/Interlude 凛/不浄罹

目の前の異常をどう表現すればいいのか。

それは、紛れもなく死の軍勢。

サラリーマン、少年、OL、老人、学生、etc…

それぞれが手に似つかわしくない得物を持って。

幽鬼のように歩いていく。

その中で、私は一人、生きていた。

そう、目の前の軍勢は"死"んでいる。

死者の群れ、屍人の群れ。

「一体、これは、なに・・・?」

ギリ、と歯をが鳴った。

死をもてあそぶ意志、そこに愉悦を見出す何者かの意志を感じたから。

そう、そうだ。

これは、柳桐寺のサーヴァントの仕業ではない。

そこに気付く。

アレの論理は魔術師だ。

利用できるものは何でも利用し、搾り取る。

こんな風に、意味もなく ――本当に?―― 人を殺したりはしない。

何より、許せないのは。

一般人を、これほど大量に巻き込んで。

いいと思っている、やったやつの精神。

ぐるぉぅ

死者が、自分に気付いた。

紛れもない、紛れもあるはずがない。

彼らは、私を、この遠坂凛を。

自分たちの戦列に加えるべく、こちらへ進路を変えた。

「ふん、良い度胸じゃない。今の私は機嫌が悪いわ」

出来るだけ冷静に、声音を落として。

それでいて、私のどこか酷く熱い部分が。

こいつらを、彼らを殺したものを。

存在させておくな、と。

このとき私は完全に忘れていた。

衛宮士郎という、恐るべきバカの存在も。

柳桐寺にいるはずの敵のサーヴァントも。

家にいるはずの、アインツベルンの切り札のことも。

ただ、目の前の死者へと眼を向けて。

「心の贅肉だけど、助けてあげる。もう戻れないのだから、殺してあげる」

自分には似つかわしくない、詩的な台詞を吐いて。

左腕の魔術刻印を露出させた。

アーチャーはいない。

こんな時に、あのバカは何をしているのか。

少し腹が立ったが仕方ない。

多分、一足先に士郎の向かった先へ行ったのだろう。

この異常に、彼は気付いているだろうか。

いや、気付いているはずだ。

眼前の死者は20。

私一人の戦いが始まった。



「十三!結構しつこいわね!」

残り七体の死者を前に、私は叫んだ。

「てぃ!!」

ガンドがまた一体、死者を打ち倒す。

残り6。

この死者はそんなに強くない。

それどころか、ガンドの一撃で崩れていく。

だけれども。

「はぁっ!」

また一体消える。

この違和感はなんだろうか。

この感じは、まるで。

まるで、アティの召喚術のような。

それでいてどこか違う。

邪で、バラバラで、それでいて純粋で、故に。

―――狂っている

そんな意志を感じる。

考えすぎだ。

考えるな。

自分は少しだけ混乱している。

この目の前の状況に。

この吐き気を催すような、敵のサーヴァントの所業に。

「これで最後!!」

最後の一体が崩れて消えた。

「――― 一体、これは、なに・・・?」

私は、死者を見つけたときに吐いた台詞を、もう一度反芻して。

そして、みんなが向かった先へと向けて踵を返した。

だけれども、私は気付いていなかったのだ。

そう、そう。

アティからもらった召喚石が。

怒るように、鈍い光を放っていたことに―――


Interlude out


あとがき

矢継ぎ早、矢継ぎ早に行きたいです。

では。