ずんずんと、大股開きで歩き出す。

白い少女の手を握って。

楽しくなった来たかもしれない。

うん、戦うのはとってもいやだけど。

それでも、ここにいる人々は楽しい人たちだと直感で理解する。

私のこの直感は外れたことがない。

悪ぶってる人ほど、かまってほしかったりとか・・・

まぁ、いろいろな事情がその人をゆがませているだけ。

私はきっとこの後の生活は楽しいものになると思った。

―――渦中の人になってしまう、士郎君は・・・

きっと昔の私よりずぅっと苦労するような気がする。

あの子、物事深刻に考えそうだし・・・

「ちょっと、離してよ!」

少女がそんなことを言ってくる。

でも気にしないで歩く。

さぁ、居間はもうすぐだ。


Fate/Summon night
第三話「おそらく、日常? 〜Go to Tiger gym?〜」 中編


/衛宮士郎・V

「―――要するに、私と手を組まないか、ってこと。」

遠坂は理解の遅い俺に苛立ったようにそういった。

一連の説明が終わった後、遠坂は当然のようにそれを提案してきた。

あの少女・・・イリヤスフィールのような危険なマスターがいないとも限らない。

そして、俺は未熟で、遠坂はサーヴァントを今現在失っているようなものだ。

「―――え?俺と遠坂が手を組む・・・って?」

まぁ、このときの俺は理解鈍すぎだったわけだが。

「まぁね。私のアーチャーは致命傷を負って治療中。半人前くらいしか活躍できない。そして、あなたはサーヴァントはどちらも最強だけど、あなた自身へっぽこ。私なら、いろいろ教えてあげられるから・・・ほら、足したら一石二鳥でしょう?」

そうして、遠坂はまくし立てる。

俺は、一応反論を試みたのだが・・・

「むっ?あのナ・・・俺はそこまでへっぽこじゃぁ・・・」

「一日二度も殺されかける人が?危険だとわかっていながら、あの危険なマスターを家で休ませてるあなたが?笑わせてくれるわ。」

ハッ、この愚民が。

とでも言いそうな雰囲気でそういった。

・・・昨日、アレだけ反対するセイバーと遠坂を押し切って、イリヤスフィールを家に連れてきたのは俺だ・・・

殺されかけといて、そうする俺は確かに甘ちゃんだろう・・・けど。

「ぐ。けど・・・それは・・・」

「同盟の対価ぐらいは払うわよ。アーチャーを倒されたことはチャラにして・・・マスターとしての知識を教えてあげるし、魔術の腕を見てあげてもいいわ。」

―――確かにそれは魅力的な提案だ。

イリヤスフィールを問答無用で殺そうとして、さらに俺内イメージを悪くした彼女でも憧れの女性ではあるわけだし、その彼女に教えてもらえるのは・・・って何を考えてるんだ、俺。

とりあえず、遠坂とは争いたくない。

これは、憧れの女性云々ではなく、ああ―――本当にこっちの方の彼女は魅力的だからだ。

あこがれていた、優等生などよりも、よほど・・・

「衛宮君、答え・・・聞かせてほしいんだけど。」

その言葉に俺は・・・

即答する。

「わかった、手を組も―――」「ちょっと待ったー!」

ドゴン。

即答したんだけど、それを遮って白い少女が思いっきり俺の背中にドロップキックをかましてきた。

―――なして、こないなことになるんじゃぁ―――!!

そんな台詞を心で叫んで、心をあの世に近いところまで飛ばしてしまったのは、僕と君との内緒である・・・


/アティ・W

あらら・・・

居間につく寸前に、同盟がどうとか、聞こえてきたと思ったら・・・

イリヤちゃんは、全力で私の腕を振り払って駆けていってしまった。

そして・・・

「わかった、手を組も―――」「ちょっと待ったー!」

ドゴン。

あ、クリティカルヒット。

そんな馬鹿げた考えを抱いた。

そうして、居間に着く。

「リン・・・抜け駆けするなんて、むかつくわね!」

「―――なんですって・・・サーヴァントを失った分際で、何言ってるの?」

グッタリしている士郎君の首を双方掴みながら、そんな言い合いをしている。

えーと・・・そんなにがくがく頭揺らしたら、死んじゃいますよ?

と言うか、首をそんな絞めること自体死への一直線です。

「―――ふ、藤ねえ・・・その格好は・・・イリヤ・・・スフィール・・・弟子1号?ゲームオバーチャン・・・」

あ、マジでやばいです。

走馬灯かなんか見えてるような・・・

そんなことをブツブツ呟いてる。

「あの、ちょっと・・・二人ともそのままだと、士郎君があの世へ逝っちゃいますよ?」

見かねて、私が声をかける。

多分、冷汗と苦笑を私は浮かべているんだろう。

とりあえず、二人とも士郎君の首から手を離す。

「ええと・・・何がどうしてこんなことになったんですか?」

「同盟よ。私と衛宮君がね。」

ああ、なるほど。

「とりあえず、私にも詳しく説明してください。遠坂さんはどうしたいのか、イリヤスフィールちゃんはどうしたいのか、を。」

こうして、説明が始まったのであった。


やがて、士郎君も起き出してきた。

「う・・・うう・・・」

「大丈夫?」

遠坂さんが、あんまり心配してない風でそう聞いた。

「―――走馬灯みたいなもんが見えた・・・」

グッタリと、そう言う。

そして、説明再開。

まずは、イリヤちゃんの改めての自己紹介と、士郎君が彼女に名前を教えたりする。

基本的な知識を遠坂さんが教え、そしてイリヤちゃんは・・・

ああ、多分回路を開くみたいに、サーヴァントの情報が士郎君にも見えるように、ほんの少し体をいじっていた。

印象的だったのは、その作業の前のシーン。

士郎君が、遠坂さんからイリヤちゃんをかばったときに、イリヤちゃんの口から出た言葉とその仕草。

「―――礼を言います。セイバー・・・そして、イレギュラーのマスター。敵であったわが身まで気遣うその心遣い、心より感謝いたしますわ。」

昨夜の煌々たる月の下で見た、あのお辞儀のごとく。

澄んだ声でそう言った。

そうして、にっこりと笑うと。

うん、やっぱりこの子もようやく気づいたらしい。

士郎君は、来るものは拒まず、去るものは追わず・・・

そんな人だってことを。

「なーんてね、シロウは私のお兄ちゃんになってくれるよねー!?」

「ごふっ?!」

一直線に士郎君の首にしがみつく。

「な、なにものーーーーっ?!」

遠坂さんは、とりあえず叫んでみたらしい。

まぁ、セイバーちゃんがいたら何か起こってたよね・・・

その後、教会に預けるとか、城に帰せ(?よくわからなかった)とか、一悶着どころじゃない騒ぎがあったのだが・・・

とりあえず、滞りなく(?)説明は続いていくのだった。


やがて、昼時。

サーヴァントの宝具の話とか、その能力とか・・・

一通り説明が終わったころ、遠坂さんは帰っていった。

と思ったけど、すぐ帰ってきた。

どうやら、同盟を組んだことだし、ここにしばらく厄介になるつもりらしい。

まぁ、私も居候の身ですし・・・

よくよく私は居候という言葉に縁があるらしい。

あの島についたときも、食客扱いだったなぁ、といまさらながらに思い出す。

そうして、セイバーちゃん探しに行った士郎君と鉢合わせして、なんか一悶着あったみたいだけど、よくわからない。

―――その後も、士郎君とセイバーちゃんは何事か話していた。

大体、話の内容はわかる。

セイバーちゃんと士郎君の境界線・・・霊脈は変なところで断線しているようだ。

で、しかも私の境界線と混線している部分も・・・あるようだ。

―――少しずつ、その混線の部分から・・・魔力がセイバーちゃんにもれている。

セイバーちゃんも気づかないだろう。

常人の数十分の一以下のその魔力供給は、彼女には自然回復と代わらない。

それが、少しずつ拡大している。

果てしなき蒼を使うたびに、そのほころびは大きくなっていくだろう。

おそらく、あの剣が原因だ。

次にあの剣を呼んだとき、どこまで拡大するかはわからないが・・・

もしかしたら、次は魔術師一人分くらいの魔力が流出するかもしれない。

それは世界から流れ込む、膨大な魔力。

多分、その魔力自体どこか別の・・・場所へも流れている。

それが、どんなこと成すのか、私はまだわからなかった・・・


「夕飯は当番制がいいと思わない?」

遠坂さんは、そんな提案をしてきた。

もう夕飯時だ。

昼ごはんを食べよう、とはまったく誰も口にしなかった。

だって、セイバーちゃんとイリヤちゃんがいろいろ口論したり、ドタバタ騒いでいたらいつの間にやら6時近くなっていたからだ。

「賛成です。」

「そうだな・・・どうせ一緒に暮らすんだしな・・・」

士郎君は、まだ首の痛みとか、背中の痛みが取れないのか。

心なしかグッタリとそう言った。

「・・・私は料理できますよ?」

自信を込めてそう言って、私は立ち上がった。

「へぇ・・・料理するサーヴァントなんて、珍しいわね。」

イリヤちゃんは、ちょっと侮蔑とか込めて、そんなことを言う。

「むむ、馬鹿にしないでください。これでも50年近く生きてるんですよ?料理の一つや二つはできます!」

少し膨れて、そう言うと、「50にもなってるなら、そんな媚々な仕草しないでよ・・・」と、呆れられてしまった。

――うう、気にしてるのに・・・

イリヤちゃんには、ちょっと嫌われてるっぽいなぁ・・・

そんなことを思ってみる。

士郎君は・・・やっぱり疲れた顔で、「はぁ・・・」と洩らし、そして・・・

「じゃぁ、今日の夕食は・・・」

遠坂さんが、そう言ったときだった。

玄関のほうから、声が聞こえた。

「せんぱーい!」

「しろーーっ、ご飯食べに来たよぉーーっ!!」

そんな声が聞こえたのは。


/衛宮士郎・W

―――なぜだ。

なぜこんなことになったのか。

なんでさ。

思考が停止する。

今日は日曜日のはずだ。

なぜ、桜と藤ねえが来るのか。

わからない。

やがて、藤ねえが居間へ飛び込んでくる。

「おっす、士郎!ご飯たーべさーせてー!」

楽しげにそう言った瞬間、反転。

「って、何じゃこりゃぁぁぁぁぁっ!!」

本日、二度目の走馬灯まで後3秒。

―――二日で四度も死に掛けるやつなんて、きっと俺が始めてだ。

そんなことを思いながら、俺は藤ねえの宇宙人じみた跳躍から繰り出される踵落としギルスヒールクロウを食らって闇に堕ちた。


後編へ続く。



あとがき。

前中後編にしました。

まとめ切れなかったとも言う。

切腹。

それと、TYPE-MOON SSLINKSの推薦文で、「ゲームのキャラって設定は・・・」ってのがありましたが、別にゲームのキャラではないですよ。

正確には「Fate世界ではゲームキャラとして認識されているが、次元的に断絶しているはずのリィンバウムは実在していて、そこからアティは呼び出された。それで、Fate世界=サモンナイトにおける「名も無き世界」(1の主人公や、2のレナードさん、3のゲンジ先生が住んでいた世界)である。」という設定です。

―――誤解を解いておきたかった・・・・

それだけです。

ではまた・・・

じゃぁ、後編をお楽しみに。

シュワッチュ!!

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