超弩級巡洋戦士ウラタンダー!
序章 鮫島やくとの章 「わしが本当の正義じゃっ!」
 

雪……

雪が降っていた……

 もうこの雪を見て、何年になるんだろう……解らないけど…見飽きてもいない。
「あっ、この部品もついでにもらっていい?」
 この雪降る街には一風珍しいジャンク屋がある。常連である僕はおやっさんに一つの部品を要求した。
「おうっ、そりゃ大容量プラズマ集積回路出だぜ、ただじゃやらねえな…」
「うーん、でもこれがあれば、超プリズムX変換炉が完成するんだよ、そこを何とか」
「でもなぁ、そいつぁオレ様が苦労してネメシス本部からかっぱらって来たんだぜ、ただじゃやれねえよ!」
「ああ、おやっさんのあの黒い狼の話しで出てくる悪の組織からかっぱらったんだよね…今はおやっさんの長話に付き合っている暇無いのっ!これでどうかな…」
 おやっさんの前に、どーんと金額の出された計算機を差し出す。
「………持ってきな」
「ありがとっ!おやっさん、じゃーねっ!」
 

 僕の名前は、『鮫島やくと』この街に住む高校生で2年生だ。黒い狼の戦士が守ったと言われる(おやっさん談)この街で、普通に生まれて、普通に生活しているただの高校生。
 家族構成は、親父…義理の母さん、そして今は居ないが東京の方に居る姉…
 義理の母さんと言うのは、本当の10年前に他界してしまい、3年前に親父が再婚して家にやって来た人だ。

 趣味は、ズバリ!発明!このジャンク屋で買える色々な物は僕の発明心をくすぐる物ばかりでこれまでに色々な物を発明しているのさっ!
 それで今日、やっとハイブリットセンサーと、大容量プラズマ集積回路が手に入り、待望の『次元転移装置』が完成する。
 地下室のおじいちゃんの書斎を改装して作ったのは正解だったな?

 でも、これで…誰も成功しなかった、異次元への扉が開けるんだ。でも、異次元の扉を開いたとしても、それから何をしよう……まあいいや、それは後で考えよう。今はこの装置をくっ付ければ……
 
 

「ただいまー」
「あら、おかえりなさいっ、やくとちゃん」
「律子さん、ただいまっ!」
 義理の母親でもある律子さんが出迎えてくれた。実は律子さんはまだ29だったりする。姉とは9歳違いで…親父とも20ぐらい歳も離れている……若くて初々しい。
 だけど少し天然な部分があるため、僕は名前の後にちゃん付けされているのだ。
「やくとちゃん、発明品の部品は買えた??」
「ハイブリットセンサーに、大容量プラズマ集積回路です。これで僕の発明は完成します」
律子「来年の文化祭の出し物に使うの??あの大きな発明品」
「はい…それまでに、自律神経系統マニピュレーターも付けなくてはなりませんし、少し小型化しないと、持ち運べませんし…まだプロトタイプっすよ」
 文化祭か、それに出してもいいな、僕の発明は学校でも高く評価されているし…それならもうちっと遠くのジャンク屋にも行かないとな…秋葉に行った時に見てくるか、でもあそこの主人は高く売るしな……何とか安く買う方法を見つけなきゃ…

「頑張ってね」
 と律子さんに激励の言葉を貰って、地下にある研究室に足を運んだ。
 

地下研究室

…うぃん…うぃん…うぃん
 奇妙な機械音が鳴り響く、おじいちゃんの書斎を改装した部屋にデカデカとある奇妙な装置…これが次元転移装置の完成間近のプロトタイプだ…うん、いい出来だよ…
 今までは、次元の歪みを探知する為のレーダー装置だったけど、これと言った事は無かったな…最近は……
「うん、今日も次元の乱れに変化無し…」
 レーダーには、さほど大きな乱れは出ていなかった。
 それでは、改造、改造っと…
 僕はジャンク屋から買い占めた部品を、次元転移装置に備え付けることにした。

「ふぅ、こんなもんか……やっと次元転移装置が完成したんだ……」
 僕は、ようやく作業を終えて…椅子に座りこんだ。
「後は、次元のゲートの座標を考えないと……ん?早速反応だ」
ピコーン!ピコーン!
 確かに、次元転移装置のレーダーにはそれらしい波長を表す反応が見られた。座標の場所を特定しないと……
「……(X座標、24.951…Y座標、58.345…)」
 この座標が導き出した、場所は……マップ上だと、『ものみの丘?』なんでこんな所に…
「波長が乱れている……これって一体…」
 だけど、この波長の乱れはすぐ治まって…なにも無かったような静けさが戻った…
「なんだろう……」
 嫌な感じはしたが、まあ気にする事はいだろうと思い…僕は時計を見た。
「あっ!もうこんな時間だ!」
 気付いたらもう夜遅かった……風呂に入って寝よう…それにしても、さっきの波長の乱れは何だったんだろう…
 

 翌日…僕は学校へ行く支度を済ませて、律子さんの朝食を食べて…鞄を持って外へと出た。
 外に出ると、いやでも隣のアパートが目に入る。

 このアパートの一室には40年前に死んだ人がよく出るって噂がある。噂だけに本当かと思う人もいるだろうが、実際に出るらしく、これまでに一級の霊媒師…はたまたはゴーストバスターズまで来たが、刃が立たなかったらしい。
 僕も一度、あの部屋に行って…ちょっとした実験も一晩賭けてやってみたけど、一番危険なレベルGが出てしまい、機材を抱えて急いで逃げた記憶がある。

 そして2ヶ月前にあの部屋に浦谷さんと言う人が越してきた。律子さんや近所の人もビックリで、よく律子さんは指し入れのパンとか色々送ってやっているのだ。
 それであの危険レベルGの部屋を2ヶ月も使っているんだから驚きだ。以前に浦谷さんがいる時に再び機材を持って来たけど、危険レベルGは変わらない…だけどあの人は平然としている……あの人の精神力をもっとよく研究したいかも

 …だが押入れの中はどうしても見せてくれない…何か隠しているのは容易に想像がつく、だが、それが何かわからない……
 どっちにしろ…もう一度よく見に行く必要はあるようだ…

 だが、ここの大家の娘さん……水瀬名雪さん…
 僕の1年、2年とクラスメートで僕の隣の席……授業中はいつもホニャっとしていて寝ている時が多いが陸上部の部長さんだと言うから驚きだ。だけど…そんな所がまた可愛く…そして優しい心を持った少女だ…名雪と言う様に、雪の似合う綺麗な子で僕はそんな彼女に入学当時から僕は、彼女に一目惚れしてしまったが……言い出せるわけがない、遠くから…見つめているだけ……萌え?…いや違う!これじゃストーカーではないか、僕は天才科学者なんだぞっ!でも、この思いは本物…
 いつかは告白しよう!僕はそう思った……
「『えっと…僕は君が好きです』…ありがちだ……『僕について来いっ!』彼女の性格上イチゴサンデー奢ってくれるんじゃないかと思うだろう……」
 僕は、あらゆる告白と、その結果を自問自答して…最後に……出た言葉は…
「僕とっ!結婚してくださいっ!」
「了承」
「え?」
 僕がサッと手を差し出した人物は、その水瀬さんのお母さんでもある、隣のアパートの大家さんだった。
「あっあの?大家さん?」
「ふふっ若い男の子は大歓迎よ……」
 大家さんは頬を赤らめて、僕の手を取った。
「違うんですけど……」
「だめよ、今はまだ朝……」
 ここの大家さんはある意味、恐ろしい人だ。

 まず、本職は不明…さらに、妖しいジャムを作っていると、クラスメートの美坂さんから聞いた…どんなジャムなんだろう、科学者たる者、興味は少しある……だが、美坂さんの証言から…どんな物かは未知数だが、危険レベルはあるだろう……。
 加えて、「おばさん」などと呼ぼうものなら、恐ろしい事態が起こると聞く…

 しかも、それに加えて若い僕くらいの少年が好みと言うのだ……いつからか、大家さんの家、つまりは水瀬さんの家に来た転校生の相沢祐一は、毎日平気な顔をしているから、まだ食われてはいないだろう……

 まあ、大家さんはどう見ても30代には見えない、明らかに20代前半くらいにしか見えない、律子さんと同年代くらいの女性だが……
 本当の年齢は定かではない……聞こうと思えば、殺されるか……食われるだろう…
 まあ、殺されるのは10%食われるは90%だろうが……

 何にしても、この人の危険レベルG以上なのは…間違いないっ!

 ちなみに、今の状況は……食われる75%……回避は可能
「……あの、大家さん」
「鮫島さん、頑張ってくださいねっ♪」
 そう言って、大家さんは何処へと去って行った。
 えっと……どう言う事かな…

 まさか、悟られたのかな……大家さんに…

 でも、僕はもう2年と言う長い時間…告白の機会を伺っていた!
「今日しかないっ!」
 僕は、決意を固めて…戦地(学校)へと赴くことにした…
 
 

 学校にて…
「うん……そうなんだよ、祐一酷いんだよ?」
「それは相沢君が悪いわね……」
「人聞きの悪い事言うな!大体、名雪がなあのジャムを…」
「……相沢君の判断は正しかったわ、そう思うでしょう、陣内君」
「あっああ……」
 僕の聞き耳を立てて、北川君通称の美坂チームの話しを聞いていた。
 水瀬さんと話すチャンスを見出す為……
「うにぃ?…ひどいよ?」
 う〜ん…いつ見ても、激可愛いよ水瀬さん……(爆)
 それから、彼等の他愛ない話しを始終聞いていた…僕は、まだ気付かないでいた、この街に接近する、巨悪の根源の存在に……考える余地も無かったけど…

 場所:月軌道上(宇宙) 地球時間:12:45分

『艦長っ!ついに、青き星『地球』に辿りつきましたっ!』
 月の裏側に潜んでいる、超巨大宇宙戦艦っぽい奴……そのメインブリッジのオペレーターらしき人物が、窓から見える、青き星地球を見て、艦長らしき人物に報告した。
『ううむ、ついに……ついに念願の地球に到達したか…』
『こっここまで、辿りつくのに……幾年月掛かったか…ううっ!』
 号泣するオペレーター…そして、艦長らしき人物はパイプを咥え…火をともす。
『……ギャラクシアン帝国の侵略戦争で、我等の故郷…銀河広域クル文化圏DX星は灰燼と帰してしまった……ここは、移住するには最適な環境と空気、そしてこの月と呼ばれる衛星を持っている…なんと理想的な星だ』
『でも、同じ文科系の星のURA星も危険な状態に陥っています、彼等も放っておく訳にはいけません……ここで軍勢を立て直して、広域クル文化圏に戻るべきですっ!』
『それも考慮に入れてある……だが、この環境だとこの地球と言う星も危険だと言う事には変わりない……』
『確かに……見てください、帝国の偵察機が大気圏上にうようよいます』
 戦艦のモニターに地球を写すと、地球の大気圏内を高速で飛ぶ発光体らしき物が何機か飛びまわっていた。
『……帝国め、この事が広域クル文化圏の艦隊に知れたら…』
『どうします?今ここで攻撃を加えられたら…地球に被害が……』
『うむ…まずは奴等の行動を伺いながら、擬似人格偵察機に地球の文化についての調査をしよう……』
『はっ!擬似人格偵察機、投下準備っ!どこに投下しますか?』
『まずは、謎の精神波の発生した、日本という国に投下しよう……あそこは何かと謎の多い国だ』
『はっ!まずは、その精神波の出ていた地点に向けて投下!』
 戦艦の砲門が開き、擬似人格偵察機を地球に向けて発射した。
『頼む……帝国に気付かれぬ内に…』
ズガーン!
 艦内に、爆音が響き渡り警報が鳴り響く。
『何事だっ!?被害状況を報告せよっ!』
『はいっ!地球を偵察していた、帝国の円盤が本艦に攻撃を仕掛けてきました!』
『打って出たか……擬似人格偵察機は!?』
『それが……コースを変えずに、日本の予定落下地点に向けて落ちた模様…ただ、その際に帝国の円盤に電波らしき物を受けた模様……』
『……帝国は一体、何を企んでおるのだ…はっ!反撃開始っ!』

 帝国に怪電波を受け、地球の大気圏を火を吹きながら落下する、擬似人格偵察機……その予定落下地点は…

 ものみの丘…

 ある少女がものみの丘で猫を頭に乗っけて、くーっと寝ていた。
「あう〜…にくまん…あうっ!」
「にゃっ!」
 どうやら少女は起きたようだ……
「あう〜、何で真琴こんな所で寝てるんだろ……確か、祐一に復讐しようって思って、それから……あう?なんでここにいるの?まっいっか、家に帰ってマンガよも〜、行こうっピロ」
「にゃ〜」
 ピロと呼ばれた猫を頭に乗っけて、少女…名は沢渡真琴は、水瀬家に帰ることにした。途中で肉まん買って……
 

 ただ、彼女は知らない、自分が何日間そこにいて…自分の起こした奇跡が……とんでもない物を呼んでしまった事に……
 

場所:学校 時間 地球午後3:10

 放課後になり、HRも終わって…僕は帰る支度をしていた時ふと思った。
 確か、今日……水瀬さんは部活だったはずだな……
 だとすれば、話しは早いや……
「じっ、陣内君……」
「……なんだ、鮫島から声をかけるなんて珍しい…」
 このいつもぶっちょう面な少年は陣内陽介君、身長は僕より低いのにすごく大人っぽくてクール……それでいて倉田議員のお嬢さんの婚約者というから驚きだ。僕では足元にも及ばない人だけど、水瀬さんと一緒の陸上部のはずだ…
「……用件を早く言え…」
「あっ……うんとね…」
「名雪の事か…」
 図星だしぃぃぃーーーーーっ!!
「うぅ…」
「鮫島が名雪をよく見ていたなんて、お見通しだ……それでいて言い出しにくいと来たら大体予想はできる……」
 ううっ……陣内君の洞察力は侮れない……
「うん…そうなんだ……だから、下駄箱で待ってるって言ってくれるかな……」
「………良いだろう」
 陣内君は少し間を置いて、鞄と日本刀の入った包みを持ち…立ちあがり、教室から出て行った。
「うっ…頼んじゃったよ、どうしよう……水瀬さん来てくれるかな…」
 でも陣内君だから、一度言った事を曲げるような人じゃないって事は解っているし…彼だったら水瀬さんとは面識が深いから、きっと頼んでくれると思う……

 陸上部では
「名雪……」
「なに?陽介君……」
 同じ陸上部の陽介が、終わり際で帰ろうとしていた名雪に声をかけていた。
「下駄箱に鮫島がお前に話しがあるらしいんだ……」
「鮫島君が?」
「ああ…らしいな……」
 陽介は笑って答える…反対に名雪は少し疑問系の顔で……
「何の話しだろう…」
「さあな」
「陽介君も一緒に来てくれる?」
「いや、俺は野暮用があるから帰らせてもらう……」
 そう言って、陽介はすたすたと名雪の前から立ち去って行った。
「うーん…何だろう…」
 名雪は…疑問を抱きながら……下駄箱へと向かって行った。
 

「うーん、そろそろ陸上部が終わる頃だ……水瀬さんそろそろ来るはずだ……」
 僕は下駄箱で心臓バクバクだ……でも別に陸上部の活動している所を見学して待っていれば良かったけど…そんな事したら僕の理性が保てるかどうか解らない…
 でも…何度見ても、水瀬さんのブルマ姿…可愛いな……
 いいや、僕はっ!そんな事考えていたら科学者として恥じる行為だ……僕は、純粋に…水瀬さんが…水瀬名雪さんが……
「鮫島君?あっここにいたよ?」
ドキーーーーーンッ!
 しっ心臓が飛び出るくらいに驚いた…振り向くと、後ろには水瀬さんがいつもの笑顔で立っていた。
「鮫島君、待った?」
「みっ水瀬さん……全然(汗)」
 凄く待ちました……(汗)
「話しってなあに??」
 いつものようにのほほーんと聞いて来る水瀬さん……うっ、真っ直ぐ見られるとかなり可愛いよ〜
「??」
 だっだっ………大丈夫だっ…静めるんだ、深呼吸…
「すーはーすーはー(激汗)」
「鮫島君?」
 よーし、水瀬さんに告白するぞ…鼓動を押さえて落ち着いて行けば…できる!!
「……水瀬さん…」
「?」
ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!
「ぼっ…ぼぼぼっ…」
「鮫島君??どうしたの?」
 だめだ……鼓動が押さえられないよ?
ドクドクドクドクドクドクドクドクッ!
 言うぞ………ファイト!一発!
「水瀬さん、僕は……君が…好きどぇすっ!お付き合いくださいまっせーーーーーっ!!」
 少し、壊れ気味だったが……言った…言ったぞ僕は言った!ふぅ…すっきりした。
 だけど問題は……水瀬さんの返答だ…水瀬さんは、どう答えるのか…
「わ、びっくり」
スコケーンッ
 思いっきりこけてしまった。そう言う返答だったのか……んなわけないやん!
 そして…水瀬さんは少し思いとどまって…
「えっと…ね……鮫島君……」
「はっはい…」
「鮫島君……残念だけど…付き合えないよ?」
ガァァァァァァァァァァァァアーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
 思いがけない言葉に僕は驚愕してしまう…
「ガーン…」
「わたしね、実を言うと……今付き合ってる人がいるんだよ?」
「誰?フー!?」
 僕は水瀬さんの肩を掴んで効いた。
「北川君?斎藤君?まさか……久瀬君…なわけないな、じゃあ…陣内君?そりゃそうだよね……陣内君僕よりかっこいいし、頭も良いし、運動神経もいいし、僕は足元にも……」
「わっ、違うよ?陽介君は…わたしの双子のお兄ちゃん」
「え?お兄ちゃん?」
「生き別れで、この前お母さんが事故にあった時に……名乗ってくれたの…」
 確か、あのアパートの大家さん冬に事故にあって、1ヶ月入院してたっけ……
 でもまさか、陣内君が……水瀬さんの兄さんだったなんて…
「あっ、これ内緒にしててね……陽介君がお兄ちゃんだってこと…」
「あっうんっ…で、付き合ってる人って……まさか…」
 僕は本題に戻り水瀬さんに聞いてみる……すると、水瀬さんはポッと赤くなって…
「祐一……なの…」
「だべさぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!」
 やっぱりと思っていても…信じられない…あの男が……ちくしょーっ!
 なっなぜ……
「さっ鮫島君?」
「ガーン…」
「だからね、鮫島君…お友達じゃダメかな……」
「ガーン…」
「……あっ、良いんだねっ♪じゃあわたし遅いから帰るね、じゃあねっやくと君っ!」
「ガーン…」
 やくと君っ!
  やくと君っ!
   やくと君っ!
    やくと君っ!×450回

 僕の頭の中で、さっきの言葉が繰り返される…まだ繰り返している…ああ…本当に当たって砕けちゃったよ?
「……世の中間違ってる…」
 そう…世の中間違っている…なぜ、相沢祐一と水瀬さんがお付き合いしているんだ…
 もう何処まで歩いたのか……解らない…どれだけの時間歩いたのか解らない…

 どれだけ……泣いたのか解らない…
 相沢祐一と僕との違いはほとんどない……運動は僕のほうが出来ないかもしれない…でも僕は……相沢祐一より……成績はいいはずだ…
 なのに…なのになぜっ!?

 僕は……2年間、水瀬さんをずっと見てきた…だけど、それは間違いだったのか?
ひゅぅぅぅ〜〜〜っ

 ふっ…ここは街が一望できるのぉ……
「あーあ、ふられちゃったよ……この街もこうして見ると広いのぉ〜…」
 等と僕はそれからも、ふられて出来た心に開いた大穴を埋める様に独り言を連発して行った。ここは何処だろう……丘のような所…
 ああ……そうだ、ここはものみの丘…
 奇跡の力を持った狐のいるって言う……あの場所か…
「そう言えば…ここだったな、異常な精神波の出てたのって…ふん…まさか狐がそんな非科学的な……そんな事…あるわけないべさ…そんな……ううっ」
 奇跡でも起こってほしかった…科学でも答えられない力、それ奇跡……それ本音ね…奇跡が起きて、水瀬さんが僕に振り向いて欲しかった……でも…世の中は無常だ、奇跡さえも許さないか……そんなに現実がいいか……くそうっ…ちくしょうっ!
 わしは、ほんまにまちごっとったのかぁぁぁぁーーーーっ!
「こんな世の中っ!滅びてまえぇぇぇーーーっ!」
ヒューーーーーーーーッ!
「ん?」
 赤い…星?
チュドーーーーーーーーーーンッ!!!
「ホゲラッチョッ!」
 何かが僕の頭を直撃して…そして僕は地面に叩き付けられた。
 

「ぐっぐぬう?」
 変な感覚だ……頭がもやもやとする…
『汝……名は…』
 なんだ?頭に何か伝わってくる……声?
「さっ鮫島やくと…」
 うっ…頭が痛い……これ、血?ああ、僕死ぬんだな…
『やくとか……良い名じゃ』
「……僕は死ぬの?」
『そのようじゃな……』
 女の子の声?誰だろう……
「………いいさ、こんな世界僕がいた所でどうこう変わるわけでもない…それに水瀬さんが幸せならそれでいい……僕は諦めるさ、それに隕石を頭に直に食らって死んだって言ったら僕は新聞に載るよ……はははっ…死んでも有名人だ…」
『諦めるのか?やくとよ……』
「……うん、好きな人にふられたんだもん、こんな世の中に僕はいたくはないよ…」
『……ならば、変えてみせよ…危険が迫っているこの世を…お主ならできるはずじゃ…』
「僕ならできるの?世の中を正す事が……」
『お主なら……可能じゃ…自分を信じよやくと……』
 その声は段々と遠ざかって行った。
「待って、あっあなたは一体っ!」
『余は空の上で信じておるぞ……』
「僕は……何をすればいいの?」
 その声は……遠い空の向こうへと飛んで行った。

 気がつくと…僕は丘の上で寝転んでいた。んんっ…なんだ何なんだ、今のは…
「そうだ、僕は隕石に……あっ生きてる…んあっ!」
 僕の前を見ると……そこには、地面に小さな窪みができていて…ラグビーボール状の物体が刺さっていた。隕石?これ……
「??隕石じゃない……何??これ…」
 まさか、ものみの丘の精神波の原因ってこれ?かな……でも、空から降って来たんだよな……ううん、どっちだろう。でもなんにしてもこれは大発見だ!
 持って帰って分析しないと……宇宙から来たのかも知れない…だとしたら…
 あの声の主は……これ?
「君が僕に…話してくれたの?…」
 …僕はその物体に触れてみた。もう外の熱で、物体は冷やされていたため持てた。
「じゃあ……僕に、力をくれる?」
 ………声は聞こえない、だが…これから発せられる何かを僕は感じられた。この力は…僕がこの世の中を変えられるだけの力を持てるくらい…よし…早速実行だ!
 次元転移装置にこいつを組みこむっ!

 そして……この荒廃した世の中を僕の手で正してやるっ!
 わしも…男じゃけぇのお…(なぜか広島弁)
 

 僕はその謎の物体を抱えて家に戻り夜通し研究をした。
「これは…すごいっ!次元転移装置が……過敏に反応している…やっぱ何らかの精神波がこれから出ているんだ……早速組みこまないと…」
 僕は、1時間で謎の物体を次元転移装置に組みこむと……今度は、その物体を分析した物とジャンクパーツで日用品を色々改良して……完成っ!
 スーツとマント…そして手袋とブーツ、日常品をジャンクパーツで改良して…そしてこの霊視ゴーグルを改良した精神波測定+性格反転ヘルメット…全部黒塗りだ…
「Y(ヤクト)スーツ一式、完成っ!」
 そして…物体から得られた情報通り、作った特殊な火薬をこのソケットに詰めれば…
「Y(ヤクト)爆弾!完成っ!」
 即効性で、物理的な接触だけで大爆発を起こす爆弾だ。小型だが威力はある…これを持つことができるのは、この特性手袋だけっ!
 でもこれだけだと武装が物足りないので、ハリセンを特性火薬で改良して…叩いたと同時に爆発を起こす…このハリセンっ!
「よしっ!装着っ!」
 僕はそのスーツ一式とY(ヤクト)爆弾で武装装着を果たす。
 性格反転システムが作動して、僕の脳内のドーパミンの量を増やした!そして…
「……くくくっ!これが、これが俺のもう一つの姿か、いいっ!いいぞ!さすがは宇宙の神秘の力だっ!これさえあれば、俺がこの世の正義を正す事ができるっ!」

「俺がっ!本当のせいぎだぁぁぁぁーーーーーっ!!」

 俺はハリセンを高々と上げて、そう叫んだ。
 そして、次元転移装置のレバーを引いて、作動させた。
「出でよっ!歴代ヒーローの戦闘員達よっ!我のもとに集いっ!我と共にあれっ!!」
 次元転移装置が作動し、俺の前の空間が裂け…次元のゲートが開き……そして、奇妙な服を着た人達がゾロゾロと現れた。
『いーっ!いーッ!』
『ハイルッ!ハイルッ!』
『ヤートット!』
『オルゲット!オルゲット!』
 等など、数種類の戦闘員でこの部屋は埋め尽された。
「よっしゃっ!みんなっ!俺と一緒に世界を修正するか?!」
『いーっ!』『ハイルッ!』『ヤートット!』『オルゲット!』
「俺について来い!正義の為にっ!この世界に正義の鉄槌を与えるぞっ!」
『いーっ!』『ハイルッ!』『ヤートット!』『オルゲット!』
「我等を今よりっ!世界修正組織っ!Y(ヤクト)団と呼称する!!」
『いーっ!』『ハイルッ!』『ヤートット!』『オルゲット!』
「我等が大首領っ!ドクロべえ様の名のもとにっ!!」
『いーっ?』『ハイルッ?』『ヤートット?』『オルゲット?』
「なんだ、不満でもあんのかっ!?」

 そして、結成された我等Y(ヤクト)団は各自散会して…宿を探すことにしたらしい…
「いいか、他の近所の皆さんに迷惑かけちゃダメだからね、特にここの浦谷さんって人は五月蝿くすると面倒だから……それから…明日2時に…集合」
『いー』『ハイル』『ヤートット』『オルゲット』
「じゃっ!解散…」
『いー』『ハイル』『ヤートット』『オルゲット』
 明日から…大変になるな…正義の為に働くんだから爆弾の追加を作っておこう…
 

 そして、翌日の2時…
 休日で暇な時間をドクロべえ(次元転移装置+謎の物体)様の手入れと爆弾の製作で潰して…その後Y(ヤクト)スーツ一式と武装をアタッシュに入れ…僕は出かける事にした。
「ドクロべえ様に、声紋システムを買ってあげなきゃ喋りもしないか…帰りに買ってこ」

 外に出て、周辺を散歩するようにパトロール…
 そして…僕は、警戒しながらそこら辺を歩く…その周りには一般人に扮した戦闘員たちがいるはずだ。さて……悪に染まった人間達を正すか…
「うぐぅ〜っ!!助けて〜〜っ!!」
 僕は学校の近くの道で……羽リュックを背負った女の子とそれを追うエプロンをしたオヤジを目撃した。
「むむっ!女の子が、オヤジに追われている……明らかに人道に反した行為と見ていいね」
 僕は、物陰に隠れて、Y(ヤクト)スーツを装着する。
「武装っ!装着っ!」
 身体能力が4倍になり…俺は凄まじい跳躍力で飛んだ。
「とうっ!」
「なっなんじゃ?てめえは……」
 そのオヤジは突然俺が前に出てきた事に驚き、腰を抜かした。
「ふっ…名乗る程の物じゃねえ……」
 そしてこの時間中に考えたきめ台詞を……言う。
「か弱き女の子を追いまわすなんざーっ!犯罪行為なり……よってこのY(ヤクト)団首領が直々に正義の鉄槌を浴びせてやるのを光栄に思え!」
「あんた、何か勘違いしてねえか?おりゃあの小娘にまた食い逃げされたんだよ……」
「なぬ?それも聞き捨てならん、だが……か弱き女の子を襲おうとした行為…許すわけには行かぬ!」
 で…あの小娘は……
「うぐぅ〜〜〜っ」
 ちっ、逃げたか…だが追えばいい、俺からは逃げられんぞ食い逃げ娘…
 それはともかく……
「先にお前に正義の鉄槌を与えてやるわっ!食らえっ!Y(ヤクト)27の秘儀っ!エレガント祭り!!」

説明しようっ、エレガント祭りとは黒いバラをイメージに作った爆弾を舞う様に相手にぶつけると言う何ともエレガントな技なのだっ!

チュドォォォーーーーーーーン!!!

「ぎゃーっ!わしの…わしの店がーっ!」
「当然の報いと思え……出でよY(ヤクト)団員」
『いーっ!』『ハイルッ!』『ヤートット!』『オルゲット!』
 俺は周りにY(ヤクト)団員こと戦闘員達を呼び寄せた。
「うをわぁぁっぁぁっ!!なんじゃこいつらぁぁぁっぁっ?!」
 ふふ、店が燃えている……なんと美しい炎だ……これぞ正義の剛火だ…
 俺は両腕に爆弾を持ち、高々と声を上げて笑った。


「うはははははっ!!わしが本当の正義じゃぁぁぁっ!!」
『いーっ!』『ハイルッ!』『ヤートット!』『オルゲット!』
 そして、向き直り……あの小娘が逃げた道を辿る。
「ふっ…そこか逃さんぞ食い逃げ娘…」
 俺は戦闘員を引き連れ、食い逃げ娘を追おうとした時…
「静かにしろっちゅうんじゃぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
 後ろで男の声がして、俺と戦闘員達は…振り向いた。
「……何奴…」

 こうした手違いから…僕と彼との戦いは始まったのだ…世の中を正す為、そして僕の正義の為…世界を修正するっ!
 邪魔する奴は、容赦無く消すっ!!




あとがき

これはフィクションです。実在の人物団体及びあらゆる架空及びネット上の人物団体とは無関係であることを切に願います。(大爆発)

発端は竜さんこと浦谷竜蔵とのチャット上でのおふざけから始まりましたっ!
この後は竜さんの後書きとかぶるからいいかっ!

んではっ!私も

どうもすみません!!!切腹!!!!(ズシャッ!!!!)
 
 



 
 

ウイ!浦谷です。

どうもありがとうごぜえますだ、Y首領閣下♪

もうすぐ第壱話に取り掛かりますッ♪

楽しみにしててくださ〜〜い!

シュワッチ!!

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