産業構造を調整し、最適化させる

中国国家経済貿易委員会副主任  張志剛


 二十年にわたる改革を通じて、中国経済は長足の発展を遂げた。一九九七年の国内総生産(GDP)は七兆四千七百七十二億元となり、不変価格で計算すると、一九七八年の五・九倍にあたる。世界銀行が発表した資料によると、一九九七年の中国の国民総生産(GNP)は世界第七位で、発展途上国のトップであった。

 昨年、世界経済は金融危機の衝撃から極めて大きな影響を受けた。中国は大水害に見舞われたが、依然として経済の安定を保ち、人民元を切り下げず、経済成長率は七・八%に達した。中国はアジア経済ないし世界経済を安定させることに貢献した。

 中国の経済発展が歴史的進歩を遂げたにもかかわらず、中国は依然として発展途上国である。中国の一人当たり国内総生産は七百ドルしかなく、低所得国に属し、世界の二百余カ国の中で第百五十位以後にランクされている。中国がさらなる発展を図るには、生態環境、就職、人口など多くの方面で厳しい挑戦に直面するものと思われる。

産業発展の構造的矛盾

 一九九七年から一九九八年にかけて、中国経済は売手市場から買手市場への歴史的転換を実現した。粗鋼、セメント、原炭、化学肥料、電子電話交換機、自転車、扇風機、テレビなど多くの産品の生産量は世界一となり、産業構造も比較的大幅に調整された。長年にわたる重複建設によって、現在の産業発展の構造的矛盾は日増しに突出し、次のいくつかの面に現れるようになった。

 一、産業構造の段階が低く、構造関係の足並みがそろっていない。昨年、中国の第一、二、三次産業の比率は一八対四九・二対三二・八であった。第一次産業の農業はかなりの比率を占め、食糧の生産が不安定で、農業の基礎的地位が脆弱である。第二次産業の比率は高めであるが、第三次産業の比率は低めである。これは中国産業の総体的段階がまだ高くないことを示している。

 二、一部業種の生産能力が過剰で、製品構成が不合理である。国家統計局が一九九七年の重点企業の六十七種の工業製品の現有生産能力の利用状況に対し行った統計によると、生産能力利用率が八〇%以上の製品は約三分の一を占め、利用率が六〇%の製品は三分の一を占めた。昨年、鋼鉄業種では、生産能力が普遍的に十分に利用されなかったため、高附加価値の鋼材は国内の需要を満たすことができず、八百万トン前後も輸入しなければならなかった。綿紡績と毛紡績の加工能力がそれぞれ四分の一過剰でありながら、それでも六十億ドルの高級布地を輸入しなければならなかった。

 三、カギとなる生産技術が立ち遅れ、主要産業の装備レベルが低い。鉄鋼、非鉄金属、石油化学工業、電力、石炭、建築業、道路、水運、交通、鉄道、船舶、機械、電子情報、軽工業、紡績、医薬の十五業種に対する調査によると、カギとなる技術の把握と応用および大中型企業の普遍的な技術水準は、国際先進水準と比べて五年ないし十年、一部の業種は二、三十年も遅れている。

 四、企業の技術開発の力が弱く、技術開発への経費投入が足りない。統計によると、昨年、中国の二万四千社の大中型企業のうち、技術開発に携わる人員は百四十七万四千人で、一社あたり三十人である。技術開発活動を行う企業は四八・五%しかなく、研究開発機構を設立した企業はわずか四六%であった。大中型企業の研究開発経費は四百八十億一千万元で、一社当たり二百万元しかなかった。

 五、企業組織の規模が小さく、しかも分散しており、競争力と強みを欠いている。現在、中国では世界大手企業五百社に仲間入りする所は一社もない。年産量百万トン以下の小型精油所は百七十余社あり、精油所総数の七七%を占めている。全国の郷クラス以上のセメント企業は八千四百三十五社あるが、そのうち年産量二十万トン以上の企業は五百七十六社しかなく、セメント企業の平均規模は十万トン足らずである。

 六、地区間の構造が同一的で、比較的際立った強みが見られない。八〇年代以来、盲目的にプロジェクトを実施したため、地区間の産業構造は同一化に傾いている。量の面から見れば、中部地区、東部地区、西部地区の間の産業構造の同一化の程度が非常に高く、企画から見れば、一九九六年から二〇〇〇年までの五カ年計画期に、二十四の省・直轄市・自治区は電子工業を中堅産業に組み入れ、二十二の省・直轄市・自治区は自動車工業を中堅産業に組み入れる。

産業構造の最適化と調整を速める

 中国の産業発展の構造的矛盾に直面して、産業構造の最適化と調整を速めることは、非常に重要な意義がある。

 まず最初に、整理あるいは投資禁止の産業政策を制定、実施し、重複建設を克服、防止する。

 重複建設を防ぐため、国家経済貿易委員会は「立ち遅れた生産能力・プロセス・製品整理リスト(第一陣)」を公布し、設備が旧く、技術が立ち遅れ、製品の質が劣り、汚染のひどい小型の精油所、炭鉱、セメント工場、ガラス工場、火力発電所を断固整理することにした。紡績業種に対し、政府は三年内に立ち遅れた綿紡錘一千万錘を圧縮、整理する目標を確定し、昨年は五百十二万錘を圧縮し、今年はさらに四百五十万錘を圧縮する。石炭業種の目標は、不法と不合理な生産を行う小型炭鉱二万五千八百カ所を取り締まり、閉鎖し、生産量を二億五千万トン圧縮するというもので、この目標は今年に達成される。その他の業種に対しても、国家経済貿易委員会は調整の目標を制定した。同時に、関係部門は「当面の商工業分野の投資禁止リスト」をつくり、増加した資産の投下の方向を規制したが、その中には、国の関係法律、法規が明確に禁止しているプロジェクト、低水準の重複建設がひどく、生産能力が過剰で、総量を抑制する必要のあるプロジェクト、プロセスと技術が立ち遅れ、先進的なプロセスと技術に取って代わられたプロジェクト、汚染がひどく、資源を浪費するプロジェクトなどが含まれている。

 次に引き続き大手企業に力を入れ、小型企業を自由化させ、企業の組織構造を調整する。

 中国はさまざまな形式をとって国有小企業を活性化させ、小企業がある製品を専心研究し、精品を生産し、強みをもつ道を歩むように導くと同時に、資本を絆とし、市場を通じて比較的強い競争力をもつ地区、業種、所有制、国にまたがる大手企業、大型グループを形づくっている。昨年、中国は石油、石油化学工業の二大グループの設立に成功し、上海地区の冶金業種の再編を完成し、宝鋼、上海冶金、梅山の三社の鋼鉄企業が共同で新たな上海宝鋼グループを設立した。現在、中国は非鉄金属、電信などの業種の企業に対し再編を行っている。大手企業、大型グループは構造調整、産業のグレードアップ、技術進歩の中で中堅としての役割を果たすだろう。

 第三に、技術と製品のグレードアップの政策を制定、実施し、ハイテクの産業化とハイテクで在来産業を改造するテンポを速め、中国産業の国際競争力をたえず高める。

 一、企業を技術革新主体とする生産・教育・研究の三方面が固く結びつく新体制の確立を速める。

 二、比較的強みがあり目標が有限の原則にのっとって、来世紀の中国のハイテク開発と産業化の重点プロジェクトをできるだけ速く提出する。当面は集積回路(IC)の設計とソフトウエアの開発に重点的に力を入れる。

 三、市場を方向として、ハイテクによる在来産業改造にいっそう力を入れ、製品の質とグレードを高める。政府は企業の技術改造と技術進歩を奨励するリストを作成する。

 四、新世紀の科学技術進歩の要求に応える科学技術投入メカニズムを構築、整備する。科学技術への投入不足は、中国の科学技術進歩を制約する重要な原因である。規範化した投入メカニズムを構築し、有効なリスク投入メカニズムをできるだけ速く構築する。

 このほか、政府は関係政策を検討、制定し、農業の産業化を促し、農業を支持、保護し、それに奉仕するシステムを徐々に確立し、第三次産業を大いに発展させ、文化、スポーツ、非義務教育を積極的に推し進め、地域社会のサービス提供の産業化を促し、新しいサービス消費市場を開発する。

 

 

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