「死神博士?」
「そう、『第参時極東内乱』直前の日本に進攻していた組織、ショッカーの大幹部だった男よ……」
「ショッカーって、最初に『悪魔の戦士』仮面ライダーを作った組織っすよね…そこの組織から回収されたんすよね、豪は…」
「ショッカーライダー0式…それが、正式名称よ……死神博士の元で製作された、10機の仮面ライダーの量産型、ショッカーライダーのカスタマイズ化…それが目的で作られたけど、豪は暴走して10体の内4体を破壊してしまった。当然ショッカーは豪を永久冷凍保存されてしまった。そして、ショッカーは当時のダブルライダーにより壊滅して戦後、豪は結成したてのネメシスに、そうあたしに回収されたのよ…」
「でもなんで、名前を『G0』…豪って名前をつけたんすか?」
「それは世紀末王様に聞かなければ解らないわ…豪にはまだ解らない機能があるから……はっきりしていているのは、豪はショッカーを自分を作った、死神博士を憎んでいる」
「なぜ……」
「生み出したからよ…『生命のない器』と言う名の自分を…」
 澄香はそう言うと、雪上トラックの窓の向こうの大地を見ていた。一面氷と雪で閉ざされた大陸の上に……巨大な塔が立っている。
 それは……ネメシス最大の大量生産怪人のプラントだ……

 豪は貨物室の冷凍保存された人を見ている……表情を変える事もなく…
「人間は……弱くても、その中に生命と言う物を持っている…ショッカーライダーにも、あいつにも死神博士にも生命はあった…だが、俺には生命は存在しない…けれど俺は存在している」


仮面ライダー黒狼 外伝
 仮面ライダーG0
特別編『死す者』


 氷の大陸を進む雪上トラック段々と、その大プラントの塔へと向かって行く。その中で、澄香は身を乗り出して…それを見上げ…
「知ってる?世界の各ネメシスの支部に、一人ずつ幹部怪人が配備されていることを…」
「この組織に入っている基本中の基本ですよ、隊長。世界に点々とするネメシスの各支部には、それぞれ一人ずつ担当の幹部怪人がいて、日本支部は日本古来からある、奇妙な力を考慮して、3人…そして総本部である、アメリカには世紀末王の護衛として2人ついています、ここもそうですよ……たしか、えっと…」
 雪上トラックを運転しながら、よく喋る戦闘員に…澄香はやれやれといいながら。
「『海魔』…それが、この割に合わない仕事をよこした張本人よ…それくらい知ってるわよ、だけど…その『海魔』…それにこのプラントには良くない噂が数々あるそうよ…」
「噂の、『南極支部の怪談』ですか?」
 その『南極支部の怪談』とは…次のとおりだ。まず…ここの担当幹部怪人でもある、海魔の存在だ、彼はネメシスが出来て間もない頃に、亡命して来た一人の科学者を世紀末王が融合改造で幹部怪人化した者である。その人間のデータは全て抹消されていて、ネメシスの情報網でも彼の詳細なデータは探り出せなかった。それで、幹部怪人になった後、海魔は自らこの南極支部の担当に志願した。配属されたまでは良かったが、おかしな事に…南極支部の職員や科学班達は、だれも…その幹部怪人『海魔』の姿を見たことは無いと言う。だが、頻繁に目撃されては消え…を繰り返している内に、彼は『亡霊』とも呼ばれた。
 そしてもう一つが、南極支部には『開かずの間』がある…ドアが壊れているだけか…はたまた別の理由か…そこが開く事は殆ど無い、いや近づく者もいない。ちなみに、『海魔』の目撃が頻繁に起こる場所は…この開かずの間付近だと言う…
「それに、私にはどうもあの塔が気になるのよ……」
「プラントですからね、それなりに施設はでっかくなきゃ」
「馬鹿ね、ここで製作されている多量生産怪人はイカの怪人よ、水の中で孵化するから、この海に繋がっているこの大きな川を利用した大きなプールで産まれるのよ、ちっとは勉強しなさい」
「ごめんなさい…だったら、なんであんなにデカイ塔がたってんですか?」
「うーん、私には……あれが『ロケット発射場』のように見えるんだけど……」
 澄香がそう思うのも無理は無いように、施設の巨大な塔は天空に向けて高々と向けられていた、まるで、あそこから巨大なミサイルが出される…そう感じて、仕方が無い。


 その頃、太平洋上…G0とアラストルの戦闘があった場所…

 一隻の高速船が、アラストルが海に落ちた地点まで、近づいていた。甲板には、一人の赤い髪の青年が何かを探している。
「…んっ!?」
 海上に、何かの背中が浮いているのを確認すると…それを海に飛び込んで引き上げる。
「…はぁ、はぁ、げはっげはっ!」
 それは、甲板で噎せて、飲んでいた海水を吐き出すと、だんだんと人間の姿へと戻って行った。人間体ともどったそれ大型の剣をもった華奢の青年となる。
「い…イフリートか…」
「よう、なんて様だ、アラストル……雷の魔人たるお前が落雷の直撃で伸びちまうなんてよ……」
 そのにやけた笑いを浮かべる、ガタイのいい赤髪の青年は人間体のアラストルの頭を撫でながら、からかう。それに腹を立てたのか、アラストルはそいつの手を払う。
バシッ
「おっ、荒れてるねぇ…」
「ちぃっ!このぉっ!」
 アラストルは、G0との戦いで折れた剣でイフリートに斬りかかるが、イフリートはフッと笑うと、その剣を受けとめる。
「おっと、待て…その折れた剣じゃ喧嘩にならないだろ……」
「っちぃ…」
「待ってろよ、さっき拾ってきた折れた剣だ…」
 イフリートは、海で漂っていたアラストルの剣の切っ先を折れた剣につけると、折れた部分に指を這わせた。指が這った部分が赤く輝いている…いや、熱で溶けて傷が修復されているのだ。
 そして、剣はイフリートの能力で完全に修復した。
「どうだ?完璧に直ったろ…」
「…この、余計な事を」
 アラストルは完全に直った剣を険しい表情で背中に戻し、甲板に立とうとする。
「あの機械人形め…この優秀な僕を馬鹿にして」
「ふっ、アラストルのお坊ちゃんはお怒りか…また雷が落ちるぞ…」
「五月蝿いっ!たた斬ってやろうか!?」
「喧嘩の相手ならいつでもなってやるけど、お前…体力回復に『サイトγ』に戻った方が良いぜ…それじゃあ、雷鳴波もだせねぇだろ」
 からかわれたように言われ、アラストルの怒りは爆発寸前だったが、イフリートの言う通り自分のエネルギーはもう、G0との戦いと海に流れ込んでもうないに等しい。これでは、『最終極技』も放つ事はできないだろう。
 アラストルはそう思うと、舌打ちをして甲板から出ようとした。
「まあ、俺達は“D”の怒りを買わないように任務を遂行するだけだがな…」
 Dと言う言葉を聞き、アラストルはびくっとする…だがきびすを返して、船の中に戻ろうと進むが、イフリートが来ない事に気付き…
「何処に行くつもりだ、イフリート」
 イフリートは船首まで歩いて、向こうの海…つまり南極の方向へと向いて…
「死神の奴は…俺らの断りなく勝手に刺客をあの『ショッカーの遺産』によこしたそうだな……」
「まあね……それが?」
「勝手な事されると、むしゃくしゃすんだよな…」
ズォォーーッ
 イフリートの体を灼熱の炎が包み込み…炎の中から一つ目の赤黒い魔人が姿を表した。
「ちょっとした、お仕置きに行くのさ…マグマドライブ」
「おっおいっ!」
ゴォォーーッ!
 イフリートは足から炎を出しながら、船から飛び降り…遥か向こうにある南極に向けてロケットのように直進飛行した。

 船から、取り残されたアラストルは水平線上に浮かぶ赤い光が見えなくなるまで見送るとやれやれと言った感じで…船の中へと戻って行った。


再び、北極では
 プラントについた俺達『海賊』のメンバーは雪上トラックから積荷を運び出し…入り口であるメインカタパルトの前で、職員が出てくるのを待っていた。
 基地の外周には、使われていない量産型怪人を入れる檻が大量に放置されていた。さっきから足元に妙な違和感を感じてならない……
「あー…寒い、やっぱり貧乏籤引かされたわ、こんな寒い中待たされてんのよ……」
「遅いっすねぇ…どうしたんだろう」
 澄香を始め、チームの人間はこの環境下で寒がっている……それが人間としては当たり前なのだが、俺は…
「あーあ、豪にストーブの機能がついていたらなぁ〜」
「おばかっ!」
べしっ
 ほんの冗談めいてチームの奴が言った事に、澄香は怒って頭にチョップを食らわす。
「あいでっ、姉御ぉ…酷いっすよ」
「あんたっ、今度…豪の前でその事を言うとはっ倒すわよっ」
「へっへぇ…」
 澄香は俺の前で、色々な表情をする……笑ったり、怒ったり、困ったり、泣いたり(よく、船のテレビにかじり付いて泣いている所を確認)人間の感情と言うものが…表情でよく解るようになったのは最近だ……人間と言うものが少し解った気がした。
「スミカ、俺は別に気にはしない…」
「豪…」
グィィーン
 すると、施設のゲートがゆっくりと開いて…その中から、ネメシスの士官らしき男が出てきた。
「太平洋からの長旅、お疲れ様です…『海賊』の皆様」
「待たせといて、言う事はそれだけ?とっとと、積荷を運んじゃってよ」
「それは申し訳ない、すぐに運ばせます」
 澄香に言われ、少々同様しながらその後ろから数名の職員が出てきて雪上トラックの積荷である、人の入ったカプセルを運び出した。
 海賊のクルー達も澄香に言われ、職員達を手伝っている。俺もブラックサイクロンを雪上トラックから下ろした。
 コンテナを運び出している後ろで、澄香と士官が話しをしている。
「コンテナの数からして、9人…予定では10人のはずですが…」
「ある手違いで、一人は取り逃がしたわ……」
「そうですか、でも5人以上いれば十分です…ご苦労様でした」
「ほんっと、あんたらの上司って割りに合わない仕事をよこしてくれるわね、で?報酬とかは出るんでしょうね……」
「それはもう…寒いですから、館内の客室で待ってみては?」
 そう言い、士官は館内に俺達を案内して行った。澄香はむっとした表情で…
「最初からそのつもりで来たのよっ、さっ!皆行くわよ」
「へいっ!姉御!」
「おうっ!船長!」
「だっからーっ!あんた達は何度行ったら私の事を隊長って言うのよぉーっ!!」
 クルー達の頭を叩きながら、俺達海賊のメンバーは館内へと案内された。

 施設内を士官を先頭に海賊のクルー達は進んで行く…通路を進むと、巨大なプールらしき所に出てきた。多分、水を近くにあった巨大な川から、水を引いているのだろう。
 冷気が伝わってくる…
「すっごいっすね。姉御〜、巨大なプールっすよ」
「あんたねぇ、ここは多量生産怪人のプラントよ…水の中を見てみなさいよ」
 戦闘員の一人が、澄香に言われてプールの中を覗き込んだ…ほの暗い水の底で、何かがゆっくりと不気味に泳いでいた。しかも…複数…
「なっ、なんすかっ!?あれ……」
「はははっ、ここはプラントですよ…ここで生成される多量生産怪人、『烏賊(イカ)』のプールです…うっかり水に近づきすぎると、飲み込まれますよ」
「うっ!?」
 戦闘員の一人は、その言葉にビクッとして通路の手すりから離れた。
「はははっ!大丈夫、マザーからの命令が無い限り我々へは攻撃して来ませんよ」
「その保証はあるのかしら……」
「特許権付きですからね…ここのマザーは…」
 澄香の質問にも、その士官はにやりと笑ってそして前を急いだ。それに俺達も付いて行った。
「ねえ、やっぱり変だと思わない?豪…」
 澄香が小さな声で俺に話しかけてきた……確かに、変だとは思っている、スキャニングも出来ず、サーモグラフィーはこの低温状態だ、使い物にならない。それに、足元から来るこの違和感……何かがある事は確かだ。
「解らない……今はそれしか、言えない」
「そう」
 プールを出ると、今度は階段で2階へと上がった。どうやらここに客間があるらしいと士官はそう話していた。だが、俺達は今度は暗い場所に出た。電気がついていなく窓の無いその部屋は何か異様な静けさを感じていた。
「暗いじゃない、どうやって向こうに行くのよ」
「これは失礼……すぐに電気を着けます」
 そう言うと士官は手際良く、壁を探って電源スイッチらしき物を押すと、部屋全体の電気が点灯される。
「ひっ!!」
 クルーの一人が、驚きの声を上げる…まあ驚くのも無理は無い。この部屋は結構広く、研究室らしき場所となっていて、無数の液体の入ったカプセルが置かれていた。その液体に浸かっていたのは、人間だったから、液体の中で無数のチューブを背中に通されている。
 もしかして、ここは……
「ここは、多量生産怪人が産まれる場所ですよ。私達は『揺り篭』と呼んでいまして、同じ場所がこの施設内には、4部屋あります。ここで産まれた多量生産怪人は1階のプールへと運ばれるんです」
「不気味ね、あたし達が連れてきた積荷もここに来るのかしら」
 澄香は特に驚いたような顔をせずにクールに振舞っているが、心拍数が上がっているのが解った…これを、人の言う所の『怖い』と言う感情か?
「そうでしょうね……まずは卵を産み付けてからここの培養液に浸かれば…7時間で怪人へとなります」
「だったら、下のプールは満員でしょうね」
「いえいえ、そうとも限りません……この揺り篭の時点で、死滅する者やプールで共食いされる者などで、数は一定になっているのです」
「ふーん……」
 澄香はそう言うと、先を急いでクルー達もそれに続く。俺はその場のカプセルに入れられた人間を見て、カプセルに手を添えた。メモリーに残る、俺が生み出された時の光景と似ている……だけど、こいつにも…周りのカプセルに入れられた人間達にも命はある…
 俺と同時期に作られた…他のショッカーライダー達も命があった…だけど、俺には命が無い……ならば、なぜ俺はここに存在しているのだ…データを読んでも、答えは出ない…
「豪…何してるの?行くわよ」
 澄香が止まっている俺のそばまで来て呼びかける…
「解った、すぐ行く」
「豪……あなた、何を考えていたの?」
 澄香の隣まで来ると、そう聞かれて俺は何も答えないでいた……何故だろう、いつもなら単調に言えるのに、この時だけは澄香に何も言えない…
「余計な事は考えちゃ駄目だからね」
「……解った」
 余計な事か……まあ、今の海賊にとっては、俺の過去など余計な事かもな……
 そう考えている内に、『揺り篭』の奥にある客室まで到達した俺達……士官が分厚い入り口のドアを開ける。
「うわっ、暖かい…すげぇ!暖房完備だ」
 暖房が効いているらしく、クルーの全員がその中にすぐ入ってはしゃいでいる。
「あんた等は歳いくつよ……」
 そんなクルー達に澄香は呆れかえっている…
「まあ、良いじゃありませんか…寒い所の長旅で疲れたでしょうから、少しの間滞在なさってかまいませんので」
「でも長居するわけにも行かないから、12時間後には去るわ…そのつもりで…」
「…それでは、12時間…ごゆっくりお寛ぎください」
 そう言って、士官はにやりと不気味な笑みを浮かべて、分厚いドアを空けて出ていった。
「ふんっ、いけ好かない士官だったわね…豪」
「……」
 あの士官の態度には何か裏があるように見えてならないが……今はどうでもいいか。
「まったく、あんた達には緊張感ってもんを持ちなさいよねぇーっ!」
 客室にはソファーやテレビも完備している、その上シャワーやベッドまでついている。客室にしては装備が整りすぎに思えるが、クルー達はそんな緊張をよそに、客室でくつろいでいる。だが、長旅の疲れもあるのは事実で呆れて声を張り上げる澄香も身体的に参っているのが俺にはわかっている。
「スミカも休め、疲れたのは解っている」
「…豪、あなたには隠し事は無理だろうけど、あたしは大丈夫だから、気にしないで」
「いや……ここは何か嫌な感じがする。休める時に休まないと…いざという時に、体が持たない…人間の体はよく解らないが……そうした方が懸命だ」
「……ありがとう、豪…それじゃあ2時間ほどそこのベッドで横になるわね。あなたはどうするの?」
「俺はもう少しここから念入りにスキャニングして見よう……」
「そう……じゃあね…」
 そう言うと澄香は奥にある、客専用の寝室に向かった…
「まったく、姉御は豪には頭上がらないんすね〜」
「うっ、うっさいわねっ!いい、罰としてあんた達は寝ちゃ駄目よっ!」
「ええーっ!マジっすか……」
 クルーにからかわれながらも、澄香は寝室に入っていった。
 俺はドアの前に座って、ここの構図を調べて見る事にした…ここから、雪上トラックのあるロビーまでのルートは解っている…あとは道が入り組んでいるか。
 合計10階建ての巨大な塔である、南極支部は…ネメシス本部に次ぐ大きさだと言う。流石は、巨大プラントと言っても過言ではないだろうが、澄香は無駄にでか過ぎやしないかと疑っている…。1階ずつ調べて見よう…
 まずは1階…俺達が入ってきたロビーに、多量生産怪人を飼育する為の巨大なプール牙存在する…2階、その多量生産怪人を生成する為のシステム、通称『揺り篭』が存在して多数存在する…その一角に俺達のいる客室を設備。
 3階、職員達のオペレーションルーム…及び個室が存在する…4階、ここの全システムを管理する為の巨大なハイパーコンピューターがある……
4、5、 6階…職員の個室や、もしもの為の医療施設、会議室などがある。
 7階、過去に使われなくなったが…脱出用の戦闘機発進カタパルトが存在している…
 8階、武器庫や…備品の倉庫…9階、見張り台…10階にしてはもう灯台みたいな役割をして、上に行く度に室内の面積が段々と狭くなっている。
 澄香の言う、『ロケット発射場説』がなぜか通るような気がして来た。
 そして、気になったのが地下1階……ここは、1階のプールの様子が確認できる部分と動力室がある……この関係者以外立ち入り禁止区域ってのはなんだろう…


 その頃、1階の隠し階段から…地下へ向かう一人の男がいた…さっき、海賊達を客室へと案内した士官だ……士官は、地下の関係者以外立ち入り禁止の部屋へと入っていく。
 そこは上のプールより広い場所で…薄暗く不気味な雰囲気を漂わせる場所で、そこにその士官は…上を見上げて…
「予定通り、海賊を客室に招きました…」
『ご苦労だった、“0式”はいるのか?』
「はっ、彼もちゃんとあなた様の招いた通り、到着しました」
『ふっ、ならば……最高の持て成しをせねばな…中尉、…飛び立つのは後何時間後となっている…』
「……後4時間後の予定…」
『解った…』


 やはり下からか、奇妙な感じがするのは……俺は、客室のドアの前に座ってその感じの正体を探っていた。海賊のクルー達は澄香が言ったのも無視して、ソファで眠っている。
 起きているのは俺だけか……今の所、もう2時間は経っている…澄香ももう起きる時間だけど、もう少し寝かせよう…
「豪っ!起きてるっ!?」
 その時、俺の元に澄香がハンドガンを持って走り寄ってきた…どうしたのか?心拍数がかなり上がっている。
「どうした……スミカ」
「ベッドの下から、変な音が……」
 俺にしがみ付いて、体を振るわせている…何だ、何かが怖いのか?俺は澄香を連れて、澄香の寝室へ向かった。
 澄香が寝ていた、客室用の寝室へと入り…澄香が寝ていたと思われるベッドに近づく…聴覚センサーの感度を上げて見よう。
ギュル…グキュル…
「確かに、この下から何かが近づいているような音がする……」
「本当なの?豪……」
「確かだ、すぐここから出…」
「うわぁぁーーっ!」
 俺がそう言いかけた瞬間、向こうで海賊のクルーの叫び声が聞こえた…
「豪っ!」
「……」
 澄香が、ハンドガンの弾を込めて俺も客室へと戻る…

 俺達が戻ると、そこには壮絶な光景が目の前にあった…排気口から白く長い触手のような物が伸びて、クルーの一人を締め上げていたからだ…他のクルーもその光景に腰を抜かしているようで荷物から銃を取っていない。
「なんなのよ、これっ!」
 澄香はそう言いつつも、その触手に向けてハンドガンを乱射する。ハンドガンの弾丸を食らった触手は、怯んで締め上げていたクルーを解放した。
 隙が出来…俺は奴の間合いに踏み込んで、拳を叩き付けた。
ドスゥッ!
 触手に拳が直撃して、ダメージを負ったかのように…よろよろと排気口を戻って行った。
「あんた!しっかりしなさいっ!!」
「あ…姉御……すいやせん、あっし、油断してたっす…」
 触手から解放されたクルーは、澄香に介抱されていた…だが、致命傷だったか…その心臓の音は微弱だ。
「喋っちゃ駄目よ!傷に響くわっ!!」
「…あ…あっし…最後が…姉御の腕の中で……よか…った…」
「…ねぇ、どうしたのよ…目を開けなさいよっ!」
 彼は澄香に抱えられながら、その心臓の音が消えた……場内の空気が変わった。
 一人のクルーの死で……全てが沈んだような感じが襲った。澄香が……泣いている、これを人間で言う感情の『悲しみ』というのか……
「…豪、顔色一つ変えていないけど……あなたには解る?この感じ…」
「………解らない、けど…嫌な感じだ…苦しい…」
「……それで十分よ…豪、さあ…みんな、立って」
 澄香は立ち上がって、ハンドガンの弾を再び込めた。それと同時に、寝室の方から崩れる音がして、何かが寝室へと入ってきたような音がした。
「行くわよ、こんなふざけた場所から抜け出すわよ……」
「船長……あいあいさーっ!」
 澄香の一言で、クルー全員がやる気となって荷物から、ヘビーマシンガンやショットガンを取り出す。
ドンッ!
 前の分厚い扉の向こうから、何か強い衝撃が加えられたような音がした。外に何かがいる……そして、寝室のドアを破って何かが客室に入ってきた。
「やっぱり…ここの多量生産怪人の『烏賊』ね…始めからあたし達を殺す為に…」
「……スミカ、ここは俺に任せろ」
 俺は澄香の前に出て、目の前にいる『烏賊』と対峙する。
「何者かの罠か……それとも、アラストルの言っていた奴…」
『グギュルル……』
「何者であろうと、邪魔する者は容赦しない……」
 俺はベルトのバックルから、銀色の2本の角型オプションパーツを取り出す…俺が変身するオプションの『メタルアイザー』だ……それを前に突き出し、頭の上まで腕を旋回させ…

「セタップッ!」
 音声コードを入力と同時に、額が開閉してそこに『メタルアイザー』を刺し込む。
ガチャッ!
 人工皮膚を剥ぎ取り…変形する体……そして、俺は青き機械の体へと変身した。『ショッカーライダー0式』…いや今は仮面ライダーG0だったか……今の俺の姿は。
「豪、行けるわね…」
 変身した俺に、澄香が話し掛けて…俺は両手でバックパックから専用オプションの右手にマシンガンと、左手にショットガンを取り…
「ターゲットインサイト…、排除開始」
ガガガガガガガッ!
バシュッ!バシュッ!
 寝室から来た、『烏賊』に向けてマシンガンとショットガンを乱射する。弾丸は、烏賊に攻撃する隙を与えずに…全て命中して、烏賊は赤い血を噴出して絶命した。
ドサッ…
「…ターゲット排除完了……澄香、命令を…」
「解ったわ、G0…ここから脱出するわよっ!」
「了解……だが、脱出ルートはこのドアの向こうしかない…外には『揺り篭』から出た、怪人達がいる…」
「そうね…強行突破しかないわね」
「俺が先行する……いいか?」
「良いわよ、弾切れになるまでぶちかましてあげなさい、G0」
「了解…」
 俺は澄香の命令通り、未だに向こうから攻撃が加えられている圧力ドアの前に立つ。
「いいっ!みんなっ、豪が先行するからみんなもそれに続いて、怪人が近づいてきたら…そん時は銃を思いっきり乱射しなさいっ!あたし達が持っているのは、『対怪人用の鉄鋼弾』だから、有効なはずよっ!」
「あいあいさーッ!」
「がってんっ!!」
 そして、海賊のクルー全員が俺の後ろに回る……任務…開始…
「いい、行くわよ…G0っ!やってっ!!」
 澄香の命令の後、金属の圧力ドアに向けて蹴りを入れる…頑丈に作られた分厚い扉だったが、俺の蹴りの一撃で見事に吹き飛ばされた。
ガシャァァーーーッ
 圧力ドアと共に、一体の怪人が吹き飛ぶ……俺はゆっくりと外へと出て、ターゲットを確認する…目視で確認しただけで、10数体の『烏賊』ががん首揃えている……
『ぐるるるっ…』
『ぎゅぅるるるっ!』
「ターゲットの全排除…全砲門…」
 俺はそう呟きながら、ショットガンとマシンガンの銃口を前方のターゲットに向ける。そして、俺の左腕から内蔵されているガトリング砲、右胸のエンブレムや右こめかみに内蔵されたバルカン砲が開閉し…ターゲットに全てのカーソルが揃った…

「発射っ!!」


 後編へ

設定資料集

多量生産怪人『烏賊』
身長:2m 体重:95k
武器:触手×8 触盤×2
 ネメシス南極巨大プラントで生成される、量産型怪人。怪人の低コスト化を狙い、マザーと呼ばれる母体となる怪人から出た卵を人に植付けるだけで生成可能。

その他設定

第参時極東内乱
 今より数十年前で日本で起こった3度目の大戦争。俗に言う『真帝国ダイダルの戦い』と呼ばれた戦争で、下手をすれば日本はおろか、世界をも破滅に追いやられない可能性を秘めていたが、当時出現した仮面ライダーを始めとするスーパーヒーロー達により、ダイダルの進行は阻止された。G0はその時、ショッカーにより製作されたが凍結されていた為、出現する事は無かった。

後書き
 そこ、ショッカーライダーは『ゲルショッカー』で作られたと突っ込まない(爆)

 黒狼自体、余り知られていないですけど、ゲームの『スーパーヒーロー作戦 ダイダルの野望』から何年後かの世界での話ですので、ダイダルの話と微妙にリンクしているから良いのでございます。

まず、私的解説…ショッカーライダーは当初10体作られていた。
 私は仮面ライダーの原作で出てきたショッカーライダーは、何故に6人と中と半端な数なのか?と少し疑問が浮かんできました…その推理は、『もっとすごい科学で守ります』と言う本の15Pを参照して頂くと、一体のライダーの形成に13週間もかかってしまうと書かれています。細かく言うと、1号ライダーが出来てから、2号が出てくるまでに13週かかります、まあ仮面ライダーは元は大幹部の『バッタ男』の目的で作られたといいますから、裏切り者妥当にもう一体幹部を作るには、それ程の期間が必要なのだという事です。
 そいで、肝心のショッカーライダーが6名登場するまでの期間と仮面ライダー第1話から、2号が出てくるまでの13週を足すと、丁度ショッカーライダーが最初に出てくる週に来るわけでございます。それだったら、13週に1度偽ライダーを出せばいいと思いますが、まあ、そこは突っ込む所ではないでしょう。

 さて、黒狼とリンクしているダイダルの野望では…まだゲルショッカーになっていない段階で、6人のショッカーライダーが出ているのは、私はこう推理しました。
 そもそも、ダイダルのゲーム内ではゲルショッカーは…ブラックの戦いの後、すなわちキカイダー編が始まった時から始まっていました。
 ショッカーライダーはその前に、ショッカーの時点で出現しています。しかも、死神博士が死んだ後から……そこで私が考え出したのは、ショッカーライダーは…死神博士が作ったんじゃないか?彼なら死神『博士』と言われたくらいですから、ショッカーライダー6人なんて朝飯前なのではと思っていました…待てよ、それなら本当はショッカーライダーって、10体くらい…いたんではないのか?あの男にそんな余裕があったかどうか定かではないですが、ゲームにはゾル大佐は出てないので多分…
 それで、プロトタイプとして、完全な機械の『0式』を作り上げた…、これならダブルライダーは妥当できる。けど、その『0式』の暴走により4体が壊されて…そんでショッカーライダーは6体となってその『0式』も使わなくなったのかと…推理します。
 んで、ショッカーが壊滅後、ネメシスにその『0式』つまりG0は回収されたと…私はダイダル的なショッカーライダーで推理します……

んでは、少々長くなっちまったけど…これにてっ!

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