セイバーはおなかがすいていた。
言うまでもないことだが、彼女は美食家であって大喰らいではない。
健啖家あることは間違いがないが。
それはとりあえず、伝説の時代の騎士王はおなかがすいていた。
理由は簡単だ。
本日の衛宮邸内に彼女は一人であったのだ。
士郎がイリヤスフィールに半ば拉致同然に郊外の城に連れて行かれてしまった。
桜は、今日は誰ぞ客が間桐家に来るとかで衛宮邸には来ない。ライダーも同様。
それを知ったのが、昼過ぎ。
急なことで、申し訳ないと桜は謝っていた。
しかし、急いでいるせいか、ご飯について切り出す前に電話を切られてしまって、後はどうしようもなかった。
凛は―――何故か、来ない。
どうしてか判らないが、朝から連絡が取れない状況にあった。
理由は、”箱”としか考えられないだろう(埒外の声)。
我等が藤村タイガーは思いっきり藤村組である。
「―――どうしましょうか」
一応、食材は、ある。
だが、自分にまともな料理は作れない。
どうすべきかと、考えていたところで―――
ぐぅ
おなかが鳴った。
これはどうしようもない。
持ち合わせは少なく、かといって衛宮家の生活費を考えると、出前も中々厳しいものがある。
今からでも、郊外の城を攻略すべきではないのか。
現在午後4時。
昼ごはんも食べず、先日お茶請けをフジ軍曹が全滅させてしまっていたせいもあり、セイバーは飲まずとは言わないが食わずでぐったりしていた。
「ああ―――江戸前屋の大判焼きを食したい・・・」
情けない響きを言葉に出しつつ、彼女はひたすらぐったりしていた。
魂とか抜けそうな勢いで。
非常食の乾パンまで食べてしまった大河に恨み言のひとつも述べてやりたかった。
士郎か桜がいれば、今日には彼らの監視の元買い足しが行われていたはずなのに。
それ以前に、きちんと昼食も夕食も出ていたろうに。
「とほー・・・」
くうくうおなかが鳴りました。
ぴんぽーん。
呼び鈴が鳴った。
だるいけど、行かなければ。
かったるい体を無理やり動かして、玄関へ向かう。
「どういったご用件ですか?家長ならいまでかけ―――?」
絢爛な雰囲気に、思わず彼女は口をつぐんでしまった。
そこには、不思議そうな顔をしている金髪紅眼の少年がいた。
「どうも、お兄さんに差し入れ持ってきたんですけど、いないんですか?」
しょうがないなぁ、と少年は言って。
「これ、お土産です。悪くなっちゃうんで、セイバーさんが食べてください」
彼は玄関に包みを置く。
「暫く上がらせてもらっていいですか?」
少年はそういうと、セイバーに笑いかけた。
「ええと、どちらさまでしょうか?」
セイバーは出来るだけ冷静に、そう答えた。
ただ、自分の主にこんな知り合いいただろうか、というかこんな豪華絢爛な調子の子と知り合いになるだろうか―――
だけれども、目の前の子に邪気がなかったことと。
包みのなかから香ってくる匂いが余りに芳醇で。
セイバーは思わず首を縦に振ってしまった。
騒動の幕開けとも、全く知らないで。
続くとも。
おとがそ
ぽよーん。次回へ続く。
WEB拍手返信
3月3日分
>うわあ、こんな所であの魔境に逝くわけですか(誤字にあらず)アティ危うし。
泰山は比類なき人外魔境です。辛いだけ。マーボー以外はマシと信ずるのです。そうでなければ、ガメラとゴジラがくっつくぞ。
>キートン先生は考古学者の鑑です。
彼は真の漢です。マスターですから。
>真!インパルスロボ 笑かせて貰いました 劇毒物様には頑張って欲しいです
Mr.X氏からのコメントをいただいております。
「僕は劇毒物って名前じゃないんすけど・・・取りあえず、ありがとう。そしてそんな君にラヴフォーエヴァー」