爆風が、それまで覆っていた黒い煙がベールの如く晴れ……そこから、黒い悪魔が現れた。今のシンの目にはそういう表現でしかなかった…それを見たからには…
 確かに、それは…陣内 榊、黒狼だった…だが、今の黒狼は幹部怪人最強の怪人として作られた、『黒狼』の本当の姿…
「黒狼…なのか…」
 押しつぶされそうなプレッシャーに、体を振るわせるシン…

 目は爛々と光り、鮮血を思わせる目には三日月のように鋭い瞳が前方を凝視し…口のクラッシャーを突き破り出てきた狼の口内からは絶え間無い放熱現象が起こり…白い煙が口から立ち込めている…体の各所はひび割れてその隙間からは、赤いマグマのような灼熱のエネルギーが漏れている、今にも爆発しそうな躯を繋ぎとめるように体には鎖が巻かれていた。その両腕には変異体の時のスラッシュクローが付いている。
 変異体の姿を彷彿とさせるものの、その力は完全体を遥かに凌駕した力は…異様な存在感、そして威圧感を放ち…シンも、シンとの戦いを中断した、キメラ蝙蝠の動きを止めた。

 その存在感は……まさに…『恐怖』その物…



仮面ライダー黒狼
第3章〜緑の荒風〜後編『孤独』


3時間前…

「ここか…」
 俺が辿り付いた場所は、信一さんの働くといわれている、ネメシス日本支部の下部組織の生化学研究所だ。信一さんも、かつて城南大学の生化学研究所で、風祭大門…そして、俺と戦った鬼塚の両教授…そして零の親父さんと共にあの緑川博士の論文から…改造兵士、言って見るなら仮面ライダーの研究をしていた。
 だが、川澄教授は蜘蛛により暗殺され……鬼塚は、その謎を紐解き、自らの体にその研究を施し…俺と戦い敗れ、半ば拘束される形でISSへと身を起き、風祭教授と共改造兵士の大量生産のために研究していたが、その時はもう自我を失いつつあったため…処分されそうになった為、CIAのセーラの部隊が強豪しようとしたのも空しく豪華の中息絶えた……同じく、風祭教授もISS壊滅と同時にネメシス武装小隊に殺された。
 緑川博士の論文に手を出した生科学者は悉く死んでいっている……そして、ここにいると思われる、水瀬信一さんも…その運命の中にいるのか…
 俺は、ルガーを犬に戻すと一応ネメシス基地だと言う事を察してルガーをバックの中に詰め込んだ。
「窮屈かもしれないけど、耐えてくれよルガー…」
「わう〜」
 それと入れ替わりに、俺はバックからIDカードを手にした。多分、信一さんの助手の物だと思われる者のIDカードのコピー…これを使って中へ入れってか。
 俺は施設の前にある大きな扉の前に差し掛かり、そこにはIDカードのカードリーダーがあった、きっとここで使われるのであろう。俺は早速そのカードリーダーにIDカードを通過させた。
グィィーーン
 重い扉が開き、俺は施設内に招き入れられる。
「……信一さん」
 俺は、中にいると思われる信一さんに向かって歩き出した。

 施設内には人は白衣の男が数名ほどしか見ていない、殆どの職員は非番らしいな。地図によるとここ等辺だな。
 幹部怪人の干渉もない安全な研究所、信一さんが本当にいるなら…俺達にとっていい情報源となるだろう、そしてここが水瀬信一専用の研究室…か……
 ここに入るにはこれが必要だったな。テープレコーダー…多分これに信一さんの声が録音しているらしい。試しに聴いてみた…
『レベル3は、人の意思を無くす者とそうでない者に別れます』
「………」
 多分、これはそうだ…多分、改造兵士についての講義を行っている時のを録音していたのだろう。懐かしい声だ、大学に行っていれば彼の講義が聞けたのかもしれないな。もっとも…俺は、あの頃は勉強もろくにしない不良だったけどな……
 俺はそう、はにかんでレコーダーをまき戻し…扉の横あたりにあるマイクらしきものにそのテープレコーダーを再生して聞かせた。
『音声認識完了…』
 コンピューターがそれを言うと、扉がせり上がって…研究室の中に入った。
「……やあ、榊君」
「……!?」
 俺の横に白衣を着た男性が近づいてきた、髪を伸ばして少し雰囲気が変わったが確かに信一さんだった。
「信一さん、お久しぶりです」
「うん、久しぶりだね……秋子はどう?」
 信一さんは秋子のことや、陽介や名雪の事など聞いて来た。俺にして見れば、俺が完全体となり得るまで、彼には色々な面で助けてもらった。
 彼は、礼を言わなければならないし、俺も彼には聞きたいことが沢山ある…
「信一さん、俺も聞きたいことがあります……」
「解っているよ、僕がなぜ秋子や春奈たちと離れたのか……それは、僕が風祭先輩と子の組織にスカウトさせられてから、家族の危険を感じてね…秋子と春奈、夏人も危険にさらさせたくない、僕はそう思い別々の場所へ行かせた、最も秋子は君との約束もあるから、日本に残したけど……」
「やはり、ネメシスの改造兵士の研究ですか……」
「そう、かつての鬼塚先輩が体に施した、レベル3の研究をここでね…他にも僕のような生化学者が、この施設に来てレベル3の先を行く4、5の研究をしていたんだ」
 信一さんは偶然にも、この施設に転属させられて改造兵士量産の為に研究を進めていた。また、ここから組織の素性を少なからず取って行った。それは、俺が旅だって1年も過ぎた時だったと言う。
「ただ、僕がこの組織にいて1年もした時だった…同僚だった、望月博士が…」
「望月博士?誰なんです?」
「望月博士…僕と同じ生物学の人なんだけど、彼は、僕が知っている中でかなり危険な人だった。彼が何故あそこまで変わったのか解らないが…彼の研究に狂気さえも感じられた」
「どう言う事なんですか?」
「彼は、改造兵士の技術を応用した、人間のような肉体や感情を持たない完全な生命体を開発しようとしていた。僕も彼が何処までその生命体を完成させているのか疑問だったが、この組織はその研究を危険視して彼を左遷させ……施設から退去させた」
「上が、左遷したほどの…危険な奴なんて、どんな奴なんて」
「神をも恐れる行為とだけ言っておこう、とにかく彼は…実験の為に何人もの被験者の命を奪った」
「それだけの奴を、やめさせただけですか?」
「僕もその後で上が何を考えているのかは解らないが、榊君も気をつけてくれ……彼は何処かでその研究を進めているだろう」
 信一さんが恐れ…ネメシスの上層部が逃がすほどの研究をする…緑川博士の研究から神をも恐れる行為へと発展するなんて…科学者は絶大な力を求め、研究する…
「皮肉ですね……力を欲した者は死ぬなんて」
「風祭先輩も、鬼塚先輩も…川澄教授も、この研究に関したばっかりに死に絶え、今また不幸が起きようとしている。これは運命なのか?」
「運命なら俺が変えてやる……いや、変えなくちゃ」
 信一さんも俺とは違う運命に巻き込まれてしまったんだろう…運命を変えてやらなきゃ、助け出せない。あの時は助けられてばっかだったが…今度は助けなきゃな。
「助けてやりますよ、俺がね…」
「ありがたいね……なら出来るだけ、僕も君に組織の情報を提供していやるよ。君はCIAに所属しているらしいね、向こうの方ではメールは?」
 確か、警察のメールが使えるだろう、俺は手帳のメールアドレスを信一さんに渡した。
「解ったよ、君なら助けられるかもね……彼も…」
「彼?」
「……風祭先輩の息子でもある、真君だよ、多分君の前に既に現れていると思うけど」

“彼の心は、恋人と父親を殺された事から…組織に復讐する事しか頭にないだろう、彼を救えるのは、君のような人物しかいないかもしれない。彼は多分、あそこに行くだろう”
 信一さんの言葉を聞くと、俺はその場所に向かってルガーを走らせた。あの改造兵士レベル3はやっぱ、風祭真だったか…あの事件以来CIAは奴を探している……我々人類の脅威として、風祭……誰が殺させるかよ…あの姿は改造兵士レベル3、違う言い方をすれば……仮面ライダーだ。
 あの事件は、セーラから聞いている、セーラは一度、風祭に助けられたと聞いた。仮面ライダーなら…解るはず……

 解る…はず…





『ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』
 変転体となった黒狼は、施設内に響く強烈な咆哮を上げ…前方をギロリと睨み付ける。獲物を発見したらしい。シンはライフルを持ち身構える。
「ぐっ!!…何っ!?」
 身構えた瞬間、視界から黒狼が消え…シンの横を漆黒の風が通り過ぎた。
「(待てよ、あれが黒狼の幹部怪人としての真の姿とすれば……奴が真っ先に向かう敵は一つ……同じ幹部怪人だ)」
 シンの横を通りすぎた黒狼を目で追うと、後ろにいたキメラ蝙蝠に牙を突き立てていた。
『ぐぁぁぁぁーっ!』
『きぇぇぇっ!』
 蝙蝠は背中の巨大なハサミで黒狼の首を捕らえ、両腕の補助ハサミで両腕を押さえる。シンはその隙をつくように黒狼の背中に向けてライフルの銃口を向ける。
「(どうする…この状況なら、脅威の2匹を一気に貫ける……だけど、どうした…引き金が引けない)」
 シンの脳裏に、榊の顔が浮かぶ……そして引きがねを引こうとする指が震える。
『がおぉぉーーーッ』
『キュェェェーーーーーーーッ』
 黒狼を押さえながら、蝙蝠は甲高い鳴き声を上げる……直接心臓を音の刃で貫こうというのか…。黒狼は押さえられている腕が段々と動く…
『ぐぅぅぅ…』
『カァァァ…』
ガキィィッ
 ついに蝙蝠の腕をへし折り、黒狼の右腕は開放されスラッシュクローで首を捕まえていた巨大なハサミを切り落とす。
ザシュゥゥゥーーー!!
『きぇぇーーっ!』
 それと同時に、蝙蝠の口から音の刃が放たれ黒狼の肩を掠める…音の刃がシンの横を過ぎ、後ろの壁を切り裂く。
 蝙蝠はダメージを負いながらも、ここから逃げようと腕の翼を広げ飛び立とうとした。
『がぁぁっ!』
ジャッ
 黒狼の肩アーマーが展開して、そこからチェーンクローが2本伸びる。チェーンクローは逃げようと羽ばたく蝙蝠の体を縛り上げた。
『ギェッ!』
『ぐぅぅ……』
 黒狼は、チェーンをリバースさせて蝙蝠を自分の方へと引き寄せた。
『カァァァーーッ!』
『ぐぁぁぁ』
 黒狼の口がガバっと開きその奥に、赤く熱を帯びる牙を蝙蝠の首筋に突き立て…その首に噛み付いた。
ガシュゥゥゥーー
『ギェェェーーーッ!!』
 蝙蝠の絶叫が、場内に木霊する…噛み付いた所から白い煙が上がる。牙の当たっている部分の血や水分が蒸発しているからだ。黒狼は首筋から蝙蝠のエネルギーを吸収して行った。
ドクン・ドクン・ドクン
 黒狼の背中が割れ、2枚の悪魔の翼が段々と現れる。
「…蝙蝠の遺伝子を食っているとでも言うのかっ!?」
 黒狼は蝙蝠の遺伝子データで徐々にキメラ化していく…それと同時に蝙蝠はもう虫の息である…
 完全に背中に闇の翼が広がり、そして、既に血を抜かれた蝙蝠の首筋を噛み千切った。
ガシャァァァーー!!
 黒狼は口に咥えられた蝙蝠の肉を飲み込んだ。そして、絶命した蝙蝠の亡骸を地面に叩き落とす。
ドサッ
 命のないその亡骸は、糸の切れた人形の如く地面に叩きつけられた。
「なんて強さだ、キメラ化した蝙蝠が赤子のようだ……しかも、その能力を会得してキメラ化しやがった…」
『ぐぅぅぅぅ…がぁぁぁ』
 黒狼は振り向き、シンの存在を確認する。有翼の悪魔を思わせる黒狼が目の前にいる…
「ふっ、戦いたくなかったんじゃなかったのか?陣内榊…」
『ぐぉぉぉっ!』
 シンを獲物と判断したのか、黒狼は爪を向けて荒い息を上げている。今ここでライフルの引き金が引けないのがシンの一番の痛手。それと…
「あいつに人間の心が残っている事が、一番の痛手だ!」
『ぐぅぅっ…がぁぁっ!』
 黒狼はシンに襲いかかろうと身構えようとしたが、突然、動きが鈍くなり苦しそうに体を押さえる。
「はっ!」
 シンはそれに気付き、ライフルの引き金を引こうとしたが…シンは首を横に振りライフルを地面に捨て、ひるんでいる黒狼に向かって走り、ジャンプをする。
「だぁぁぁーーーっ!!」
 体をきりもみ回転させて、猛烈なキックを黒狼にヒットさせた。
ズガァァーーンッ
『ぐぉぉぉーーッ』
 黒狼は真・ライダーキックを食らい、少し後退したが…黒狼はふっと糸が切れたようにその場に倒れ込んだ。
 倒れ込んだ瞬間に、黒狼は榊の姿へと戻っていた。

「ちっ…LTGで撃てず、真・ライダーキックで奴を元に戻すだけなんて…俺もまだまだ甘いのか……」
 シンも人間の姿と戻り…榊の元へと歩いた。
「……かざ…ま…つり…」
 地面で眠っている榊の表情をじっと見て…
「…ふっ、あの時黒狼がよろめいたのは、お前の心がまだ残っていたからかもしれないな…ふん、俺らしくもない…だが、そうでもしてくれなければ真・ライダーキックも効かずに、俺は殺されていたかもな」
 真はそう言うと、榊を背中に背負い込み施設から出る事にした。

 施設の外では……真を待っていたかのように、一人の女性が姿を表した。榊の同僚で、以前に真に助けてもらったセーラ深町だ。
「久しぶり、また会ったわね、真……」
「…俺を殺しに来たのか?」
「いいえ、今回はあなたとファイトする気はないわ…あなたの背負っている、お馬鹿さんに用があるのよ」
 セーラは真の背中で眠っている榊を指差して言う。真は少し黙り込んで…
「……馬鹿…そうかもな、陣内榊…こいつは今まで会ってきた奴の中でも最高の馬鹿だと思うな…俺としては」
「そうでしょ、私もそう思うわ」
「まったく、面白い男だよ…返す…」
 そう言うと、真はセーラに榊を渡す。
「ここを離れたら、俺はまたお前等CIAに狙われるんだろう……」
「ええ、ユーゼス長官のご命令よ…『仮面ライダーを殺せ』と…」
「ふん、じゃあこいつはいつも命令違反をしているって事だな」
 榊の性格上、絶対に真を説得しているだろうと言う考えがセーラの頭によぎった。
「榊だったら、命令違反はいつもの事よ…でも真、また私達と組む気にはなれない?」
「………以前、組んだら酷い目にあったのを、俺は忘れていない」
「…それは…」
「いや、何もあんたのせいで愛も親父も死んだわけじゃないからな……だが、俺はお前達と組む気はない……」
 そう言うと、エアロガンナーにLTGを解体して部品をバイクの各所に収納する。
「けど、その馬鹿はちょっとは助けてやってもいい……こいつは、気に入った」
「…そう、是非そうして…このお馬鹿さんは走り出すと止まらないと思うから……ね」
 セーラの一言に、真も少しにこりと笑うと、バイクのエンジンをふかした。
「またな…」
 真はセーラ、そして榊に別れを告げると、エアロガンナーを走らせ…その場からいなくなった。孤独な戦いに少なからず、光明が見えた…そんな気がした…
 彼も仮面ライダーと名乗る日がいつか…来る、そう思えた


 真の通り過ぎ去った後に…
「黒狼は蝙蝠を取りこんだか……早々変身はできまい、けけっ」
 施設の影で、蜘蛛は薄ら笑いを浮かべていた。
「さて、俺様もそろそろ…」
 その手には二つの遺伝子データの入ったカプセル…『蟷螂(カマキリ)』『毒蛾(ドクガ)』と書かれた、幹部怪人の遺伝子データを…。



 ToBe Continue


後書き
 真の話だったけど…この後編は榊の話しっぽくなってしまいました。すいません真君。
真 「……真ライダーキックも決まった事だし、いいほうじゃないのか?」
 これやる為に、真・仮面ライダー序章を3回ほど見なおしました。そして、真君の技が一つ思い付きました、それが改造兵士レベル2を倒した、首抜きという技です。
 それと、今回登場した真君と愛の息子である、優君。今回もオリジナルですが……五代さんとかぶらないように、尚且つ真君と愛の子供だったらやっぱ漢字一文字の名前の方がいいと思い間したので…
真 「名前決めが上手いな…考えるが…」
 優君は後々ですっごい事するので
真 「おい……俺の息子を戦わせようってんじゃないだろうな?」
 あるサイトで早々と前篇を送ったら、後々で、“優君萌え”という人が現れたので…
真 「何っ!」
 優君を結構可愛く仕上げたせいかな…でも、優君ってどっちかと言うと愛よりかも知れないから。
真 「うかつに外にはだせんな……」
 もってかれちゃったらしゃれにならんからね。
真 「不吉なことを抜かすなっ!へっぽこ首領っ!!」
バキィィィーーッ
 ぐぁぁーーっ!!、そっそんな…実は、私も…優君…も…え…

バタン。(注意:首領はそんなにショタじゃないっすっ!本当ですよっ!)

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