炎の中、二本の剣が交わり、火花が散る。
ガキィィーーン!
 牙王の毒牙丸と、俺のジークキャリバーがその火花を散らした。剣技からしてみれば、互角か…だけど、それもエクストリガーが発動している1分15秒の間だ。
『どうした、その程度かよ…伝説の聖剣体と言うのは!?』
「ちぃ!?」
ジャリジャリ…
 ジークキャリバーが毒牙丸に押されている、『究極体』と『聖剣体』とじゃ…力の差がまだあるのか。
『力をまだ持て余してるようだな…黒狼、本当の力を見せてみろ!』
「が!」
 牙王の力に押し返され、俺は地面に膝をつきながら、押し返された。
 あと45秒ぐらいしかないか…
「力負けするのなら…技で勝負だ!」
 アグルストーンの力が十分使える今なら、可能なはずだ!
「そっちこそ、聖剣体を舐めるなよ!」
 俺は剣を顔の前で掲げると、牙王に向かって突進して行った。今までの因縁に決着をつけるべく、俺は牙王に剣を振り下ろした。


「がは!」
 紫のクウガとなった雄介が、地面を転がった。クウガの形態の中で最強の防御力を誇る紫の形態の鎧には三本の切り傷が付いている。
「はぁ、はぁ…」
 シンも体に無数の傷を付けていながら、状態を起こそうとする。
「く、うう…」
『大したガッツだな、お前…風祭 真とか言ったな…』
 幹部怪人、最凶と謳われた『鮫』の猛攻に、シンもクウガも苦戦を強いられている。
「俺達の技が、何一つ通用しない…」
『ふん、今のお前達にはこの『鮫肌』には掠り傷も付けられない…』
 牙王に苦戦したシンでもわかる、幹部怪人の体で、これほどの力があるとは信じられない。今まで戦ってきた幹部とは戦闘能力も防御力、何もかもが上回っている。
「傷が付けられないのなら、こいつはどうだ!?」
 シンは背中に背負い込まれている、LTGを引き抜くと鮫に照準を合わせる。
『ほう、LTGか…その威力…存分に受けてやろう』
「く!貫け!」
 シンは躊躇いも無く、その念動力ビームを鮫に向かって放った。
ズオォォォーーーーーーー!!
『ぬあぁぁ〜』
 鮫は、自分に向かって放たれた光の矢に対して、避けるそぶりを見せず…ヒレを広げて、その光の矢を迎え撃っていた。
『がぁぁーーーー!!』
 鮫の体にLTGのレーザーが命中しても足を踏ん張り続け、その威力に後退する…
「正面からビームにぶつかって行ってる…あいつ」
 剣を杖代わりに立ち上がる、クウガ…
『うぁぁぁぁーーーーーーー!!!!』
「何だと…正面で受け止めたのか…」
 ビームを受け止めそれを消滅させた鮫、消滅じゃない…体内に吸収したと言ったほうがいい。
『いい威力だ…だが、俺の『鮫肌』にはいい餌でしかない』
「何……ならば!」
「今度こそ!」
 クウガも立ち上がり、赤いクウガとなって…鮫に向かって走る。シンもスパインカッターを振り上げて鮫に走る…そんな二人を鮫はにぃっと不気味な笑みを浮かべると…
『威勢もいい…流石は、王を殺せる力を持つ者…『仮面ライダー』だ…』
 鮫の『鮫肌』が居様な発光現象を見せ…その発光は喉を通って、口に集まっていくようにも見える。
『食らいな……がぁ!』
 鮫はその巨大な口をがぱっと開けると、喉の奥に溜まったエネルギーを一気に二人に向かって吐き出した。


仮面ライダー・黒狼
第5章〜王達の戦い〜『獣王爆撃』



「は!?避けろ!」
「え、うわ!!」
 シンはとっさにその発光を見極め、クウガを押し倒し、自分も避けると…丁度二人の間を一筋の光の筋が通り…それが通った地面は見事に蒸発し…溶けている。
『はぁ…』
「……なんて、奴だ…」
 奴の口から放たれた光線を見切ったシンなら解る、あれは念動力のビーム…LTGから放たれる物と同じ威力の物。それ以上に増幅した物…
 奴が念動力を使える物じゃない事はわかっている…だったら、今のビームは…
『俺の『鮫肌』は受けた攻撃の威力を全て喉に増幅して、増幅されたエネルギーを口から打ち返す…お前の場合、念動力もそのまま返しちまったがな』
「だとしたら…今までで、一番厄介な幹部怪人かもな…」
「間接攻撃を跳ね返すなら…、格闘戦で!」
 クウガがそう言い、立ち上がって…足に熱気を発生させ、鮫に向かって、一気に駆ける。「ばか!よせ!!」
「はぁー!マイティキック、どりゃぁぁーーー!!」
 一回転し、その回転した反動を利用して、鮫の体に向かって必殺のキックを食らわせた。
『ぬぅ!』
 鮫はまたも、そのキックを避けようとはせず…わざとキックを体に受けた。
「てい!」
 クウガはキックを食らわせると、回転をして鮫からから離れた。鮫の腹には封印の印が現われる…
『ぐぅぅ…』
「どうだ!?え…」
 回転で強化されたキックを受けた鮫の体の封印の紋章は…鮫の『鮫肌』に吸収されていき…
『大したキックだ…古代の戦士の性能も捨てた物じゃないな…カァ…』
 クウガの目の前で、鮫は口を開き増幅されたエネルギーを吐き出した。
カァァーーー!!
 とっさに青いクウガに変身しその光線を避けるが、その時点でクウガは変身するエネルギーを消費して、雄介の姿に戻ってしまった。
「ち!奴の装甲は、攻撃のエネルギーをそのまま増幅して打ち返す!間接攻撃も直接攻撃も、攻撃と名のつく物は…全て、増幅してエネルギー砲に変えて打ち返す能力がある…」
『なかなか察しが良いな…風祭 真…サードアイの能力、『心眼』か…気に入ったぞ』
「気に入られるつもりは無いんだがな…」
 シンは呆れながらも、今までとは違う鮫の性能を見切れば見切るほど…不利を肌で感じ取っていた。
「武者震いとは…俺らしくも無い…」
『だが、弾切れ寸前の風祭 真や、変身エネルギーを使い果たした戦士クウガでは歯ごたえが無いし…俺もここで時間は食えない理由がある、今日のところは見逃してやろう…』
ズガ!
「う!?」
 雄介は背後から奇襲攻撃を食らい、その場に倒れこんだ…
「五代!…うが!」
ズドム!
 雄介同様にシン背中に強い衝撃が伝わって…人間体に戻りながら、倒れこんだ。『心眼』を全て鮫に注いでいた為か、後ろからの攻撃に気づかなかった…
 倒れこみながら、後ろからの攻撃…そして雄介を襲った攻撃を見切る…鮫にこのような芸当は無理…だとしたら、後ろからの攻撃を仕掛けてきたのは…
「別の…も…」
『風祭 真、特にお前は気に入った…今度は個人的に、お前と戦ってみたくなったぞ、だが二兎を追う者一兎も得ず…今は、下の兎を食するとしよう…』
 真の耳に、最後に鮫の捨て台詞と…地面を駆ける獣の足音と…鳥の羽ばたく羽音が聞こえた気がしたが、真の意識は遠のいて行った。


同時刻・地下では…

「牙王!」
『ぬあぁ!!』
 俺が縦に下ろしたジークキャリバーが牙王の体を掠め、牙王はその隙を突いて俺に毒牙丸を斬り付けた。
ザシュゥゥ!!
 俺の体に牙王の毒牙丸が突き刺さる…
「が……」
『ふん、聖剣体と言うのも、究極体である俺様には無力だったなぁ、黒狼…残念だぜ』
 剣とシールドを落とし、俺は突き刺さった毒牙丸を両手で握り…高笑いをする牙王似顔を近づける。
「……果たして、そうかな?」
『何?』
 毒牙丸に突き刺された俺の体は幻のように消え…一瞬で牙王の背後に回り背中を切りつけた。
ザァン!
『な、何だとぉ!?』
 俺は牙王の前に2体、3体と増え…牙王に対し、何体もの俺は剣を振り下ろす…
「ウルフシャドー…俺の分身を作る技、本物を見分けることは皆無…なぜなら、これは幻であり…本物なのだから…」
 アグルストーンの力、その1…それがこの技…『ウルフシャドー』数体に分身して敵を切り裂く…
『ち!!黒狼、味なマネ、してくれるじゃねぇか!!フリージングミスト!!』
「く!!」
 分身した俺の体は、牙王の必殺技の前に消えたが、牙王が消した俺は全て幻だった。
『く、黒狼!てめぇから隠れるのか?おもしれぇ…だが、それで隠れたつもりか?』
「ちぃ!!」
 幻を全て消した牙王は後ろに居た俺を斬り付ける。だがそれも、俺が作り出した幻影…俺は後ろではなく牙王のすぐ前にいた。
「後ろを気にしすぎたな…」
 ジークキャリバーの刃に気を集め、赤い熱気を放出させる…それを爆発する気へと変え。一気に袈裟に、振り下ろす。
「爆発の剣!」
ズガァァーーーーン!!
 牙王は切り付けられた部分から爆発して、後ろによろめいた。
『ぬがぁ!』
 俺達の戦いを、ルガーに隠れて見ていた優は…
「すごい…牙王と互角に…いや、押している…」
 とっくに1分15秒は過ぎている…前は1分維持して、体に負担がかかった…なのに、今も『聖剣体』を維持できるのは、やはり、『彼女』のお陰なのか。
『く…(風祭と前に戦った時の傷がまだ回復してないのか、それにあのガキともやりあって…本調子が出ねぇ…黒狼…究極体でない奴如きに…)』
 牙王が、腹を押さえてる…優と戦った時の傷か、それとも…今俺がやった時の傷か…
「牙王…怪我を…」
『け、何遠慮してやがる…勇者気取りか…黒狼、本気で来いよ』
 牙王の体から瘴気が、放たれている。最終極技を使う気か!?しかも全開で放ったら、ここらへん一体は消し飛ぶぞ。
「解った…これで終わりにしてやる」
 だが、いつかはこの決着を着けなければならない運命…幹部怪人『蜘蛛』お前の蜘蛛の巣を破ってやろう、この剣で!
「優!念動力で防御壁は張れるか!?」
「え!?消耗してますけど、何とか…何をする気なの?」
「ルガーを、使うから…お前を守る盾が無くなる…」
 風祭の息子なら、何とかできると俺は信じている…
「もし耐えられなかったら、この盾を使え…」
 優の前にセーラから受け取った盾を渡す…優はその重い盾を両手で支える。
「お前に傷がついたら…風祭に申し訳ないからな…」
「ええ…だけど僕にも身を守る術はあるから…」
「上等…行くぜルガー!」
 “トランスフォーム!”
 ルガーは、これまでの変形とは違い、発生と共に…巨大な機械の狼へと変形する。頭には、一角獣の角のような一本のラッシュダガー。バイクのルガーではない、巨大な狼のモンスターとなる。
 “トランスフォーム完了 『聖馬体』ハリケーンルガー推参!”
 機械的な言葉ではなく、意思の通ったような発生でルガーは聖馬体に変形した。
「翼翔変形!」
 ハリケーンルガーの背中に飛び乗ると、ルガーは足で走り…さらに体を変形させる、頭をかがめて胸から太い二本のタイヤを出してそれを体の横にスライドさせ水平にする。そのタイヤがホバー機構隣、ルガーは空を飛翔する。
 月が出てないのが残念だが、贅沢は言っていられない…この技で決める。
『はぁぁーー!』
 牙王が、瘴気を体の一点に溜め込もうとしている。俺はルガーの背の上で剣を抜き放ち牙王の直上に来る。
「円月殺法…はぁぁ…」
 ジークキャリバーをぐるりと月の輪を描くように回すと、剣の刃から放たれたエネルギー『月の輪』がルガーの下に出来る。
「ここで、お前との因縁を断つ!」
『全開で行くぜ、最終極技…』
 ルガーの背から飛び上がり空中で一回転をすると、完成した月の輪に向かってキックを放った。
『ポイズンブラスト!』
「斬!キィィーック!」
 牙王が下から俺に向かって飛び上がり、瘴気の塊と化した牙王と全てを斬る裂くキックがぶつかろうとした瞬間。

ズドム!!
バコン!!

 牙王と俺は何者かの突進を同時に受け、互いの必殺技の軌道がそれ…俺のキックは地面を絶ち斬り…牙王は行き場を失った瘴気をもろに体に浴びた。
『ぐ、あぁぁーー!』
「牙王、何!?」
 俺は、牙王との決着に、乱入して来た奴の方を睨みつける。そこには見慣れぬ…髪の長い青年と、百獣の王…ライオンの姿をした怪人と…巨大な大鷹を思わせる怪人を引き連れ、そこに居た。多分今の一撃は、この二人の怪人の内どれかだろう…
「何者だ!?俺と牙王の決着に割り込みやがって!」
 そいつに爪叫ぶと、奴はにたりと不気味な笑みを浮かべて…
「それは失礼…、王同士の戦いに水を差したようだな…」
「王同士の戦い…?何の事だ!?」
「何と言うことだ、それをしてる事に気づかずに戦っていたのか!?」
 青年は呆れたのか人を馬鹿にしているのか、よく解らない態度でそう言った。
『く…鮫ぇ…貴様等ぁ!?』
 鮫!? ニューヨークに居た時に噂になっていた、ネメシス最凶の実力を持つ幹部怪人…確か、その危険性から世紀末王に凍結されていたって言う…
「情けない姿だなぁ、蜘蛛…」
『てめぇ、何しにきやがった…』
「俺もそろそろ、『王同士の戦い』に参戦しようか思ってきただけさ…」
 いや、鮫は失敗した行き場を失った瘴気で牙王が自滅事を知っていてそれであえて…叩き落したんだ。
 こうなる事を予測して、牙王を潰そうと…
「なあ、世紀末王の言いなりになるなよ…もう潮時だぜネメシスも…」
『貴様、世紀末王の体が手に入るまでは、まだ戦いは始まらないと……』
「……俺は物忘れをしやすい、そして気が短いんだよ…のん気に待ってたら獲物が逃げる」
 しれっとした表情で牙王にそう言い放つ、こいつ…牙王より達が悪い性格をしてやがる。
「獲物は順序良く狩らなくてはな…」
 鮫は吐き捨て、自分の体を…海の食物連鎖の頂点に立つ魚の姿へと変化させた。
『王との戦いは、俺も『王』になる必要があるな…獅子!大鷹!』
 鮫は隣に並ぶ二体の怪人に合図をする…あの二体、鮫専用の量産型怪人か…何をしようと言うのだ?
『トリニティ…』
ブゥゥーン
 鮫の発声と共に体が急に発光し始め、獅子が鮫の前に…鮫の後ろに大鷹が並び一列となると、その2体が鮫の体に吸い込まれるかのように入り込んで行った。2体の怪人を取り込んだ鮫の体は変形して行った。
「まさか、キメラ化!?」
 今までのキメラ化は、幹部怪人が他の幹部の遺伝子を取り込むことで、その能力を得て…3つ以上の力を得た幹部怪人は『王』となる。
 だが、こいつは幹部怪人でもない…2体と合体しただけで…『王』となろうと言うのか!?
『これが俺の能力の一つ…『三身一体』すなわち、トリニティ…俺は元々王として最初から作られた…この二体は、俺自身…俺の体…分離・合体可能な…まさしく最凶の王…獣の陸・海・空を制する王者が一つとなり、覚醒するは最強の獣の王者…』
 金色の鬣を持ち、右の方アーマーは獅子の顔が、左には大鷹の顔が夫々あり…背中に鳥の翼を収納して、二本の刀となる。強靭な筋肉を身に纏った、仮面ライダーの姿を持った『王』の姿…
『獣王…覚醒…』
 この殺気、威圧感、存在感、全てが始めてあった頃の牙王より凌駕してやがる、これが幹部怪人最凶の力。
『それが、お前の王の姿か…け…けけけ…ふ・ざ・け・ん・なぁぁぁーーーーーーー!!!』
 逆上して、切れた牙王が鮫に向かって毒牙丸で斬りかかろうとする。
『王の戦いは少数でやりたいんでな……お前は邪魔だ、消えろ…蜘蛛』
 獣王は体制を低くして、前屈みになる……、まさか最終極技!?
『消し飛べ…』
『な、何!?』
「ルガー!」
 俺は、空に滞空していたルガーを呼び…ルガーの背に跨ると、ルガーをバイクモードへと変形させる。
「疾走変形!」
 獣王は、よろけながらも、剣を振り上げる牙王に向かって必殺技を繰り出した。
『奥義・トリニティベノン!はぁぁーー!』
 獣王の体から、3つの獣の獅子・鷹・鮫のを牙王に向かって放った。獅子は地面を駆け…鷹は空を飛び…鮫は、仕留める為…その牙で獲物を狩る。
 三位一体の獣の奥義…トリニティベノン!あれを食らえば、たとえ牙王でも…
「飛ばせ、ルガー!」
バイクモードのルガーの頭部にある、長い一本角を展開させて…前に突き出されて、その角に気を集中させて、疾走する。ルガーは一本の、巨大なるの剣となった。
「ソードブレイカー!!」
 牙王に獣王のトリニティベノンが命中する直前、ルガーのソードブレイカーが交差した。
ズドォォォーーーーーーン!!!!
 二つの必殺技が交差して、その強力な衝撃で俺は通常形態へと戻り、ルガーも子犬の姿となって吹っ飛ばされた。
 ルガーが壁に激突する直前に、俺はルガーをキャッチして…地面を転がった。
「ぐぅぅ!」
 俺は爆風と爆煙の中に居るであろう獣王と牙王の方に目を向けた。あれだけの必殺技のぶつかり合いで、獣王が無事であるはずが…。
『く、黒狼の技か…聖剣体、幹部怪人の体には付け焼刃程度の実力か……』
 獣王は煙の中から無傷の状態で、分離もせずに現われた…聖剣体のルガーを使った必殺技でも奴に傷も一つ負わせられないのか…これが、幹部怪人最凶の王の実力。
『それより牙王、逃げたか…それとも爆風で消し飛んだか…まあいい、どちらにせよ奴は遅かれ早かれ…奴は『王』から脱落するんだったな』
 牙王はその場からかき消されたように居なくなっていた……
 だが獣王の獲物はあくまで、牙王らしい…俺が必殺技を横からやっても標的を変えずに狙った獲物から順序良く狙う。それが獣王か…
 だが、今牙王と言う標的が消えた今…標的を、誰かに変える可能性も否定できない。
「う!」
 俺はまた、通常形態から人間の体へと戻る。必殺技の衝撃だけで…ここまで体に衝撃が加えられるとは…獣王…聖剣体に無制限でなれる俺でも、奴と台頭に戦えるのか…
『その状態じゃ、戦えないだろう……戦えない相手を殺める気は無い。俺と戦う時は『邪王』の姿になれ、少しはマシに戦えるはずだ…』
「何……」
『今日はいい運動になった、上の二人にも感謝してるぞ……特に、風祭 真とか言う奴にはな…』
 獣王はそう言い残し、踵を返して去って行った。上の二人…って、風祭に五代さん!?
「お前、二人に何を!?」
『いや軽い運動だ……』
 獣王は分離しながら、元の人間の姿へと戻っていき……未だ燃え盛る、炎の中へと獅子と大鷹を引き連れて、去っていった。
「だめだ…もう、変身するだけのエネルギーが残っていない……」
 それに奴の強さには身震いしてしまう。通常形態で戦っても、幹部怪人『鮫』の姿だけでやられてしまいそうだ。
「大丈夫ですか!?」
 後ろから盾を引きずりながら…、優が俺の方に走り寄ってきた。
「ああ、何とかな…凄い展開になったが、ここの生産ラインもストップした…」
「牙王は……」
「解らない、あいつは…逃げたのか、消滅したのか…」
 牙王、あの時はとっさに助けてしまったが……あいつは逃げ延びたのかもな。
「何故あそこで、助けたんですか?」
「…園児らしい口ぶりじゃないな……そこん所が風祭に似たか」
「すいません……」
「いや言いすぎた、…俺も、どうして牙王を助けたのか解らない…牙王は俺が決着を着けなければならない相手だったからな……」
 牙王は許せない……だが、あいつが俺以外の奴に倒されるのなんてあってはならない…あいつとの決着は俺が着ける。そうでなくては、奴とキメラ化した幹部怪人達や俺の体の中にある、零の蛇の能力や…蝙蝠に手向ける事はできない。
「上の風祭達が心配だ、それにここもすぐに爆発するだろう…帰るぞ!」
「はい!ルガー、行こう」
「なんだ、お前…ルガーと話せるのか?」
「テレパシーで、色々話ましたから」
 全く出来た子供だよと俺は足すと、ルガーをバイクモードにして優を後ろに乗せた。
「揺れるが、辛抱しろよ…あ、忘れ物」
 信一さんの、木刀を忘れないようにしよう…聖剣体になる為に必要だったからな。ルガーに乗ると段々と天井が崩れていくのに気づき、ルガーに飛び乗ると、急発進させた。

 地下から地上に出ると、丁度俺達の後ろが崩れた。……あと1秒遅かったら全員生き埋めとなっていたな…
「あ、パパ!」
「五代さん、風祭…」
 そこには、五代さんと風祭が、倒れこんで気絶していた。
「しっかりしろ、二人とも!」
「う、榊君…」
「優…お前…」
 鮫にやられたんだろうな、…二人を相手に鮫は…いい運動だといった。その気になればこの二人を幹部怪人の姿のまま殺せたはず…一体…
「優、大丈夫か?いつ…」
「パパだって、牙王と戦ったときの怪我が治りきってないのに…」
「お前一人に無理をさせて……」
「榊君…あの、鮫みたいな奴は?」
「圧倒的な力を見せつけ…去っていきました…、話は後だ…立てるか?二人とも…」
 五代さんは何とかといった表情で立ち上がり、風祭も…手負いながらも立ち上がる。
「今後、あいつが最強の敵となると思う、牙王に続く…新たな…」
 牙王は死んだのかも解らない…油断はならないが、どうしているのかも気になる…
「とも角、ここから離れよう」
 ここもいつ崩れ落ちるか解らない、早く脱出するのが先か…

 俺はよろける五代さんに肩を化してやると、風祭親子共々…最初にルガーで入ってきた壁の穴から何とか脱出する事に成功した。

「大丈夫か!?」
「うん、何とか…ね…」
「あれ?風祭は?」
 周りを見渡すと、風祭と…優が居ない。さっきまで一緒に居たのに…
「ああ、優と一緒に…何も言わずに行っちゃったよ」
「優を助けてやったんだ、礼ぐらい言ってから去れよな…」
 あいつにはまだ聞きたい事が、あったのに…
「まあ、いいじゃないか…」
 そう笑いながら、五代さんをTRCSのある場所に運んでやると、同時に後ろの施設が爆発した。
「!?」
「間一髪、って所だね」
「ああ……」
 全員、脱出して正解だったな…
「あ…おーい、榊君!」
 足を引きずって…向こうから、信一さんが近づいてきた。
「信一さん!大丈夫なんですか?」
「うん、何とかね…君は?」
 そう言えば、信一さんは五代さんとは初対面だったな。五代さんは信一さんにいつものように名刺を渡す。
「あ、俺、こういう物で…」
「ご丁寧に…僕は水瀬信一です…」
 信一さんは五代さんと軽い挨拶を終えると燃え盛る施設の方を見て…はぁっと溜息をついた。
「これで、僕の研究も…全部…燃えちゃったね…改造兵士のデータは、本部には無い…全てここにあった、バックアップも何も無い」
 ネメシスは、もう改造兵士を製造できなくなったと言う事になるな…。
「それで、良かったんですよ。もう改造兵士は…風祭と優しか居ないからな」
「彼に助けて貰った、安全な場所に逃がしてくれたから…彼には礼を言いたい」
「あいつは…」
 礼を言う前にどっかに行っちまうだろうけどな……
「でも、改造兵士は彼だけだから…きっと、組織に…」
「いや、もうネメシスに風祭は追えない…ネメシスは、もうすぐ終わると思いますから」
 ネメシスは他の支部を失い…こういう、関連組織や…重要拠点も失った後の『王』の出現、そして…獣王が言った『王の戦い』…もうネメシスの崩壊の序曲が…鳴り出しているように思えた。
「榊君、改造兵士のデータが消えて、僕の運命はもう…」
 信一さんは遠い目して、燃え盛る施設をじっと見ている…その目には、城南大学で、改造兵士の研究に関係した自分の同僚達の姿を思い浮かべたのだろう
「ええ…信一さんは運命に打ち勝ったんです」
「僕だけじゃないよ…榊君の力もあるよ…」
「信一さんが、秋子達と一緒にいたいという気持ちがあったからこそ…です」
 そう言うと、信一さんは俺のほうを向いた…その笑みは俺の父親だった水瀬信一の笑みだ…一点の曇りも無い、まっすぐな眼差しを持つ笑みだ。
「じゃあ、帰ろうか…家に」
「はい、秋子も待ってると思いますので…」
 一人の男は運命を変えた、家族と一緒に居たい気持ち…運命に消えた仲間達の気持ち…それが、彼に生きたい気力を与えてくれたに違いない。それが彼の運命を超えた。

 俺だけじゃないんだな…運命を乗り越えるのは…


 だが、その時…榊は気づいていなかった…体内のアグルストーンの暗黒面がまだ、消えていない事にまだ…




 
 ToBe Continue


設定資料集

幹部怪人サブミナル
 世紀末王の力で融合改造を果たした幹部怪人であるが、意思を持ち合わせていなく、一から『王』になる為に作られた、『鮫』の体の一部として作られた。単体でも幹部怪人の戦闘能力と性能をかね揃えた物で、鮫の指示で動く為…王での攻撃より、複数体での戦闘でその性能を遺憾なく発揮する。ただ、鮫同様に…その性能ゆえか世紀末王に危険視され、サブミナルも鮫同様に凍結されたのは言うまでも無い。

大鷹(オオタカ)
身長 190センチ
体重 56キロ
パンチ力 4t
使用武器 カッターウイング(羽がそのまま武器となる。分離して投げつける手裏剣にもなる)
必殺技 フェザービット(カッターウイングを無数に分離して遠隔操作で敵を全方位から切りつける)
鮫の幹部怪人サブミナル、大空を舞う大鷹を主体に改造した怪人で…両手の巨大な翼で大空を滑空する事ができる。獣王の背中部分になり、翼は剣へと変化する。
(ジェノサイダーで言う、エビルダイバーの役になる人)

獅子(シシ)
身長 200センチ
体重 95キロ
パンチ力 15t
使用武器 ライガーファング(口に生え2本の牙)
必殺技 地裂豪爪(地面を叩き割り、地割れを起こしその下に落とす)
鮫の幹部怪人サブミナル、地上を駆ける獅子を主体に改造した怪人で…その腕力は黒狼と同等。獣王の胴体になり鬣が頭部の後ろにつく。
(以前のアンケート結果・選考されたライオンです。皆様熱い投票ありがとうございます)


陸・海・空を支配する獣の王者
『獣王(ジュウオウ)』
主体:獅子+鮫+大鷹
能力 パンチ力30t キック力45t ジャンプ力100m 走力:100mを1秒
武器 裂戦丸(大鷹の翼が変形した、二刀流の刀。20t(一本の攻撃力))
   地裂拳(獅子の頭をした肩アーマーを拳に装着する、地面を削る。50t)
   空裂拳(大鷹の頭をした肩アーマーを拳に装着する、嘴で突貫用の武器になる。40t)
必殺技
 フェザービット(背中に大鷹の翼を展開させて無数の羽でオールレンジ攻撃。20t)
 地裂豪爪(地裂拳を装備して、地面を叩き割る技。40t)
 奥義・トリニティベノン(獣王の体から、3体の獣の気が放たれて敵に突貫させる。80t)
 最終極技・ジ・エンド・オブ・デストロイヤー(体を展開させて、空間をも破壊する強力な破壊力を持つ破壊光線を発射する。100t)
 幹部怪人『鮫』が、自分のサブミナルである、獅子と大鷹と合体(トリニティ)して変身した王の姿。元より『王』として作られた鮫は、能力の一つとして…合体・分離を持ち他の幹部怪人の遺伝子を食らう手間のかからない、自由な合体や分離が可能。それ故、世紀末王の命を奪いかねない為、長い間凍結されていた。長い鬣が特徴で、剣の鞘となっている大鷹の翼は展開して飛行できる。
(サンバルカンなんていわないで、せめてジェノサイダーって言ってください)


後書き

設定やってる時が一番楽しい私…
榊 「こら…」
と、言うわけで今回の章も分け分からんうちに新キャラ出して終わってしまった。天奈様でしょ、鮫でしょ、紅でしょ、うわーいっぱい居すぎる。
榊 「一体、お前はいつになったら話を纏める事ができるんだ」
もう出せるキャラは、もうだしたし…最終章に向けて動き出したい所だけど…次の回はまた短編…っぽくして、色々やってから最終章まで引っ張って生きたいと思います。
榊 「最初からそうしろよ…てか、黒狼第2部に入って、戦いはあっても敵を余り倒してないってのは……」
う、言ってはならぬ事を…、次は榊君の出番が無いからって…ひがんでるなぁ!?
榊 「何!?俺、次で無いのか?」
次は…主に牙王を主体とした話を作って行きたいと思いまして…
榊 「牙王のキャラで何かするのは…無理あるんじゃないのか?」
それについては大丈夫です…牙王をかっこよく…作りますので。
榊 「おい、これって俺の話じゃなかったのか?」

さーて、DFのプロローグも書いておこっと…
榊 「あ、こら待て!逃げんな!」


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