何かの因果が…俺たちを引き寄せたのか…

 それまで、会いもしなかった、興味さえ持たなかったその少女に引かれるように俺は会った…

 夜の闇に…月の光を浴びて、その人は俺の前に姿を見せた。幻想的で非現実的な風貌は、何よりも、美しく見えた。
 夜の学校を徘徊する、何かに向かって剣を文字通り舞うように振るう…俺はその時、彼女が他人でない事の不安が確信へと変わった。

 この人は…俺の…姉だと……。

 腹違いであるが俺の姉だって…解った…

 “雪幻〜Winter Dust〜”
第二幕『川澄 舞』


 相沢の自己紹介が終わり、適当にホームルームが終わると…担任が出てった野を見計らってか、名雪と美坂香里が早速、相沢に話しかけた。
 彼女達との会話を聞いている限りでは案外、相沢もいい奴には違いない。俺は後ろを振り向くと…
「よう、普通の自己紹介だったな…」
 少々皮肉めいて言うと…前の席からいきなり声をかけられたのか、少し驚きながら…
「悪かったな、んで?誰だ?」
「あ、同じ部活の、陣内陽介君だよ〜」
 名雪が俺を、相沢に紹介してやる……何だか歯がゆいか…
「陣内とでも、陽介とでも好きに呼べ……相沢祐一君」
「ああ、ならフルネームで呼んでいいか?」
「それは余り好かんな……」
「注文の多い奴だな、好きに呼べといったのに…」
 どことなく、性格は北川よりか……何とか乗りを合わせられるなこれなら……
「まあ、俺は相沢と呼びたいのだが……どうだ?」
「ならば、陣内と呼ばせていただこうぞ」
 何故だか、戦国武将のような会話となってしまう俺と相沢に名雪も美坂も…微笑ましく笑って。
「二人とも、もう仲良くなってる〜」
「陣内君を手玉に取れるのは北川君ぐらいだと思ってたけど」
 手玉に取られているのか?いつも北川に…美坂にはそう見えていたのか?俺が…
「……凄いわね、転校早々にクラス1の無愛想な陣内君とぴったり息を合わせるなんて」
「「そんな事無いぞ…」」
 相沢とぴったりと声が合わさって俺たちは顔を見合わせる。
「ほら、いいコンビじゃない」
「何だ?おれを呼んだか?美坂…」
 後ろの席から、北川も話しに加わってくる……
「呼んでないわよ、別に……」
「北川だ、よろしくな」
「おう、相沢だ…名乗られたら名乗り返すのが礼儀だからな」
「変な奴だな……お前……」
 そう言い、北川とも軽い冗談を交わしながら、自分らの名を確認しあう。
「はぁ、結局これでトリオになったわね」
「「「こいつと、一緒にするな!!!(怒)」」」
 はぁ、だんだん俺のイメージが崩れそうなので、3バカトリオはここで解散となった。

「でもなんだな、予想通りのリアクションだったな…相沢…」
 北川はもう初対面とは思わないほど、相沢になついている…俺と会ったときも、こんな感じだったが。
「仕方ないわよ…転校生の宿命だから」
「けど、普通…突然の転校生と言ったら、美少女と相場は決まってるぜ」
「確かに、転校生が男だと少し気が引けるな…男子どもにとってはな」
「ああ、転校先の教室で男子どもに落胆されるのには慣れている…」
 慣れてるとはな、それは難儀な奴だな…
「そんなに転校しているの?」
「親の仕事上な、あっちこっち飛び回ったよ」
「と言う事は、初めてじゃあないんだな……ここは」
 相沢はぎょっとして、丁度部活に出ようとしていた名雪の方を見る…名雪は?顔で相沢を見る…
「名雪から聞いた、子供の頃からよく一緒に遊んでいたと……」
「あ…ああ」
 相沢は不意に俯いた、何だか…思わせぶりな表情だ…まるで、俺と同じで…過去を引きずるような表情。こいつは……
「まあ、深くは聞かん…」
「って!ただ冬休みに遊びに来ただけだ!誤解すんなよ!」
「はいはい、そういう事にしといてあげるわ…」
 相沢が真っ赤になって誤解を取るが、美坂にあしらわれてしまう…
 とも角、相沢もここに居た経験はあると言う事か……大方懐かしのこの街に戻ってきたと言う寸法か。
「それじゃあ、わたしは部活いくね〜、陽介君」
 名雪が部活に行く為、同じ部の俺も立ち上がって
「ああ…俺も行こう、相沢はどうする…このまま居ても暇なだけだ……」
「昇降口まで一緒に行こうよ〜」
 名雪が相沢に頼み込んでいる、こう見ると本当に仲がいいな…
「一緒に行ってあげたいのも山々だけど…あたしも部活があるからパス」
「おれも、学食寄ってから買えるわ…おい、陣内」
 北川に肘でつつかれて、小声で呼ばれる…あ…まあ、そうしなくても俺は邪魔するほど野暮な性格はしていない…
「っと、俺も着いて行きたい所だが…生徒会に用がある…すまんな」
「え〜…みんな用があるんだ〜」
 名雪はのほほんとした声でえーっと言い、美坂、北川、そして俺は二人を残し教室から出ることにした。美坂や北川の二人はとっくに出ている。
「じゃ、先に行っててくれ……上手くやれよ」
「え?よく解らないけど…解ったよ〜」
「おいおい、どういう意味だ?陣内……」
「そういう事だ……さらばだ、相沢」
 相沢…解ってるじゃないか…そういうこって俺は美坂達に続いて教室から出て行った。

 廊下を生徒会室に向かっていると…廊下に今さっき北川と出た、美坂の後姿が見えた。声を掛ける前に美坂は振り返って俺に気づいて…
「本当にふられちゃったわね…陣内君」
「あれ程、仲が良ければな…まあ大人しく身を引くさ」
「陣内君、名雪にその気じゃなかったんじゃなかったの?もしかして、満更でも」
「美坂……」
 美坂はからかうように言うと…俺は少し不機嫌そうに答え、美坂は慌てて手を合わせて…
「ごめんごめん、怒らないで…冗談だから」
「ったく…美坂なら、俺が名雪とはなんでも無かったってわかると思ったんだがな…」
「名前で呼び合ってるから、誰だって誤解はするわよ……」
「部活で嫌でも合ってれば、自然と名前で呼んでしまうんだよ」
 溜息まじりに言うと、美坂は…手を頬にやって…少し表情を赤らめて…
「あたしは、名前で呼んでくれないの?」
「……美坂、似合わないから…」
 呆れながら言うと、美坂はペロっと舌を出して…からかう様に笑いながら…
「あたしもそう思うわ…」
 変な冗談を言い合いながら、美坂と廊下を昇降口に向けて歩いて行く…俺はよく美坂にからかわれるのは、美坂が頭が切れるからだろう。まあ、学年トップだからだろう、上手く丸め込まれるようになってしまう。
「電話で、言ってたんだけど『お兄ちゃん』みたいな物だって」
「誰が?」
「陣内君が…」
「美坂にとって俺は兄貴か……」
「違うわよ、名雪が陣内君を『お兄ちゃん』みたいだって」
 確かに俺は名雪を妹分のように考えている。部活だって…俺が部長の名雪をフォローしてやっている様なものだ。
「性格も正反対だし…そうも見えなくも無いか…」
「名雪に『お兄ちゃん♪』って呼ばれたいの?」
 俺は美坂をギロリと睨んだ、それでは俺がまるで妹フェチっぽいじゃないか…
「冗談よ…そんな、陣内君がそれで喜んでる姿は、ここの女の子達は想像はしたくないわよ…」
 確かに想像はしたくないだろうな…ここの女子共は何でかは知らないが、俺のファンが多い、まったくうざったいことこの上ない。陸上部がなぜ女子部員が多いのは、俺目当てというのかも知れない。
終いにはファンクラブという物ができる始末だ…そのお陰で去年のバレンタインデーは、チョコの山を見てしまった。俺が甘党じゃなかったら捨てている所だ……
「そう言えば、北川の姿が見えないが…」
「本当に学食の方に行ったわよ、カツサンドがどうとか言って」
「まったく、あいつは解りやすいと言うか…」
「変に素直なだけよ…」
 ばかって言ったほうが早いかもな、俺はそう思う……
「生徒会室ってこっちよね、じゃあここでお別れ」
「そうだな、んで聞きたかったが…美坂の部活って…」
「ごめん、急がなくちゃ行けないから」
 美坂は慌てて、自分の部室の方へと走っていってしまった…また肝心な所を聞く前に逃げられたか、何だったんだろうな…美坂の部活って…
「何だろうな……」
 疑問に思いながら俺は生徒会室に足を運んだ、正直…生徒会室には行きたくなかった。なんたって、いつでも…あいつが居るだろうから。

 生徒会、その存在は…学校行事、その他一般を取り仕切る部署でもあり、学園の秩序を守る為に存在しているといった方が過言ではない。
 俺はそんな生徒会が学園側に知らしめる為の『力』の部分として呼ばれた…。

入学当初この学校は俺、そして北川が入学する事を恐れていた、それは……中学の時俺が北川とつるんで荒れていた時であろう。
俺と北川は華音市立第二中で、結構な問題児だった…まあ、そこいらの不良とは違い、タバコは吸わない…というか二人そろって吸えないのが情けない話だが、授業は時々さぼるくらい、成績もそれ程悪くは無く…世間一般の不良学生としては中の下くらいに当たる所だが、一つ違ったのが喧嘩の強さだ……俺と北川はそれで二中の問題児として名前が有名となった。『黄金の鷹』と『白銀の狼』と俺と北川は呼ばれるくらい、俺は喧嘩が強かったのだ…多分黄金の鷹が北川だろう。といっても、喧嘩を吹っかけてくるのが向こうで俺達が返り討ちにしているだけだが……北川も俺と同じくらい強いとは思いもよらなかった。
あんなちゃらんぽらんな顔をして喧嘩が強いのは、おかしな話だが……。
そんな問題児だからこそ、俺と北川は入学を直前まで恐れられていたのは言うまでも無い。ただ、何の理由からかは知らないが…俺と北川は入学を許可された…
北川の両親は「勝ったぁぁー」っと言って喜んだらしい、あいつも受験直前の追い込みで合格した身だ、こんな問題で落とされたらたまったもんではないだろう。俺は一発で受かったけど…

その頃食堂では
「……へっくしん、誰か俺の噂をしてるな」

戻り

 入学後俺は、生徒会に呼ばれた…そして、あいつ…久瀬と出会ったのだ。久瀬は既にその頃から生徒会長となり、いきなり馴れ馴れしく声を掛けてきた。
「君の力を、この生徒会で生かしてみる気は無いかい?」
 聞くところによると、この久瀬が上手く学園側を動かして俺の入学を了承したと聞く。そして、俺はすぐに生徒会へと入れられたのだ。生徒会が俺に求めたのは…『力』と『冷静な判断力』だ…北川にはその『冷静な判断力』に欠ける所があった為、生徒会には入れられなかったが…『力』欲したのは生徒会に反発する『反生徒会』という奴等に知らしめる為だ。
 そりゃ、『白銀の狼』とまで言われた男を生徒会に引き込んだとなれば、反生徒会も恐れをなすのは当然の事…。こうして、『力』と言う鉄壁の壁を作った生徒会により…この学園の秩序は守られる……そんなことで当初は俺もその行為にはいささか不満を持った、力でねじ伏せる秩序など俺には生に合わなかった。
 あの言葉を聞くまでは……
「陣内陽介……君は知らなくてはならない…本当の学園の姿を、学園は段々道を外そうとしているそれを、我々が見せてやる」
 道を外そうとしている、学園を生徒会は修正しようとしているのか…それで俺の力を使おうとしている事を、俺には何だか興味深かった。もしかしたら、久瀬はこの学園を支配しようとしている、もしそうだとしたら…この久瀬が何処まで行けるのか…見てみたい、そう思った。
「いいだろう、俺に見せてみろ、この道を外そうとしている学園を……」
 俺はそう言い、生徒会のメンバーとして…活動する事となった。

 それで、1年…いまだそれは見せてもらっていない。生徒会室の前で立ち止まった…あと少しで、2年目か…俺は、生徒会室のドアから入った。
 生徒会の中には会議室のように机を真ん中に向けて四角にしている。その一番向こうの生徒会長専用の椅子に腰掛けて、食事をしている久瀬の姿が居た。
「陽介か…部活の前に食事に来たのか?」
「まあな、何かあるか?」
 不適な笑いを漏らす、銀髪の長髪を後ろで縛った男…久瀬はコンビニで買って来てある菓子パンの入った袋を俺に差し出した。
 ちなみに、今久瀬が口にしているのはコンビニのスパゲッティーだ。
「君が来るだろうと思ってね……」
「それは、ご苦労な事だ…」
「素直にありがとうと言えないのか、君は…」
 呆れ笑いを浮かべながら、久瀬は言う…こいつのこういう所が俺は苦手である。
「君が、素直に笑うことができる時が来るだろうか」
「気持ち悪い事、ほざくな」
 こいつは危ない、2年生徒会に居てよ〜く解って来た。正直気持ち悪い…
「いや、僕の正直な気持ちだ……今の陽介は自分を偽っているからね」
「……っつ!飯は取った、部活に行く」
 奪い去るように菓子パンの袋を久瀬から受け取ると…足早に生徒会室から出ようとしたら、久瀬が後ろからガバッと腕を回してきた。
 神経から髪の毛の先に至るまで、ゾワゾワっとした感覚が走り抜ける…元々身長の低い俺(167cm)と身長差がある久瀬(180cm)だ…腕力はある為、俺は簡単には抜け出せない。
「君の目の傷…僕が癒せたら…」
「…っつ!!」
 こいつは、2年も生徒会に居れば素性も隠し事もすぐにばれてしまう。まるで人の心のうちを見るように俺の潰れている右目の事を知った。
「離れろ!」
ボス!
「ゲハ!」
 絶えかねて俺は、奴の腹に肘鉄を食らわせ、その隙に奴の腕から脱出した。溝内にはまったのか、久瀬は体をくの字に曲げて…堰を2回ほどした。
「くっ、君の肘鉄を食らうのは、何回だろうな……その威力は衰えないな…」
「お前が生徒会長じゃなければ、この場で殺していた…」
「ふ、この場で荒れたら…停学所じゃ済まされない……退学になれば、君のファンが泣くからな…それに君が隠している全てがばれるのは必須…」
 いやらしい笑みを浮かべながら久瀬は専用の椅子に戻って行った。こういう事をするのは今に始まった事ではない…物心付いた時から…ああ、やだやだ…考えただけで鳥肌が…
「はあ、だったらもうするな…」
「ふん、まあいいだろう」
「良くない…」
「話は変わるが、まあ座れ…」
 久瀬に言われ、俺はいつも俺が座る席に座って、菓子パンを食べながら話を聞くことにした。ちなみに菓子パンはどれも俺が好んで食う奴だ…
「川澄 舞による窓ガラスの被害がまた出た…」
「またか…卒業前なのに、よく飽きずに…」
「まったく、事態を収拾する我々の身にもなって欲しいものだ…」
 川澄 舞…俺が入学当初から、彼女の噂は耐えなかった…3年の女らしいが夜な夜な現れてはガラスを割る行為をしているらしい。
「そう言えば、陽介はこの件は余り関わってないようだが…」
 この件は余り俺は関わりたくないのは、いつかの俺と似ているからか…俺は余り手は出さないで居る…だが久瀬は真っ向から彼女と敵対する姿勢をしている。まあ、彼女の行為は学園の秩序を破る行為ではあり、久瀬と正反対の人物だと言う事がわかる。ただ、俺は手を出さない為か、川澄 舞という人物にすらあった事は無い。
「君はどう思う?いや、参考として聞かせてくれ……」
「…さあな、今ひとつピンと来ないのは、彼女が故意でガラスを割っているのか…それが気になる…」
「陽介もそう思うだろうが…どんな理由があろうと、これは許されない行為だ…近々また処分が下されるであろう」
「まあ、その辺は頑張ってくれ……」
 俺は菓子パンを全部たいらげると、投げやりに話題を切り上げて生徒会室から立ち去ろうとした。
「陽介、川澄 舞が大きな事をしでかしたら、君の力も仰ぐ事になるよ」
「その時はその時だ…」
 吐き捨てるように言い残し、俺はその場を後にした。

「川澄 舞…どっちにしろ俺には関係ない…」
 俺はそう考え、陸上部の活動しているグラウンドへと向かって行った。


 部活も名雪が飯前だから1時くらいに切り上げ、俺は帰路へと付いた…

「なあ、名雪…クイズを出す、理由もなく窓ガラスを割る奴なんて居る?居ない?…」
 部活が終わり、いつもの様に名雪と校門まで歩く時不意に俺は聞いてみた…こいつに聞いても…
「うーん、泥棒さん!」
 やっぱりこう言う回答が来るのは仕方が無い事だろう…
「聞いた俺が馬鹿だった…」
「うにゅ〜、諦めないでよ〜。うーん…多分何か、訳があって割らなきゃいけない事があるんじゃないかな、その人には…」
「……やはりそう思うか」
「うん、泥棒さんだって盗む為にこうして、キーってガラスを切って入るよね…」
 名雪は泥棒のまねをして、ガラスに穴を開け、鍵を開ける動作をする…ちなみに最近の泥棒はもうこんな事はしない。
「まあ、そりゃそうだが……」
「生徒会の仕事も大変だね〜」
「楽な仕事じゃないが…」
「でも、生徒さん一人一人のことを考えているんだもんね」
 生徒一人一人か…本当は、学園の秩序の為だけに動いているようなもんだけどな…名雪のようにのほほんとした奴には、そう感じるんだろう。
「それじゃあね、陽介君っ!」
「ああ…また明日」
 そう言い、解散となった。って、何で俺…こんな事名雪に聞いたんだろう…
 俺らしくも無い……


 商店街で買出しを済まして、家に帰り…ネコ共に昼の餌をやる。これからは、昼に抜け出せないから、隣のおばさんにネコ共の餌は任せることにしよう…
 それからは、大してやる事は無かったので…パソコンで進めていたバイクのホームページの物色をしてから、家の下の車庫には俺がバイトをして稼いだ金で買ったバイクが置いてあった。免許は入学してから、すぐに取った…車と違い、2輪車は免許を取る歳が早いからいい……。
いい改造テクニックをサイトの掲示板から見つけコピーをすると、また特にやることは無い…5時くらいまで仮眠を取る事にした。



……
………

 夢か…ちっ、夢の中でも…ベッドの中に居るなんてな。
 我ながら、情けない…それにしても、ここは何処だ…俺の知ってる場所ではないようだ…ん?何だ、誰かいる…
「陽介…、やっと僕を受け入れる気になったんだね……」
「げ!久瀬!!」
 なぜかジーンズとワイシャツ姿の久瀬が俺の寝ているベッドの脇に座っていた。口にバラの花なんて銜えてる。
「さあ、僕を受け入れてくれ……」
 久瀬は、俺の顎を片手で持って、段々と唇を近づけてきた。
「あ…、い、いやだぁぁーー!!」
 両手で奴の顔を押し返そうと伸ばした……だが、俺の腕は空を切って、目を開けると久瀬の姿は居なくなって、さっきとは違い暗闇の空間に居た。
「川澄 舞による窓ガラスの被害がまた出た…」
 後ろから久瀬の声が聞こえた、暗闇にさっき生徒会室で椅子に座っている姿で久瀬はさっきと同じ台詞を言った。
 話題は、『川澄 舞』の事についてであった。
「まったく、事態を収拾する我々の身にもなって欲しいものだ……」
「そう言えば、陽介はこの件は余り関わってないようだが…」
「君はどう思う?いや、参考として聞かせてくれ……」
「陽介もそう思うだろうが…どんな理由があろうと、これは許されない行為だ…近々また処分が下されるであろう」
 さっきと同じように、俺と久瀬はその川澄 舞の事について話していた。
「陽介、川澄 舞が大きな事をしでかしたら、君の力も仰ぐ事になるよ」
 最後にそう聞くと、久瀬は消えていった…次は名雪が俺のビジョンに出てきた…
「うーん…多分何か、訳があって割らなきゃいけない事があるんじゃないかな、その人には…」
 何気に聞いた質問に、名雪は正直な気持ちで答えた…いや、名雪は感情を偽る事は無い…正直な心を持った奴だ。名雪に聞けば…何か参考になるかと思った…何故?何のことを、この娘から聞いた?遠まわしに、俺は名雪に、川澄 舞の事を聞いたのか?
「でも、生徒さん一人一人のことを考えているんだもんね」
 俺はそんなにお前が考えているほど、人は良くない……それに川澄 舞の事について、俺は何も関係無い…何故? 俺はもしかしたら、関わりを持ちたくなかったのか?
 何故だ……彼女の問題はあったが、触れたくなかった?無意識のうちに……
 心臓の音が鳴り響く…俺は、会っても居ない女に恋でもしているとでも言うのか…こんな感覚初めてだ。
「……」
 後ろに何かの気配がして…俺は、後ろを振り返る…

暗闇に俺と背丈が変わらない、俺たちの学校の制服を着た少女が佇んでいた。闇で顔が見えない…僅かに差し込んだ月の光が、彼女の頬を差しているだけで…
「……君は?」
 体が動かない…彼女にじっと見られて、金縛りにあったように動けない…
チャキ!
 彼女は右手に、何か持ってそれを俺に向けた…それは、両刃の細身の剣だった。切っ先は俺に向けられ…彼女は俺に向かって走ってきた。
「何!?俺を殺す気か!?」
ジャ!!
「ざ…」
 彼女に対抗しようとしても、体が動かない……彼女は俺に剣を振り上げ、斬り付けた。
「せい!」
「やめろぉぉーーーー!!」

ガバ!
 ベッドから俺は勢いよく飛び起きた…ここは、俺の部屋…
「夢見が悪いな、軽い仮眠のつもりが…もう8時か…」
 俺とした事が、五時間くらい寝ていたのか…それにしても、今の夢…不思議な夢だったな…最初の方は抜きとして。
 川澄 舞の話題…そしてあの恋をしているかのような鼓動…いや、違うな…どこか、懐かしい感覚といった方がいい…彼女は何者なんだ。
 そして、最後に俺を斬って来た女…まさか、彼女が…

プルルルル!

 充電中の俺の携帯電話が鳴り、俺はかけてみる。
「陣内だ……」
『おう、陣内か!?おれだおれ』
 ったく夢見が悪い時に……
「あいにく、おれって知り合いは居ないな」
『誤魔化してるのか?おれだ、北川だ!』
「……飯前に何ようだ?」
『いやな、予習をしとこうと思ってな、そしたらノートを陣内に貸していた事おもいだしてな……届に来てもらえないか?』
「お前が予習とは、感心だな……」
『別にいいだろ、それに今度のテスト落とすとやばいんだぞ!おれは…』
 北川は、切実に言ってるのでこの辺でからかうのはよしにしよう…
「解った解った…」
 そう言って鞄の中を確認し始めた。
「そういう事だ…諦めて後輩になれ」
『なにが、そう言う事だ…だっ!』
「…だが、そうも言ってられん…不覚にも俺の分も忘れるとはな」
 部活帰りに行けばよかったな……
『かっかっか、いつものバチが当たったんだ!ざまぁみろ!』
「さて、俺のノートだけ取ってくるか……予習ができないからな…」
 そう言うと、制服のままで寝ていた事を思い出し、携帯電話を耳に当てながら私服に着替え始める。
『こら…待て』
「なんだ、何か不満でもあるのか?」
 着替え終わってバイクに乗る為にヘルメットを用意して、下へと移動する。
『オレのノートはどうなるんだ?』
「………」
『どうして黙る!』
 俺は、即席で…ネコまんまを作って猫たちに与えてやる。
「仕方ない、ついでに北川のノートも取ってくるか……」
『何でついでなんだ?』
 手袋をして…愛用のジャンパーを着て…外に出た。
「まあ、気が向いたら取ってきてやる……じゃあな」
『あ、おい!』
ぴっ
 俺は携帯を切って、ヘルメットを被り車庫の中のバイクを引っ張り出した。これで、いつもより早くつける。
 オンロード系の青い塗装をされたバイクである…
「行くか…」
ブルルゥゥ!
 エンジンをかけると、低い音を鳴らした。今度掲示板にかかれてた、改造してみよう……いい音が出せるぞ。
 俺はそう思うと、バイクを走らせ学校へと向かった。

 バイクを人目の寄り付かない、駐輪所に置くと俺は学校への新入ルートを探し始めた。案の定、一箇所だけ開いているドアを見つけて、その中に入った。
「まったく、無用心な……」
 当然俺のクラスもそのまま、開いているのだ…全く無用心この上ない…まあ…取れるものが取れていいんだがな。
『泥棒さんだって盗む為にこうして、キーってガラスを切って入るよね…』
 名雪の言葉が思い出されて少し吹きだしてしまう…俺も、泥棒さんみたいなものだな…
「俺らしくも無いな……」
 俺はそう思い、教室に入り…机から自分のノートを取ると不意に目に移る…月光。闇に包まれた空間に白い無彩色の光を放ち、教室に柔らかく冷たい明かりをつけていた。
 太陽と対を成す…強く明るい光を出す太陽とは違い、優しい光で周囲を照らす…『夜の女王』とは、誰かの言った言葉だが…それが妙に納得できる物だ…
 俺の名前の由来となる、太陽の光を受け……それは永遠の輝きを得る…。
だが…それも永遠とは言えない、太陽が燃え尽きる時、月もその輝きを失う。と言う事は太陽が、月を殺せる唯一の物か……
 俺が、『月』を殺すのか…月……誰なんだ、ってこんな時に何を考えているんだろう。
ゾワ!
 廊下に人の気配を感じて、俺は後ろを振り返る…誰も居ない…
「………」
 俺は荷物を持って、廊下に出てみた…やはり月の光が差し込むのみで…誰もいない、でも確かに俺の教室を誰か…形容が違ったか、『何か』が通ったといった方がいい。
「誰なんだ……」
ゾワ!
 まただ、俺の背後にその何かが迫ってきた。いや、さっきからここに居て俺に気づかれまいと、背後で息を潜めていたか。だが、俺の後ろを取ったのが…災いしたか…
「甘い!」
 俺は荷物を投げ捨て、それに振り返る瞬間に十八番の上段回し蹴りをそれに食らわせる。
グニャ!
「何!?」
 俺の脚は空を斬る時、何やら違う力が働いたような感じで…空間がグニャっと曲がる感覚が脚に来る。何だ、今…確かに俺の脚は空を斬っただが、確かな『手ごたえ』を感じた…そこに何かがある、何かが居る…
 何者だ!?
ズゥン!
「がは!」
 俺が構えようとした瞬間、それは俺の腹にぶち当たってきた。口に胃液が戻ってくる不快感が襲ってくる…ちっ!俺は幽霊とでも戦ってると言うのか……
「くっ!」
 今の一撃が効いたか……脚が動かない。それは俺に向けて、見えない爪を振り上げる。
「ここまでか……」
 諦めかけたその時、俺の後ろに違う気配を感じて振り返ってみた。
「……君は…」
 それは、さっき見た夢の光景と似ていた。似ていると言うよりそのままだった、俺が見た夢、まさか予知無とか正夢だったと言うのか…
 俺の前に、夢で見た両刃の細身の剣を持った、ここの3年の制服を着た少女がそこに居た。顔は夢とはちがいはっきりと見えた、可愛いと言うより美しいと言う形容が似合う整った顔立ちは、何処と無く俺とにていた。
 夜の闇に…月の光を浴びて、その人は俺の前に姿を見せた。幻想的で非現実的な風貌は、恐怖より、美しく見えた。
「……」
 彼女は夢と全く同じように俺に剣の切っ先を向けてきた。やはり、俺を斬ると言うのか!?そして彼女は切っ先を向けて俺に向かってきた。
「せい!」
「やめろぉぉーーーー!!」
ザシュ!

 斬られたのか、目を開けて確かめてみた……いや…彼女は俺をすり抜けて、俺の後ろに居る何かに切りつけていた。

続く

後書き
 舞さん&久瀬、登場!陽介君は生徒会の人間って設定ですから、これから深く関わってくるのも当然です。それよりも、今回のポイントは久瀬君です!久瀬君は長身・長髪・メガネの生徒会長だと私の頭の中で組み立てられています。
しかも、可愛ければ男も女も関係なく手を出すそんな、オプション付き。上で書かれたとおり、陽介君には特に友情と言うより『愛情』に近い物があるのでしょう…
 そんな久瀬君を当然気持ち悪がる陽介君ですが……友人としては、信用しているらしく、彼の話をまじめに聞いています。
 いつか出たら、ぶん殴るのが…目標ですが…

舞さんの登場、彼女は陽介君にとって今に至るまで謎とされています……それで、登場はかなり謎めいたものと一瞬しかない…
舞 「出番…少ない…」
すちゃ…
 あ、ままま…舞さん!そんな、剣を!?ああ!やめてぇ!次は出番多くするから!!
舞 「………次、一発ネタ集。」
グサァァーー!
 いぎゃぁぁーーーーー!!

一発ネタ集!
今日は陽介君の日常に触れて見ましょう。

 朝ネコっ毛2

 にゃーにゃー、
陽介「よしよし、お前ら…俺は学校に行くから大人しくしてろ…」
 飛びつく猫達、流石に4匹もかかってこられて陽介君も倒れてしまいます。
陽介「解った、解った…すぐ帰ってくるからな」
 そう言って、陽介君は学校に行きます……。

 学校で…
名雪「うー陽介君ネコさんの匂いがするよ〜」
陽介「失礼な!…毎日風呂に入ってるぞ」
香里「陣内君、来る前には必ず制服に付いたネコの毛…取り払いなさいよ…」

 授業中

 授業中、冬場の窓際は寒いといわれています…ですが、日光が当たると、ガラスを通して結構暖かくなります。窓際の人間にはそれは堪らないほどの暖かな環境となります。
 そう、この3人にも…
北川「相沢、今日はあったけーな…」
祐一「ああ、眠りそうだ…」
陽介「……」
名雪「くー…」
祐一「名雪はいつもとして、陣内の奴…体制が全然変わってないな…凄い集中力だな」
北川「…いいや、そうでもないぞ……」
教師「陣内、ここの答えを読んでくれ……」
陽介「はい…織田信長は…」
教師「陣内…それは日本史だぞ今の授業は数学だ…いつも器用に寝やがって」
北川「だろ…いつも器用に目開けて寝るんだよ…だからばれにくいんだよ」
祐一「名雪より凄いな…」
北川「テストの点数は良いんだけどな…」


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