「え――――――?」

それは本当に。

魔法のように、現れた。

目映い光の中、それは背後から現われた。

思考が停止している。

現れたそれが、少女と・・・女性の姿をしていることしかわからない。

現れた少女は、ギィィィンという金属を上げて、俺を殺しかけていた青い男の槍の穂先を打ち払い、ためらうことなく男へと踏み込んだ。

女性は、俺の袂に膝をつくと、その手にした石を翳す。

瞬間、天使のような陰影が見え、そして体の痛みが消えていく・・・

「馬鹿・・・なっ!七人・・・八人目のサーヴァントだと!?ふざけるなっ!!」

―――呆気に取られた男を、剛剣一閃弾き飛ばし、そして少女も驚きを顔に浮かべる。

「ク―――!」

一瞬の隙に、男は獣の素早さで土蔵の外へ飛び出した。

退避する男を体で威嚇しながら、少女は静かにこちらを向く。

その少女の不審の視線を無視するかのように、女性は少女と同じ位置に並んだ。

「―――」

声が出ない。

突然の出来事に混乱していたわけでもない。

ただ、目前の少女が、あまりに綺麗過ぎて言葉を失った。

ただ、目前の女性が、あまりに優しげで、動きを忘れた。

風の強い日。

僅かな雲間から差し込む月の銀光だけが、騎士の姿をした少女と白い帽子の女性を染め上げていた。

少女は翠玉のような瞳で、何の感情もなく俺を見据える。

女性は青玉のような瞳で、飽く迄優しげに俺を見据える。

そうした後、二人は、殆ど同時に声を発した。

「―――問おう。」
「―――問います。」

ああ、何か俺はとんでもないマチガイを犯してしまったのではないか。

そんなことを思う。

「「貴方が―――」」

手を見ると、そこには間違いなく・・・

無意識に掴んでいたのだろう、一枚の円盤。

「私のマスターか?」
「私のマスターですか?」

凛とした声で。

少女は、まさにイメージどおり。

女性は、少しイメージとは外れて。

そう言った。

途轍もない違和感。

両手に焼きつく、鋭い痛みを忘れるほどの。

マスターがどうとか、そんなこと、頭の中から吹き飛んでいた。

だって、少女はともかく。

その女性は。

俺が手にしている円盤に。

描かれている人物と、まるで同じ格好をしていたから――――――


Fate/Summon night
第一話「―――騎士の少女と家庭教師 〜A knight’s girl was supprised at her!〜」


/衛宮士郎・T

「いえ、あの・・・ですから、私もセイバーのサーヴァントなんですよ・・・多分。」

黒髪をツインテールに結い上げた少女に、赤くて長いストレートヘアをした白い帽子の女性は自信なさげにそう答えた。

「で・・・?何で、同じクラスが二人いると困るんだ?遠坂・・・」

俺は、その・・・ここ十数分くらいで、大分イメージを変えることになってしまったアコガレの人にそう聞いた。

憮然・・・どころか、死ぬほど不機嫌なその顔を崩そうとしない彼女を前に、俺は少しあの後のことを思い返していた・・・


とりあえず、殆ど同時にどっちも、セイバーのサーヴァントです、と言ったときから何かが狂っていた。

「同じクラスが二つなどありえない!?貴方はいったい何者だ!」

少女・・・はそう言うと、その手にした剣を(見えないが)、女性に向けた。

「ええと・・・私はアティといいます。突然召還されたもので、事情がよくわからないんですけど、ここに召還された瞬間に色々な情報が頭に入ってきまして・・・で、セイバーのサーヴァントとして呼ばれたんだろう、と。」

「召還?何を言っているのです?」

少女はすごく・・・わけが判らないという顔をしている。

そうして、何か説明を始めようとしたときだった。

「英霊・・・サーヴァントは英霊の座と呼ばれる・・・」

「おいおい、俺を忘れてんなよ?」

槍の男を忘れてた。

そいつは、完全に忘れられていたことに腹を立てていた。

―――ああ、そりゃそうだ。

忘れるに決まってる。

セイバーと名乗った少女にとっても、アティという女性も、そして俺も・・・

あまりに突発的で、十分、その敵を忘れることができていた。

「クッ・・・甘く見られたもんだな!」

男がそう言ったとき、アティと名乗った女性は既にその手に石を握っていた。

「召還!黄泉の呪縛ブラックラック!!」

アティがそう叫ぶと、石は光を放ち・・・

そして、穴の開いた無数の顔が襤褸のフードに取り付いてるような奇怪な物体が現れる。

それは、すぅっ、と男の体に吸い込まれる。

「・・・グッ?!」

「一時的に膂力や耐久力が落ちる術です。ここは退いてください。二人のサーヴァントを相手に勝てるとは思えないでしょう?」

男は不敵に笑うと、アティのその言葉を咀嚼して、そうして言った。

「なるほどな。こんな術、聞いたこともねえ・・・俺に効くほどのガンド撃ちもどきだと?確かに不利だな・・・チッ、その未熟なマスターと一緒にどれだけやれるか、がんばってみてくれ。」

男は、今まで張り詰めさせていた殺気を、霧のように散らして跳んだ。

「お前らんとこのマスターも役立たずみたいだが、うちの雇い主もとんだ臆病者でな。得体の知れないのを相手にするな、帰って来いとよ。まったく・・・」

「待ちなさい、ランサー!!」

少女が叫んだ。

「ああ、追ってくるならかまわんぞ。ただし―――そのときは決死の覚悟を抱いて来い。」

しかし、それには取り合わない。

トン、と身の軽さを自慢するかのように飛ぶと、不敵な言葉を残して男は塀を乗り越えて消えていった・・・


で、その後。

取りあえず槍の男・・・ランサーを追って行こうとした少女・・・セイバーをアティがとめた。

防御側に回った相手を倒すには、三倍の戦力が云々、とか言ってたっけ。

次いで、いろいろと双方が質問をしたり、セイバーが頭を抱えたり、アティが微妙な笑みを浮かべたりとかして・・・

両手に、おかしな模様が浮かんだり。

それが、「令呪」というサーヴァント・・・への絶対命令権だとかどうとか。

外に敵がいるとか二人とも言い出して、それで・・・

見覚えのある赤い男を、セイバーが切り伏せ、そしてやはり見覚えのある少女に剣を向けて・・・

まぁ、その後少々あって、こうして今で聖杯戦争とやらについて説明を受けているわけだ。

どうやら、自分は魔術師同士の戦いに巻き込まれたようだ。

―――特級の聖遺物、「聖杯」の争奪をかけた聖杯戦争―――

7人のマスターが7騎のサーヴァントを従え、殺し合いをする。

そして、残った一組が聖杯の恩恵に授かるというのだ。

サーヴァントは、聖杯が遣わした、過去の英霊たちの写し身。

それを使って、殺し合いをするだって?

―――馬鹿げてる。

――――正義の味方になりたい、俺が見過ごせることではない。

そうして・・・

令呪のこと、サーヴァントのこと・・・いろいろ教えてもらった後、おもむろにアティのことを聞かれたりした。

それで、剣使いセイバーのサーヴァントが二人いるということに、呆れて怒って、しかも「そういえば6人すでにサーヴァントは呼び出されてたーっっ!8人目なんて、聞いたことないわよ?!」って叫びだして、そんで今この状況。

不機嫌な顔をした遠坂は、何かを考えているようだった。

と、そのときアティが唐突に口を開く。

「・・・多分、私は正規のサーヴァントじゃないと思うんです。ここにくるときに知った知識と組み合わせての考えなんですけど・・・」

「ふぅん・・・」

「本来、7騎のサーヴァントは過去の英霊です。でも、私はそうじゃない・・・明らかに私はここに召還されるまで生きていました。これが聖杯が作った偽りの記憶なのかは、私にはわかりません・・・ですが、少なくとも私は正規のサーヴァントじゃない。」

用意された駒は七つ・・・のはずだった。

セイバー

アーチャー

ランサー

ライダー

キャスター

バーサーカー

アサシン

1・2種類変更されることはあっても、基本はその七つのどれかに当てはまるそうだ・・・だが。

「私の場合は・・・多分、この世界では架空の存在・・・でも、おそらく別の時間では実在の存在であることと・・・それと、私の世界の「喚起の門」という装置の誤動作が、聖杯と何らかのリンクを起こして、システムエラーを誘発したんだと思います。」

そう、彼女はセイバーとは名乗ったが、セイバーではないようなのだ。

わからない。

よりによって俺が彼女を呼び出せた理由は・・・?

「ジャぁ・・・俺が、何で偶然呼び出せたんだ?」

「―――それは、もしかしてあなたが握っているもののせいなのではありませんか、シロウ。」

黙って話を聞いていたセイバーが、おもむろにそんなことを言う。

そうして、手を見れば・・・

「あ、忘れてた。」

そこには、藤ねえがぶっ壊した、「サモンナイト3」というRPGのDVDの、欠けた半分が握られていた。

そこには、目の前の・・・アティのシルエットが刻まれていたのだから。

「・・・多分、それですね。」

そう言って、4人ともが、ふぅ、とため息をついた。


「まあ、それは良いわ・・・アティ・・・の言ってることを確かめる術は今はないしね。」

遠坂はそれだけ言うと、セイバーとアティに視線を向ける。

「にしても・・・システムエラー起こすなんて、大分ポンコツな聖杯ね!」

プリプリ怒りながらだが、いうべきことを言い始める。

「衛宮くんから話を聞いた限りじゃ、貴女たち二人とも不完全な状態みたいね。マスターとしての心得のない、見習い魔術師に呼び出されたんだから。」

「・・・ええ。貴女の言う通り、私は万全ではありません。シロウには私を回復させるだけの魔力がない為、霊体に戻ることも、魔力を回復させることも難しいでしょう。」

セイバーがそう答える。

「う〜ん・・・私の場合は、おおむねそんな感じなんですけど、ちょっと違うんですよ。」

「どんな風に?」

「えーと、私の世界の魔術・・・召還術って言うんですけど、それには「誓約の儀式」って言うのが必要なんです。それをしてないからだと。」

二人の言葉を咀嚼して、そうして遠坂は言う。

「驚いたわ。そこまで酷かった事もだけど・・・貴女たちが正直に話してくれるとは思わなかった。どうやって弱みを聞き出そうかなって程度だったのに。」

「敵に弱点を見抜かれるのは不本意ですが、貴女の目は欺けそうにない。こちらの手札を隠していても意味がないでしょう。ならば、シロウにより深く現状を理解してもらったほうが良い。」

「そうですね。それに、あなたは信用できると思いますし。」

セイバーは無表情、アティはニッコリと微笑んでそういった。

「正解。セイバーのほうは風格も十分・・・アティさん・・・のほうも好感持てるわ。・・・ああ、もう!ますます惜しいっ!わたしがセイバーのマスターだったら、こんな戦い勝ったも同然だったのに!」

悔しそうに、遠坂は拳を握ってそう言った。

後は、少し割愛する。

―――だって、遠坂に思いっ切り馬鹿にされて、イメージ崩れて、それでえっちらおっちら街外れの教会へ行くことになっただけだから・・・


「うわ・・・すごいな、これ。」

目の前にはどでかい教会。

正直、こんなに大きいとは思わなかった。

威圧するかのように聳えるその建造物を前にして、少し身震いがした。

「シロウ、私はここに残ります。」

そう、長めの雨合羽を着たセイバーが言う。

同時に、アティも「あ、私も残ります。」と言い出す。

「え、何でだよ?」

「取りあえず、目的地に着いたので、見回りをしようかと思って。襲撃があると大変ですし。」

アティはそういう。

その考えに賛成なのか、セイバーも「これ以上遠くには行かないでしょう?」と付け加えた。

「わかった・・・それじゃ行ってくる。」

「はい、誰であろうと気を許さないように、マスター。」

それだけ残して、俺と遠坂は礼拝堂へと入っていった。


―――そうして、俺は最低の似非神父から、最高に嫌味な台詞をもらって、その礼拝堂を出た。

色々と教えてもらえたし、ある程度戦う覚悟もできた。

それは感謝しても良いかもしれない。

けれど・・・

思い出すだけでも、虫唾が走る、あの最後の言葉。

「―――喜べ、少年。君の願いはようやく叶う。」

言峰綺礼というその神父・・・聖堂教会の代行者は、そう神託を下すように言った。

―――その言葉は、自分でも気づいていなかった、衛宮士郎の本心ではなかったか。

明確な悪がなければ、正義の味方などもありえない。

容認できなくとも、正義に相対する悪は必要だ。

それは―――

衛宮士郎が望む、もっとも崇高な願いと、もっとも醜悪な願いは同義である、と言うことだ。

―――認めるわけにはいかない、その言葉を胸に。

外で待っていた、三人とともに、俺は家路を急いだ―――


その間、俺と遠坂はアーチャー・・・あの赤い男は無事なのかとか、セイバーの真名のこととか、聖杯のシステムエラーとか、いろんなことを話していた。

セイバーとアティは、何を話すでもなく歩いている。

やがて、交差点へとたどり着いた。

それぞれの家路へつく坂道の交差点。

そこは、衛宮士郎と遠坂凛が別れる場所。

「ここでお別れね。義理は果たしたし、これ以上一緒にいると何かと面倒でしょ?きっぱり分かれて、明日から敵同士にならないと。」

「―――なんだ、遠坂っていいやつなんだな。」

本心から、そう零す。

「は?何よ・・・煽てたって、手は抜かないわよ?」

そう言って、クルリと背を翻す。

だが・・・

彼女の足は、まるで幽霊でも見たかのような唐突さでピタリととまった。

「遠坂?」

そう声をかけたとき、ズキリ、と両手が痛んだ。

本当に、唐突に。

「―――ねえ、話は終わり?」

幼い声が街頭に響く。

歌うようなそれは間違いなく少女のもの・・・

視線が坂の上へと引き寄せられる。

煌々と輝く月の元で。

幻想的な風景が、展開されていた。

―――そこには、山のような、と評するのが真実正しい、鉄色の巨人を従えた・・・

雪のように、真っ白な少女がいたのだから。


つづく。



あとがき。

切腹します。

もうだめです。

取りあえず、色々と割愛しすぎました。

でも、これで勘弁してください(汗

次回からは、オリジナルの展開になると思いますので・・・

と言うか、アティについて、遠坂先生がもっと驚くと思った人は拍子抜けかもしれませんが、遠坂の凛さんはスッキリした性格・・・だと思うので、こんな感じで。

―――うぐう〜〜〜もう、言い訳ばかりだ〜〜〜

切腹します。

ではまた。

両作品を冒涜してる気が、すごくしまくっている浦谷でした。

シュワッチュ!!



Ps.以下に、アティ先生のステータス等を乗せます。

死ねって感じです、俺。

先生が強すぎるぜ!?ふざけるなよ?ってのは勘弁してくださ〜い・・・うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁッッ!!!



アティ
サモンナイト3の女性主人公。本来英霊ではなく、異世界の先生であり忘れられた島の代表者。士郎の修復していたサモンナイト3のDVD-ROMを依り代に、聖杯と「喚起の門」の相互干渉によって召還された。宝具の常時効果により、マスターの魔力供給・聖杯のバックアップがなくても現界が可能(むしろ、逆に供給している)。果てしなき蒼と呼ばれる宝具を持つ。セイバーだが宝具に頼るタイプの英霊。本来はセイバーに相当する能力を満たしていないが、果てしなき蒼の特殊能力(抜剣覚醒)の効果によりセイバーの資質を満たしている。また、本来の世界・リィンバウムでも抜剣者セイバーと呼ばれていた。キャスター・バーサーカーの資質も持っている。
クラス  セイバー(?)
マスター 衛宮士郎
真名   アティ
性別   女性
属性   中立・善
筋力C(B〜A) 耐久C(B〜A) 敏捷D(C〜B) 魔力B(A+〜EX) 幸運A(B〜A+) 宝具B
クラス別能力
対魔力:D(B) 一工程の魔術行使のみを防ぐことができる。抜剣覚醒によってランクが上昇する。
騎乗:C 自分の召還した召喚獣に騎乗できる。それ以外は馬に乗れる程度。
保有スキル
単独行動:EX 普通に魔力供給なしで現界できる。宝具が破壊されると宝具が修復されるまで失われる。
先生:A+ 人に物を教えることがうまい。
魔力放出:A 宝具を媒介に魔力を放出する。宝具使用時のみ、展開。
カリスマ:C 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘で自軍の能力を向上させることができる。島の代表者としては十分である。
召喚術:C〜A++ 異界の存在を召喚する。得意な属性が存在し、彼女の場合、霊属性のものと親和性が強い。使用できる召喚獣を増やす誓約の儀式も行える。また、誓約した召喚獣はサモナイト石を媒介とすることでマスターにもある程度扱えるようになる。
正義の味方:A 悪もしくは混沌属性の敵と対峙したときのみ能力がワンランクアップする。
宝具
果てしなき蒼ウィスタリアス:ランクB:対人・強化宝具:レンジ1:最大補足1人・自分 サモナイト石で精製された蒼白く輝く剣。使用時に持ち主は髪が白く、瞳は青くなり、服装が変わる(抜剣覚醒・改)。
元は緑の賢帝シャルトスと呼ばれる剣だったが、紅の暴君キルスレスと呼ばれる対になる剣との戦いで砕け、修復した際にこの名と色を持つようになった。限定された空間の自然(この場合冬木市)とのレイライン=境界線クリプスとつながり、無限に近い魔力を得る。展開時には「魔力放出」のスキルが使用可能となり、魔力・幸運以外のすべての能力がワンランクアップし、さらに魔力がA+となるが幸運がBに落ちる。スキル「正義の味方」と併用可能。弱点は、もし破壊されると、魔力によって修復されるまで精神崩壊に近い症状をきたすことである(スキル「単独行動」も失われる)。

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