/アティ・confusion -異状なし?-

そうして、一夜が過ぎた。

徘徊する死者たちを警戒して、イリヤちゃんを含めて全員まんじりともせずにいるうちに夜は明けてしまっていた。

憂鬱な気分でテレビをつける。

あんな事件、報道されないわけもない。

「――――今日の天気は・・・」

え?

嘘。

どこかで報道されていると思った私は、呆気にとられていた。

というか、報道されて然るべきというか。

しかし、どこのチャンネルでもそんなニュースは報道されていない。

うーむ・・・情報が遅いだけ、というわけでもなさそうですし、報道管制でもしかれたのだろうか?

柳洞寺はどうなったろう?

あそこを偵察に行ったライダーが戻ってくるのを待つ。

今は午前六時。

朝食にはまだ早い。

下ごしらえでもしておこうか、と立ち上がる。

士郎君は起きない。

あのまま、死んだように眠っている。

アーチャーは凛にこっぴどく怒られ、後の様子を見たところ令呪を使われたみたいだった。

「全く、チャンスの一つも与えてくれない、とはな。まぁ」

それは今回ではないのだろうよ、と平然と述べてアーチャーは霊体化して消えてしまった。

味噌汁を作る。

なんというか、こっちの食材はあんまり慣れないのもあるのでそれは除いて、冷蔵庫からお芋を出してそれを具にする。

誰も起きては来ない。

みんな、寝てないのだから、仕方がない。

多分、桜さんだけは来るだろうから、彼女と多分起きてるセイバーちゃん、それから自分の分は作っておかないと。

キャスターと葛木先生の分はどうしようかな。

一応、敵地だし食べないかもしれないけど、作ってだけは置こうか。

そういえば、それでもひと悶着あった。

凛とセイバーちゃんが家に入れるのを思いっきり反対したのである。

新都の事件を起こしていたのは彼女、士郎君を連れ去ろうとしたのも彼女なのだから、当然だけど。

そっちの方は葛木先生が取り成してくれた。

そういえば、彼のフルネームを知ったのもその時だ。

まさか、士郎君たちの先生だったとは・・・

なんというか、先生は先生を呼ぶというか。

何事にも無関心なようだけど、キャスターのことは気にかけているようで、少し安心した。

そうでなければ、人に見えない。

今、アサシンは門番をしている。

―――どこまでも門番に特化した人ですね。

心の底からそう思う。

「何、慣れたことよ。あの辛気臭い寺と違って、ここは華が多い。それだけでやる気も違うというものだ」

そんなこと言ってた。

逞しい男の人だ。見かけと違って。

―――残った謎は多くある。

一つは、死者。

あれはリィンバウム、サプレスの召喚術を使わなければ作り出せないモノだ。

この聖杯戦争には、自分以外に召喚術を知るものが参加してる。

そうとしか思えない。

一つは、契約。

キャスターの宝具、
破戒すべき全ての符ルールブレイカー

これは、宝具によるものを除く、すべての魔術的な結果を打ち消すものだという。

その理屈通りなら、これが効かないのは果てしなき蒼による繋がりだけ。

だというのに、何故か。

―――破戒された令呪を何かが修復した。

そして最後に、私は、何故、キャスターをアサシンを、助けたのだろうか。

見捨てることだって出来たはずなのに、何故かこの体は動いた。

それは、制約のようであり、誓約のようでもあった。

そこまで考えたとき、居間にライダーが戻ってきたようだった。

「お帰りなさい、ライダー」

「―――柳洞寺は、いえ、全てそうなのですが」

前置きもなく彼女はそう言って。

「全く、痕跡はありません。貴女がたの戦いの跡すら」

とんでもない事を口にした。

「嘘、でしょう?」

「いえ、全く異状などありませんでした。私自身、夢でも見ているようです・・・」

彼女もそう言って、指を噛む。

「あの声の言った事は、ある程度どころじゃなく本当だったというわけですか・・・」

「あの声?」

「ええ、お寺を脱出する時に誰かが、人間に手を出せない、と言ってたんです。変なお香を焚いた人だと思うんですが・・・「朝になれば奴等は消える」と言っていました」

「なるほど・・・」

しばし黙考せざるをえない。

そう、あの謎の声もわからなかった。

「―――わからないものは仕方ないですね。じゃぁとりあえず」

ピンポーン

どうやら、桜さんが来たようだ。

「すいません、ライダー姿を消していてください」

「わかっていますよ・・・」

どこか寂しげにそう答えて、ライダーは消えた。

パタパタと駆ける。

士郎君が戦いのせいで寝込んでる事は、何とか隠さないと。

風邪引いて、寝込んでるってことにしようと思った。

玄関まで辿り着く。

「どうも、おはようございます、桜さん」

「おはようございます、アティさん」

桜さんは礼儀正しくお辞儀をすると、靴を折り目正しくそろえて上がってきた。

だけど、上がってきた所で。

ドタッ

桜さんは唐突に倒れた。

「あ、れ・・・?」

彼女は起き上がろうともがいているが、全く力が入らない様子でへたり込んでしまった。

「桜さ・・・」

「サクラっ!?」

私が慌てて、抱え起こそうとした時。

抱え起こそうとした、その瞬間。

ライダーが桜さんを抱き起こしていた。


続く。



おとがそ

インターバル&ランサー&インチキ神父ソン編が始まりました。
ライダー編でもあったりするかもしれません。
乞うご期待。

WEB拍手返信
2月22日分
>わろた
>がんばれ!!面白いです。
どうもありがとうございます。ガタガタ短編シリーズもぬるーく続けていく予定なので、ヨロシク!

>なんと!「×××××」の「×××××」が出て来てしまうとは。
>もしかして×××××もでるのかな。
>今回の話をよく読んでみたら、×××××?!
>ここであの人(しかもあのバージョン)がでるとは。ってことはラスボスは一体誰?
果てしのないネタバレいっそうなので、伏字とさせていただきます。多謝。
「本当に彼なのかどうかは六話中に明らかになるトカならないトカ」という某トカ博士からのメメント・モリを頂いておりますので、これでどうかご容赦を・・・
後、「×××××」の「×××××」は死者の表現の一つですが、重要な意味があるとかないとか。

>「その言葉から耳を話せない。その光景から耳を話せない」って「離せない」では?
・・・誤字です。本当に申し訳ない・・・!修正しました。

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