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「ミレニアムストーン?」

 

 俺はミレニアムストーンとアグルストーンの関係について、西川から通信で聞くことが出来た。

 

そして、榊が走り出す4時間前。

 

 西川 和が、鬼塚の後を追って、『死神の間』へと急いだ。そこにはもう鬼塚の姿はなく扉の前には立ち入り禁止の看板が立てられていた。扉の下には、何重にも南京錠がかけられた跡と、釘で討ち付けられていた板が下に落ちていた。

「ここが、『死神の間』か…さすがに、誰も入れないようにしてあるだけある。この中に、魂の石『ミレニアムストーン』があるのか…」

 魂の赤い石と言われたアグルストーンと対をなす石と聞いたが、どれ程の力を持っているのかは未知数だ……だが、この緊迫感と威圧感、殺伐とした雰囲気は否定できない。中には一体どんな光景が広がっているのか、西川には想像もつかない。

「マジで入ったようだな、鬼塚の奴……」

 下に落ちている板や南京錠が、いい証拠だ。鬼塚はこの中にいる……この隔離された、降れてはならない場所に…

 

 『死神の間』その中では、鬼塚が冷や汗をかいて、立ちすくんでいた。

「なんだ……ここは」

 室内は真っ赤に染まっていて、まるで血のように赤く、そして不気味な光が立ち込めていた。そしてまるで、地獄の光景を目しているかのような光景だった。

「あれが、ミレニアムストーンか……」

 部屋の中心部にあるのは深く赤い光を発する宝石が、そこにあった。

「……なんだ、魂の石と言うだけある…すごく嫌な感じがする、だが…これはアグルストーンより期待が持てる、ふふふっこれは凄い」

 鬼塚は赤い光に照らされながら、不気味な笑いを浮かべる。

「さて、作業をしようではないか……」

 そして、ミレニアムストーンに触れようとした瞬間…鬼塚の手に凄まじい電撃が走る。

「ぐぁぁぁぁぁっ!」

 その衝撃にたまらず、鬼塚は変身した。

『くっ……今の力は…、一瞬引きこまれるような感覚、もしやこれはっ!?うっ!!』

 次の瞬間、鬼塚は仰け反り額を押さえる。それは数日前に榊に手負いにされた、第三の目だった。

『サードアイを傷つけられては、私の力が限界が近いという事か……ならばこのミレニアムストーンの力で…』

 そして、変身したまま鬼塚はミレニアムストーンを掴んだ。

バババッ!

 凄まじい電撃が、鬼塚を襲うが…鬼塚はその力を手から吸収し始めた。

『うぉぉぉぉーーーーーーっ!!』

 鬼塚の表皮は、緑から徐々に赤みを増していき、第三の目は徐々に回復して行った。

 だが、その腕の激痛は計り知れない物だろう、その力を腕から体中に回していく。

『凄い!もの凄いぞっ!凄まじい力が躯に溢れてくる!魂が体に循環していくっ!』

 鬼塚の見の毛のよだつ叫び声は、外の西川にも当然届いていた。

 

「なんだ……この叫び声、外で、外で何が起こってやがるんだ!」

 あまりにも身に響くその叫びで、西川はライフルを握り締める。そして……何かを察知したかのように、その場を離れて…物陰に隠れた。

「(なんだ……部屋の前に立った時とは違う威圧感だ、それに…この殺気…間違いねぇ…鬼塚が出てくるっ!)」

ガチャッ!

 西川の予測通り、鬼塚はドアを開けて出てきた。その表情はまさに殺気だった不気味な笑みを浮かべていた。着ていた白衣はボロボロになっていて、中で何か凄まじい出来事があった事を物語っていた。

 鬼塚は白衣を脱ぎ捨てると、中に着ていたワイシャツもズボンも張り詰めた筋肉によって張り裂けそうになっていた。

「(なっ何だよ、あの姿…前の鬼塚とは全然違う!あの存在感と威圧感…まさに化け物だ)」

「すばらしい……素晴らしいぞ…あれに触れただけで、これだけの力が沸くとは…これならもうアグルストーンなど容易く、吸収できるだろう……」

 自分の姿を称えるかのように…鬼塚は両腕を見つめた。

 西川は、その只ならぬ殺気に、身を震わせてライフルを握り締めた。

「(やばい……ここで見つかれば、殺される…)」

 だが、次の瞬間、鬼塚は何かに気付きびくっと反応を示す。

「む…黒狼……黒狼が近づいているのか…ふふふ、手始めに黒狼を殺す……来るとしたらあそこだな…『神の間』…」

 鬼塚はそう言うと西川など眼中になく神の間へ向けて歩き出した。

「ふぅ、行ったか」

 西川は、殺気が遠ざかったのを確認すると物陰から出てきた。

「ミレニアムストーンの力は絶大のようだな……神の間に行くとか行ってたな、と言う事は、アグルストーンが、黒狼を完全体にする鍵なのかも…」

 西川はいても立ってもいられなくなり、走って自室のルガーの通信機へと足を急がせた。

「急がないと、陣内の奴…今の状態で神の間へ行ったら…返り討ちにあうっ!」

 

 今、榊と鬼塚の決着が今つこうとしていた。

 

仮面ライダー・黒狼
第6章後編『黒狼』

 

 そして、ルガーを走らせ、ネメシスに殴り込もうとしている俺に、今西川はその事を話していた。

「ミレニアムストーン?」

『ああ、元々アグルストーンとミレニアムストーンの二つの石は、超古代人が死者を清める為に用いた宝石だ、『オーパーツ』って奴か…』

「おーぱーつ?」

『凄い昔に作ったのに、その時の技術では到底不可能な物や装飾品だ……アグルストーンは人の命を清める為に、海底のある物質を固形化したのがそうだと言われている。海の青は生命の輝きとも言われている。それに対してミレニアムストーンは何の為に作られたのかは一切不明…なぜ赤いのかも、その素材も不明…まさにオーパーツだ』

「すげぇ難しそうだけど、鬼塚はそいつに触れて力をつけたって事か?」

『ああ……だが今の鬼塚は危険過ぎる、やはり…』

 西川の言葉がにわかに不安がよぎる感じがする。

「じゃあ、俺に尻尾巻いて逃げろってのか!?」

『そうは言ってない、ただ今行ったら無謀過ぎる!あの鬼塚はもう、幹部クラスを超越ししている、新月で変異も出来ないお前だと返り討ちにあうのが落ちだ!』

「だったら、返り討ちにあう前に、完全体になればいいんだよ」

『オレが言ったのは可能性の問題だ、アグルストーンで本当に完全体になれるかはオレにも解らない…』

「やって見なきゃ、わからねぇ……今やらなきゃ、俺は明日死ぬかもしれないんだ…今の俺に明日はねぇんだ!可能性が少しでもあるなら、試すのが男だっ!」

 俺はそう言い放ち、ルガーのスピードを上げた。

『……そうか、ならオレも止めない、いいかオレ達の秘密基地は知ってると思うが、月影市にあるその月影山に入る所にある森を抜けるんだ!後はルガーが連れてくれるはずだ』

「サンキューっ!行くぜルガーっ!」

『入ったら、あの場所で落ち合おうっ!』

 そう言い、西川は通信を切った。そして……ルガーは、月影市に向けて猛スピードで道を走りぬけた。

 

 その頃、ネメシス地下施設の世紀末王の間では、幹部怪人が集結していた。

「陣内君、あの井戸からどうやって出たのよっ!せっかく捕まえたのにぃ」

 モニターにはルガーを飛ばす榊の姿があり、川澄は驚きで表情が変わる。

「けけっ、これで蛇も幹部の降格だな」

「るさいわね…もーくやしーっ!」

 川澄の近くで蜘蛛がけけけっと笑う。川澄は怒りを露にして…

「どーせ、変異できないんですもの、また捕まえてやるわっ!」

『待て、蛇よ……』

 広い室内に、世紀末王の声が響き、蛇はドキッとする。

「世紀末王様……それはなぜです…」

『あ奴はご丁寧に我等の基地に向かっている……好都合だ、この基地に帰ってくるのだからな……』

「でも、なぜ今更黒狼は戻ってきたのでしょうか……敵陣に乗り込むようなものでは」

『黒狼が狙うとしたら……アグルストーン…』

「アグルストーンは、手術をしなくても黒狼を完全体する力がある事は知ってます、ですが凄まじい力の前に黒狼は消滅してしまうはず……」

『早急に兵を神の間に集結させろ…指揮は蛇に任せよう…だが、神の間に行ったとて所詮は無駄な事なのだが』

「…それはどう言う……」

『神の間には、鬼塚がいる……奴はミレニアムストーンの力を得たに違いない…』

 世紀末王も口にしたミレニアムストーン…それを聞き、そこにいた蜘蛛や蝙蝠、川澄は疑問の表情を浮かばせる。ただ、アグルストーンと対を成す赤い石とは聞いていたが…

 ともかく、今は基地内の神の間へ赴こうとしている榊を妨害するのが、先決だと思った川澄は室内無線を使い、自分の部下の戦闘員に連絡を入れた。

「あたし…そう、大尉の所にも情報は来ている様ね。言葉通り、黒狼が来るわ。総員は直ちに神の間に護衛を固めてちょうだい…あたしも行くから、それと神の間の前では、鬼塚に注意してね……」

 自分の部下に連絡を入れたら、川澄は世紀末王の間を出て行った。

 

 その頃、上手く基地内に入った俺はあの場所で西川に会っていた。

「お前と面と向かって話すのは、久しいな」

「そだな……ルガーも久しぶりに会うな」

「くぅ〜ん」

 今は、ルガーはバイクから子犬に変わっている所だ。管理していた西川に久しぶりにあって尻尾を振っている。

「神の間はここから真っ直ぐ行って突き当たりを右に曲るんだ…陣内、念の為にここからなんか武器を持って行ってくれ…」

「いや、いいよ。どうせ鬼塚のところに行ったら役に立たないんだ…それに、戦闘員どもだったら…ルガーで十分だ!」

 俺の呼びかけの後、子犬形態のルガーがバイク形態、ルガーソーダーへと変形する。

「そか…じゃ、生きて帰って来い…」

「ああっ!走れルガーっ!」

 俺は西川のおかげで、内部に進入できて、教えてもらった道をルガーで突っ走った。

 

 アグルストーンか、あれがもう最後の頼みになる…俺にはもう後が無い!

 廊下をルガーで走る俺の前に、戦闘員共がライフルを持って現れる。ざっと数は12人だな。

「来たっ!黒狼っ!」

「邪魔だ退きやがれっ!」

 俺はルガーをジャンプさせて、すれ違いざまに戦闘員共を一閃する。

「ぐはっ!」

「おらおらっ!どけってんだっ!」

 ルガーのラッシュダガーが、今の俺のできる最良の武器!だが、俺の前に出てくるのは幹部怪人でもなければ量産型怪人でもない。捨て駒である戦闘員…どう言う事だ?

 いや、違う……段々と近づいている事が解る。この血の痕……何かが通った跡だろう…

 更に進むと、もう戦闘員も来なくなり血路を作るように、足元には人と異形の怪人の屍が続いていた。きっとここでバリケードを作っていて、誰かに皆殺しにされたのだろう。

 鼻がつーんとする刺激臭だ、一体誰がこんな事をしたんだ……

「誰かって、薄々解ってたんだけどな…」

 屍を越えながら、俺は…少しはにかんだ。あいつはいる…ぞくぞくして来た、だけど逃げたくないのはなぜだろう…

 

 『神の間』前

「ここかよ……」

 屍の終着点に、この神の間があった。なんだ……この壁にある血を引きずったような跡は…ここで、手負いにされた奴が向こうの方に行ったのか、だけど、今は中にあるアグルストーンだ……

 重そうな鉄の扉の向こうに、鬼塚とアグルストーンがあるのか……

「ルガー、俺に力を貸してくれ!」

 ルガーにそう言うと、ルガーはアタッシュからこの前西川からもらった、拳銃とナイフを出した。

「ルガーは、子犬になって隠れてろ、必ず呼ぶからな」

 ルガーは子犬になると、エアダクトの方に逃げて行った。

 

 俺は目の前の扉の前に立つと、その扉は自動的に両側に開いて室内に入ることが出来た。

 室内は広い空間になっていて、青い光が室内を照らしていた。なんだろう、この心が洗われるような感覚は、とても気持ちがいい…あれか?アグルストーンって

 ベルト状の金属物の中心には、青い水晶玉が埋め込まれていた。

「あのベルトを着ければ、俺は生きられるんだな…」

『そうだよ、陣内君』

 頭に響くようなこのテレパシー…こいつは…

「鬼塚……」

『ふふふ、久しぶりだね…』

 俺とアグルストーンの向こう側には、赤く高質化した表皮をした、変身後の鬼塚が座っていた。この嫌な感じあいつから放たれる殺気…それに強さも倍化している。

 しかも、テレパシーが来るから俺への憎悪が痛いくらいに、伝わってくる。何だよ、この寒気……殺気……憎悪……全てが、俺に向けられている。動けない…

『アグルストーンを取りに来たのか…ふっ、それは私がアルティメット・コア用に作り上げた命を体に循環させる装置、『アグリューム』……これがあれば、私は更なる最強の躯をアルティメット・コアを手に入れられるのだ』

「へっ、だったらなぜ、そのアグリュームなんとかってのを今身に着けないんだ?目の前にあるのに…」

『ミレニアムストーンの力が、アグルストーンを拒絶して私を近づけさせないのだ。水と油、陰と陽は一つになるのには時間がかかる。私は今その体制を作っている最中なのだ…後4分で、アグリュームを身に着け、最強の力を得ることができるのだ』

「4分か……なら、俺が先に取ってもいいって事だな!!」

 俺は鬼塚より先に、アグリュームに手を伸ばそうとする。

『ふっ、甘い!はぁっ!』

ドガッ!

「がっ!!」

 奴の念動力が、俺を襲い吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。俺は何とか姿勢を保とうとするが、上から鬼塚が踏みつけてくる。背中に鋭い衝撃と重さを感じ、俺は地面に叩きつけられた。

「ぐぁっ!」

『4分は動けないわけではないのだ、新月で変異も出来ぬお前などただの一人の人間だ…4分はいらん、4秒で殺せる!死ねっ!陣内 榊!!ハイバイブネイル!』

「くっ!」

 俺は反転して、持っていた拳銃で鬼塚の額目掛けて撃った。

バシュッ!

『ぐああぉっ!』

 鬼塚が銃弾を浴び一瞬仰け反って、俺はその隙を見て立ちあがる。

『ちぃぃっ!』

 やっぱあの第三の目が弱点のようだな…

『ふざけおって!』

ザシュ!

「ぐぁぁぁぁっ!!」

 鬼塚の爪が、俺の背中を引き裂き…俺は衝撃で地面を滑った。

『いい加減に悪あがきは止めてもらおうか、私が完全な体になったら、なにせネメシスもお前ももうすぐ終わりだからな』

「ぐぅっ…」

 背中が痛ぇ…息もし辛い、野郎…好き勝手やりやがって…

『そして、私は永遠の命を手に入れるのだっ!』

「ふざけた事言ってんじゃねえ…」

『そこまで絶えた冥土の土産に貴様にはじわじわと死の恐怖を見せてやる……』

 そして、鬼塚が手を翳すと俺は自然と宙に浮かび上がった。その上動けない、見えない手に持ち上げられているような感覚だ。

『念動力の力も倍化している、握り潰すのには3分くらいで十分だろう…』

 鬼塚がそう言い、開いている手を握り締めると、俺は何かに握り潰されるように、骨が軋んだ。奴は俺を握り潰すつもりか!?

「ぐっあぁぁっ!」

ギリギリッ!

 全身の骨が軋んで、猛烈な痛みが体中を襲った。

べキッ!バキャ!

「うぐぉぉぉぉぉっ!」

『ふっ、いい声で鳴くな…そして、この骨が折れる音…聞き惚れるね…これで最後だ!』

 俺の体は宙を舞い、地面に思いっきり叩き付けられた。体中に衝撃が走る。

「くはっ…」

 右腕と右足……感覚が無い…これはもう折れたな、もう動けない、声も出ない…ここで本当にお終いかよ……ああ、意識も朦朧として来た。

 もう、疲れた……陣内家を壊滅させて、家を出てから…こうなる運命だったんだよな…

 

 このまま死ねば、楽なんだろうな……

 

 これで、おやっさんや、ライダーの所に行けるんだろうな……

 

 死んだ、姉上や父上の元にも行けるんだろうな……

 

『運命なんて、変えてやりなさい……アナタにはそれができるんだから…』

 姉上が死に際に俺に放った言葉が脳裏に蘇った。

『力なんて必要ないの…大切なのは、…人を想い、人を愛し、人の為に戦える強さよ!それが本当の強さと言う物よ!あなたはそれがある……』

 今ごろ忘れ去られたような声が、俺の頭に響くなんて……情けないな…

 本当、俺は情けねえよ……今こうして、情けなく死のうとしているのかっ!?

『…サカキに、仮面ライダーを名を受け継いでほしい…そして、人の自由と平和をその優しさで守ってくれ…』

 名前まで受け継いでおいて、俺…情けないな…

 

 そうだろ、……秋子姉…

 

 まだ早い、死ぬには早い!あの笑顔を守り通すまで!俺は死ねない!

 だって悲しすぎるじゃねえか!こんな運命で終わらせたら、運命を変えろと言われたのに、名前まで受け継いだのに、こんな所で終わらせたら!

 

 俺は、かすかに開く目で周りを見渡す。左足は辛うじて動くな……

「くっ…」

 俺は無理を承知で、徐々に立ちあがる。

『ん……、まだ立つか、陣内 榊…死に損ないめ、これが止めだ』

「来やがれ、偽者野郎……」

『食らえっ!』

 鬼塚は俺に向かって、念動力を放った。これを待っていたぜ……

 俺は最後の力を振り絞って、地面を動く左足で蹴って念動力に向かって飛んだ。

「だぁぁぁぁぁっ!!」

『ふっ、血迷ったか……これで終わりだ…』

 だが、俺は体をひねって、念動力を足で蹴った。その反動でアグリュームを置いている台に向かって飛ぶ。

『何っ!しまった!反動を利用したかっ!』

 俺は、アグリュームを左腕に引っ掛けると、向こうの壁に受身をして着地する。

「取ったぜ……アグルストーン…」

 生きている左腕で、アグリュームを高々と上げる、そして、俺は鬼塚が反撃してくる前にそれを腰に当てた。

ズゥゥゥーーンッ!!

「ぐぅっ!」

 俺の腹にアグリュームが食い込んで行くように、腹の中に入って行った。

 そして、腹の中に完全に埋め込まれると、それまで感じたことの無いような強烈な痛みが走った。

『生身の体に、アグリュームを埋めこんだだと……』

 それと、アグリュームを埋め込んだ部分は赤く腫れあがり、気絶しそうなくらいの激しい痛みが走った。

「……くっ…ぐぅ」

 なんだ?この感じ、頭の中に…声が聞こえる。人の声が無数に…まさか、これは…奴らに殺された1000人の人の命……命の声…

 その命の声はみんな無念を訴えかけていた。残された家族や恋人…そしてまだ生きたいと願う気持ち…それが、奴等に打ち砕かれて、このアグルストーンには込められている!

 そうか……だから、アグルストーンは青いのか……

 解った、その無念…悲しさ、みんな俺に預けてくれ……アグルストーンよ、俺に力をっ!

 

 そう願うと、さっきまでの発作は治まり……俺は立ちあがった。折れているはずの右腕と右足も治っていて、鬼塚にやられたはずの傷も完治していた。

『……アグルストーンを自分の物にしただと、ふざけるなっ!今のお前に、この私が倒せるものかっ!』

 襲いかかろうと来る鬼塚に俺は猛然と睨みつけた。

ズゥゥンッ!

『なんだ、この気迫に満ちた視線は……本当に陣内 榊、なのか?』

 鬼塚が気合負けしている所を見て、俺は右手を腰に当てた…

 今の俺ならできるはずだ……本当の変身を…

 

“いいか、精神を集中させ己の刀を引きぬけ……風の流れを感じ、そして斬れ!”

 

 父上からの受け売りなんだが…これならできる。腰に当てた右手に左手を合わせ、精神統一しながら刀を引きぬくっ!

「見せてやるよ、これが本当の変身だっ!」

 大声で叫ぶと、アグリュームが腹に浮かび上がって青い閃光を発する。

『ぐぅぅぅっ!ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!』

 閃光の中、俺は黒狼変異体へと一度姿を変えたが、段々と変異体は咆哮を上げながらその姿を変えて行った。

 高質化した筋肉を取り巻いていた剛毛は、黒い鋼の外骨格を形成し…犬型の頭部は、額の毛が耳と重なり三叉の鶏冠を形成し、目は昆虫の複眼となり、口と鼻は金属質のマスクと変形した。

 

 閃光がおさまって、俺は自分の腕を見てみた。変身しても、俺の意識はハッキリしている……変異体とは違う自分の姿、これが俺の変身体、俺の完全体、黒狼完全体なんだ…

『変わった……黒狼が…貴様は何者だ!?』

「……今なら言える、ある人から受け継いだ名前、仮面ライダーッ!黒!狼っ!」

『仮面ライダー!?黒狼だと……ふざけるなっ!私こそ、私こそ本物の仮面ライダーだっ悪魔の力を手に入れた、本当の仮面ライダーだっ!』

 鬼塚は、俺に飛びかかって来た。

「ルガァァァァッーーーーーーーーーっ!」

 俺はルガーを呼ぶと、バイク形態となったルガーが壁を突き破って入って来た。俺はルガーに飛び乗ると、襲い来る鬼塚に向かってジャンプし体当たりをする。

『グァァァッ!!』

「ぐぉぉぉっ!!」

ズガーーーーーン!!

 ルガーのラッシュダガーに鬼塚は串刺しにされ、俺はそのまま壁に鬼塚ごと突き破った。外壁の厚さなど関係無く、俺達は縺れ合いながら外の森に放り出された。

『ちっ、大した強さだ……黒狼、ならば私も本気を出そう…スパインカッター!』

 鬼塚はルガーのラッシュダガーから抜け出し、両腕のトゲカッターを俺に向けてくる。

 ルガーから降り、鬼塚と対峙する俺はルガーがさっき拾ったと思われる、俺の拳銃とナイフを持つ。

『そんな鈍らナイフで、私のスパインカッターを受けるのかっ!?笑わせるなっ!』

「やってみなきゃ、わかんないぜっ!!」

 俺はナイフを逆手持ちにして、鬼塚のスパインカッターと激しく交差した。

バジッ!

『ぐぅっ!』

「おりゃっ!!」

 ナイフは、鬼塚の腕のスパインカッターを抉る。

『なっ!!スパインカッターを斬っただと……』

「予想以上の切れ味だ…」

『こんなはずではっ!!食らえっ!』

 鬼塚は念動力を俺に向かって放つが、俺はそれを正面から受けようと身構える。

ズゥゥーーーーンッ!!

「ぐぅっ!」

『血迷ったか黒狼っ!これで貴様も死だっ!』

ヴゥンッ!!バチィッッ!!

 俺の周りを、光の幕が覆って念動力から俺を守った…

『なっなんだっ!?念動力が弾かれるだとっ!?奴も念動力を使えるのか?』

「違うぜ……これは、俺の陣内の能力だ」

『陣内の力だと……何、ちっ力が出ないだと、まさか…掻き消されてる』

「アンチテレキネシス……やっと俺の力が解った、敵の特殊能力を無効化にする能力だ…」

 俺が産まれ持った陣内家の者が持つ事のできる、特殊能力は自分以外の能力を打ち消す力だ、鬼塚の念動力を完全に打ち消してしまう。

『私の念動力を打ち消しただと…そんな筈はっ!私が、黒狼如きにっ!負けるはずは…ぐぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』

 鬼塚は最後の力を使い、念動力のフルに放出し壁を作り上げた。まさにそれは、念動結界を意味していた。

『これぞ念動結界…貴様の技など、全て防いでやろうっ!』

「黒狼ガン!行けっ!!」

 さっき鬼塚を撃った拳銃を構えて、鬼塚に向けて一気に連射する。

『ははははっ!さっき私を撃った銃か、そんな物でこの結界は敗れ…ガハッ!』

バシュッ!バシュッ!バシュ!

 黒狼ガンの弾丸が鬼塚の体に命中し、体内で爆発を起こした。

「黒狼ガンの弾丸、黒狼ナイフの刃には、俺の力で強化しているお前の結界なんて軽くぶった切れるぜ!!」

ザシュッ!!

 俺は黒狼ナイフで鬼塚の念動結界を引き裂き、中に入り反撃を開始する。

「はっ!」

『ぐっ!』

 鬼塚と俺の拳が、何度も火花を散らし交差する。戦局は俺のアンチテレキネシスで鬼塚に有利は無かった。だが、鬼塚の念動力は底を尽きずに…長期戦へとなって行った。

『息が上がっているぞ……黒狼…』

「お前もな……」

 悔しいが、奴が強くなっているのは本当だ……あいつさっき俺が傷も再生してやがるならば…あれがあいつの念動力の源なら、そこを叩くしかない。

『黒狼っ!この一撃で終わりにしてやる!覚悟しろ、超念動拳っ!』

 鬼塚は最後の決着を付ける気だ……拳から消しきれないほどの念動力が溢れてきやがる…ならば…一点に的を絞れ……精神をそこだけに集中させるんだ!

 俺は、左足に精神を集中して…狙いを鬼塚の額…第三の目に絞る。

「一点突破!黒狼スナイパァー!キィィィーーーック!!」

ザンッ!

 俺は宙高くジャンプして、鬼塚の額に向けてエネルギーを込めたキックを放った。

 

ズバーーーーーーーンッッ!!!

 鬼塚の拳が俺の太股を霞めるが…俺のキックは狙い通り鬼塚の第三の目の一点を貫いた。

バリーーーーン!!

『ぐぁぁぁぁぁぁっ!!!』

 第三の目は俺のキックにより潰され、そこから段々と元の緑色へと色が戻って行った。

「やったのか…」

『ううう……うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』

 鬼塚は一度、額を押さえて項垂れていたが、一転して猛スピードで俺に襲いかかってきた。まるで獣の形相で鬼塚は変身したまま、俺に襲いかかってきた。

 まさか、あの第三の目はリミッターだったのか…鬼塚の人格を保つための…

「ちっなんて厳禁な奴なんぐおっ!」

 鬼塚の爪が俺の腹に突き立てられるが、貫かずに俺は鬼塚の腕を押さえこんで、森林の方へと投げた。

「だったら遠慮はいらねえってこった!行くぜっ!」

カッ!シュー…

 マスクの上顎と下顎が開き放熱現象を起こす。俺は身構え鬼塚に向けて一気に飛びかかった。宙で横回転をして…鬼塚の腹目掛けてキックを放った。

「黒狼キィィーーーックッ!!!」

ズガーーーーーーン!!!

『ぐぉぉぉぉぉっ!!!』

 激しい衝撃の黒狼キックを腹に受けて、鬼塚はついに力尽き地面に倒れこんでしまった。倒れこむ寸前で人間の姿に戻った。

 俺は着地して、人間の姿へと戻り芝生に倒れこんでいる鬼塚の方を見下ろしてつけて…

「決着はつけたぜ…鬼塚……死にはしない、そこで寝てればお迎えは来るだろうよ…」

 人間ぶっ殺したら、後味悪いからな……

 俺は自分が開けた、基地の大穴を見つめる。ふぅ…これからだと増援が来て面倒だな…

 日が出てきたな……そろそろ帰るか、秋子姉も心配してる事だし…

 

 とにかく、俺はアグリュームの力で完全体、仮面ライダー黒狼になったんだ…死の兆候である変異も収まった…まずは万事オーケーって事か…

 ネメシス…世紀末王ドラゴノソード今度は必ずぶっ潰すぜ……人の自由と平和…そしてあの笑顔を俺は守る…手だしたら、全力でぶっ飛ばす!

 俺はそう心に誓いを立てて、ルガーに乗りこんでエンジンをかけ…暁が昇る早朝の森を帰るべき場所に向けて走り出した。

 俺の戦いは始まったばかりだ……

 

生命の咆哮が、夜の闇に木霊する……

 

  ToBe

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データ編

 

仮面ライダー黒狼

主体 黒狼変異体+アグリューム

身長 197cm

体重 95キロ

最大速力 100mを5秒

ジャンプ力 ひと跳び15m

パンチ力:3トン キック力:20トン

使用武器 黒狼ガン(拳銃)黒狼ナイフ

必殺技 黒狼キック(約30トンのエネルギーキック)

 

 榊がアグリュームを装着して、「変身!」と言う掛け声で変身する黒狼の完全体。アグルストーンに蓄積されたと1000人の命と榊の心が共鳴し合い、変異体の黒狼が進化…。榊の力、超能力を無効化するアンチテレキネシスはフィールド状に使えたり、ナイフや拳銃を強化することが可能。だが長時間、戦闘を続けると体温が急上昇して一気に120度に達する時もある為、マスク部分が開閉してそこから放熱現象をして一気に決着を付ける戦法を得意とする。また、マスクが開いている時と閉じている時とでは戦闘能力が違い、放熱現象時の黒狼キックは36トンにも達する。

 

 後書きでぃす!

 

ゲスト:陣内 榊君

 

榊「やったーっ!ばんざーいっ!」

本当やりましたね〜、今日と言う日が来るのがどれ程楽しみだったか……

榊「だよな…やっと変異体の死の兆候から解放されたぜ…」

良かったね〜…これで、君は完全体、仮面ライダー黒狼だ!!今日はそれについて、ゆっくりと語りましょう!

まずは、仮面ライダー黒狼の原点となったのは、クウガのアメイジングマイティーです。

榊「黒いもんな……だからか?」

それを見ていたら、無償に黒い狼が頭に思い浮かんでしまって…そして夜の道を歩いていたら、何となく…

榊「うーん…夜の道を一人で歩いていると、そんな事思いつくもんだな…」

それでは、必殺技集です。

 

 

01:黒狼ナイフ

 ルガーに収納されてあるナイフで敵を斬ったり突いたりする。武器を使用する敵に多用。

02:黒狼ガン

 ルガーに収納されてある銃を乱射する。

03:黒狼パンチ

 オーソドックスなパンチ技、変異体のウルフパンチより強力。

04:黒狼キック

 横回転から繰り出すキック技、殆どの敵の止めを指す時にこの技を使う。

05:黒狼スナイパーキック

 鬼塚の第三の眼を粉砕したときに使った技、正確に的を狙い黒狼キックを繰り出すのは結構難しい……その分威力もある。

 

 

仮面ライダー黒狼のチェックポイントは、ズバリ!口です!

榊「口?」

自分やってて気付かんかったのか?金属部分になった口ですが、それが上顎と下顎とが開閉するようになっていて、開く時に特有の放熱現象が見られます。

榊「それって、まさかあれをモチーフにしているな……」

はい、クロスボーンガンダムです!あれ好きなんすよ!

それとアギトの角のように、開閉するとパワーが上がるように放熱現象をすると、力が倍増するようになっています。それをかけ合わせているのです。

 

それと↑の必殺技集にない必殺技もこれからもバンバン出して行きますので、どうかご期待してください!

 

つづく!


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