警視庁合同捜査本部
 科警研にエクストリガーの改良を頼んでいる、あそこには新たにCIAの技術者を参入して、新兵器開発の協力をしている。
 一月と少し前に、俺は…再び変異体の感覚を感じた……いや、それ以上に強力で、凶悪な存在…黒狼、変転体…またの名をダークネスライダー。永久の闇からの使者…それが俺の凶悪な姿、あれから風祭の言う通り…エクストリガーを使っていない。だから、榎田さんの所に預けているのだ、しばらくは……実力勝負だ。

「兄さん、元気ないよ」
 妹のあかりが、コーヒーを持って声をかけてくる。
「あっ、ああ…ちっと考えごとをな」
「やっぱ、あの姿になってから?」
「まあな…変異体の時とは違う、邪悪な存在…それが超越変転…ダークネスライダー、あれは、敵と認識した者は全て殺すまさしく悪魔だ……またなったら、俺は…」
「兄さん、もしかして家を飛び出した時を…」
 俺はあかりの言葉で、陣内家を壊滅させた時を思い出した、ダークネスライダーのあの目は、子供の時…肉親を殺した時の俺の目とまったく同じだった。その時は、悲しみ、憎悪、絶望、数多の負の感情がそのまま『殺意』へと変わっていた。そして気付けば骸の山を築いていた。ダークネスライダーもそうだった……もしかしたら、俺は心の奥で二つ顔に解れているんじゃないか?心の中で、どこかで盗賊団であった残忍な部分が…
「………」
「兄さん…その時赤ちゃんだったから解らなかったけど…兄さんの悲しさは伝わっていたのは、はっきり覚えているわ」
 あかりは後ろから俺の肩に手を置いた……負の感情が殺意…
 ちょっと待て、それって幹部怪人の特性と似ていないか?零や蜘蛛と戦って解った事…幹部は、全ての負の感情を『殺意』へと変え…その戦闘能力を向上させる。
 俺も幹部怪人として作られた躯……もしかしたら…

とんとん
 俺が考え込んでいると、誰かに肩を叩かれる。同僚のセーラ深町だ…
「榊、ユーゼス長官から通信が入っているわ…早くでたほうが良いわよ」
「ユーゼス長官から?なんだろう」
「また何かしたの?」
 あかりが心配そうに聞いてくる、久しぶりだしな…ユーゼスからの通信は……
 俺はあかりの頭を撫でてから、通信の入っている俺の携帯電話を取った。
「はい、陣内 榊です」
『私だ…ユーゼスだ、その後はどうだ…榊』
 いつものいけ好かない声が俺の耳に聞こえてくる、何やらクラシック音楽が電話からもれているが…これはユーゼスの趣味だろう。
「んで、なんです?」
 俺はバツが悪そうに答えると、ユーゼスはあざ笑うように単調な口調で…
『ここの所、未確認生命体の事件は沈静化しているようだが……』
「はぁ、第22号を倒して以来…未確認生命体は不気味なまでに活動が沈静化されています……」
『ネメシスもか?』
「あいつ等も、度々…量産型怪人を送り込んでいますが、今の所は静けさを保っています」
『そうか……未確認共々警戒は怠るな…特に、世紀末王は絶対に復活させるなよ』
「解ってますって……」
 そんな事を言う為にわざわざ本部から通信して来たわけじゃないだろう、ユーゼス…何か、狙いがあっての事だと俺は思う。
『榊…君でしかできない任務がある』
「俺でしか出来ない任務?」
『そうだ…榊でしか出来ない任務…それは……』
 その後出た言葉に俺は息を呑んだ…そしてその後、俺はとんでもない過ちを犯してしまう…この電話は、その始まりだった。

『未確認生命体第4号を捕獲しろ』
「えっ?」


仮面ライダー黒狼
第4章〜キマイラの夜〜『光転ホワイトアウト


「断ります…」
『未確認生命体と言う敵は、我々にとってまったく未知の存在、特に奴等を倒す事のできる力を持つ4号は、我々もかなり興味深い存在だぞ…』
「ご…いや、4号を捕獲すれば、奴等に対する対抗手段は無に等しい…俺でさえ奴等を完全に倒せないのに……」
 クウガの力をどうしようとするかは知らないが、五代さんを捕獲するなんて俺にはできない。何を考えてやがる、ユーゼス……
『……』
「何と言おうと、俺はその任務はお断りです…」
 この場合は必ず怒鳴られるのが筋だが…ユーゼスは、意外な答えをだした。
『ふっ、今の榊に何を言っても無駄か……君の命令違反は今に始まった事ではない…いいだろう、君の好きにしろ』
「…?」
『今後とも、ネメシスや未確認生命体の掃討……頑張ってくれたまえ、君は我々の最高の戦力だからな……』
 そう言い、ユーゼスは通信を切った…何なんだよ一体、えらく素直に納得したなユーゼス…いつもなら、左遷覚悟の命令違反なのに…
「何?また命令違反?今度はどんな任務?」
 少し考え込む俺に後ろから、さっきの飲みかけのコーヒーを持ってきたセーラが声を掛ける。
「いや、対したことない任務だったからな…教えるまでもない」
「ふーん…まあ、いつもの事だけど……」
 でも解らない、変な気分は否定は出来ない。今日のユーゼスの態度、どう理解したらいいんだ…ちっ、やっぱ長年CIAにいたけどユーゼスは信用できない。
「んで、一条刑事達が帰ってくるまで……また、あの喫茶にいくんでしょ」
「ご名答…」
「まあ、せいぜい奥さんと仲良くね……榊」
「おっおい…じゃな、一条さんにそう伝えてくれ」
「はいはい……」
 まるで、手のかかる弟を送り出す姉のような気分か?セーラの奴…一応俺が特捜隊の隊長なんだぜ……自覚薄いけど。


 俺は警視庁を出て、秋子が働く喫茶店ポレポレへと向かった。
 店の外には、五代さんが…いて、前にやったTRCS2000になにやらしていた。
「五代さん、なにやってるんすか?」
「ああ、榊君…、今クウガのマーク書いてた所だよ」
「へえ、うんうまいもんですね」
 TRCSの前部に、五代さんは筆で古代文字の「クウガ」を意味する文字を書いていた。ふーん上手いもんだな…、風祭とは正反対だ。五代さんは悪魔で戦いの目的が復讐の為じゃなく人の笑顔を守るためと言う事…俺は、どっちだろう…
人をネメシスの奴らから守ると言う理由もあるが、奴らに体を変えられた復讐心ももちろんある。クウガとシン、対照的な二人のライダーに俺は前者にも、後者にもなれないでいる。だから、俺を戒めな究極体…超越変転体ダークネスライダーと変えるのかも知れない。
「榊君は、秋ちゃん達に会いに来たの?」
「うん、ちょうど非番でしたからね…そのつもりです」
「あ、いたいた。五代さん…ああ、陣内さんいらっしゃい」
 ポレポレの中から、関西弁の女の子が出てきた…ここのおやっさんの姪である朝比奈奈々さんだ。以前に非番だった時に会ったのだ。
「じゃあ、俺中にいますので……」
「うん、またね」
 邪魔するほど、俺は野暮ではないからな。俺はそう言うと、ポレポレの店内に入って行った。入るとまず、秋子の顔が目に入った。
「いらっしゃ…榊、どうしたの?また非番?それとも、サボりかな?」
「非番だよ、警察の仕事をサボるほど不謹慎じゃないよ」
 秋子の前の椅子に座ると、秋子との久しぶりの会話に楽しんだ。


 ある、バラ園…

 一人の、額にバラのタトゥのある女性が、そこの椅子に腰掛けている。周りには数人の男女がいる、彼らもまた体のどこかしらにタトゥがされてある。全員人にはない不気味さを感じさせている。
 一人の男が、雨も降っていないのに傘を差した男の持っていた、奇妙な形をしたそろばんのような物を打っていき、バラのタトゥの女に見せる。
「二日で、180人か…」
「頼む…」
 その男は、にやりと笑いながら、立ち上がると同時に…その姿をピラニアに似た異形の怪人の姿へと変えた。バラのタトゥの女は、その怪人の禍々しい腰のベルトに何かの牙のような形をした指輪を差し込むとその怪人の「ゲーム」の開始を意味した。
「ビラン…リントにも戦士は二人いる、それに…ネメシスという邪魔者達もどこからくるか、わからない…十分気をつけろ」
『…ゲームには多少の障害は付き物だ……リントの戦士もネメシスとか言う奴らも…オレが食う』
 怪人はそう呟くと、バラ園から消えていった。


喫茶ポレポレ
 秋子に、今の心境を語った。流石にダークネスライダーになった事は言わなかった。
「ふーん、五代さんと風祭さん…、正反対の二人のライダーに出会って、自分は前者にも後者にもなりえない中途半端なんだって言いたいのね榊は…」
 中途半端は余計だけど…まあ、そうなんだろう…
「うん、できれば風祭のようにはなりたくは無いんだけど、五代さんのようになりきれない自分もいる、俺ってまだその点が未熟かな」
 そんな俺に秋子は醤油の瓶とソースの瓶と俺の前に出した。息子の陽介をあやしながら、それをまじまじと見た。
「おやっさんが五代さんに言っていたアドバイスなんだけど、『醤油には醤油の良さがあるように、ソースにはソースの良さがある』って言ってたわよ」
「それとこれとどう関係があるんだ?」
「うん、多分五代さんの能力についての事なんだけど、ちょっと榊達の関係に置き換えると……、五代さんには五代さんの良さが、風祭さんには風祭さんの良さがあるの」
「つまりは、自分らしくやれと…」
 俺には俺なりの良さがあるってことか、秋子が言いたい事は…
「榊はいつも自分らしくやってきたじゃない、今ごろ他人と比べるのはおかしいわよ」
 考えてみれば、俺はいつでも自分らしくやってきたけど…今更、五代さんや風祭と比べるなんて、どうかしたのかな…俺。
「俺らしく…か…」
「そっ、榊らしく…」
ぴぴぴっ!
 秋子の言葉になんとなく嬉しさを感じた後、俺の携帯がなった。
「すまない…」
 俺は携帯に出てみた……。
「はい、水瀬です…あ、杉田さん」
 警視庁で俺の大先輩である杉田さんが珍しく俺の携帯にかけていた。
『水瀬、非番中すまんが、至急こっちに来てくれ。CIAの連中は大騒ぎだぜ』
「どうしたんですか?そんなに慌てて…」
『驚くなよ…、未確認生命体が捕獲された!』
「マジですか!?」
『一条も来る、お前の知恵も必要だろう』
「はい、すぐ行きます」
 俺はそういって、携帯を切ると…
「ごめん、秋子!陽介を頼む…」
「わかってます、榊、自分らしくよ」
「おおっ任せとけ…」
 俺はそう言うと、外にいたルガーソーダーに飛び乗ると、警視庁に向かった。

 警視庁につくと、そこでは大騒ぎになっていた。
「兄さん、兄さん、大変だよ!未確認生命体が捕獲されたんだよ!」
 おかしい、警視庁についたと言うのに…あの未確認特有のきな臭い匂いはしない…
「落ち着け、あかり…それは杉田さんから聞いた…で、その未確認とやらはどこに」
「今、杉田さんと一条さんが事情聴取しているけど、大丈夫かな…」
「大丈夫よ…、どうやら捕まえた奴は、白だわ…」
 心配しているあかりの後ろから、セーラが声をかける…
「解ってる、で…奴は?」
「桜井さんが彼の持ち物の中から、身分証明書が発見されたわ…名は蝶野潤一、フリーターよ」
「蝶野か…」
「えっ?未確認ってそんな普通な名前を!」
「ばーろ、普通の人間だって事だよ」
 あからさまな天然ボケのあかりにツッコミを入れてやる。大方、人間に嫌気が差したかで、未確認に憧れるようになったって寸法か…
「でも、もし蝶野って人に化けてたとしたら!」
「ネメシスの蠍じゃあるまいし、そんな事そいつにできっか!」
 まあ、化けてたとしても好都合だ…本部は、未確認生命体を欲しがっていたからな。特に五代さん…クウガをな…。
「何にしてもはた迷惑な奴だ…」
「それもそうね」

 しばらくして、一条さんと杉田さんが出て来て…
「水瀬、俺はこれから蝶野が本当に未確認生命体かどうか関東医大で調べてくる。お前はどうする?」
「第23号がやったって言う殺しの現場を見てきます」
「そうか、なら!俺について来い、水瀬!」
 俺は杉田さんに連れられて、警視庁を出ようとした…所をセーラに呼び止められた。
「榊、これ持って行きなさい!」
「な…」
 銀色のケースを投げ渡され、中を見るとエクス&ボルテス(榊専用二丁ハンドガン)の装弾が入っている。
「ああ、科警研が作った対未確認生命体用に特殊ガス弾の成分を200倍に濃縮したプラスチック弾だ、有効に使用しろよ」
「はい!」
 俺はそう言うと、装弾をポケットに詰めて…杉田さんの後を追っていった。


事件現場・水上バス上
 水上バスの中にあった死体は全て運び出され、関東医大の椿さんの所に行ったらしい。だが、俺の鼻を突き刺すほどの血の匂い……俺の嗅覚が完全に麻痺しそうなくらいだ、多分、大勢の乗客を皆、食い殺したと思う…
「ひどいな……」
「杉田さん、蝶野って奴…人間なんですよね」
「ん?まあな、事情聴取からして…ありゃ、人間に嫌気が差しているとしか思えんな」
 杉田さんは深い溜息をついてそう洩らす…
「奴はこう言った『未確認の何が悪い?価値のない奴らを始末してるだけだろ?』…とな」
「……」
 正直複雑な心境だ…蝶野の言う事も一理ありそうにも思える…だが、その為に尊い命を奪う未確認や奴らを許してもいい訳ではない……この光景がそう物語っているし、俺たちはそんな奴らを許さないから戦っているんだ。
 だが、蝶野に返す言葉は今の俺には見つからなかった。
「水瀬…なぜあいつは、あんな奴等に憧れたりしたのか、解るか?お前なら、ネメシスって奴等と戦って来たんなら、何か考えてなくも無いだろう」
「…正直、解りません……未確認とネメシスのやつ等は全くの別各ですからね…すいません、参考にならなくて」
「いや、いいんだよ…だが確かに未確認とネメシスって別物だよな、つい前も…未確認とネメシスって奴等の死体が同じ場所で確認され…この二つが敵対している事が解った」
 つい先日、神奈川県でネメシスの量産型怪人2体と未確認生命体1体の死体が同じ場所で発見された、3つの死体には争ったような爪や牙でつけた傷がついていて、量産型怪人の2体の内一体はその未確認と折り重なるように、相打ちとなっていた。
 互いに、背中を貫きあって……そこから警視庁合同捜査本部はこの二つの勢力が敵対関係にあると知ったのだ。
 まさかネメシスのやつ等が、未確認と敵対していたなんて…想像もつかなかった。だが何も…仲間というわけでも無かったが…
「二つの目的さえわかれば、お前も気苦労はしなくて済むだろう?」
「それもそうですね…」
 俺はそう言って笑うと、船の上に同じ合同捜査本部の桜井さんがなにやら慌しく入ってきて……
「杉田さん!未確認が現れました!!」
「何だと!?場所は?」
 場所を聞く前に俺の体は動いていた…ここと同じ血の匂いのする場所を探せばいい…簡単な事だ…
「水瀬!先に行け!俺も後から追う!!」
 杉田さんの声が後ろからして、俺は軽く手を振ると…船から飛び降り、ルガーに飛び乗ると一気に発進させた。

 川沿いを走っていると、水しぶきが立っている事に気がついた。あそこで…赤いクウガと第23号が戦っているのが見えた。
「五代さん!変身!」
 俺はルガーの上で変身すると、そのままクウガのいる所まで走る…
グワン
 クウガの援護に回ろうとした時、俺の頭が急に痛くなった…まるで、耳鳴りのように何かが俺の頭に囁き掛けている。
…襲え、第4号を、襲え…
「何!?」
 それは、いつもの黒狼の声では無く全く別の声だった…だが、そんな声も一瞬で消えると、前の情景が戻ってくる。

 クウガは紫の姿となって、強固な鎧で何とか持ちこたえている…だが流石にその強固な体も、奴の牙は何とか通っている。
「行けない!!」
 俺はとっさにエクス&ボルテスを引き抜いて、装弾にさっきセーラから受け取った、未確認用のプラスチック弾だ…俺はそれを装填すると、第23号に向けて構えた。
「離れろ!!」
ズダン!ズダン!
 発砲された弾丸は、第23号の腹と肩に着弾して、あの特殊ガスが奴の体に入り…奴はもがきながら、五代さんから離れ…水の中に飛び込んだ。
「はあ、はぁ…榊君、ありがとう」
「大丈夫ですか?」
 俺と五代さんは変身を解いて、奴が飛び込んだ水の中を見た…血の匂いは水の中に入って完全に消えて、追う事はできなかった。
「ちょっと、ちくっとしたけど…」
「ちょっとじゃないでしょ……」
 俺は、さっきの噛まれた傷を見た…まあ、軽そうなのは彼の回復力の賜物だろう…
 さっきの声は一体なんだったんだ?声が聞こえた瞬間、一瞬だが体が何かに支配されたような感じだった。だけど変転の予兆でもない…
 何より、声に聞き覚えがある……あれは…誰だ?


 その声が、この後取り返しのつかない事をしてしまうとはこの時は思わなかった。


 ToBe Continue

後書き

今日は夏休みの休暇が終わって、劇場版と共にがんばる事に決めました!
黒狼第二部も後半に突入しました!これから、大変だけど…がんばるよ…、でも色々やることいっぱいあるんだな〜

新たな敵の登場…そして、ネメシスとの最終決戦…そして、突入する、アナザーストーリーそして、最終部。

ううだから後書きはここまで…次のでいっぱい書こうと思います。

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル