夜の街を走る。

目印は、アティの魔力。

私は霊脈をたどりながら、その場所を目指していた。

―――高速戦闘・・・それも、冗談ではないくらいの高速・・・

この時代の単位でいうなら、音速に達しかねない超速戦を彼女は行っているはずだ。

「シロウ、急ぎましょう。敵は相当の強敵のようです。」

「ああ、わかってる・・・それにしても・・・」

シロウは相当つらそうだ。

それはそうだろう・・・一瞬で、このサーヴァントである身を充足させるほどの魔力を受けたのだから。

おそらく、繋がりから言って、私に注がれたものと同じくらいの魔力が注がれたはず・・・

しかも、未だにその供給は止んでいない。

シロウが平気なのは・・・

供給が安定してしまっているからだろう。

体の熱は、注がれた魔力で身体が常に強化され続けているということ。

今のシロウは、相当に運動能力が上がっているはずだ。

「大丈夫ですか、シロウ?」

「ああ・・・そうだな。体が熱くて仕方ないけど、すごく軽い。」

「やはり・・・」

「今のシロウは、アティ・・・からだと思うのですが、彼女から逆に供給されている魔力で体が強化されているのです。」

「―――ちょっと待って、それってどういうこと?」

リンがそう聞いてくる。

「そんな・・・馬鹿なことがあるわけないわよ!サーヴァントはマスターからの魔力供給で現界しているのだから。」

「しかし、それが事実です・・・召喚が不完全だったためか、私とシロウ、そしてアティの霊脈は混線している様なのです。そこから魔力が供給されている・・・先程のような、急激な供給は、ありませんでしたが。」

「―――それって一体・・・」

リンと私が話していると、シロウはわからない、といった貌で聞いてきた。

「なぁ、よくわかんないんだけど・・・」

「―――つまり、先程の話・・・シロウからの魔力供給がないために眠りを多く必要とする・・・と言った事がなくなったということです。」

冷静にそう言ったが、内心悩んでしまう。

なにしろ、聖杯戦争は二回目だが、まったくこんなことは聞いた事がない。

一体どういうことなのか・・・謎だらけだ。

しかし、ひとつわかること。

それは、思う存分剣を振るうことができるようになったということ。

そう思ったとき、空が猛烈な光を放つ。

「あそこだ!行くぞ、セイバー、遠坂!!」

シロウの言葉と同時に、私は鎧を身に纏い・・・

出来得る限りの全力で駆け出したのだ。


Fate/Summon night
第四話「vsライダー 〜Battle of Medusa〜」U


/アティ・Z

「ハァァァァッ!!」

縦一文字に剣を振り下ろす。

ザンッ!!

剣は宙空を切るが、それでもなお放たれる魔力が天馬の機動力を一瞬奪う。

「―――この子についてくるとは・・・あなた、本当にセイバーですか?」

「セイバーは他にいますよ。わたしはただの・・・先生ですっ!!切り裂け闇傑の剣ダークブリンガー!!」

闇色に溶けた五本の剣が天馬を襲う。

それを、先程と同じくひらりと避けられる。

だが、その隙を見逃す私ではない。

「―――鬼神斬鬼神将ゴウセツ!!」

ザンッ!!

再び、私ではない刀が神速で天馬を襲う。

「クッ!?」

それが天馬をかすった!

「イヤァァァァァァッ!!」

必勝の信念と揺るがぬ心を持って戦う限り、この剣は無敵だ!

そう思った時、果てしなき蒼はその輝きを増す。

ワイヴァーンの動きに沿って、剣を真一文字に振りぬく。

ライダー・・・はその釘を使って防ごうとするが・・・無駄。

この剣がそんなもので防げると思うなら、甘いとしか言いようがない。

遥か昔の私ならいざ知らず、完全にこの剣を使いこなしている私を・・・

「舐めるなぁぁぁぁぁあぁっ!!」

ガキィンッ!!

剣が、釘を砕き切る。

今がチャンスだ。

暴走召喚オーバーロード切り裂け闇傑の剣ダークブリンガー!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・

空間を、五本の剣・・・いや。

数百に及ぶ、闇色の剣が私の前に降り立つ。

私・・・いえ、果てしなき蒼ウィスタリアスの力で限界近くまで召喚獣の命を搾り取る業。

正直、この業だけは使いたくなかったが・・・

聖鎧竜スヴェルグ、竜神オボロ、牙王アイギス。

この私の使える大召喚の内三つは、地上でしか使えないとか、スピードのあるものには利きにくいとか、そういう性質がある。

そして、残る一体・・・ヴァルハラは私が苦手とする機界の召喚術で、こういうギリギリの鬩ぎあいで扱うのは厳しい。

―――ならば、これしかない。

生命を持たない、リィンバウムに存在する剣たちの影を操る、シャインセイバー・ダークブリンガー。

これならば・・・少しは心が痛まずに済む。

「GO!」

ガガガガガガガガガッ!!

空気を砕くように、現れた数百の剣は狙いたがわずライダーへと向かって収束した。

「クッ・・・!」

その剣の舞をかわしながら、彼女はその唇を焦りの形へと持っていく。

「仕方が・・・ないっ!」

彼女は声がそう聞こえる。

そうして・・・

「・・・っ?!」

魔力が、あの輝く手綱へと集まっていく。

それは、紛れもなく・・・

騎英のベルレ―――」

―――宝具の発動―――!

「―――手綱フォーン!!!」

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!

数百の剣を蹴散らして、神速の天馬は一条の光の矢と化して、私を突き刺すだろう。

そう確信する。

しかし、それを黙ってさせるわけにはいかない。

「―――破滅の引金ヴァルハラ!!」

目の前に現れた、機神がその手にした巨大なレーザー砲で・・・その敵を狙い打つ!

カッ!

ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッン!!

轟音。

閃光。

そうして・・・

気づいたとき、目の前は虚空・・・

消耗も激しい。

辺りに・・・彼女の姿はない。

成らば・・・

そう思ったとき、地面へと墜落していく彼女の天馬が見えた。

「―――ワイヴァーン、お願い・・・」

私の飛龍にそう頼むと、彼は落下していく彼女を拾う。

そして・・・

地面に降り立った瞬間、消えて行った・・・


「―――大丈夫ですか、ライダー。」

しっかと地面に立つ敵に私は声をかける。

その傷は、回復召喚聖母プラーマによってほぼ完治している・・・魔力以外は。

魔力が回復していないので、闘うことは出来ないだろうが、去る事くらいは出来るはずだ。

「なぜ。」

彼女が疑問の声を発する瞬間、私はそれを封じるように続けた。

「関係ありません。私が勝ったのだから、敗者は言うことを聞くべきでしょう?いつか、私の親友にも言ったような気がしますが・・・」

苦笑を浮かべて、私は続ける。

「出来れば、私はこの戦争を止めたいと思っています。この戦争には何か裏がある。意図的・・・作為的な・・・まるで出来レースを戦わされているような感じを、この二日間の戦いで感じました。」

正直な感想。

なんでも願いがかなう、という聖杯。

しかし、そんな都合のよいものは、決して存在しない。

界の意思たるエルゴにも、そんな万能の力はなかった・・・と私の知り合いの誓約者は言っていた。

この世界の・・・エルゴ、と呼んで良いかはわからないが、それはリィンバウムのそれよりも強いはず。

だが・・・それでも、私にはそんな力がこの世に存在するとは思えなかった。

「蟲毒・・・という、呪術があります。これはそういうものなのではないか、と私は思っています。だから・・・」

「だから、誰も聖杯を手に入れることなど出来ない―――と?」

「ハイ。」

そう言って、私は手を伸ばす。

「ですから―――」

「仲間になれとでも言うつもりですか?ならば、甘いとしか言い様がない。私は・・・マスターの・・・あの可哀想な少女を助ける為に、戦わねばならないのです・・・」

私の誘いを、意にも介さず、彼女はそういうと踵を返す。

とたん、セイバーちゃんの気配がする。

「―――なるほど、彼女が本当のセイバーですか。助けられたこと、礼は言いませんが・・・どうか御武運を・・・聞いても無駄でしょうが、真名は?」

「アティです。」

「―――いきなり真名を教えますか、あなたは・・・色々と弁えてはいるようですが、やはり甘いですね、貴女は・・・」

呆れを声に混じらせて、彼女は言う。

「だが、それが好ましい・・・貴女なら・・・」

そういいかけて、口ごもる。

「いえ、何でもありません。では・・・」

セイバーちゃんの気配が、一層濃くなった瞬間、ライダーはその姿を闇へと躍らせた。

俊足で、セイバーちゃんは私の脇へとやってくる。

「どうなっているのです?」

セイバーちゃんは有無を言わせぬ口調で言葉をつむぐ。

「・・・ライダーと交戦して取り逃しました。それだけの事です。」

「つまり・・・先ほどの光は、宝具のぶつかり合いですか。」

「そういうことです。バーサーカーより与し易し、と思ったんですが、ちょっと相性の悪い敵でして。」

「なるほど、力攻めが通じ難い者ということですね。」

「ご名答です。」

私とセイバーちゃんがそう言っていると、

「おぉーーーい!!」

遅れて士郎君と遠坂さんがやってきた。

さて・・・ここは・・・新都のほうですか。

士郎君たちに説明しないといけませんね・・・

そう考えながら、セイバーちゃんを伴って声のほうへと歩き始めた・・・


ふと気付く。

何だろう、この気配は。

―――ジルコーダの群れの如き、気分の悪い気配。

その気配に身震いする。

士郎君たちと一緒に帰ろうとした、その瞬間の話だ・・・


続く。



あとがけ。

やぁ、短い。

ていうか、まぁ・・・

先生はやっぱり強いや。

次回は、学校。

アティ先生が本来の職業に成りすまします。

請うご期待。

では・・・また。

シュワッチュ!!


(ステータス情報が更新されました。)
暴走召喚:A+ 果てしなき蒼の力で、召喚獣の命をギリギリまで搾り取って放たれる召喚術。召喚術の威力を瞬間的に倍加(+がつく)するが、5%の確率で召喚石が失われてしまう。また使うたびにアティの属性が混沌に近くなっていってしまう。
洞察力:C ある程度の物事を理解し、考えることができる。Aクラスになれば、未来視とそんなに変わらないレベルに達する。




Ps.こっからは反転です。

これからのネタばれを含む(かも知れない)、ネタなので。見たくない人は見ないでください。

久遠の剣製This illusion
ランク:E-〜EX(能力は秘密、誰が使うのかはたぶん想像通り)
詠唱
I am the born of my sword.(体は剣で出来ている。)
Steel is my body,and fire is my blood.(血潮は鉄で、心は炎。)
I had created over a thousand blades.(幾たびの戦場を越えて不敗。)
Unaware of means.(それには何の意味もなく)
Nor aware of regrets.(そこには何の意味も不要ず)
Withstood pain to create many weapons.(担い手はここに孤り)
This blade is waiting for one's arrival(我が持つ剣が鉄を鍛つ)
Sure,I have clear regrets. those hands will hold a precious wish.(ならば我が生涯の意味は明白であり)
My whole life and My holding blade were "This illusion"(この体は久遠の剣で出来ていた)


誰かに先に使われるのが怖かったんだよぅ。もう書かれてるかもしれないけど・・・(自爆

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