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闇……

 

どこまでも続く……

 

深い闇……

 

気付いたら、周りはいつも闇だった……

 

そして、血の匂いと、欲望で満ち溢れていた……

 

闇に終わりが無くなった時……

 

自分のことが解らなくなった……

 

いつからこの刀持ったのか…自分はどこから来たのか…

 

自分の名前さえも、僕は忘れていた……

 

そしていつからか僕は闇の世界に身を投じていた……

 

この椅子に座って、何日になるんだろう……

 

いや、何年になるかな……

 

僕の刀が闇に必要とされていた……

 

でも僕は闇に必要とされなかった……

 

そう、いつだって僕は必要とされない人間だった……

 

慣れてはいたが、とても虚しく…苛立って……

 

悔しくて……

 

だから、僕はこの刀を取る異形の奴等を斬ってきた……

 

いつからか、血の匂いには慣れていた……

 

殺しがどんな物か、子供の僕にはわからなかった……

 

だけど、闇から現れる…異形の者を許せなかった……

 

見るだけで、怒りが増して、斬るたびに頭にきて…

 

どうしようもなかった……

 

だが、そんな時僕に一筋の光が見えて……

 

始めて僕は、涙を流した……

 

 

 

仮面ライダー・黒狼

プロローグ前編『流水』

ピピピピピピピピピピピピピピッ!

 目覚ましの音が俺の耳に響いた。

「……」

ピピピピピピッ、カチャッ!

「榊っ!もう朝よ!起きなさい」

「………」

「もう、相変わらず低血圧なんだから……遅刻しちゃうわよ!榊っ!」

 耳元で、声が聞こえる。けど……もう少し寝ていたい…

 上体をベッドからすーっと起こす。

「あ、やっと起きた。はい制服」

「……くー」

ドサッ

「あーっ言ってるそばから寝ている!」

「……」

「起きなさいよっ!榊っ!」

 このままではらちがあかないので、ここで起きてやる。

「…眠い…おはよ、秋子姉……」

 そう言って、俺のベッドの前にいる少女に挨拶する。

 この少女は…俺より一つ年上の秋子だ。

 料理が得意で、世話好きな俺の姉さんだ……血は繋がってないが、俺は彼女を本当の姉のように慕っていて、秋子姉も俺を弟みたいに接してくる。

「おはようございます。じゃなくて早く朝ご飯食べて、学校行くわよ、今日は終業式で明日からたっぷり寝れるでしょ」

「……ただでさえ、授業の出席率が低いんだぜ…夏休みが始まっても補習があるよ」

「授業をさぼって、屋上で空ばっかり見てるからよ」

「そんな事より、時間…」

「あっ、遅刻寸前よっ!はい早く着替えて、はいトースト。ちゃんとイチゴジャムつけたからね……」

 そう言って、秋子姉は俺の部屋から出てこなかった。

 まっ、俺の着替えは見たくないだろうが。当たり前か……

 まったく、世話好きな人だ……

 

「ありがと…そんじゃっバイクでひとっ走り行くか?早いぜ」

「嫌よ、私まで停学をくらっちゃうもの……」

「仕方ない、普通に走るか」

「うんうん」

 秋子姉は納得しながら階段を降りて行く音が聞こえた。

 俺はイチゴジャムが乗っかったトーストを口にくわえて急いで着替えた。

 そして、下で待っている秋子姉の所に向かった。

 

 

 俺の名は陣内 榊(じんないさかき)この水瀬家に居候をして貰っている。

 元々孤児だったけど、10歳の時に秋子姉の父親、水瀬真一さんに引き取られこの家に転がり込んできた。実を言うと俺は5年前より前の記憶がない……自分がどこから来て、両親は誰で…陣内 榊という名は、俺が前にいた喫茶店のマスターからつけられた名だ。8歳から10歳までの2年間その喫茶店で育てらのは解ってたけど、その前はどうしていたのは解らない……そのマスターもどうなったのか覚えていない……旅に出るとかに何とか言っていた気がするが…はっきりと覚えいない。どこに行ったのかな…あの人は……

 でも俺はここにいるのが一番いい。ここの人達は俺を家族同然に接してくれている。ここの姉妹(特に姉の春奈の方)にこき使われるのがほとんどだが……このまま子供の頃の記憶は出てこなくていいな。

 

「あ、榊君…おはよう、でも遅刻寸前だね」

 俺が玄関で靴をはいていると、後ろから若い男の人が声をかけてくる。

 この人がこの家の家主であり、城南大学の生物学科の教授である水瀬信一氏だ。

 結構若作りしているが、何歳なのか俺も解らない…

「信一さん、おはようございます。遅いですけど休みですか?」

「いやこれから行こうと思っているんだけどね」

「そうですか、大変ですね」

「いや、風祭先輩や鬼塚先輩もいるし……春奈もいるからね。研究の方は上々だよ…それより、時間は大丈夫かい?榊君」

 信一さんの一言で、俺は腕時計を見る。げっ、もうこんな時間だ。

「榊ぃーーーー!本当に遅刻しちゃうわよっ!」

「あっ、いけねっ…それじゃあ」

「気をつけるんだよ」

「はい、いってきます」

 俺はいそいそと靴をはいて、秋子姉の待つ外に向かった。

 いつもの通学路を二人で走る。俺は低血圧なのに、朝走るのは慣れ慣れだ…。

「お父さんと何話していたの……」

「いや、少し野暮用でな、時間は?」

「後3分で予鈴よ……」

「ああ……、それより秋子姉っ!遅いぞっ!運動不足じゃないのか?」

「そうかもしれない……はぁ」

 秋子姉はそう言って、ため息をはぁっとつく。

 

やっとの事さで学校に到着して下駄箱の所で秋子姉と別れる。2年部は新校舎だからだ。

「それじゃ、俺はこの辺で……」

「うん、またね」

 秋子姉は笑顔で手を振って自分の校舎の方に向かった。

 さて、俺も自分の教室に向かうか……

 

1−D組

 はぁ……やはりホームルームも終わっているか…

 俺はため息をつきながら、教室に入った。

「…はぁ」

「おはようございます、榊さん」

「ん?…ああ、観奈美(みなみ)か…おはよ」

 俺の隣の席に座る、倉田家のご令嬢、倉田観奈美が俺に声をかけてきた。

「いつも、たいへんですね〜」

 なぜかこの子は、俺に親しく接してくる……なぜかは解らないが、この子にまとわりついてきたナンパ野郎どもを蹴散らしてからこんな風に接してくる。

 俺としてはうっとうしいが……彼女の作った弁当は相当に嫌いじゃない。

「これから夏休みですね〜」

「そーだな……」

「榊さんに1ヶ月以上会えないのが心残りです…」

 観奈美は残念そうに俯く…たかが1ヶ月と少しだ…俺としてはどうって事ないが…

「ああ……俺も、観奈美の弁当が食えなくなると思うと、残念で仕方ない」

「あの…もしよろしければ、夏休みも会って頂けませんか?」

 観奈美は赤くなってもじもじしながら聞いてくる。

「………ああ、暇が出来たら電話してくれ、24時間受けつけているよ」

「ではっ、お弁当作って待って来ますので。楽しみにしててくださいねっ♪」

「……」

 観奈美はにっこりと笑って手を合わせる。ふぅ、こいつといるとなんか気が狂いそうだ。

 でも、悪くは無いな……こう言うのは…

 

ちょうど同じ時間、城南大学では

「うーん…見れば見るほど、解らなくなってきますね。風祭先輩」

 ここは城南大学の生物学科の研究室、午前の講義も終わった信一が同僚の風祭大門とある論文を読んでいた。

「そうだな、水瀬……特に、この破れて消えた部分…前半の文字は擦れているし、ここに何かの写真か絵が載せられたのは確かだけど、何の研究なのかさっぱり……」

 この論文はこの大学で20年前に見つかった、緑川博士の研究論文だ。だが、当の緑川博士はこの論文が見つかる前に、失踪している。

 だが、彼の失踪をきっかけとして、ここの資料室からこの論文が見つかったのだ。でも、一部が欠けている所とか紛失した所もあり、唯一解るキーワードとしては…

「…キーワードはやはり、『バッタ』ですね」

「ああ、前半部のバッタの遺伝子についての研究論文……これもそのバッタに関する資料か……はたまたは、前半部に何かこの謎を解く鍵があるんじゃないか?」

「ですよね……」

 信一と大門はうーんと言って頭を抱え、その論文をコピーした物をじーっと見ていると

バタン!

「おとーさんっ!やっぱりここに居た!」

「うわっビックリしたっ…春奈、もっと静かに入ってきなさい……」

 この元気娘は、秋子の姉の春奈だ、この城南大学の学生をやっている。

「こんにちは、春奈ちゃん。春奈ちゃんが来たんなら水瀬……またか」

「風祭先生鋭いっ!はい、お父さんお弁当……もう、癖になってるのかしら」

 そう言って、信一の前に弁当箱を突きつける。すると信一は慌てて鞄の中をゴソゴソと探す。

「やっぱり忘れている……」

「ふぅ、明日から秋子と榊も休みになるから、お父さんの癖には少し楽になれると思うけど……もう忘れないでよねっ!」

「あっああ、解ったよ…」

「よろしい……」

 その光景を見ていた大門は、完全に娘の尻に敷かれているな水瀬…と思っただろう…

「榊君って、水瀬の家に居候をしているって言う少年だよね……」

「はい、5年前に僕がある人から引き取ったんです。彼は元々孤児なので…身寄りがありませんでしたから……」

「5年前と言うと……あの都市伝説がぱったりと止まった年と一致しますね…」

 春奈の入ってきたドアから、中年の男が入ってくる。

「あっ、鬼塚先生」

 鬼塚義一、大門と信一の同僚で、同じ生物学科の教授である。

「……確かに、20年前から榊君を引き取った5年前まで日本各地に急激に流行になった噂がありました……」

「都市伝説って、『人面犬』とか『口裂け女』とかのように、小学生の口コミで広まって行くような噂話か…でもそれらはただの噂にすぎなくて、実際にあったって件数は少ないはずだよな……」

「そうですが……この噂話は、風祭先輩や鬼塚先輩はもちろん春奈も一度は聞いた事あると思いますよ…。『バイクを駆る骸骨仮面』」

「あっ、私が小学生の頃、その噂流行ってたわよ……友達が、赤い仮面に青いバイクの骸骨仮面に助けられたって話し……でも、その友達も結局友達から聞いた話だって言って、本当に会ったって人はいなかったわね……」

「そう……赤い仮面と青いバイク…風祭先輩や鬼塚先輩の世代は緑色の仮面に白いバイクある者は銀色の仮面に白いバイク…そして、黒い仮面に緑のバイクと言う様にその骸骨仮面の噂話は口裂け女や人面犬同様、本当に見たって人は居ませんしそのタイプも様々だ。ただ……20年前といえば……」

「緑川博士が失踪しこの論文が見つかった年とも一致する……」

 大門が机においてあったコピーした論文のファイルを手に取る。

「はい、そして榊君を引き取った5年前……それはこの噂がぱったりと止まった年でもあります」

「お父さんは、その噂と榊となんか関係があると思ってるの?」

「解らない……でも、骸骨仮面の噂や緑川博士の失踪、そして榊君が一本の糸で繋がっているとしか僕は思えない……あまりにも出来すぎてますから……」

「ようは全て、その少年の記憶が戻る事と、私達の研究のヒントとなっているって言いたいのかい?水瀬君は……」

 鬼塚は、論文のコピーを拾い上げて信一に聞いてくる。

「今の僕には何とも言えませんし榊君も関係は無いと信じたいです……ただ、僕等は今…とんでもない神の領域に足を踏み入れているような気がしてならないのです」

 信一は少し心配そうな顔で、鬼塚に言った。

「そうかい……でも、私達はこの研究を止めるわけにはいきません…なにせ緑川博士は生物学の権威だ……これほど興味をそそる物はありません…」

「………」

「その榊と言う少年にも、是非会ってみたいものだな……」

 鬼塚はそう言うと、くっくっくっと笑って研究室から出て行った。

「嫌な感じね、あの人……私の嫌いなタイプ」

「春奈ちゃん、あの男はいつもあんな風だって知ってるだろ…水瀬、あまり鬼塚の言う事は気にするな……」

「いえ、そうではありません……ただ」

 信一は何か察知したように震えていた。

「お父さん、大丈夫?」

「…この研究は、もしかしたら悪魔の研究かもしれない……そんな気がする」

「はぁ…でも、神か悪魔か決めるのは俺達だから、やるしかないさ……」

 その言葉は、信一の耳には聞こえていなかった。そう5年前、彼は戦慄の現場を目撃したからだ……

 

 

 5年前、ある街にある喫茶店…信一がまだ城南大学の教授となって駆け出しの頃良く訪れていた。そこのコーヒーの味は信一が休まる時だった…そこのマスターとも顔見知りとなった時、そのマスター…立花藤兵衛氏から電話をもらい、信一は約束の時間に彼の経営する喫茶店を訪れた。

「マスター…居ないのかな」

 信一は、その時喫茶店内を異様な異臭がしたのに気付いた。

「……立花さん?」

 生き物が死ぬ時の独特の匂い、生物学科に入ったばかりの真一でもすぐにわかった。

 その匂いは、奥のドアの方から匂っていたの……

「…立花さんっ!」

 信一は、何かを察知して急いでそのドアの向こう部屋に入った。

「………」

 その光景に、信一は驚愕して膝をついた。

 部屋全体を赤く染める程の多量の液体……血…床に転がる、異形の生物の死体

 …いや、それはもう生物とは程遠いくらいに原型を止めないほど斬りきざまれた死体だった。

「これは……うっ…」

「………」

 信一は我が目を疑った。血の海の中心に…10歳くらいの子供が自分の身長より長い日本刀を持って、ある物を見つめていた。その視線の先には、一人の男性が倒れている。

「立花さんっ!」

「……」

 信一が叫ぶと、少年は日本刀を握り、ジロっと信一を睨んだ。

「ぐっ!」

 なんて、沈んだ悲しい目をした少年だ、無邪気な子供の目ではない…

 まるで死んでいる……いや、このような光景を何度も体験していく度に、その笑顔さえも無くしたような顔だ……

「……君も、おやっさんをいじめに来たの?」

「うっ……」

 そう質問された時、信一は思った……彼は、殺しを何とも思っていない子供、自分も殺される……

「おやっさんをいじめる奴は………誰であろうと許さない…斬る」

 少年は信一に向けて、その切っ先を向ける…日本刀の刃から怪物の物と思われる血が滴り落ちる。

 信一が諦めかけたその時、その少年の足を掴む者がいた。

「……や、やめなさい、サカキ……」

「……お…おやっさん…」

 少年を止めたのは、この喫茶店マスターである立花氏であった…

 瀕死の重傷を負っているのか、その表情は重く痛々しい…

「おっ…おやっさん……」

 少年の腕から日本刀が落ち、床に刺さる。

 それを見計らって、信一は立花の元へと駆け寄った。

「立花さんっ、しっかりしてください!」

「信一君か………」

「喋ってはいけません!すぐ病院にっ……」

「だめだ…俺の体は、もう奴の毒に犯されている……」

「えっ?」

 奴と言うのは、その異形の怪物の事だろう。傷口からその毒が入ったのだろう。

「あれは一体なんです!?」

「あの怪人は、あの子を狙って…追って来た……ぐふっ」

「立花さんっ!」

「お願いだ……あの子を…サカキを、守ってやってくれ…」

「サカキ?」

 あの少年の名前なのだろう…

「あの子には何も罪はないまだ子供だ……光と言う物を知らずに育てられ、あんな風になっちまったけど……君なら、あの子に…また光を見せる事ができる」

「…彼は、一体……もしかして、緑川博士が失踪した事と何か関係が……」

「……あの子は…何も、関係はない……」

 そう言って、立花の手は信一から離れて行った。

「立花さんっ!立花さんっ!!」

「おやっさん………」

 立花は、静かに目を閉じた。

「これで…ライダー達の所へ行ける…」

「立花さんっ!くっ……」

 やがて少年はゆっくりと、立花の亡骸に近づいた。

「おやっさん…おやっさん……お…とう……さん」

 そして…少年の目から、大粒の涙が零れ落ちた。少年はゆっくりと立花に寄り添ってしゃくりあげる。

「……」

 信一はその少年を見守ると、彼のそばに落ちていた刀を拾って、血をふき取りそばにあった鞘にしまった。そしてまた少年に視線をやった。

 どれだけ時間が過ぎたのか信一にはわからない……だけど、少年は顔を上げて立花の遺体から離れる…

 それを確認した信一は、彼の元へと行って…

「サカキ君……それが、君の名前?」

「………」

 彼は涙を吹いて、頷いた。

「お父さんに、お別れは済んだかい?」

「………」

こくり

「一緒に来る?僕の家に……」

「……」

 本当?といいたげな表情で信一を見る。

「迷惑じゃないよ、任されちゃったし……それに君を守る義務があると思うから…」

「……うん」

 サカキはそう頷くのを確認すると信一は、サカキの手を引いて喫茶店を後にした。

 閉店と言う看板を立てて……

 

 

「…さん、お父さんっ!」

「はっ…はっ春奈……」

 春奈の声に、信一はびくっと飛び起きるように気がつく。

「どうした、水瀬…汗が凄いぞ……」

「なんでもありません…さて、午後の講義の時間に間に合わなくなっちゃいますよ。風祭先輩っ!」

 信一はそう言うと、春奈から弁当を取ってがっついた。

 春奈にはそんな父が、何か隠しているんじゃないかと心配したが、どうせ対した事ではないと思った。

 

 

 

再び、榊のいる学校。

「ふぁ〜一学期も終わったし…どうするかな、いい天気だし……バイクでツーリングってのも悪くは無いな」

 終業式も終え、俺はいつもの様に屋上に寝そべって空を見つめていた。

「なんだろうな、この青空を見ていると……なんだか懐かしい感じがする…」

「陣内さんから、その台詞を聞くなんて…めずらしいですね」

 俺の頭上から声が聞こえ、俺は頭を少しずらす……俺の上、つまりは横に髪の毛が短めの少し可愛い方の顔立ちの少女が立っていた。

「……なんだ、天野かよ」

 この少女は俺のクラスメートの天野咲耶、近くにある神社の巫女さんをやっているらしい……かなり有名な神社だ

「……って今日は白か…」

 ちょうどこの位置だと咲耶の今日の下着の色がわかる。

 咲耶は顔を真っ赤にして俺の脳天に蹴りを入れた。

ドスッ!

「いでっ!何しやがる!」

「陣内さんがいやらしい目で見るから悪いんですよ……」

 こいつはクラスでは影のある存在だが、俺に必要以上に付きまとう。まったく観奈美同様、何の理由があって俺を付け回すんだ?こいつは、霊感が強いって言うし……

「……大体!なんだってお前は俺に付きまとうんだ!俺に何か憑いているとでも言いたいのか!?」

「いえ、なんとなくです……」

「……なんとなく?それでか?!もっと他の理由があるんじゃねぇのか!?」

「………」

 それを聞くと咲耶は、真っ赤になって俯いた。

「どうしたんだよ…赤くなって…天野」

「じっ、陣内さん……」

「……俺?俺が何なんだ?」

「陣内さんって、倉田さんがいますし…綺麗なお姉さんもいますし…こんな事言うのもなんですが……」

「はあ?」

 何が何やら、俺にもわかんない……

「私は、陣内さんが…」

バァンッ!

「榊っ!やっぱりここにいた……」

 咲耶が何か言おうとした瞬間、屋上のドアが大音響と共に開き、秋子姉が入ってくる。

「あら?咲耶ちゃん」

「あ、どうも…水瀬先輩」

 ぺこりとしおらしく頭を下げる咲耶に秋子姉もこんにちはとぺこりと頭を下げる。

「秋子でいいわよ…それより、真っ赤よ…榊に何かされたの?」

「あっ秋子姉!何で俺がっ!?」

「はい……ごにょごにょ」

「えっ!?下着を……榊…」

 秋子姉がギロっとこちらを向く。そして、満面の笑顔で……

「私の作った自信作のジャムを食べてもらうわよ」

「うっ!?あっ……あのジャムは…」

「文句は言わないの…」

 笑っているけど怒っている……恐ろしいや秋子姉…いつか殺される…

「ごめんね、咲耶ちゃんいやらしい弟で……」

「いえ…陣内さんのそれが治ってくれれば……」

「そうね……」

「なんだ?二人とも、まるで俺がスケベみたいじゃないか」

「実際そうよ……この前だって、姉さんのお風呂覗いたって言うし……」

「んがっ、あれは!他に人が入っているなんて、わかんなかったから……」

「……陣内さんって意外と強引な所があるんですね…」

 くっ、この二人は……

「まあ…俺のいわれが悪いのは解った……んで、秋子姉なんか用があって来たんじゃないのか?」

「あ……そうそう、榊。倉田さんが待ってたわよ…女の子を待たせちゃだめよ」

「やべっ!弁当一緒に食うって約束してたんだった、ありがと!秋子姉!」

 俺はそう言って、屋上から颯爽と出て行った。

「あ…陣内さ……」

「なんだ?天野!」

「ひゃっ!行ったんじゃなかったんですか?」

 咲耶は真っ赤になってあたふたしている、なんだってんだ?

「俺は耳がいいんだよ!天野がボソッと俺の事を呼んでも気付くんだよ!」

 そう言うと少しシュンとなってしまった。

「でもさ…天野が行ってほしく無さそうだったからよ、戻ってきた」

「あ……」

 すぐに真っ赤になるから…おもしろいやつだな。俺なんか変な事言ったかな。

「まっ夏休みが始まっても永久に来ないって訳じゃないからな、たまに天野の神社に遊びに行くぞ……たまにはこっちから行ってやるぜ!」

「……別に何も出しませんよ」

「まっ、楽しみにしてろや」

「楽しみにもしませんっ」

「ははっ、じゃーな。秋子姉!晩飯の買い物とかしてきていいか?」

「たのんだわよ、春奈姉さんにも伝えておくわ」

「おーけー」

 俺はそう言って、観奈美の待つ中庭にへと足を急がせた。

「変な人ですね、陣内さんは……」

 屋上に残った咲耶はなんとなく秋子に話し掛けて見る。

「そうね、始めて会った時から変な子だってわかっているわ。咲耶ちゃんもそんな榊が好きなのよね……別に、榊になんか悪い霊が憑いているって訳じゃなくて…」

「そっそんなんことっ!あ、あ」

 咲耶は秋子の言葉に動揺してしまう。

「…ふふっ、顔にそう書いてあるもの榊が好きだって…でもあの子は、根は本当優しい子だけど女心に疎いから…早く告白した方がいいわよ」

「違いますっ!違いますってばっ!」

 真っ赤になりながら、あたふたする咲耶を秋子は頬に手を当てながら見ていた。

「そうよね……女心には本当に鈍感な子なのよ、榊は………」

 

 

 はあ、やっと中庭についた……あっいるなっ

「観奈美ぃーっ!」

「あっ、榊さーんこっちですよ〜」

 中庭のベンチにちょこんと座っていた観奈美の所に駆け寄る。

「悪い、待たせたな……」

「いえ、榊さんは遅刻はしますけど、ちゃんと約束は守る人ですから」

「…そっ…そうか?…まっいいか」

 なんだ?この胸の高鳴りは、今の観奈美を見て一瞬ドキッとなったぞ……

 まっいいか……そんな事より

「んじゃあ、飯にするか……」

「はい」

 観奈美が手渡した、弁当箱を開けて俺はやっと昼飯にありつけた。

 

 

 榊と観奈美が昼食を取って居る時……校舎の窓から、それを見物している人物が居た。

 そして…どこかに電話をしている。女教師みたいだ……

「もしもし、私よ……見つけたわ、『黒狼』にふさわしい少年を…ええ、もっと観察して見るわ……彼、本当に面白い力を持っているから…世紀末王様にはまだ時間が掛かると言って」

電話の向こうでは…

「ああ……わかった、くくっ…ドウやら水瀬の言った通り……面白そうな少年らしいな…頼むぞ、川澄君……世紀末王様にはすぐに拉致して来いとの指令だが……ああそうか、わかった……伝えておこう」

ガチャッ

 その場所は城南大学、榊の学校から電話を受け取っていた人物は、鬼塚だった。

 

 

  ToBeContinue・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

登場人物紹介

主人公

陣内 榊(さかき)『希望CV:三木 眞一郎』

誕生日 不明(水瀬家に引き取られた3月4日を誕生日とする)

身長  176センチ

体重  61キロ

血液型 B型

秋子の家に引き取られた謎の少年。10歳の頃秋子の父、信一に引き取られる以前の記憶があいまいで8歳から前の記憶はまったく無いので、自分がどこから来て本当はどんな名前かも謎の多い少年。現在の性格は少し無愛想、が困っている奴を放って置けない面倒見の言い場面もあるが、それが裏目に出て学校内の不良どもから狙われ、時々喧嘩をして帰ってくる喧嘩っ早い所もある……だけど、鬼神のごとく強い。実は朝に非情に弱く、よく秋子と遅刻するのがしばしば……。好物はイチゴジャムで結構甘党だったりする。

 

水瀬秋子(当時16歳・本編??歳)

言わずと知れた、未来の名雪のお母さん。このSSでは16歳の高校生で榊の一つ年上のお姉さんと言う感じ……。いつも寝坊をする榊を起こしたり、榊がしょっちゅう喧嘩をして来る時は、手当てをしてやったりする。また榊の好物であるジャムを何種類か作っている。が、あの謎ジャムだけは気に入られて無いようだ。

倉田観奈美

半オリジナル?で佐祐理さんのお母様となる人…このSSでは佐祐理さん同様、議員の父を持つお嬢様で榊のクラスメート。入学して間も無い頃、野犬と接する榊の優しい面を目撃して榊の優しい一面を見て以来榊を好きになってしまう。昼休みは榊に弁当を作ってくる。

天野咲耶

また半オリジナル?でこの子は美汐の母親となる人、このSSでは榊のクラスメートで自分の家の神社でお手伝いとして巫女さんをやっている子である。神社の子らしく霊感が強く榊の内に秘めた力に気付き、物心ついた時から榊を付きまとうようになった。だが、その気持ちが次第に変わって行ったのは言うまでも無い…

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痕描き

おはこんばちはっ!Y(ヤクト)団首領です!

オリジナル仮面ライダーのまだプロローグと言う事なので、まだライダーになってません。

その点ご了承あれっ!

元々は秋子さんと旦那さんの学生時代を書こうと思って、やったんですが同時にテレビの『仮面ライダーアギト』とコミック『仮面ライダーSPIRITS』を見たり読んだりもしましたので、むしょうに仮面ライダーがかきてぇ!と思って書きましたっ!まあ秋子さんがらみにしたくて、それとカノンの人達の元となるべく人達も書いてみました。そんな事で、『仮面ライダー』と『カノン』のクロスオーバーになってしまいました。でも、出てるのは、完全オリジナルの佐祐理さんと美汐ちゃんの母親なんですけどね…どこがカノンじゃぁぁぁーーーー!!(泣気合)

それより、わたしの勝手な思いこみ…『仮面ライダーSPIRITS』に真やZO、Jのエピソードも入られないかな〜無理だなこりゃ…(泣)

次の後書きは、秋子さんと名雪ちゃんをゲストに!榊君の生体について話していきます!

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