『月は、いつもそこにある・・・』

画面の中では、先日浦谷が呼んだモビルスーツが月をバックにぶっ壊れていた。

「なるほど。これが、連中のプロフィールか・・・」

彼はそうつぶやくと、つまらなそうに、机の上の柿の種をかじった。

「・・・びっくりとか、しないんですか?」

やくとは不満そうにそういうが、彼はまったく気にしてはいないようだ・・・

先日から彼らの新たな隣人となった、ガロード=ラン以下3名。

事は、やくとが親切にも、事情をわかっていない(と思われている)浦谷へ、ジャイアントロボ(特撮版)、大鉄人17、機動新世紀ガンダムXの上映会を申し出たことから始まった。

当然、浦谷は召喚しただけなので、彼らの詳しい事情を知らない。

即座に、OKした、というわけだった。

で、ジャイアントロボ全26話、大鉄人17全39話、ガンダムX全39話を連続視聴することになった。

当然泊りがけである。

「あほぅ、巨大ロボットなんぞ、珍しくなかろうが。」

「いや・・・そうじゃなくて、彼らはこの世界の人じゃないって、僕は言いたいんですけど・・・」

そういうやくとへ、浦谷は、

「だから、何?」

と返した。

「あのなぁ、こんな物騒な世の中だ・・・2Dの世界から人が出てきてもおかしかないだろうがよ。」

「そうそう。」

「いや、そんな・・・」

身も蓋もない。

そう言い掛けて、やくとは止まった。

隣に座っている人影に気づいたからだ。

当然そこに座っているのは・・・

「が・・・ガロード君、ナなna何故ここここにぃぃぃぃぃっ!!!

「最終回のはじめあたりから・・・だけど、それがどうしたの?」

やっぱりガロードだった。

「わっわっわっわっわっ・・・うわわわわわわっ!!」

「ン〜・・・そっかぁ、これが俺のエピローグってわけだ。でも、これがこうなるとはかぎらねえんだろ?」

「当たり前だ。結果を知った以上、そこへ向かうか、変えてみるかを決めるのはてめーだ。ンなのは自分で決めろ。」

「そうだよな。」

「いや、あの、だから・・・なぜここに・・・」

多少落ち着いたやくとに、ガロードは「よっ」とか、軽い挨拶を述べていた。

「・・・とにかく、今日は帰りますっ!あうあうあうあう・・・・」

何がとりあえずなのか、彼はビデオを早々に取り出すと、部屋を出て行った。

「何だ、あいつ・・・?」

「ま、いっつもあんなもんだ。気にしてるとハゲルぞ、ガロード。」

「いや、それはない。・・・じゃ、そろそろ帰るわ。もともとたいした用事があったわけじゃないし。」

「オウ、帰れ帰れ。」

その言葉に後押しされたように、ガロードは部屋をさっさと出て行った。

しかし、彼がこの部屋に来たことが今回の事件の引き金になるとは誰が知ろう・・・

もちろん、自体はガロードも浦谷も、やくとにも予測不可能なところで進み始めていた・・・



超弩級巡洋戦士ウラタンダー!

第四話 「カットだ、カット!ふざけんなよてめえ!!」前篇



「はー・・・びっくりしたぁ・・・」

ガロードの突然の出現(浦谷には突然でもなんでもなかったが)に驚き、やくとはあわてて外に出て、榊荘の外まで逃げてきたところだった。

「はぁ・・・浦谷さんも、人が悪いなぁ・・・って、いっつもあんな感じか・・・」

あきらめ気味に、やくとがそう言ったとき、視界の端に止まったものがあった。

「あ・・・アレは・・・!」



「オウオウ・・・そこのばあちゃん。ちっと金貸してくれよぉおお〜〜」

「何言ってんだか・・・孫でもねえやつにくれるわけねえべ?!」

そこでは、なんとありがちな事に、おばあさんを脅迫しているチンピラがいた。

せりふもありがち。

お婆さんはまったく意にも介していない。

それどころか、チンピラを圧倒するほどの気迫がある・・・

それに気づかないのか、やくとは少し間が抜けたように・・・

「・・・珍しいなぁ・・・あの手の馬鹿チンは浦谷さんが来たころに全滅してるはずなのに・・・って、そんな場合じゃないっ!」

と言った。

やくとは、駆け出して叫んだ。

騒動の始まりとなる、言葉を。

「武装装着ッ!そこのチンピラ、俺様の鉄拳を喰らうべさぁ―――――――――ッ!!」

ずがしゃあぁっ!

気づけば。

やくと・・・いや、Y(ヤクト)団首領の拳が壁に突き刺さっていた。

「ふっふ〜ん・・・いたいけな老人をいじめるとは・・・てめえ、ここで死ぬ覚悟はできてんだべなぁ〜〜?」

その威力に震えるチンピラへ、ちょっと原哲夫の漫画に出てきそうな言葉を吐くと、首領はパチンと指を鳴らした。

すると、後ろから・・・ってマジかよ。

とにかく後ろから戦闘員どもが出現し、チンピラの両手をふんじばった。

そして、かっこよく決めるために、その腕を壁から引き抜こうとする・・・が。

「(ぬ、抜けないべさ・・・)」

威力は良かったのだが・・・勢い余り過ぎて、手が引っこ抜けない。戦闘員どもを尻目になんともお間抜けな格好の首領。

本心は、早く助けてくれと言いたいところだが・・・こんな事正義のプライドが許さない・・・ここは・・・

「戦闘員B・C、こやつはわがY(ヤクト)団地下アジト(?)にて、反省するまで折檻だべさ。連れて行け。」

ごまかすようにそう言うと、チンピラへ「BとCは、元の世界では拷問担当だった戦闘員だべ・・・ま、一時間持たずに、あの世へ行くか、反省して更正するか・・・そのどちらかを選ぶことになるべ。」と、かっこつけて言った。

さまにならんのぅ。

と、思わず、私ナレーターが言ってしまうほど。

「おい、兄ちゃん・・・せりふ、合ってないぞな。」

おばあさんのそのせりふが、バリバリ今の状況を表していた。

「もしかして、抜けねーんじゃねーの、兄ちゃん。」

お婆さんは、さらに追い討ちをかける。

「ふ・・・そ、そんなことはないべ。おばあさんも、危急を脱したのだから、家に帰るといいべさ・・・」

そんな言葉を聞いてか聞かずか、Bが心配そうに声をかけてきた。

そこはそれ、元は拷問・尋問のために改造された戦闘員。

言葉も、きちんと話せる。

「ボス・・・どうしたんですか、もしかして、本当に抜けないんですか?」

「そんなことはないべ・・・他に何かあるべか?」

「いえ、もし更正したら、どうしましょう?」

「そうだべな・・・体力ありそうだから、Y(ヤクト)団に引き込んじゃっていいべさ。」

チンピラは、言葉もなく、ただただ震えている。

そして、Bは肯くと、Cとともに彼を引き摺って行った。

ひゅうう・・・

ぽつん、と取り残される首領。

「ムー・・・隙間はあるから、装着解けば抜けるかな?」

そう言って、片手でマスクを脱ごうとしたそのとき。

「てめえええええらああああああっ!何を馬鹿やってんだ、ボケなすううううううっ!!」

絶叫が響き・・・

ごげす。

めげしゃああああっ!!

無造作な音とともに、壁の構成材ごと、首領は吹き飛んだ!



少し前

「・・・やくとめ、ビデオを忘れて行ったな・・・」

浦谷は目の前にある、SDVDの山を見つめていた。

ちなみに、SDVDは次世代型DVDで、6時間の録画が可能な光ディスクである。

「まったく、仕方ねーなぁ・・・」

そうつぶやくと、浦谷はビデオの束を持ち、外へと出ようとした。

そのとき。

ぞく。

悪寒がした。

かなり、やばい感じの。

「・・・なんか、今外に出るとまた厄介ごとに巻き込まれる気がする・・・」

今までの、経験したくもなかった出来事から、彼はその悪寒の正体を、ほぼ確実に言い当てていた。

ホントに、嫌な感じの勘はあるな。

馬鹿みたいに・・・

「馬鹿とは何だ、こら。」

おっと、だからナレーターにけんか売るな。

「ハッ・・・」

浦谷は、目の前の靴を見つめて悩んでいた。

「ごまかしたな・・・」

う、うるさいッ!いいから、進めろよ!!

「チッ・・・仕方ねえ・・・」

もうソロソロ、どっかからクレームが来そうな、メタな突込みをかました後、彼は今までよりもさらに深く、靴を見つめていた。

出るべきか、出ざるべきか。

非常に、困った。

出たくない。

勘がそう告げている。

しかし、返さなければ、またあいつがこの部屋に来ることになるだろう。

「・・・あいつ、俺の部屋を勝手に漁ろうとするからな・・・」

其処まで考えて、浦谷は「よし、返しにいこう。」とつぶやいて、靴を履いた・・・



外に出ると、夏の太陽と濃い空気が肌を焼く。

「ち・・・田舎ほどじゃねえが、夏のこの濃い空気は、なんとなく嫌だな・・・」

そうつぶやくと、彼は歩き出した。

時折感じる涼風が、一層夏の郷愁を際立たせる。

あの田舎町ほどではないが、彼にとってはそれはつらいものだ。

「ふん・・・」

そう言ったとき、少し先に何かおかしな光景が見えた。

「なんだ・・・チンピラか・・・チッ、憂さ晴らしにぶっ飛ばしてくれよう。」

そんな不穏当な発言をかましつつ、彼がおばあさんを脅しているチンピラのほうへ向かおうとしたとき。

「そこのチンピラ、俺様の鉄拳を喰らうべさぁ―――――――――ッ!!」

・・・アレは、まさか・・・

どうやら、予感どおり今日は最低の厄日になりそうだ・・・

「装着変身ッ!!」

そう叫ぶと、浦谷は、いつものスーツに包まれて・・・

「てめえええええらああああああっ!何を馬鹿やってんだ、ボケなすううううううっ!!」

絶叫を上げ、彼は・・・黒服。

Y(ヤクト)団首領へ、究極の(嘘)蹴りをかましたっ!!



ガラガラ・・・

首領が手を突っ込んでいたビルは、首領の手とともに、柱が折れたのか・・・

ガラガラと音を立てて、崩れていった。

壁のかけらを腕にくっつけながら、首領はシー○ック=○ノーよろしく、「なんとぉ!」と叫んだ。

「お前・・・何してやがった!」

イラツキ気味にウラタンダーが叫ぶと、何を馬鹿言っているのかという風に、首領はコウ返した。

「・・・ビルをぶっ壊しておいて、何を馬鹿言ってんだべ、極悪メタルッ!悪の枢軸みたいな事をするんじゃないべさ!!」

「誰が、悪の枢軸だ、この変態っ!!」

「なんだとぉ・・・他人の民家を壊しておいて、そういう台詞を吐けるところが悪の枢軸ッぽいんだべ!!」

「ぬぁぁぁにぃぃぃぃ・・・?!」

不毛な言い争いを続ける二人。

そうしている間にも、ビルは崩壊し続けている。



丁度その頃

「うわぎゃぁぁぁぁーーーーー」
「いぎゃぁぁぁぁぁぁーーーー」

ここはY(ヤクト)団秘密基地その1(鮫島さん家)にある、いっつもやくとが使う研究室。

元々は、やくとのお爺さんの書斎であり、遺言からこの地下の書斎をやくとにやり以来、ここはやくとの研究室となった。

そのまた地下にやくとが作った、地下アジトに通ずる、階段の扉の前に座る二人の戦闘員。

「ほけー」

「・・・・・・イライラ(怒)」

俗にY(ヤクト)団員と呼ばれた、Y(ヤクト)団の戦闘員達の中でもとりわけこの二人は下っ端の下っ端に値する奴等である。

地下では先程戦闘員D達が運んできたチンピラ達の悲鳴とも、叫び声とも解らない奇妙な声が響いている。

そんな事はお構いなしなのか、二人はドア番をしていた。

「ぼけ〜〜」

マスクのYの文字が、青い奴が・・・ぼけーっと上の空な所を横で、そいつとは正反対の赤いマスクをした奴は、どこぞのクリーニング店でバイトをする免停の猫舌男の如く、頭に青筋を幾つも立てて(実際にはマスクでよく解らないが)・・・いきなり・・・

「うがぁぁぁぁーーー!!」

「うわきゃ!」

突然奇声を上げて、叫ぶと青いマスクの奴がビクッとして、赤いマスクの奴は手をぶんぶんと振りながら文句を言い出した。

「うわきゃじゃねぇ!何だって、ウルル!?出撃なのにドア番件電話番なんじゃごるぁ!」

「だって、首領様の命令だよぉ?それに僕達下っ端だし・・・」

「んな情けねぇ事うじうじ、言ってっから、何時まで経っても下っ端のままなんだよ!」

「キレルぅ、まだ性懲りも無く上を目指そうとしてるの?」

「性懲りもなくたぁどういうこったぁ!?」

この辺り構わず切れまくってる赤いマスクのこいつは、やくとから相性を『キレル』と呼ばれた奴だ。

「いいかぁ!?おりゃぁな、ショッカーの時から絶対組織のトップになろうと日々、健気にじみーな、雑用をこなして来たんだ!それを、たかが改造人間二人の為に組織は壊滅して俺様は、こんな辺鄙な組織のじげん何たら装置ってので呼び寄せられて!?それで、こんな奇妙な服着せられて、見ろ!元が八頭身がいまはちまっとした二頭身SD化だぞ!?」

ぶーたれながら、元ショッカーから引き込まれたキレルは、今までの苦悩の人生を熱く語っていた。

確かに来た当時は、八頭身(だと思われる)だったこいつ等も、Y(ヤクト)団員の特有のこのスーツを着たら・・・二頭身化して見えてしまう・・・理由は、こいつ等がギャグだからだろう。

「うー、僕もファントム軍団では雑用やってたけど、それなりに楽しかったし、前線に出なくて良かったから・・・」

「ばーろー、そりゃお前がドジばっか踏むからだ!」

「酷いよ〜そりゃ、僕がここ引き込まれたのは・・・毒ガスをマスクに詰めようとして爆発させちゃったのが原因だけど・・・」

うじうじと、ウルルは自分がこっちに来た経緯を愚痴をこぼすように説明するとまた切れるがイライラし始めてる。

「でも僕たち、こんな辺鄙な所に呼び寄せられて大丈夫かな〜ほら、だって首領様の言ってた『さっぷ』って所には僕達が居た組織での敵が寄せ集まってるんでしょ?」

「まーな、だけどあの首領は、『さっぷ』は味方だって言ってたろ?そのかわし、俺様達の敵は、『極悪メタル』って奴だろ?」

「うん極悪メタル、極悪メタル」

「極悪メタル」

「極悪」

いまごろどっかで本人がくしゃみをするくらい、極悪を連呼する下っ端二人。

「だがよ、ここはある意味ショッカーやお前のいたなんとか軍団って所よりはいい場所だと思うぞ」

「何で?」

「考えても見ろ、元いた組織とかは決まりがうるせーし、街に出たら騒がれるし・・・人間変な改造はするわで、結構動きづらかったろ?俺さまぁ、変な改造もされなかったからよかったけどよぉ」

「あ、僕されたよ・・・」

「にゃにー!?」

「だって毒霧吐く時、謝って吸ったら死んじゃうよぉ〜、それに超能力の訓練もされたんだ〜」

そばにあった、スプーンを取ってウルルはキレルにスプーン曲げを見せた。

「・・・あんのうんって奴が来てもしらねえぞ」

「あうー、そーだった〜」

迂闊だった、この組織で改造されてないただの人間って俺とこいつだけかと思ってたのに、キレルはがっくりと方を落とす。

「んまぁ、そんな事はどーでもいいとして、ここがどれだけ他の組織とかけ離れた組織か解るか?」

「えーっと・・・解んない」

「いいか?首領の反転前のお陰で、この町で自由に暮らしてもいいしバイトをしても怒られない、しかも街自体が変なのか知らないけど、普通にこのかっこして歩いても誰も驚かないし、むしろ日常に俺達が入っても、問題はないように思える」

「そうだねぇ、僕達がどっかのマンションの部屋を借りても不動産屋は何も文句言わないしね」

「だろ?それに、組織は主だった幹部も居ないし、首領が他の奴等連れて戦闘してるし、戦闘に参加できなかった俺たちも、自主参加できる・・・どうだ?いかにここが他と比べていい組織か解ったろ?」

「あ・・・それはそうだけど・・・」

「他には無いぜ、こんないい組織!アルバイトもしていいんだから・・・」

それには、同じようにここで待機していた戦闘員達もうんうんと同意する。

「こんな組織、他にないぞな?!だからいつかは、ここのトップになろうと思ってんだよ」

「待ってよ〜、確かショッカーで失敗したんだよね」

「だから、こんなに・・・都合のいい組織はねえって事だ!」

「でも〜」
プルルルルル・・・プルルルル・・・

泣きそうな声で、その電話を取った。

「あ、電話だ・・・もしもし、あ・・・はい、はいー・・・今、更生中です。え?解りました〜今行きますです」
かちゃ

「みなさーん、首領様がお呼びです〜補給爆薬をとの事です」

ウルルの一言でその場に居た戦闘員達が立ち上がり、爆薬を持って裏口からぞろぞろと出て行った。

「さって、さっさと極悪メタルぶった押して、上へ上へあがるか!」

キレルも爆弾を体に持って、出かけようとした。ウルルもそれにならって爆弾を持って。

「ねぇ、本当にこの組織のトップになろうと思ってるの?」

「当たり前だろ!努力と、根性で行けば必ずみのんだよ、このやろう!お前もうじうじしてねぇで来い!」

「あ、無理だと思うけどなぁ・・・まってよー」

無理だと思いつつも、ウルルはキレルの後を着いていく事にした。



「チ・・・頭数そろえやがったか・・・」

ウラタンダーは、忌々しげにそう口にすると、剣を抜き放つ。

「てめーら見てーな変態どもに、人権もクソもねえっツーことをここで教えてくれるわ!」

「なんだとぉ!この兵力を前にそんな事いえるのか!このウクレレダーめ!!今日こそ反省させてやるべさ!!!」

・・・そう、見れば周りは、数十人単位の戦闘員が囲んでいた。

「雁首そろえりゃ何とかなるとでも思ってんのか、この頭でっかちのこんこんちき!テメエの顔見てると、近所の紙一重野郎を思い出す!!今日こそ消す!!」

いつもの罵倒合戦が、繰り広げられていた。

「なんじゃと、このアホ猿がぁ?!目に物見せてくれるべ!!」

手を前にかざした首領に合わせるかのように、戦闘員たちが動き出した。

「クックック・・・新Y(ヤクト)団戦闘員スーツの威力を見よ!!」

・・・確かに、戦闘員たちは今まで灰色一本の服だったはずが、何人かに一人の割合で赤や黄色、青や緑・・・戦隊スーツのようなカラーリングのものがいるようだ。

・・・しかも、その中にはチョコマカチョコマカ動き続けるタイプがいる。

それがまた、すごく早く動く。

およそ200km/h。

「・・・なんじゃ、この変態物質は?!」

「ふははははは!!これこそ新スーツの威力ッ!パワーをそのままに、スピードをあげるっ!なめると痛い目見るべさ!!」

ゴキッ!

「あいたぁっ?!」

その時、ウラタンダーのすねに、思いっきり戦闘員がぶつかった。

強烈な頭突きを食らわされて、うずくまるウラタンダー。

「ぐゅ〜〜・・・今のは痛かったぞーーーーー!!」

「その台詞が悪役っぽいんだべ!!今のなんて、まるでフリーザかセルだべ!!」

・・・ドラゴンボールかよ・・・

そんな突込みが聞こえてきそうな、そんな台詞を吐きながら首領はさらに、

「クックック・・・後方支援部隊・・・出でませいだべっ!!」

と言った。

・・・バズーカ?

ウラタンダーがそう思う間もなく、彼の周りから、戦闘員たちがさっと引く。

影から、巨大なバズーカを抱えた五人のカラフル戦闘員が現れた。

「まぁぁぁてぇぇぇぇぇぇっ!!」

「待てと言って待つ馬鹿はいないべっ!」

「こないだ言った事と違うぞぉぉぉぉぉっ!!」

「場に当たっては臨機応変っ!それが我が流儀だべさっ!!・・・いいから、討て。」

『ヤック!』

ちゅどーん!!

「うのわぁーーーー!!」

素っ頓狂な声を上げて、吹き飛ぶウラタンダー・・・

それを見ながら首領はほくそえんだ。

「中古のパワーバズーカ買っておいて正解だったべ・・・ま、戦闘員スーツの改造費も結構したし、トントン・・・だべな。」

因みに、パワーバズーカとは、かつて「電撃戦隊チェンジマン」が対等身大怪人戦の切り札として使用していたバズーカの事である。

・・・すでに、それは20年近く前。

何処から手に入れてきたのだろうか・・・

・・・もしかして、陽介か?

ま、それはどうでも良いとして。

「てめえらぁぁぁ・・・なんてもの持ち出してきやがるっ?!」

「ふん、情報収集を怠った、貴様の責任だべさ!」

また、罵倒合戦。

さっきと違うのは、首領に余裕の色があると言う事。

―――今度は勝った。

首領は、そう思った。

・・・因みに、こいつら、政府の許可も得てないし、S.U.P.の方でも持て余してるので、このまま一つところで争い続ければ、銃刀法違反(どころじゃねえ)の現行犯で、警察が動き出しますが。

気付いていらっしゃる訳がねえ。

さっさと、廃工場にでも行けばいいのにね・・・

・・・その、ナレーター(私)の独り言の間にも、戦闘員たちは、波状攻撃を仕掛けていく。

「うだらぁぁぁぁぁっ!!」

「ヤック、ヤック!!」

「うはははははははは!!」

・・・苦戦しているウラタンダーと、攻撃を続ける戦闘員。

そして、哄笑を続ける首領を尻目に・・・

倒壊したビルの中で、ぴくりと動く影があった。

・・・説明のために、少し前に戻る事を平にご容赦くだしゃんせ♪



1時間ほど前。

ある、ビルの一室。

おそらく14〜5歳の少女が、その暗い部屋に照明をつける。

「ん〜・・・ここが、私の部屋か〜♪・・・でも、殺風景だね。」

覚えているだろうか。

S.U.P.潜水艦隊司令のことを。

「んん〜でも、ベッドはふかふか〜♪後は、私物を持ち込むだけね。」

そう言うと、彼女はベッドに寝そべり、天井を見上げた。

そこには、なぜか矢鱈安っぽいシャンデリア・・・

―――そういえば、ここは、昔・・・

そこまで考えて、彼女は顔を赤くした。

「ここってば、今はマンション兼貸し店舗だけど、昔はラブホだったのよね・・・」

耳年増なことを言って、ベッドや内装を見る。

ナンと言うか、何かが取り付けてあった跡や、やたら多い電源が目に付く。

物件を見たときは、そんな事を聞いても、「電源が多いと、仕事がやりやすい」って思ったくらいだったのだが。

確かに、ベッドは普通の形・・・ラブホテルに良くある回転ベッドではない。

でも、なぜかダブルベッド。

しかも、装飾過剰。

広いのはいいのだが、ちょっとよからぬことを想像してしまう。

その考えをぶんぶん頭を振って振り払い、彼女はひとりごちた。

「・・・結城さんも、何でこんな物件紹介してくれるのかしら・・・?」

その疑問は、ジャムを持ったやたら蒼髪が目立つ自称20代の主婦に聞いてくれぃ。

「ふぁ・・・ねむ。書類の整理は、終わってたから・・・少し・・・寝よう・・・」

そう言って、彼女・・・S.U.P.潜水艦隊司令長官 蒼藤氷隼中将はその身をベッドに横たえた・・・



と、まあ、そこまでが彼女の記憶だ。

しばらくして、ビルは完全に倒壊して、彼女は瓦礫の中で眠っている自分を見出した。

「・・・一体、何が起こったんだろ・・・」

眼をこすりながら起き上がると、同じく瓦礫が盛り上がる。

ボコ、と音を立てて、瓦礫が飛ぶ。

「・・・びっくりした。」

高校生位だろう。

落ち着いているが、何を考えているかわからない。

そんな瞳をした、黒の長髪を持つ女性は立ち上がった。

ボロボロになっているセーターが、少し痛々しい。

まぁ、服がぼろっちくなってるのは、自分も同じだろう、と氷隼は思った。

「あ、あの・・・アナタ・・は。」

「答える必要、ないと思う。」

そう言った彼女は、ちょっとだけ見た覚えがあった。

「もしかして・・・川澄、舞さんですか?」

そう、それは舞だった。

氷隼を一瞥すると、「はちみつくまさん」と言って、彼女は歩き出した。

その手には、思いっきりダンビラ(隠語で日本刀)。

「ちょ、ちょっと待ってください?!何をするつもりですか?!!」

「・・・あそこで騒いでる連中を、ちょっと、みじん切り。」

思いっ切り物騒な事をほざいて、舞は剣を抜く。

スラリ、と鞘から放たれた剣は陽光を受けてもなお蒼く光る。

まるで、海の様。

そう、氷隼は一瞬思った。

「ッて、そうじゃなくてっ!危ないですよ、何でー!!」

「私は、魔物を討つものだから。」

・・・魔物扱いか、ウラタンダーとY(ヤクト)団は。

ま、それもそうか・・・

スタスタと舞は歩き続け、喧騒の中へと入っていった。

「どうしよう・・・誰か、誰か呼ばなきゃ・・・」

そう言っては見るが、荷物はすべて瓦礫のなか。

こいつらを警察が止められわけがない。

・・・そして、S.U.P.への連絡手段は・・・

「ハウ〜〜〜・・・」

最早どうしようもない。

彼女は、黙って舞の暴走を見ているしかなかった。



「おわぁ!!ナンじゃ、このアマは!!?」

「・・・川澄・・・さん?!ぎゃーす!!肩アーマーが切れた?!!」

「・・・立ち読みの邪魔しないで。これ以上騒ぐつもりなら、本当にみじん切りにする・・・!」

すっぱりと、Y(ヤクト)スーツの肩アーマーを断ち切って、舞は戦場に立った。

「二階にあった、牛丼屋の恨み・・・」

すパリ、と音がして・・・

「げっ!レーザーブレードガァッ!!」

剣真っ二つ。

「三階にあった、喫茶店の復讐・・・!」

ズバァッ!!

「ぎぇぇぇえええっ?!!」

「ああ、キレル!頭が切れてるぞ、撤退するべさぁっ!!」

二撃めは、赤い服を着た戦闘員の額を切った。

「ウルル!キレルをつれて逃げるべさっ!!ここは、俺様が何とかするべ!!」

「わかりました、首領・・・行こう、キレル。」

・・・なお騒ぐ、キレルを背負ってウルルは帰って行った・・・

―――キレルとウルル退場。

「な・・・なんじゃ、この女は・・・」

「・・・今の装備じゃ、かなわないかも知れんべさ・・・まさか、川澄さんがここまで出来るとは・・・」

二人とも、完全にビビッテいた。

・・・生身で、強化装甲を断ち切る人間だもの、そりゃぁビビル。

「兎も角、こんな女とやりあったら命がいくつあってもタリン!・・・逃げれ!」

「あ!逃げるべか、極悪メタル!ずるいべ卑怯だべ!追って血祭りべ!来い野郎ども!」

『ヤック!』

ぞろぞろと、いつか見たような感じで、ウラタンダーを追うY(ヤクト)団の全員・・・それを見て、舞さんの頭にまんがのような青筋ができて・・・

「ハンバーグ・・・今晩のおかずにする・・・・・・」

どうやら、みじん切りにはせずにミンチにするらしい・・・

とだけいい残し・・・ダンビラ片手に追っかけていった、凄まじい速さで・・・


「あの〜、この後どうしよう・・・」

と嵐のような騒ぎが去っていった方向を呆然と見ながら途方に暮れる、氷隼。

瓦礫は、夕日を浴びて、すごく綺麗だった。

嘘と思うほどに・・・

氷隼は、今見たことを、必死で夢だと思いたかった。

「でも、夢じゃないのよぅ・・・ハウ〜・・・」

そして・・・

「ああ・・・ア○ロ・・・時が見える・・・」

「うわーん!ア○ロって誰さー、キレルぅー!」

額をすっぱり断ち割られたキレルをズルズルと引きずりながら、ウルルは退散して行ったそうな。

後篇に続く。


次回予告

襲い来る、舞の攻撃に成す術もなく、ピンチに立たされるウラタンダーとY(ヤクト)団。そこに忍び寄る黒い影に、一○とエ○カの愛の行方は!?
次回「超弩級巡洋戦士ウラタンダー」にジャス○ィーン!
しかし、何故余が二人の仲を心配せねばならんのだ、しかも上のは関係なかろう!?


後書き

シャア、シャア、シャア!

言ってみただけ、浦谷です。

ふっふ・・・

この後は、バトルオンリーです。

こう、ご期待。

シュワッチュ!!

Ps,次回予告は、ダイモスおよび第2次スパロボαのパロディです。

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