「これは―――!」

セイバーは心の底から驚いていた。

こんな芳醇な香りの食べ物がこの世にあるのだろうか。

いったいどうしたら、こんな香りが出てくるのか全く判らない。

けれど、ただ、けれど。

涙が出るほど美味しかった。

半日何も食べてないから、さらに旨さは倍!さらに倍!倍率ドン!

そんな感じだった。

少年を「無害」と判断して、居間まで案内したセイバーは少年の土産とやらに舌鼓を打っていた。

「美味しいですか、セイバーさん」

金色の子供は、にこりと笑いながらそういった。

・・・包みの中に入っていたのは、お寿司だった。

それも、だ。

キロ10000円はくだらない、高級品ばかり。

しかも、しかも。

野菜ネタは、松茸から本シメジ、芽ネギとかそういうのばかりで、シャリの配分握り具合全て100点の出来だ。

あ、入れ物に大○寺って書いてある。

そして、セイバーは金色の子供にすすめられるまま、松茸寿司を口に運んだところだった。

「ボ、ボーーーノォーーー!!」

ゴチバトルの岡○みたいな悲鳴を上げながら、セイバーは歓喜する。

「口から鼻に物凄い香りが吹き抜ける!最早、この世のものとは思えない幻想種のような・・・まさか、これはそういうものですか!?」

「んなわけないです。あっはっは」

金色の子供は乾いた笑いと一筋の汗を流した。

―――しまった。これじゃお兄さんへの嫌がらせにしかなってないじゃないか。

金色の子供は、心の中でそうつぶやくと、セイバーを見る。

嫌がらせ、そう。この人の食事をレベルアップさせると、色々拙いらしい。

レベルアップしたほうにあわせてくれと、目で訴えるとか。

―――食いしん坊。どうして惚れるかなぁ?僕。

「さぁさ、お兄さんたちが帰ってくる前に食べちゃってください」

半ば呆れ気味で、彼はそういう。

「う、しかしシロウも・・・だが余りにも・・・」

美味しすぎる。

そう顔で言いつつ、ゆっくり神を飲むような、そんな神妙な顔つきで一つ口に運び、その度に満面の歓喜を表す。

はむはむ、こくこく、ぷはー、と。

そんな動作をセイバーは繰り返していた。

食べる順番を、子供は念入りに指定しながら、

―――どうしようかなぁ。お兄さんに怒られるかなぁ?

と、取り留めのない事々を考えている。

―――どうしようかなぁ、これもあげちゃおうかなぁ・・・

彼は、いつの間にか小脇に抱えていたビンを差し出すかどうか迷っていた。

これを渡せば、面白いことにはなる。

なんというか、アレ。

獅子王光臨というか、ライオンというか。

この人リチャードじゃないけど。

なんか、よくわからない考えが浮かぶ。

まぁ、いいか。

どうせ、終わっちゃえば元通りだし。

そんな結論を出して、ビンをテーブルの上にゴンと置いたのは、お寿司がほとんどなくなってしまってからだった。

一緒に、五島産のするめを出す。

これも、最高の肴の一つだ。

・・・肴?

ちょっと待て。

少年よ、君は何をしようというのかな?

「ちょっと唐突だけど、お酒、飲みます?福島県の地酒「奥の松 サクサク辛口」っていいます。寿司に比べて、ちょっと格は落ちますけど」

「飲みます」

―――大方の予想通りだった。

セイバーも躊躇なく答えやがった!

・・・ああああああああ!

これは、これはまずいぞぉ!

「昼間から、とはかなり堕落した感じですが―――シロウもサクラも責を果たさず行ってしまった。なら・・・とも思うのですが・・・本当にいいのですか?これはシロウへの・・・」

「いいんですよ、スシは出前とはいえ一番美味しい時間に食べないと。それに、それにしたって料理酒代わりに使ってください、って感じで持ってきたわけですし」

少年はそういうと、どこから取り出したのか、お猪口をセイバーに渡す。

それに鮮やかな手つきで酒を注いで、セイバーに促した。

「どうぞ、一杯」

どこで覚えたのか、そもそも、なぜこの子は。

一杯目を軽く飲み下す。

「ああ、これは飲みやすい。それにしても―――」

「ああ、僕はお兄さんの知り合いです。サッカーしてるときに知り合いまして」

「しかし、それだけでこんなに持ってきてもらう理由は」

「まーまー、いいじゃないですか。気まぐれですよ。上に立つなら、そういう考えじゃなきゃ、ね。ささ、どうぞ、もう一献」

その言葉に。

金色の王の。

姿を思い浮かべた。

だけれども、それも少年の気のいい言葉と、酔いに紛れていって。

寿司を食べてたとき以上に無防備に、彼女は酔いに埋没して行ったのだった。

どこか孤独で、孤独じゃない心地よい酩酊は。

遠い過去、後見人とともに飲んだ酒を思い出させた。


少しして。

「そもそもですねっ!ヒロウもシャクラも酷い!一番酷いのはイリニャスフィーリュでしゅけど!」

ろれつが回っていないセイバーを前に、少年は困っていた。

「あの、ですねセイバーさん?酔いすぎじゃないですか?」

「うるさいっ!リンも何をしてるのでしょう!」

「うううう・・・」

ただただ、セイバーの愚痴を聞く時間が過ぎていた。

「平和だからって無防備です!もう少し自覚を持ったほうが!」

―――人のこと言えないよ。

心の中でそっとつぶやいて、少年は―――

「まぁ、でも王様らしい。僕とは違うけど」

ウルクの英雄王ギルガメッシュは、どこか満足そうに笑ったのだった。


結局、士郎はその日アインツベルン城で一夜を過ごし、つまり帰ってこず。

凛は、どこかの箱の中だろう。

さらに桜は一日待ちぼうけだったそうだ。

「―――だからですね!聞いてますか、少年!」

「あーもう!早く帰ってきてよ、おにいさんっ!」

そして、セイバーは一升瓶三本くらい空けて、子ギルは朝まで愚痴につき合わされたとか。

とってんぱらりのぷう



おとがそ
奥の松は福島県は二本松市の酒造会社です。
今、僕の机の下にサクサク辛口あります。
美味しい。

WEB拍手返信
3月4日分
>セイバー、子ギルと出会う。ホロウでは見られなかったシーンですね。英雄王だと知ったらどうするんでしょう
心の底から驚くと思います。10割で。
>「ティーチャーズヘブン」で、アーチャーは何をしてアティに海に叩きこまれるんですか?
あんなやかましい釣りをしてれば、「魚が逃げる」と後ろから海に蹴り込まれても文句は言えないかと。

肉が食べたい管理人に一言お願いします