新華社と読売が「中日共同シンポジウム」

林国本

 世界じゅうにネットワークをはりめぐらし、ニュース報道と分析の面で世界の大手通信社に伍して、堂々と成果を上げている中国の新華通信社と日本の読売新聞社が十二月六日、北京市内のホテルで「中日共同シンポジウム」を開催した。

 今回のシンポジウムでは、中山太郎日本国元外務大臣・衆議院議員と朱良中国国際交流協会副会長・前中国全人代外事委員会主任委員・前中国共産党対外連絡部部長という重量級権威筋とも言える方々がキーノート・スピーチを行い、鄭志海中国対外貿易経済合作部研究院院長と国交回復以前から二十数年にわたって日中経済交流の第一線で仕事をし、東京三菱銀行駐中国総代表をもつとめたこともある大久保勲東銀リサーチ・インターナショナル研究理事というこれまた横綱級のパネリストによる中日経済協力をテーマとする発言、さらには現在、国際問題をめぐって鋭い、ユニークな発言を続けている国分良成慶応大学教授、そして、国際問題をめぐって戦略的な大所高所から所説を発表している高荻福新華社副社長によるアジア太平洋地域諸国の協力のテーマの発言がスケジュールに組み込まれ、これを見ただけでこのシンポジウムの中身の濃さが予見された。

 シンポジウムのの開会式では、南振中新華社副社長兼副総編集長と老川祥一読売新聞編集局長があいさつの言葉を述べた。老川氏は、今回のシンポジウムは読売新聞の中国報道にとって画期的なものとなるとし、また、同紙が企画、連載した「五十歳の中国」、同社の企画した日中共同世論調査についても触れ、日中はいまや完全な相互依存、相互協力の時代を迎えていると述べ、今回のシンポジウムで日中をめぐって活発率直な議論が展開されることを願うと語った。

 そのあと、来賓代表として、徐敦信元駐日本大使・全人代外事委員会副主任委員と谷野作太郎日本国駐中国大使があいさつの言葉を述べた。

 中山太郎氏は、二十一世紀をアジアにとって「平和と繁栄の世紀」とするための課題についてのキーノート・スピーチの原稿を提出し、まずこの地域にとって必要なのは平和と安定の確保であり、それが繁栄の必要条件となることは明らかであると指摘するとともに要旨次のように論点を展開した。

 特に北東アジアは、十年前までの東西冷戦の最前線という状況から着実に安定化に向けた流れにあると言えるが、政治体制、宗教、文化、経済発展段階、考え方が異なる多様なプレーヤーが存在する北東アジアで安定を実現するためには、やはり官と民の両方のレベルで各国が対話と協力を通して信頼関係を構築することが必要であろう。

 日本は政治レベルでは、中国、韓国、ロシア、モンゴルといった北東アジア諸国と間断なき対話を行っている。このうち、中国――韓国――モンゴルについてはこの一年に首脳の相互訪問が行われている。

 北東アジアは環日本海地域と限定しても人口は三億を数え、また豊富な天然資源もあり、地域協力を進める上での潜在力は大きい。すでに、図們江開発などの開発分野をはじめ、環境分野、エネルギー分野、医療協力など、さまざまな協力が行われている。

 北東アジアにおける地域協力でわたしが最も関心を寄せているのはエネルギー分野でのそれである。わたしは、東シベリアなどの豊富な天然ガス資源の開発と日本、中国、韓国や東南アジア諸国を結ぶ天然ガスパイプライン網の建設を中核とし、アジア・エネルギー共同体構想を提唱してきた。わたしは、このアジア・エネルギー共同体の実現が、アジアにおけるエネルギー安全保障の確立の上で大きな役割を果たすばかりでなく、アジア地域の安全および発展の基盤になると確信している。

 朱良氏は「新しい世紀において、中日友好関係を引き続き発展させよう」というテーマの要旨次のようなキーノート・スピーチの原稿を提出した。中国と日本はアジアにおける重要な影響力を持つ国であり、中日関係のいかんはアジアの大局に直接プラスあるいはマイナスの影響を及ぼすものである。今まさに過ぎ去らんとしている二十一世紀の歴史がこのことを十分に実証している。私は、中日関係をよくしてゆくことは中日両国人民の根本的利益にかかわるばかりか、アジア全体の利益にもかかわるものだと思う。日本と友好関係を保ち、それをさらに発展させることは、中国政府の一貫した立場である。小渕恵三首相も、中国との友好関係は日本にとって重要な国益である。ということは日本としては十分意識しているという趣旨のことを述べている。

 第二次世界大戦終結以後の日本の歴史がすでに平和と発展こそ、日本に繁栄をもたらす正しい道であることを証明している。中国についても、言わずもがなのことであり、平和を失い、発展を目指さなければ、中国人民が百年余りにわたって血を流して勝ち取ったすべての成果を失うことになる。

 私は両国政府と国民は次の五つのことに努めるべきだと思う。

 @政治の分野では、いったん両国関係にマイナスとなる要因が現れた場合、すぐそれを正しく処理し、それを取り除き、絶えず相互理解を深め、信頼を醸成することであるA中日友好協力を世々代々にわたって引き継いでいくことB経済・貿易の協力をさらに着実に拡大し、新たな局面を切り開くことC協力してアジアの貧困を最終的に消滅させるためにしかるべき貢献をすることD両国のメディアの協力と交流を絶えず強化すること。

 なお、ブロック化、グローバリゼーションは現代世界のはばむことのできない潮流となっている。最近、マニラで開かれたASEAN――中日韓非公式首脳会合は、重要な歴史的意義がある。アジアがいかにして協力を強化し、ともに繁栄することを目指すかということは、アジア諸国が直面している挑戦である。この重要な課題をここに掲げて、皆さんに検討してもらいたいと思っている。

 キーノート・スピーチの後で討論がくり広げられた。

 午後のセッションでは鄭志海氏が「中日経済協力と発展」というテーマの論文を提出し、中日経済協力の現状、九〇年代いらいの中日貿易の発展、日本の対中投資の現状、特徴、中日経済・貿易往来に存在する問題点などについて触れた。

 大久保勲氏は「日中経済協力の現状と課題」というテーマで、中国のWTO加盟、投資環境の改善、信用システムの確立、対外的信用の維持などに触れた。

 午後の第二セッションでは、国分良成氏が「日米中関係と二十一世紀」というテーマの提出論文をもとに発言した。

 続いて、高荻福氏が「安定し、バランスのとれた、協力的な中米日のトライラテラルな関係を構築しよう」というテーマの提出論文をもとに発言した。そして、このようなトライラテラルな関係を構築する必要性とそのためにプラスとなる条件について語り@三カ国にはアジア太平洋地域で安全面で共通の利益があるA三カ国の経済関係は日増しに密接になっているBアジア太平洋地域諸国は、中、米、日の三国関係が安定し、健全に発展することを願っている――などを提出したあと、克服しなければならないマイナス要因についても触れた。その際に、相互間の理解と信頼がまだ足りないこと、ガイドライン問題、TMD問題に対する中国側の関心、台湾問題などに触れた。

 そして、新しいタイプのトライラテラルな関係の構築を目指す必要性についても触れた。

 このところ、中国と日本で、相互理解を深め、より正確に相手側のイメージをとらえるためのセミナー、シンポジウムが次々と開かれているが、やはり双方のハイレベルの意思決定と状況分析に携わっている層に近い人たちの会合であるほど、真実味、真剣味を持つ話が飛び出してくるので、今回も両国の交流のレベルアップを感じるシンポジウムであったと思う。言いにくいことも言えるようにならないと本当の意味での理解を深めることは不可能である。相手に対する不正確な見方をうっ積させることは、両国の将来に無益であるのみか有害であると思う。見解の相違を解決するためには、腹蔵なく語り合うことが不可欠で、そういう意味でメディア同士の交流は外交辞令抜きの話ができるので、これからも続けるべきだと思う。

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