あれ以来、俺は秋子姉とは話しはしていなかった……
 何となく、話し憎い状況だったからだ…
「どうしたんだい?二人とも……」
 食事時に、信一さんが心配そうに話しかけた。
「……なんでもないわよ、お父さん。ね…榊」
「あっああ……」
「??」
 春奈姉はそんな俺達に疑問を浮かべてている…信一さんも同様だろう……

 何となくきまづい雰囲気を作ってしまいながら、俺は同時に考えていた。それは…ネメシスを追って、ニューヨークに旅に出るのか……それとも、秋子姉を守る為にここに残るのか……二つに一つ…選択を迫られていた。
 そんな俺と秋子姉に、あいつ等は無常な牙を向けるのだった。


仮面ライダー・黒狼
最終章中編『強襲』


「そういえば、後数日で秋子の誕生日よね、お父さん」
「そうだね、23日だった」
「うん……」
 不意に春奈姉の言葉で信一さんを始め、俺達もはっとなった。
「確かそうだったな……」
「榊が忘れるなんて事、無いわよね」
「そうだろ春奈姉、俺が忘れるはずないだろ、なっ秋子姉」
「ありがとう……」
「俺、なんかプレゼント用意するよ……バースデーカード付きでな」
「榊……」
 そうぎこちなく言うと、秋子姉は嬉しそうに頷いた。何とかさっきの雰囲気から出られたようでホッとする一同にいつもの雰囲気が蘇ってきた。
 だけど、秋子姉や信一さん、春奈姉も今さっき俺に突き付けられた運命の別れの時を知らない……だけど、この雰囲気は保っていたい…

 心から、そう思うだろう……

 翌日、俺はいつものように秋子姉と学校への道を歩いていた。
「今日は朝礼があるらしいわね……」
「めんどい…」
「そう言わないの」
 いつもより早く起きたので、少し眠い……今日は1ヶ月に一度、学校で全校集会、言って見るなら朝礼がある。退屈な校長の長話を聞かされるのだ…その中には、夏休みに起こった1000人の大量虐殺の事件の事も言うだろう。犠牲者の中には、学校の生徒も含まれていたらしい……俺の中(アグリューム)に、そいつの生命が生きているってのか…
 あまり、いい話しではないのは確かだ。
 そいつの死も、ネメシスの怪人達による犯行によって死んだ……奴等を許す事は出来ないと西川は、友人を何人も量産型怪人に変えられたと言っていた…零も…両親を殺した、蜘蛛を…その根源にある世紀末王ドラゴノソードを仇だと言っていた。俺達は形は違えど……奴らの犠牲者だと言う事は代わりはない……奴等を根源から潰さないと、この世界で悲しみが絶えぬ事はない…
 そして……そいつの本体は今、ニューヨークにいる……その事は変わりない。
 奴等を倒せるのは、アンチテレキネシスと言う力を持った俺のみ……陣内家では異例の『特殊能力を無効化する特殊能力』……力の覚醒は産まれてすぐに起きる物は俺は起きなかった……いや、気付かなかっただけかもしれない。鬼塚と戦った時、アグリュームがその力の使い方を教えてくれた……
 だから、今…あいつ等を倒す事も……可能だ…それが、このアグリュームに込められている、1000人の犠牲者に捧げられるなら……
「榊?どうしたの……」
「!?ああ、何でもないよ…秋子姉」
「……なんだか、考え事していたようだから…」
「そう見えたか?」
「うん、見えた……」
 そんなに顔に出やすいのか……だけど、俺は秋子姉を残して、奴等を追う事は…
「榊……私は…榊が……」
「…………」
 俺の耳に秋子姉の声は、届かなかった。


学校の用務員室…
 用務員室内には異様な光景が広がっていた。何本の爪に引き裂かれたかと思われる、惨殺死体……そして、その近くにいる青年…その名は雲海 有(うんかいたもつ)
 幹部怪人…蜘蛛の人間の時の姿だ。
「けけっ、これが体育館の見取り図か……いい巣(プラント)ができそうだぜ…けけっ!」
 雲海は無気味な笑いを残し、体育館の見取り図を持って用務員室から出ていった。
「……作戦開始…」
 その言葉を残し…

 全校集会中

 いつもの様に秋子姉と別れ……自分のクラスへと行く。西川がいない所を見ると、引越しの支度とかしているのかも知れない……
 なんだ、この悪寒は……変異体の時にあった…黒狼の声でいち早く敵がわかったが、仮面ライダーになってから、俺に黒狼の声は聞こえなくなった…だが、この悪寒は只者ではない……もしかして、とても嫌な事が起こりそうな予感がする……
 俺は周りを警戒しながら、列に並んで…体育館へと足を踏み入れた。

 体育館内に全校生徒が集まり、俺は少し眠たげに校長の話しを聞いていた。
 やはり、あの事件の事の話しが、メインだった。警察では、組織的な連続不可能殺人事件として犯人グループ(ネメシス)の行方を追っているらしいが、それと言った事は見つからなかったらしい……。いつかは迷宮入りしてしまうだろう…

 秋子姉は俺より1年上の学年だから、向こう側にいる……
「んっ……」
 まただ、今度はさっきのとは比べ物にならないくらいの、悪寒だ…

 いや、悪寒じゃない…殺気だ…この中に敵がいる!!
 校長の話しをよそに、俺は周りを見渡した……何もいない、いや他のクラスの連中が並んでいて周りが見えない…
「くっ…邪魔だ…」
 周りが見えない…だが、この殺気はこいつ等に向けられている。違う…奴はもう活動を開始している…俺や…こいつ等に気付かれない場所で、密かに活動をしている……どこだ…気配を読み取れ……習ったはずだ、猛さん達に敵の気配を読み取る事を…
 俺は四方八方…360度の気配を読み取る……どこにもいない、気配がない…

 俺や、こいつ等に気付かれずに行動ができる場所……それは、どこだ!?
「はっ!?」
 もしやと思い、俺は真上を見上げた。
「……思った通りだぜ…」
 そう呟いた瞬間……体育館内に悲鳴が響き渡った。
「きゃーーーーーーーーーーーっ!!」
 俺はとっさに、悲鳴の方向を向くと……クモの糸に体中を絡め取られた女生徒が天井すから吊る下がっていた。さながら、クモの巣に掛かった昆虫である。
 その女生徒は…見る見るうちに、クモの糸は彼女の体を包み込み、完全に彼女を隠した。
「!!」
 そして、その糸の延長線上にいる異形の者……幹部怪人、蜘蛛!そして、体育館全体は気づかない所で、すでに蜘蛛の巣と化していた
『けけけっ!いい素材が沢山いるぜ〜…』
 突然の襲撃に、教職員や生徒達はパニック状態に陥る体育館内に蜘蛛は糸を放って、体育館内を巨大なクモの巣へと変えて行く。
「あのクモ野郎!ニューヨークに行くんじゃなかったのかっ!?何で、今更っ!」
 やつの狙いは何だっ!俺か?……それなら、こんな大胆不敵なことはしないはず…だったら、何が狙いなんだ!?
 俺は後ろに向かってとっさに走り出した。この場所から一刻も早く…こいつ等を避難させないと!
「だぁぁーーーーーーっ!!」
 俺は、体育館の渡り廊下に通ずるドアに向かって懇親の力を込めた拳を叩きつけた。
バキャッ!
 ドアは脆くともに崩れさり、そこからパニック状態に陥った奴等を逃がして行った。
「うわーーーーっ!」
「ぎゃーーーーっ!」
 後ろでは、蜘蛛の巣に掛かる他のクラスの生徒達の悲鳴が聞こえてくる。くっ!あいつ等も心配だけど、ここには秋子姉もいる…だけどこんな所で変身なんて出来ない!
 とにかく、最低限は被害者を減らした方がいいと思い、俺は手当たりしだいに非常口を叩き壊し、残った生徒達を逃がす。
「おらおらっ!さっさと逃げろっ!」

 ようやく、全員を逃がす事にできたが……掴まったのが23人ぐらいか…この巨大な巣にある23体の繭状の物体…そして、段々と拡大して行くクモの巣に、もう出口は全部塞がれて、もう体育館全体は、クモの巣と化して、やつのバトルフィールドと化した。
『けけっ!そろそろ時間かっ…』
 蜘蛛の合図と共に、3、4体の繭が動き出してクモの糸が散乱した床にボトリと落ちてきた。
「なっなんだ、これ……」
バシャッ!
 その繭は、真っ二つに裂けて……何かが繭から這い出してきた。
「なっなんだこいつ……蜘蛛?いや違う…量産怪人かっ!」
 それは、蜘蛛の姿をしているが明らかに蜘蛛とは違う怪人が、這い出してきた。
『ギギギッ』
「ちっ!変身っ!」
 次々と繭から出てくる、クモ怪人達に戸惑いながらも俺は変身した。
『けけっ、黒狼…陣内 榊お前にそいつ等が倒せるか?』
「なんだとっ!がっ!」
 クモ怪人のが一斉に俺に掛かってきた。俺は攻撃を防御するが…その攻撃で…このクモ怪人が何なのか解った。
「ちっ!逃げ遅れた奴等を怪人に変えやがったのかっ!」
『俺の力で変えてやったのさ、クモの巣を張れば世紀末王様程度ではないが、俺も同じ酔うな芸当はできる……卵さえ産み付ければ、繭の中で6分後には俺様の分身が誕生すと言う仕掛けだ!』
「…たちが悪いぜ……まともに戦えねえじゃねえか…」
 西川に聞いたが、個別の量産怪人を大量生産する際にはプラントと言う場所を使うと同じように、俺は奴のプラント内にいるのか!
『殺せるか?お前に殺せるのか?けけけけっ!』
 ちっ!次の奴等が繭から出てきてやがる!もし戻せるのなら…こいつしかねえ!
「黒狼ガン!ショット!!」
 ベルトに装備されていた拳銃で、クモ怪人を撃ちまくる。アンチテレキネシスの弾丸だ、これで元の人間に戻せたら…
『………ギギッ!』
「効かないっ!?」
『蛇の時のように上手く行くものかよ……俺の分身どもは卵を産みつけられたらもう元には戻せねえんだよっ!』
ザシュッ!
「ぐはっ!」
 天井に吊る下がっていた蜘蛛が俺の後ろに降りて、俺の背中を鋭い爪で切り裂いた。
「……ちっ!」
 俺は後ろの蜘蛛に拳を振るうが、蜘蛛は糸を伝ってまた天井へと逃げた。
『けけけっ!ここでは俺様が天下なんだよ!』
「蜘蛛っ!てめぇっ!」
 俺は黒狼ガンの銃口を蜘蛛に向ける……だが、今度は背後からクモ怪人が俺を押し倒した。
「く……倒すしかねえのかよっ!」
『ぎぎっ』
「………こいつ等、泣いてやがる」
 涙は流していないが……奴らの感情が俺の脳裏に痛いほど来やがる。
「殺せって言ってるのか?」
『…こ…ろせ……ころ……して…』
 口々にクモ怪人からもれる、殺せの一言……まだ心は生きている、人間のままだだけど俺にはこいつ等を元に戻す事はできない…
「……できねえ…俺にはできねえっ!!」
『じん……な…い……頼む…ころ…して…くれ』
「!!」
 こいつ、俺のクラスの奴か?……ちくしょう、頭が痛い…バカ野郎!
「解った……楽に逝かせてやる!来いっ!」
『ぎぎぎっ!!』
 そう言うとクモ怪人達は俺に対して一斉に掛かってきた。
「黒狼っ!半回転キィィック!!」
 俺は、エネルギーを溜めた後ろ回し蹴りで、一気にクモ怪人達を一掃した。それで4体くらいのクモ怪人達は命のない躯と化した。
「だぁぁぁぁっ!!」
 残りのクモ怪人共は俺を睨み、一斉に掛かってきた、俺は雄叫びを上げ…反撃する…こうするしか……助けられないのかよっ!ちくしょうっ!
「黒狼!ナイフっ!」
ザシャァァーーッ!
 最後のクモ怪人を倒し、数体の繭と主格の蜘蛛を残していた。
『やっと本性を現したな、陣内 榊…次の余興へと移るか……陣内よ、こっちを見なよっ!面白い物を見せてやるぜ!』
 そして、蜘蛛は糸を引っ張ると何かが俺の目に飛び込んだ。
「秋子姉……」
 そこには、確かに今にも繭になりかけのクモの糸に絡まれた秋子姉がそこにいた。
「秋子姉ッ!!」
『けけけっ、やはりこの女はお前と繋がっていたな……』
「てめぇっ!秋子姉をどうするつもりだ!?」
『……世紀末王様の元へと捧げるのだ、アルティメットコアを産む為の母体としてな、この女はちょうどいい躯をしているからな…けけけっ!』
「ふざけんじゃねぇ!」
ジャサァァァーーーー!!
怒りに任せて、俺は黒狼チェーンを蜘蛛に向けて放つ。だが蜘蛛は糸を引っ張って秋子姉を縦にして、防御しようとした。
「くっ!リバース!」
 とっさに俺は両腕の鎖を戻すが、それを狙っていたのかまた繭からクモ怪人が現れ、背後から爪を立てた。
「ちっ!邪魔だっ!」
 俺は力任せに怪人を殴り飛ばし、蜘蛛に向かってジャンプしようとする。が、蜘蛛は自分の前に秋子姉を出し…
『動くんじゃねえよ…黒狼、俺様には人質がいるんだぜ…』
「………くっ…卑怯者が」
『卑怯者結構!勝つ為には手段は選ばないのさ……黒狼、こいつ等に殺されるか、俺様に殺されるか…どっちがいい…』
「……」
 俺は、腰の黒狼ガンに手をかけるが…
『少しでも攻撃しようとすると、この女をこいつ等と同じにするぜ……』
 そう言い、蜘蛛は糸を秋子姉に絡めて、繭を形成しようとする。
「くっ!!…秋子姉は、必要なんじゃないのか?お前等にとって…」
『まあな、死んだら諦めるしかない……だが、お前がここでおとなしく殺されれば…生かしてやっても良いぜ』
「………っ」
 俺が死んだ所で、秋子姉は世紀末王の手によって、アルティメットコアを身ごもる結果が見えている……だが、ここで攻撃すればさっきみたいに盾にするか…殺されるか…
『両手を上げて、ナイフと銃を捨てな………』
 ちっ…万事休すか……仕方ねえな…
 俺はそう思い、ナイフと銃から手を離した。ちっ…俺は……諦めるのか…
スチャ
 いや……諦めるものかっ!
「黒狼ガンっ!シューッ!」
ズガンッ!
 俺は倒れる際に、銃を空中で拾い秋子姉をぶら下げている糸に向けて、一気に乱射した。
『何っ!』
バシュッ!
 みごと、糸は黒狼ガンの弾丸に貫かれ、秋子姉の繭は地面へと落下して行った。
 俺はその繭を受け止めようとしたが、何かに腕を捕らえられた。
「ちっ!糸か……」
『てこずらせんじゃねえよ、黒狼……』
「……野郎」
 そこに、秋子姉の入った繭がある……だが、俺の体は糸に絡まれて動けない…
 目の前に……目の前に、秋子姉がいるのに、俺は…俺は助ける事が出来ないのか…


 ガキの頃のように、姉上を守れなくて無力だった俺と一緒じゃねえか……
「ちっ…情けねえよ……」
『そうだな…情けない姿だな……皮肉だよなぁ、ここにいる奴等に食われてお終いなんてよ…』
 だが……今は…
「ああ……」
 戦うための力がある……
「そうだな」
 あの時みたいに後悔はしたくないっ!
「てめぇがなっ!アンチテレキネシスっ!全開っ!!」
ヴゥゥゥンッ!!
 俺は秋子姉を……いや、秋子をっ!みんなを守るっ!!
「だぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!」
 俺の咆哮が、体育館内に響き渡り、手に繋がれていた糸を伝導体としてアンチテレキネシスを蜘蛛の巣全体へと解放した。赤い光りが巣の中を包み込んで行く
 ……光はやがて繭に吸い込まれて行き、中の奴等のクモ化を中和していった。
『てってめぇっ!!何をっ!?』
「俺の力を最大値に放出して……クモ化を押さえるのさ、卵の動きを止めればこれでお前のプラントもただのデカイ蜘蛛の巣だぜっ!!」
『ちっ!アンチテレキネシスか……させるかよっ!』
「食らえっ!黒狼半回転キックっ!!」
バシィィーーーーッ!
『ぐはっ!!』
 蜘蛛は、俺の技を食らって体育館の向こう側へと吹き飛んで行った。
 俺は蜘蛛を吹き飛ばした衝撃と共に、糸から脱出する……
「……はぁ…はぁ…」
 だが、俺は力の使いすぎで変身が解けてしまった。残った繭に入った奴等を戻すのには少し無理があったのか……しかも体力が異常に消耗してやがる…次の変身は無いな…
 そうだ、秋子姉……俺は秋子姉の繭に向かって走って行った。
「はぁ…今、助けてやるからな……秋子」
 俺はそう言い、ナイフを使い…繭を慎重に切り開いていった。そして両手で繭を切り開くと、秋子の可愛い顔が現れた。だが、目を閉じたまま動かない…まさか、さっきの落下の衝撃で……
「…秋子ね…え……」
 お願いだ……目を開けてくれ、秋子!
「頼むっ!目を開けてくれっ!!もう、誰も死んで欲しくないっ!好きな奴をもう、失いたくねえんだっ!!お願いだっ!秋子ぉぉぉーーーっ!」
「……ん…」
 そう思った瞬間…秋子の目がうっすらと開いた。
「……榊…私…」
「秋子っ!」
 俺は秋子姉とは呼ばずに、名前だけで呼んで……秋子を抱きしめた。
「よかった……本当に…よかったよ…」
 ただ、凄く嬉しかったから……秋子が生きていただけで…嬉しかったから…
「榊なの…私を助けてくれたの……」
「ああ……」
「ありがとう、榊……」
 俺は秋子を泣きながら抱きしめ、続ける…。
「俺……姉上を殺されてから、もう誰も守れないと思った……俺に…秋子は守れないと思った…」
「でも……守れたじゃない…」
「え?」
「お姉さんの時のような過ちは犯さない……榊は言葉通り、私を助けてくれたわ…守ってくれたわ…私も…榊なら助けてくれるって信じていた……榊の声、聞こえたわよ」
「……秋子」
「届いたわよ、榊の声が……必死で守りたい者を守りたいって気持ちが…解ったの」
 俺の目から一気に涙が零れ…、俯いた…今の顔は絶対に秋子には見られたくなかったから…
「だから、私……榊が好き…姉弟じゃなくて、純粋に榊が…好きなの、ずっと前から」
 そう言い、秋子は俺の背中に手を回した。
「…俺も……秋子が好きだ!もう…誰にも渡す物かっ!」
「……榊…」
 俺は涙を流しながら、秋子の体をぎゅっと抱きしめた。

 ずっと…強く…そして…優しく…

 もう離さない…姉上の二の舞にはさせない!例え、この体が散ろうとも…秋子は必ず守ってやるっ!
グラッ!
『おうおう、感動の再開はそこまでだぜ、黒狼!』
 俺と秋子の後ろの瓦礫が持ちあがり、そこから蜘蛛が這いあがってきた。
「……蜘蛛、てめえもしつこい野郎だな…嫌われるぞ」
『てめぇのせいで、プラント計画はオジャンだっ!それに、女の方も意識を取り戻させやがって…許さねえぞ…黒狼…この落とし前は高くつくぜぇぇぇーーっ!』
「榊……」
 秋子が心配そうに、俺の表情を覗き込む。俺は笑って……
「秋子…見ててくれ、これが理由だ……」
「うん…見守ってる」
「上等」
 俺はそう言うと、立ちあがり蜘蛛を睨みつける。
 やはり奴も、零と同じように全ての負の感情が高まると、『殺意』に変わり、幹部怪人は力はその力のリミッターを外し、力を倍増させる…蜘蛛も同じ
『殺すっ!殺すっ!殺してやるっ!黒狼も……ここの連中も、その女も…皆殺しだ!』
「ふっ…お前はそう言って何人殺した」
『数えた事はねえなっ!!女、子供も容赦無く殺していたからよっ!!てめえもそうなるんだよっ!!』
「零の両親もそう言って殺した……そして、零を俺と同じ心の闇を作らせた、そして零その闇を封印した…二度と思い出す事はない…色々な敵と戦ってきたがお前ほどムカツクヘド野郎は会った事は無いぜっ!覚悟しやがれっ!ここでぶっ飛ばすっ!」
『けけっ!減らず口叩きやがって……まずは、その女から殺してやるっ!』
「ふざけんなっ!そんな事は俺が許さねえっ!」
『なっ!?』
 秋子を狙おうとした蜘蛛に俺の咆哮が響き、俺は秋子の前に出て言い放った。
「どんな敵でも…どんな奴でも、秋子を襲う奴は絶対に許さない……俺は!秋子を死んでも守り通す!!秋子には、指一本でも触れさせねぇ!てめぇをぶっ飛ばす!変身っ!!」
 俺は変身の型を取る、だがさっきの戦闘でエネルギーを使い果たしてしまった。
『けけけけけけっ!バカか!?さっきの戦闘で変身エネルギーを使い果たして変身できねえ奴がよっ!』
「そんなん……知るかぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」
ヴゥゥンッ!
 俺の咆哮にアグリュームが輝き、神々しい光に俺を包み込み、俺を黒狼へと変身させた。
「さ…榊…その姿は……」
「我…風よりの使者に、漆黒の狼…その名を、仮面ライダー黒っ!狼っ!」
『なにっ!なぜ変身できるっ!同じ幹部怪人が……』
「てめえは絶対に許さねぇ…行くぜっ!」
カシャッ!シューッ…
 口が開き、赤熱放熱現象と共に俺はエネルギーを左足に集中させ、蜘蛛に向かって一気に蹴りかかった。
「食らいやがれ!一撃必滅…黒狼キィィィーーーーーークッ!」
 横回転の反動を利用して、俺は蜘蛛にキックを食らわせた。だが、蜘蛛は寸でで避けたが、左腕を確実に捕らえた。
バシュゥゥゥーーーッ!
『ぐぁぁぁっ!』
 蜘蛛の左腕をもぎ取り、俺は蜘蛛の後ろに着地する。
『てってめぇぇぇーーーーーっ!』
 残った5本の腕の爪で蜘蛛は俺に襲い掛かってくる。俺は黒狼ナイフで対峙する。
「来やがれっ!」
『蜘蛛っ!そこまでだっ!』
 次の瞬間、何者かの声で俺と蜘蛛は対峙したまま止まった、その声は蝙蝠か!?
『蝙蝠かっ!?手出すんじゃねえ!俺はこいつを殺さないと気がすまねぇんだっ!』
『私とてお前などを助けるつもりは無いさ…だが世紀末王様の命は守れないとは言わせないぞ……』
「なにっ!何処にいやがるっ!蝙蝠っ!」
 このクモの巣の何処かに、蝙蝠が息を潜めているだが、気配を完全に消しているのか何処にいるのか俺にもわからない。
『例の計画が発動した、至急帰還せよとの命が出た……今、我等幹部怪人を一人でも欠けてはならない状況に遊んでいる暇など無い。帰還するぞ…』
『ちぃっ!あの計画か……解った』
 なんだ?あの計画って、西川が言っていたニューヨーク本部に戻る事じゃないのか?
『黒狼っ!次あった時は必ず血祭りに上げてやるっ!覚悟してろよ』
「ま、待てっ!蜘蛛!!」
 蜘蛛は俊敏な跳躍力で、体育館の窓を突き破って逃げて行った。
 なんだ……蜘蛛が恐れをなすほどの計画が、ネメシスで…実行されるのか?
 蝙蝠の声もしない……奴も日中では出れないのか…ん?これは……
「蜘蛛の腕…さっきもぎ取った奴か…」
 もしかしたら、こいつの血で……俺は、蜘蛛の腕に噛みついてその血をすすった。
「うげ…」
 さすがは蜘蛛だ、血の味もかなり不味い……だが、これで零のチェーン同様にまた蜘蛛の力も……会得できるかもしれない。黒狼のこの特徴は何を意味しているのかは定かじゃないが、また強い敵が現れた時に…重宝されるかも…
 俺は口を離して、手を見た。何処も変わった所が無いのは嘘だ…手甲に力が宿っている。
「黒狼クローッ!」
ジャッ!
 俺の手甲から計6本の爪が飛び出し、拳を取り囲む。手甲から出ているんだったら、あれも出きるはずだ。
「黒狼チェーンックロー!」
 手甲に爪を出したまま、チェーンを解放する。鎖の先端に6本の爪を持ち、まるで別の鎖鎌のようにうねりを上げる。
「これなら、蛇のように自由自在に鎖をコントロールできるっ!よしっ、行けっ!チェーンクローッ!捕らえられた繭を切り離せっ!」
 俺はチェーンを操作して、爪で糸を斬り…鎖でゆっくりと繭を下ろして行った。すげえ、まるで万能武器…だけど、蜘蛛の生き血を完全に吸ったわけじゃない、これも完全じゃないんだな……だったら、全ての幹部怪人を倒して…奴らの力を会得したら俺はどうなる…
「ふう、これで全部だな。くっ…変身時間が長かったか、無理はするもんじゃねえな」
 俺は変身を解いて、そこに座り込んでいる秋子の所へと戻った。


「おーい、和っ!先行くぞっ!」
 ここは、ネメシス戦闘員の宿舎、ニューヨークに移転するに当たって、西川 和も学校を休み荷造りをしていた。そんな彼の耳に信じられない情報が飛んできた。
「なっなんだって……こんな計画聞いてないぜ…」
 西川が驚愕する、その計画とは…一体…



  ToBeContinue


 完結編に続くっす!

今回は後書きタイムはおやすみっ!全てを総まとめに、後編で全部野郎と思いますのでご了承あれ……


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