「ガァァァァァァォォォォォォォォッ!!」
ギャリギャリギャリギャリ。
居間には・・・人っぽいトラとそれに引きづられる哀れな少年の姿があった。
「ちょっと、先生!!先輩が死んじゃいます!!」
長髪の女生徒が、それを必死で押しとどめていた。
「・・・本当に人間なの・・・?」
イリヤちゃんは呆れ気味にそういって、嘆息した。
無論、引きずられている哀れな少年・・・士郎君は青息吐息だ。
仕方がないですね・・・
一寸した物体を呼び出す召還術を最小の力でかけてみる。
すると、突然上からコブシ大の猫の人形が落ちてきて、トラ・・・先生と呼ばれていた人物にぶつかる。
「み゛ゃっ?!」
結構な勢いでぶつかったそれは、トラに猫が潰れたような声をあげさせた。
「落ち着いてください。士郎君を早く放して、それから座って話を聞いてください。」
年の功ってのは、きっと偉大だ。
荒れ狂うトラを、一瞬で鎮めてしまう。
きっと、今の私の顔は、酷い悪戯をした生徒をしかるときよりも起こっていると思う。
まぁ、それはそうだ。
自分のマスターは、踵落しで鎖骨を叩き折られた(?)挙句、引きずられまくって皮膚を酷く擦り剥いている。
そんなことされりゃぁ、それはもう、たとえマスターでなくても怒る。
遠坂さんは、酷く呆れて。
イリヤちゃんは、怒りの視線・・・もう少しで、一般人に魔術を使っちゃうくらい切迫した視線をトラに浴びせかけている。
「―――だ、だって・・・士郎・・・」
「だっても糸瓜もありません!傷害事件を起こしかけて、その程度なんですか?!」
私も怒りました。
だって、この人・・・いい年こいて(多分、二十歳は過ぎているだろう)怒りに任せた行動の後、「自分は悪くないよー」って顔してます。
お仕置きが必要のようですね・・・
―――正直、こんなことはしたくないですけど・・・
というか、するのは初めてです。
ミスミさまはスバル君がまだ小さいころは、よくやってましたけど・・・
とりあえず、ヒョイ、とそのトラを腰を持って抱えて差し上げます。
「―――え、えっ?!」
見ず知らずの人間でも、怒らせれば・・・そして、それが年長者なら、こういうことされても文句言わないで下さいね。
イリヤちゃんあたりにはっ飛ばされないだけ、感謝してください。
「―――お仕置きです。いい年こいて、理性を失ったツケを払ってください。」
自分でも恐ろしくなるほど冷たい声で、そう漏らし―――
ペンペンペンペンペンペン!!
「きゃぁぁぁぁぁっ?!痛い痛い痛ーーーっ!!」
思いっきりお尻叩きの計です。
悲鳴を上げてますけど、関係ないです。
見ず知らずの人間に、お尻を叩かれるのは屈辱でしょうけど・・・
まぁ、自業自得と思ってください。
言っておきますけど、ソノラさんでもあんな行動はしないでしょう。
確信もって言います。
いくら親しい仲の相手(だと思う)でも、死ぬ寸前(?)まで痛めつける馬鹿がどこにいるでしょう。
とりあえず、トラが泣くまでお仕置きしてあげました。
―――私も少し正気を失っていたのかもしれません・・・反省。
Fate/Summon night
第三話「おそらく、日常? 〜Go to Tiger gym?〜」 後編
/アティ・X
さて。
おどおどした感じの少女・・・桜さんが持ってきた食材を使って手早く調理を始めます。
時間は・・・あ、もう9時過ぎてますね。
こりゃ、桜さんだけは送っていく必要があるかもしれません。
―――さっきのトラ・・・藤村大河先生は、まだ頭とお尻を抑えて士郎君に慰めてもらってます。
本当に先生なんでしょうか?
同じ先生という職にある者として、少々怒りとか恥ずかしさとかを覚えました。
そうして、私は隣でトントンと包丁を操っている桜さんを見ながら、先ほどの光景を思い出していた・・・
―――泣いているトラを地面に下ろす。
そうして、私は「反省しましたか?」と言った。
「は、はいぃ・・・」
ちょっとしおらしくなったトラを前に、トラや女生徒の方が何か言い出す前に私はとっさに考えた嘘の経歴を言い始める。
まぁ、これも年の功ですね。
「―――とりあえず、私はここにいるセイバーちゃんの家庭教師をしているアティ、と申します。そして・・・」
セイバーちゃんとイリヤちゃんに目配せする。
俗に言うアイコンタクト。
島の・・・特に、私が来た当時からの知り合いとは、これで通じたりもするが、正直不安だった・・・が。
「私は、切継にあらゆる敵からシロウを守れ・・・と言い付かってここへやってきました。名前は・・・セイバーです。」
静かに、これ以上ないほどの潔白さでそう続けてくれた。
ちょっと呆気にとられましたけど、後は・・・
「ん?私はキリツグの・・・まぁ、血縁者よ。息子に守ってもらえ、って言われたから来ただけ。」
よかった。
きちんとイリヤちゃんにもアイコンタクトは通じていた。
「まぁ・・・そういうわけで、しばらくご厄介になりますので、よろしくお願いします。」
しめやかに、自己紹介は終わる。
でも、桜さんは・・・
「――――」
じぃっと、疑いの目でこっちを見てくる。
ああー、し、視線が痛いっ。
「それはともかく・・・なんで、遠坂、先輩がここにいるんです・・・?」
訝しげに、怯えと敵意の視線。
「―――あら、こんなところで貌をあわすなんて、意外だった?間桐さん。」
―――まるで、見下ろすかのような視線を彼女に向けて。
遠坂さんはそう言った。
お互いを観察するように、二人はにらみ合う。
「しばらく、ここに下宿するだけのことよ。そこの三人と同じくね。」
簡潔に要点だけ言う。
そうして、「これは、衛宮君も了承済みのことよ。だから・・・」髪をかき上げて、威圧するように彼女は言った。
「今までシロウの世話をしていたようだけど、しばらく必要ないわ。こられても迷惑だし、ね。」
あ、爆破。
―――遠坂さんてば、こういう子の扱いを根本的に間違えている。
こういう、おとなしい子ほど、逆上すると・・・
「わかりませんっ!」
ほら。
こういうおとなしい子ほど、怒ったりすると手をつけられない。
「え―――はい?」
遠坂さんは、素っ頓狂な声を出している。
「私には、遠坂先輩の言っていることがわからない、と言いましたっ!」
「ちょ、ちょっと桜・・・・」
私は、見かねて二人の間に入る。
「あのー・・・遠坂さん?それほど邪魔ってわけでもないでしょう?」
そうして、桜・・・さんを見る。
「―――」
じっと見つめる。
―――なんて、悲しい瞳だろう。
諦めと後悔と焦燥と嫌悪が、入り混じった目。
誰かを頼りたくて、でも頼れない。
そんな瞳だ。
「―――よし。遠坂さん、何かあっても私たちが守ればいいだけの話です。だから、問題ないでしょう?」
こっそり、遠坂さんの耳に口を当てて言った。
それから、ちょっと口論になったので(しかも、内緒話で)、ちょっとダイジェストでお送りします。
「―――な・・・」
「いいでしょう?サーヴァントが三人もいて、一般人を守れない、なんてことはないでしょう。」
「そんなわけないじゃない!」
「―――でも、この子の説得は無理ですよ。なら、いっそ守るつもりでいたほうがいいと思います。あの先生を遠ざけるのは、さほど難しくないでしょうけど、この子は・・・」
「わかった、わかったわ。・・・なんて、こと・・・」
数分間の説得の後、どうやら納得してくれたらしい―――が、どこか引っかかるところがあったのだが、そのときの私には気づく由もなかった・・・
まぁ、その後、正気に戻った藤村さんが認めないとか言い出して、私とセイバーさんと剣道で立会いを申し込んできた。
無論、ボロ負けして、セイバーちゃんに説得されたり、復活した士郎君―――無茶苦茶に擦り剥いててしかも絶対鎖骨折れてた・・・と思ったのに無傷だった―――に慰められているというわけだ。
「桜さん、そのネギは・・・」
「ハイ炒めるんですね・・・それにしても料理うまいんですね。」
「まぁ、既婚者ですからねー。料理の一つや二つはできないと。」
「え、結婚してるんですか?じゃぁ、単身赴任・・・」
「まぁ、そういうところですね。よっと・・・」
桜さんとお話しながら、私は大鍋を持ち上げる。
昔は力仕事で結構苦労したが、今はそうでもない。
理屈は簡単。
―――もし、自分が一切の老化をせずに体を鍛えられ続けたら、どうだろう。
常人では、年をとるごとにだんだんと衰えていく能力が衰えず、成長して行く。
つまり、それはたった20年位でも、このくらいの成果を生み出す、ということだ。
「さて・・・」
出来上がったのは、ネギと卵と鰹の塩辛の炒飯とネギの味噌汁。
それからキュウリの味噌和えと、エシャレットの海老とチーズを使ったかわり天麩羅だ。
ううむ、自信作。
それを食卓に並べて・・・そうして、凄絶なバトルが始まるのだった。
「―――人のおかずを取るとは!!それでも人にモノを教える身ですか?!」
「へっへーん、早い者勝ちー。」
「二人とも、たつな立つなっておい、それはマジでヤバごふ。」
「はー、何バカやってんのよ・・・あ、これもらい。」
「イリヤちゃん・・・しっかり、藤村さんの採ってるわね・・・」
「自業自得よ。」
「・・・(苦笑」
「―――(呆れ」
「ガァァァォォォッッ!!」
「叫ばないでください、みっともない!!」
大体、ダイジェストだとこんな感じ。
とりあえず、これからの毎日は楽しくなりそうだ。
うん、それだけはマチガイがない。
さっきもそう思ったけど、それはもう確信に摩り替わって。
目の前で、士郎君が喧嘩しているトラとライオンに踏みつけられているのを横目に、私はそう思ったのだった。
―――冷や汗は流れてたんだけどね。
そうして、楽しい夕食の時間が過ぎた。
本当なら・・・そう、もし彼女らが来なければ、作戦会議でもしていたのだろうが。
―――そうして、私は桜さんを送っていくことにした。
まぁ、士郎君が送るとか、いいです構わないでくださいとか、ひと悶着はあったものの、結局私が送ってきている。
無言で歩き続け・・・そうして、彼女の家に着く。
「―――ありがとうございました。」
「いえいえ、どういたしまして。」
丁寧なお嬢さん・・・士郎君は気づいてないだろうけど、とんでもなく危うい雰囲気を持った子だ。
ちょっと道を違えれば、闇に堕ちかねない。
そんな危うさを持っている。
さて・・・
そんなことを考えていても仕方がない。
私は彼女と別れると、家路を急いだ。
―――家路、か。
一日しかたっていないのに、もう私はあそこを家として認識している。
これからどうなってしまうのか、それはわからないが・・・
この身はサーヴァント・・・いずれ消え逝く身なれば、今を謳歌しよう。
そう思った。
―――しばし、歩き続ける。
破壊された十字路。
昨夜破壊された十字路は、遠坂さんの魔術で、ある程度修復されていたものの、半壊。
場に魔力がたまっている・・・
ふと、気づく。
人の気配では・・・ない。
「―――誰ですか?」
「・・・」
気配は答えない。
しかし、見逃すほど甘くもない。
腰の短剣を抜き放つ。
「出てきなさい、サーヴァント。」
「なるほど、誤魔化しは利かない、と言いたいのですね。」
凛とした女性の声・・・年は・・・計っても仕方ないか。
ゆらり、と目の前に現れた女性・・・
両目に眼帯を巻き、黒の皮・・・らしき服に身を固めた女性はそう言って、杭のごとき短剣を構える。
―――戦いが、始まろうとしていた。
続く。
後がくとき。
ようやく三話終わり。
展開が急で、強引過ぎますが、お許しを。
他のSSも書きたいんです(汗
とりあえず、たぶん聖杯戦争編は・・・原作の10日目くらいで終わるんじゃないかな。
大聖杯の問題もあるけど、10日目くらいで終わる理由も考えてある。
勘のいい人はもう気がついているはずです。
アベシ。
日常編も書く予定。
そっちには、他のサモンキャラも出張る・・・かもしれません。
―――それと、私んサイトでは基本的にネタばれ警告はしないので、それぞれ「ネタばれ?もしや!」と思ったら、ブラウザのバックでお戻りください・・・
―――――三年間、一度も書いたことのない警告を読んだ後のあとがきに?!
試みとしては、斬新カモカモ。<俺って馬鹿?
―――頭おかしいと思ったかも知れんけど、大学院開講したから、忙しくてテンパってるんじゃよ。
いつもと同じだって?
そんなことはないさー。
ライダータソ萌えさー。
セイバーもっと萌えさー。
キャスタータソ救済age。
かつ、イリヤと凛も大好きですょ?
(*´Д`)ハァハァ…
実を言うと、Fateキャラではアーチャー先生が一番好きだー。
俺は、理想がないゆえ、溺れ死ねないぜー。
―――やっぱり、頭おかしいっすわ。俺(死
閑話休題。
それと、20年間、年取らずに修行できたら、強くなれるよな・・・多分。
アティ先生の剣術は少なくとも、セイバーよりは下だけど、藤ねえではへーともかなわんべさ。
死徒と同じ理由で、サモン3の時より大幅にパワーアップしてる上にサーヴァント補正がついてるのです・・・
これでいいのだ。
閑話休題。
次回はライダーvs先生。
街中で騎英の手綱をぶっ放すのか、ライダー。
そして、慎二のアフォに出番は?
とりあえず、4話はvsライダー激闘編。
請うご期待。
ではまた。
シュワッチュ!!