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 榊が消えていた20日間、秋子は不安で夜も寝れなかった。

 榊が、もう帰って来ないんじゃないか…と……榊は記憶を取り戻して、自分が知らない内にバイクで遠くに行ったんだと…

 

 だが、今でも、その布団の中で寝息を立てて眠っていると思い…秋子は、毎朝…榊の部屋に榊を起こしに来るが、そのベッドには榊の姿も形も無い……

「榊……さかき…」

 人のいない榊の部屋で秋子は、人知れず泣いた日もあった……

 榊は、秋子にとって、大切な弟であった。5年前水瀬家に居候に来る前、秋子は弟が欲しかった…そこへ、父の信一が天蓋孤独で記憶喪失の榊を連れてきた時から、秋子は心を開こうとしない榊を弟として接してきた、次第に榊の心も開いて…榊と秋子は本当の姉弟だった。そう…信じていた……。

 

 そして、20日目の夜……

 

「秋子……またここにいたんだね」

 秋子はひとり、榊の部屋で立っていると後ろから、信一が声をかけてきた。

「お父さん……」

「まだ、帰らないようだね……榊君」

「もう、帰ってこないかもしれない…」

「えっ?」

 思いつめた表情で、秋子はそう言った。目には涙が溜まっていた。

「きっと、記憶が戻ったのよ……あの子…自分の家族の所に戻ったのよ……」

「榊君の……家族は…」

 信一はその言葉に詰まった。

「……お別れくらい言ってくれれば、辛くなかったのに……さかき…」

 秋子の瞳から頬を伝って、涙が一滴榊の部屋の床に落ちた。

 ちょうどその時だった。

ブロローーー…

 バイクのエンジン音のような低い音が外から聞こえた。

「あっ!!」

「秋子っ」

 秋子は、その音を聞き急いで走って、榊の部屋から出た。

 押さえる気持ちを隠しきれない、榊が帰ってきた…バイクの音がそれを証明している。

 

 階段を降りて、玄関へと榊へと足が勝手に向かった。

 玄関に背が高めの影が写っている。榊だと、瞬時に秋子は悟った。

「榊っ!」

 靴も履かずに、勢いよく玄関の扉を開けると…そこには、服がボロボロで傷だらけの背の高い少年が立っていた。その少年は、ニコッと笑い。

「秋子姉……」

 と呟いた…その少年こそ榊だった。雨に打たれて、髪は湿っていた。

「さ…榊…榊よね…どこ行ってたのよ…人を、こんなに心配かけさせてっ!」

「………」

「それに、こんなに傷だらけで…一体、どうした…の…」

 秋子が言い終わる前に、榊の体はぐらついて秋子の肩に倒れこんだ。

 そして、力尽きたように…目を閉じた。

「榊っ!?榊っ!!」

 秋子の声が、玄関に響き、春奈と信一が玄関に来た。

「秋子っ、どうした……榊!?」

「お父さん、春奈姉さん榊…凄い熱……」

 秋子は泣きそうな顔で、榊を抱え込みながら、信一達に言った。

「…酷い怪我だっ!すぐに手当てをっ!」

 信一はそう言って、救急箱を取りに行った。

「あっあたしっ、救急車を呼んでくるわっ…あれ?秋子……その子は?」

「え?……」

 春奈が指差した所に、秋子は向き直る。

 そこには……

 

仮面ライダー・黒狼

第2章『序曲』

 











 

 ぐっ!体中が、鉛のように重い……しかも、いてぇ…そう言えば俺、どうしたんだ?

 俺は頭の中の記憶を、巻き戻して見る…そうだ、俺黒狼になって、あのバッタ野郎と戦ったんだ……そして、ボロ負けして…ルガーに助けてもらったんだ。

 じゃあ……ここは、どこだ?

 俺は、目をゆっくり開けた。そこには……見知らぬ天井が広がっていた。

 よく見てみると、ここは病院の病室らしいな…

「あっ、榊……起きたのね」

 懐かしい声が聞こえ、俺はその声のする方に首を傾けた。

「秋子姉……」

「榊っ!」

 秋子姉は関をきったように俺に泣き付いて来た。

「榊よね……本当に、榊よね…」

「俺が榊じゃなかったら、一体誰なんだよ…秋子姉…」

 俺は呆れたように言うと、秋子姉は涙目で俺をジッと見つめながら…

「どこ行ってたのよ!人にこんなに心配かけさせて…私は、もう榊が戻ってこないのかと心配で……」

 俺は、そんな秋子姉の肩を抱くと…

「すまない……心配かけさせたな」

「もうっ許さないんだから!…さかきぃー……」

 秋子姉は頬を膨らませるが、すぐにまた泣き崩れた。俺は秋子姉を抱きしめて背中を優しくポンッと叩いてやった。

「さっかきぃー!起きたぁー!?……って」

 俺が秋子姉を優しく撫でていると病室に、威勢良く春奈姉が入ってくる。

 そして、俺と秋子姉を見て…笑顔のまま硬直する。

「はっ春奈姉……」

 病室内に、ただならなくさむ〜い空気が、流れた。







 ネメシス地下施設

 

「戦闘員NO1270、西川 和…黒狼は逃したのは本当か?」

 榊にルガーソーダーをやった張本人の西川は、上官に呼び出されていた。

 榊と同じクラスと言うデータがあるので、もしかしたら逃がした可能性もあると西川に疑いをかけたのだろう。西川は、殺されるのかと気が気ではなかった……

「はっ!不覚を取りました、ルガーソーダーも奪われ…自分はっ!」

 だが、西川は逆に得をしていた。一般戦闘員では上官の戦闘指揮官の部屋には入る事は出来ないからだここで、情報が得られ生きて出られたら……

「さて、お前の処分だが……」

『まあ、よい。黒狼を逃したのは一人のせいではない。我の責任でもある……』

「せっ世紀末王様……」

 上官室の放送に謎の声が響き渡った。

「……(こいつが、噂の世紀末王って奴か…)」

 西川は、同僚の戦闘員からこのネメシスに入った当初、ある噂話を聞いた。

 世紀末王ドラゴノソード……永遠の命を持つと言われている存在、数々の量産型怪人を作り上げた力を持つと言われている神に匹敵する力を持つ者と噂が流れている。

『黒狼の喪失は惜しいが…駒は全て揃った……、今夜より計画を実行する!』

「はっ…あの計画を…ははっ!仰せの通りに」

「(あの計画?なんだ……)」

 西川は、疑りの目で指揮官の方を見て……

「指揮官どの、あの計画とは……」

「お前には関係の無い事だ…」

『まあよいではないか、そやつも、我等の同胞だ…我は知られているように…永遠の命を持つ者と言われているが…それでも命の限界がある……2000年で、我が命は消滅し無に帰るだろう…』

 正直、西川は驚愕した、永遠の命にも限界があるというのか……

『だが、命を新たな器に入れ、究極の体が手に入れば話しは別かだが…』

「究極の体?」

『そう、魂で満たされた体に我が入れば…我は完全な姿となる、それを実現にするには、一千人もの人の命を手始めに奪うしかない』

「………」

 西川はその言葉に戦慄を覚えた。こいつ……狂ってやがる…自分が生き返るために1千人もの命を奪うと言う。

『一千人の命はこの二つの石アグルストーンに蓄積され……我が命の心臓部を形成する』

 そう言い、立体映像のような物が、西川の前に出てくるとそこには青の半透明な球が台の上に置かれていた。

「生命の青い石アグルストーン…」

 西川は、この二つの石にくぎ付けになり…冷や汗を流した。

 この石の持つ特殊な力で……陣内が元に戻らないだろうか……西川はそう思った。

『…指令よ…黒狼も、どこかに潜伏中のはずだ……付近を捜索して…捕獲に当たれ』

「ははっ仰せのままに!」

「ははっ!」

 二人は、世紀末王の言葉に敬礼する。

 怪人が町に出て、そして黒狼・榊の捜索も始まろうとしていた。

 西川は一刻も早く、榊に伝えなくてはといけなかった……

 

 

その頃、榊のいる病院では…

 ようやく、落ちつきを取り戻した、春奈姉と秋子姉と共に今まで俺が行方不明だった時の事とかを色々話してくれた。

「そうか…観奈美がか、今度会って謝らないとな」

「咲耶ちゃんにもちゃんと謝るのよ、あの子も心配していたから…」

「天野もか……そうだな」

 とりあえず、俺の知り合いには帰ってきたことを伝えなくてはな…

 観奈美……心配をかけさせたな…

「そう言えば、榊……帰ってきた時に子犬拾って来たの?」

「え?」

 秋子姉が、子犬と言って俺は思い当たる事は何一つ無かった。

「そうそう、あの子…ずっと榊のそばから離れなくて、かわいそうだったから家に入れてやったら、ずっと榊のそばにいるのよ…」

「いや、俺が子犬を連れて来た覚えは無いが………もしかして…」

「心当たりがあるの?」

 俺は、頭の中で、俺の専用マシン…ルガーソーダーの事を思い出した。

 確か…重症の俺を助けてくれたのは、紛れも無いルガーだった……

 いや、ルガーはバイクのはずだ……子犬じゃない

「俺の近くに、バイクは無かったか?」

「うん、榊がバイクで帰ってきたかと思ったけど、外にはバイクも無くてその榊と一緒にいた子犬だけだったわよ」

 秋子姉が心配そうにそう言った。

「……その子犬は今どこにいる…」

「家であんたの帰りを待ってるわよっ!」

 これは春奈姉…まったく、いつまで経っても勝気な性格だな……

 でもこれではっきりと、その子犬はルガーだと言う事がはっきりと解った。

「秋子姉……俺の体、もう大丈夫か?」

「えっ?ええ…特に外傷はなく、骨も折れていないってお医者様は言ってたわよ……でも無理しないで、今日一晩だけ入院したほうがいいわよ」

「…いや、体が大丈夫なら動けるさ、信一さんにも迷惑かけたし……」

「でも……」

「秋子、榊がこう言っているんだから大丈夫よっ!」

 春奈姉が何とかフォローして、秋子姉はぎこちなく頷いた。

 その時、信一さんが俺の病室に入って来た。

「榊君、起きたんだね……よかった…」

「はい、おかげさまで……」

「いったい、どうしたんだい?あんな傷だらけで帰ってきて……秋子も春奈も心配したんだよ……」

 俺は、信一さんの言葉に俺は秋子姉と春奈姉をみる。

 秋子姉と春奈姉に俺が怪物に変えられた事を話して、いいのか…信一さんに全て話していいのだろうか……奴らの事を…奴らのおかげで、俺は黒狼に変えられてい、そして……色々思い出したぜ……全てを…

「榊?どうしたの?怖い顔をして……」

 秋子姉の顔がすぐそこまで近づく。俺は慌てて、我に帰り……

「えっ?いや、何でも無い…」

「そうか、榊君が話したくなかったら、無理して話さなくても構わないよ……」

 信一さんはそう言って穏やかに答えた。

「先生が、榊君はもう傷も治りかけているし退院して構わないそうだよ…」

「春奈姉から聞きました、体もだいぶ楽ですし…」

「そう……」

 なんだか、信一さんの顔が不安げに見えてならなかった。

 

 

 榊を病院に担ぎ込んだ信一は、親友の医師である美坂から、4時間前…驚くべき事を聞かされた。

「娘さんたちが寝てしまったから良かったが……信一、こんな事を聞いて悪いが…」

「………うん、榊君の事だろ…」

 美坂はレントゲン写真を見つめながら、信一を見つめなおして…

「確かに、陣内 榊君は体に無数の切り傷と打撲…骨の折れている個所もあった…だけど、今は……怪我も回復に向かっている、折れていた骨も自力でくっつきはじめている」

「自力で!?」

「驚異的な回復力だぜ…いままで色々な患者をみてきたが、榊君ほど怖いと思った物は無い……しかもだ、これを見てくれ」

 美坂は、レントゲンの写真に灯りを当てて信一に見せた。それは、榊の左腕の内部を写していた。

「こっこれは!?」

「左手首に金属質の腕輪状の物が埋め込まれている。外側からは全然見えていない…なんだか解らないが……これが、驚異的な回復力の原動力というのには間違い無い…これを見ろ…時間差で、左腕の方の傷から段々と治ってきている……」

 レントゲン写真を4枚程見せる。20分間隔で榊の左腕を取った物だと言う。

「埋め込まれたって、誰かに入れられたって事?」

「ああ……この腕輪は、ちょうどこの少年が行方不明になっている時に埋め込まれたらしい…」

「一体誰が、こんな事を……」

 信一は、ジッと榊の左腕のレントゲン写真を見る。

「信一、更に悪い知らせがある」

「えっ?」

「この腕輪は……彼の体を蝕んで、このままだと…」

「待ってくれ、美坂さんっ!この腕輪が、榊君の体をどうしようと……」

 信一は美坂の襟元を掴んで必死で問い詰める。美坂は、目線をレントゲンにうつして…

「CTスキャンで、彼の左手首の動脈が硬化している事が解った…たぶん、この腕輪のせいだと思うが…そのせいで、動脈に流れる血は弱々しくなっているんだ…しかもだ、この腕輪は、血管に根を張っていやがる…もしこれを刺激をするようなことがあれば…この腕輪の触手が、心臓に届き……やがては、心臓を硬化させて止めてしまうだろう…」

 美坂の言葉に信一は驚愕し、沈黙してしまった。やがて…

「……取る事はできないのか!?」

「だめだ、完全に血管に根を張っているから……無理に取ろうとすると、動脈を突き破ってしまう……まさに、この腕輪は彼の体の一部だ…そんな技術を誰が…」

「彼は、だんだんと死に近づいて行くと言うのか……」

「残念ながら…オレら医者に出来る事は無に等しい……彼の余命は、持って3週間くらいだ……」

「3週間…短すぎる」

「だけど希望が無いわけじゃない…」

 美坂はそう言って、信一の腕をほどいて…

「お前……何か、娘さんにも隠している事があるだろ…榊君のこと…彼が何者か、君は知っているんだろう」

「!?」

 信一の脳裏に、あの言葉が蘇る……それは、榊を引き取った5年前の事だった。

 

ある神社の地下室で…

 

『この家紋は陣内……水瀬殿、あなたはとんでもない子を預けられた…』

『どう言う事でしょうか、天野さん…』

 初老の男が、少年の持っていた刀を見て…驚きと不安に満ちた表情で信一に告げる。

『陣内家とは…その昔、人々を震撼させた盗賊団『死月』の子孫なり……だが数年前、陣内家は壊滅したはず…この子は、その忘れ形見と見うける……』

『盗賊団『死月』?』

 

 

「それで、その『死月』とか言う盗賊団の最後の生き残りってか?榊君が……」

「うん、僕も詳しくは知らないけど、死月は方術と言う特殊な力を持った盗賊団の一つらしいんだ…知り合いの、天野という人から聞いたが…」

「方術……死月…なんかの噂話だろう、『骸骨仮面』の噂と同じ…また、非科学的な事を大学の教授であるお前が……」

「いや、この話しはありがち噂とかそう言うたぐいじゃ済まされないんじゃないのかな…こう言うのを見ていると……」

「まっまあ…な…、死月…陣内家…か、これが榊君の命を繋ぎ止める一本の糸となればいいんだがな……」

「……大きな手がかりはそれしかないんだ…」

「『仮面(マスクド)ライダー』…」

 美坂は不意にそう呟いた。

「なんだい、それ……」

「骸骨仮面のもう一つの名前さ…噂話は、それぞれもう一つの名と由来がある。骸骨仮面はそれの悪い言われさ…だが、裏を返せば…仮面ライダーと名が変わるんだ」

「何が言いたいんだ?美坂君」

「何でも、表向きで考えるな……道を見つけ出すんだ、たとえ可能性が0でもな…それが、彼を助け出す糸口になるんだよ、解るな……信一」

 美坂の一言に…信一は今思い出した事があった……立花氏が、榊を助けた理由…

『……光と言う物を知らずに育てられ、あんな風になっちまったけど……君なら、あの子に…また光を見せる事ができる』

 10年間、榊はずっと闇の中で生きてきた、血塗られた刀をずっと手に持って…異形の者を斬り、その血をかぶりながら…榊は、生きていた。光と言う物を知らず……

 涙一つ流さず、顔色一つ変えない、その少年は……笑いもしなかっただろう…

 立花氏は、そんな榊に人間としての感情を取り戻そうとした…泣きたい時泣いて…怒りたい時怒って…そして、人としての笑顔を…取り戻させるため、信一に託した。

 そして、信一や春奈、そして秋子といた5年間の間に、榊に笑顔がもどり…立花の事はおろか…自分の唯一の手がかりとなる刀の事でさえ永久に忘れてしまった。

 これで良かったのかと、信一は思った……だけど、今榊の笑顔を辛い記憶で絶やす事は立花氏に申し訳が立たない……親として、失格だから…

 それと同じだ、どんなに可能性が0だとしても、諦めるのはまだ早い……榊が助かる道を見つけ出すのが、信一の出きることなのではないのか………

「そうだね……美坂君、やらなきゃならないんだよね。父親だし…」

「ああっ、そんなんだと冬美に笑われるぜ!」

「……うん」

 信一の表情に迷いという文字が消えた。

 

「うさん…と…うささ…ん」

 信一の脳裏に、誰かが話しかけた。

「お父さん?最近、よく固まるわね」

 信一の顔を、春奈がつつくと、信一はハッとして正気に戻った。

「信一さん、大丈夫ですか?」

 心配そうな顔をして、榊が信一に聞いた。

「大丈夫ですよ、僕は……帰ろうか…」

「…はいっ!」

 榊は覇気のいい声を上げてうなづいた。

 

榊視点に戻る。

 それから、俺達は美坂先生に礼を言って、我が家に帰ることにした。

 帰ってきた時は、もうすでに夜になっていて…いつか見た満月が顔を出していた。

 玄関の前に立って…考えて見た…

 一度帰ってはいるものの…やはり、あんな帰り方では、なんだか味気ない……

 やはり、ここは……

「ただいまっ!」

「お帰りなさい、榊っ」

 威勢良く挨拶をすると、秋子姉が答えてくれる。

「ご飯にする?それとも、お風呂?」

「うーんと…秋子姉にする…」

「ふえ?」

「榊……あんたやらしいこと考えてない?」

 春奈姉がニヤニヤして、俺の額を指でつつく。

「榊、後でジャム食べてもらうわよ」

 秋子姉がいつもの笑顔になる……久しぶりだけど、怖い…

「えっ…ひっ久しぶりだけど…俺腹いっぱいだから……」

「だーめっ、久しぶりだから…食べるの」

 うわ〜、ここまで来たら、逆らえないかっ…とほほっ

「くぅ〜ん」

 ん?俺のズボンの裾を引っ張る奴がいる?なんだ?

 俺は下をすっと見下ろした。そこには、薄緑色の毛並みのいい子犬が尻尾を振ってズボンの裾を引っ張っていた。

 俺は、子犬を拾い上げてよーく見た。

 この毛の色といい……そして、この感じは…この犬、やはりルガーだ。俺のバイクのルガーソーダーだ……

「あっ、こんな所に入たんだっ」

 向こうから、春奈姉が子犬を見つけてやってきた。

「そういや、こいつ…昨日俺が戻ってきた時に一緒にいたって言う子犬か?」

「そっ、この子ね榊と居た時、ずーっと榊のそばから離れなかったのよ、やっぱり榊のところにいたし…覚えがないの?」

「………ルガー」

「るが〜?」

「こいつの名前だよ、覚えは無いけど……こいつの名前なら何とかな…」

「ルガーねぇ…可愛いんじゃないの?ってなに頭の上乗せてんのよっ!」

 俺は、ルガーを頭の上に乗せていた。

「いいだろ、ルガーも喜んでいる事だし…そうだ、信一さんにこいつを飼っていいか聞いてみるよ」

 俺はそう言って信一さんのいるリビングに向かった。まあ、わかりきっている答えだが

「了承」

 と言う事で、ルガーがこの家の住人として招き入れられた。

 

 

 俺は久しぶりに自分の部屋へと入る。

 何日振りだな……俺がここに戻ってこれたのも…もう戻れないかもしれないと思っていたから……あの時みたいに…子供の頃…闇に身を投じていた時と同じように……

 ネメシスの奴等のおかげで、ようやく忘れ去られていた事全て思い出したぜ…

「借りはきっちり返すぜ…ネメシス!」

 そう言ってルガーに視線を落とすと…俺の脳裏に、ルガーの声が…聞こえてきた。

「なんだ…これは…、ご主人?やっぱり、お前はルガーソーダーか!?」

 そう聞くと、ルガーはわんっと嬉しそうな鳴き声を上げる。

「そうか、やっぱりルガーか……」

 わんっとルガーは頷いた、その時…脳裏に、ルガーとは違う声が脳裏に聞こえてきた。

 

…敵、敵、オレノ敵ハ、ドコダ…

 

「こ…黒狼……」

 その存在に気づいたと同時に、俺は左腕に激痛が走った。

「ぐぅぅっ!なっなんだっ!?左腕が……」

 

……敵、敵、敵、敵、敵、敵、敵、敵、敵、敵、敵、敵、敵、……

 

「うぉぉっ…左手が…引き千切れそうだ……っう」

 俺は左腕を抱え込んで、床を転がり込んだ。

「くそぅっ!」

 

 

 その頃、市街では、謎の怪人による殺人が勃発していた…

「おい、なんだ…あの鳥」

 ホームレスの一人が、上空に巨大な飛行する物を見つけた瞬間…そのホームレスの一団の首が何も触れずに斬れ落ちた。

「ひっ!?」

バサッ

 生き残った一人の前に、何かが飛来した。それは、コウモリかたどった怪物だった。

『キェェ…』

「ばっ化け物っ!?」

 

 

そして、榊へと戻って。

「うっ!!」

 

…敵ダ、敵ヲ感ジルッ!…

 

 黒狼のその言葉が、俺の脳裏を何度も蝕んで行く、腕の痛みが激しさを増した。

 そして……次に脳裏をよぎったのは、信じられない光景だった。

 

 それは、何体もの異形の怪人が…人を次々と殺す光景…女も子供も強い者も弱い者も…見栄えなく、奴等は殺して行った。奴らの中で一人見覚えのあるバッタ男がいた。

 鬼塚だっ!……鬼塚も、女性を狙った殺しをしている……

 鬼塚の爪によりその女性は原型も止めず倒れこむ。

「こっこれはっ!?……」

 …その腕を振り上げれば人間など簡単に殺せる、脆い物……それを見て、小さかったときの自分を投影していた。

 人も…怪物も、家族も自分の力で殺していた時の自分を……あの時は闇を生き、死を求めて殺しを続けていた時と……。もう…あの時の事は思い出したくない……

 

 だが、なぜ……奴等はこうも簡単に、人を殺めることができる!?

 

 お前達だって、元は人間のはずっ!それなのにっ!

 

 俺は逃げるように、窓から外へと飛び出した。

 そして、向かうあても解らないまま、闇雲に走った。

「うぁぁぁぁーーーーーっ!」

 

……ソウダ、榊、戦エッ!、奴等ハオレノ敵デアリ…オ前ノ敵デモアルッ!……

 

「ルガァァァァァーーーーーーーー!!!!」

 懇親の叫びで、ルガーを呼んだ。

ブロロォォーーー!!

 バイクの低い音が聞こえ、俺は振り返ると後ろから狼を形どる新緑のバイクが走ってきた。

「ぐぉっ!」

 俺はルガーへと飛び乗り、夜の闇を疾走する。

『変異っ!』

 左手首にリング状の装飾品が浮かび上がり、俺は意識とは無関係に腕輪を天に掲げそう叫んだ。それと同時に、俺の体は左腕からだんだん変わって行った。

 そして、俺の意識は黒狼へと入れ替わり、俺の意識はまた闇の中へと引きずり込まれて行った。

 

 榊が黒狼へと変異すると、ルガーの外見も変わり白骨標本のような外見へと変わり、スピードが落ちたが、ドンっと重量感が増し…ルガーが走った所のアスファルトがへこみタイヤの跡が続いていた。

『ぐぉぉーーーーっ!』

 黒狼は、白骨化したルガーの上で雄たけびを上げながら走らせた。

 戦慄の序曲を継げるがの如く………不気味な咆哮が、夜の町に響き渡る。

 

 

 

 

 ToBe

Continue
 

データ篇

 

ルガーソーダー

全長 240センチ

全高 125センチ

最高時速(深緑体の場合)300キロ

動力 不明

搭載武器 ラッシュダガー

 

ネメシスの科学班が人工知能を搭載して作り上げた、黒狼専用のマシーン。そのため、黒狼(榊)の言う事を忠実に聞き、榊以外の者は絶対に乗せない。座席の後ろにあるアタッシュケースに小型の武器を入れられる。普段はバイク形態から隠密形態と呼ばれる子犬になり、水瀬家の飼い犬を装う。榊の脳波を受信して様々な形態となり、スピードやパワーを上げることが出来る。通常形態は深緑体と呼ばれる。また、鬣の部分を刃物のように突き出して突撃するラッシュダガーが二門搭載されている。

 

スカルルガー(白骨体)

全長・全高 深緑体と同じ

最高時速 200キロ

搭載武器 4連ラッシュダガー

ルガーソーダーが黒狼・変異体の脳波を受信してこの姿になる。白骨標本のような形態で中のエンジン部分が丸見えで装甲が薄く見えるが結構硬く、パワーがあり2連のラッシュダガーが4門になり、重くなりスピードが減り運動性もパワーや装甲の方に行っている。

 

 

月影の石

黒狼にする際、榊の腕に埋め込まれた腕輪状の物体。榊を黒狼に変える起爆剤で、変身エネルギーを月の光から得る。だが、日中は月からエネルギーを蓄積するため、その間は変身も変異も出来ない。だが、手術が不完全なため、榊の寿命を縮める結果に……

月影の石はネメシスの他の怪人の腕にも装着されていて、殺した人の命を吸収して蓄積して持ち運ぶ能力があり、この月影の石もネメシス怪人の変身の起爆剤だ。

 

 後書きだよもん ゲスト:かおりん

いやーっ!今回もやっちゃいましたねー

香里「そ〜ね〜」

あれ?なんか嬉しそうだね

香里「だって、ようやくあたしとの関係が深い人が現れたのよ」

美坂医師か……彼は、どんな設定にしようかな…

香里「あっ!登場人物紹介で出して無かったわねぇ〜このボケ首領ぅ〜」

むにー

香里「しかもどこ触ってんのよ!」

ドガバキゴキ!メキョ!

改めまして

 

登場人物紹介

美坂哲司

半オリジナル……じゃないな、完全オリジナルだなこりゃ。秋子の父信一の高校時代からの親友で、腕利きの医師である。さっぱりした性格と世渡りの上手さで色々な噂話のルーツとか裏の顔を見破ってしまう。この後、カノンであゆや栞の担当医もやって怪我をした佐祐理さんを見たり事故った秋子さんを手当てした医師で、今回の事を踏まえるとこの美坂医師は無名ながら、カノンで一番奇跡を見ている人だろう…キャラ的に言えば、北川っぽい!でも、香里との関係は叔父と姪と言う関係である。

 

で構いませんでしょうか、香里様

香里「うんうん、よしっ!でも、叔父さんって北川君と性格が被るって書いてあるけど」

どうしても、黒狼ではこの人は北川くんと被ってしまうと言う何とも変な設定になってしまいました。

この黒狼では名前出したりおいしいキャラにしたかったんだけど……

香里「それはそうと、今回は敵の組織について話すんだったわよね」

ああ、そうだった(哲司のことなど気にも止めずに)

ええっと、この敵組織はあるじさんから了承をもらった、超常破壊結社ネメシスと言う名です。どうもっ!あるじさんありがとうございます!礼を忘れてましてすいません(泣)

香里「それで、設定とは少し違ってくるって聞いたけど」

はい、えっと…ネメシスは表向きではジグロと言う兵器開発公団として世に知られています。ネメシスはそのジグロの裏の顔ですねっ!

今度詳しい設定を、送らせていただきます!

ではっ!これにて!

香里「何っ!もう終わりなの!?」

つづく


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