―――さて。

本物の幽霊が出てきてしまった。

激しく予想外(NR:いや、予想内だろ?だって・・・)

黙れ。

予想外と言ったら予想外なんだよ、ゴルァ。

既に、その幽霊はその全身をはっきりと現し、こちらを見てブツブツとしゃべっている。

―――知り合いに霊感の強い奴がいるのだが、そいつによると『話しかけてきたり、声を出したりする幽霊はヤヴァイ』らしい。

この世への恨みが強いとか何とか。

なるほど、確かにやばい。

精神圧とでも言うのか、俺を始めそういうもんが見える奴は軒並みすげぇ表情で固まってる。

「―――おい、浦谷。てめえ・・・なんだありゃ!?」

苦しげにそう言ったのは、米屋の亭主。

「知らん!初めて見る!!いやな気配のする部屋だから、細工はしといたんだがな!!」

「なんだと!じゃぁ、はじめから知ってやがったのか!?」

「うるせえ!ここら辺の連中はみんな知ってるよ!!調べねえでノコノコ現れたてめえが悪いんだよ!!」

「ふざけろ!」

「ふざけてねえ!!!」

不毛な言い争いである。

いや、まじめに不毛すぎる。

―――まぁ、いいか。

「とりあえず、みんな表出ろ!なるべく早くだ!お前もだよ、やくと!氷隼!!」

「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏・・・色即是空空即是色・・・(がたがた)」

「こ、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い・・・・」

念仏を唱える馬鹿と、怖い怖い言い続けるガキを叩き起こし、真っ先に玄関から放り出す。

ガッシャァァァァァァンッ!!

そのとき、窓が打ち破られた。

・・・シュワルツだった。

シュワルツは、脇に牛丼とボケ女を抱えて窓から脱出しやがった。

・・・あとで、ガラス代請求決定。

しかし、悪くない判断だ。

既に、相沢と俺と店主を除く全員が部屋から退出。

運悪く、アレの出現位置に近かった俺たちが餌食となりかけていると言うわけだ。

出た瞬間に、タイヤキとねぼすけは大家に抱えられて脱出、ガロードもティファ抱えて脱出。

そして、氷隼とやくとも・・・

って、やくと、まだ玄関で震えてやがる。

アホもいいところだ。

本当に科学者の卵とやらなのか疑いつつ、俺はやくとに叫んだ。

「逃げろ、バカヤロ!」

「こ、こ、腰が・・・腰が抜けた・・・あは、あははは・・・」

うつろな笑みをこぼしながら、そう抜かした奴は、今にもションベンちびりそうだ。

「うう・・・お、おっさん・・・覚えてろよ・・・」

生きて帰れたらな、相沢。

『―――誰・・・?誰なの・・・・・・?』

うわ、マジやべえ。

ここまではっきりしゃべる幽霊はじめて見た。

霊障も相当大きいと見える。

既に、やくとはあきらめの表情を浮かべている。

チ・・・情けねえ。

さて・・・噂どおりだとするならば、ソロソロ・・・

長く歪な精神波を封印しておくと、その反動が出る。

そして、この場合「怪奇現象が連続で起こる」ということを示していた・・・



―――ずる、ずる。

シュワルツが脱出した窓から、そんな音が聞こえ始めた。

「な、何だ・・・?」

恐る恐る、店主が振り向くと、そこには・・・

ああ、こうまで噂どおりでなくても良いじゃん!

マジで腕が這いずり回ってるよ!

「すまん、俺はもうだめだ。ガクリ。」

適当なこと言って、相沢が死んだ。(死んでない)

残るは三人。

・・・やくとは、もう死に体である。

えへらえへら、ちょっと絵面的に言うなら、発禁処分を受けかねないレベルの逝っちゃった笑みをこぼしている。

―――MMRに出てきた、ゲームジャンキー(だったと思う)の顔とかみたい。

おもしれえけど、アレだ。

もう、そんなこと言ってる場合じゃない。

多分、次は・・・

―――ああ、もう出たよ。

ずるりずるり、とドアから腕が入ってくる。

俺はハハラハラハラ、涙を流す。

「ここまで同じでなくても良いじゃんよ!」

あ、さっきと同じこと言ってしまった。(NR:心の中だ)

これは天丼と言うらしい(NR:今がいつかわかっているのか?)。

わかってるわい!!

もうだめだ。

俺たち4人、このまま取り殺される。

そう思ったとき、蟠る闇が言葉を発した。

『誰・・・?私たちを殺した奴と、同じ臭いがするのは・・・?』

幽霊が、激しくしゃべった!



超弩級巡洋戦士ウラタンダー!
第五話 「護界」後編



『誰・・・?誰なのぉぉぉ・・・』

おっとろしげな声を振りまきながら、女は髪を振り乱す。

こんな光景見たくない。

永遠に見たくなかった。

部屋の中では、血まみれの手足と、薄暗い女が、俺たちを見ながら違うの、誰なのと抜かしてやがる。

それが、人間とか化け物(物質)ならまだいい。

幽霊である。

亀にでも食われたほうがマシだ。

相沢は既に気絶したことは言った。

やくとも、既に放送禁止でモザイクがかかっている。

戦力になりそうなシュワルツはとっくの昔に逃げた。

で、残っているのは俺と店主だけだ。

その俺たちも、金縛りでまともに動けん。

―――何が、この幽霊どもをイラつかせているのかは知らない。

だが、俺たち4人のなかにそいつはいないっぽい。

「―――ちょっと待て、お前・・・何を探しているんだ?この部屋には俺たちしかいねえぞ・・・?」

意を決して俺がそういうが、幽霊どもは首をかしげて「・・・違う・・・違う・・・」と言っている。

「おい、浦谷。こりゃいったいどういうことだ?俺たち以外に何かいるってのか?」

「わからん・・・こいつらの気配が強すぎて、読めねー。」

「頼りにならんロクデナシだな、おい。」

「手前に言われたくねえ、元ホームレス。」

「なんだと、この大馬鹿!」

「誰が馬鹿だ!」

「お前だ、オタンチン!!」

「なんだと、ノータリン!!」

そうしているうちに、幽霊どもは全て一点を見据えていた。

『あなた・・・誰・・・?』

女がそう言うと、指差したほうに蟠る闇が。

「はぁ〜〜・・・気づかれちまったなぁ、オイ。」

イカレタ・・・そう、例えて言うなら、やばげなドラッグをキメて神経がイッちまったような・・・

そんな、気持ちの悪い声を発する黒尽くめの男が現れたのだ。



「俺の名は・・・これから死んじまう野郎には教えてやることにしてるんだけどもよぉ・・・ギャラクシアン暗殺部隊隊長・・・人呼んで、『殺し屋指揮官』ギャルサースってぇ言うんだぁ・・・覚えといてくれよ・・・あの世でもなぁ!!」

見た感じヤクに侵されているその馬鹿は、突然エレキギターを取り出して・・・

ギュワワァ〜〜ン♪

ドゴン。

光線を放った。

ハァ!?

エレキギターが光線を放つだとぉ!!?

「ハァ〜〜よけられちまったなぁ〜〜〜」

マジやべえ。

「俺のうたぁ・・・聞いて死ねぇぇぇぇぇっっ!!」

ギャギャギャギャギャ〜〜〜♪

作者の友人のロック好きが聞いたら、間違いなく打ち殺したくなるであろうむちゃくちゃな音色を奏でながら、そいつはそう叫ぶ。

あ、あぶねえ。

幽霊どもに向けた奴だったからよかったものの・・・

と、突然金縛りが解ける。

感じから見るに、店主の金縛りは解けていない。

それを見やり、そして幽霊に向き直る。

そうすると、幽霊どもは俺の顔を見て、こう言った。

『あいつ・・・倒して。ゆる・・・許せないの・・・そし・・・たら・・・この部屋にいていいから・・・』

・・・涙。

ああ。

涙だ。

幽霊・・・それも、こんな強烈な連中すら泣かせるような気味の悪い邪気を持った奴を相手にするのは嫌過ぎる。

だけど、そんな野郎。

見過ごすのは、もっと嫌だった。

「仕方ねえやな・・・俺の平穏な生活のため、ご町内の平和のため、てめえには消えてもらうっ!」

ごす。

「グッ?!何・・・し、や・・・」

いまだ金縛り解けぬ店主を殴り倒して気絶させる。

変身を見られるわけには行かない。

やくとは、既に人間として終わっているから、大丈夫。

回復は、時間に任せよう。

相沢も気絶したまま。

ならば。

「―――死にてえならかかってこいよ、ハゲのお仲間。殺してやるぜ・・・?装着変身!!」

眩い光があたりを多い、そして俺は異形のスーツを身にまとった。

「御町内の守護神!超弩級巡洋戦士ウラタンダー!見参!!」

一話以降言ってなかったと思う、キメ台詞をはいて。

そして、口笛吹きながらニヤついてるクズを見据える。

「必ず殺す!」

そう叫んだのはどちらだったろう。

とにかく、戦いは・・・始まった!



所変わって

「なんまんだぶなんまんだぶ・・・許してください、許してください・・・僕が、僕がわるうございました・・・」

僕は科学者の卵だから、幽霊など科学的・・・人間心理的に存在しないと、解っていても、やっぱり前、この部屋を測定した時と同じでここは危険度レベルG・・・いや、それ以上だぁー

「・・・え?」

あ、取り乱してしまったようだった・・・ってぇ・・・さっきまで、なんかぎゅーっと体を縛り付けるような嫌な気配が消えて、どうにか体が動くようになってる・・・

ああ、でも今の内に浦谷さんが言ったように出ないと、命が幾つあっても足りないよ。

うーむ、何でだ・・・霊的なもの、金縛り、論理計算式や物理法則方程式・・・を用いて、考えても理解不可能だべ・・・・・・

霊的な何かは・・・見える人と、見えない人の双方に分かれる・・・そんな事があっていいのか?(かと言う僕もマジで見えたし・・・)

視覚神経を伝って脳髄に行き渡った情報・・・いや、見えてるはずなのに、脳髄がその情報を引き出せずにそこにある物が見えないでいるのか?

金縛り・・・体が動けない・・・と言う、霊的な物に触れた基、霊と干渉したための硬直現象。

筋肉疾患による一時的な麻痺?それじゃあ、説明がつかない・・・・・・

科学・・・医学・・・物理・・・そして、心理的では・・・否・・・そんな現象事態、否・・・ありえない。

とりあえず、逃げよう。って浦谷さん大丈夫かな・・・幽霊見えてるようだけど、大丈夫な分けないか、後であれを使って、救出に向おうか。

ギュイィ〜〜ン

「あぐー!」

耳鳴りのような、強烈な音の波長が僕の耳の鼓膜を破らん限りに流される。

な、何これ・・・

目を開けてみると、ガンガンにいっちゃった感じで、こんな密室で強烈なヘビメタを演奏する、黒ずくめのパンクのおっちゃん。

しかもかなり破壊的で、持っているなんとも異型のギターから、ミサイルやらビームやらを浦谷さんの部屋にぶっ放しながら、ぶっ壊れコンサートをやっている。

「ガンガン!♪ギンギン!♪あの子心臓ぶち抜く、俺のマイラブハーーーーーーーッツ!轟く、俺様ラブソーーーーーーーング!!」

とまあ、そんな奇妙奇怪な、歌詞の・・・歌?いや、ラブソングらしいけど・・・こんなの、ジャイ○ンもやらないよ。

何あれ・・・・・・新手の売れないロック歌手?とりあえず・・・分析して、あれが幽霊じゃないって事は解ったけど、あの時の忍者や・・・海で出てきた、あの大群の凶悪宇宙人軍団だ・・・

何だってこんな所に?とりあえずあいつを、排除しない限りは・・・・・・近所迷惑とここら一帯が危険だって事は確かだ・・・・・・

むむ?やや!?

僕の前にざざっと、何かがふさいで奴の放つビームを防いだ。

「ってー!てめぇはまだこんなとこで伸びてたのかよ!?」

「あ、あんたは極悪メタル!?」

何故か僕の前をあの極悪メタルがふさいで

「ああ?何、どっかの変態黒服集団のような事、言ってんだ?さっさと逃げろっての」

「っく、極悪メタルに助けてもらうなんて・・・・・・一生の不覚だべ・・・」

「う・・・だったら、自分の身は守れるようにしろっての!この科学者卵白め・・・うだうだ言ってねぇで、さっさとその二人抱えて消えろゴルァ!」

極悪メタルの癖に生意気だべ。こうなったらあのハードロックの宇宙人もろとも地面に埋めてやるべさ!

「っへ!言われなくても逃げるよ、覚えておるべよ!」

こんな事もあろうかと、作っておいた対宇宙人用の怪人ロボットそのえっと・・・何号か忘れたけど、とりあえず!それを、起動させてけちょんけちょんだべ!

とりあえず、相沢君と向こうのお米屋さんを引きずって、浦谷さん家を一旦出る。

『科学者卵白め!?』

「??」

浦谷さんの声が・・・聞こえた気がした。あれ、何でだろう・・・

「ううん、今はあのハードロックと、極悪メタルをけちょんけちょんにするべ!」

Y(ヤクト)スーツ一式がないから、この二人を運び出すのに大変だったけど、とりあえず運び出す事に成功して・・・通信機を使って。

「おまいら!起きるべ!エマージェンシーだべ!」

『やーっく?』

Y(ヤクト)兵達をたたき起こして、しばらくして僕の内の方からアタッシュケースを持ってきた、Y(ヤクト)兵がやってきて、その内そこら辺からぞろぞろとY(ヤクト)兵が現われる。

戦力はそろったべ・・・

「極悪メタル、今日こそは己をヌッコロス!武装装着!」

Y(ヤクト)スーツ一式をアタッシュから出して、装着を完了させ腕時計型遠隔操作装置を起動させる。

「ふっふっふ、怪人ロボ起動!フェニンドルぅぅーーー!来いー」

前回出さなかったけど、前回と今回の長い期間を利用して制作した対極悪メタル&変態宇宙人達用に開発した、怪人ロボが僕の地下の部屋の格納庫のカタパルトから勢い良く飛び出した。

『ぎぇぇぇーーーー!!!』

っふ、庭を一寸改造して作ったカタパルトだ・・・・・・父さんとお母さんには悪いけど、世界のためだべ、堪忍しろ。


前回のスパークローラー&ビッグアシュタロンのような巨大ロボ路線から、一号機のレッドタートルにあった初心に帰って、人間サイズのロボットを製作した!

防御・砲撃に優れていたレッドタートルと、巨大ロボ達の高性能な破壊力のノウハウも取り入れつつ・・・なおかつ、人間サイズで巨大ロボの如き、力を誇る。

機動性と攻撃力を上げる結果、ワシビーストやギルガラスのようなデータを元に鳥形のロボットを作り・・・そして・・・以前神尾さんに貰った、どろり濃厚シリーズと大家さんから頂いたあのいかがわしい謎のジャムのデータを科学的分析、福利合成・・・再構築させて・・・

液状のガスとして使用する・・・鳥と言う生物は、空中に飛び上がるときはその強化された肺が必要。よって、その肺部分にその液体を蓄積して・・・口からガス状として噴出する・・・・・・

これ程破壊力があるものはあるだろうか、この・・・・・・新兵器『どろり謎ガス』・・・これこそ、極悪メタル必勝の、新兵器!

ちなみに、ミサイルや・・・敵を惑わす音波を出す羽も特殊装備として装備できるんだ。すごいだろう!

『マスター・・・ご命令を・・・』

「うむ、いくべフェニンドル!極悪メタル&近所迷惑コンサートをぶっ殺すのだべ!」

『ぐぇぇぇぇーーーーー!!!』

ばさ、ばさ!

「よし、わしらもいくべ、ものども!榊荘には、身もよだつ物の怪がおる!十分気をつけてゆけ!」

『ヤック!』

「突撃ぃぃぃーーーーーーー!!!」

俺様、首領を筆頭にY(ヤクト)団員たちが爆弾片手に、ぞろぞろと榊荘に再び戻って行った。

「うるぁぁ!極悪メタルぅぅーーーー!!」

ぞろぞろぞろぞろ!

朋友、浦谷どのの部屋を荒らすとは不届き千万!変態宇宙人も奇怪な物の怪もろともふっとばしてやるべ!

「まったぁぁ!ぐぇぇ!」

玄関を開けて、中に入るや否や後から入ってきたY(ヤクト)兵達に踏まれる。

ぞろぞろろ!

せっかく、次元の狭間から連れてきてやったのに、恩を忘れてわしを踏み台にしていくとは、黒い三年生もビックリだ。

「お、おまいら・・・後でぬっころす・・・」

「み、みんなぁ・・・首領様をふんずけてるよぉ」

「ああ?な!ウルル!気がついてたら、教えろゴルァ!」

「だって、みんな大勢で狭い部屋に・・・」

ぼか!

「はう!」

とりあえず、ウルルに拳骨入れといて・・・周りのやつらを掻き分けて、俺様は兵達を掻き分けて、極悪メタルとコンサートしてる、奇妙なパンク野朗の前に出る。

「って、またうるせぇ奴らが入ってきた・・・」

「ぜぇ、ぜぇ・・・極悪メタルめ・・・きょ・・・今日こそは、我等が、地獄に送ってやるべ!」

とりあえず、手近に極悪メタルに向って指を指してから・・・

「んああ?Yo!Yo!Yo! 何だぁ、てめぇらも俺様のコンサートを聞きに着たのかぁ?」

ギュイーーーン!

「うるつあし!いかれヘビメタ宇宙人!よりにもよって、こんな所に現われおって!極悪メタル共々吹っ飛ばしてやるべ!」

「何だかしらねぇけど、観客が増えて・・・うれしいぜぇぇ!今夜はオールナイトで歌ってやるぜぇ!」

『いぇぇぇーーーーーい!!』

なぜか、宇宙人に歓声を上げるY(ヤクト)兵達。

「ばか者ぉ!今月の給料を−30円すっぞー!」

「せこ!」

「ほっとくべ!」

「だが、この狭さ何とかしろ!変態黒タイツ集団!」

浦谷どのの部屋に何十人ものY(ヤクト)兵で埋め尽くされて、なんか動きように動けない。うむせまい・・・・・・確かにこんな狭い部屋じゃ、爆弾一個で自殺行為に思える。

このマンションじゃ、お子達も寝てる(大作等)ことだし・・・

「とりあえず、近所迷惑だから場所を移すべ!とう!」

『やっく!』

ぴゅー!

「おう、会場を変えるのか?おもしれぇ、べいベー!!」

ぴゅー!

「たく、俺の平穏を・・・シュー!」

ぴゅー!



何時もの採掘所(諸事情の為、現在は立ち入り禁止ですby○映)

しゅた!

「よし!到着したべ」

「あ、一昔前の特撮でよく使われてた採掘所か?」

『やっく!』

最近は全然使わなくなったけど、この採掘所は戦うにはすごく効率が良い場所だべ!

「さあ、極悪メタル!ここで決着をつけるべ!」

「ああ!?何処からともなく現われやがって、てめぇこそ此処の石っころの一つにしてくれる!」

「減らず口たたいて、ほえ面かくなべー!出でよ、フェニンドルぅ!」

それを呼ぶと遠くから、翼を羽ばたかせて、鳥形の怪人ロボが極悪メタルに向けて、目からレーザーと翼からミサイルを放ってきた。

ズガン!バシュ!

「ぐぬ!?また変なの作ってきやがったか!?」

「ふん!前の亀とは一味ちがうべよ!今度は鳥だべ」

「見りゃ解るわ!そんなこと!」

極悪メタルは、レーザーやミサイルを避けながら銃をフェニンドルへと撃ちつけるが、その機動性で、フェニンドルはしゅるりと避けてしまう。

「ははは!亀とは違って鳥はすばやいべぇ!」

ギュリリリリーーーン!

どっからともなく鳴り響く奇妙な快音・・・全員耳を塞いでしまう。

「なんだ、この音・・・」

「きっとまたあの宇宙人だべ・・・どこだべさ!」

『あ、あそこヤック』

遠いそして高い場所をY(ヤクト)兵が指を指すと、採掘所の高い場所に・・・ギターを引いた奇天烈な奴。い、一緒に飛んだはずなのにいつの間にあんな場所に・・・

こ、この登場の仕方・・・どっかで?



「てっめぇら!自分達だけでたのしんでんぢゃねぇよ!これは俺様のコンサートでぃ!」

『うおおおおーーー!!』

「歓声上げてんじゃないべよ!」

「よっしゃ、てめぇら!ノリノリで行くぜおらぁぁぁ!!!」

『いえぇぇぇーーーい!!』

「スタッフサービス電話するかな・・・」

「そうしろ・・・」

んな事考えてる間に、上空からあの宇宙人のものだと思われる円盤が一機だけ降りてくる。

「円盤?一機だけべか?」

「ただのトーラスじゃないぜぇ、これは俺様専用の・・・ライブスタジオだぁぁーーーー!!」

ぎゅるるるるりーーーーーん!

ギターを、奏でると、それまで円盤だった宇宙人の円盤が変形し始めて巨大なスピーカーと、ミサイルランチャーを積んだ、これまたスタジオのようになった。

「よっしゃぁぁーー、地獄のコンサートツアー!開幕だぜベイベー!」

「何だかしらねぇが、やな予感がするから奴から先にぶっ壊す!」

「だべな!フェニンドル!攻撃目標変更だべ!あの馬鹿スピーカー男をたたっころすべ!」

『びー!びー!』

円盤が変形したスタジオからマイクがせりあがり、奴がすーっと息を吸うと。

「最初の一曲目はバラードだぜ・・・曲名『俺の赤いクリスマス』・・・い、く・・・ぜぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!」

ぎゅりりりりーーーーーー!!!



―――うるっさい。

うるさいではなく、うるっさい。

マジで、やかましい。

マジでやかましすぎるので。

変態どもは後回しだい。

「コラ、そこの変態仮面。うるさすぎるんで封印指定だぞ、オラ!」

人差し指で指してやる。

「おう、そこなベィベー!人を指で指すもんじゃないぜ、オーイェー!?」

そんな言動かましつつ、さらに演奏を続けやがる。

うあ、マジむかつく。

即座にぶっ殺したくなる感情を抑えて、仮面ライダーカリスばりに変態どもの攻撃を見守る。

(NR:なぜ、お前が知ってるんだと、さっきから何回言わせるんだ?)

言ってねえぞ、お前。

まぁいい。

工事現場の音は、こんな感じだよね。

間違っちゃないですよね、NBK(日本ブレイク工業)の皆さん。

そんなことを思いながら、演奏を続けるカス野郎に攻撃を仕掛ける変態どもを生暖かく見守ってあげる。

「なに見てるんだべ、このクソッタレ!早く攻撃しろーーー!!お前は、カリスべか!?」

(NR:全国のカリスファンの皆さま申し訳ございません。此処の管理人はカリスが嫌いです)

黙れよ。

とりあえず、カリス呼ばわりは許さん。

叩き落されるフェ・・・フェニクロス?

面倒だな。

ドガァァァッ!

『びぃぃぃぃぃぃ・・・・』

鳥、で。

とりあえず、鳥が叩き落されるのを見計らい、アドバルーンビームを・・・

バシュゥッ!

放つ!!

「オウ、ベィベ!そんな攻撃みそっかすぅ!ネガティブなんてぶっとぶぅ、二曲目!流血バレンタインをよろしくぅぅぅぅぅぅ!!」

ギャギャリギャリギャリギャリギャリ!!!

うお、きいてやがらねえ!

さらにうるさくなったよ!

まるで、工事現場のドリルみてえなトンだ音色を出しながら、腐れマシーン頭(ギャルサース?)はもっと多くのビームとかミサイルを放つ。

「ヘィヘィ!二人はオンドゥル〜〜♪」

やべぇ、オンドゥルとかプリキュアとか混ざってきてやがる。

このままでは、JASRACによって作者が滅殺されてしまう!

「えーい!やめるべさ!このサイトの存続を脅かすバカチンめぇ!フェニンドル!ガスを放つべさぁぁぁっ!」

変態首領と珍しく意見が一致した気がしたそのとき、鳥はその口から・・・

『びいぃがぁぁぁ・・・』

―――その瞬間。

なんか、ぞくりとした。

口からは、オレンジ色のネトネトした感じのガス。

高分子の毒ガスなんかは、あんな感じに纏わりつくような気持ち悪い感じであるものも、ある。

まさか、毒ガスということは有り得んだろうが・・・

少なくとも、以前連中が使ってた納豆ミサイル(?)のようなものだとは容易に想像がついた。

しかし、それ以上に何か危険なかほりがするのはなぜだらう。

おもわず、究極超人なしゃべりを心の中でかましつつ、「何を放ちやがった、変態っ!」と俺は叫んだ。

「カリスを気取るのは、俺様だべ。そんなきさんに教えてやることなど何もないわ!」

うあ、こいつカリスファンジャン!

(NR:全国のカリスファンの皆様ご安心ください。Y(ヤクト)団首領はカリスファンです。)

「死ぬか、てめえ!」

「黙って見てるべ!見ろ、ガスはあのアホのギターの演奏を必ず止めるべ!!」

そう言ってる内に、演奏がやむ。

「オう・・・SHIT!何で演奏トマリますカー?!」

・・・似非外人に化けやがった。

「シカモ、このガス!VeryVery!臭いです!!ジャムっぽいのにアマクナイDeath!!」

―――しかも、大家のジャム味?

――――確かに、演奏もとまるわ。

そう思った矢先である。

「デモ・・・こんなの無駄だぜベェイベーーーーっ!!」

ギャラギャラリギャァァァァァァゥ!!

―――音が変わったけど、まったく音量衰えてねえでやんの。

「ヘイ!プ○ティでキ。○キ。アな二曲め、どうだった?!じゃぁ、三曲目・・・卒業式殺人事件!今度は、オンドゥルでウェェェェイな演奏を楽しんでくれ!!」

ギュワァァァァァァァァァァァアァァァァッ!!

ぎゃぁぁぁーーー!!

さらにヤヴァイ音になってるんじゃねえか・・・

騒音とかじゃなくて、もはや単なる“音”。

それ以上でもそれ以下でもない。

そう思ったとき、ふと見ると、変態どもが・・・

「コラ、変態ども!!貴様ら、なに逃げようとしてやがる!!」

「―――戦略的撤退だべ!頭のいいヒーローは戦略も重視するべ!!」

うそだ。

―――ただ単に、もう付き合ってられないから逃げるんだ。

それは、まさしく直感だ。

俺の直感のスキルはA+。

ただし、どうでもいいことにしか発動しないため、無意味である。

(NR:今度はFateか。フザケルナヨ。)

ふざけてねーよ。

とりあえず!

もう、こうなったらこれしかないぜ・・・

もう、死ぬぞ、俺!



精神を集中する。

ゆっくりと、自分の中の何かを展開。

「―――貴様を張り倒す程度の力は・・・喚べる!」

音にかき消される、声。

だが、そんなこと問題ではない。

この身を門に。

ただ一つのゲートとする。

そのための触媒が、召喚プログラム。

「召喚プログラム、展開。エディット開始。」

天空には、門を開くための呪文が浮いていることだろう。

「天の狭間、地の狭間・・・」

この身を門に。

ただ一つの、世界と世界をつなぐ、情報の門に。

呼ばれた情報と精神は、この世界の物質を食らって現れる。

それは、人であり、物であり、全てである。

「光の狭間、闇の狭間、風の狭間、火の狭間、水の狭間、時の狭間、空の狭間・・・」

狭間を開くただ一つの門。

それが、俺だ。

この世界では、俺と、もう一人しか使えないはずの秘術。

もう音はしない。

ただ、永遠の中で、それをこじ開ける門となった自分のみを感じる。

脳裏に現れるイメージは・・・

一つは、勇者。

界の狭間を超えし、選ばれし者。

一つは、魔人。

勇者を守るべき宿命を担う者。

一つは、咎人。

遠く時の果てで、自らの血の罪を贖う者。

一つは、機人。

世界の追放者であり、咎人を守るべき宿命の者。

一つは、天使。

滅びし魂の行く末にして、咎人の罪を許す者。

一つは、忍。

技鍛えし果てに、己が仕える主人を見つけた稀有なる者。

一つは、暗殺者。

暗殺者でありながら、優しき御手に救われてその道を捨てた者。

七つのイメージが、俺の頭に浮かび上がる。

此処まで、イメージに没頭できたのは初めてだ。

ならば、呼ぼう。

「数多ある狭間を越えて、我が呼ぶは力なり!!」

そうして、呪は完成する。

――― 一瞬後に、門は開いて。

そうして、七人。

戦士が現れる。



「ここは・・・?って、うっ、うっ、うっ、うるさーーーいっ!!」

け、そりゃうるさかろうよ。

あのアホが、まだ、卒業式殺人事件とやらを熱唱しているからな。

現れた、黒髪・短髪でちょっとおかしげな服装をした女の絶叫を聞きながら、俺はそう思った。

「オゥ?べぃべ?もしかして、君がギュレルの言ってたウラタンダーとやらかぁ?もしかして。」

演奏をいったんやめて、脳味噌タンバリン男(ギャルサース)はこちらを見る。

「なら・・・容赦しないぜぇぇぇっ?!」

「黙れ、悪党!ちょっと待ってなさいよ、状況把握したら、ぶっ飛ばしてあげるから!」

茶髪で短髪、活発そうな感じの女が叫ぶ。

つづいて、のっぽで、少しボーっとした印象を受ける男が、意外にも渋い声で、

「騒音以下の音を発し続けるのは、公害だと思うよ?」

と言った。

―――やれやれ、こいつらもエッジたちと同じか。

自分のことを知っているか、あるいはここに呼ばれることを知っていたようだ。

力が抜けて、ひざをつく俺に、長髪で茶髪の女が近寄ってきた・・・

天使・・・?

女の背には天使の羽が生えている。

それが、少し輝くだけで、俺の脱力感は癒されていく。

「大丈夫ですか?」

その容姿に似合って、優しげな印象を与える声だ。

そうしていると、いかにも皮肉屋で頭いいです、と言った感じのメガネをかけた男は、こちらに近づいて声をかけてくる。

「君か?僕たちをここへ呼んだのは?僕の名はネスティ=バスク。青の派閥の召喚師・・・と言ってもわからんか。異界の召喚師殿?」

「私は、アメルです。そちらにいる黒髪の女性がトリスさん、茶髪の女性がナツミさんです。それから・・・」

ノッポが近づいてきた。

「僕は、キール=セルボルト。護界召喚師をしている。この世界のブラックウルフ・・・と言う方に世話になりました。よろしく頼みます。」

そして・・・

音もなく、忍び寄ってきた、忍装束の男と・・・アンミラの服みたいのを身につけた女も自己紹介をする。

人数が多いと、大変だ。

「シオン、と申します。以後、お見知りおきを。」

「パッフェルです。よろしくしてくれるとありがたいですねぇ♪」

―――そうして、俺も自己紹介する。

「俺は、浦谷竜蔵。ウラタンダーとも言う。確かに、召喚士では、ある。」

どうにも、数が多すぎたか・・・

なぜ、こんな大きな門が開いたのか、疑問に苦しんでいると、視界の端に変態どもが見えた。

全員、気絶している。

「アメル、頼める?」

「わかってます。癒しの力よ・・・」

また、背に羽が現れ、倒れている変態どもを光が包み込む。

「―――う、うーん・・・はっ!俺様はどうしていたんだべか・・・?」

そういっている間に、アメルとナツミ、それからパッフェルが変態首領に近づいてきた。

「―――うん、それなら大丈夫だよね?」

「そーですねぇ。じゃぁ、わたしはちゃっちゃとあの変態を片付けてしまうんで、エー・・・と。」

「あ、Y(ヤクト)団首領です・・・」

「ハイ、Y(ヤクト)団首領さん。ちょっと、飛べるものとか、あります?ないならいいですけど。」

「あ、あります。おい、フェニンドル!!」

『ビィィィッ!』

機械まで直しちまったのか、元気よく鳴いた鳥に近づく。

「トリスさんも、ナツミさんも、みんな見ててくださいねー。なんか、あの男は気に食わないんですよ・・・」

ちょっとだけ剣呑なものを伺わせて、パッフェルはフェニンドルの上に載る。

「わかった。パッフェルさん、気をつけてね。」

代表してか、トリスはそう言って彼女を励ましている。

―――にしても、二回連続で、俺が呼ぶことを知っている連中を呼ぶとは。

以前、俺の師・・・もう一人の召還術師が言ったことを思い出す。

「―――呼び出されることを知っているものがいれば、それは運命を揺るがす可能性を持っている」と。

確かに、あのジジィは言っていた。

ならこれは・・・

―――チ、マジでめんどくさくなってきたな。

飛び立つ鳥を見上げながら、俺はそんなことを思っていた。



「ウェェェイ!!まずは、あんたがお相手かい?可憐なおぜうさん?!!」

「綺麗な薔薇には棘があるんですよー?知らないんですか?」

ギャルサースの挑発を、軽く流してパッフェルはそう言った。

『びぃぃぃぃっ!』

「はいはい、おとなしくしててくださいね、フェニンドルちゃん?」

そう言って、手に持っているバスケットから、ものごっついマシンガン、それから短剣(アサシンダガー)を取り出す。

「これも、お仕事ですけど・・・あなたは、なんとなく気に食いませんよ。エーと・・」

「ギャルサースだぁ!覚えておいてくれよ、気が向いたら殺した後に飾ってやるからなぁぁぁぁっ!!」

その下卑た言葉に、あからさまに貌を顰めてパッフェルは言う。

「なるほど、暗殺者・・・それも、殺人に快楽を見出す、最低の下衆。」

目には怒り。いや憎しみ。

「私、あなたのような方を許すことが出来ません。ここで、本当に殺して差し上げます。」

あくまで物腰を変えず、だがその貌には恐ろしいまでの殺気。

「へぇぇっっ?!やるじゃん、ベィベ。ならいくぜっ!四曲目は・・・!なんとなく、あんた向けかな!?愛と憎しみのアンバー!!ウェェェェェェェェェェェェイ!!!」

ガガガガガッ!!

そんな言葉は気にも留めずに、その手のマシンガンを放つ。

「おう、なかなかやるじゃん?!だけど、まだまだだぁぁぁぁぁっ!!」

ギュワワワワワワワワァッァァァァッ!!

―――言うだけあって、さすがにこの男は強い。

そう思い、苦手な銃撃戦より、短剣による接近戦を挑むべきだと判断する。

幸い、彼の乗っている円盤は広い。

十分に立ち回れるだろう。

そして、光線はともかく、爆弾(ミサイル)は撃てない・・・

自分も巻き添えにするからだ。

―――ならば。

かつて「茨の君」と呼ばれていたころの、冷徹な自分を呼び起こす。

忌まわしいが、仕方がない。

そうして、彼女は一瞬の隙を突いて円盤に飛び降りる。

「てやっ!」

ザシュッ!

その手に持ったダガーは寸分たがわず、ビームを発射する寸前のギターに突き刺さる。

バッゴォォォォォン!!

爆発。

すでに、神速で彼女は退避している。

「ハァァ・・・気に入りのギター・・・壊れちまったなぁ・・・?どうしてくれんだよ、てめえ。」

「どうもしません。あなたは此処で私に殺されるからです。」

「ハッ!誰が・・・?と言っても、分がワリィ気がするなぁ?」

そういうと、彼は何の予備動作もなく空間を飛ぶ。

「チッ!逃げ足の速い!」

虚空からは声。

―――生き残れたら、また会おうぜ姉ちゃん!ウェーッハッハッハッハッハ!!」

その声が消えると、途端に円盤から、何か音がする。

―――爆弾!?

『びぃぃぃぃぃぃぃ!!』

パッフェルがそう思ったとき、フェニンドルが空を駆け上がってくる。

トーラスを猛スピードで横切り・・・

そして、その背中には、きちんとパッフェルさんが飛び乗っていた・・・



―――さて、その後どうなったか、と言うと。

再び騒音で気絶した変態戦闘員どもをアメルが癒していた。

―――脇では。

「ねぇねぇ、首領さん〜お願いですから、この子譲ってくださいまし!」

「あ、いや、そのですね。それはわたせません・・・ていうか、あげらんないべ!」

「う〜ん、いけずです〜」

鳥をくれ、とメイドにねだられとるアフォがいた。

「おい、変態。鳥の一匹や二匹、くれてやったらどうだ?」

「嫌に決まってるべ!あ、いや、そんな悲しい顔で見られても・・・」

困れ困れ。

人の不幸は何とやら、と言うが貴様のそれは格別じゃい。

―――ふと、気づくと。

ネスティがこちらへきていた。

「ところで、どうなってるんだ?なぜ、僕たちを呼んだんだ?見たところ、誓約の儀式もないようだが・・・」

「あー・・・そのな、うん。助けてくれて、サンクス。それについては、これから説明する・・・」

そうして、しち面倒くさい説明が始まった。

無論、双方のだが、な。



彼らはリィンバウムという四方を異界に挟まれた世界から来たらしい。

どうやら、彼らの世界では大規模な戦争が起きたようだ。

それも、隣接する異世界サプレスからの・・・おそらくは異次元空間からの侵略によって起こされた戦争は深く傷跡を残した。

戦争を終わらせ、その後の問題をいくつか解決した彼らは、今はその世界の召喚師の組合の委託で世界中の遺跡を発掘、調査していたようだ。

そして、その中で・・・

どうやら、俺たちの世界から、何らかの原因で転移した物体に、悪魔が取り付いてとんでもないことになりかけたそうだ。

それをどうにかしたのも、彼ら。

そして、この世界の住人らしい、ブラックウルフと名乗る召喚獣だったそうである。

―――ブラックウルフ?なんか引っかかるな・・・

それは、おいておくが・・・

他にも、さまざまなことがあったらしい。

驚くべきことに、ナツミと名乗る女は、どうにも別の宇宙の地球人らしいし。

とりあえずそっちの召還術と、俺の召還術が違うものであることは理解してもらった。

「で?これから、私たちはどうすればいいの?」

「―――うーん、多分、大家が面倒見てくれるだろう。ソロソロ夜明けだな・・・」

トリスの言葉に、俺はそうつぶやく。

ああ、朝日が昇ってくる。

―――幽霊どもも、少しは気が晴れたか、な?

そう思いつつ、いつの間にか撤退していた変態どもを気にする余裕もなく、俺は七人の異世界者を引き連れて、家路へと戻ったのだった。



エピローグ1 やくと

と、いう訳で・・・榊荘に新たな住人が、しかも7人もやってきた。

もちろん、ガロード君達のように極悪メタルで無理やり(一寸酷い)来させられたらしい。

彼らが出てきたお陰で当初の極悪メタル滅殺もすっかり忘れていて

結局何時ものパターンで・・・


一寸回想

極悪メタルたちがサモナイの人たちと話してる最中も、パッフェルさんに、フェニンドルをねだられていた。

「お願いします〜譲ってくださいまし〜この通りですよ〜」

「涙目で接近されてもダメなもんはだめなんだべー!」

「そんな事言うと本当にないちゃうますよー、ぶーぶー。」

「あ、それ困る・・・」

「だったら譲ってくださいってばぁ、でないと泣きます!(怒」

泣くを通り越してもはや怒っている、パッフェルさん。ああ、助けて・・・

『マア、マア』

そんな僕達のやり取りを、仲裁しに来たつもりなのか、フェニンドルが僕と彼女の間に割ってくる。

「鳥さん!この際はっきり聞きます!首領さんと私とどっちが大切なんです!?」

「あ、そういう問題じゃない気が・・・」

『うーむ・・・』

質問がなんだか飛躍しているが、真剣に腕(翼)を組んで考える鳥。

「真剣に考えてるよ!?この鳥!」

「さぁ!さぁ!さあさあさあ!さあ!」

『むむむーー・・・・・・・・・』

ああ、何だか何時ものパターンらしく、何だか頭から煙吹いてるよ。そういや、長く作った割りに人工知能よわっちいの使ってたからか・・・

シューシュー

「ふ、深く考えてはいけないべ、フェニンドル。お前は誰が作った?」

『いだい・・・いだいなる・・・しゅ・・・しゅ・・・』

「私です!」

「ちゃうでしょ!」

なんとまあ、いい乗りつっ込み。だが、その言葉が効いたかに更に頭を抱え込んで考える鳥。おい、本気にしてるよこの鳥!

ガガガガガガー
ビビビビビビーー

『・・・ウェェェェーーーイ!!!』

「わわ!」

「どうしたべ!フェニンドル!」

ぼん!

一際甲高い鳴き声を上げたかと思ったら、頭から煙がぼんと出て・・・きゅーっと音を立てて、動かなくなった。

「鳥さん?とりさーん?おーい」

「ああああ、こわれたぁぁーー!!」

とまあ、何時ものパターンでかフェニンドルは志半ばで機能停止してしまったのだ。

あの後、動かなくなった鳥のボディだけをパッフェルさんに引き取ってもらい、後で直す予定だ・・・ああ、数ヶ月もかかって作った力作ー。

「早く治してくださいよー。あ、弁償はしませんからね。私、この世界の通貨持ってないもので。」

と誰のせいでこんな事になったのかと・・・つゆしらず。人工知能のバックアップを使って修復をする事になった。とほほ・・・


あれから数日か・・・榊荘のサモナイの人達が泊まってる部屋にノーパソ持って言ってプログラミングをして、フェニンドルの人工知能を修復して、その同時にパッフェルさんの頭脳に合わせて設定するつもりで、とりあえずプログラミングに4日ぐらいかかりそう。

「それじゃあ、またお願いしますー」

パッフェルさんが手を振って送り出してくれた。

とりあえず、彼らも僕等とは違うけど・・・元同じ日本から来たナツミちゃんのお陰か、段々とこっちの生活に慣れているようだ。

今回は、サモナイの世界からの皆様方だったか・・・。極悪メタルもそうだけど・・・あっちはもっとすごい召還を見せてくれるはず・・・いずれ、あのプロセスを、聞いて見たいものだ。

解る物があれば、あの極悪メタルの打倒に・・・


あ、そうそう・・・榊荘と言えば、浦谷さん。

あの一件以来、なんか知らないけど大家さんからあのジャムを受け取ったらしい。

それと大家さんからか、浦谷さんの部屋から押収したらしい奇妙な機械を渡された。

なんでも、一週間・・・浦谷さんに対するお仕置きらしく、これを僕が管理して欲しいとのことだ。

何だろう、このメカ・・・浦谷さんが倒れたとき、見つけた奴だけど・・・なんでこんな物をぼくに・・・・・・

調べてみても、何なのかわかんないし・・・まあ私物だから調べることなんて無いけど。

まあ・・・いっか。


「鮫島さん?いきますか?」

一台のリムジンが止まりそこから倉田先輩が顔を覗かせる。中には、陣内君と川澄さんの姿もある・・・

あれが完成したため、僕はスタッフの一員としてこれからSUPのUSA支局の管理する、人口島に招待されたから・・・彼らが迎えに来たのだ。

さーて、宇宙人なんて、『0∞』の力で、退散させるべよ!

覚悟するべ、極悪メタル!



Intelude 陽介

始めに・・・出番が少ないのにエピローグつけてくれてありがとう。

「陽介さん?どうしまたんですかぁ?」

まあ、とっさだったから舞さんが剣を振り回す前に二人を小脇に抱えて窓を割って逃げてよかったな。

「舞さん?大丈夫?」

ああ言うのは、一番舞さんが感受性、高かったから今回は連れてきたくなかったのが、まあ落ち着いてるからいいだろうな。

「まいさ・・・」

「・・・あの人、泣いていた」

「え?」

「おーい、陣内ぃー」

遠くの方からこっちに国崎の奴がやってくるのが見えた、あれから国崎は俺の家に泊めているから、俺達とはぐれるのは野宿をしろというのと同じらしい。

「国崎だいじょうぶか?」

「大丈夫も何も、いって・・・またあのおっさんとがきが暴れて・・・」

おっさんとがき・・・大方、浦谷と鮫島の事だろうな・・・収拾がつかなくなって二人でまたもめたか?

「いんや、今回はなんかやたら五月蝿い、宇宙人がきて・・・あ、お前の胸に傷をつけた奴の同類かも」

宇宙人?ギュレルやギャレールのような8の奴らか・・・だったら厄介だ。

「佐祐理さん、舞さんと一緒にここに・・・俺が行きます」

「はい、いってらっしゃ〜い」

「待てよ、宇宙人とおっさんとがきはなんかぴゅーって飛んでいっちまったから、部屋は無人だぜ」

「何!?ったくあのおっさんは・・・まあ、8の一人くらい倒せないとな」

「追わないんですかぁ?」

「ええ、何だかんだ言って二人とも連携取れてますし・・・万事大丈夫だと思います」

ただ、相手は8だ・・・増援が着たら奴らに勝ち目は・・・いやその時はその時だ・・・

あいつ等なら、ゴキブリ波の生命力で生きるだろうな?

そう考えてると、さっきからそこでうずくまってた舞さんが俺に声をかけてくる。

「陽介・・・榊荘に・・・あの部屋にもどろう?」

「・・・え?どうして?」

「静めてあげなくちゃ・・・・・・」

浦谷の部屋は出るって評判だったが、舞さんの様子は恐怖じゃなく・・・どこか物悲しげだ。

取りあえず、榊荘に戻ってみるか。他のみんなも心配だし・・・


舞さん達と国崎を連れて、一旦俺は榊荘の前に集合する。

「鮫島がどぱーって、変な黒タイツ集団と!?」

「祐一、何言ってんの?それみんな知ってるよぉー。ね、あゆちゃん」

「有名だよねぇ」

案の定、あの騒ぎに参加していた人間達は物思いに榊荘前に集合していた。

有名・・・て言うか町の名物と化してるぞ鮫島・・・なにやらかしたんだ?

「何!?もしかしてまた俺だけ知らなかったのか!?」

「相沢、それくらいにしておけ・・・」

「祐一うるさい・・・」

「陣内・・・舞。佐祐理さんに・・・えーっと、誰だっけ?」

「たぶ・・・いや、国崎往人・・・この小僧の家に居候させてもらってるしがない人形使いだ」

自己紹介もまともにやってなかったのか?お前達は・・・

「とりあえず、みんな無事で何よりだ・・・」

「よーすけ、おっさん達みんな何処行ったんだ?なんならDX呼んできてやるぜ!」

ガロード達もどうやら無事みたいだな。

「さあな、あいつ等の事だ、ぴゅーってまた飛んで帰ってくるさ」

「さっきもさっきで、何が起きたのかさっぱりだぜ?一応ティファが怖がってたから一番に逃げたけど」

「ティファさんが、ああ・・・そう言えば」

ニュータイプとやらか・・・、彼女も舞さん同様に、あの姿を見てしまったか。

感受性の強さなら、彼女が一番・・・かもしれないな。

「今も・・・あの部屋にいます」

「って言うからさ、誰も寄り付けねんだよ」

「舞さん?」

「・・・・・・彼女の言うとおり、あそこに・・・まだいる・・・」

ティファさん同様にあの中に居る何かを・・・舞さんは感じてるんだな。

「とても辛い、痛がってる・・・静めないと・・・永遠に苦しんで・・・」

永遠に苦しんで・・・神奈も、永遠、未来永劫の悲しみと痛みと一緒に空に・・・行った。永遠の痛みと苦しみ・・・果ての無い孤独・・・

一番俺が、解ってるんだ。

「・・・解った、俺に任せて」

「静められるの?」

「・・・解らない、思念が強いと・・・俺の力も及ばないかもしれない。残留する可能性だってあるし俺だってただではすまないかも」

この世で魂を切れるのが、対魔一神流の剣技のみ・・・そして、呪われた魂を静める役目は、俺の中に居る彼女だけ。

「佐祐理は信じていますよー、陽介さんはすごい人ですから」

「・・・・・・」

佐祐理さんが手をあわせて言うと、俺はすこしはにかんで、刀を持って榊荘の浦谷の部屋へと向う。


「母さん?」

榊荘に行こうとする俺の前に秋子母さんが、俺の前に母さんが現われる。何時もの笑みが少し苦しい感じがする。

榊荘の大家は・・・確か、母さんだったな。

「母さんも、浦谷の部屋に出るって奴の事知ってた?」

「ええ、あの話は私がこの榊荘を買い取る前のその前の管理人さんから聞きましたから」

「だろうな、こんな気味の悪い場所・・・・・・管理人だって捨てるよ」

と言う事は、ネメシス・・・いやもっと前かもしれないな。

「あそこにいるのは、組織の理不尽な目的からあそこで拷問を受け・・・死んだ人達の無念と悲しみが、あの場所に永久に留まった物、あそこに」

「解るの?母さんには?」

「いえ、私も同じ目的で追われていて・・・生き残った、一人です。助かってしまったから、私は幽霊さんに嫌われて、あの部屋には手を下せなかったんです。解ってしまうの」

「・・・・・・」

声にだせない・・・、母さんも何度ここの幽霊達を助けよう思ったのか。

「あなた達の手で彼女達を、助けてくだされば・・・・・・」

何も言う言葉も無いまま俺は、いや俺と・・・月代恋香は、浦谷の部屋へと踏み込んでいった。

頭の中で、恋香に呼びかける。

恋香・・・どうだ?

“怨念と、悲しみの念が強すぎるから・・・・・・”

恋香・・・お前、泣いてるのか?

“・・・私でも、浄化しきれるか解らないわ・・・・・・”

 だが、これは・・・俺達がやらなきゃいけないんだ。

“・・・お母さんの為?それとも、あの人の為?あの人は・・・元凶だよ”

 浦谷のためじゃないさ、だけど・・・誰かがやらないと、この幽霊は、悲しみが永劫続くんだ、この悲しみを浄化できれば・・・

“・・・・・・空に囚われた、翼人の魂を救う事が・・・”

聞かれるまでも無い・・・ここに残留する思念は、翼人に関係する物ではないことは確かだ、・・・だけど、このままこの場に女を泣かせて留まらせるのは、性分じゃないんだよ。

刀を引き抜いて、俺は脳裏の恋香と共に、集中し始める。実を言うと、俺は気配は感じるが恋香や舞さんのように姿までは見えないんだ。

“私の目を使って・・・・・・でも、陽介・・・見えなかった分・・・目の前に現われる物に対して、陽介でさえ・・・『恐怖』を覚えるかもしれない。下手をしたら、貴方が取り殺されるかもしれない・・・・・・何を見ても、『恐怖』に負けないで・・・”

難題だな、眼に見える恐怖と戦ってきた、眼に見えない恐怖と戦うのは舞さんの魔物以来か・・・・・・『恐怖』・・・と戦うか・・・

集中して、恋香の目で、見ろ!

「・・・・・・」

“目を開けて、彼女達を見て・・・・・・”

ドウン!ドウン!

見える・・・・・・目に、見えてくる・・・ 戦慄/ 壮絶/ 混沌/

見えてるのは、この部屋の過去・・・真っ赤に染まる、暗い室内。暗い、暗い太陽、いや月かもしれない・・・それだけが・・・部屋を妖しく照らしている。

狂った男が、手術台らしき物の上で・・・手に刃物を持って人体を楽しそうに笑いながら切り刻んで・・・床に、何かが落ちる。

「っ!!」

手・・・手・・・手手手手手テテテテテテテテテテテ・・・

「う、うぐ!?」

恋香はこんなに鮮明に見えるのか?この部屋で起きた事が・・・・・・俺は、口を押さえ、胃液が逆流する気味の悪さを必死に堪えた。

“ダメ!陽介が見ているのは・・・・・・だよ・・・ごまで・・・・・・め!”

恋香の声が・・・遠くで聞こえるように思える、何かが俺と恋香を遮断しているのか、声が聞こえなくなっていく。

何故か、俺の目は手術台で刃物を振り回す発狂した男に向けられていた。

今度は足がごとっと落ちる・・・・・・両足は、まだ生気を失っていないのかぴくぴくいいながら、動きをやめる。

「あ、う・・・」

刀を持った手ががたがたと振るえ、刃がチキチキと金属音を鳴らしている。『恐怖』を感じる感じない、それは・・・関係ない。誰にでもあるはずの、『恐怖』を無理やり引っ張り出してくる・・・それと同じだ。

か・・・刀を放すな・・・刀を・・・『恐怖』を殺せ!俺の、中にある恐怖を取り除け・・・見ろ!恐怖の先にある・・・ソレを・・・・・・

「・・・・・・え?な、なん・・・で・・・」

元々人だったものを切り刻んで、部屋中に投げ捨てて楽しんでる殺人狂・・・それが持っていたものは、元々包丁のような物だったり、鉈みたいだったりした・・・けど、奴が持ってるのは、俺と同じ刀・・・・・・しかも、紛れも無くあれは、『正幸』・・・

そして、その殺人狂の顔・・・・・・ソレを見て、俺は・・・腰を抜かし、止めていた、恐怖を吐き出した。

「う・・・うそ・・・」

何で・・・・・・嘘だ・・・俺・・・・・・が・・・

そう、これは嘘だ、俺がこんな事をしていたなんて・・・そんな事ない。

俯く俺の目に、白くやつれた足が見えた・・・

ドウン!

「ぐあああ!!」

心臓が潰れるくらいの圧迫感・・・ギャレールとの戦いであいた心臓の穴が塞がりきってないのに、それを内部から手で握られてるような・・・苦しみ。

逆流した胃液の後に吐き出される、大量の血・・・・・・俺は、落ちた刀を持ってそれに突き刺す。

「あああああああ!!」

ザシャ!!

「・・・・・・う、ああ・・・」

いつの間にか情景が変わり、俺の刀は目の前の虚ろな表情の髪の乱れた女の腹部を突き抜けていた。女の腹から、血が溢れ・・・口から、どす黒い血が吐き出される。俺に返り血がつく・・・・・・

それでも女は、俺の刀を深く・・・更に深く体に突き刺して・・・俺の頬に手を添える。体が凍るくらいの冷たい手がナメクジのように俺の顔を撫でた。

『貴方が・・・・・・わたし達を・・・ころ・・・したの!?・・・』

「ち、ちが・・・俺じゃ・・・俺じゃない!」

『・・・・・・わたし達を殺した・・・のは・・・あなた?』

浦谷の話を思い出した、この女は・・・いやここにいる幽霊達は、自分達を殺した犯人を捜している。俺もこの話を知らないわけではなかった・・・母さんが、このマンションを買い取ってるって聞いて。

北川らと色々この榊荘について、ある程度オカルト雑誌を読んだことはある。浦谷の話には、続きがあった。精神に異常を来たした男は・・・その後・・・不可解な失踪を遂げた。

それは八日目。七日目は、六日目に精神病院に担ぎ込まれた男は、病院内でも今の俺のように・・・「俺じゃない」を繰り返す。鎮静剤をうってもらって落ち着きを取り戻し眠ったと思った男は突然、女の看護婦の手を握って・・・「苦しい」と・・・言った。

その後・・・再び薬で眠った彼の部屋を出た看護婦が再び彼の部屋を訪れた時、彼は・・・消えていた。それが八日目・・・あの部屋の話のエピローグ・・・

その後彼がどうなったのかは定かではない。

多分今の俺のように・・・・・・この女は、その男をここに連れ込んで・・・今のように、犯人をその男にしたてあげ・・・殺す。

『・・・・・・わたし達が受けた・・・苦痛を、あなたも味わうがいい!』

女が刀を深く体に突き刺して、頬を撫でていた冷たい手を俺の首を握った。

凍るような冷たい腕に、入り込むように俺の呼吸が止まる・・・・・・

違う、俺は・・・犯人じゃない、犯人は・・・・・・

その声は、彼女には届かない・・・・・・俺を犯人だと思って・・・殺そうしているんだ。こんな意思・・・俺に封じられる・・・のか・・・

それとも、この強い思念の前には俺の思念なんて・・・

「陽介!目の前の恐怖を斬って!そこに居る、“犯人”を斬って!」

恋香の声が近くで聞こえて、俺ははっとした。冷たい女の白い手を振り解こうとする、少女・・・・・・彼女は、恋香だ。必死に俺の首から手を解こうとして・・・

「恐怖に打ち勝って!私の目で、それを見て!」

彼女の向こうにいる、犯人・・・を見つけ出す!・・・ 恨めしそうな女/ 手だけの男/

足だけの/ バラバラの死体/ 消えた男/

消えた犯人/

「あぁぁぁーーーーー!!!」

彼女の後ろに居る鉈を持って、薄笑いを浮かべる男、あのエンブレムは・・・ネメシス!?

恋香の力を借りて手に力を込めて、首を掴んでいた女の手を掴む。

「そいつだよ、彼女たちを殺した犯人は!」

「ああ・・・。おい、俺はあんたが探してる奴じゃない!・・・あんたの求めている犯人は、すぐ後ろにいる・・・」

俺の呼びかけに、彼女の目がカッと見開いて・・・・・・後ろを向くと、ネメシスのエンブレムをした男は似たりと笑って、持っていた鉈を舐める。

『あ、あああ・・・ああああああああああああ!!!』

それに気付いた女は叫び、俺の手を離す。その隙を見つけ出した俺は、彼女の腹に突き刺さっていた刀を引き抜いて、

「恋香!その人を頼む!剣を突き刺してごめん!」

「わかった!」

血まみれの鉈を持って、俺を殺すために振り上げようとする。

「お前か・・・強き永遠の怨念の元凶、我が爪により無へと帰れ!!」

鉄血無爪・・・刀を振った巨大な衝撃波が、男を霊体ごと引き裂いた。

「対魔・・・・・・一・・・神・・・一刀!」

刀を鞘に収めると、三枚に下ろされた犯人の霊体は薄笑いを浮かべて無へと消えた。


犯人は無に帰した。けど、俺はまだ、この榊荘の部屋から抜け出せない・・・部屋全体が一つの結界となって、違う世界になってるのかもしれない。

シロガネの精神世界とは違い、一瞬の歪みを引き裂いて脱出口を開けない・・・ここは強い思念で、完全密閉されてるガラスみたいな物だ。破壊はつまり、次元さえも壊すかもしれない。ここが彼女やバラバラの死体が作った世界ならば・・・恋香が実態化したのもその生だと思う。

だとしたら、あの霊を静めなければ意味が無いか。

「恋香!」

「陽介・・・・・・犯人は?」

恋香たちがいる場所に戻ると、座り込んでいる女の幽霊とそれに優しい手を差し伸べる恋香の姿があった。

「倒したよ・・・無に帰った」

「そう、良かった・・・」

『・・・・・・』

先程の、凍るような冷気は感じない・・・もう殺意を向ける対象が消えたから。

「あんたが探していた奴は俺が変わりにやったよ・・・・・・」

『・・・ありがとう、これで・・・気が晴れた』

しかし、彼女の顔は優れない・・・暗く沈んだ表情。

『さあ、斬って・・・・・・もう私が、ここにいる必要は無いから』

「そうか、恋香・・・やるぞ」

「え、ええ・・・」

俺は、刀を引き抜いて恋香をうしろにやり、彼女に刃を突きつけた。

「陽介、だめだよ!」

ここの幽霊は二人、つまり・・・彼女ともう一人・・・・・・

「いや、彼女を静める・・・彼と共に・・・・・・」

「・・・そう・・・解ったわ」

「やるぞ」

彼女の永遠の悲しみを浄化するには、二人同時でないといけないんだ。

『あいつを殺しても・・・・・・かれは、彼の姿は戻らない・・・』

「戻してやる・・・・・・力を貸してくれ」

恋香が俺の刀に手をかざして、念を送り込む。

「この部屋に残留する、永遠の苦痛と悲しみを持った二つの魂よ・・・深い闇より解き放つ光の洗礼を・・・・・・」

恋香の手から出た光を受け、刀から優しい光の波動を発した。

「ケアスピリットレイ・・・・・・」

刀から発されたその光は、座り込む彼女に降り注いで・・・そして、そこを這いずり回ってる腕や足にも・・・降り注いだ。

『ああ、暖かい・・・太陽の光みたい』

不気味な姿をした彼女の体は、浄化されて彼女は、美しい姿を取り戻して行った。

「綺麗・・・・・・」

『・・・久しぶり、こんな優しい光を浴びたの・・・・・・』

ケアスピリットレイで、優しい笑顔、生前の彼女は元がすごい美人だったんだろうな。

『ありがとう・・・』

「うぐ!」

「陽介!?ダメージを受けて、ケアスピリットレイを使ったから、体に不可が掛かったのね・・・それとも、心臓の傷が・・・」

それもあるけど、精神を荒削りして見たからな。それで光を送って浄化したのは、“二人分”

『あなた、そんなに体も精神も傷ついてるのに・・・・・・私のためにそんなになって』

「空に・・・あんたと同じ永遠の苦痛と悲しみを味わってる人がいるんだ・・・・・・俺は彼女を助けるからこうして戦っている・・・。あんた達を助けられなきゃ、俺は・・・」

『・・・あんた・・・達?』

俺は気づいていない彼女の後ろを指差して・・・・・・意識が・・・・・・虚ろ・・・に・・・なって・・・・・・



『え?・・・・・・』

指を指した方向を見て、彼女は・・・驚いた表情になる。

「陽介は優しいから、死んだ人でも・・・苦しんだ人は放っておけないんだ・・・自分はどんなに傷ついても・・・助けたい人がいるから、陽介は生きていける」

恋香の腕の中で眠る、陽介に彼女は向き直り・・・。

『・・・ありがとう、坊や』

彼女は涙を流して、礼を言った。陽介は、眠りながらにこりと安心した呼吸になり微笑んだ。

恋香も彼女に微笑みかけて・・・・・・

「・・・どうって事は無いだって」

彼女は、またにこりと微笑んで後ろで、同じく待っている男性のもとへと歩き出した。

「あ、一寸待って・・・・・・」

『ん?・・・・・・何?』

行こうとした彼女を、恋香は引き止めて・・・。一つ、やって欲しい事があると伝えた。

Interlude out



エピローグ2

・・・・・・

「おい、陣内!起きろって!」

「ん・・・ああ」

誰かに呼ばれ、俺は目を覚ます。目の前には国崎の姿が・・・・・・ここは、あのおっさんの部屋。

「ふぁぁー、よく寝た・・・・・・」

「寝ぼけてるんじゃねぇよ。はぁ、焦った・・・一瞬死んでんじゃないのかって思った」

「・・・・・・恋香」

「あ?」

恋香の姿はない・・・・・・良かった、全て元に戻ったんだな。

“ありがとうだって・・・・・・”

「・・・・・・ああ」

どうって事は無いさ・・・・・・俺は刀を拾って鞘に仕舞うと、国崎の肩を掴んで無理やり立ち上がる。

「お、おい!」

バランスが取れずに倒れそうになって、俺は国崎に受け止められる。

「何があったんだよ、心配になって入ってきてみたけど」

「何にもなかったよ。俺の勘違いだった」

「はぁ!?じゃ、何で寝てたんだよ、あんな所で・・・」

「・・・・・・だから、何も無かったって」

国崎には解らないさ・・・ここは、まだ、彼女達が住んでいるんだから・・・幸せに・・・・・・

だから、何も無い。・・・なんだあれ? 浦谷の部屋の隅に、なんか奇妙な機械・・・奴の事だから、ここで生活するに順応する為の幽霊避けだろうな。

・・・・・・あのおっさん、少し懲らしめて置かないと・・・母さんも他のみんなも思うだろうな。

いい事思いついた。

「なあ、国崎・・・あの変な機械取ってくれ」

「んあ?あれか?なんだこれ・・・あのおっさんのだろ?」

「ああ、少しきつめのお灸を添えなくちゃ・・・・・・な?そうだろ?」

俺は後ろにいると思われる一組のカップルに笑いかける。

「誰に言ってんだよ・・・お前、まいっか丁度あのおっさんに仕返ししようと思ってたし・・・」

国崎は俺を肩で担ぎながら、その奇妙な機械を掴んで・・・部屋を後にした。


「・・・秋子母さん、片付きましたよ」

「ええ、ありがとう・・・陽介さん」

外で待っていた母の笑顔には、嬉しさと安心感が・・・伝わってきた。

そして、国崎に奴の部屋から持ってきた奇妙な機械を母さんの前に置く。

「壊す事をお勧めします」

「いえ、彼には私が良く言っておきますわ・・・・・・それまで、あの子に管理してもらうわ」

「鮫島・・・・・・か、あいつ妙にあいつに甘いから、返すかもよ」

「そうしない為に、釘を打つから、安心してください」

今一心配だけど、母さん今回の事で酷くご立腹だから・・・・・・ある意味彼女達より怖いかもな。

「ん?何だ?何だ?やっぱりなんかあったんだろ?」

「無いっていってるだろ?」

「陽介さぁーん」

遠くから、佐祐理さんの声が聞こえて・・・俺は母さんに頷いて、彼女達の所に向った。



結局、あの後・・・傷が塞がってない状態で無理をした為か、数週間ほどSUPの医療班に精密検査を受ける事となったのは言うまでも無いが・・・・・・

あれから、浦谷が馬鹿なことをしてると言う事は、聞いていない。

ざまあ、みろだ・・・・・・

気になるのは・・・たった一つ。

連中が戦ってる最中くらいの時間に、ふと感じた懐かしい気配。

それが、なんだったのかが、とても気になった。



エピローグ3 浦谷

―――さて、こうしてこの問題は解決した。

有耶無耶になった肝試しも、もう二度と行わないことを大家に約束させられた。

―――むちゃくちゃに怒られたし、ジャムも渡された。

それは、いまだに部屋の隅で怪しくうごめいている。

誰か助けて。

皆様の視線も痛いので、自然部屋に閉じこもりっきりになる。

詰まらん。

幽霊もウザイ。

もう慣れたのでなんら問題ないのだが。

そして、あの機械が一つだけだと思ったら大間違いなのである。

機械の調整は、もう終わった。

一週間悩まされたラップ音とも今日でお別れ。

あの後、幽霊から不穏な気配は消えた。

成仏できる・・・精神世界面へ還る準備は出来たと言うことだろう。

ふん、シュワルツめ。何かしやがったな・・・

あの面子で、何かするとすればあのアホ以外考えられない。

―――しかし、それでもなおとどまって、嫌がらせを続けていると言うことは・・・

シュワルツの懲らしめのつもりなのだろう・・・

とにかくうるさい。

眠れやしない。

俺が、怖い怖くないでは動じないためだろう。

音で嫌がらせとは、なかなかやる。

パチン、パチン、ガタガタガタガタ・・・・

ズルリズルリ、ピッタンピッタン。

マジうるさい。

夜眠れないから、昼寝る。

すると、仕事はサボリ気味になるし、疲れる。

―――精神面でなく、肉体を間接攻撃とはにくい演出・・・じゃねえよ(怒

まぁ、歪曲空間である押入れの中にいれば・・・と最初は思ったが。

扉を思いっきりガタガタガタガタと・・・

うぐう。

まぁ、何だ。

―――スイッチを入れて、これで幽霊ともお別れだ。

さいなら、さいなら、さいなら。

気配が消える。

じゃぁ、恨みはどうなったか知らんが、安らかに眠れ、幽霊。

―――そうして、住人は7人増え・・・

俺は、思索にふけるようになった。

―――この世界に何か起きている?

それが何かを、探してみてもいいかもしれない。

そんなことばかり思って、しばらく俺は過ごしたのだった・・・・

つづく。






あとがけ@浦谷

―――切腹。

プリティでオンドゥルです。

切腹。

タイトルにはあんまり意味ありません。

せっぷく。

カリスは男らしくない上に、変な逆切れなんで嫌いです。

ブレイドも逆切れするので、オンドゥルルラギッタンディスカー?!!

ギャレンはヘタレてるけど、まだましだね♪

ていうか、橘さん最高。

切腹〜切腹〜

プリティな切腹ってありませんかね。

いや、見たくないけどもさ。

ではまた。

シュワッチュ!!



あとがきby Y首領。

一回目、消してしまった為か…もう一回やり直し

今回は本当にお祭り気分でやれて本当楽しかったと思います、次もこんな調子でできたら結構だなーなんて。

次は、引っ越した後かも知れんけど……

カリスは、ムッコロスとケッチャコが受けました。あの顔、あの顔がいいのよ…(ヲイ

でも、カリスは見方よりどちらけというと、敵でいたほうが私としては望み。

んじゃブレイド話はさてもて…

次回を期待してやー

とう!


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