二十一世紀の中日民間交流を語る会議
中国国際友好連絡会と日本笹川平和財団の共催による「二十一世紀の中日民間交流を語る会議」が九月七日、東京・ホテルニューオータニで開催された。これに参加するため、中国国際友好連絡会常務副会長・梁し団長をはじめとする中日民間交流大会訪日交流団一行十八人が六日に東京に到着した。会議には、両国の政府部門、報道・研究機関、民間団体など多くの分野の関係者約百人が出席した。
梁し団長は「中日民間友好交流の回顧と展望」と題する講演で、「経済大国としての日本はいま経済構造の調整を行っており、国際的な政治、経済の協力を必要としている。中国は当面、社会主義市場経済を建設している真っ最中で、平和で安定した国際環境を必要とすると同時に、大量の資金と技術の援助が不可欠である。両国は経済、貿易において、大きな相互補完性を持ち、更なる友好協力は互いに大きな実益をもたらすことができる。両国の間に、歴史認識や台湾問題など不協和音が存在しているが、広範な日本国民と長い視点のある政治家たちはこれらの問題を正しく取り扱うことができると、われわれは信じている」と指摘し、次の三点を強調した。
一、情勢の変化に応じて、民間交流に新しい内容を与える。今後かなりの時期に、経済、科学技術と情報産業が世界発展の重要な分野となり、中日両国は農業、環境保全、ハイテク、交通、通信、エネルギーなどの分野での協力を強化し、さらに安全保障においても意見交換を行い、政府の政策決定に積極的な役割を果たすことが期待されている。
二、三つの「文書」を両国関係を処理する原則とし、相互理解、相互尊重にもとづいて、民間交流を推し進める。両国の間には、「共同声明」、「友好条約」と「共同宣言」という三つの文書がある。この三つの文書は両国の共通認識を記録しており、相互理解と相互信頼の基礎である。民間交流の中で、率直な意見交換が必要であるが、三つの文書を踏まえて相互理解、相互信頼を深めることを大事にしなければならない。これはわれわれの責任でもある。
三、青少年の交流を強め、友好事業後継者の養成に力を入れる。中日友好が今日まで発展できたのは決して容易なことではない。それを守っていくには、若い人々の努力を抜いて考えられない。後継者の養成はいま急務となっており、われわれは青少年の交流にできるだけ必要な条件を創らなければならない。
国広道彦氏は「日中民間友好交流の発展と二十一世紀の日中友好関係の展望」と題する講演の中で、「日中友好は戦後の日本でいくつかの波の起伏を経験しながらも、今や日中両国関係の確固たる基礎となって二十一世紀を迎えようとしている。言うまでもなく、『日中友好』は二十一世紀の日中関係を支える基礎でなければならない。これは中日両国民にとって必要なだけでなく、アジアの平和と繁栄の基礎ともなるからである。『日中友好』は私達の先達が努力して築き上げてきたものであり、私達と私達以後の世代が同様の努力を続けていかなければ力を失う恐れがあると思う」と指摘するとともに、二十一世紀の日中友好関係について注意すべき所を強調した。
一、中国はいよいよ政治的のみならず軍事的にも経済的にも大国となる。日本は高齢化社会に移行して、かつてのような経済発展は期待できないかもしれないが、経済大国であり続けると思う。大国の間で友好関係を発展させていくためには、かつて中国の指導者が日本の青年に語ったように双方が「謙虚」な気持ちを忘れてはいけない。お互いに相手の立場に立って考えることがますます重要になる。その上で相互信頼を高めていきたいと思う。
二、二十一世紀には戦争の実体験のない人たちの間で友好関係を育むことになる。それだけに日中双方ともに国民が歴史認識をしっかりしなければならない。その基本は戦争の過ちについての日本人の反省である。これは中国や韓国の人々に言われるからではなく、日本人自身の問題として重要である。同時に、戦後五十年余の間に両国がどういう生き方をしてきたかについての正確な認識も必要である。
三、両国関係を良好に維持するための国際環境の維持も重要である。例えば、日米関係を犠牲にして日中関係を良くしようとしても日本国民多数の支持は得られず、長続きしないと思う。同時に日米が結託して対中関係を一定の方向に持っていこうとしても成功するはずがない。要するに、日、中、米が協調関係にあることが三カ国にとっても他のアジア諸国にとっても最も好ましい状態で、それは大いに可能なことである。中米とも世界平和に責任を持つ二つの大国として、また経済的にお互いに大きな影響力を持つ二つの国として、平和に生きていかなければならないという基本認識は双方にあると思う。要するに、中国は日本のみならず、他の国々との信頼関係を強めることになると思う。それにまた日本にとっても同様である。
四、日中友好は政府レベルと民間レベルの友好関係がうまく呼応することがとくに重要である。政府レベルで日中友好の基本政策を堅持することの重要さはこれまでの経験で立証されている。両国の指導者、政府が両国間の大局をわきまえる姿勢が基本的に重要である。同時に両国には歴史的友好関係を重視し、それぞれの立場でそれを推進してきた人々が沢山いる。そういう人たちが世論の支えになってきたし、今後もこういう力は続くと思う。日中関係に二百余の姉妹都市関係があり、しかもそれが活動していることも大きな力である。
五、日中のとげとなって度々表面化する台湾問題についての日本の立場は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する、台湾は中国の一部であるという中華人民共和国の立場を十分理解し尊重するという日中共同声明の言葉通りである。日本政府はこの立場を一貫しており、日本国民も大多数がこれを支持している。日中国交正常化の筋道として台湾との国交関係が絶えるのは止むを得なかったが、経済、文化関係などでは従来の関係を維持したいのが大多数の日本人の希望するところで、これは中国政府からも理解されている。日本としては平和的話し合いで問題を解決してほしいと願うのみである。
基調報告の後、交流報告会が行われ、中日報告者十人が両国民間交流の歴史を振り返り、それぞれの見地から、二十一世紀両国民間交流のあるべき姿、問題と課題について思う存分意見を交わした。