「はぁぁーー!」
カシャ!シュー…
 口を開き放熱現象を起こし、クウガへと突進してくる…クウガも右足を後ろにして助走を付け黒狼に向かって走り出した。
「だぁぁーーー!」
「うおぉぉーー!」
 二人は互いにジャンプして、回転してから足を突き出し、互いの必殺キックを交差させた……
「どりゃぁぁーーー!!」
「ぐおおおおーーー!!」
ズガァーーーーーン!!
 ドゴォォーーーーン
 川辺で、二人のキックが重なり合い…小規模な爆発が起きた。

「く…一体何が」
 23号を倒したクウガの元に来た一条だったが、彼が見たのは、傷つき倒れた榊を負ぶってくる、雄介の姿だった。
「五代!水瀬…どうしたんだ、今の爆発…まさか、未確認かネメシスの…」
「違います一条さん、榊君が…榊君がいきなり攻撃してきたから止める為に……」
グラ…
 雄介も榊をおぶったまま、体をぐら付かせた……それを、一条が受け止めた。
「五代!く、運ぶのは俺なんだぞ…二人とも…」
 一条は一度に二人の肩を抱えて、重たそうにずるずると川原を後にしようとした。
「一体、水瀬に何が…」
 榊は依然、クウガとのキック対決で気絶したままだ…


 その頃、物陰で見ていた蜘蛛は…
「けっ、少しバティムのお陰で予想外な事になったが…計画になんら支障はねぇな…」

 国防総省CIA本部…
「そうですか…解りました。そちらは後2ヶ月で……」
 長官室の中、一人…何処からか連絡を受ける、一人の男…ユーゼスゴッツォ…
『あなた達、地球側の協力…我々もいたく感謝いたします。ところで…私が頼んだサンプルの方は…』
「申し訳ありません、『マザー』。少々の手違いで…失敗いたしました」
『それはしょうがありません……ですがユーゼス殿、あなたの頼まれ物は送りましたよ…』
「ありがたきお言葉です、マザー…2ヵ月後までに、奴等を壊滅させ…あなたの孵化に相応しい生贄を……」
『朗報を期待していますよ……』
 ユーゼスは電話を切った…そして不敵な笑みを浮かべて、タバコに火をつけて。
「ふふふ、榊にはもうちょっと働いてもらおう…我等が、マザーを地球に入れるため…」



仮面ライダー黒狼
第4章〜キマイラの夜〜『地獄の亡者』


 ここは、何処だ?目を開けてみる、どこか独房のような病室のような所…僅かに窓から入る明かり…体が動かない。腕を見る…鎖と拘束具が取り付けられて、動かなくなっている。こんなの俺が変身すれば簡単に外れるが…なぜこんな物が…
 俺はどうしちまったんだ?
ガチャ…
「一条、水瀬は拘束…CIAの奴等は一切の権利を一時停止か…一体なにがあったんだ?」
「戦力を大きく欠きますが、今回の水瀬が4号を襲った件でユーゼス長官からの謝罪と要求だと言ってました。それで、水瀬は隊長の権利を剥奪…CIAの特殊部隊は帰還の命令も来たと言う噂もあります」
 一条さんと杉田さんの声が聞こえてくる…ここにこうしたのは彼らか…あ、段々思い出してきたぞ…俺、五代さんを襲ったんだ。それで、ここに…
「面会は5分です…」
「解りました……」
 そして、部屋の鍵が開けられて…中に一条さんと杉田さんが入ってくる。
「水瀬…起きてたのか?」
「はい……すいません、俺が迷惑かけたようで…」
「聞かせてくれ、何故突然…ご…いや、4号を襲ったんだ?」
 神妙な面持ちで、一条さんは聞いてきた。俺は思い出す事を言う事にした…
「少し、記憶の混乱がありますから…よく覚えてませんが…ただ、声が聞こえたんです」
「声?」
「4号を襲え…戦えと言う声が頭に響いて、それで…俺の意識は飛んでしまって…」
 誰の声だったか…思い出せない、誰だ…黒狼じゃない…別の、ああ…思い出せねぇ
「杉田さん、ちょっと外してもらえませんか?」
「あ、ああ…水瀬、CIAが大変な事になってるけど…また戻って来いよ」
「了解しました……」
 杉田さんはそう言うと、部屋から出て行った…
「一条さん、五代さんは?大丈夫なんですか?」
「ああ…、軽症で済んだ、関東医大でいつもの驚異的な回復力で治って来ている」
「良かった…、悪い事したな怒ってました?」
「いや、逆に凄く心配してたぞ…治っても、第一に聞く事がお前の事だからな」
 まあ、無さそうでもないが…五代さんなら聞くだろうな…
「俺の部隊は…本部に帰還するんですか?」
「ああ…ユーゼス長官から本部長宛に来たそうだ…君も、このまま強制送還だそうだ…」
 ユーゼスの奴…ふざけやがって、このままだと俺はここでネメシスを追う事も、五代さんと未確認と戦う事も…秋子達とも別れなくてはならないのか…
「隊長の権利も、君から剥奪した…」
「ユーゼス…畜生」
「お前の気持ちも解らないではない…だが、決まってしまってはどうしようもない…俺も何とかしようとしたが…駄目だ」
「そんな……」
 一条さんでも駄目だと…俺は…どうすれば…
「何日経ちました?あれから……」
「2日だ、お前が寝ている時に『飛行体』や未確認生命体第24号がトラックによるひき逃げ事件を起こした…」
 トラックを使った犯行か…奴等もだんだんとここの文化を取り入れた戦い方をするようになってきたという事か?
「飛行体って?」
「九朗ヶ岳から出土した、破片が合体してできた古代の遺産の一つらしい…沢渡さんは『馬の鎧』と言っていたが…」
「馬の鎧か…敵ですか?」
「五代が言うには、悪い気はしないと言っていた…馬の鎧と言うように…それは五代のTRCSと合体して鎧となったからな…」
「少なくとも、敵ではないと言う事ですね…それで?24号のほうは?」
「五代がその飛行体と合体したTRCSで倒した…」
 はあ、何とか良かったな…
「気になる事がある……五代が戦ってる時、ネメシスの幹部クラスの奴が観察するように見ていたと言っている」
「幹部クラス!?」
「ああ…クモによく似た奴だと言っていた」
 蜘蛛だ、奴が五代さんの戦いを見ていたんだ、一体何の為に…

「一条さん、もう…面会時間、過ぎてますよ」
「あ、ああ…解った、水瀬。もう少しの辛抱だからな」
「はぁ、動きにくい…あ、一条さん!秋子には…」
「彼女にはまだ言っていない、安心しろ」
 良かった、秋子には無理な心配はさせたくないからな…だが、ユーゼスの勝手な命令に俺は本部にもどるわけにも行かない…襲ってしまった五代さんに謝らなくてはならないし……ネメシスも未確認も居るのに…五代さんや警察の皆、風祭等に任せるのは嫌だ、ユーゼスは日本を見捨てろと言ってるような物だ……。
 ならば…日本を見捨てるくらいなら、CIAをやめる覚悟だってある。


 夜となり、蜘蛛はビルの壁から壁へと糸を使って飛び移って地上を見る、地上には息子を攫われ、ネメシスの怒りが収まらない真の姿があった。真は、地上で…次々と這い出てくる、小型の怪人『グレムリン』を数十匹の相手をしていた。
『けけ、しつこい野朗だな…』
 蜘蛛はその真を見て、薄ら笑いを浮かべて言う…
「がぁぁ!!」
ザシュ!
 シンのスパインカッターがグレムリンを切り裂く。
『夜は長いぜ、そんなに焦るなよ……風祭』
『ケケー!』
 小型だが、俊敏性は高く…しかも複数体居る為、シンも苦戦を強いられている。
『使ってもいいぜ…LTG、拉致があかねぇだろ!』
 蜘蛛の言葉にシンも背負っているLTGに手をかけようとする、だが…こんな奴等に無駄弾は使いたくない。
「こいつ等…、いつもの量産型とは違うな…」
『グレムリンは、地獄の小悪魔どもだ!オレ様だけが呼べる』
「ふん、いつからそんな芸当ができる様になった……」
『知りたければ……そいつ等倒してからいいな…』
『ケケー!!』
 シンに一斉に、グレムリン達が襲い掛かってくる…シンは身構えて第三の目『サードアイ』に力を集中する。
「舐めるなぁーーー!!」
グゥゥーーーーン!!
 気合と共に、鬼塚が使った事もある念動力の壁を発生させ、グレムリン達を一気に相殺した。
『げぇぇーーー!!』
 グレムリン達は全て、シンの発生した強力な念動波に消滅した。
「…さあ…、雑魚は片付けた教えてもらおうか…それと、息子を何処にやったのかも…」
 シンは背中から、LTGを引き抜いて蜘蛛に銃口を向ける。
『けっ、いいだろうよ…オレ様はもはや地獄の亡者を呼び覚ます事ができる能力を得たのさ!』
 そう言い、パチンと蜘蛛は指を鳴らすと…今度は自分の足元の地面が盛り上がってくる。
「な、なに!?」
『オレ様の舎弟、『ゴーレム』…いい事を教えてやるぜ、そいつは頭はわりーけど…装甲が蠍よりかてーんだよ、てめーの技は通用しないぜ、LTG以外はな…』
 こいつは、維持でもLTGの弾切れを狙っているらしいなと、シンはそう思った…だったら、司令塔である奴(蜘蛛)を撃てばいいだけの事。
 LTGの銃口をビルの壁に張り付いている蜘蛛に向けるが、その前をゴーレムが塞ぐ。
「ち!」
『てめーはそいつと遊んでな!その間にてめーの大事なもんを、殺してやるよ!けけけ!』
ジャァーー!
 口から糸を吐いて、向こうのビルに命中させると、その糸を使って巧みにビルとビルの間を掻い潜り、シンの前から退散した。
「逃がすか!」
『ボォォ…』
 蜘蛛を追おうと、エアロガンナーを呼ぼうとしたがシンの前をゴーレムの巨体が塞ぐ…
「悪いが、お前と遊んでいる暇なんて無いんだよ……息子が迎えを待ってるんでな…」
『ゴォォ…』
 ゴーレムは鋼鉄を砕く豪腕を振り上げシンに攻撃を仕掛けてきた。


一方、その頃…小型の怪物の出現が確認され、警察の出動と同時に、五代雄介も一条から連絡を受け、現場へと急行していた。
『五代、小型の生物郡は都内の一箇所に集まろうとしている!そこに何かあるはずだ!』
「はい、俺そこに行きます!一条さん、榊君は大丈夫でしょうか…まだ、目を覚まさないんですか?」
 雄介は一条に榊の事を聞いてきた、一条にとって雄介…第4号は榊と並び、我等の貴重な戦力だが、榊とは違い…一般人である雄介に、榊のことは伝えられていない。
 伝えられない…榊が、本庁の地下独房で拘束されてることなんて…親友でありよきパートナーである雄介には…
『ああ…お前は心配するほど、奴は落ちぶれちゃ居ない…』
「そうですよね、じゃあ!一条さん、俺先行きます!!」
 雄介はそう言って、TRCSを走らせた。
ごぉぉぉーーー!
「ん?自衛隊も動いたのかな……」
 雄介は夜の空を低空で飛ぶ、戦闘機の姿をその目で捉えていた…

 都内の廃墟…
 元は、大きな博物館だった場所だったが、経営難により…ずいぶん前に畳む事となって、今は何も無い廃墟となっている。雄介はそこの前でTRCSを止め…懐中電灯を持って、入っていった。
「本当に何もないや…なんか不気味だな…」
 雄介はまず一階を探す…暗くて、月明かりだけがそこを照らしているようだった。
「こんばんは〜」
 雄介の目に入ったのは…プラネタリュウムに使う巨大な機械だった。もう壊れて使え物にならないが元はここで、このドームみたいな天井に星空を移していたのだろう。
 それでかなり広い作りとなっている…
「ん?そこに居るのは?」
 客席となってる所に、何かが居る事を発見する…雄介はそれに懐中電灯の光を当てると…それは、風祭 真の息子…優だった。雄介と優は保育園で自分の名前と少し似ているから、気があった仲だった。ただ、風祭との関係は知らない…
「優じゃないか!?どうしたんだ!」
 優は観客席にロープで縛られていて、気絶していた。雄介はロープを取ると…優を介抱してやる。
「優!しっかりするんだ!」
「う…、うう…」
 優はうっすらと、目を開ける…
「雄介さん…どうしたの?ここは?」
「ああ、よかったー…それはこっちの台詞だよ、優一体何故…」
『俺が連れてきたからさ……』
 雄介が訳を聞こうとしたら、後ろで何かの気配がした…雄介は優を背にその気配の方を振り向いて…確認すると、幹部怪人『蠍』の姿が居た。
「お前は、この前の…」
『ふん、蜘蛛め…気を使って俺に戦士クウガを殺らせてくれるのか…粋な計らいだぜ』
「優、下がってるんだ……」
 優にそう言うと、優は立ち上がって…とことこと雄介の後ろ姿を見ながら後ずさりをして、プラネタリュウムのドアを開いて外に逃げ出した。
『外は蜘蛛の舎弟どもがうようよいるのに……馬鹿なガキだ…』
「変身!!」
 雄介は優が出て行ったところを確認すると、クウガへと変身した…少なくとも、優をここに攫ったのもこの蠍だ…そんな手を使って…何をしようとする?
 雄介の脳裏に、怒りがこみ上げてきた…
「超変身!!」
 クウガは、強固な鎧を身に纏った紫の形態…タイタンフォームへと超変身持っていたトライアクセラーを、巨大な諸刃の剣タイタンソードに変形させる。
『ふん、面白い…』
 パチンと蠍は指を鳴らすと、プラネタリュウムの電灯がつき…周りが明るくなると同時に騒がしくなる、客席を埋め尽くすほどのグレムリンの大群がクウガを睨みつけていた。
「何だ!?こいつ等!!」
『イッツ、ショータイム…』
『けけぇーーーー!!』
 再度鳴らされた、蠍の指に反応してグレムリンの大群はクウガに襲い掛かってきた。


 同時刻、警視庁地下独房…
「何が起きてんだ…地下からでも邪気が伝わってきやがる…」
 こうやって、縛られたのは何年ぶりか解らない…あの時は気合で引きちぎった、今回は特殊な呪縛も無く簡単に引きちぎれそうだが、警察の皆に迷惑はかけられない…
「八方塞か…こんな時にネメシスや未確認が現れたらどうする?」
「そのまさかよ…」
 部屋のドアがいきなり開いて、セーラが中に入ってくる…
「無線を傍受して聞いたわ……、今回はネメシス、大規模な作戦に打って出るつもりよ…」
「マジか、なら…五代さんも…風祭も動いてるだろ…」
「多分ね…でも、私達CIAは動きたくても動けない状態だってことは知ってるわよね…」
「そりゃそうだが、セーラはどうやってここに来た?」
 セーラは部屋の外を指差した、確かそこには監視役で一人付いていたはずだが…
「ちょっと眠ってもらったわ、緊急事態だから…榊もまごまごしてないでそれ外しなさいよ……」
 と言う事は誰にも見られずに外に出られるってか…
「了解…」
 俺は腕に力をこめて、拘束具を切り離した…それで足やもう片方の腕のも取り俺は自由となった。
「さて、ルガー、行くぞ」
「わん!」
 セーラが連れて来たルガーを肩に乗せて、俺は独房から出ようとした…
「まあ助けるつもりだったけど、いいの?CIAはあんたを命令違反で降格どころか…真のように…暗殺対象に…」
「セーラは、納得できんのか?日本を見捨てて帰って来いなんて言う、ユーゼスの言葉が……俺は嫌だね…だったら、ユーゼスを敵に回しても構わない」
 セーラは呆れたように溜息をつくと…
「長官の命令は絶対…と言いたいけど、今回は流石に私達も反対の姿勢よ……あかりなんて激怒してるわ、兄妹そろって現金な奴等ね」
「仲間を、見捨てるぐらいだったら…俺はフリーに戻るけどな……どうだ?お前も…」
 俺は服に付けてあった、CIAのバッジを外してセーラに渡そうとする…セーラははははっと笑って
「はは、あんたらしいわ…本部長には私も言っておくわ、『危険が迫ってるのに、尻尾を巻いて逃げらん無い』って榊が言ってたって」
「俺がかよ…」
 俺は一言セーラに礼を言うと、ルガーを連れて独房を後にする事にした…

 本庁の外で、ルガーをバイクに変形させると…突然通信が入ってきた。
「笹山さん、どうしたんです?」
『水瀬さん、あかりさんに強引に繋げって言われて…それよりも、ネメシス所属と思われる小型の生物群がD地点の廃墟内で、4号と交戦中です』
 合同捜査本部で通信士の笹山さんから通信が入った。4号…五代さんか、早く行かないと…五代さんに謝れないじゃないか…
 俺は一言礼を言うと、ルガーを走らせて…そのD地点に向かう事にした。

その頃、クウガは群がるグレムリン達の攻撃をタイタンフォーム装甲で防ぎつつ、タイタンソードで斬り倒して行った。
「何匹居るんだ!」
 戦闘力は無いにせよ、数があり俊敏性もある…いくら装甲が厚くても、足の遅いタイタンフォームでは分が悪い。
「でりゃ!」
 クウガはタイタンソードで、座席前の金属製の手すりを切り…それを持つと、それがドラゴンロッドとなり、クウガもドラゴンフォームとなった。
『流石は4つの顔を持つ古代の戦士だ…、相手にとって不足は無いぜ』
「おりゃ!」
 ドラゴンロッドで襲い掛かる、グレムリンをなぎ払う…素早い動きとジャンプ力を生かし、グレムリンはどんどん減っていった。
『だけど、どんな形態になろうが…こいつ等はどんどん出てくる、主である蜘蛛が死なない限りな…』
 蠍は、立ち上がりハサミを地上に突きつけ、地中に潜ろうとする…蠍の必殺技であるサンドスコーピオンの構えだ。
『だが、お前にやられた額の恨みは忘れられないからな、とどめは俺が指してやる…』
 額のヒビが入っている装甲をはさみで撫でながら蠍はクウガに標的を向けた。
 そう言うと、グレムリンが四方から一斉にクウガに飛びつこうとしてきた。
「く!」
 ここで、グレムリン達をドラゴンロッドで払い落としていたら…間違いなくサンドスコーピオンの餌食となる。
「ん!?」
『クウガ!これで終わりだ!!サンドスコーピ…ガハ!!』
ドキュン!!
 サンドスコーピオンを放とうと地中に潜ろうとした蠍の額を、空気圧縮弾が命中した。
『何だとぉ!?今の一撃は…あれは…』
 蠍の目に襲い掛かるグレムリン達が、スローモーションの如く落ち行く中で、クウガが緑のペガサスフォームとなって、そのペガサスボウガンの銃口を向けている…
「やばい、変身が解ける!?超変身!!」
 クウガは瞬時に青の形態となって、かけてあったドラゴンロッドを回転させ襲い掛かるグレムリン達をなぎ払った。
「ふう…これで後、10分しか変身ができないか…」
『くぅ…額の装甲が、てめぇ…ゆるさねぇ』
 倒されたグレムリンが再び地中から這い出して、蠍もハサミを振り上げ…クウガに向かってくる。
「これじゃ、きりが無い!」
 蠍の額は後一撃で砕け散りそうだが、無限に現れるグレムリン達を払いのけるのは後変身時間10分ほどのクウガには難しそうだった。ただでさえ、激しい動きで変身時間が短縮される…雄介の頭に、一瞬諦めに似た感情が浮んできた。
『殺す、殺してやる!!』
 蠍の脳にふの感情が蓄積され、それは『殺意』へと変貌して蠍の能力を倍増させた。
「く!」
ブロロローーーーー!!
 そう思ったクウガの耳に低いエンジン音が聞こえてきた…この音は、聞き覚えがあった。
「このバイクのエンジン音は…」
『よそ見している暇は無いぜ!!』
ドゴォォーーーーン!!
 プラネタリュウムのドームの中に一台の緑の山犬を模したバイクに乗った黒い狼の戦士が壁を破壊して、入ってきた。
「黒狼!榊君!!」
「お待たせ!五代さん!!」

 俺は、ルガーで壁を破壊して戦いの中へ入った。
『く、黒狼か…なら、二人纏めて倒してやる!!』
 蠍は俺の姿に驚きながらも、それに構わず…俺にもハサミを振り上げた。
「幹部怪人、蠍!ここで、決着をつけるぜ!五代さん!」
「うん!超変身!!」
 クウガは赤い形態マイティーフォームへと変身して、俺の隣に並んだ。
『グレムリン!加勢しろ!!』
「あのちびっこいの、ネメシスの怪人とは違うな…」
「待って、様子がおかしい…」
 グレムリンは狂気と化した、蠍の命令など無視してさっきまでの素早い動きを止めて、あさっての方角を見ていた。
『ケ…』
 何だ?奴等、襲い掛かってこない、気持ちが悪い…何か嫌な予感がする。
『どうした!俺の命令が聞けないのか!?まさか…蜘蛛か!?あいつ、役立たずが!』
ザシュ!
 蠍は怒りに近場に居たグレムリンの一頭をハサミで両断する、そうすると、グレムリンは俺たちから蠍に標的を移したように、蠍をギロリと睨みつけ…
『かぁぁーー!!』
 グレムリン達は何を血迷ったのか、蠍に攻撃をしかけて行った。
『血迷ったか!?地獄の亡者達!!』
 蠍も…俺たちを攻撃せずにグレムリン達を殺して行った。
「なんだ、仲間割れか?」
「解らない……地獄の亡者達?」
 おかしいが、この機会を逃したら…!?
「五代さん!行こう!!」
「解った、さか…」
ドドォォーーーーーン!!
 突然、プラネタリュウムの天井が破壊され、場内を突風が吹いた…天井の穴から何かが見えた。
「あ、あれは!!」
「戦闘機?!まさか、ネメシス専用機か!!」
 あの戦闘機には見覚えがあった、ネメシスが良く使う新型の戦闘機…VR−19XXだ!よく一般戦闘員が使用する戦闘機だが、何でここに…
ババババババ!!
 戦闘機からバルカンが発射され、蠍に纏わり付くグレムリンを撃ち殺して行った。流れ弾が、こちらに向かってきて俺と五代さんはその流れ弾を避ける。
『何…戦闘機をよこした覚えは無いぞ…ん!?あのマーク…北極支部…ミサイル基地!?そこの戦闘機が何故!?』
ウィーーン…
 戦闘機のコックピットが開いて、そこから何者かがそこに降り立ってきた。
ズガガガガガガガガガ!!
 そいつは、体のバルカン砲を掃射して…残っていた、グレムリン達を一掃した。
「が!凄い威力…あいつは何!?」
「解りません、まさか…他支部の幹部怪人!?」
スタ…
 蠍の前に降り立った、その黒く長身の体の周りには100本もの短い触手が足から頭にかけて、生えていた。
『久しぶりに会ってみれば、何だ…その様は…蠍』
 事務的な口調で、蠍に話しかける新たな幹部怪人…まさか、蝙蝠が居なくなったから…また再編成を…
『百足(むかで)!?お前が何故、北極支部はどうしたんだ…』
 蠍も、そいつの来訪が予想外だったのか聞き返してきた…百足は蠍の方を向くと…
『やはり気づいていなかったのか…北極支部は、3日前壊滅した…バティムと、世紀末王の陰謀によって!!』
『何だと!?』
 蠍は百足の言葉に驚いた…正直俺も驚いたぜ、北極支部といったらネメシスの主力ミサイル基地…
『それだけではない…もうバティムの手にかかり、今や…ネメシスの世界に分布している支部は全てなくなったも同然だ、日本のネメシス本部を除いて、全てな!!』
「何だって、ネメシスがもうここを覗いて全て壊滅…」
「どうなってるんだ?あいつ、何を言ってるんだ…」
「ネメシスは世界にその支部を置いて、本部、日本支部以外は必ず一人幹部を配備していてそこでの工作活動、遺跡の調査、量産怪人のプラント護衛などを受け持ってました、それが…以前俺達が戦った反ネメシス組織の一つ、『バティム』により…壊滅していたと…」
 ただおかしいのは、バティムは…活動をCIAによって鎮静化に向かっていたのに、いつネメシスの他支部を襲えるほど余裕があったのか?
 それにそんな奴等が動いて、ネメシスの支部が潰れたとなれば、CIA本部に通達が来て…こちらにも情報が行ってるはずだが…
『そんな…俺は、俺は信じない!世紀末王様がそんな事をするはずが…わざわざ敵と競合して、我々の支部を破壊するわけが…』
『いや、奴はバティムと協力していたわけではない!奴は、こうなる事を知っていてわざと支部を見捨てたのだ、ある思惑の為にな!!』
 世紀末王が…何をたくらんでいたんだ!?バティムを利用としてまで、支部を破壊する必要が…何処にあったんだ…
『戦闘機の無線から、そっちの作戦の情報を聞かせてもらった…どうやら、蠍…お前はだまされていたようだな…』
『何だと?』
『まんまと、お前は奴の世紀末王と蜘蛛の策略にはまっていたのだ…本命は蠍、お前を陥れる為…』
『な、何故そんな事を…まさか…』
 何となく会話から解ってきた……
 キメラ化…蠍の遺伝子と蜘蛛をキメラ化させる為に…世紀末王は、ただそんな事を何故やろうとする…
『キメラ化の先に何かある、蜘蛛はその秘密を知ったのだ…そして世紀末王は本来なら、殺すはずの存在の蜘蛛に協力した…』
『そんな…世紀末王様が俺を……』
『蠍、昔のよしみだ…もう我々が信じた王は、我々を裏切ったのだ。私は奴を許すわけには行かない…私と共に世紀末王を打とうではないか!!』
 百足は蠍に手を差し出した…蠍の奴は戸惑ってる、一番信じていた王に裏切られたのだ。そして昔の仲間である…百足が共にそれを討とうと言うのだ…戸惑うのは当然だ。
『良いだろうお前の話はまだ府に落ちない点があるが、世紀末王様の口から直接聞く事にしよう…』
 俺にもまだ信じられない…、世紀末王がわざわざ自分の部下を殺そうというその真意が解らない…だが百足は俺たちの方を見据えて…
『良かろう……だが、少々邪魔者がいるな…それを片付ける事にしよう…』
「何?」
「邪魔者って、まさか…」
『どの道、この二匹を通らない限りは、我々の復讐はできないだろう…』
『そうだな…こいつ等はいずれ…殺さなければならないからな、先に片付けておこう…』
 百足と蠍が俺たちに対峙する、幹部怪人が二人…しかも百足の能力は未知数の存在、どう出るんだ…この後…
「そう言う事か……」
ザン!
 俺たちの間に割って入るように、天井から深緑の異形の戦士が飛び降りてきた。
「風祭!!」
「幹部二人に苦戦か、情けないぞ…」
「何だと!?」
 風祭の言葉に俺は頭に来て、突っかかろうとする所を五代さんが後ろから止める。
「榊君、今はそれ所じゃないよ…」
「ふん…赤いのの言う通りだ、それにしても…これでようやく、追ってきた…蜘蛛のやろうとしている事がハッキリした…ついでにネメシスの本質もな」
 風祭はそう言うと、蠍と百足を睨みつけて……背中にLTGを携えて身構える…
『む…貴様は、鬼塚…いや…違う』
『風祭真だ…鬼塚にあの改造を施された者の一人だ…』
『ほう……鬼塚の亡霊という噂は本当だったようだな…』
「……その名は好かん、まずはお前から先に始末してやろう…息子を攫った蠍にも礼を言いたいが、それはお前達に任せる…」
『良かろう、風祭真…お前の相手は私が勤めよう…』
 百足はそう言うと前に出て、ファイティングポーズを取った。俺は戦おうとするシンの肩に手をやって…
「待てよ、ネメシスの本質って何だ!?」
「これを読め、多少解るだろう…」
 一冊の日記帳らしき物を手渡される、『合成生物『キメラ』製造方法』?これって
ブオン!
『よそ見してる暇は無いぜ!!』
「榊君!!」
 蠍が俺にハサミを振り、仕掛けてきた…どうやら、俺たちの相手は蠍のようだな…
「ゆっくり、待っちゃくれないようだな!!」
 俺とクウガは、二人で蠍を相手取る事にした。

 風祭は、百足と対峙している…見るからに格闘戦主体の幹部怪人に見えるが、あいつの能力は…
『私と戦える事を、光栄に思え……風祭真』
「そうでなければ、蜘蛛を追ってここまで来た覚えは無い……」
『減らず口を叩けるのもここまでだ…誰が、お前一人を相手にすると言った…』
 百足はそう言うと、体の各所に生えたムカデ特有の100本の足を前面に突き出した…その足の先端は銃口のように穴が開いていた。
「何?」
『この百烈生態破滅弾から、逃れた物はいない…消し飛べ!』
ギュイーン!
「まさか、お前等!よけろ!!」
「何だって?」
「え?」
 蠍が一旦引いて、俺とクウガは風祭の言葉に一瞬と待った瞬間、百足の百本の足が火を吹いた。
ズガガガガガガガガガガガガガッ!!!



 ToBe Continue

設定資料集


怪人集

百足(むかで)
主体 百足大ムカデ
身長 199センチ
体重 95キロ
パンチ力 6t
使用武器 生態ガトリング
必殺技 百烈生態破滅弾
ネメシスの幹部怪人の内の一人、砂漠に生息する本当に100本の足を持ち長い百足大ムカデを主体にした、ネメシス北極ミサイル基地を補佐する幹部怪人。何らかの原因で北極基地を追われ、日本にやってきた…。体に無数に生えている短い100本の触手は、生態ガトリング砲となって体液を凝固させた弾丸を毎秒200発発射できる。弾幕を張って…敵を寄せ付けない。ネメシス幹部怪人の中では一、二を争う強豪。蠍とは戦友同士らしい。

地獄の亡者
蜘蛛の能力で、地獄の底から這い出てきた亡者達。その正体はハッキリしていないが…グレムリンという小型の怪物と、大型の土でできた巨人ゴーレムが主に引き出せる。だけど蜘蛛は元々地獄の亡者を呼び出す能力は無かったはずだが…

後書き
今回は戦闘主体で言ったらえらく長くなった為、次の回にまわします。新しい幹部怪人と敵キャラを登場させました!
榊「って、また次にまわすのかよ…」
まあ、次にまわすのは、ある人からワード文章が重くなるって言うんで、いつも私は黒狼を基本的に7〜14ページに設定してたんですよ。
榊「みじけ…」
友達である浦谷竜蔵さんの、スパヒロ魂も結構重いって言うけど、我々の黒狼は…重かったらごめんなさい。

蠍と百足、かなり仲が良いですが…親しい間柄です。百足は…ネメシス幹部怪人内でも1、2を争う強豪と言われています。結構凄いキャラなんですが…扱いが少しかわいそうな方向に行くかも次回…

百足さん、ごめんね。DFではもっとかっこよくするから…

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