「そうか、そんな事が……」
 俺は五代さんや一条さんから、聞いた…謎のロボット、そして牙王…風祭…
「風祭さん多分、たった一人であの牙王と戦ったんだと思う」
「多分、あいつ…」
「大丈夫だよ、榊君…彼は絶対生きているよ!」
 俺もそう思いたい、だが相手はあの牙王…一筋縄でいく相手ではないことは風祭とてわかっているはずなんだ…

 それに気になるのが五代さんと戦ったって言う、ロボットの話だ…もし百足の話が本当だとすると…おそらくは、バティム…。
 バティムだとしたら、ネメシスの世界に分布されている各支部を破壊して最終的にネメシスの拠点であるここに来る…
 おかしいのが、バティムはCIAのチームによって活動を停止したとセーラから聞いた。俺がここに、帰国してから…バティムの工作員…エージェント達は破壊されたと聞く。
 残党…としても、規模の大きいネメシスの支部を全て破壊するのは難しい…だけど、百足は確かにバティムに倒されたと聞く。

「水瀬、気がついたんなら今日は休め…体が持たないぞ」
 一条さんが俺の身を案じてそう言った…気になる事が多すぎる…
ネメシスの真意、復活するバティム、送り込まれるエージェント(仮)何もかもがわからないことばかりだ…本当なら寝てる暇なんて無い…筈なんだ。
「やっぱ、俺も行きます…もう体も完治しましたし…」
「そう言うと思って、榊君に面会だよ」
 五代さんはもう退院するのか服を着込んで病室のドアを開けると…そこには…

「榊……」
「あ、秋子ぉ!?」
 五代さんがあけたドアの向こうには、少し俯き加減の秋子がいた…秋子は一条さんや五代さんに一礼をすると病室内に入ってくる。
 やばい、ここんとこ仕事詰めで電話もしていなかったような気がする…それに一条さんから毎日、見舞いに来ていたって聞いたし…
 怒ってるだろうなこりゃ…
「じゃあ、私たちはこれで…」
「また、榊君」
 あ、五代さん達は俺を残して、病室を後にした…あからさまに気を使われているような気がするが…。




仮面ライダー・黒狼
第5章〜王達の戦い〜『生命の石、魂の石』



 二人きりになり、俺と秋子は顔を見合わせない…見れないんだな、何でって、秋子…絶対泣いてるから…
 俺は出来るだけ顔をあわせようとせずに…下を向きながら…
「秋子、すまない…何日も会ってないでこの様だ…」
「…心配したんだから……」
 やっぱ、怒ってるな…俺ってやな奴だよな…
「……謝りきれないな、秋子を泣かせちまったんだからな…」
 こっちにゆっくりと秋子が近づいてくる足音が聞こえる、ひっぱたくぐらいしてもらわないと…何だか寝覚めが悪いな。
 秋子は俺のベッドの隣にある椅子に座り…
「…榊はいつも通り、お寝坊で…喧嘩っ早くて、無茶をして…私に心配かけさせる」
 秋子はそう言いながら、俺の肩に寄り添ってくる。
「そして…また遠くに行っちゃうんじゃないかって…心配したんだから…」
 思い出していた、俺は以前のように…秋子を悲しませてしまう所だったのか?
 以前も俺は自分の勝手で秋子から離れちまった……3年間、その3年間は秋子にとってどれだけ長い物だったのか想像も付かない。
 そしてまた、俺は行き過ぎて…秋子からいなくなろうとしていたのか…3年で変わったと思った、だが全く変わってないじゃないか…
「心配をかけさせてすまない…俺…また一人で突っ走ろうとして…」
「そう、本当に榊が悪い」
 秋子の手を取ると、秋子は俺の手をぎゅっと握って俺と目をあわせる…涙を流しながらも、その表情は嬉しさがあふれていた。
 そうだ、俺は秋子を守る為に戦ってたんだっけ……


 その頃、ネメシス本部…

 牙王は、シンとの戦い傷の治療する為…本部に戻っていた。シンの超念動拳の威力は相殺した後も余波で牙王の体を抉っていた。
 わき腹の傷は思ったより、深く…血が流れている。その血も…地面を溶かす強酸性を持っている。我王が通った道はわかり易いほど溶けて煙が出ていた。
「く、風祭…思ったより深手を負わせやがって……」
 戦慄の間にたどり着くと…牙王はいつもとは違う雰囲気がしている事に気づいた。

 この感じ、間違いない…自分とは違う何者かがこの中にいることだった。牙王は戦慄の間に入っていくと…その奥で、うごめく影が3人…
「まさか、け…もう目覚めたのかよ…」
『牙王よ…エージェントの排除、ご苦労だった…』
 世紀末王の声が場に響いてくる、牙王はけっと舌打ちをすると…
「負傷してんですけどね…」
 皮肉を込めながら、牙王は毒気をもらすと…牙王の向こうにいた3体のうちの一人の影が動く。
「久しぶりだな…蜘蛛…」
 牙王の前に、紺色の長髪を後ろで縛り、伸びきった前髪で両目を隠した青年が陰の中から現われる。
「『鮫』……お前とは、もう二度と会いたくなかったぜ…よくのこのこと戻ってこれたな」
「氷の中はいささか肌に悪い…やっぱり、ここが一番いい…」
 鮫と呼ばれた青年は似たりと不気味な笑みを浮かべながらそう言う…
「昔はネメシス一の危険人物だった、今更…出てきて何だ?」
 牙王と鮫は今にもぶつかり合わないかの雰囲気で対峙している…
「どうやら、俺が寝ていた数年の間に面白い事が起こっていたらしいな……世紀末王から始終は聞いた…参加できなくて残念だったぜ……それに蜘蛛、お前も俺と同じ『王』の姿へとなれるようになったんだな、各支部の幹部怪人を食って」
 皮肉をもらしながら牙王の横を通り過ぎて、戦慄の間の机に置かれていた…酒らしき物をグラスに注ぐ。
「け!もう蜘蛛じゃねぇ…オレ様の名は、牙王だ!」
「『王』の体を取ったにしちゃ、敵に深手を負わされてるのは俺の気のせいか?」
 そのグラスに注がれた、赤い酒…いや、人間の生き血を牙王は飲み干すと、更に牙王に対して皮肉をもらす。
 牙王は先ほどのシンとの戦いを鮫に見られていたのだ…王となりプライドが高くなった牙王には屈辱的な言葉だった。
「いい加減にしろよ…鮫、今のオレ様なら…十分勝てる気がするって事を忘れんなよ…」
 瘴気が、牙王を取り巻いて…牙王を『王』の姿へと変える。
『今ここで殺してもいいんだぜ…』
「……すぐ熱くなるのは『王』となっても変わらないか…だが元々、『王』は『王』同士で戦い合う、俺らはそういう種族だ…」
 鮫の前髪で隠れた両目がギラッと向く…その目は瞼が無く、獲物を狙う食物連鎖の頂点を意味する鮫の瞳だった。
『待て両者よ…鮫よ、我はその為にお前の凍結を解いたのではない事を忘れるな…』
「…余計な邪魔を…まあいいや、確かにそうだ…世紀末王様の体を取り戻さない限り、まだ…戦い自体も始まっちゃいないんだ…本番前に、余計な事はするなと言うことだ」
 世紀末王の声で鮫は臨戦態勢を解くと、牙王はけっと舌打ちをしてそれに倣う…
『我が完全に復活するまでは、お前達には働いてもらう……』
 世紀末王の言葉に牙王は毒気づくと、人間の姿へと戻り…後ろへともどって行った。
「それで、オレ様達はこの後何をしようと…」
 牙王が聞くと…世紀末王は思わせぶりに…
『既に、ミレニアムストーンは…既に被験者にコンタクトを取っている』

 『死神の間』では…ミレニアムストーンを付けた異型のベルト、ミレニアーンが心臓の鼓動のように脈打っていた。
『…我の声を聞け…我の呼び声に答えよ…赤き魂の石に…選ばれし者よ…』
 ミレニアムストーンの声は、遠く魂の共鳴する者を選び出す…赤き光はその呼び声…赤き光は灼熱の太陽のように…その光は選ばれし者の元へと届く。

 廃工場で真の包帯を取り替えていた優の頭の中に…その声が入り込んでくる。
「う!!」
「優、どうした…」
「解らない…誰かの声が僕の頭の中に…」
 優は頭を押さえて、その声から耳を塞ぐ…
「テレパシーか?誰の声だ?」
 その真の声も届かないくらいの声が、優の頭に入り込んできた。
『…我と共に歩もう、我が魂と同じ物を持つ若き魂よ…赤き光を、太陽の光を…掴め!』
「いやだ、入ってこないで!」
「優!しっかりしろ!」
『我とお前、運命は共にあり……我はお前の訪れを待っている…太陽はお前の頭上にいつも輝いている』
 優の脳裏に、真っ赤に燃える灼熱の太陽が頭に浮んで…そして消えた。
「大丈夫か、優…」
「う、うん…大丈夫…僕…聞こえたんだ」
 優は声の事を真に話した…自分に届いた声を…
「何だって?」
「…ああ…太陽が…太陽が…」


 関東医大病院

 病室では落ち着きを取り戻した秋子が俺にリンゴをむいてくれていた。
「陽介と名雪は?」
「病院の託児所よ……でも廊下はすごい荒れようだったわね」
「そりゃ、五代さんが戦った後だからな…」
 俺がいた前の病室近辺の、廊下は現在立ち入り禁止になっていて…五代さんとバティムのエージェントが戦った後だと言う事が容易に想像できた。
「アメリカで榊が戦った敵なのよね…」
「ああ…一度は活動を休止したって言ってたけど…安易に考えていたかもな…」
 現在はセーラやあかり達が、バティムの所在について当たっているはずだ…今になっても、バティムの正体も、その目的も掴めていない。
 エージェント…その存在も闇の中に隠れたまま…いつ俺をまた狙ってくるとも限らない。
「未確認・ネメシス・バティム…これで三つの脅威が、集まろうとしている…早くよくなんなきゃな」
「もう、安心できる場所はないのかしら…」
 秋子はリンゴの皮をむいていたナイフを止める。日本…東京は、今や戦場だ…この3つの脅威に俺たちも含めれば4か5だ…全てがぶつかるとなればそれこそ終わりだ。
 秋子が不安なのも仕方がない…
「……大丈夫、俺や五代さん…風祭がいれば」
 何となく風祭も入れてみた…あいつも段々と変わっていってると信じたい…
「でも…」
「安心しろ、三人とも俺が守ってやる……大丈夫だ」
 俺は五代さんの真似をしてサムズアップをした。よく五代さんが使うらしいが、効果はあるのかは俺には少しよく解らないが…
「ええ…そうね、私もあの子達を守らなくちゃいけないからね」
 秋子は顔を上げて、少し表情を赤らめて言った。良かった…笑ってくれた…
 大役だろう、秋子にとって俺と自分の子供を守る事は…風祭も同じ気持ちだろ…息子である、優を……

そう言えば、五代さんの話に出てきた、赤いバッタ男…
 五代さんを助けて、クウガの力を強化してくれた、五代さん自身はクウガの力の強化の切欠を作ったと言っているが、クウガにも秘められた力があったのか。
 『金の力』…古代人が作ったとされる、クウガのベルトにある霊石の力なのか…それとも…五代さんが編み出した新たなる力なのか…
 赤いバッタ男はそれを知っていた…一体何者なんだ…風祭と似ていたとも言う。
「はい、榊」
 俺は秋子に向いてもらったリンゴをかじる…ともかく五代さんも、力を強化したことだ…未確認も強くなっていると一条さんが言っているし…五代さんの力の強化は喜ばしい。
 牙王…の事も気になった、牙王に対抗するには、今の俺では到底敵いっこない…超越変転体とならない限り、対等に戦えないなんて…あれになれば俺もただでは済まされない。

 秋子を、俺たちの子供を……皆を守るだけの力が、俺には欲しい…
 力が……欲しい…

「欲しいですか…?その力を……」
「何!?」
 不意に秋子の口調が変わった…、俺は一瞬どうしたのかと思い、秋子のほうを向くがすぐに様子がおかしい事がわかった…体は秋子のものだ…だが、その秋子を媒体として誰かが俺に話しかけているのが解った。
「誰だ…お前、返答次第では、ただじゃ置かない…」
 秋子と戦う事はしない、ただこれが何者かの思念だとしたら…取り除く方法は一つだけある。俺の力…アンチテレキネシス…で…
 秋子、いや秋子の体を借りた者は立ち上がると、周りを優しい風が吹いた…秋子の背に一対の天使の翼みたいな羽が見えた…残像か?実態か?どっちかは解らない…
 ただ…嫌な気はしない…むしろ、美しくその翼は見えた…
『わたしは…生命の青い石で、命の浄化をする役割を持つ『翼在りし者』です……名は、当に忘れました…』
 秋子の声で…その翼在りし者は答えた……なんだ、この懐かしさに似た感覚は…
「生命の青き石!?それって、まさか!?」
『ええ…あなたに埋め込まれし、生命の輝きを持つ石…わたしはずっと昔から、この石の中で生命の浄化を行っていたのです…』
 つまりは、彼女は大昔に作られたアグルストーンに自分の思念をうつして…ずっと、死者の生命の浄化を行っていたと言うわけか…と言うことは彼女か?アグルストーンを作ったのは…
『私にはこの石となり時から、もう実体も魂もありません…思念のみの存在…手荒いかもしれませんが彼女を通して話すことを…お許しください…』
「……解った、秋子に害がないならそれでいい…だが、聞き捨てならないのは。さっき俺に力が欲しいのかと聞いてきたな…」
『……あなたは、今、力を欲しました…それは何の為です?』
「愛する者全てを守りたいから……って理由じゃ駄目か?」
『…いいえ、それもありますが…あなたには別に力を欲する理由があるはずです……、それは…倒すべき敵がいるから…あなたは力が欲しいのでは…』
「それは……」
 …彼女の言う事はあっている、強い力を持って、未確認、バティム、そして…ネメシスを倒したい。
 彼女は悲しそうな顔をした…まるで哀愁を感じられるほど…
『今の貴方は、その『心の闇』を持っています……それが、石の力を間違った形に変えて、貴方を…変転させます』
「超越変転体…ダークネスライダー…邪王…邪なる究極体…それは俺の心の闇が作り出していると言うのか?」
『貴方の心に眠る、『狼』は今やあなたと表裏一体…狼の意思は、貴方の意思と同じ』
 黒狼、体から這い出してくる…あれはそもそも俺が…力を欲したから出てきたのか…元々、黒狼は変異体の時や変転体の時に出てきていた……そうだ、あの時だって、俺が子供の時、陣内家を壊滅させたのだって…黒狼と言うのは俺自身の『心の闇』…
 悲しみ、憎悪、絶望、数多の負の感情がそのまま『殺意』となり…俺は…黒狼となって幹部怪人と同じになっていたと言うのか…ネメシスの幹部怪人の特性がこれで解った。
 そう思うと俺は自分のおろかさが身にしみて解ってきた。今まで気づかないでいたなんて……後少しで、俺は幹部怪人『黒狼』となる…
『このまま力を得たら…あなたは『心の闇』に支配されてしまい…破滅を導く破壊者となるでしょう…』
「ならば、俺はどうすればいい……俺は…はっ!」
『思い出しなさい…あなたは知っているはずです……『本当の強さ』と言うものを…』
 思い出す…そんなこと…今の俺にはわからな…いや、知っていたはずだ…何故、何故だ…今になって、思い出した。
 脳裏に死んだ姉上の言葉が蘇ってきた……

『力なんて必要ないの…大切なのは、…人を想い、人を愛し、人の為に戦える強さよ!それが本当の強さと言う物よ!あなたはそれがある……』

「そうか…本当の強さと言うのは力だけじゃない…生ける者達の為に戦える、意思の強さ…それが、本当の強さ…」
 姉上の受け売りだが…それがどれだけ重みがあって意味がある言葉だとは…強さは力だけじゃ片付けられないってことか。
『思い出しましたね…石は、使い方によっては『聖』にも『邪』にもなります…貴方は後一歩の所で、『邪』に取り込まれるところでした……次の変身は間違いなくあの姿としていました…』
 次がラストだったって事か…だから彼女は、それを警告する為に…
 石…漢字を変えれば『意思』となる…そうか、そういう事だったのか…
「危ない所だったのか」
『でも、もうあなたは…大丈夫…。もう、邪に取り込まれることはありません……』
 彼女が軟らかく微笑んでそう言った……その表情にはもう悲しさも険しさも感じられない。
「ありがとう……やっぱ、疲れてたのかな?俺…こんな大事な事を忘れるほど」
『お礼を言うのはこちらの方です…、あなたはやはり…この石を持つ者に相応しかった』
 彼女は胸の中心で手を合わせ、そう言った…まるで、待ち望んだ恋人に巡りあったように…
「昔から、アグルストーンを持つのに相応しい奴が現われるのを……待ってたのか」
『…はい、私の一族の最後の一人が残した、『意志』を受け継いだ者が現われる、それが『石』の継承者として相応しい者と…』
「待ってくれ、と言うことは…俺はおまえの……」
 遠い子孫と聞こうとすると、彼女は俺の唇に指をやって止めた…
『それは違います、貴方が受け継いだのはあくまでも『意志』…私の一族の最後の一人は、子孫を残さずに死にました……いいえ、空に囚われました…』
「……!!」
 彼女は思い出話を語るかのように天井を見ながら…俺に語りかけた…
『もう、何百年も昔の話です…彼女の魂や生命は浄化されずに…空に囚われたのです、“永遠の悲しみ”と言う名の呪いに…』
 どこかで聞いた事がある…父上からか、我々の祖先はその囚われた羽根を持つ者を助ける為…能力を身に着けた…盗賊に成り下がってしまったがなと……付け加えて…
『地上に降りて、命の浄化は行えました…ですが……輪廻転生するその魂は…未だその『呪い』に縛られたまま…幾度も幾度も、輪廻転生を重ね…悲しい結末を迎えるのです……』
 俺たち陣内家が歩んできた時代は、まさにそうだった…先代…先々代も…悲しき結末を迎えている…魂と命は別物…アグルストーンで浄化できなかった『魂』はさ迷い歩く…
 そして刻む…『悲しい記憶』を…
「それが…『意志』か…」
『はい、この石を継承する者は…その悲しき魂を救う役割もあるのです……空に囚われた、最後の翼を持つ者の魂を…』
「……最後の翼を持つ者…の魂を…救う…」
 俺にとって、アグルストーンを持つ者の使命…俺の先祖が受け継いできた『意思』が…俺を仮面ライダーとして戦う使命ってことか。

 だが解らない、輪廻転生を重ねた魂を持つ人間を簡単に見つかるかどうか解らない。
『私は長い間、あなたの訪れを待ち望んでいました…現在、その魂が危機にさらされています…』
「危機!?どう言う事だ」
『魂が…赤き石と同化しようとしています…』
 赤き石…まさか…アグルストーンと双対を成す赤い魂の石『ミレニアムストーン』本部移動の際に再び日本に持ち込まれたのか…と言うことは、その魂はミレニアムストーンにそして、世紀末王の体となろうとしているのか…
『赤き石は、青き石と双対を成す物…魂を吸い取る作用を持ちます…取り込まれたら、救出する術は……』
 彼女は一瞬言葉に詰まった…どうしたんだ…
「どうした?」
『赤き石に魂を取り込まれると…救い出す術はありません…たとえどんな事をしようと』
 確かに、ミレニアムストーンに吸われて新たな体を得て復活した世紀末王と…戦う運命となるのか?だとしたら…戦えるのか?俺は…
『お願いします……、その『意思』で、最後の翼を持つ者の魂を…救ってください、私の一族の最後の一人を…』
 秋子の目から涙が流れた…いや、彼女が泣いているのか?
 彼女の気配が、秋子から消えようとしていた…秋子の背にある翼が、薄くなって来ている。
「…お前…もう…」
『あなたの強い『意思』はきっと、あなたの力となります…最後にあなたの名をお聞かせください……』
「榊…陣内 榊…」
『…榊…私は石に戻り…あなたを見守っています…』
 彼女は秋子の体から抜けて…秋子は糸の切れた人形のように倒れこんで俺が受け止める。そこには髪の長い、着物を羽織った女がいた…体が透けている、幻か…その翼は美しい生命の輝きを放っていた。
『彼女には、悪い事をしました……謝って置いてください』
 風が吹いて…彼女の姿は、幻のように消えて行った。

 彼女が消えて……数分後、秋子が目を覚ました…
「あれ?どうしたの…」
「少し疲れてたんだ、秋子…眠っていた」
 彼女が秋子の体を借りていた時の事を、覚えていないようだ…
「そう…疲れてたの?あれ?どうして…私、泣いてるの?」
 秋子は彼女が流した涙をふいた…
「……」
 彼女が言った事が本当なら…、世紀末王の狙いは…彼女の一族…最後の一人の魂を持つ人間…空に囚われた者の魂…翼を持つ者の生まれ変わりと言っておこうか…
 多分、輪廻転生して間もない子供だろう…だが、そんな子供をどうやって見つければいい…仮にその子供がネメシスの手に落ちて…ミレニアムストーンに取り込まれると、二度とその魂は浄化されずに…世紀末王の体となる…二度と救えない…しかも、戦わなければ鳴らない定めとなる…その場合俺は戦えるのか?世紀末王となった子供と…

「あら?…羽……」
 秋子が、俺のベッドの上に落ちていた一枚の鳥の白い羽を拾った。
「綺麗…何の鳥の羽かしら」
「それは…」
 その白い羽は、まさにアグルストーンの中に居る、翼を持った者のだ…俺はそれを秋子から受け取って見る…『見守っています』か…アグルストーン。
「秋子、この羽…お守りにとっておいてくれ」
「え?でも…この羽…」
「大丈夫だ…これを持ってると、きっと陽介や名雪…お前を守ってくれる」
「……あ、解ったわ…榊の言葉を信じる」
 俺は、秋子にその羽を握らせる…きっとこの羽が…秋子達守ってくれる事を信じて…。


 その頃、ネメシス日本支部の下部組織の生化学研究所…

 今まで、人里離れたこの研究所は、シンの復讐も届かず…またネメシスの二大戦力の一つ改造兵士の研究も相まってネメシス総本部もここには手を及ぼさない部署だった。
 秋子の父でもある水瀬信一もまた、そこで改造兵士のレベル3に変わるレベル4、5の研究をしている…彼は、改造兵士の事を書いた『緑川博士の論文』を見つけた川澄教授の研究チームの一人で、ネメシスの科学班に風祭真の父であり…先輩でもある…風祭大門とスカウトされた…大門が居た、ISSは…CIAにより壊滅して、破棄された際死んで…この研究所もその系列にあるのだ。
「よし、もう少し…上げていきましょう…こうすれば戦闘能力が上がるはずです」
 信一は、ガラスのゲージに並ぶ数体…改造兵士レベル2の強化改良を行っていた、量産型怪人と並ぶネメシスの主力として…今は亡き鬼塚教授の研究結果を元に開発と強化改造が行われていた。自分の義理息子となる戦士の敵を作る事…それに罪悪感を感じる日々が続いていた…そんな信一に…
「でも解らないのが…急に、上が改造兵士レベル3より先の研究を中止して、レベル2の生産ラインを上げろと言うのでしょうか?水瀬主任」
「解りません…ですが、何か上が焦ってるようにも見えます…」
 信一は自分の身の危険を感じていた…かつて、自分も彼と同じ戦士だったから、十分解った。運命を感じ取ったのか…『緑川博士の論文』を持ってしまった人間、つまり改造兵士…仮面ライダーの研究に携わった彼と同じ、生化学者達は…彼を残して全員死んだのだ。
「(何か…嫌な予感がする…榊君…秋子…)」
 彼の不安は、後数分後に…明らかとなるのだ…

 研究所の近くで竹やぶがある…その中で…黒服とサングラスをして研究所を見据えていた……
「ネメシス主力、『改造兵士』生産研究所…排除活動…エージェントT…ミッション遂行モードに移行…」
 その黒服の男、バティムのエージェントは体を変形させて緑色のロボットとなると、もう一人のエージェントが現われる。
「エージェントR…ミッション遂行モードに移行…」
 エージェントRは、その発生後変形して、胸から二つの車輪が現われ、車体を形成してバイク形態に変形する。

 そのバイクに、エージェントTが乗ると…研究所に向かって走りだした。


 ToBe Continue


次回予告

「ええ…あなたの義理のお父さんとなる人が…命の危険にさらされているわ」
「……何?まさか、信一さんが?」

 水瀬信一にバティムの魔の手が迫る。
 改造兵士の研究に携わった者達は死すべき運命なのか…苦悩する信一…

「榊君…君に出会えて良かった」

 それが、諦めに変わる時…一人の男は一人の戦士として、散る事を選ぶ。

 信一の危機に…黒き狼は新装備で立ち向かう。


第5章〜王達の戦い〜『新装備』

 鋼の銃弾を放て! 黒き狼よ


エージェント
 未だその全容が解明されていない組織、バティムのサイボーグ工作員。電子頭脳に『脳髄』を持ち、任務を下された場合その命令から作戦とターゲットを自ら決める事ができる。性能を持っている。A〜Zまで製作され…その多数は何者かにより殆ど壊された。その構造や、性能、戦闘能力は…回収された『ショッカーの遺産』を参考にして作られている。

エージェントG
 ドリル状のアタッチメントを武器とする、猪突猛進型エージェント。上半身の装甲やパワーがあり…エージェント内でも最強の5トンのパンチ力。また捕獲用のアームに自身を変形をすることも可能。
(モチーフはもちろん私の好きなガイ様)

エージェントS
 剣士タイプのエージェントでも局地戦に飛んだ能力を見せる。汎用性とスピードに飛んでいる。メタルソードと呼ばれる剣を振るう…その威力はタイタンソードを凌ぐ。自爆装置搭載。
(シザースっぽいモチーフが…何故かナイトに…(汗))

エージェントT
 全身に銃器を仕込んだ、武装タイプエージェント。右腕にはガトリング砲…左腕はグレネードランチャー…背中のキャノン砲を展開させて砲撃もできる。他のより運動性は低いが弾幕を張り…敵を寄せ付けない。ダークトリガーと呼ばれる、エクストリガーと同等の能力を使え、黒狼と対等に戦える。
(モチーフはゾルダ…の割にはマグナギガを痩せさせて、ガンダムっぽくなっちゃった)

エージェントR
 全てのエージェントに乗りこなせる為の、バイクとなるサポート型エージェント。唯一の攻撃はロボット形態時のバルカン砲だが、乗り手のエージェントの腕によって…強力な攻撃を繰り出す、モンスターマシンとなる。時速400キロで走る。
(サイコローグが、モチーフ…かなり無理ある変形だけど…)



天奈(あまな)
 アグルストーンの中で、生命の浄化を行う存在。大昔にアグルストーンに自らの命を注ぎ込んだ後遺症で、自分自身の名前は忘れている。なんでも、人類が生まれる遥か前からいたと言われる種族で、容姿は人間だが…背中に翼を持つ者として人類から『神』の化身として崇められ、その為アグルストーンも『神の石』と呼ばれている。なお彼女の一族は平安時代に滅んでいるが、その最後の一人の魂を持つ生まれ変わりが、居ると言う。
(コメント:オリジナル翼人です、神奈様とは血は繋がってないけど同じ一族です)


 後書き

さて、今回は戦闘シーンは無かったけど、最近になってめっきり出る回数が減ってしまった秋子さんを久しぶりに出しました。
秋子「随分と待たせましたね〜」
 だって牙王やら何やらをいっぱい出していて…秋子さんの存在がすっかりわすれちゃったんだもん…ああ!
秋子「それで、今回は取り憑かれてしまいましたけど…」
 げ!今回は榊君が、超越変転体を克服する回にしたかったんですよ。それで…アグルストーンに封印された、天菜様に取り憑いてもらいました。
秋子「天菜様は確か、首領さんのオリジナルの翼人さんですよね」
 はい、と言う事でお空のかなたから、神奈様にもゲストに呼びました。
神奈「ほう、現代にもこんな殺風景な所があるのか…」
秋子「あらあら、遠い所からどうも」
神奈「余は緑茶で構わぬぞ、首領殿」
 あ、はいはい…(神奈様にお茶を出すY(ヤクト)兵)
神奈「それにしても、このスタジオはなんじゃ…借りにもお主は、世界を征服する団体の首領であろう…」
秋子「神奈ちゃん、現代の事をいろいろ知ってるのね〜」
神奈「伊達に何百年も空から現世を覗いてるわけではない、余もいろいろ現代の事を勉強していたのじゃ」
 ああ…それはいい事で…、でもこのスタジオも借り物なんですよぉ…予算が無くて。
神奈「はぁ、で?今回は天菜様のことを余に聞きたいと?」
 ええ、神奈様なら何か知っているかと思いまして…
神奈「知らん!」
 え!?だって同じ種族じゃ…
神奈「ご先祖の事等、教えて貰っていないのじゃ」
 ああそりゃそうだ…(AIRのサマー本編を思い出し)
 仕方が無い、私の設定では天奈様は…神奈様が生まれる以前から自分の力で生命を浄化する優しき心と、清き魂を持つまさに天使です。
神奈「うう、胸でも負けておる…」
 でも、天奈様は胸で神奈様より勝ってるだけではない、彼女には双子の姉妹がいたのです。それが、ミレニアムストーンに封印された子なのです…
神奈「なんと!それは…」
秋子「初耳ですね…」
 でもそれは追って話します、ミレニアムストーンの話は今度、後ですごい事になるので。
神奈「うう…気になるぞ」
 今ここで話すと後で面白みが無いじゃん!
 そう言う事で、久しぶりに長い後書きで嬉しいです、それでは!


楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル