北京で二十一世紀へ向けての中日シンポジウム
中国共産党中央党学校と日本二十一世紀政策研究所共催の「二十一世紀へ向けての中日経済シンポジウム」が十月十二、十三の二日間、中国共産党中央党学校会議ホールで開催された。
鄭必堅中央党学校常務副校長が開会式で、要旨次のようなあいさつを述べた。
中日両国の学者および関係者が一堂に会いして、二十一世紀に向けての両国の経済およびその他の問題をめぐってシンポジウムを開催し、討論することは、中国共産党中央党学校がこの世紀の変わり目に積極的に国際学術交流を繰り広げる重要な企画措置である。長期にわたって安定した健全な両国関係を新しい世紀に持ち込むことは、歴史の流れに順応し、両国人民の根本的利益に合致する理性的な選択であるとともに、アジア太平洋地域の平和と世界の平和と発展にも寄与するものと思う。
経済大国であり、わが国の重要な経済貿易パートナーでもある日本の経済状況とその推移は、わが国の経済の発展に大きな影響を及ぼすものである。私は、合すれば双方に利あり、離れれば双方が傷つく、ということを信条としている。双方が中日友好の正しい原則にのっとっていくならば、現在、双方のこうした関係の中に存在しているさまざまな問題は適切に解決されると考えている。
中国の発展については、われわれは次のような心構えでいる。つまり、われわれはすでに光に満ちた広びろとした道を切り開いたが、前方の道は平坦なものではない。改革の深化につれて、わが国の発展を制約する深層の体制上の問題が日増しに際立つものとなるだろう。経済の急速な発展につれて、生産構造が消費需要の変化に適応できない矛盾が日増しに鋭くなるだろう。対外開放の拡大につれて、世界の経済情勢のわが国経済への影響も大きくなり、予測できるか、予測し難いさまざまな困難とリスクに際会するであろう、ということがそれである。そしてこれらの問題をいかに正しく認識し、解決するかは、世紀の変わり目にある中国にとって大きな課題である。この点について、ご在席の専門家、学者ならびに実践分野から来られた友人の皆さん、とりわけ日本の方々のご高説を拝聴したい。
中国共産党の中・高級幹部を育成する最高学府としての中央党学校の教学、学術研究は、現代世界の大きな変動を反映でき、しかもいくつかの面および比較的深味のある形で当今の世界の大きな変動に対して答えを出すべきであるとわたしは考えている。今回のシンポジウムはそういう意味で、両国の研究者の見解の交流としてすばらしい役割を果たすものと思う。
豊田章一郎二十一世紀政策研究所会長は、要旨次のような開会のあいさつを述べた。
本年は中国建国五十周年、さらに十二月の澳門の返還も控え、中国にとって大変記念すべき年である。一衣帯水の隣国の友人として、国慶節への祝意を表すとともに、この記念すべき年に、中国の知的分野の中核をなす中国共産党中央党学校と日中共同研究、知的交流がスタートすることは大変意義深い。今回のシンポジウムは、日中共同研究のスタートを宣言し、相互に認識を新たにする場であり、問題発見をする場であると理解している。相互に忌憚のない活発な意見交換、交流をしながら、今後の方向性を模索していただきたい。
谷野作太郎在中国日本大使館特命全権大使もあいさつの中で、このシンポジウムの意義を高く評価し、深味のある知的交流の必要性を指摘した。
第一セッションでは、王東京中国共産党中央党学校経済学部教授が 「わが国における当面のマクロ経済政策に関する分析と提案」というテーマで発言した。そして、積極的財政政策は前向きの動機ばかりでなく、その効果も積極的なものでなければならない、適切な通貨政策は緊縮・緩和のバランスを取り、さらに安定した操作も必要である、マクロ政策の調整を通じて雇用拡大を図るポイントは創業の奨励にある、という論点をめぐって研究成果の発表を行った。
これに対して小林守三菱総合研究所アジア研究室室長が、コメントを発表した。
その後、著名な経済評論家であり、日本経済の発展過程の節目、節目で時代を先取りするような視点を随所にちりばめた論文、評論を発表して日本国内ばかりでなく、中国でも注目されている田中直毅二十一世紀政策研究所理事長が「中国経済を見るわれわれの視点」というテーマで発言し、王瑞璞中国共産党中央党学校教授(元副教育長)がコメントを行った。
午後の第二セッションでは太田勉二十一世紀研究所研究主幹が「喪失の十年と日本の経済改革」というテーマで発言し、韓鎮渉中国社会科学院日本研究所研究員がコメントを行った。
その後、張舒英中国社会科学院日本研究所研究員が「二十一世紀日本経済の展望」というテーマで発言し、佐藤至弘富士通総研社長がコメントを行い、質疑応答の時間もセットされた。
十月十三日午前の第三セッションは「中日経済関係」という主題のもとに、安川隆志二十一世政策研究所主任研究員が「二十一世紀に至る日中経済関係の展望」というテーマで発言し、これからの日本の対中投資、日本の内部でのリストラクチュアリングの進行、中国における新たな経済状況の出現、利益予想の見直しという考え方の出現、中国が取った措置などについての見方、WTO加盟の意味について、景気のリズムから見た日本の影響力についての見方、香港、台湾と中国大陸部との経済関係の分析などの切り口で研究成果を発表した。深味のある分析、大胆な論点の展開は、中国の研究者に一石を投じるとともに、新たな視角の存在を示唆するものでもあった。これに対し、施用海元国際貿易経済合作研究院院長がコメントを行った。その後、徐長文国際貿易経済合作研究院研究員が「風雪五十年」というテーマで、中国と日本の経済と貿易の往来の軌跡を振り返える発言を行い、飯島胤東レ代表取締役副社長がコメントを行った。
今回日本側は、二十一世紀政策研究所の研究主幹、研究員ばかりか、富士通総合研究所、三菱総合研究所,ニッセイ基礎研究所などの研究員ならびに松下電気産業、トヨタ自動車、三和総研(上海)有限公司などからも代表団員の参加があり、ある意味では知的水準の極めて高い構成となっており、これに対して中国共産党中央党学校という中国共産党の中・高級幹部を育成する格好の相手との知的交流の展開に成功したことは、中日交流史における新たな試みとも言ってもよく、こうした交流によってさらに深味のある相互理解が実現するための基礎を固めるものとなろう。成熟しつつある両国関係には成熟した相互理解の絶えざる深化が不可欠である。