ズガガガガガガガガガッ!
ドドドドドドドドッ!
ズガンッズガンッ!
 俺は両腕に持たれた銃や、体の全てから、弾丸を吐き出した……弾丸は、そこにいた全ての物体を破壊し尽くして行った。
 ターゲット(烏賊)達は、この攻撃で次々と倒れ…奴等を産み出す、揺り篭は破壊され機能を停止して行った。
 そして、そこは…火薬の匂いと、生物が死ぬときの異臭が臭覚回路から入っていった…全部…死んだのか。
「ターゲット、排除完了…澄香、道を作ったぞ」
「ご苦労様、G0…さあ、行きましょう」
 澄香は俺が作った血路を先陣きって歩く……その後姿を見た時、俺に奇妙な感覚が襲った。
「ん…」
 目の前にいる澄香の後姿が…微妙だがぶれたような気がした…まるで、澄香が消えて無くなりそうな、嫌な感じがした。
「っ!!」
 澄香は一瞬立ち止まり…振り向き様に銃口を後方に向け、放った。
パァンっ!
『グゲッ…』
「うわっ!!びっくりした…船長、サンキューっす」
 後を向くと、クルーの一人を襲おうとした烏賊の生き残りにその銃弾は当たっていた。
「…あんた達、反応が鈍いわよ、そんなんだとすぐにこいつに殺られるわよっ!」
「へっへいっ!」
「自分の身は自分で守るっ!それを心がけなさい」
「おすっ!」
 澄香は烏賊に気付かなかったクルー達に説教をする…その言葉は俺にも当てはまった。妙な感じに囚われていたから、奴の動きに気付かなかったんだ…
「とにかく、行くわよ…ん?どうしたの?豪…」
「……すまない、行こう」
 また、メンテナンスが必要かもな…そう思い、俺は両手に持たれたマシンガンとショットガンを構え、澄香の後ろを歩いた。


仮面ライダー黒狼 外伝
 仮面ライダーG0
特別編『生きる者』


 1階の階段で俺達海賊は足止めを食らっていた。
「…ざっと、30体って所ね……」
 1階では、多量生産怪人のプールから出た無数の烏賊により、占拠されていた。今出るのは危険だった。
「プールにはまだ、何匹もいるんすよね…」
「…総合計してみるとプールのを合わせ158匹いる事が確認されている」
「マジっ!?」
「まったく、マザーは特許権がついてたんじゃなかったの?あの中尉…」
「ああ、オレたちゃここで、化け物に殺されて死ぬのかぁ…」
 クルーの一人が一瞬諦めかけていた所を、澄香にチョップをされる…だが、諦めるのはまだ早い……
「脱出ルートはある…」
「豪…本当なの?」
「ああ、さっき少しここの構造を調べて見たら、裏口があることが解った……」
 俺は、手からフォログラフを出しさっき調べて記録した、脱出ルートを皆の前に出した。
「こう言うのがあったらもっと早く出してくれっすっ!」
「こらっ!」
「いべしっ!!」
 また澄香からチョップを食らうクルーはとも角、俺は指を使ってルートを説明した。
「地下1階に通ずる隠し通路がここにある……そこから地下へ行き、突き当たりの廊下を真っ直ぐ行けば、地上に通ずる階段がある事が解った」
「さすが豪…」
「だが、ここを経由しない限り、地下へは行けない」
 地下へ通ずる隠し通路は、丁度この外にある…すなわち、怪人達のいる場所を通らない限り、脱出は不可能…
「ざっと5メートルね…うーん、敵との距離は15…奴らの反応速度とスピードを計算して…豪」
「了解…」
 澄香に言われ、俺は計算を始めて見た…アラストル戦でも使用した、敵の動きを読む方法………
「隠し通路までの距離、そしてターゲットの距離、反応速度、標準速度を計算して、そのまま出れば確実に全滅する……」
「だぁぁ、オレらやっぱここで御陀仏っすかぁーっ!?そんなの嫌だぁ!」
「諦めるな、作戦はある……俺が囮となって敵を引き付ける間に、隠し通路へ行け」
「豪っ!行けるの?」
「………勝算はある、俺も後を追う」
 そう言うと澄香は、頷いて立ち上がり……
「解った、あなたを信じるわ豪……さあ、あんた達っ!行くわよっ!」
「へっ…へぇっ!」
 クルー達に気合を入れさせ、立ちあがる澄香…俺も立ち上がり、メタルアイザーを手にすると…後ろが妙に暖かくなった。
「スミカ……」
 澄香が俺の背中に抱き付いていた……
「……豪、死なないでね」
 その言葉に、俺の体がビクリと反応した…俺は死を持たない『生命のない器』なのに、澄香は、なぜ死ぬなという……
 だが、その言葉が俺の思考回路に深く入ってきた…脱出するまで、俺は壊れる訳にはいかない…いや、死ぬわけには行かない……
「ああ……」
 小さいが、俺は確かに言った…死なないと…

 澄香は俺の背中から離れた。俺は、メタルアイザーを構え…戦闘モードにセタップする。
「俺が押さえている間に…隠し扉だ」
「解ったわ、G0!あんた達っ、G0が出たら…素早く隠し扉に行って!自分の身を守る事を忘れちゃ駄目よっ!!」
「おいっすっ!」
「了解っ!!」
 俺を先頭に澄香達は後ろについた。そして、俺は扉を蹴り壊し、1階へと出る。
「ミッション開始…武器オプション、ミサイルランチャー…」
 背中のバックパックの両サイドからロケット騨、そしてミサイルランチャー用のロングバレルが折畳式で現れる。俺は右肩にロケット騨を装着して、ロングバレルをバックパックから引き延ばし…右肩のロケット騨へと合体させる。
 両腕で支え、足から衝撃吸収用のアームが地面に突き刺さる。
「ターゲットロック…発射っ!」
ドゥゥンッ!
 俺は、目の前の烏賊達に向けてミサイルを発射する。ミサイルは一体に直撃して、他数十体を巻き込んで大爆発を起こした。
「今だっ、みんなっ!行くわよ!」
 俺の後ろを、澄香達が走り去る……だが、俺は目の前の爆煙の中から、数体の怪人の影が見えた。こいつ等……明らかに、澄香達を行かせまいとしている。
「…残騨残り一発…オプション、解除」
 俺はミサイルランチャーをバックパックにしまうと、今度はさっきのマシンガンを持つ。
「任務続行…」
 澄香達へと向かう怪人達をマシンガンで相殺しながら、前に進んで行く。一方、澄香は地下に通ずる隠し扉を発見していた。
「あった、えっと…これね」
 澄香は壁に手をやると、地下に通ずる扉が開いて行った。開いた瞬間、彼等は急ぎで扉の中へと入っていく。
「…よし、戦線離脱……」
 俺は、マシンガンを乱射しながら、澄香達の後を追い扉の中へと入った。澄香達は先に行ったらしいな……俺は、マシンガンに弾を込めると澄香達の降りて行った階段を降りた。


 その頃、澄香達は立ち止まっていた。その目の前には海賊を客室まで案内し…ここまで落とし入れた、ここの士官だ…
「ふっ…ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ、海賊の皆さん」
「あんたにかまけてる時間なんてないの、そこどいてくれる?中尉さん……」
 ドスの利いた口調で、澄香はその士官に言い放つとそいつはニタリと笑って…
「ふんっ、自分達の立場が解っていない様だな…柏木澄香」
「上官に対しての物ってもんはこのプラントでは教えてないわけ?」
「解っていないようだな、お前達はもう…逃げられないのだ…この基地から…ふふふ」
 不気味な笑いを浮かべる士官に海賊のクルー達は何かしらの恐怖を感じ始めた…
「いや、ネメシス事態…もう逃げられないと言った方が過言だろう。お前達も何もかも死ぬのだ、我々の手によって…」
「どう言う事よっ!あんた、この組織への戦線布告でもしているわけ?」
「……ご名答だ、澄香お嬢さん…後数時間もすれば、“あのお方”は飛び立ち…ここにいる子供達も全員プラントから巣立つ……」
 澄香は、奴の言葉から信じられない状況を悟った…子供達と言うのは、外にいる多量生産怪人『烏賊』を示す…巣立つという意味は、ここから解放される事を意味する。そして、ネメシス事態逃げられない状態、全てを整理して推理すると……
「あんた達は、本部を襲うつもりねっ!?」
「……」
 士官は澄香の言葉押し黙る……
「飛び立つってのは、やっぱりここから核弾頭でも撃とうってのっ!!」
「………さすがはネメシスで歴戦を築き上げただけある……正解だ、いい推理だ柏木澄香…だが、一つだけ間違いだ…」
「…!?」
「ふふふ、ははははっ!飛び立つのは核弾頭じゃないっ!あのお方だ…もうこれ以上知っても仕方があるまい…今ここでお前等は死ぬのだからな…ふはははははははっ!」
「何っ!?」
ビキビキ…
 奴は高笑いをしながら、その体を変異させて行った。体からイカの触手が生え…頭も頭皮を引き裂くようにイカの頭が出現する。
 両手も、イカにとって一番長い触手…触盤へと変わり…奴は人の姿を捨てた。
『ふぅぅ……お前達は知りすぎた、『イレギュラー』達…ここで消してやろう』
「こいつ、喋ってる…」
「多量生産怪人が意思をっ!?船長っ!こいつぁ…」
「ええ…こいつ、ネメシス制の怪人じゃ……」
『ふっ、技術はネメシスから奪った物…だが、あのお方はそれを超越する改造を私に施したのだ……』
「あのお方…」
 澄香の脳裏に、目の前のイカ怪人が資料で見た何かに似ている事に気付いた、そしてここの黒幕が何者かが…解った。
「まさか、あんたっ!」
 気付いた澄香が奴に銃口を向けるより早く、奴は長い触手を放ってきた……もう、駄目かと思ったその時…
ズガンッ!
 触手が大きく反れ、壁にぶち当たった。
『……ぐっ…貴様…0式…』
「………」
 俺は、奴の頭を左腕で鷲掴みにして、押さえ込んだ…奴のこの姿と、0式の名に異様な懐かしさと虫唾が走る。澄香との会話を聞き…ここの黒幕の正体がはっきりしたからだ。
「……豪…」
『ふふ、0式…お前をあのお方がお待ちだ……地下で、お前が来るのをお待ちになっている……さあ、行くがいい0式、そして…今度は、共に歩もうぞ…我等の新たなる新天地…『バティム』へとっ!!』
「……0式と…その名で呼ぶな」
 奴の頭を鷲掴みにしていた左手の平に放電現象が発生する……それは次第に高まり、指に電光が走り…。
「スパーク…フィンガー…」
バリバリバリバリバリッ!!
 手の平の放電が激しくスパークして…奴の頭を粉々に消滅させた。体内に超重力発生装置から発せられた高圧電流により、細胞を破壊し消滅させる技だ…

 どさりと、そいつの体は制御を失い…倒れ込み、俺の体は人間体に変形した。生きていた、奴は生きていたんだ…
「豪……」
 澄香が俺に近づいてくる……今の俺の心と言うものを悟ったかのように、神妙に…
「奴等の…目的がはっきりしたわ……これから本部に連絡するけどいい?」
「ああ…通信回線を本部に繋ぐ…」
 俺は変身したまま、澄香と見詰め合い…自らの体にある通信回線を開き、ネメシス本部へと繋いだ。
『ネメシス本部、通信局です…部隊名と階級とIDを…』
 俺から発せられた声が変わり、別の男の声がする…本部の通信局の者らしい。
「柏木澄香…ネメシス蜘蛛第4中隊第13小隊『海賊』一等大尉です」
『了解しました柏木大尉…ご用件は』
「緊急事態よ、第4中隊長を出して…」
『了解しました』
 そして、再びノイズ音がして…しばらくして今度は太めの男の声が出た。
『柏木大尉、私だ……血相を変えてどうした…』
「中隊長…緊急事態です!実は…」
『状況は把握できている…君達がいるのは、南極支部であろう?』
「はっはい…では、まさか!」
『20分前、幹部怪人『海魔』本人から宣戦布告を次げる通信が入った……「私は宇宙へと飛び立ち、6時間後…本部を『ソドムの轟火』が襲う…地球と共に燃える本部を宇宙から見せてもらおう」と言う声明を放ってきた』
「ソドムの轟火?それは…」
『解らん、だが…先ほど、南極支部へのミサイル攻撃が決定した』
「ミサイルっ!?」
『声明の意味はまだはっきりとしていないが…後3時間もすればそこは消滅するだろう』
「3時間…現在、私達は施設から脱出を試みているところです…ですが……」
 澄香は、今さっきイカの怪人から聞いた事を通信の向こうの中隊長に話した…
『もしかしたら、何かを宇宙から本部へと落とし…戦力を欠いた後、そこで作られた多量生産怪人により挟撃させ、全滅させる作戦かもしれない……』
「作戦を阻止するならば、脱出する時間が……」
『うむ…やむおえないな、時間がない…そこを脱出しろ、泣いても笑っても3時間後にはミサイルがそこに直撃する!』
「了解っ!」
 脱出命令が中隊長から出され、澄香は俺の通信を切った……通信を切ると同時に俺は立ちあがって、脱出ルートから反対の方向に歩き出した。
 向こうに……奴がいる。そう、俺を『生命のない器』を作った…奴が…
「豪っ!!何処にいくの」
 澄香が行こうとする俺を止めた…
「何処、行くつもりよ……」
「あいつが、ここにいるんだ…」
「まさか、『海魔』倒そうと言うの豪…」
 幹部怪人『海魔』が、死神博士なら…ネメシスが出来て間もない頃に、亡命して来た一人の科学者の正体が何なのか、つじつまが合う。
「3時間後には、ミサイルが降って来るのよ……脱出しなきゃ…まさか、心中するつもり?」
「奴の死に場所が、俺の死に場所でもあるんだ…、ショッカーの遺産は断たなければ、今のような事態を再び引き起こす事となる」
 そうだ、ショッカーはこの世界にはもう居るべきでは無い存在なんだ…居たら、今のような悲劇を繰り返すだけだ…死神博士だけではない、俺も…奴と運命を共にするのなら…本望と言う事だろう……
「そうね…豪、やっぱりあなたは『ショッカーの遺産』ショッカーライダー0式なのね。もしかしたら、あたし達が引っ張り出さなかった方が、幸せだったかも知れないわね」
 溜息交じりで澄香はそう皮肉を吐いた……そして、澄香は後ろを向いて…脱出口まで向かった。
これで永遠の別れか、澄香には感謝している…彼女には色々な事を教わった、人の感情というものがプログラムではない事、俺のように真似事はできない事だとわかった。
 もう、生きて会える事は無いだろうが、君は何があっても…生きていてもらいたい。
 脱出口のハッチが開き、海賊のクルーは名残惜しそうに俺を見ながら、俺に背を向けて白銀に輝く外界に出て行った。最後に、澄香が俺に背を向けて外に出ようとした。俺は、閉じ行く脱出口のハッチの向こうを、俺はいつまでも見続けた。閉じたら、開けることはもうできないだろう…なぜか、切なくなってきた。この感覚が何なのかはまだはっきりしていない、ただもう会えなくなるという感じ…諦めにも似た感じ…これを、澄香は寂しいと言った……。だが、俺は動かなかった…犠牲は俺だけで十分だからな…

 さらばだ海賊…もう、会う事は……
「豪っ!受け止めて!!」
 そう思った瞬間、澄香が振り返り…閉じて行く脱出口に飛び込んできた。俺は突然のことに驚きながらも、澄香を抱き止めた。その拍子に俺たちは倒れこんだ。
「船長っ!」
ガシーン
 クルーの声も澄香には届かず、脱出口は閉じてしまった。
「なぜ、脱出しなかった…3時間後にはミサイルが降って来るんだろう」
 俺は澄香の頭を優しく撫でながら…静かにそして強く、戻ってきた澄香に問いただした。なぜ、戻ってきたんだ。
「脱出する前に、あなたに言い忘れた事があったわ。豪…私はあなたを掘り出した事に後悔していない……豪と出会えて、嬉しかったから。それに、私にとってのあなたは『ショッカーの遺産』とか、『ショッカーライダー0式』でもない、豪…『G0』なのよ……」
 澄香の温かさが直に伝わってくる、澄香の言葉が思考回路に入り込む…彼女の顔が、視覚回路から入ってくる…
 全ての感覚器官より、澄香の情報が一気に流れ込み…ショートしそうだった。熱い…なぜ、ナゼ……ナゼダ…
ジジッ
 ショッカーから引き上げられて、澄香に会った時の事を『思い出した』。

 出来て間も無い、ネメシスに入っていた彼女にショッカー基地跡地から引き上げられて、再起動させられ……俺は彼女と出会った。
「あ、起きた…気分はどう?G0…」
「………」
 G0、俺の記憶に無い名……
「うーん、G0だと何だか呼びにくいわね…えっと…G0だから、『豪(ごう)』でいい?」
「じーぜろ……ごう……」
 どれも俺の名ではない、それどころか…俺を識別する物はあるのだろうか?
「これからあなたは、私達の部隊…『海賊』の一員よ、よろしくね豪…」
 『豪』という名は彼女の気まぐれで作られた名前かと思っていた、俺も、ショッカーの遺産と呼ばれるよりは…『豪』と呼ばれる方が悪くないと思った…。

 まさか、澄香は俺からショッカーの遺産を忘れさせる為に……
「澄香……ありがとう、俺は…G0…豪だ…」
 俺は、胸の中にいる澄香を優しく抱きしめた……
「うん…そう、豪は…豪だよ」

 人間の一つの感情が解ったような気がした。解らせたのは澄香だが……


 しばらくして俺と澄香は立ちあがる…現状はどうであれ後3時間後にはミサイルがここに直撃する。その前に奴を……倒す。
「豪、後3時間でミサイルが直撃する…その前に絶対にここから脱出しましょう…二人で」
「……ああ」
 二人で、脱出する…そうだ、俺は彼女を絶対に死なせるものか…絶対脱出しよう。
「さて、また脱出口を探さなきゃ…だめね」
「脱出口は無い…だが、壁の装甲が薄い場所があれば、そこを壊せばいい」
 そこにブラックサイクロンを止めておけば…脱出できる。

 俺と澄香は、その脱出口を探す為に、地価1階をくまなく探す事にした。装甲が薄そうな場所を壊す事は至難の技。
 南極支部でプラントだ…どこも、寒さから守るように装甲は厚く作られている。多少の事では穴は空かないが、多少でも装甲に穴が空けば……
「豪、ここ…」
「どうした、澄香」
 俺達が行き付いた場所は、だだっ広い場所で周りには機械で生め尽くされている…その上を見るとあの1階の怪人のいるプールが見えた。プールの中にはまだ数十匹の怪人が俺達をガラス越しに睨んでいる。
「ここはイカの水槽?」
「たぶん、ここで烏賊達を管理していたんだ。水質…水温…水圧など全て一定に保たれている…」
「確かに、暖かいここの水から、本部に出撃させる際に南極の冷たい水に出すのは自殺行為ね……その為に体の体質をここの機械を使って徐々に変えていったのね」
「奴等が水陸でも活発に活動できるのもその為だと思う…多分もう強襲用にもう奴等の体は強化されたに違いない。だが…ここは奴等を全滅させる事ができる唯一の場所だ」
「へぇ〜餌もここでやっていたんだね……やっぱり人間食べさせていたんだ」
 水槽は水の底も見渡せた、所々に人骨が転がっている。突然、澄香が俺の前に割り込んできて……。
「豪、この仕事は私に任せて、こいつ等を本部には決して行かせないわ……」
 そう言って、キーボードを走らせる澄香…俺のメンテを担当しているのを裏付ける手際のよさ…任しても良いだろう。
「餌で引き寄せて、水温を下げながら水圧を徐々に上げて行けば、こいつ等は崩壊するという作戦か……」
「そう言う事…」
「解った……澄香に任せる――!」
ドゥン
 何かが…俺の思考回路に入ってきたような気がした……。
『…0式……0式……』
 呼んでいる、奴が俺の名を呼んでいる。この声、覚えている……奴だ!
 どこだ、何処にいる……俺の目に、この部屋の奥にある扉が写された……あそこに、奴はいるのか……俺はメタルアイザーを握り締めた。
「……澄香」
「ん?どうしたの…豪」
「…少し向こうを見てくる…何かあったら付いて来い」
「解ったわ……こいつ等を誘き寄せるのに、結構手間取るから…後から追うから」
「………」
 俺は頷くと、澄香を後ろにあの扉に向かい、歩き出した。奴は扉の向こうにいる…絶たなくては、『ショッカーの遺産』は……
 かつて、開かずの間と呼ばれた場所が…ここか、その中に亡霊とも呼ばれたここを管理する幹部怪人…『海魔』…その正体は、かつてショッカーの大幹部の一人だった男…そいつが俺を作りだし…
 死神博士っ!!奴が、俺を呼んでいる……

 重い扉を開け、俺はその中へと入る…扉の向こうは真っ暗く、何も無い場所だ…赤外線スコープ…足元は中心に向かって少し窪んでいる。上はドームのように円をなしている。高さからして、地下1階から1階まで達する高さか…中央には、椅子…そしてそれには誰かが座っていた。
「……遅かったではないか、0式…じゃが、わしの言った通りに、来てくれたか」
「…二度と、お前とは会いたくなかったが…」
 そう言うと奴は指を鳴らし、ドームに灯りを灯す……俺は奴を睨み付けながらメタルアイザーを構えた。
 俺の前の椅子に座る初老の男はにたりと不適な笑みを浮かべて…
「わしはお前に会いたかったぞ……0式、お前はわしから生み出された…いわばわしの子も同然…」
「…確かに、俺はお前に生み出された…『生命のない器』としてな」
「その方が余計な考えなど生まなくて済む……戦いに感情など必要無い、あるとすれば敵を確実に殲滅させる闘争心のみ」
 闘争心…俺は、任務を確実に遂行する為に数々の敵を倒してきた…だがそれは闘争心とは言わない…
「そう、お前にはプログラムされていたはずだが……お前はわしの手から離れ暴走し、その牙を向けてきた」
「…………」
「それで、こうしてネメシスでまた会えるとは、これは運命でも何も無い…」
 奴は立ち上がり、椅子を蹴り上げた……俺は奴に近づきながら…
「貴様が裏切り…ここに直にミサイルが降ってくる。それに今、お前の生み出した多量生産怪人はプールの中で全員死んだだろう……お前が何をしようとしているかは知らないがもはや、これまでだ…」
 俺は奴が戦闘体に変身する前に…メタルアイザーを構えると、奴の腕が長い触手となりメタルアイザーを振り払った。あの触手は、海賊のクルーを殺した奴だ。
 メタルアイザーが手から離れ、金属の落下した音が響いた。
「わしは、ショッカー壊滅後デストロンに復活させられた、じゃがデストロンも憎きライダー達により壊滅…わしは辛くも逃げ出すことに成功し……その時にあの方とお会いしたのじゃ……」
「つっ…あの方だと…それは何者だ」
「神のみぞ知る存在と言った方が良いじゃろう……そこに亡命したわしは、あの方の命により…まだ結成し立ての小さな組織だったネメシスの幹部怪人となった。あの方にとってはネメシスは邪魔な存在だったのでな…何年もかけて、やっとこの時が来たのだ…飛び立つ時が…」
「何……まさか」
 地球と共に燃える本部を宇宙から見せてもらおう…その意味は…
「ミサイルか……わしは、お前と心中するつもりは無い…お前だけは『バティム』に連れて行きたかったのだが、残念だよ……なにせ、お前は出来損ないだからのう」
 奴…死神博士はドームの中央に立ち…段々と自分の姿を戦闘体へと変えて行った。頭部がイカの形へ変形して、体から8本の触手が生え…そして、腕がイカが餌を捕える為に使い、先端に強力な吸盤を持つ触手…触盤へと変形させた。
『そう…ここでのわしの名を言っていなかったな……わしは『海魔』…又の名をクラーケンじゃっ!!』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ…
「……この揺れは…」
 地面が揺れている…地震じゃない…この基地の真下から何かが出てくる。
 ドームのクラーケンの足元が開き、底から何かがせり上がって来た。クラーケンは地面から伸びて行く円筒形の柱頭に乗り込んで、10本の触手を更に伸ばした。
「これは、まさか…宇宙ロケット」
 ロケットと一体化したクラーケンは、死の塔その物だ…
『そうともっ!わしは宇宙へと飛び立ち…人工衛星の一つとなろう…じゃがこれはただの攻撃型衛星ではない…わしの能力を思い出せ…』
 奴の能力……隕石!?
『察しはついていると思うが、わしの能力では小規模程度の隕石しか落とせない…じゃがこの衛星は、わしの能力を火星と木星の間にあるアステロイドベルトまで到達させる増幅装置が取りつけてある……ものの数10k程度の小惑星なら引き寄せる事も可能』
「まさか、お前…その小惑星を本部に……」
 落とすつもりだ…クラーケンは、小惑星を本部に落とす事で自分の手を汚さずに地球もろとも、ネメシスを破壊させるつもりだ。
『そう、それがわしの最終章『ソドムの火』じゃっ!!後、10分でわしは飛び立つ…ミサイルももう間に合わんじゃろう』
「……ちっ…」
 俺はメタルアイザーの落ちている場所を確認した。少し遠いか……
『…だが、お前は知りすぎた……発射までの10分間でお前を破壊する!』
ギュルンッ!
 俺に向かってクラーケンの触手が伸びてきた。伸縮自在の触手が俺に襲いかかってくる。間一髪で俺はそれを避けるがすぐに次の触手が襲いかかってくる。
「ちっ!このっ!!」
『ふんっ、10本の鮮麗を受けるがいいっ!出来損ないっ!!』
ブォンッ!バシィィィーーッ!!
 鞭のようにしなった触手が、俺に叩きつけられ俺は5メートル程後退させられる。戦闘形態に変形できれば…メタルアイザーが遠い。
『どうした、0式よっ!ネメシスなんぞに入って五感が鈍ったか!?』
「むっ……だぁっ!」
 俺は触手を避けたり、叩き落したりしながらメタルアイザーの方へと向かった…奴に対抗できるなら、あれが必要だ…戦闘形態に変形すれば!勝算はある!
 だが、触手の一本が俺の足に絡み付き…俺は倒れ込んだ……
『ふはははははっ!なんと無様な姿ぞ0式よ、暴走した時とは打って変わったなぁ』
 あざ笑うかのように、奴は触手で足を引っ張る…俺は持ち上げられ、地面に叩きつけられた。
ガジィィーン!!
 叩きつけられ、金属音が響き渡る。全身機械だが…この衝撃は耐えがたい…
「ぐぅぅっ!」
『……ふふふ、衝撃で超重力発生装置が自爆せんとも限らんからな、適度なまでに痛めつけて…頭を粉砕してやろうっ!』
バシッ!!
 奴は俺を何度も地面に叩き付けて俺の機能を低下させていく……破損率80%危険レベルAか……
『そろそろ止めを刺してやろう……』
 俺は奴にぼろ雑巾のように持ち上げられ…目の前に触盤を持っていく、その触盤は変形して、触手全体に刺を生えさせたかと思うと、回転し始めた。
『シーアーチンドリルが貴様の頭部を破壊する……さらばだ、0式…』
「ちっ…ここまでか…」
 せめて、もう1回澄香の顔を見たかった……無理か、澄香…お前だけでも逃げてこの事実を伝えてくれ…生きて、生きてくれ
パンッ!
『ん……』
 クラーケンが何かに気を取られ、触手を引いた…
「何っ…澄香…」
 そこには銃を俺の足に巻き付いている触手に向けて発射している澄香の姿が…だが、その銃じゃ今のこいつにはただの豆鉄砲にしか過ぎない…
『イレギュラーの一人か……ふんっ、小ざかしい』
 そう言い、クラーケンは標的を澄香に移して触手を鞭のように澄香に振った。
「豪っ!これをっ!!」
「澄香っ!」
 澄香は俺に向かって何かを投げた…俺はそれを受け取る。メタルアイザーだ!だが、澄香にクラーケンの触手が無常にも突き立てられた。
バシュッ!
「はうっ…」
 澄香の体に刺さった触手は、背中から突き抜けて…壁に赤い華が咲いた。
『何と美しい華をさかせたか…
 血の華を背に、澄香は倒れ込んだ……
「澄香…」
『なんだ、0式…あの女に情でも移されたのか?これはお笑い種だ……戦闘用に作られたロボットが人間の女に恋愛感情をもったとは!』
「……澄香…」
 俺の見ている傍で、澄香は真っ赤な血を流して倒れている……
『ふっ…ははははっ!あの女に感情でも植付けられたか…0式よ!』
 澄香が刺された…澄香が血を吹いた…澄香が倒れた…澄香が…死んだ…
 誰が奪った……誰が奪ったんだ……彼女は俺とは違う、生命が存在していた、本当に美しい生命の華を、俺とは違い、彼女にはあったんだ!そうだ、人には生命がある、それを手を振っただけで散せたのは……誰だ!
 誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…誰だ…
 クラーケン……お前なのか…死神博士!
 お前にそんな権利は無い、笑って…手を振っただけで、生命を刈り取る事権利など!お前にそんな権利は無いはずだっ!
 俺は始めて……人の一つの感情を理解した!それは、『怒り』
『哀れな機械人形が…人間に情など移さなければ、お前も幸せだっただろう……』
「………」
『さて、もう…発射の時間3分前だ…用は済んだなら、壊れるがいい…0式』
ガシッ!バババッ!!
 奴のシーアーチンドリルが俺の眼前に向かってくる…俺はそれを左手で受けとめると、指の間の放電現象で崩壊させる。
『ぐぇぇっ!0式っ!貴様……』
 俺は、足に巻き付いていた触手から抜け出すと…奴の前で着地する…
「……0式、違う…俺はG0…豪だ!」
 メタルアイザーを前に出し…それを持ったまま頭の上まで旋回させ…
「…セタップッ!」
ガチャッ
 その瞬間、人工皮膚がはがれ…躯が戦闘形態に変形して行った……
「変形完了…ターゲットインサイト…」
 青き鋼鉄の鬼神と化した俺はバックパックからマシンガン、そしてショットガンを取り両手に持つ。
「任務内容……破壊…全てを破壊する…」
『舐めおって…串刺しにしてくれるわっ!!』
 奴の10本の触手が俺に向かって伸びてくると同時に、俺は体に内蔵されていた全ての砲門とショットガン、マシンガンから全ての弾丸を放射した。
ズガガガガガガガガガッ!
ドドドドドドドドッ!
ズガンッズガンッ!
 放たれた弾丸は、全てを飲み込んで向かってくるクラーケンの触手を全て消滅させ、今度はロケットごとクラーケンに攻撃を仕掛ける。
『ぐっ…』
 銃弾の嵐は、クラーケンやロケットに命中するものの、確実的なダメージを与えている事にはならない。
『ふん、忘れたか!わしにはお前の砲撃など通用しないっ!』
「……」
 だが俺は、攻撃を止めない…奴の体は銃撃など半減させてしまう。ついにショットガンのとマシンガン弾丸は尽き、俺はバックパックからグレネードランチャーに取りかえる。
 俺は左腕に内蔵されたガトリング砲を移動しながら撃ち…グレネードランチャーを放った。もう、全ての弾薬を使ってもいい……奴を飛ばせる事を少しでも遅らせれれば…
「ターゲットロック…ファイヤ」
ドゴーーーーンッ!
 グレネードランチャーが火を吹いて爆煙が広がるが、俺はもう一発奴にグレネードランチャーを放った。
 グレネードランチャーも撃ち尽くし…爆煙が辺りを覆うが…しばらくしてまだ奴には傷一つ付いていない。ロケットには今までの銃弾の跡はあるが飛ぶには支障はないようだ…
『ふっ、無駄だと言っているのが解らないのか…』
「………」
 俺はその言葉も耳に貸さず、ミサイルランチャーを構える…これが最後の一発だ。
「……消し飛べ」
ドゥゥンッ!
『バカめ……』
 奴に向かって最後の一発であるミサイルが飛んだ……轟音を上げて、ミサイルは奴の目の前で爆発した。
「くっ……」
ズガァァァァァァーーーーーッン!

 衝撃吸収用の足のアームを放ち、バックパックからミサイルランチャーを手放す。
「……」
 ミサイルの爆発に、奴も流石に衝撃が大きかったのか…体が少し焦げている…
『ふっ、いい一撃だ0式…誉めてやろう!じゃが…もう時間切れだ……』
「お前を宇宙には行かせない……」
 こいつが宇宙に行ったら…何千、何万という人達が死ぬ…こんな奴の為に儚い生命を散してたまるか…
 俺は左腕のガトリング砲を構える…
『天よっ!我に光をっ!!』
 奴がそう言うと…ドームの天井が開いていく、いや違う…この施設全体が開いているんだ…ロケット発射場という澄香の推理は当たったな…
 奴の言うとおり、施設は縦に真っ二つに割れるような形で開いた。
「!!行かせるかっ!」
 俺は飛びあがり奴の目の前でガトリング砲やバルカン砲を放射する……
『ふん、小ざかしいわっ!!』
バシッ!
 残っていた触手が俺を吹き飛ばすが、俺はその前に右手に内蔵されていたニードルランチャーを発射した。
グサッ!
 俺の拳から発射されたニードルランチャーは、2本奴の肩と頭に突き刺さる。
『ぐっ!貴様……許さん、砕け散るがいい『ソドムの火』!!』
 俺が着地するとクラーケンは両腕を俺に向けて振り下ろした……だが何も起きない。
「…これで決めてやろう、スパークフィンガー」
 左手の平から放電現象を発生させ、クラーケンに向かって一気に飛びあがった……
『ふんっ……砕けろ』
 スパークフィンガーが炸裂する瞬間、赤い弾丸が俺を襲い…胸の装甲盤が砕け散った。
バリィィィーーーーン!!
「ぐ…はぁぁ…」
 その瞬間、俺の機能が著しく低下して……全てがシャットダウンされた。
『ふっ、言ったであろう…わしの今の能力では小規模程度の隕石しか落とせない…と…お前を壊すぐらいの隕石なら簡単に落とせる……さらばだ、わしも飛び立つ…永久に眠れ』
ガシャァァン…
 俺は地面に金属音をさせながら背中から落下した……胸には、隕石の直撃で巨大な穴が空いている。

 発射時間となりクラーケンを柱頭に乗せたロケットは発射体制に入り、段々と地下から浮上して行った。
『ふん…これで、あ奴等より先に手柄は取る事が出来る……さらばだ、地球よ』
 銃撃によりダメージを受けたロケットは多少遅くなったが着実に基地から上空へと上がろうとしていた。
「………」


……
 もう、駄目か……奴を止める事ができずに…俺は死ぬ(機能停止する)のか…
 基地が開き、上空には太陽が見える……明るく、そして暖かい…いや、違うこれは太陽の光じゃないこれは……生命の輝き?

…豪、起きて…、立ちあがるのよ!…
 澄香の声が聞こえた…いや、見えていた澄香が俺の前にいる……俺はもう、壊れてしまった。もう奴を倒せるほどの力は残っていない……もう無理だ、澄香…すまない。仇を討てなかった。
…いいのよ、私は豪の為に何かできたことでいい、それで十分…
 君には、色々な事を教えてもらった…機械には理解できない事をお前は教えてくれた。
…豪は、機械じゃないよ……一人の人間だよ…
 何故、そう言えるんだ…
…あなたは、人の事に悩み、生命の生と死に苦しんでいた。そしてあなたは生命の大切さ尊さが解ったはず、その時点でもう…あなたは人間なのよ。もう作られた存在じゃない…あなたの中にも生命は存在している…
 俺は、もう…『生命の無い器』じゃない?
…そう、だからもう悩む必要は無いのよ、さあ豪っ!立ってっ!仮面ライダーG0っ!!
 ああ、俺はもう一人の人間…『豪』そして、尊い生命を守る存在、仮面ライダーG0っ!
…うん、よしもうあなたに教える事は無いわ。豪…今言うのはなんだけど、私…豪が好きだったよ。あなたを配属させてから無口で無愛想で単調な口調だったけど、心の内が解ったから。……
 俺の心の内……
…でも、いつかあなたが私に笑ってくれるのを信じていたから、あなたを好きでいられたのよ…解る?人を好きになる気持ち……
 ……ああ、解っていたさ。さっき澄香が脱出口から抱き付いてきた時に俺は気がついた…俺も澄香が好きだという事を…
 俺はいつしか人間体に戻り、澄香に笑いかけていた…きっと俺が最初に笑った時だろう。澄香はその笑顔を見ると、目から大粒の涙が零れた……
…あ…ご、豪……ありがとう、ありがとう…豪…
 澄香は泣き崩れて、しゃくりあげた…俺にはもう彼女に触れる事が出来ないが、この気持ちがどんな物か解っていた。
…じゃあ、豪…また会える日が来る事を待っているわ……
 それを聞き終わると澄香は俺の前からだんだんと姿を消していった。消え行く澄香に向かって……俺は手を旋回させ、こう言った……

大・変・身!
………
……



ズゥゥゥ……
 ロケットがゆっくりと、着実に地上から抜け、空中に向かって行く…俺は機能停止寸前に電源を予備電源へと以降して、立ちあがった。
 胸には突き刺さった隕石で痛々しく穴が空いている。この穴から心臓部にある『超重力発生装置』が見えている。ここから発生した超重力波を放てば…
「超重力発生装置!オーバードライブ!!」
 背中のバックパックのジェネレーターが開き、超重力発生装置が起動する。
 超重力発生装置は元来、スパークフィンガーやGナックル等に小規模的に発生させる物だが、これをオーバードライブさせる事ほど自殺行為な事は無い。
 オーバードライブは超重力発生装置を自爆に追いやられない。良くても、俺の体はその超重力により…粉砕される。
「ぐぅぅ…」
 だが、俺は体の周りを暴れる超重力を1箇所、そう胸に開いた穴に集中し始めた。腕や足…肩の装甲盤は剥がれ落ち、破損率は90%を軽く越した。
 それでも俺は踏みとどまり超重力を制御する……
「ぐぁぁぁぁーーっ!」
『む…あの輝き、まさか奴が超重力発生装置のリミッターを外したのかっ!?バカなっ!!そんな事をしたら自殺行為だぞ!』
 俺は、チャージした超重力の塊を一気に奴に向けて解放した。
「食らえっ!グラビティウェーブ!」
ドキュゥゥゥーーーーンッ!!
 解放された超重力は一直線の光線となり、ロケットに命中すると下から上へと一気に駆け巡り、柱頭のクラーケンを引き裂いた。
『ぐぎゃぁぁぁーーーっ!』
 クラーケンを乗せたロケットは超重力波を食らい、エンジンが爆破して落下して来た。俺は超重力発生装置を止め、落ち行くロケットの柱頭に向かって掛け上がる。
『ぐっ…なっ、0式!貴様』
 柱頭のクラーケンに到達すると左手に放電現象を発生させ奴の頭部を鷲掴みにした。
「スパークフィンガーッ!」
バリバリバリバリバリッ!
 高圧電流がクラーケンに流されるが、クラーケンの頭部は崩壊せず…もとのままだ。
『ぐぁぁあーっ!…ぐ…貴様、なぜ加減を…どう言うつもりだっ!?』
「スパークフィンガー、お前の頭の中にある隕石誘導装置に誤作動を発生させた……直にお前の所に隕石が落下する」
『何っ!そんな物、今解除すれば……』
 俺はクラーケンが隕石の軌道を解除する前に両手を合わせ頭の上に上げる…
「そうさせる前に、破壊すればいいっ!!ギガントハンマーッ!!」
バキィィィーーーーーーンッ!!
『ぐるぉぉぉぉぉーーーーっ!!』
 超重力を加えた両腕が奴の頭部を直撃して、中の隕石誘導装置が破壊される。頭部が融解して、頭を抉られたクラーケンだが…まだ息があった……
 俺はそれを確認するとロケットから地上に向かって駆け下りた瞬間…赤い光が空から降ってきた。
 赤い光は、ロケットの天辺で眩く光…その瞬間爆発を起こした。その赤い光はまるで…こいつに殺され、改造人間にされて行った人々の怨念の塊に見えた。


 地上に下りると、折れ曲がったロケットの下に澄香が眠っていた。ロケットの墜落のおかげで、施設のふたが開き地上に地上に出られる。もう後ミサイルが降って来るまで時間が無い。
「ブラックサイクロンっ!」
 俺は澄香を抱えると、ブラックサイクロンを呼んだ…地上に止めてあったブラックサイクロンは墜落したロケットの間にいた俺の元に現れた。
「澄香、二人で脱出しよう……」
 俺はそう言うと、ブラックサイクロンに乗り、澄香を抱えながら走らせた。墜落したロケットや瓦礫を伝い外に出るとすぐに一直線に、そして全速力でブラックサイクロンを走らせる。後数十秒後、ミサイルが来る…
「…くっ」
 白い雪原を川沿いに走っていると…遠くのほうで巨大な轟音が鳴り響いた。

ドゴォォォーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!
 音はすぐ、爆風と衝撃波となり襲いかかって来た。

「ん?あの爆発は……」
 炎を吹いて上空を飛ぶバティムの魔人イフリートは、上空からネメシス南極支部の爆発を目撃した。
「ほほ〜、いい花火だねぇ…たーまやー」
 そう暢気な声を上げているとこちらにも衝撃が伝わってきた…
「ふぅ…いい熱風じゃねぇの、焼けるねえ…」
 基地から巨大なキノコ雲が出来…イフリートはその状況を見て…
「こりゃ、クラーケンはしくじったって事か…ったく、わざわざ助けてやって使えねぇ野郎だ…ん?」
 イフリートは遥か下の地上に目をやると…そこに向かって下りて行った。

地上
「………」
 澄香は大丈夫か…爆風がおそい、ブラックサイクロンから投げ出された俺は必死で澄香を守り…何とか守りとおした。
「大丈夫だな……」
「おぅ、お熱いこったね…」
 突然空中から声がして何か地上に降り立った…奴が立っている場所の地面の雪は溶けて、地表が見えた。
「お?お前…アラストルをぶっ飛ばしたって言う、『ショッカーの遺産』かい?」
「……」
 アラストル、奴の仲間か……この赤い怪人は…
「その名で呼ぶな、俺は豪…G0だ…」
「G0…ふーん、気に入ったぜ……んで、その様子だとクラーケンと戦ったらしいな」
 赤い怪人は、俺の体を見て言う…それもそうだクラーケンとの戦いで破損率は99%あと1で俺は全てが崩壊していただろう。
「そんで、クラーケンはあの様と…」
「何者だ……貴様、アラストルの仲間なら敵か」
「まあ、そう言う事にならぁな…俺はイフリート炎の魔人だ。でも今は戦うつもりはぜんぜんねぇよ、満身創痍の野郎相手にしたって面白みがねぇからな…」
「………」
 読めない、この敵は…イフリート危険な敵かもしれない…
「まっ、いいけどそれよりそのお嬢さんどうするつもりだい?」
 イフリートは俺に抱えられた澄香を指差す……
「…良かったら焼却してもいいんだぜ…」
「きっ…」
 その言葉に俺は奴に飛びかかろうとするが制され…
「だーから、戦うつもりは全然ねえよ、ちーとクラーケンにお灸そえてやろうかと思ったけど、無駄足だったから、もう帰るよ…あんたの恋人にも手はださねぇ…それじゃ、あばよ、G0」
「………」
 そいつ、イフリートはそう言うと足に炎を纏って飛びあがろうとした…
「ああ、言い忘れていた……クラーケンと同じように、デストロン出の元ショッカー大幹部達もまだ生きているぜ…お前、『ショッカー』が憎いんなら探しに来ればいい…俺もおまえが気に入った、今度…本気で勝負がして見たいくなったぜ」
「………」
「キーワードは、『サイトγ』…そこでまた会おう。G0…」
 イフリートは炎に包まれながら上空を飛び、北の方への空に飛び去って行った。あいつ、本当に読めない敵だ…戦ったら恐ろしい相手になるかもな。

 俺は爆風で転がっているブラックサイクロンを立てなおすと、再びそれに乗り走らせた。

 イフリートの言葉がまだ耳に残っている。奴は、クラーケン…死神博士以外の元ショッカー大幹部は生きていると言った。まだ生きていた、『ショッカーの遺産』…多分、地獄大使、ゾル大佐、ブラック将軍の3人だ……
 すまない澄香、もうしばらくはそっちに行けそうに無いな…
 俺は残された『ショッカーの遺産』を倒さなくちゃ行けない…そうしなくては、今のような悲劇をまた繰り返してしまうかもしれないから。
 だから、お前が俺の為にもしもの事があったらの為に作られた『保険』とやらを使わせてもらう…今の俺はもう治してくれる奴はもういないからな。

 しかも謎が増えた『ショッカーの遺産』とアラストル、イフリートを束ねると思われる謎の組織『バティム』の存在…そして、『サイトγ』これが場所を示すのかはたまた何かの暗号か、とにかく…バティムやショッカーの遺産の為にお前のような犠牲は消して出さない。俺は今日でネメシスを辞める、そうした方が動きやすいからな……

 南極の人も一人通らない雪原の小高い丘に、澄香の墓を作った……ここが俺の帰るべき場所になるのなら、ここで待っていてくれ…
 必ず…終わらせてから、ここに帰ってくる…

 この自分の豪と言う名と、はためく海賊旗に誓って………




設定資料集

アラストル&イフリート
 ネメシスでも確認が取れていない謎の組織『バティム』に所属する二人の『魔人』と呼ばれる怪人。改造方法、生成方法、どれを取っても世紀末王以上の力を持ってしてもこの二人程の魔人は生成不可能と言われている。能力は元来の怪人に無い、超絶的な力を持ち、雷や炎と言った地球の万物にある『元素』と言うのを使える、また彼等の使う技は何かの一つの総合格闘流派があるらしく、そこは謎の組織の『バティム』の一つの謎だろう。一人一人の能力は、アラストルは『雷の魔人』と言われその名の通り雷を操る事が出来る、細身で運動性が高く、地上では驚異的なスピードで走り…空中でも翼を開き飛行が可能…だが、腕力が乏しい為それを補う為にエレクトルソードと言う剣を振るう。イフリートは『炎の魔人』と呼ばれ、炎を操る力があり…肉弾戦格闘術に優れる。マグマドライブと言う空中移動方法があるがアラストルよりは早く飛べない。『サイトγ』と呼ばれる場所に潜伏している、『D』と言う男が彼等を動かすリーダー的存在らしい。


ネメシス南極支部担当幹部怪人:『海魔(クラーケン)』:元死神博士
身長:59.7m(ロケット部分を合わせる)2.3m(通常)
武器:触手×8触盤×2(ちぎられても何度も再生可能)
内臓システム 隕石誘導装置 衛星型小惑星誘導装置
必殺技 ソドムの火(隕石誘導装置により操った、隕石を相手に落下させる。80tだが、隕石の大きさや大気圏との摩擦により威力は異なる)
 元ショッカーの大幹部で、デストロンにより他3人の大幹部と共に復活させられた死神博士、デストロン壊滅と同時に死んだと思われたが、命からがら逃げ出して『バティム』と言う組織に亡命、その後…ネメシスを乗っ取る為に工作員として入隊して、幹部怪人として再改造され、幹部怪人『海魔』バティムではクラーケンと呼ばれる。イカデビル時代の隕石を落とす能力を強化し、衛星軌道上から本部を狙った。


後書き
 長かった、これだけ長い外伝を書いたのは…始めてです。つーことで劇場前の外伝メカ編は終了しました。
 はぁ、ラブはいると結構長くなってしまった……私ってまだ修行が足らん…(泣)
 しかも展開的に、多分最礼恩さんのONEと被る個所が……やっていてこの後書き書いていると気付いた…あり?この部分どっかで…慌てて見ると、最終回に言ってるじゃあーりませんかっ!あぶねぇっ!と思い、急遽その部分だけカットしました…(滝汗)
 でも、改造人間ではない人造人間に人としての心を持たせ、完璧に仮面ライダーにするには、『変身』言わせるのが展開的に良いだろうと思い、当初の『変身』をG0のモチーフの一つとなったXのように『大・変・身』としました。ごめんさい…

 詳しい後書きは、外伝DF・外伝G0のローング後書きで…

 んではっ!

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