/士郎・状況確認
そうして、俺はここに到る事情を聞いた。
感覚のないまま、俺は布団に横たわり、そこにみんながやってきている。
まさか、そんなことになっていたなんて、と心底思う。
確かに、キャスターが俺を誘い込んで、それを止めようとしたセイバーたちが彼女らと戦ったことはわかった。
―――後から聞いた話だが、俺の能力を遠見で知ったキャスターは、俺を解体して投影用の杖にしようとしていたとか、セイバーたちの令呪が欲しかったとか。
だけど。
死人が生き返って、柳洞寺を襲って、その結果が残ってなくて、今こうだなんて。
どこか、怖くなるほど、話が出来すぎているような。
「死者・・・?」
「そうです。死者です。しかし・・・」
そこで、アティは口篭った。
「あれはリィンバウムの魔術・・・召喚術でしか成し得ない動く死者です。この世界のどこにも、同じ技術は存在しない―――」
原因は判らないから、それは後ほど調べなければ。
と、アティは言っている。
「桜・・・は大丈夫・・・なのか・・・?」
少し苦しいけど、それは口にしなければ。
心は不安と心配でいっぱい。
「大丈夫よ。今は・・・アティのおかげで落ち着いて眠ってるわ」
「そっか。なら、安心だ」
そこで、状況の確認を頭の中でして見た。
いやぁ、よく考えなくても支離滅裂になりそうなほど、頭が混乱している。
正直、一連の流れについてはキャスターが一番面食らったろうとは思ったけど、俺もかなり面食らった。
だって、なぁ。
「衛宮。状況は理解できたか」
「あ、はい。葛木先生」
「そうか。ならいい」
葛木先生がマスターだとか、ちょっとどころじゃなくびっくりしている。
ああ、でも、これだけは聞かなくちゃ。
「キャスター。お前は聖杯をどうしても欲しいとか、そういうことはあるのか?」
「いいえ。ないわ。私は・・・」
チラリと葛木先生を見て、彼女は続けた。
「宗一郎様と、ずっと一緒にいられれば、それでかまわない」
そう、何の衒いもなく言い切って彼女は俯いた。
「そっか―――なら、いいや」
「待ちなさい、士郎!それでいいと思ってるの!?」
遠坂が、すごい剣幕で反駁してくる。
ああ、でも、そうだよな。
新都の昏睡事件を起こしてたのは、この人で、俺も許せないと思ってた。
けどまぁ、死人は出てないのだし。
セイバーが諦めたような顔で、どっちらけな方向を見つめてるし。
イリヤはもうどうでもいいという顔してるし。
キャスターも、葛木先生をちらちら見てるし。なんか不幸慣れしてるような感じだし。
結局、昏睡事件のことは許せないけど。
でも、ここで彼女を許さないと―――
フラッシュバック。
脳裏には剣の丘。
俺の心とは違う、歯車浮かぶ墓標の荒野。
あの光景にたどり着いてしまいそうで。
だから、俺は一言「あぁ、かまわない。もう人を襲わないと約束してくれるなら」とだけ答えた。
呆れた顔で遠坂は「ふん、そう言うとは思ったけど」と言って。
セイバーは「ふう、まぁ良いでしょう。あなたの決断は、いつも突然だ」と半ば投槍に、それでいてどこか嬉しそうに。
「シロウらしいわ。多分、ね」と似たような境遇のイリヤがため息をついた。
「士郎君ならそういうと思ってました」と当然のようにアティは笑い、そしてキャスターへ向き直って続けた。
「ただ、今は柳洞寺には帰らないほうが良いです。ライダーの報告では、何も痕跡は残ってなかったということですけど、いつまたアレが発生するかもしれない。だから」
「だから、暫くはここにいろ、ってことでしょう?まぁ、良いわ」
「うむ、私もそれでかまわん」
キャスターたちに意思を確認して、深く頷いた。
それで俺に関することは終わりとなったらしい。
次は桜のこと・・・なのか?
ライダーが倒れた桜を抱き起こした・・・
「桜の件だけど、ライダーが何かを知ってるのは間違いないわ。おそらく・・・いえ、まだ確信とまでは行かないけど、証拠はそろってる・・・か。アティ、その令呪でライダーから聞きだすとか出来ない?」
「出来なくはないと思うんですけど、でも、ですね・・・無理なお願いしたら、この本壊れちゃいそうな気がするんですけど」
遠坂の言葉に、アティは懐疑的に述べる。
「んんー・・・多分、ね。それは令呪を加工して作ったものだから、令呪の限界を超えるようなことを願ったら、燃えるか壊れるかしちゃうわよ」
イリヤはそういって黙ってしまった。
キャスターは、何か別のことを考えているらしく、ずっとだんまりしている。
「―――あのさ」「―――ああ、そうね」
俺の言葉にとっさに遠坂が反応する。
「こうしてても埒が明かないわ」
はぁ、とため息をつき、心底いやそうな顔でそっぽを向く。
「―――頼りたくはないのだけれども、あいつに相談するしかないか―――」
あいつが誰なのか、遠坂は言わなかった。
けど、なんだか。
それはとっても嫌な予感がしていたのだ。
/アティ・泰山への道T
私は凛とともに、教会へと向かっていた。
「やっぱり、あいつしかいないのよねぇ・・・」
『君がそう判断したのだろう』
アーチャーの皮肉気な声が聞こえた。
「うるさいわねぇ・・・」
ぶつくさ文句言ってるのは、ご愛嬌。
「まーまー。良いじゃないですか。私も会ってみたいですし」
完璧系の人にも一人くらいは苦手な人がいる。
これはいつかどこかで聞いたような気がする。
そんな会話をしながら、教会の庭まで差し掛かった。
そこで。
「神父さんなら、教会にはいませんよ。さっき昼食をとりに行くって出て行きました」
フードを目深に被った子供が、庭でお花に水をやりながら、こっちへそう言ってきた。
「え―――?」
「紅洲宴歳館・泰山ってとこです。あ。でも行かないほうがいいと思うなぁ」
トラウマ負うし。初見の人は10割で。
少年は物騒な事を漏らすと、如雨露を花壇の隅に置いて、つったかたーっと走っていってしまった。
その速度はまるで、猛獣のよう。
去り際に。
「茶番よ、もう一度。もう一度、ね」
って、言って。
その声に聞き覚えがあったのは気のせいだろうか―――
続く。
おとがそ
やっぱり、SS書くなら午前三時過ぎてからですね。
WEB拍手返信
3月2日分
>書いてほしいです。
良いんですか?壊れますよ?僕にほのぼのは書けない・・・!目いっぱい壊れるだけです・・・!常人がわかりづらい方向で。
> >嘘タイトル おおっ、全部創○のゲームブックのパロディですね。懐かしいですね〜
そうです。ナムカプで始めて知りましたけど。イラニスタンの油!黒龍の牙!ナムカプのギルは移動力が足りないせいであんまり活躍させられなかったのです・・・
烏孫子タイトル
「Fate/Summon ataraxia 時計塔大爆発五秒前!〜或いは、達人との出会い〜」
イギリスでマスターと言えば浦沢なおき先生のアレ。