ネメシス新本部地下施設…最下層・死海

 ここは、ネメシス本部の最下層…猛毒の水に満たされた死の海……その海の中心に、一つの小さい孤島が浮かんでいた。そこは世紀末王ドラゴノソードの体を保つ場所であった。
 だが、1歩間違えこの場には入ると……その毒の海から立ちこめる霧を少しでも吸うだけで、肺が腐敗して死にいらしめる死の場所である。
 そんな死の場所で、世紀末王は……ゆっくりとその老化した体を癒していた。が…世紀末王の脳裏にあるイメージが過った
『!!』
 彼が見たイメージは二つ……一つは赤い装甲を持つ3本角の戦士…そして、もう一つはそれと戦う異形の怪物達…
『そんな……ばかな、あれが…あれが蘇ったと言うのか!戦士クウガ…そしてグロンギ族』
 世紀末王の表情が段々と強張る……そして、激しい頭痛に襲われて、世紀末王は頭を抱え込んだ。
『あれが…蘇るとは…いや、人間が故意に復活させたとしかおもえん……なんと愚かな種族ぞ……人間という物は…我が体ができ、完全に復活した暁には……貴様等を残らず食い漁ってやろうぞ』
 怒り……その二文字が、世紀末王の脳裏に刻まれ…その怒りは食欲となり殺意へと変わる。そのすべての負の感情を吐き出すかのごとく咆哮を上げた…毒の海に波紋か轟き場内は強い地震のような振動が走った。

 その咆哮は、地上に近い地下4階…『戦慄の間』にも轟いた。その響きに幹部怪人3人も気付いた。
「……この叫び声は、世紀末王様の咆哮」
「マジか?世紀末王様のいる最下層は地下100階にあるんだぞ…そんな所から聞こえてくるなんて……」
「今回の件で、かなりお怒りらしいな……」
 蜘蛛、蝙蝠、蠍の三人の額から冷えた汗が流れる。世紀末王の怒りは、実は幹部怪人の体にも影響していた。
「やはり、世紀末王様のお力で産まれた我等にとって…世紀末王様がお怒りになるとそれと体が同調するのか、体が活性化している」
 握りこぶしを握る、蝙蝠の手に力が沸いてくる感じがする。
「そうか、おれ達がこうなっている以上、あいつも…無事ではないだろう……」
「蜘蛛、それはどういう事だ?」
「けけっ、今に解る……」
 そんな中、蜘蛛は何かを悟ったように不気味な笑みを浮かべた。この後、世紀末王の奉公は15分に渡って、この場内に響き渡った。





 不気味な満月が照らす、長野市内の廃工場……ここは、ついさっき白い戦士と俺、黒狼の活躍によって、落下したクモ種怪人の落ちた場所だ。
 俺は一人、バイクに変形したルガーに乗ってここを訪れていた。
「……ここに、あのクモ種怪人が落ちたんだよな」
 見た所、気配も奴の匂いも感じられない……死体もないとすると、まだ生きている可能性は高い。
 にしてもあの白い奴……
『ありがとう…刑事さん』
 俺の事を知っていた、そしてあの声…とあのサムズアップ…間違いない、あの人だ。
 俺は、天井を見上げた……クモ種怪人が落ちて、空いた大穴から月が見えた……満月だ、1ヶ月前見た、不気味な月……アグルストーンがまた疼く…
 ここ1年、満月の時はなぜかアグルストーンが疼いて仕方がない……そして、その時は黒狼に変身すると戦闘能力が微妙に上がったよな気がする。
 …………まあ、気にする事あるかないか……
ドゥンッ…
“ぐおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーー……”
 なんだ、何何だこの感覚は……耳には聞こえない、頭に響いてくる。とても不快で気持ちが悪い…叫び声が頭に響いてくる。
「ぐぅっ!」
 頭が痛い……割れるように痛い…どうしたんだ、最近ではこんな事無かったのに……
「ぐわーーーーーっ!!」
“感ジル…オレヲコンナ体ニシタモノの匂イダ………榊…後、少しダ……オ前カラ躯を取り返ス時は……”
 何者かの叫び声と共に、黒狼が俺に語り掛けてきた……もう少し?黒狼が体を取り返す…解らない……全く、わからねえよっ!
 体が熱い……燃えるように……熱い…
 俺は頭を抱えてその場に膝をついた…何が、何が…起きているんだっ!!俺の体で…

 ネメシス本部地下4階『戦慄の間』
「蝙蝠よ……解るか?黒狼も、結局は幹部怪人だって事だ…」
「私はお前がいったい何を考えているのかわからないよ…何を知って、悟っているのか…」
「その内、解るさ……」


仮面ライダー・黒狼
第1章『復活と変身』
後編

 長野から離れた、静岡県の山中にある工場、そこはネメシスの兵器開発工場でもあった。その内部では、黒い煙が立ちこめて……機材や物資が燃えて、しかも量産怪人と職員らしき人物が、惨殺死体となって転がっていた。
「ふぅぅぅ……」
 その傍で、深緑に染まった異形の戦士がその惨殺死体を見下ろしていた。深緑の戦士は人の姿へと戻る。
 その姿は…あの風祭 真だった。真は傍にかけてあったコートを羽織ると炎の立ち込める、工場内から出ようとした…
「……結局、本部の情報は無し…か」
ピピッ!
「ん?ファックス?」
 工場内に、一つだけ残っていたファックスから…何かが配信されてきた。
「……こいつは…」
 ファックスから配信された、紙には…こう書かれていた。『グロンギ族・及び戦士クウガ復活されたし、新型兵器の開発を求む』と書かれていた。
「この写真の影…あいつだ」
 真がその写真に映し出されている影に、見覚えがあった。それはあの古代遺跡の調査隊を皆殺しにした謎の怪人だ。
「ネメシスとは敵対関係だったのか……何にしても、俺には関係はあるまい…」
 真はそう言うと、ファックスの配信先を確認するとその紙を炎の中に投じ……工場から出て外に止めていたバイクに乗るとその場所に向けて走り出した。


 何とか、奇妙な発作も治まって…俺は警察署へと戻りあの現場を目撃していた一条さんに会い、全ての事を話した。
 …俺がCIAから来た特捜部隊の隊長だと言う事、ネメシスと言う組織を壊滅させる為に派遣され、警察を装ってその力を利用して極秘捜査をする為…警察になった事と…
 さっきの姿はネメシスの幹部怪人として、改造させられた姿だと言う事も……
 さすがにネメシスの規模、戦力までは極秘事項の為教えられなかったな。

「解った、ならば…あの未確認生命体も、そのネメシスの戦力と言うのか」
「それは解りません……新型か、まだ未知の敵なのか、どちらにしても、警察には手におえない相手だ…これは俺の…CIAの任務です」
「そうか、だが俺達警察は…どんな脅威からも必ず市民を守る…君がCIAの任務で動こうと、関係はない……」
 そう言い残し、一条さんはその場を離れようとし、俺はすれ違い様に……
「俺にも……守りたい者が、日本にいるから…」
「………」
 俺はそう苦し紛れに言う……一条さんは罰が悪そうにその場を後にした。これでコンビ解消だな……

 まあ、遅かれ早かれこうなる事には気付いていたけど……なんか歯痒いか…




 結局、俺は未確認生命体の捜査で第1号(クモ種怪人)の捜査に加わり…一条さんとは別行動を取って、あの第1号の足取りを追う事となった。
 一条さんは、昨晩あった家畜の血が何者かによって抜き取られた事件の捜査に未確認生命体が関係がないかと言う事らしいが……
 やな予感がする……未確認生命体の動きで、ネメシスが本格的に動く可能性も出てくる……だとすれば…

 しかも満月の時には……俺のアグルストーンは頻繁に、疼くようになった。何でかは解らない、それに何が起こるのかも解らない…考えて見ればこのアグルストーンも、古代の代物だからな……何が起きても可笑しくはないって言ったら不安になるか…

 俺が…陣内榊で本当にいられるのかどうかも解らない………何考えてんだ、俺…

プルルルッ…
 携帯電話で東京にいる秋子に電話をする、月に一度は帰る約束をするんだが、2月から少しどたばたしそうだから、(未確認生命体の事で…)連絡するのだ。
カチャッ
『はい、オリエンタルな味と香り……』
「秋子が言うとなんか違和感あるな……」
 実を言うと、秋子はある喫茶店で働いている為、ここにいる確率が高い。今年で1歳になる二人の子供の育児には、そこの店主であるおやっさんも手伝ってくれているので安心なのである。
『榊っ榊なの?』
「ああ、そっちはどうだ?」
『ええ、いたって何事も無く順調にやっているわ…』
「陽介と名雪はどうだ?」
『うん、今眠った所よ。二人ともなにも病気もなく、健康そのものよ…あ、そう言えば向こうなんだか大変な事になったわね……』
 秋子の所にももう情報が行っているのか……多分、『不発弾の爆発とかクマ出現』とか出てんだろうな…警察で上の事実隠蔽か……まだ市民には公表できていない。
「ああ、実はこっちはその事で大騒ぎだ……だから、今月は帰れそうにない…」
『うん、仕方ないもの…あなたの仕事だから』
「すまねえっ、しかも残念だ…俺は一月に一度は子供達の顔を見たかったのにな」
『大丈夫よ、この子達は意外と強いから……』
「面倒かける父さんですまないって言っといてくれ……」
『はいはい、じゃあまた来れる時になったらかけてね…』
「ああ、じゃなっ」
 俺はそう言い回線を切る……少し切ないか、子供達の顔が見れないなんてな……本当、俺って面倒かける父さんだよな…


 次の日、俺は第1号が落ちた廃工場内に再び足を踏み入れ、現場の刑事達の捜査に協力した、やはり死体は確認されずに足跡はないかどうか入念に捜査のメスが入れられたが…結果は俺が昨晩行って見た通りだった、何もない……既に奴の匂いさえも消えてやがる…
 だが、まだ近くにいるのは確かだ……奴はまだこの市内にいる…根拠は全然無いけど…

 まあ、第2号の居場所は大体わかるけど……
 そう思い、俺は先日会った城南大学の沢渡桜子さんの連絡先が書いてあったはず。この前貰った名刺には…なぜか、秋子の働いている喫茶店の電話番号が書いてあった…店員さんだったのかな……んな事はどうでもいい…とにかく、あの人が第2号だと言う事は確かなんだ……
プルルルルッ!カチャッ!
『はい、沢渡です』
「沢渡さんですか?俺です、榊…覚えてますか?」
『ああ、榊君っ…どうしたの』
 案の定、電話に出たのは沢渡さんだった……俺はすぐに用件を言った。
「五代さんそこにいますか?」
『五代君?さっきまでぐっすりと眠っていたと思ったら、昨日榊君と一緒にいた刑事さんに呼び出されてまたどこかに行っちゃったのよ』
 俺と一緒にいた刑事……一条さんの事だ、多分昨日の事を聞かれているんだろうな…
「あの、彼と少し話しがしたいので…帰ってきたら俺の携帯に連絡入れるように言ってくれませんか?」
『うん、いいけど……五代君多分帰ってくるの遅くなると思うから…』
 あの人は何にでも首を突っ込みそうだと沢渡さんは付け加えた……多分、その好奇心や探求心であの白い奴に変身したのかも知れない……
 あからさまな好奇心じゃ身を滅ぼすぞ……第2号…
「じゃ、俺の方から会ったら止めときますよ……無駄に戦うなって」
『うん、ありがとう…榊君』
 そして、回線を切ると俺はもう少し手がかりがないかどうか単独で調べることにした。もしかしたら、目撃者もいるかもしれないし……

 4時間後

 ふぅ、結局何も第1号の手がかりは見つからず終いか……諦めかけて俺はルガーで県警に帰ることにした。もしかしたら何か新しい情報が入っている可能性もあるし…
 ルガーを県警に向かって走らせていると…ルガーに取りつけてあった、警察の無線に連絡が入った。
“県警より各車、未確認生命体が市内B地区に出現っ…付近走行中の各車は至急急行せよっ!”
「出やがったなっ!」
キキッ!
 俺はルガーに急ブレーキをかけて、向きを変えるとその地区に向かってルガーを急がせた。多分……未確認生命体が出たとしたら、あの人も必ずそこに来るっ!!
 直感だが、俺はそう思った……彼なら絶対に来る!

市内B地区
パァンッ!
 銃声が聞こえる……それに、火薬の匂いに紛れて未確認生命体の匂いがする…第1号とは違う……別の奴…3匹目って言った方が良いのか…
「はっ、あれはっ!!」
 遠くから昨日の白い奴と、第1号とは違うコウモリ種怪人が戦っていた。苦戦しているようだな……
「変身っ!!」
 バイクに乗りながら、俺は叫ぶと…体の狼の血が活性化して、仮面ライダー黒狼へと変身すると同じにルガーのスピードが上がった。
「ぐあっ!」
 白い奴は、コウモリ種怪人の猛攻に絶えきれなく倒れこんだ。やばい…加勢しないとっ!
タァンッ、タァンッ!
 コウモリ種怪人は倒れこんだ白い奴に止めを指そうとした時、背後から銃声がした…一条さんだ…
「一条さんっ!だめだっ逃げろっ!!」
 だがコウモリ種怪人は一条さんの首を掴んで、締め上げ…爪を付き立てた……
「くっ!」
 俺はルガーの目のライトを最大に明るくして突進した。フラッシュライトだ……
『ガハァッ!』
 光が効いたらしく、コウモリ種怪人は掴んでいた一条さんの首を離して地面に落とし…その目を光から隠す。
スチャッ
 隙を見計らって、俺は二丁ハンドガンを構えて…コウモリ種怪人に向かい放った。
ズガガガガガッ!!
『ギャゥッ!!』
 コウモリ種怪人は、手の翼を広げ俺の銃撃から逃げおせた……
「ちっ!逃したか……はっ、一条さんっ!!」
 俺は、奴を追わずに倒れこんでいる一条さんの元へと走った。
「ぐっ…水瀬か…っ!!奴は…」
「逃げられました…」
「そうか…それより、彼を……」
 一条さんの指差す方には、あの五代雄介という人物が倒れていた…
「おいっ!大丈夫かっ!」
「いてて…あ、あの時の黒い刑事さん……」
「ふぅ、こっちは軽傷か……立てます?」
「何とか…ね」
 より確信は強く持てた、この人があの白い奴だって……
「あの刑事さん、大丈夫?!」
「んっ…一条さんっ!!」
 俺は振り向くと、一条さんはうつ伏せで気を失っていた…多分重症だろう…


 市内の総合病院

 俺は五代さんと一緒に、一条さんを病院まで運んで…そこで俺達は待つことにした。しばらくして……
「いけません、一条さんっ!」
「俺は、もう大丈夫です……それでは…」
 病室から一条さんが出てきて、俺と五代さんの所に近づいて…
「世話になったな、水瀬……」
「もう大丈夫なんですか?」
「俺の体は俺が良く知っている……それは君も知っているだろう…」
 いや、だめだ……一条さんは、あばら折っているってさっき医師から聞いたぜ…立っているのもやっとのはずなのに…
「刑事さん…俺のせいで、すいません」
 一条さんが去ろうとすると、今度は五代さんが詰め寄って申し訳無さそうに言う。
「もう軽率な行動はするな……」
「だけどっ!」
 それでも、首を突っ込んでくる五代さんに一条さんは五代さんの襟元を掴んで…鬼気迫る形相で言い放つ。
「君が戦う力を得たと思うのは勝手だ…だがこれは市民を守る我々警察官の仕事だ……中途半端に関わるなっ!!」
 そう言い放つと、五代さんを離し……来たエレベーターに乗って行ってしまった。
 俺は放心状態の五代さんに近づいて…
「大丈夫ですか?」
「あ、うん…全然、大丈夫」
「一条さん、ああ言っているけど凄く正義感が強い人なんですよ…」
「うん…それは解っていますよ…」
 だが、俺がいまこの人と話したい事は一条さんの事じゃない……
「これから暇ですか?」
「ううん、これから調査隊の夏目教授の葬儀があるから…」
「夏目教授か……俺も行きます」
 そう言う事で、俺と五代さんは沢渡さんと待ち合わせている場所に行くことにした。

「五代さんですよね……あの白い奴」
「あり?聞いてなかったの、あの刑事さんに…」
「やっぱり?」
 沢渡さんとの待ち合わせに向かう途中で確信を付いて見たら意外とあっさりと答えて少し拍子抜けしてしまった……。
「五代さんはどうして変身できるようになったんですか?」
「うーん…あのベルトから、変なイメージが頭に過って、その通りにあのベルトを付けたら嘘みたいに入っちゃったんだよ…それで、死にそうになってあいつと戦ったら変身したんだ…」
「えっ……どっかで改造されたとかじゃなくて、ただ付けたら変身できたって?」
「そうみたいだけど……古代文字を解読しなきゃ正直解らないな」
 どういうシステムを作り上げたんだ、古代の人は……この人はネメシスの改造人間ではないとすると、やはりあいつ等も新型の怪人じゃないって事だ。
 古代にいた異形の者が復活した…あいつ等がそれだとすると、あの白い奴はそれを倒す戦士って仮説が成り立つか…
「水瀬さん…あの…」
「ちょいまち、俺の方が年下だし榊でいいですよ」
 まあ、長い付き合いになりそうだからな……
「わかった、榊君…さっきも助けてもらったけど、あの黒い戦士…榊君だよね」
「はい……でも、五代さんのように古代遺跡のベルトをつけてなったんじゃありません…」
「えっ、じゃあどうしてあんな姿に……」
「それは今度、ゆっくり話しましょう……付いたみたいですよ」
 俺はそう言うと、沢渡さんの待つホテルの前に止まった。
「でも違うんだよな…白じゃ……」
「ん?どう言う事ですか?」
 中に入ると五代さんは呟くように言った。
「……俺が見たイメージでは、古代の戦士は赤だった…でも俺が変身した時は、白かった本当は赤じゃなきゃだめなんだと思う…」
「……まあ、確かに」
 あの白い戦士は、黒狼で言う変異体に近いんだな…と言う事は赤が、彼の完全体か…
「俺の気持ちが半端だから……赤じゃないだと思う」
「五代さん程の人でも、気持ちが半端になる時があるんですね……」
「そりゃ、あるよ…ああ言う感覚好きにはなれないからね…」
 そう言うと五代さんは握り拳を作った……俺は一瞬思った、この人を本当に戦士として戦わせていいのだろうか…
 そう思った時、前から沢渡さんがやってきた。
「五代君、もう2時間も待ったよっ!あれ?榊君も一緒だったの?」
「まあ…夏目教授は城南大の先生だから……焼香だけでもと思いまして…」
「忙しいのに、ありがとうね…」
「いえいえ……」
 少し照れながら、俺は二人に着いて行って夏目教授の実家の葬儀に焼香だけあげることにした。それに、夏目教授の死体を発見したのも俺だし……
 俺と五代さんは焼香を済ませて、外で沢渡さんが出てくるのを待つことにした。
「………好きになれないなら、無理に変身しなくてもいいですよ」
「えっ?」
「俺だってありますから、何で俺が戦わなきゃならないんだって……この仕事やってて何回かね……あんな奴等にやられた死体を見ると、少し自分に無力感もきますよ」
 俺は夜空の星を見上げながら五代産にそう言った…五代さんは笑顔で…
「榊君にもあるんだね…そう言う時が…」
「そりゃ、お互い様ですよ……」
ガラッ!
 夏目教授の家から、突然一人の女の子が飛び出してきて…俺達は不意にそっちを向いた。
「夏目教授の娘さんだ……」
「………」
 彼女は外で、人知れず泣いていた……俺はその涙に凄くやるせない気持ちが頭をよぎる。もし……俺が死んだら…秋子は…
『榊ぃ……』
ダンッ!
 五代さんも同じ心境なのか、彼女の涙を見て…すごく辛そうだ……そうだ…
「俺には、守るべき者がいる……だから俺は戦えるんです。解りますよね五代さんなら…」
「……榊君」
「俺、もう行きます…沢渡さんによろしく言っといてください」
 そう言うと、俺はバイクに跨って…その場を後にした。あの子の涙が頭から離れない…そうだ、俺は黒狼……二度と俺はあんな悲しそうな涙は見たくないっ!

 それに、一人では逝かせないぜっ!一条さんっ!

 喫茶店ポレポレ
「ふぇぇーーっ」
「あらあら、どうしたの陽ちゃん…」
 その時までは夜泣きなどしなかった陽介が珍しく夜泣いてしまったので秋子は陽介をあやして、機嫌を直そうとした。
 案の定、陽介はすぐ眠り……秋子はほっと一安心した。
「どうしちゃったの?陽ちゃん……榊…」
 上空の月は少し欠けて…秋子と陽介を照らしていた。


 俺は考えた…そう言えば、会議で言っていたな……未確認生命体らしき影を見たホームレスがいるってっ、俺はそのホームレスを探しにルガーを走らせた。

 そして、近くのラーメン屋台を見付けると、俺はそこでラーメンを食っていたホームレスに詰め寄って…
「おいっ、あんた昨晩未確認生命体を見たって聞いたが、本当かっ!!」
 急ぎの為、少々荒々しく聞いてしまった。
「なななっ、なんだよっ!」
「答えろっ!!本当かっ!!」
「本当だよっ!あ、あんたと同じ事聞いてきた警察の人がいたよ……」
 同じ事を聞いた人……一条さんだ…俺はホームレスの襟元を離すと、そいつは…
「コウモリみたいな奴だろ、そいつなら…サンマルコ教会の窓を入って行ったのを見たよ」
 もう聞いている…だとしたら、一条さんが危ないっ!
「サンキューっ!」
 俺はそう言って、ルガーを呼び寄せて…飛び乗り…サンマルコ教会に向けて飛ばした。確か、そこの周辺で人が血を抜かれて死んでいるって場所だ……
 確信が持てたぜ……だが少し時間が経っている…間に合えよっ!

「あそこかっ!!」
 俺の目に、サンマルコ教会らしき建物が移った。様子がおかしい……建物が燃えているっ!ちっ、遅かったか…
 俺は、燃え盛る教会の入り口にくる…もう熱がこっちにまで来るほど凄いぜ…
「もしかして…一条さんが中にっ!?」
 間違いない、煙に紛れて一条さんの匂いとあのコウモリ野郎の匂いがするぜっ!
 変身して助け出さなっ!
ガタァァンッ!!
「くっ!!」
 俺は変身の型を取ろうとすると、教会入り口のドアが砕け、炎が燃え盛る中何かが外に転がり出てきた。
「一条さんっ!」
「くっ…水瀬か……」
 一条さんを抱えて出てきたのは、炎のような赤いボディをした奴だった。こいつ…まさか……
「五代さんなのかっ!完全体に…」
『ガァァッ!!』
 俺が彼を呼び止めようとした所に、炎の中から今度はあの時のコウモリ種怪人が現れて、赤い奴を連れてあのクモ種怪人の消えた、廃工場の方へと向かって飛び去った。
「ちっ!一条さんっ…」
「痛っ…水瀬、奴を追え……お前も守りたい人がいるならっ!行けっ!」
「……はいっ!!」
 俺はびしっと一条さんに敬礼すると、後ろを向いて変身の型を取る……

 五代さんも、赤い戦士になったのか……自分が戦う為の目的を見出したんだ…俺も、あの時……完全体になった時に決まっていた!運命を変える為…俺は仮面ライダーになるっ!
「変身っ!!」
 アグリュームが腹部に出現して、アグルストーンが青い光を出し…俺の体は変異体から完全体へと移行した。

「…水瀬、よしっ!行って来いっ」
「はいっ!」
 どうやら、俺達のコンビはまだ解消には至っていなかったようだな…
 俺はそう思い、五代さんが向かった場所へと急いで急行した。

廃工場内
 五代さんに加勢しようと二丁ハンドガンを持ち工場内に乗りこむと、コウモリ野郎の匂いと混じって、もう一つの匂いに気付いた。
 こいつはっ、あのクモ種怪人の匂いだっ!捜査の時には見つけられなかったが、俺達の見えない死角で隠れていやがったのかっ!!
「上等だぜ…っ!」
 俺の目先に五代さんが見えた、あのコウモリ種怪人とクモ種怪人もいやがるっ!くっ、2対1で苦戦を強いられているな。俺は2体の怪人に向けて二丁ハンドガンの銃口を向け、放った。
ズガガガッ!
『ムンッ…』
『カァッ!』
「くっ…榊君かっ!?」
 2体の怪人が銃撃によろめき、五代さんが俺に気付いてこちらを向いた。
「五代さんっ!加勢しますっ!」
 俺は、銃をバックルにしまうと、五代さんと敵の元に降り立った。
「ていっ!」
 五代さんから、コウモリ種怪人とクモ種怪人を回し蹴りで引き離し、俺達は頷き会うと敵と対峙する。
「俺はコウモリ野郎を叩く、五代さんはクモ野郎をお願いしますっ!」
「解ったっ!」
『ギャァッ!』
 コウモリ種怪人はそんな俺の言葉を無視するかのごとく、五代さんに向かって行った。俺はそいつの前に出て……
「無視すんなっ!お前の相手は俺だっ!」
『ガッ!』
バシッ!
 奴を殴り飛ばし、五代さんから遠ざけて…一対一にする。
『グゥゥッ!リントの戦士か………』
「……何っ!?」
 奴は奇怪な言葉を口にして翼を巧みに使って、俺に攻撃して来たが俺はその攻撃を避けながらコウモリ種怪人の腕を掴むと…
「お前達は一体っ!」
 腕を掴み懐に飛びこむと奴の首に遠心力を加えた痛烈なチョップを浴びせる。
バシッ!
『ギェッ!』
 だが、量産型怪人でも斬れるはずのチョップなのに…打撃を与える物でしかないのかっ!?
「ちっ!…やっぱり、ネメシスの怪人より強いか……お前達は何者なんだっ!」
『…グァァ、貴様こそ…何者だ……』
「名乗る程の者じゃねえだろぉっ!!」
ザンッ!
 俺は空中に大ジャンプをして、奴を射程内に捕えると……口のクラッシャーが開き口内が赤熱放熱現象が発生して熱の力が体中に行き渡る。
カシャッ!シューッ…
「食らえっ!一撃必殺!黒狼キィィィーーーック!!」
 横回転の遠心力を加えた俺の左足が、コウモリ種怪人の胸部に直撃した。
ズバァァァーーーンッ!!
『グキャァァッ!』
 奴は、数メートル先の壁まで吹き飛ばされ、俺は着地した…
「やったか……何っ!?」
『グゥゥ…』
 コウモリ種怪人は一撃必殺の黒狼キックの直撃を受けてもなお、立ちあがろうとしていた。
「黒狼キックが…効かないだと……」
『グゲェェッ!』
 だが、立ちあがろうとした瞬間に、コウモリ種怪人の口から血を吐き、苦しそうに膝をついた。効いていない事もないようだが、黒狼キックを食らって生きているなんて…
「こうなったら、もう一回……」
 俺はそう言い、クラッシャーを開き体中の熱を足に集中し始めた…その時、太陽の光が…工場の壁に空いてある穴から降り注いだ。
「夜明けかっ!?」
『クァッ…』
バサッ!
 あれだけの重症を負っているのに、コウモリ種怪人は翼を広げて壁を突き破り飛び去って行った。まるで、光から逃げるかのごとく…
「くそっ!逃がすかっ!んっ…」
キーーンッ
 なんだ、この耳鳴り……何かの聞きなれない超音波を聞いたような、そんな感じがする。
「ちっ、耳鳴りのせいで逃がしたか……はっ、五代さんっ!!」
 俺は奴を諦めるとクモ種怪人と戦っているはずの五代さんの元へと急行した。


 廃工場屋上
『ブォッ!』
「くっ…」
ジャサァァーッ!
 俺が到着した時にクモ種怪人の糸に体を締め付けられた五代さんに奴は、腕の爪を振り上げようとした。
「チェーーンッ!クロウッ!」
バシュッ!
 間一髪の所で、俺の手甲から伸びたチェーンクロウがクモ種怪人の糸の元を絶ち切り…ヨーヨーの如く俺の腕に戻って来た。
「お前は糸で縛るのが好きらしいが……縛られるのは好きかっ!!」
 そう言い、俺はチェーンクロウを操作してクモ種怪人の体を取り巻き締め上げた。
『ブホッ!!』
「五代さんっ!大丈夫ですかっ!今の内に糸を解いてくださいっ!」
「ああ……この位っ!」
ブチッ
 五代さんは体に巻き付いていた糸を自らの力で絶ち切ると……立ち上がり、俺達は頷きあうと……俺は鎖を引いて、クモ種怪人を五代さんに向かって全身の力を込めて振る。
「五代さんっ!」
「ああっ!!行くよっ、榊君っ!」
 鎖に縛られたクモ種怪人に向かって五代さんはジャンプして右足のキックを浴びせる。
「おりゃぁぁっ!」
ズバァァーーーンッ!!
 五代さんのキックがクモ種怪人にヒットして…俺は奴を縛っていた鎖を解いた。
『ぐ……ぐぉっ!?』
カッ!
 キックを食らった部分から、古代文字らしき紋章が光って…そこから腹に渡って段々と光のヒビが入って行き…奴のベルトらしき禍禍しい装飾品にまで達すると、クモ種怪人は爆発四散した。
『クウガァっ!』
ズガァァァーーーーーーーンッ!!
 爆風から俺達は目を覆う……
 バラバラに飛び散った肉片を確認するだけで、奴が死んだと言う事が想像できた。

 爆風が消え去ると俺と赤くなった五代さんは人間の姿へと戻った。
「ふぅっ、戦う決心がついたんですね五代さん」
「うん、あんな奴等の為に誰かが泣く所なんて見たくないからね……みんなに笑顔でいて欲しいから、俺はクウガに変身できたんだと思うよ」
「クウガ?」
「多分、俺が変身した姿の名前だよ、あいつ等がクウガ〜って俺の事を呼んだからさ」
「クウガか……頼もしい味方が出来た、俺の変身した姿は黒狼だ…」
「黒狼……カッコイイじゃん、榊君」
「ははっそうですか?」
 それに解った事がある……未確認生命体を倒せるのは、五代さんのキックだけだ…さっきの戦闘で、五代さんのキックには特別な力が作用して始めてあいつ等が倒せるのだと思う。だけど、俺がもっと黒狼キックの練習を積めば…倒せ無い事も無いのかもしれない…
 まだまだ、俺は弱いって事になるのかもな……でも、この人が未確認生命体に勝てたのは、みんなに笑顔でいてもらいたいからか…単純明解だが……悪い事ではない…
 俺もそうだからな……
プルルッ!プルルッ
「携帯?鳴ってるみたいだけど…」
「ちょいすいません…」
 俺は、携帯電話を取り出すと…耳に当てた。
「はい…もしもし」
『ユーゼスだ……そっちの様子はどうだ…榊』
「ユーゼス長官っ!」
 携帯から、CIA長官のユーゼス・ゴッツォの声が聞こえてきた。
「通常回線で電話していると、奴等に傍受されている危険があるんですよ……」
『ふふ、相変わらずだな……まあ心配する事はない…その必要も無くなったという事だ』
「なんですって?」
 そして、俺は次の言葉から驚愕の真実を聞かされることとなった。
『CIAはお前の特捜隊を日本に派遣する事に決定した……』
「何っ!?それはどう言う事ですかっ!?」
『詳しくは、警視庁に戻れ……そこで話そう』
「………警視庁に?」
『手配は既に私が済ませておいた……』
「…了解しました」
 警視庁か、なにせ一年ぶりと言うべきか……だがなぜユーゼスはいきなり俺に、警視庁に戻れなんて…しかも俺の部隊を派遣してくるとは、何を考えているんだ…ユーゼスは…
 CIAに入って4年かそこら絶った今でもあいつが何を考えているのか未だにつかめない。もしかして、未確認生命体の事で?…いや、まだあいつには報告していないはずだ。
『いいか、榊……今は何も聞くな、いずれ知る時が来る』
 そうだ、いつもそうやって俺を誤魔化していた……なぜだ、何を隠している、ユーゼスゴッツォ…
「解りました……」
『報告は以上だ……また会おう』
「………」
 そして、通信は途切れた。ともかく、明日警視庁に戻って見よう…そこで何か解るはずだ。ユーゼスは何かを知っている……それは確かだ。
「榊君……どうしたんだ、浮かない顔して」
「…いえ、仕事の関係で少し警視庁に戻らなければなりませんので」
「そっか、榊君から自分の事話したくなったらいつでも言っていいよっ!」
 五代さんそう言い、にっこりと笑ってサムズアップをした。ふっ、何だか気が狂いそうな人だな……さっきまで考えていた事が忘れちまいそうだ…
「ありがとう、五代さん…じゃあ一条さんによろしく言っといてください」
「解った」
 俺は五代さんにサムズアップして返すと、その廃工場を後にした。

 俺に心強い仲間ができた……それと同じに増えた敵と、疑惑……

 漆黒の闇に轟く狼よ……赤き戦士と共に悪を討て

 ToBe Continue

後書き

 ついにクウガマイティーフォームになりましたっ!そして黒狼との共同戦線っああ、スーパーヒーロー作戦っぽくなってきたっ!

 それとユーゼスもここに来て登場っ!まだ本部にいますが……これからどんどん悪巧みの計画を榊に言い渡すつもりですっ!(気合)
 真もまだまだ少しですが、登場させました。(爆)彼もこれからこの黒狼とクウガの二人のライダーとどうからませようか考え中です。

 さて、今回未確認生命体と本格的に戦いましたが、なぜか黒狼キックが効かない様にしました、黒狼キックは一応の所マイティーキックより微妙に強いんですが…やっぱ古代の封印のエネルギーがないとグロンギ族を倒せないようです。だから、黒狼はある程度彼等にダメージを与えてクウガが止めを指すというコンビネーションが取れると思います。
 でも、警察でも倒せたんだから、黒狼でもベルトを狙えば倒せるかもしれません。だけどそれは、榊君の腕次第って所で……もう少し強くならなくてはなりません。
 今回で、CIAも動き出しますし、ネメシスの方も本腰上げてきます。

 世紀末王にとってグロンギ族…戦士クウガは、黒狼同様の危険分子と言う事になります。過去の経歴からして、戦士クウガは仮面ライダーの原型となった者なのではないかと言う仮説と共にクウガは過去の仮面ライダー同様にいや、それ以上に世紀末王にとって危険な存在であり、同等の能力を持つグロンギ族も例外ではないと言う事でしょう。
すごかがから読んで……そう思っただけなんですがね(笑)

 本体も日本に置いたし……がんばっぞーっ!

 さーて、気合が入ってきたぞーっ!

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