俺の提案で、俺たちはグループ分けして…夫々の宿に向かう事にした。
「あはは〜、陽介さんも人が悪いですね〜如何様をしてまでグループ分けしたなんて」
隣で歩く佐祐理さんが笑って声を掛ける…如何様と言うのはそう…俺のポケットの中には、色塗りされた紙を細くしたのが大量に入っているのだ。
二人が引くときに、持っている紙を全部同じ色に変える…こうすれば自動的にグループは決まる。運命ともそんな事を言ったもんだ…グループは前から決まっていたのだから…
この如何様に気づくのは、舞さんや佐祐理さん…それに母さんぐらいだ…
「いかさま…よくない…」
びしっと舞さんが俺の頭にチョップを食らわす…まあ、良くない事だと解ってるんだけどな…
「だけど、この方が俺たちにも有利…俺たちが固まっていれば、何とか予定していた、羽の調査…そして、『彼女の魂の片割れ』の探索もしやすいです。遠野精米・神尾家・そして、霧島診療所、恋香が示したのはこの3つのポイント……そこに、俺やあゆと同じ人がいる」
「霧島診療所には、聖さんがいてよかったですねぇ。手っ取り早くて…」
あの診療所の聖さんは俺の主治医でもある…シロガネ・黒狼オルグ戦の傷を直す時は良くお世話になったもんだ。全治3ヶ月の重症が、一週間で完治だ…
「…まぁ、あゆが佳乃ちゃんに会えばなにかしら、結果があるだろう」
「でも何故、そこに浦谷たちを向かわせたの……」
浦谷は、あゆと名雪と霧島診療所に…あそこには事前に、母さんが連絡してある為…3人来るようになっていた。向こうの佳乃ちゃんは社交的だし、明るいから二人となれてくれるだろう…
「浦谷は、本当に宇宙人か…確かめてもらいたいですから…」
「しゅ…解剖して調べるんですかぁ?」
佐祐理さんはびっくりして聞き返してくる。
「エリア51の嘘っぱちエイリアン解剖映像とは違いますよ…レントゲンとかそんな簡単な物です…」
「でも、果たしてそれだけでいいとは限らない……」
「ふえ?どうして?舞……」
「聖さん、宇宙人調べるの初めてなんだって言います…もしかしたらもありますよ」
俺たちはそう思うと、遥か天空の星空を見た…
「それはそうと、鮫島さんを神尾家に向かわせたのは何故ですか?」
「鮫島はSUPの数々のロボットを整備してきた実歴があります……科学的な目で、そこにいる彼女の魂の片割れを見れるかもしれません」
「陽介…結構無理して言ってるように聞こえるけど……本当は、チーム分けに生じた余りが、秋子さんとやくとじゃないの?」
舞さん、本当に鋭くなったね…そう、鮫島には悪いが…母さんとお前はチームを分けるときに生じた、余りなのさ…悪く思うな…
「さて、俺たちも向かいますか」
「そうですねぇ」
「はちみつくまさん」
そう、俺は細かい事など気にしない男なんでな…
超弩級巡洋戦士ウラタンダー!
第三話「ここはいったい何なんだ?」中篇
開始早々陽介視点でお送りしています!
ここか…遠野精米…
浦谷がここで米を買う予定で当初は来た、その為…米俵や米に関する物が沢山置かれている。ちょっとした軽食屋もあり、カレーライスが300円で売られて、目玉商品は五目ビーフンらしい…至る所が米だらけだな…
「ごめんくださーい、水瀬秋子さんから言われて来ました者です」
「はーい…」
やたらと、間延びして…ほわーんとした声がして、店の置くから背の高めの女性が顔を出した。顔は美人…どこと無く隣の二人を足して2で割ったような人だ。
俺より1センチくらい背は低い方か(最近やっと170cmになった)…年上かな。
「……お待ちしておりました」
「どうも、夜分遅くすいません、一晩泊めてもらいありがとうございます」
深々と頭を下げられて、俺たちもかしこまって頭を下げる…
「…俺は、陣内陽介です」
「遠野…美凪と申します…以後、お見知りおきを…」
そう言って、俺と美凪さんは握手をする……何も、感じない。羽の者なら…恋香が反応を示してくれるはず。だけど、美凪さんからは何も感じない……
彼女じゃない…だとしたら。
「倉田佐祐理です〜よろしくお願いします〜」
「川澄 舞…よろしく」
「よろしくお願いします…夜も遅いですし、上がってください」
そう言って、自己紹介も済んで俺たちは美凪さんに連れられて…遠野精米にお邪魔する事となった。
「客間に御布団を敷きましたので、今宵はそこでお休みください……」
「ありがとう…美凪さん、お?」
美凪さんが案内してくれる、廊下の向こう側から小さな女の子が現れた。
「あ!美凪お姉ちゃん!」
「…みちる」
そう言って、美凪さんを発見すると、とてとてと走ってきてぽすっと美凪さんに飛びついた。
「うにゅ〜美凪お姉ちゃん、今夜も星見ようよ〜」
「…うん、解ったわ…」
仲のいい姉妹だな…妹さんかな…
「美凪さん、妹さんですか?」
「はい、みちると言います…」
そう言って、美凪さんはみちるちゃんを自分の前に立たせる。
「あはは〜、可愛い妹さんですねぇ」
「うに?美凪ぃ、この人たちはだれ?」
みちるちゃんは人見知りするように、美凪さんのスカートにしがみ付いた。
「この人達は宿が無くて困ってる人たちなのよ……」
「うにに…それは困った!」
真剣なまなざしでみちるちゃんはそう言った。俺も今の美凪さんの台詞に少し、何だかなと感じてしまった。
「だから、一晩泊めてやろうと思うけど…いい?」
「うん、みちるはいいよ!」
あっさりと了承された……
「うに?この男も宿が無い困ったちゃん〜?」
「ええ、陣内陽介さんですよ、みちる…」
「よろしく、みちるちゃん…」
佐祐理さんや舞さんよりかは、男の俺はお呼び出ないか…
みちるちゃんは俺の顔をじーっと観察すると……
「うに〜…どこと無く、家の居候に微妙に髪型が似てるけど…優しい感じだし、ゆるーす!」
居候?確かデータでは、母親と父親とこの二人…だけだと書いてあったな。
「サンキュウ、みちるちゃん…じゃ、お近づきのしるし…握手だ」
俺はみちるちゃんの身長に合わせて、低い体性で手を差し伸べるとみちるちゃんはうにと言い俺と握手をした。
その時、俺の体に電流が流れた感覚がした…何?この感覚は、恋香に似ている…それと、あゆや舞さんにあったときと同じ感覚。
まさか…この子が…『彼女の魂の片割れ』
「うにょ?どうしたんだ?よーすけ…ボーっとして」
「あ…ああ…なんでもないよ」
意外と言っちゃ意外か…この子が俺と同じとは…
「もしかして……ひとめぼれ?」
「ちがいます…少しボーっとしただけです…」
「にょわ〜お米〜」
多分みちるちゃんは米の方を想像したんだな……
彼女が、俺と同類だったのか『神奈の片割れ』はこの幼い子供にまで…
兎にも角にもその事がハッキリして、満足だった。…みちるちゃんはこれから…神奈がかけられた、『千年の呪い』に…直面するのか…
そう思うと、何もできない自分が情けなくなってきた。
「陽介さん、さっきからどうしたんです?」
「上の空…陽介がそうなるのはめずらしい……」
佐祐理さんと舞さんが話しかけられ、気づくともう美凪さんやみちるちゃんは俺の前から居なくなっていた。
「ごめん…ただ、見つけたんです…彼女がそうだと、確信が持てました」
「やっぱり……美凪さんがそうですか?」
「いえ…みちるちゃんです…」
「ふえ?みちるちゃんが、陽介さんと同じ運命を?」
そう言うと、佐祐理さんと舞さんも歩みを止めた…
「解りません……呪いによって歪められた運命は、人それぞれですからね…俺は結果的に良かったとしても…これから起こる、あの子には……」
「そうとは思えない……」
舞さんがおもむろに口を開いた。
「みちるは、今の陽介の状態に近い物を感じる……美凪と一緒でとっても幸せそう…」
「……そうですか…なら、あの子は…」
もう、彼女は運命に直面して、乗り切ったとでも言うのか……
「お三方…どうしてそこに止まっているのですか?」
「んにー遅いぞー!」
廊下の向こうから、俺達が来ない事に気づいた美凪さんが声を掛けた。
「はい!」
「いまいきまーす」
「はちみつくまさん…」
全員で頷きあい、美凪さんたちの方へと急いだ。確かに、舞さんの言う通り…美凪さんとみちるちゃんはあんなに仲のいい姉妹だ…
もし、俺と同じ運命の後としたら、彼女は一体…どうやって…
そんな思考が俺の頭をぐるぐるとかき回した。考えながら歩いていると…風呂場から丁度出てきたと思われる、なにやら黒服の青年とすれ違った。
「こんばんは〜」
「こんばんは…」
「ども…」
佐祐理さんと舞さんが軽く挨拶を交わす…ここの人かな、タオルで頭を隠してるから誰だかわからない。
「ぬ?」
「ん?」
その青年は急に止まり、タオルで頭を押さえながら俺をじーっと見て…
「ああ!!お前は、あの時の!?」
「えっ?」
青年は驚いたように俺に指を刺した…はて、誰だっけ…あの時と言われても、この男が誰なのか、覚えていないぞ。
「よそ者の俺が言うのもなんだけど…あんた誰?」
美凪さんの親父さん?いや、若いな…データベース上にない男…
「覚えていないか!?」
「いや、そのタオルをどけてくれない限りでは…あんたが何もんなのか…」
「あ、そうだったな」
そう言うと、その男は…タオルを取った。まだ乾いていない前髪が、目を覆って何とも不気味な顔だ。
「どうだ!?これでも解らんか!?」
「……おれの意見としちゃ、わからん通り越して、不気味だ…前髪をどかしてくれたら…少しはましかもな…」
「陽介さん、お知り合いですか?」
佐祐理さんが俺の後ろから聞いてくる、俺は首をかしげて解らないと言う…
「よし、これならどうだ!?」
男は前髪を、分けて…自分の顔をさらけ出す、整った男の顔立ち…少し厳しいいでたちを感じる眼光…いい男には違いないが、あいにく男には興味は無い。
「陽介さん…どうですか…」
「…さっぱり…」
「ずこぉ!旅してる時に人形劇見せてやって、事情説明したら夏目漱石さんくれた!」
「……」
黒服の男から発せられる、奇妙な体験談……旅?人形劇…夏目漱石さん…まさか…
「おお、あんたはいつぞやの旅芸人君ではないか…」
「思い出してくれたか…あの時は世話になったが、礼は言えなかったからな…」
「あの、お二人とも話が弾んでいるようですが……お二人のご関係は…」
戻ってきた美凪さんが、俺とその男を交互に見比べて聞いてきた…
「ああ、オレ様がまだこの田舎町に来る前の話だ…まだ、駆け出しの旅芸人だったオレはある街に辿り着いた…」
「佐祐理さん達に出会う前に…一度、この『ド』がつく程の素人芸人である、この男とであったんです…」
「ド素人は余計だ…」
「はえ〜、それでは陽介さんが1年の時ですか?」
「まあ、そんくらいかな…後は、君が話してくれ」
「おう、そんで路賃も食費も尽きて、いつもの様に稼ごうとした…」
回想
それは、俺がまだ佐祐理さん達と出会う前の…一年の時…陸上部が終わり、帰ろうとしていた
さっさと帰って飯にするかと思い、帰路についていた…
商店街の一角で、観衆の前で…珍しい物を見つけた。
「大道芸か…この街にも来るもんだな……」
普段なら素通りする俺だが、その時は観衆の中に入って行った。
「腹話術か…そうそう珍しい物ではないな…」
黒いシャツを着た男の目の前には古びた小さな人形…
「さあ、楽しい人形劇の始まりだ」
そう言い…男が手を人形に念を込め始める。
腹話術じゃないのか…と思ったその時、念を込めた人形が独りでに動き出した。
「!?」
糸を釣ってる訳でもなし…その人形は勝手に動いているのだ。
人は無限の可能性を秘めていると聞いたが、これは正直な気持ちで驚いた。
だけど、観衆にはいまいち受けなかったらしく、その場から一人、また一人と立ち去り…結局俺だけとなった。
「……ラーメンセット…」
観衆が殆ど居なくなり男は青い顔をして言った…
「…あの動きでは、いんちきと思われても仕方ないな」
「はぁ…何がいけないんだぁ、このすんばらしい…芸をなぜ観衆は受けない」
「だが、あんたの芸は何か特別な物を感じる…あんた、旅芸人だろ…」
「な!?何故解った!?エスパーか!?宇宙人か?それともMIBの工作員!?」
素っ頓狂な声を上げる、その旅芸人…
「残念だが、全部違う……だけど、あんた…旅芸人のくせに路賃ないんだろ…まあ、その成績ではなおさらだ……」
「ぐはぁ…お前は営業妨害に来たのか?」
「いや…少なくとも、俺はあんたの能力を高く評価しているつもりだ…、後は芸の問題…だから、いいものを見させてもらった礼をさせてくれ……」
そう言って、俺は財布の中から千円札を2枚出して…
「はぁ…夏目漱石さんが二人…」
「お捻りだ……なんか食ったり、路賃に使ったり好きに使え…」
俺はそうその男に言うと、帰路に着くことにした……
それっきり、その男は記憶の深海に静めていたようだな…
回想終わり
「ふえ〜、陽介さんにそんな過去が〜」
「そんな過去と言うほど、大げさな物ではないですよ…」
「否、俺はその金でここまで来れたんだ…お前には、感謝してるぞ!」
俺の手を握り、にじり寄って来た…そんなに来なくてももうお捻りはやらんぞ…
だが奴の顔には何かくれと言ってるような気がした。
体はもう90度くらい曲がってるだろう…
「にょわぁぁーーー!!やおいはやめにょ〜〜〜!!!」
ガチャ『ファイナルベント』
横から、見かねたみちるちゃんが…ママさん受けを狙った某特撮ヒーロー物のおもちゃにカードを入れると、体を回転させながらその男に突っ込んだ…
「必殺!ちーるちる、ボンバァ!!」
グシャァァーー!!
みちるちゃんの回転キックは、見事男のみぞうちを直撃して…その男から俺は解放された。
「がはぁぁーーー!!」
モンスターは…倒された…
「ほぇぇーー、凄い威力です…」
「…見事な攻撃」
「往人さん…粉砕…」
みちるちゃん、流石は俺と同じ魂の欠片持つ者と言えよう…彼女の力は文字通り凄いものだ。流石だ……
「がはぁ…」
その倒れたモンス…基…男は、国崎往人という名を知ったのは、彼が目覚めてからの事だった。
だが、何故この特殊能力者が、ここに居るのかが気になった…
確か…旅の目的も聞いてなかったな…何となく、俺達が探している事と…何か因果関係があるように思えてならなかった。
「目覚めたか?」
「いっててて…みちるの奴…、加減せずに放ちやがった」
「最近あの番組流行らしいからな……特に、お母さん世代に…」
皮肉をたっぷりと込めて、国崎に言った…
「出てる奴が、カッコいい男が多いからって、おばさんと美凪と一緒に早起きすんだぜ…、そして展開が凄かったら店は大安売りデー…」
そら、展開がまずかったらその日は休業かもな…
「だが、あんたもいい線行ってると…俺は思うがな…」
「そうかい?」
俺は手を差し出して、国崎を立ち上がらせると俺はベランダから中庭を見た、ここは2階の国崎の部屋らしい…客人とはいえ、男と女が一緒の部屋と言うのはどうかと言う、みちるちゃんの計らいだった。まあ、客室が狭いからそうなんだろう…まあ、ここはみちるちゃんに従おうと思った俺も甘いのか
中庭には、花火をしている…みちるちゃんと美凪さん、佐祐理さん舞さんの姿が見えた。佐祐理さんは上を向いて、手を振る…
「あの二人は?」
「あんたと会った後、色々あってな……」
色々あって、佐祐理さん達と出会って…名雪が双子の妹で、それで母さんと再会したんだ。それから…SUPに入って、強くなりたいって。アグルストーンの欠片集めをして、恋香、神奈の受けた…1000年の呪い…
彼女が受けた呪いは、500年後に地上に降り注いだその彼女の魂たちは…ここに…
その一つは、…あの小さな少女…に…
「俺もお前に夏目さん二人もらって、ここに来てから…本当にいろんなことがあったよ…本当、こうなるなんて思ってなかったよ。それまでは、すぐここから出ようと思ったからな……」
「あんたをここに引き止めたのは、何なんだろうな……」
「やっぱ、ここに居た変な奴等だろう…」
変な奴ね…あんたも十分変な人だと思う俺は星空を見た…
この星空から…虚空の使者…振ってくる、巨大な龍と共に…
星空が絶望を呼ぶ者とならない事を願おう…
「!?」
俺は、突然ベランダから身を乗り出した…
「あ、流れ星にょわー!」
みちるちゃんが言うように…無数の流れ星が、地球へと降り注いでいた。俺はその流れ星を食い入るように見つめていた。
「おい、どうした?」
「……」
流星とは、地球の大気圏に触れた彗星の欠片が燃え尽きる時に起こる現象だ、あれがおきているとなると、もしかしたら…
あの流星群は、ギャラクシアン!
「はい…沖さん、こちらでも確認が取れました」
『うかつだった、ギャラクシアンの別働隊を逃してしまった、こっちの責任でもあるから』
携帯電話の向こうから、月基地の沖さんに聞いてみた…彼はSUP月基地で働いている、仮面ライダーの一人だ…
『一応、ギャラクシーギガに連絡は取っておいたけど…』
「来ますか…ここに…」
『解らないけど、もし向かうとしたら、君の言う『力』のある…そこだろう…』
「予定が少し狂うな…、こっちは何とかします、沖さんはまた来るかもしれない…ギャラクシアンの観測を続けてください…」
『オス!』
そう言って、俺は月基地との通信を切った…
トトト…
ちっ、誰かに聞かれたか、まあここは美凪さんの家でもあるし、仕方あるまい…
次の日、ここが戦場になるかもな、不本意だが…あいつ等…ここで争ってる場合じゃないぞ。
夜は更けていく、明日の海面下の決戦を目の前に、各々は…眠りに着いた。
神尾家
「うう…何とか食べられずにすんだけど…」
二人の若々しく熟れた抱擁の中、やくとは酒臭さとあやうやさに、寝れずに居た。
霧島家
「今日は、君は寝かせないぞ……浦谷君、君の体には興味がある…徹底的にバラしてあげよう(ニヤソ」
「あぎゃぁぁーーーー!本気かボケェェェェ!解剖するとは、人権無視だ、がぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!」
手術台で、聖に解剖されそうな浦谷は…何とかそうさせんとじたばたと暴れた。
<翌朝>
次の朝になって、不気味なくらいに快晴の空に目を覆った。
「よし…」
中庭に出て俺は、シャツを脱いで上半身裸になると…バッグから刀を出し、太陽の方向に向かって、鞘から引き抜いた。
目を瞑って、刀の刃を額に添える…大地の気道を読み…空気の流れを感じる。
集中すれば、風水と似たような芸当が出来る…俺が求めている場所がそこにある…
「おはようございます、今日も良いお日柄で…」
突然後ろから、美凪さんの声が後ろから聞こえた…
「おはようです、美凪さん…」
俺が中庭に出て、シャツを脱いで…刀を抜いてる所を見られた。って、もう隠しようが無いか…た、ただ呆気に取られて、美凪さんに挨拶するしかない。
「居合い斬り?」
「……え、あ…これは」
正直、なんて答えたらいい……多分昨日の通信を聞いていたのは美凪さんだろう…
「お侍さん?」
なんだろう、美凪さんの表情が何だかうっとりとしているぞ…当然目がキラキラして…
「旅のお侍さん、美人の女を二人お供に…珍道中…ぽ」
「は、はい?」
「それとも…あなたも、ライダーの一人?」
「はい??」
なんだか、凄いメルヘンな世界に入っていってしまってるようだ……物凄く勘違いしているようだから、万事良かったと言うことになるか…
ちなみに、あの番組…SUPが本郷さん達を元に制作したものだそうだ…本人達には不評だけど。
「え、いや少し、俺なりの朝の体操ですよ…刀は、…刃こぼれしてないか見ていただけです」
メルヘン入ってる美凪さんを何とか、ごまかした。
「残念…」
「は、はは…」
とも角、気道を察知した収穫はなしか…
「朝ごはんです」
「ああ、はい…」
刀を鞘へと終い、美凪さんが着替えに持ってきたシャツを着ると…皆のいる食卓へと朝食に向かった。決戦の前に腹ごしらえはしないとな。
ん?このシャツ…やけにぶかぶかじゃないか?(往人君のです)
まあいいか…
朝食を終え、俺と佐祐理さん…舞さんはある場所に向かう事にした。
美凪さん一家の朝食は我々第三者から見ても少し気恥ずかしかった。美凪さんとみちるちゃんは相変わらずだが、元は離婚していたと言うご両親も、今は寄りを戻し…ラブラブである…佐祐理さんと舞さんは、いつもの通りだし…俺の隣の国崎共々溜息をつくばかりだ。
「陽介さんどうしたんですか?お食事から溜息がいっぱいですよ〜」
「いえ、見ているこっちが気恥ずかしくなりまして…」
「??」
他の二人はきょとんとした顔で、俺を見る…流石に、あそこで国崎となんていちゃつけない…男となら、なおさらだ。
それで、今俺達3人が何をしているかって?
俺は気の流れ、地脈のありかを集中と言う方法で僅かながら見出していた。美凪さんの登場で断片的だが…剣を志す者なら、誰だってできる…
「陽介が感じたところって、ここ?」
「はい」
俺達が来たのは、遠野精米から少し離れた…小高い裏山っぽい場所、石段を登るとそこには小さいながら…神社らしき整った場所があった。
「僅かながら、感じた感覚はここで途切れています……何故、この地で3人も俺と同じ『神奈の片割れ』が生まれ出たのか、その鍵が、ここにあると思います」
ぴこぴこぴこ
「はえ〜そうなんですか?」
ぴこぴこ?
「可能性は低くない……ここに、魔物と居た時と同じ気が満ちていた、『形跡』がある」
ぴっこり
「形跡と言いますから……」
ぴこぴこ
俺はさっきから足元に居た物体をむんずと掴んだ、後ろから…この角度から見るとわたあめの形容がしっくり来る奴。そして、話にあわせるように…ピコピコと奇妙な奇声を上げている。
「ふえ〜、可愛いです〜何ですか?その生き物は…」
「ポテト…霧島診療所の番犬たるお前が、こんな所でピコピコ音頭を踊ってる場合では無いだろう、お前は佳乃ちゃんを守ると言う…一大指名があるではないか…」
「その生き物はポテトと言うのか……」
舞さん佐祐理さんは、俺の手に持たれた毛玉生命体について聞いてきた、可愛い…のかな?
「霧島診療所の飼い犬…だそうです。以前にシロガネ、黒狼オルグ戦の傷を見せに行った時に…出合ったのです、なんでも佳乃ちゃんが言うに『癒し系』だそうです…」
「犬なの?それは……」
「ぴこ!」
舞さんの質問にポテトは頷くように奇声を発する。ぴこと言った時点で犬とはかけ離れてるようにも思えるが…
「お一人でお散歩なんですか〜?」
「ぴっこり!」
「散歩がてらここに、立ち寄ったと言ってる…」
「舞さん、まさか…こいつが言ってる事、解るんですか?」
こくりと舞さんは頷いて、Vサインをする…どうやらマジらしい…
「とも角、ポテト俺達はここに遊びに来たんじゃないんだ…くれぐれも俺達の邪魔にはならないようにな」
「ぴっこり!」
舞さんにポテトを渡した…毛玉があるから舞さん暑そうだけど仕方が無い。
「さて…本題に戻りましょう」
「はい〜、あの〜佐祐理にはピンときませんけど…」
「形跡があるだけですからね、もっと強い物があれば…佐祐理さんも気づくはずです。でも…ここの中に何かがあったのは事実です」
元はここに、何かがあったと俺はそう考えるんだが…それはこの中にあったのか?
「この中にあるのでしょうか?」
神社の境内を指差し佐祐理さんは聞いてきた、どうする…入るか?まあ、入らなければ、知りたい事も解り分けないよな…
「さて、入りますか…」
「ふえ?どうやって入るんですか?」
「こうやるのさ……」
俺は、刀を引き抜いて神社に掛けられている南京錠にその刃を切りつけた。
ジャイン!!
南京錠は刀によって、切り裂かれ…神社の中に入れるようになった…
「ってこうやるのです…ってあれぇ?」
目の前の佐祐理さんと舞さんが、なぜか…美凪さんとみちるちゃんに変わっていた。
「賽銭泥棒?」
「にょわ、もしくは秘密組織の特殊工作員!?」
この姉妹は、露点が外れてそうでどこか鋭い……。
「あれ?佐祐理さん?舞さんは?」
「あはは〜ここですよ〜」
「…はちみつくまさん」
突然俺の後ろから声がすると、いつの間にか…俺の後ろに、佐祐理さんと舞さんが居た。
「いつの間に……まあ、良いでしょう…美凪さん達は一体ここに…」
「街を案内させてやろうと思い……一緒について行こうと思ったんですが…店にお客が来て、きりがありませんでしたので…往人さんに任せて、追って来たのです…」
「すっごく五月蝿くて、でかくて…せこそうな奴だったぞ〜〜!!」
みちるちゃんの言葉から推測すると、美凪さんの店に来たのは浦谷だな…全く、米の事しか頭に無いのか…
「皆さんはおそろいで何をなされていたのですか?」
「あ、いや…その…」
これでは、美凪さんにごまかしきれん!賽銭泥棒と言われるのが落ちだ。
「あはは〜少し、調べ物です〜大学の論文の」
「郷土研究……はちみつくまさん…」
「は、はい…それで、俺は彼女達が女二人だけだと何ですので…男手が居ると思って」
ふう、何とかごまかす事ができたな…まさか、みちるちゃんの秘密を知る為に…ここに来たなんて、言えないよな…
「郷土研究のくまさん……」
「ずこ!」
「あはは〜〜(汗)」
「………」
すると、美凪さんが…その静かな口ぶりで…ここについて説明し始めた。
「私が知ってるのは…ここには、御神体として…一枚の鳥の『羽』があります」
「鳥の羽ですか?何の鳥のです?」
「それは……解りません、でも…年に一度ここで夏祭りが行われます…私もここで巫女のアルバイトをした事があります」
「みちるもだぞぉ!」
美凪さんの巫女さん姿は別として、鳥の羽か…
「ですが、凄く古そうな羽でした…」
「この中にあるの?」
舞さんがポテトをみちるちゃんに渡してから聞いた…
「はい、宮司さんは家族旅行中です…」
「何通、危機管理不足…」
罰当たりな俺が言っても仕方があるまいな…とも角、俺たちは俺たちの仕事があるから、ここに来たんだ…もしや、ここにあるのは…翼人…神奈の羽かもしれない。
それが、ここに俺と同じ、彼女の魂を受け継ぐ物が3人も居るはずは無い…
たぶん、この力を狙って…ギャラクシアンも来る。
ここを戦場にするわけには行かない!
「それでは〜佐祐理達は…調べてきますねぇ」
「それじゃあ、俺も…」
「陽介さんは外で、美凪さんたちを守っててください……もし、宇宙人さん方が現れた時に対処がしやすいです」
「あ、そうか…」
佐祐理さんに耳打ちされて、俺はここに残る事にした…美凪さんたちを守れるのは俺ぐらいだからな…
「じゃあ…俺はここに残ります、お姉さん方」
「はい〜それでは〜、行こう。舞」
「………はちみつくまさん」
舞さんを連れて、佐祐理さんは空けられた神社の中に入って行った。
守れるとは言われたものの……何だか、余計な気を使われたような気がする。
「よーすけの刀って、よく切れるのか?」
「あ、こら…危ないぞ…本当に切れるからな…」
みちるちゃんが、刀をまじまじと見つめていたので…俺はとっさに鞘に入れた。
「にょ、どれくらい斬れるのか見てみたいのだ!」
いきなり無理難題を突きつけてくるなこの子供…神奈が現代に居たらこんな感じかもな。
「みちる、あまり陣内さんを困らせたらだめ……」
「うにぃ…解った」
はあ、そんな凄く残念そうな表情をしないでくれ…
「仕方ない……特別に、俺の居合い斬りを見せてやろう…ただし、一回だけだぞ…」
「本当!?」
「男に二言は無い……だけど危ないから、俺のそばには寄るな…」
念を押して、彼女達から少し離れた地点で竹の切れ端を置くと…俺は竹と彼女達の間を取るように間合いを計る…刀の長さでは届かない地点だ。
刀に意識を集中して、心の雑念を取り払う…
「うに〜〜、緊張するにょわ〜〜」
「刀の長さと距離が…少しさみしい…」
大丈夫…斬れる、俺にはもう竹を切るイメージが固まった。
目を閉じて、目の前の標的をイメージを浮かべる…そして、刀を素早く引き…戻す。
シュ!
「斬れました……」
パカ…
目の前の竹が一刀に両断される…遠くの距離を、目に見えない…素早い素振りで起こした空気の刃で…切ったんだ。見えるはずが無い…
「お姉ちゃん、見えた?」
「うん、しっかりと見えましたよ」
「何?」
「動体視力はいい方です……えっへん」
動体視力がたとえ良くても、俺の刀を見切ることができるのは舞さんぐらいしか居ない…この人は一体…そう言えば、初めて会ったときもそう思ったけど…美凪さんは何処と無く舞さんや佐祐理さんに似てるよな…
それにみちるちゃんなんて、声だけ取れば…舞さんその物だ…
国崎だって容姿が多少俺に似ている、背はあっちの方が極端に大きいけど。世の中は狭いと言う事か……
「ほお〜〜、凄い剣術にょわ〜ぜひ、国崎往人打倒に…みちるを弟子入りさせて欲しいのだ!」
みちるちゃんがびしーっと俺に指差してきた…仲悪いのか?国崎と…
「残念だけど俺の剣はまだ人に教えられるレベルじゃない……、それに師匠が許してくれない……」
「うにーみちるも『そーどべんと』が使いたかったにょ…」
「みちる、あれは…選ばれた人しか使えないのよ…」
そーどべんと…あの番組の影響力はかなり強いな…SUP放送局め…
「お師匠様とは…神社の中を指差しましたが…」
「ああ、俺に剣を教えたのは…舞さん……この剣術も、あの番組と同じように選ばれた者しか扱えない特別な剣術…だから、教えられません……」
「そうですか……」
「でも、素振りの練習ならさせてやりますよ……」
美凪さんにそう言うと、美凪さんはまたどっからか2本の竹刀を取り出した。
「じゃーん…そう言うと思って持ってきました」
「用意は良いですね…でも、何処から出したんです?」
「……いやん」
「何故そこで照れますか?」
なんだか、美凪さんの人間性が解らなくなってきた……。
と、その時だった…
「……殺気?」
「陣内さん?」
俺達を神社ごと包囲するように……数体の物と思われる殺気が所々からした。空を見た…ここから、上空が一望できる…俺は持ってきた小型の双眼鏡を取った。
ゴォォーーー…
あれは、ギャラクシアンの戦闘機トーラスの部隊…もうこの地球に飛来してきたか…指揮官はギュレルか?
「変わった飛行機が沢山飛んできてますね……」
こりゃ、誤魔化しきれないな……ここまで来たら…
「うにゃぁ!お、お姉ちゃん…こいつ等……」
草むらから、木の木陰から俺達を取り囲むように…小型のギャラクシアンの極地対応戦闘員、ギャラクシービースト…
「『虚空よりの使者』…この空を絶望の色に染める…宇宙の悪の根源…ギャラクシアン」
「陣内さん……あなたは、一体…」
「にょ?知ってるのかぁ!?」
「もう誤魔化しきれないな…佐祐理さん!舞さん!状況解ってますね!!」
「はい!御神体の羽は、佐祐理が持ってます!」
「連絡した直ぐに本部から、この地区一帯に避難命令が出る……」
佐祐理さんは御神体を丁重に箱に保存し…舞さんは携帯電話で、本部にこの地区の避難命令を出すように指令した。
「陣内さん…あなた達は、本当は何者?」
首をかしげて、美凪さんは聞いてくる…
「俺達はあの御神体の秘密を探りにきたスパイなんだ……そして、この街をこいつ等から守る為に…送られてきたんだ」
「やっぱり、3人で秘密諜報部員…00●でした、ぽ…」
美凪さんはみちるちゃんをかばうような形で、またキラキラメルヘンモードになってる。
どうしてそこで照れるのかが不思議だ…実に不思議だ、美凪さんは…
「はあ、間違ってませんが……とも角、佐祐理さんたちがシェルターに避難させます…美凪さん達もそこに…」
「解りました、ボ○ドさん…みちる…さあ」
美凪さんがみちるちゃんの手を引いて佐祐理さんの方へと行こうとする…だけど、みちるちゃんは俺の裾を引っ張って…
「よーすけ、死なないでね……」
「……ああ、素振り…まだ教えてないしな…行け!」
みちるちゃんの頭を撫でてそう言うと、舞さん達に連れられて…美凪さんは一度神社に非難する。
まあこれだけの数だ…脱出は不可能だろう…だけど、彼女達には血は見せたくない…
「峰打ちで十分倒せる…」
俺は刀の刃を反転させ、刃の無い峰でギャラクシービースト達を倒し始めた。
ばき!どか!がき!
キックを加え、俺の剣技は無数のギャラクシービースト達を圧倒した。
「羽を奪取する班にしては、質より量か…それだから、宇宙系列の敵はのんびり思考だって言われるんだ!!」
峰で最後の一匹をなぎ払う……ふう、3分か、長くかかったな…
「よし、最後に見せてやろう…」
俺はそう言うと、腕に巻かれた佐祐理さんが作った黒いマフラーを上空高く投げ放ち…ブレスを、天に掲げると…
「光波!招来!!」
まばゆい光が、ブレスから放射され俺に赤黒い装甲服となり装着され…最後に狼を形どった、マスクが装着された。
『……光波率100%装着完了…『狩人』装着完了』
「闇を斬り裂く一筋の光源……ウォーハンター『陣』推参っ!」
続く。