―――おい、あの女誰だよ。

―――先生か?

―――かなりの美人だ・・・

ああ、なんか予想通りの反応が聞こえます。

こちらアティ。

私、今・・・学校に潜入しています。

何でこんなことになっているかというと・・・


Fate/Summon night
第四話「vsライダー 〜Battle of Medusa〜」V


衛宮士郎・X

―――半日前。

遠坂の部屋(ということになってしまった、我が家の洋間)にて。

魔術について、いろいろお話を聞き、そして・・・

まぁ、なんと言うか、強化にことごとく失敗し、マジで呆れられて・・・それで、いつの間にやら別の話に切り替わっていた。

「学校に・・・結界?」

遠坂の言葉は、ちょっと信じがたかった。

「呆れた・・・あんな結界、魔力が少しでもあったらすぐ気付くわよ?」

遠坂は、すんげぇ呆れた顔で続ける。

「あのねぇ・・・まぁいいわ。数日前くらいから、少し違和感感じていたでしょう?」

「それは・・・まぁ。ホンの少しは。」

「それが結界よ。まったく・・・なんでこんなのが、あの二人のマスターなわけ・・・」

はぁ、と溜息をついて遠坂は箱から一つ、小さな飴玉・・・と言うか、光沢からいうと、間違いなく石を取り出し、俺に渡してくる。

「―――これ、何だ?」

「さっき言ったでしょ。魔術回路を安定させる薬よ。セイバーの話では、アティさん・・・のレイラインから魔力が貴方に注がれている。本来有り得ないことなんだけど・・・起きているのだから仕方ないわ。」

そこで言葉をいったん切り、その宝石(?)を飲み下すように指示を出す。

実を言えば、体の火照りは全然消えていない。

汗もダラダラ、非常に不快だ。

「本当は、それは魔術回路を強制的に開く薬なんだけど、今の・・・回路が常に半開きになってる状態の士郎には、逆に安定剤として働くはずよ。」

わけもわからず、首肯してそれを飲み下す。

「―――マジでこれ、石だ・・・」

「だから、宝石よ―――」

そういった遠坂を見詰めながら、その石が喉を通り抜けるのを待つ。

ちょっと苦しい。

それが胃に落ちたのを感じて、俺は大きく息を吐いた。

「―――はぁっ!で・・・これで、何が変わるんだ?」

「さっき、魔力の流入で開いた回路を閉じようとしたでしょう?それをもっと強く思い描いて。さっきの様子からすると、スイッチの切り替えはできるようになったみたいだし?」

―――なるほど。

頭で全然理解できてなかったことが、染みるように体で理解する。

あの時思い浮かべたのは、撃鉄。

―――半分上がった撃鉄を、脳裏に浮かべる。

それは、今の俺の状態。

それを・・・あの時開いた27本、すべてについて幻視する―――

―――思いもよらない言葉が、俺の口から滑り出たのはその時だった。

「―――I am the born of my sword体は剣で出来ている.」

「は?」

それは、本当に無意識から出た言葉。

きっと、奥深く、末那識の中の、阿頼耶識に近く在る場所から漏れ出る言葉。

ガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキン!

カチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチンカチン。

途端、撃鉄が上がり、そしてあっという間に降ろされた。

「―――あ。」

途端に体の熱が消える。

あっという間に、体に張り付いた汗が冷え始めた。

「寒い・・・」

いきなり熱がなくなって、冷えた汗の冷たさに、俺はちょっと場違いな言葉を出してみた。

「―――へぇ、あっという間にスイッチの開閉のコツ覚えるなんて、才能、少しはあるのかもね。」

遠坂が感心したように言った言葉に、俺は微笑んで「遠坂って、やっぱりいいやつだよな・・・」と、まだ熱に浮かされているように呟いてみた。

「―――っ?!ば、馬鹿っ!なに言ってるのよ、あんたは!」

照れているのだろうか、叫ぶ遠坂の声を聴きながら、長らく忘れていた眠気に身を任せてみた・・・


アティ・[

土蔵にて。

私は、士郎君が「作った」と思しき、数々の物品を手に取って眺めてみた。

「―――体は剣で出来ている・・・か。」

夢で見た・・・多分士郎君の心の声を思い出す。

「悲しいですね、やはり。」

昔の自分と少し似ているあの少年。

心は空虚で、人の幸せを自分の幸せと錯覚し、頑張って頑張って頑張りぬいて・・・

「あの時、碧の賢帝が折られた時、ウィルの声で立ち上がった時、そして果てしなき蒼を手にした時・・・」

私は一度死んで蘇った。

私は相変わらず甘かったけれど、それでも私はそれまでの自分のまま、変われたのだと思う。

大切な人を守り、幸せを築く。

自分にとって、あの島なくば幸せもまた無かっただろう。

「体は剣で出来ている・・・」

もう一度、彼の言葉を思い出す。

なぜか、その後に続く言葉を、私は容易に思い描くことが出来た。

「―――血潮は鉄で、心は硝子。」

うん、きっとそう在ることでかつての自分は満足していた。

壊れそうな心を、鉄と信じた何かで埋めて。

その・・・鉄に溺れて死に掛ける。

私はそこで、漸く気付くことが出来た。

「自分の目に届く範囲の大切なものを守るため、襲い来るものと戦い、手にした平和はきっと一時。」

「―――そこまでわかっているのなら、何故言ってやらん。イレギュラー。」

気付けば、後ろには赤い外套をまとった長身の男が立っていた。

「それには自分で気付かないと無意味なんですよ。不用意な手助けは・・・出来ません。」

「あの愚か者の心は、お前は思っているよりはずっと強固だ。此の侭ではいつまでたっても気付くまいよ。」

皮肉げな笑みを浮かべて赤い男はそう言った。

「―――気付かせてあげますよ。似たような境遇ですからね。」

「ほう?」

赤い男の言葉に、私は無表情で言う。

「私は、両親を野盗のために亡くしました。私は・・・そのとき空っぽになってしまったんです。だから、私は笑うことにしました。私が笑えば、その空虚は埋められる・・・そう信じていたのかもしれません。」

「そうして・・・理想を抱いて、溺死し掛けたわけか。」

「そうです。」

苦笑して私は言う。

「でも、私は自分の生徒・・・愛する皆から分けてもらったものは、しっかり私の中で息づいて、私は空では無くなりました。だから・・・そういう・・・大切なものを見つけてほしい。」

「しかし、あの小僧は、その大切なものよりも、弱いもの、消えそうなものを守ろうとするだろうな。大切なものを捨てて、やせ我慢してな。」

「―――なら、引っ叩いても気付かせてあげます。私は、先生ですから。生徒を正しい道に導くのが、私の役目です。」

ふん、と鼻でそれを哂い、

「なるほど。まぁ、せいぜい楽しみにしているよ。」

その皮肉交じりの笑みを絶やす事無く、赤い男は消えた。

「アーチャー・・・」

そう言った時ふっと胸に浮かんだ、他愛もない考えを打ち消して、私は居間のほうへと向かって歩を進め始めた・・・


衛宮士郎・Y

―――気乗りせぬままに、遠坂と二人で歩く。

あの後・・・アティとセイバーに寝床へ運ばれたらしい。

昨夜の薬のせいだろうか、体がなんかギクシャクする。

魔術回路の開き方もわかったというのに。

起きた後聞いた、新都での昏睡事件の話とかもあって、俺は少々気分が悪かった。

やがて校門へとたどり着いた。

そういえば、セイバーがどうしてもついていく、というのをアティと二人でとめたっけ。

護身用の・・・召喚石、というものを渡すこと、どうしようもなくなったら令呪を使うことを約束させられて、俺は学校へと出だした。

今日も桜は弓道部の朝練で先に出た。

―――さて・・・

正門には確かに登校する生徒たちの姿があり、学校はいつもどおりの日常を迎えている。

「――――」

にもかかわらず、やはり・・・

奇妙な違和感を感じる。

先週まではまったく気づいていなかったが、注意すれば確実に感じるその違和感。

「―――なんだ、これ。外と中じゃ全然空気が違う。甘い蜜みたいな感じじゃないか。」

「へぇ。士郎にはそう感じられるんだ。魔力感知は下手だけど、世界の異常には敏感なのかもね・・・」

少々驚いた風だった遠坂は、ふうん、と何かを考え込む。

「それにしても言い得て妙よね、甘い蜜って。ウツボカズラとか。」

「―――なかなかに凶悪な例えだぞ、それ・・・」

ニッコリとしてそういう遠坂に、俺はゲンナリと言葉を返す。

それに対して彼女は髪をかき上げて言った。

「そう?士郎の直感は外れてないと思うけど。だって、この学校・・・結界って言う蓋が閉まったらみんな食べられちゃうのよ。」

その言葉に愕然とする。

―――無関係な人間を巻き込むような戦いをするマスターがこの学校にいる。

その事実が、俺を少し締め上げた。

「わかっているでしょう?なら―――」

「やるべきことは、ひとつ・・・だよな・・・」

俺はそう言うと、いっそう悪くなった気分を押し込むように、校舎へと向けて歩き出した・・・


アティ・\

私は、こっそりと家を出ようとした。

目指すは、学校。

士郎君の魔力を追えば、自ずと位置はわかる。

ならば・・・

そう思って、こっそり裏口から兵を飛び越えようとした時。

「―――何処へ行くつもりですか、アティ。」

くそぅ。セイバーちゃんに見つかってしまった。

「あ、ああー、これはデスねー。」

慌てふためく私を見て、セイバーちゃんはふぅ、と溜息をついた。

「わかっています。シロウの学校・・・へと行くのでしょう?」

「―――はい。」

私は、その言葉に瞬時に冷静さを取り戻してそういった。

「ならば、私も行きます。サクラもタイガもいない今なら、この家を留守にしても大丈夫でしょう。」

「用心のために、私の使い魔・・・というと変ですが、召喚獣を放っておきましょう。」

セイバーちゃんの言葉に答えて、二人は同時にコクリと頷く。

そうして私はゴレムを呼び出して、彼を留守番とすると、学校へ向けて歩き出した・・・


ドライアードの香気を身にまとった私たちに、道を歩く人は何の違和感も抱いていないようだ。

―――少々、注目されて入るようだが、それはきっとセイバーちゃんのせいだろう。(正確にはかなり違うというか、半々で彼女のせいだ。)

やがて学校へと着く。

それで、塀を目立たないところから飛び越えて、そして・・・

冒頭へと続くわけだ。

―――あの金髪の女の子、かわいくね?

―――てか、何?転校生?

――――ぶっちゃけありえねえ・・・

周囲の好奇の目を

「さて、どこから探しましょうか。」

「そうですね・・・」

私たちはそう言って、校舎を歩き出したのだが・・・

続く。


次回予告

―――嘘吐きました。

先生にまだ成りすましてません。

でも、今日は時間切れなので、ここまでです・・・アベシ。

シュワッチュ!!

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