようなものよ、あたしは他の幹部とは違う理由で、ネメシスに入ったの……あなた達と同じ15歳の時…その時まではあなたのように普通に生活していたのよ、優しいお父さんとお母さんに囲まれて、あたしは幸せだった…けどね、あの日……あたしの家に、ネメシスの幹部怪人『蜘蛛』とその部下によって両親は、殺されたの!」
その瞬間、西川はびくっと反応して…思い出したように口を開いた。
「思い出した、今から9年前に…ある免疫工学の権威の博士の家が放火されたんだ…焼死体から身元はその博士と奥さんだって知ったが、死因は焼死じゃなく、何かに惨殺されてから火を放ったようだと言われた。その人の名は川澄……紛れも無い、蛇の川澄 零の両親だ……しかもその川澄博士こそ…あの生物学の権威である緑川博士の論文を最初に発見した人物だ……」
鬼塚や、信一さんの進めている研究は川澄の父親がやっていたのか?!
「蜘蛛の下で働いているだけはあるわね。そう、それでネメシスの素性に触れた事で両親は殺されたわ……火をつけられたわ…燃え盛る炎の中、あたしは儀一に助けられたのよ。それから誓ったの…両親を殺し…あたしを闇の淵へと落とした、ネメシスに、その首領…世紀末王ドラゴノソード復讐する為に……あたしは儀一とネメシスに入った。それであたしは戦闘員から幹部怪人になるだけの力量を得た………お父さんが追いつづけて、儀一が解いたその謎で…あたしは身体改造レベル1を手に入れた、初めてのネメシス怪人なのよ……儀一のおかげよ…あたしには儀一しかいなかった。儀一はいつでもあたしの支えになっていたのよ…両親を殺され……闇の中に身を投じていたあたしをいつでも支えていたのは儀一だったのよ」
蜘蛛に両親を殺されて、そして鬼塚に助けられ…ネメシスに入ったか…まるで子供の頃に肉親を全員斬り殺して…闇に身を投じていた俺と同じだ……
………蛇が…川澄が泣いている…俺にはそう思った。鬼塚の奴にそこまで…
だが、俺は殺していない…鬼塚は、鬼塚儀一は生きているんだ!
「あなたはあたしの一番大切な人を殺したのよ……報いをさせてやるわ…死ね」
「……信じてくれ、俺は殺していない…鬼塚は生きている…」
「まだ言うの…ならその喉を掻っ切ってやるわ……」
俺の喉に突きつけられた剣の切っ先が振るえている…鬼塚は生きているって言葉に、動揺しているのか……
「川澄…あんたは人を殺せるような奴じゃない……復讐は、やめてくれ」
「うっ……何が解るの?あなたに大切な人を目の前で殺された悲しみが……」
「子供の頃、姉を殺された。許せなくてあんたのように暴走した…『復讐の鬼』となって俺は…それから闇を徘徊した、人も何人も殺した……俺みたいな人間になって欲しくないんだ!俺みたいな人間は増やしてはいけないんだ!あんただって、光は取り戻せるはずだ!」
俺の必死の説得に…川澄は剣を引いた。
「……陣内君…あっあたしは…くっは!」
川澄の腹の傷から、血が噴出した。川澄は両手で傷を押さえたが…血は止めど無く流れ出た。
「ふっ…あたしももう限界のようね……儀一は生きていても…でももう助けられない…、儀一はいずれ殺される…あたしは儀一を見捨てた……」
「わからねえか……鬼塚がなんであんたを殺さなかったか…多分、俺と同じ気持ちだったかもしれないぜ…だから逃がしたんだ……」
川澄の頬を涙が伝った…ようやく誤解が解けたか……だが、体の震えは止まらない。様子がおかしい…
「……でも、もう…止められないの…頭に…殺せ…殺せって言ってるの……陣内君」
「川澄っ!」
腹の傷から血が噴出する…頭の必死に抵抗している、だが……体がそれとは逆の事を考えてやがるんだ。
「動くなっ!死んじまうぞっ!」
「……助けて、もう…誰も……殺したくない…陣内君……あたし…を…ころ…し」
まさか、俺の黒狼に変異体があるように、他の幹部怪人にも意識を制御できない事があるのかっ!?変異体になるのかっ!?
「川澄……」
俺は黒狼ガンの銃口を苦しむ川澄に向ける。
「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
川澄の目は赤く変色して、俺に向けて四方八方から鎖を放ってきた。
ジャッ!ジャッ!ジャッ!
「ちぃぃっ!」
俺は暴走した川澄の鎖に両手と胴体を巻きつかれた。そして、体が意思とは無関係に動いているらしく、俺に剣の切っ先を向け突進して来た。
「………ころ…して…」
ちっ!?やられる!…ん…鎖?ここからなら…
「アンチテレキネシス・フィールド!展開!!」
ヴゥン!!
俺は力を、全開させて鎖に込められた川澄の力を無効化にして、力任せに引き千切った。
バキッ!
「鎖は!もう沢山だぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!」
アンチテレキネシスを最大レベルに発揮させ、俺の体を取り巻いていた鎖を破壊した。
俺の咆哮に似た叫び声が、校舎の窓ガラスにヒビを入る……
「くっ……」
川澄は一瞬ひるみ、剣が落ち床に刺さる。今だ!
カッ!
口が開閉し、赤熱放熱現象が起こり……俺の左足に力が篭って来る。ジャンプをして横回転の反動をつけ……パワーを充填したキックを食らわせる。
「黒狼っ!キィィィィィィィーーーーーーック!!!」
ズバーーーーーーーーンッ!!
衝撃で、屋上の下の階の窓ガラスが全部割れ……粉々に吹き飛んだ。
「くはっ!!」
黒狼キックが炸裂して、川澄は人間の姿に戻り屋上の床に倒れ込む。
死なない程度に加減したが、川澄は傷を負っている……動こうとしない、川澄はもう…
「川澄……川澄っ!」
俺は人間の姿に戻って、川澄の元へと駆け寄る。その肩を持ち上げ…川澄の名を呼んだ。
「榊…川澄先生は……」
「陣内……」
咲耶と西川も駆け寄って来る。咲耶は川澄の腹の傷を見て……
「酷い傷です、榊っ!救急車…」
「だめ…天野…さん……」
「川澄っ!」
川澄は虚ろな表情で、咲耶を止めた。
「…あたしのような…怪人は、普通の医療じゃ…治らないわ……無様ね、こんな所で死ぬなんて…」
「川澄……すまねえ…」
「ごめんなさいね…陣内君……気付いた所で許してもらえるか解らないけど……」
川澄は、苦し紛れに謝罪をした。腹の傷が痛々しい…どうしようもない…
「もう、儀一を助けに行く力も、残っていないし…もう…世紀末王や、蜘蛛にでさえ…復讐できない……」
「喋るなっ!本当に……死んじまうぞ…」
「…陣内…君…いい事教えてあげる…黒狼完全体は、幹部怪人の生き血を吸うと…戦闘能力がアップする……」
「なに言ってんだ…お前…」
川澄は何をしてほしいのか、解らなかった…ただ、その瞳には諦めではなく期待の色が浮かび上がっていた。
「……あたしの血を吸って…そうすれば、あなたに鎖の力が宿る…力をあげるから、あたしが出来なかった事をあなたがやって……」
「かっこつけてんじゃねえ!鬼塚が、なんでお前を逃がしたのか…あいつは自分を犠牲にしても、お前に生きていて欲しかったんだぞ!死に急ぐような事言うんじゃねえ!」
そう言うと、川澄は傷付いた体で…俺の頭を抱きしめた。
「……儀一の所に行かせて…あたしの居る場所はないの…あの人のところ以外は…」
「……」
「お願い……陣内君、血を…」
俺はどうしようも出来ない…無言で、川澄の首筋に牙を突き立てた。
「うっ…」
「陣内っ!」
「榊っ!やめてっ」
俺を止めようとしている西川と咲耶に手を上げて、止める。俺はその間も川澄の首筋から血を吸った。川澄の顔の血色がだんだんと悪くなって行く。
「…」
不思議だ…鉛を吸っている感じだが…力が段々沸いてくるような気がする…
それで川澄の、優しさが伝わって行くような気がする。俺は口を離すと手の甲に力が宿った感覚を覚えた。
「何で……殺してないの?」
なら…この方法しかないのか…川澄を救う方法は…
「俺は一口しかあんたの血を吸っていない……すぐ殺すツモリだが…最後に聞かせてくれ……幹部のあんたならわかるはずだ…」
「大体想像つくわ、あなたの聞きたい事……世紀末王ドラゴノソードについてでしょ」
「ああ……」
「奴の狙い……それは、この次元に存在する全ての知的生命体を根源から捕食して、また次の場所へと行くのは…知ってるわね…」
「ああ…西川から、聞いた」
「その本当の目的は、全知的生命体の根絶…そして、あたし達の世界を第二の魔界とするのが…世紀末王の最終的な目的……」
「第二の魔界!?」
「世紀末王のいた魔界は既に崩壊したと聞いたわ…あいつだけ残って……多分、魔界の知的生命体は既に食い尽くしていたかもしれないわ……」
俺達は川澄の台詞に、ただ狼狽するだけだった…知的生命体…人間を食うだけ食って、それから……あいつは量産型怪人の仲間を人間と取って代わらせる…そして、第二の魔界が形成される……
「それで、あたしたちのような幹部怪人や、量産怪人…そして黒狼を作りだし、第二の魔界の住人を製造しているのよ」
西川は顔をしかめる、戦闘員はいずれ量産型怪人へとされてしまう運命だろう。成績が悪ければ、奴等の餌として食われる……それが奴の作った運命と言うなら残酷だろう…
「……儀一の研究の全貌が見つかればで怪人の強化は避けられないわ…世紀末王の力と、儀一の…緑川博士の研究が融合すれば…究極の生命体が覚醒するのは避けられない……お願い、陣内君……世紀末王を倒して!あなたには、世紀末王に匹敵する力を持っている。あなたのアンチテレキネシスなら、世紀末王を斬滅させる力もある…」
正直、俺も世紀末王がどの程度の力の持ち主かわからない、段々と命が尽きるというが…魔界の使者、だが俺のアンチテレキネシスが世紀末王の能力を中和する事ができる唯一の方法なんだよな…
「……バカ野郎!当たり前だ、あいつ等は俺に喧嘩売ってきたからよ!安心しなよ、俺があんたの代わりに、仇討ってやるよ…」
「ありがとう、陣内君……」
川澄は満足そうに目を閉じた。安心して死ねるって考えか…なら、仕方あるまい。
「悪く思うな……」
俺は拳を握り締めて、川澄に向けて振り下ろした。
「榊っ!」
「陣内っ!」
ジャッ!
「アンチテレキネシス…」
ヴゥゥン……
俺は、手を川澄の前に翳して、アンチテレキネシスを放った。赤い光が川澄の体を包み込む。あいつの力がウィルスなら俺の力はワクチン……
川澄 零…お前はもう、苦しまなくていい…闇に戻る必要は無い。復讐は自分を闇へと引きずり込む……俺の様に…。俺のような人間になっちゃいけない……だから、全て忘れるんだ……大丈夫だ、鬼塚は俺が必ず助け出す。
川澄の体から、幹部怪人『蛇』の気配は無くなってきて…邪気は取り払われた感じになった。そして川澄は、力なく気絶し俺の肩に倒れこむ。
「……」
「邪気が消えました…」
「陣内、何したんだ?」
「………俺の力で、川澄を元の人間に戻してやったんだ。記憶と一緒に…邪気を消してやったって言った方がいいか」
「それって…どう言う事だ?」
「両親はネメシスに殺されたんじゃなくて、事故死…ネメシス…幹部怪人…そして鬼塚の事も15歳以後の記憶も消してやったんだ。勿論俺の事も忘れている……」
本当は使いたくなかったが……こうすれば、川澄は以前の優しい人間へと戻る。
「そうすれば、川澄先生は……生きていける、一人の人間として…」
「鬼塚の望み通りな……咲耶、西川…川澄を病院に連れて行こうぜ…」
「そうだな、もう人間に戻れば、こいつは助かるからな」
そう言って、西川は急いで屋上の扉を開けて救急車を呼びに行った。
そして傷付いた川澄に応急処置を施している、咲耶と俺が残った。
「榊……大丈夫ですか?」
「…俺はいたって大丈夫だ……」
「私には、あなたが泣いているように見えます…」
咲耶が言うんなら、俺は泣いているかもしれないな…
「アンチテレキネシス……怪人化した人を元に戻す事ができる…その力を使えば、あなたも元の人間に戻れるはずですが…使わないんですが?」
…鋭い所をつくな…さすがは天野家の跡取娘というだけあるか…
「……ああ、多分俺は元の人間に戻れる…だけど、戻る気はない。俺は…あいつ等をネメシスを潰すまでは、戻るわけにはいけねえんだ。売られた喧嘩は買う主義だって、お前も解るだろう……」
「………榊は単純です…単純で、バカですよ…」
「痛い所をつくな…」
俺は空を見上げた……青い空は澄みきって…どこまでも続いていた。
その時は、気付きもしなかった……長い、長い別れの時が近づいているのを…
ToBe
Continue
後書きタイムズ!
ゲスト:北川くん 舞さん
今日は、前回の鬼塚のその後に引き続き川澄先生のその後についての後書きです!
舞 「………」
潤 「今日はオレ様がゲストだぜ!」
あれ?前回の後書きにも居なかった?
潤 「ありゃ、西川!オレは北川!」
同じような物だと思うのは気のせいか……
それでは、舞さんが怒りそうなので、続けます!
舞さんのお母さんの零さんは、榊のアンチテレキネシスでネメシスに居た頃の記憶を消してから、美坂医師(第2章参照)の病院で傷を直す為に療養します。そして4年後に結婚して舞さんを産みます。ですが……元から体が悪かったのか、それとも怪人で居た時の後遺症か…病院に入院します。
そう言う事で、黒狼で零さんと、鬼塚先生の出演はここで終了です!お二人ともお疲れ様でした!舞さんと北川君から花束贈呈!
パチパチパチッ!
零 「ありがとう♪舞…」
鬼塚「すまないな、諸君…私達のために」
舞 「お母さんお疲れ様……」
北川「おっさん、カッコ良かったぜ!」
鬼塚「そっそうか……」
零 「なら今日は、お祝いよっ!お酒よお酒!」
舞 「お母さん……キャラが…でも嫌いじゃない…お酒、お酒」
あっ、はいはい……
北川「おい……こいつ等に酒が入ると……」
その後、首領宅では、鎖の音と、男の悲鳴の声が聞こえたそうでした。
めでたしめでたし…おしまい
つづく