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 観奈美と別れて、数日が過ぎた日…俺は久しぶりに学校の中庭に来て見た。勿論制服でだ……久しぶりっていや久しいな…ここに来るのも。よくここで観奈美と弁当食ってたっけ……何だかとても懐かしいや。

 あの自分の気持ちを伝えるための手紙を送ったのに、俺は少しやるせない気持ちでいっぱいだった。

 

 黒狼になって、もう2週間は経つ……後1週間も無いのかもしれない…

 俺の命は、度重なる黒狼への変異で…もう限界に達していた。

 

 あの鎖を持った女……幹部怪人の蛇が言った言葉、完全体になれば俺は助かるのかも知れない……いや、完全体になったらそれこそ奴らの思う壺だ。だが、変異体のままでは…

 西川からは連絡と言う連絡は来ない……俺、どうすればいいんだ?

 

「お悩みのようね、陣内君」

 俺の後ろで声がして振り返って見ると、そこには……

 

仮面ライダー・黒狼
第6章前編『日中』

 

 俺の座っているベンチの後ろから、ぎゅむぅっと抱きしめられかなりビックリする。

「お久しぶり、大変だったようねっ♪陣内君」

「川澄っ!何でここに……ってここの先生だったな…」

 川澄 零、俺のクラスで生物の担当をしていた先生だと聞いた。一度だけ会ったからあいまいだが観奈美が誘惑しているって言ったが俺はどう言う事なのかわからない。

「あら、先生…でしょ。夏休み、生物の補習楽しみにしていたのよ…あなたが来るのを…」

「俺は補習所じゃなかったんだよ、あんた知らねえのか?俺が行方不明だったって事」

「あっ、そうだったわね…夏休みに入って間も無いのに緊急の職員会議が行われてね……すこしバカンスを楽しもうかと思ったのに」

「あんた補習をするんじゃなかったのか?」

 なんだ、この人…呆れて物が言えない。変な人だな……

「で、どこに行ってたのかしら……陣内君」

 川澄は悩ましげな表情で、俺に聞いてきた。正直詰まってしまう……俺が黒狼に変えられている事なんて、誰にも言えないよな…でも観奈美の目の前で変異しちまったし…

 観奈美はそれでもいいって言ったけど、やっぱ怖いのは変わりないよな。

 変異は夜間に敵を感知すると俺の意思に反して出てくる。止めようが無い…敵と判断した物は人でも殺す……まさに悪魔だ…

 変異体、それはもう一人の俺でもある……子供の頃に家族を殺して、何もかもが敵に見えて、闇の中でその刀を振るっていたあの時と……俺はニュージャージーに生息する巨大なる犬科の動物『ジャージーデビル』と言われた幻の狼が主体となって改造されている。量産型と同じで幹部とは違い人間の時の意思は無い……狼の本能に従い、獲物を敵を狩る。

 奴はそういう生物……森の秘境に入ったものを決して逃がさない、追いこみ追いこんでから噛み殺す…クラッシュファングで……。

 闇にいたころの俺、そのまんまじゃないか……俺は、悪魔の申し子なのか…

「川澄……先生…、俺…思ったんだけどよく自分が…悪魔の申し子なんじゃないかって…」

「……なんですって?」

「聞かなかった事にしてくれ……ただの独り言だよ」

 俺はそう言ってベンチを立とうとした。すると、川澄は俺を後ろから抱きしめた。

「そんなの、お母さんに失礼じゃないの?自分の腹を痛めて生まれた子が悪魔の申し子で生まれてこなければよかったって言うなんて……」

「そこまで言ってないだろ」

「言ってるのと同じよ……まるで、産んでくれてごめんって言ってるみたいじゃない?」

「………」

「まずは感謝しなきゃ、自分を産んでくれた母親に……」

 川澄の言葉も一理あった…俺は母上の顔を知らない、小さい時に死んだから、俺は覚えていない…父上は、勇猛な戦士だったと言っていた。俺はいつもそんな母の背を追っていたのかもしれないな……

「……」

 そうだよな、俺どうかしていたよな…ライダーに選ばれた者がこれじゃあ鬼塚の言う最強の悪魔の戦士になってしまう。

「川澄…俺…なんか大切な事を忘れていたような気がする」

「あれ?あたしなんか変な事でも言った?」

「いや、あんた変だけどやっぱ教師だよ………」

「何だか癪に障るけど…、まあそんな感じよ……それにあなたは強い子だからそんな事考えちゃだめよ」

 変な感じだが、やっぱ教師なんだなって実感できる、この人は…。

「でも、そんな事で考え込んでいる様子には見えなかったわよ……ふられたの?倉田観奈美ちゃんに……」

「んっ!!」

 図星……と言うべきか…いや、思いっきり図星だ。この人には俺の心を読めるのか?!

「表情を見れば、解るわよ……いままでそう言う男に何人も会ってきたもの」

「やってらんねえな…ふられたんじゃない、俺がふったんだ……」

 そして、俺は川澄に観奈美をふった時の事を色々話した。さすがに黒狼のことは伏せたが……この人なら何も迷わずに話せる。

「そう……でもそれがあなたの懸命な判断だったわ、好きだから不幸にしたくない、その気持ちあたしもあるもの……」

「川澄にもそういう事があるのか?」

「…あたし、身内はもういないの、あたしのせいでみんな死んだの、あいつもあたしのせいで……」

 川澄は俺の隣に座って、遠い目をした。恋人でもいたのか…川澄に…

 

 

 川澄が遠い目をしている理由は、先日の夜…先の戦闘で、ターゲット及び黒狼を逃がし…世紀末王への暴挙に対して、鬼塚に正式な処分が言い渡される事となった。

『鬼塚博士……我は主を見そこなったぞ…数々の失敗及び我への暴挙、貴様は我の信頼を裏切ったのだ』

「悪までも、私の研究を成功させるためにネメシスに魂を売ったまでの事…研究が完成しそうで逆に感謝したい気持ちですが……」

『だが、主が我の命を狙っているのも事実』

「研究の成果を試すには、他のザコどもでは試し我意がありませんでしょう……試すならもっと恐ろしい敵を前にし無いことには……」

「ガッデムッ!貴様っ!世紀末王様になんと言う無礼っ!」

 蝙蝠が羽で鬼塚の首を斬ろうとする……だが、鬼塚はその鋭い視線で蝙蝠を睨みつけ…

「作戦に失敗して、その傷がまだ治らないお前に言われる筋合いはないが……なあ蝙蝠」

「ぐっ!」

 言い知れぬ殺気に、蝙蝠もただ絶句するしかない。

『そこまで、鬼塚博士…ならばお主に最後のチャンスをやろう……』

「処刑されると思っていたが……」

 世紀末王の意外な言葉に、さすがに表情が強張る鬼塚……

『お主の言う研究を完成させて、今一度我の元へ来るがいい……相手となってやろう』

「何?気でも狂ったか…」

『ただし、我がアグルストーンは使わせん、変わりに『死神の間』にあるアグルストーンと対となる魂の赤い石『ミレニアムストーン』を使うが良い』

「ミレニアムストーン!?」

 それを聞いて後ろの、川澄は驚愕した。ミレニアムストーンと呼ばれる赤い石の置いてある『死神の間』は幹部でも立ち入り禁止区域に指定されている場所だ。

 その場所に入ると二度と出られないと言う噂が立ち、そこだけ封鎖されているのだ。

「面白い……ミレニアムストーンの力がどれ程の物か…試してやろうではないか、川澄…鎖を解け、これからそれを拝見に伺う」

「自殺行為よ鬼塚先生……それでも行くの?」

「お前の失敗は伏せてある…、文句はあるまい……さあ解け…」

「解ったわ、勝手にすれば……」

 川澄はそう言うと、鬼塚の腕を縛っていた鎖を解き…立ちあがらせた。

「それでは、失礼していただく」

 鬼塚は吐き捨てると、死神の間に通ずる廊下へと歩いて行った。

 それが行くのを見計らい、世紀末王は川澄を呼ぶ。

『蛇よ……鬼塚の事は気にするな、奴は使えたが危険分子でもあった……』

「はっ…世紀末王様……私への処分は」

『お主への処分は無い……変わりに、任務がある。黒狼の寿命が後数日と迫った…秒読みは開始された、次の黒狼の捕獲担当はお主に任命する。所詮は変異体…月の光の無い新月の今宵こそが、捕獲のチャンスだ』

 そうだ、榊が黒狼に変異できるのは……月の光のある時間。つまり月夜。変異体である黒狼は日中は変異できない。だが、ネメシス内では夜行性の怪人が主で日中で変身できる蛇でしか黒狼、榊を捕らえるのは不可能。そして、今日…新月の今はすべての光が失われる…月影の石が機能しなくなり変異不可能である。

 今がネメシスにとって最後のチャンスであり、榊にとって最大のピンチでもあるのだ。

「はっ、承知しました…」

『後、鬼塚が不信な行動をせんように……誰かが監視をして貰いたいのだが』

「その役目、是非自分にお任せください」

 世紀末王の間に、一人の少年が入ってきた。それは川澄のよく知る人物…いや教え子だった。

「戦闘員NO1270、西川 和と申します」

 西川、榊にルガーソーダーを渡した張本人でもあった。

『戦闘員が……あの鬼塚を監視するだと?』

「はっ…」

「西川君……あなた…」

「一戦闘員ですが…是非とも!」

『………よかろう、西川 和を鬼塚の監視役とする』

「はっ!」

 西川は世紀末王の声に、敬礼して元来た道を引き返して行った。

 川澄は歯を食いしばって、その後姿を追った。

『蛇よ……今度の失敗は許されない…お前も処分の対象となろう…』

「心配いりませんわ、世紀末王様……それより、あの戦闘員は誰の指揮下で……」

『戦闘員NO1270、西川 和は…蜘蛛の指揮下にある少なくともお前の軍属ではない』

 蜘蛛と聞いて、川澄はにいっとしながら西川の後を追っていった。

 追いつくと同時に、西川は持っていたライフルの銃口を川澄に向ける。

「あなた、陣内君と同じクラスにいたわね……」

「……だからなんだ、川澄先生…」

「蜘蛛の差し金?どう言うつもり?鬼塚の担当ならあたしのところの戦闘員に任せるけど…」

「俺にも個人の事情があります……蜘蛛様の差し金ではない…」

「ルガーソーダーを盗まれたんじゃなくて、渡したんじゃなくって?陣内君に……」

「ルガーソーダーは盗まれたんです……それに、こんなライフル持ってても、逆立ちしても鬼塚には敵いませんから…安心してください」

 開き直ったように、西川はライフルを下ろす。

「まあいいわ、でも変な事をしたら、殺す……解ってるわね」

「あんたにも、逆立ちしても敵わない……黒狼もな」

「陣内君と同じで、面白い子ね」

「あんたも変な先生だ、なんでネメシスに入った。少なくとも、あんたは他の幹部や鬼塚と違って……陣内と同じ感じがある…」

 西川は陣内 榊と川澄に似たような感情があると見た、だが川澄はにこりと笑って…

「だめよ、女の過去を聞くなんて」

 そう言うと川澄は笑いながら、向こうの方へと行ってしまった。

 

 そして、今現在学校の中庭にて

 

「………悪い、嫌な事思い出させちまったな…」

「うんん、いいのよ…過ぎた事だし、もう気にしてないわ。今が楽しければそれでいいのっ!」

「そっか、あんた前向きだな、俺と同じように……」

「あなたに言われたくないわ……」

 何だか、この人…俺と同じ感じがした。妙に変な部分が俺と同じだ。

 俺は何だか、吹っ切れたように立ち上がる。

「どうしたの?陣内君」

「……帰る、ここにいてもどうにもならねぇし」

「ふーん、じゃあ新しいバイク見せてっ!」

 何を言い出したのか、川澄は俺の新しいバイクを見たいといった。勿論、俺の新しいバイクはルガーソーダーだが……

「見せるわけにはいけないな……あれは俺の大切なもんだ、人には見せられないよ」

「そっ、でもちょっとだけ見せてよ、ねぇっ、陣内君お願い」

「んな事言っても、見せられねぇもんは見せられないっ!」

 言い放つと、川澄はむすっと膨らんで、手足をばたつかせて。

「いいじゃないっ!経るもんじゃないしっ!見せてよっ!」

 とだだをこね始める。まったくガキ見たいだ……どうしよう、いつもならここでルガーと呼べば子犬のルガーが出てきて、しゅぱっとバイクモードに変身するんだが…

 それだと思いっきり不信に思うのは本当に目に見えている。ここはバイクモードで待機してもらおう。バイク形態だけなら、ネメシスじゃないこの人にも見せられる。

「ったく解ったよ……ただし、触んなよ」

「やったーっ♪ありがとう陣内君っ!大好きっ♪」

 ほんと仕方ないな、たしか…あそこら辺に止めたんだっけ……

 俺は川澄を連れてルガーの止めてある場所へと向かった。

 

古井戸近く。

 まったく、ルガーも場所選べよな…ここって、子犬ルガーのよく来る古井戸だよな、よくここに小骨とか埋めてんだよな。

「ふーん、辺鄙な場所に止めといてあるのね…あなたのバイク」

「ほっとけ…」

 少なくとも俺のせいじゃない……

 すると、バイクルガーの車体がちらりと古井戸の脇に見つけた。

「(この井戸……捕獲した黒狼を閉じ込めるには最適な深さね)」

「どうした?川澄……」

「何でも無いわ」

「ほら、これが俺の新しいバイクだ……」

 俺はルガーを川澄の前に出してやる。ん?どうしたんだ?ルガーが脅えている……

「ふーん、市販の物とは違うタイプね…雑誌かなんかで見たの?それともオークション?」

 川澄がまじまじとルガーを見つめている……敵の気配、変異の兆候は見られない…だが、ルガーはこんなにも脅えきっている。

 まさか、ルガーは敵を察知しているのか……近くに敵がいるのか…

 俺は360度四方を見渡した、どこかで俺を見張っている奴がいやがるっ!

「それとも……どこかの組織が作ったバイクを盗んだ…」

「!!」

 俺はその言葉を聞いて、ルガーの方を向いた。

 川澄は、ルガーの車体を撫でながら……

「ルガーソーダー…黒狼専用の速度遍量バイク……人工知能搭載で、黒狼の脳波を受けて黒狼の言う事を忠実に聞くマシン……違う?黒狼…」

「…川澄…あんたまさか…」

ジャーーーッ

 振り向いた瞬間、俺の頬を長い鎖が横切った。

 鎖を発射した川澄は俺の方を向いて、くすくすと笑い出し…

「……そうよ、陣内君、いいえ黒狼っ。あたしはネメシスの幹部怪人『蛇』…世紀末王様の命によりあなたを捕獲するわ、悪く思わないでね」

 そう言うと、川澄は手の甲から伸ばした鎖を戻して俺に鞭の様に襲いかかった。

「かっ川澄っ!」

「ふふふっ」

 攻撃を繰り返している途中で、川澄は段々と爬虫類のような鱗が体に浮かび上がってきて、頭部は蛇を思わせるような頭部へと変形して…先日、観奈美と俺を襲った鎖使いの女へと変わった。

「連れて帰って、特別講習してあげるわ……脳改造っていうのをね…」

「ちっ!」

 俺はとっさに飛び退いて、両腕をクロスさせた。来い、黒狼っ!

「変異っ!!」

「無駄よ……」

 一瞬の左腕の痛みはあったが、俺の体は黒狼へと変異できなかった。

「どっどうして……」

「今日は月の出ない新月よ、変異体はその活動を一時的に停止する……何より、今は日中…あなたは知らなかったようね、日中は絶対に変異体は変異できないのよ」

「ちっ!」

 川澄の言葉通り、夜にしか黒狼の変異の兆候はなかった、日中では絶対に変異できないのかっ!?しかも今日は新月…と言う事は、今日は一日中変異できない。

 万事休すか……

「おとなしく掴まりなさいっ!ブレイキングチェーンッ!」

 川澄は、俺に向けて手の甲から鎖を放つ、蛇の如き神出鬼没な動きに俺はとっさに避ける。

「くっ!川澄っ!なんでネメシスの幹部怪人なんかにっ!さっきの言葉は偽りかよっ!」

「あの言葉は偽りじゃないわ、教師ですものね…これくらい言っておかなきゃ」

「だったら、なぜあんな事をっ!?」

「………あなたに何がわかる…」

「!?」

ジャッ!

「何っ!」

 俺の足元の地面から、地表を突き破り川澄の鎖が突き抜けて、俺の体を縛り付けた。

「ぐっ!!」

「捕獲完了…変な事考えないでよ…さっきのあたしは忘れて」

 蛇の口元がさっきの形相と違い笑みを浮かべる。その分、俺の首を鎖が絞めつけた。

「ぐはっ…首が…締まる…」

「常人ならその首は寸断されているはずだけど、さすがは黒狼ね……でも、人一人持って帰るのはあたしだけじゃ無理なのよね〜…誰か連れて来るから、それまでその古井戸で寝ててね……」

クイッ

 俺の体は鎖に持ち上げられ、そこにあった古井戸に向かって振り落とされた。

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 俺は井戸の底まで落っことされ、川澄の鎖は離れて行った。だが、俺の体を井戸の壁から出てきた無数の細い鎖によって縛り付けられた。

「しばらく底で寝ててね〜」

「川澄ぃぃぃぃっっ!!」

 俺は去って行く川澄に向かって懇親の叫び声を上げる。だが、上機嫌で去って行く川澄には届くはずがない。

「ちっ!……」

ガキッ!

 俺の体を取り巻いている鎖は、何とか外す事が出来た、俺は頭上を見上げる結構高い…ジャンプしても届くかどうかわからない。

「もう……だめかよ」

 

 一瞬、俺の頭に秋子姉の顔が浮かんだ。

「ちっ……秋子姉、そうだ!ルガーっ、いるかっ」

 もし、ルガーがあいつ等に掴まってなければ…ルガーはそこにいるはずだ。

 案の定、子犬形態になったルガーが井戸のてっぺんからひょこっと顔を出す。

「わんっ」

「ルガーっ、誰でもいい助けを呼んできてくれ、俺はここでこいつでロープ作っている」

 ルガーにさっき引き千切った鎖を上げて、合図を送った。

「わんっ!」

 さすがルガーだ、頼りになるパートナーだ。できるだけ早く戻ってきてくれ

 

 

 ルガーは、榊に頼まれた通り…助けを呼びに水瀬家へと戻っていた。

「あ、ルガー、榊は?」

 丁度その所に、秋子がやってきてルガーを持ち上げた。

「わんっ!わんっ!」

 ルガーは小さな手でぽんぽんと、秋子の手を叩く。

「ん?どうしたの?下に降りたいの」

 そう言うと、秋子はルガーを地面に置くと、ルガーは水瀬家とは反対方向に走り。わんわんと秋子を呼んだ。

「ルガー?」

 秋子はルガーの呼び声の方へと向かって行った。ルガーは秋子を誘導しながら榊のいる古井戸まで連れて行った。

「どうしたんだろう……榊…」

 秋子は、榊に何かあったのかとルガーの行動で察知して、ルガーの後を追っていった。

 

 ルガーの後を追って、秋子が辿り付いたのは…あの古井戸だった。

「古井戸……」

 秋子はルガーをそこで見失った、秋子もここがルガーの遊び場所と言うのは知っていた。

 ここら辺に何かがあると思い辺りを散策する。

「ルガー、ルガーちゃん」



秋…ね…」
「えっ!?誰……」

 誰かが、自分を呼んだような感じかして、秋子は周りを見渡すが誰もいなかった。

 それもそのはず、秋子を呼ぶ人物は、井戸の底にいたからだ。

 

「ルガーちゃ〜ん」

 秋子姉の声が聞こえた、たぶんルガーが秋子姉に助けを求めたんだろう。

 あいつ、脳波を受信したんだよな…一瞬秋子姉の顔が浮かんだからだ、多分。

「秋子姉っ!ここだっ!助けてくれっ!秋子姉っ!」

 俺は懇親の叫びで、秋子姉の名を呼んだ。早くしないとあいつ等が仲間引き連れて戻ってきちまう!

「秋子っ!!!」

 俺は最後の力で、秋子姉を呼んだ。

「榊?榊そこにいるの?榊っ!!」

「ああ、秋子姉…」

 秋子姉が井戸の入り口から顔を出す。

「どうしたのよ、何で榊がこんな所に?」

「……ルガーと遊んでいたら、落ちたんだ」

 何とか誤魔化して、俺は、下に全部を繋げておいた鎖を握る。

「秋子姉、今からここにある鎖をそっちに投げるからそれを適当な場所に縛り付けてくれっ!」

「解ったわ!」

 秋子姉は頷いた。俺は、鎖を持ち一気に上の秋子姉に向かって投げた。

 秋子姉は鎖の先端を受け取り、適当な場所にくくりつけた。

「繋いだわよっ!」

「サンキューっ!秋子姉、いっくぞーぉぉぉっ!」

 黒狼に変異できなくても、運動能力は以前より倍化している為、鎖を伝って一気に上り詰めた。

ガチガチッ

 鎖が俺が伝うと共に、金属部分が軋んで、今にも斬れそうだった。

「榊っ!鎖が切れちゃうっ!」

「だぁぁっ!」

バキッ!

「榊っ!」

 ついに鎖は切れてしまうが、俺は井戸の壁を思いっきり蹴って伸ばされた秋子姉の腕をしっかり掴んだ。

「くっ…榊……」

「秋子……姉……おりゃっ!」

 俺は最後の力で、一気にジャンプして井戸の外へと出た。

 その衝撃で秋子姉は倒れこんでしまう。

「秋子姉っ!大丈夫かっ…秋子姉っ!!」

 俺は、倒れている秋子姉の頭を抱え込んだ。秋子姉は気絶していたが次第にその瞳が開かれて行った。

「良かった……秋子姉、怪我はないか?」

「うん……私は大丈夫よ、榊は?」

「どっこも痛くねえ……立てるか…」

 俺は、秋子姉を起こしてやった。少し涙目でこっちを見つめる秋子姉が無償に可愛く見えた。

「ま…まだ……足が痺れるけど、大丈夫よ」

「そっか…そこに俺のバイクが止めてあるから…」

 バイクとはルガーの事だ、秋子姉に疑われないようにたまにルガーはバイク形態で車庫にいる時があるから大丈夫だろう。

「うん……ひゃっ」

 秋子姉が頷くのを確認すると、俺は秋子姉を抱え上げた。

「さっ榊!?」

 これをしたのは観奈美以来だな……何だか本当に秋子姉が可愛く見える…いかんいかん、仮にも秋子姉は俺の姉っ!秋子姉でさえそう思っているさ、でも血は繋がってないよな。

「重くない?」

「……いや、全然むしろ軽いくらいだ…」

 俺は、以前にも観奈美にそう聞かれて同じ答えを出したな…

 ったく、俺は秋子姉を観奈美と同じ風に見ているのか……

 

 違う、この感じは観奈美の時とは違う……なんだろう、この安らぎに似た感じは…

 

 ともかく、俺は秋子姉を抱えてバイク形態で待っているだろうルガーの元へと急いだ。

 案の定ルガーはバイクになって俺達を待っていた。ここまで来ればあいつ等もやってくる事はないだろう……

 秋子姉をルガーの後ろに乗せて、俺はエンジンをかけた。

「榊……あなたが行方不明になってから、榊はたまに変な事に巻き込まれてないのか心配…本当は違うんでしょ、榊」

 ………言い出せない自分が頭に来た。

 秋子姉の事だ、俺が何かあったって事はお見通しに違いない。だけど言えるわけない、観奈美の時みたいに悲しませたくない。

「今は……言えない、だけどいつか話すよ」

「私にも相談できない事なの……」

「すまねえ…今は、言えないんだ……本当にすまねえ」

 俺は秋子姉に謝ってから、ルガーを走らせ水瀬家へと向かった。

「でも、榊が何になっても……榊は私の傍にいてくれるわよね」

 ルガーを走らせる俺の腰を強く抱きしめ秋子姉は聞いた。俺は言葉には出さなかったが小さく頷いて答えた。

「……」

 終わらせなければ……終わらせなければ秋子姉がこんなに苦しむ事はない…

 悲しいよな、こんな体にされちまって、猛さん達も同じ思いだったんだろうか……

 だから、彼等は戦ったんだ。

 

 水瀬家の前でルガーを止めて、俺は秋子姉を下ろす。

「…榊、行くの?」

「行かなきゃいけない場所があるんだ……大丈夫だ、必ず帰ってくるよ」

「……嫌な予感がするの、榊必ず帰ってきてね」

「あったりまえだ!」

 そう言って、俺はルガーのエンジンを思いっきりかけた。

「じゃっ、いってきます!」

「いってらっしゃい…榊……」

 最後の榊と言った部分は少し涙声だった。俺は秋子姉に笑顔を見せると、ルガーを走らせた。もう俺には時間がない……

 だったら、決着をつけてやるっ!

 

ピーッ!

 ルガーの通信機が鳴った、西川からの連絡が来たらしい。

『陣内っ!オレだ!』

「西川かっ!これからネメシスをぶっ潰しに行く所だ!邪魔すんなよっ!」

『今日は新月だ、変異も出来ないのにどうやって……』

「例え変異できなくても、俺はもうあいつ等を許さねぇっ!」

『そうか……だったら、神の間へ行けっ!そこにあるアグルストーン…それを身に付ければお前は完全体になれるはずだっ!完全体になれば…お前の死の兆候は止まる!』

「アグルストーン…神の間か…」

『だが、気をつけろ……アグルストーンの近くには、鬼塚がいる!前にお前にやられた傷も感知して、何だか凄い形相で神の間に行きやがった!』

 鬼塚…黒狼の滅殺斬を受けても平気でいやがった奴だ。今度はどんな手を使ってくるかわかんねぇ…

『たぶん、魂の赤い石『ミレニアムストーン』に触れたからだと思う……』

「ミレニアムストーン?」

 

 俺はミレニアムストーンとアグルストーンの関係について、西川から通信で聞くことが出来た。

 そしてそれは……あの俺が消えた森林に到達した丁度の事だった。

 

 ToBe

Continue
 

登場人物紹介

 

西村 和

完全オリジナルの人物、榊のクラスメートで…父親がジグロ社の社員と言う事から、空魔(蝙蝠)にスカウトされバイト感覚でネメシスの戦闘員に配属された。入ったいいが次々と仲間が戦闘員より上のランクの量産型怪人に変えられるのに絶えきれなくなる。主に武器庫で働いているため、ルガーを榊に渡すのも容易だった。人見知りの無い性格で社交的。

戦闘員ナンバーは1270

 

データ集

 

怪人集03

 

蛇(へび)

 

主体 クサリヘビ

人間名 川澄 零

身長 172センチ

体重 82キロ

パンチ力 5700キロ

使用武器 ブレイキングチェーン

必殺技 サーペントチェーン(鎖を四方八方から動かし相手を斬る)

 

ネメシスの伍幹部怪人の内の一人、サハラ砂漠に生息するクサリヘビを主体に、榊の学校の生物の教師である川澄 零を改造した怪人。手の甲から最長40mの長さにもなる鎖を伸ばして絞め殺すと言う戦法を取っている。鎖を蛇のように操る能力を持っている。鎖の先端に刃をつけて相手を刺し殺す事もできる。

主な量産型怪人は爬虫類系の動物

 

後書きタイム

ゲスト:かおりん

 

段々、後書きのネタが無くなってきました……

香里「どう言う事よっ!ちゃんとやんなさいよっ!」

でも今日も長かったですし、今日のところは勘弁して…

香里「じゃあなんでゲスト選んだのよっ!」

今回の黒狼は、完全体への道筋をお伝えします。

 

次回後編は、ついに!ついに!榊VS鬼塚の決着がつく。

アグルストーンを手にした榊は、ついに完全体にっ!ついに変身っ!

生命の咆哮が、夜の闇に木霊する……

 

ってなアギト風に行ってみたんですが、どうでしょうか香里さん

香里「ていっ!」

ぐぁぁぁぁっぐぁー(ストリー○ファイター風)

香里「次は後書きも長くしてよね……」

まっまたボクられた……

 

つづく


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