環境保全のために努力しよう


 タクシーに乗って北京の車公荘大通りを通る時、運転手は深刻な大気汚染について話すに違いない。中国の国民が今日ほど環境保全に注目したことはなかった。閉幕したばかりの全国人民代表大会第九期第二回会議の席上、朱鎔基総理は「政府活動報告」で何回も環境保全問題に触れ、環境問題は今年の全人代と全国政治協商会議の代表と委員たちの話題の中心となった。      

環境の状況

 世界資源研究所と中国環境保護観測センターの測定によると、世界での十大汚染のひどい都市の中に、中国の都市が八つ含まれる。全国の都市区間河川流域の七〇%が汚染されているため、「水不足の都市」が増加えている。三分の二の都市住民は基準オーバーの騒音環境の中で暮らしている。環境汚染と生態環境の破壊は人々の健康に危害を及ぼし、経済と社会の発展を制約する重要な要因となっている。

 解振華国家環境保護総局局長によると、一部の主要な汚染物質排出総量は低下あるいは同じ水準を保つ様相を呈しているが、絶対量は依然としてかなり大きいところ。すでに排出基準に到達した流域あるいは地区も、依然として比較的高い汚染水準にある。かなり多くの地域の環境汚染と生態環境の破壊の状況は変わり得なかったばかりか、ある地域はさらにひどくなっている。

 水環境から見ると、七大水系および一部の湖と近海水域の汚染の勢いは依然として効果的に抑制され得ていない状態にある。全国の百三十の汚染企業と都市汚水排出量の測定によると、一九九八年の廃水排出量は三百九十四億四千万トンであり、前年同期と比べて、工業廃水の排出量は一一・六%下がったが、生活汚水の排出量は二・六%増えた。一部の湖の富栄養化汚染の度合いがひどくなっている。安徽省の巣湖、雲南省のてん池、山東省の南四湖、江蘇省の太湖の汚染は最も深刻化している。地下水の水質が悪くなり、水位が低下し、五〇%の都市の地下水はさまざまな度合いにおいて汚染されている。そのほか、河口地区と都市付近の海域および近海沿岸水域の汚染もひどく、汚染によって赤潮が頻繁に発生し、その面積も拡大し、経済的損失もひどくなった。 

 大気環境について言えば、昨年全国の煙塵排出量と二酸化硫黄排出量は前年同期と比べ、それぞれ一五・一、七・九ポイント低下したが、煤煙を主とする空気汚染は依然として非常にひどい。酸性雨の被害を被っている地域は国土面積の三〇%以上を占めている。自動車排ガスの汚染も急増し、生態環境の破壊によって黄塵の降下は次第にひどくなっている。

 資源と生態環境から見ると、全国の水土流失面積は三百六十七万平方キロに達し、国土面積の約三八%を占め、年平均して一万平方キロが新たに増えている。全国の砂漠化面積は二百六十二万平方キロに達し、毎年二千四百六十平方キロの速度で拡大している。草原の退化、砂漠化、アルカリ化の面積は一億三千五百万ヘクタールに達し、毎年二百万ヘクタールの速度で増えている。生物の多様化はひどく破壊され、全国で一五〜二〇%の動物・植物の種類の生存が脅かされており、これは世界の一〇〜一五%の平均水準を上回るものである。

 全人代代表・重慶大学資源総合利用工学研究センター主任の陳万志教授は次のデータを挙げた。一九九二年、国家環境保護局の統計によると、環境汚染によってもたらされた直接の経済的損失は九百八十六億元に達し、一九九三年の社会科学院の研究報告では、このデータは一千二十九億二千万元になっている。一九九八年の世銀の推測によると、水と大気汚染が中国にもたらした経済と健康の面での損害は五百四十億ドルに達し、国内総生産(GDP)の八%を占めている。世銀の推測の正確さは別としても、環境問題によってもたらされた損害がますます大きくなっていることは事実である。そのほか、毎年、中国で自然災害によってもたらされている経済的損失はGDPの約三%を占めるが、日本の自然災害の損失は〇・八%、アメリカは〇・〇六%である。これは別に日本とアメリカの自然災害が中国より少ないと言っているのことではなく災害軽減の能力が大きいところことで、この能力はある程度環境保全と関係があることを物語るものである。     

環境保全のために努力しよう

 三月八日、全国政協人口資源環境委員会の専門家四人は全国政協第九期第二回会議の記者会見の席で環境保全の問題について次のように述べた。

 汪紀戎国家環境保護総局副局長の話では、七〇年代から、中国政府は、環境保全への資金投下の増加が環境の質の保全と経済の成長に対する役割に気付き始めたので、ずっとこの問題の解決に力を入れている。しかし、実情から見て、一九八六年から九七年までに、毎年の資金投下比率総量は増加したが、GDPに占める比率は〇・七前後にとどまっていた。

 汪副局長は、一九九八年に内需の増大を促して、環境保全と都市基盤施設建設の面でかなり大きな資金投入を行い、一九九八年の資金投入は八百十八億元に達し、初めてGDPの一%を上回り、一・〇二%を占めたという比較的望ましいことを皆の前で語った。

 侯捷委員によると、中国はここ数年、環境保全の法律の制定と法律執行への取り組みを強化し、一連の環境保全に関する法律と法規を公布した。これは環境汚染を抑制し、環境の質を改善するために、法律の基礎をうち固めるものであった。

 中国政府は、予防を主とし、予防と処理を結び付け、汚染者が資金を出して処理する(汚染をもたらしたものが、処理する)という環境管理を強化する政策を制定した。そして「環境保全法」、「大気汚染予防処理法」、「水質汚染予防処理法」、「固体廃棄物環境汚染予防処理法」、「騒音汚染予防処理法」、「海洋環境保全法」などの環境保全の法律六つと資源に関する法律九つを公布した。改正後の「刑法」にも「環境資源保護を破壊する罪」という条項を増加した。環境関係の法律二十八と環境に関する規定七十余り、および地方的な環境法規九百余りを公布し、三百七十五の環境基準を制定し、環境に対する影響の評価、都市環境総合対策の定量的査定、汚染物の総量抑制などの効果的な環境管理制度を確定し、国情に適合した環境政策、法律、基準、管理体系を初歩的に形成した。

 工業汚染の予防処理と都市環境保全の面で、各地と各部門は産業構造の調整と技術のグレード・アップを結びつけ、汚染ゼロの生産の促進に努め、一部のエネルギー消耗が大きく、汚染のひどい技術と設備を整理した。一九九一年から九五年までの期間に全国で汚染処理プロジェクト二万九千八百五十件が完成し、投資額は百三十四億元(十六億千四百万ドル)に達した。また、一九九六年から九七年までの期間に汚染処理プロジェクト二万千件が完成し、投資額は百四十八億四千万元(十七億八千八百万ドル)に達した。同時に汚染がひどく、処理価値のない十五種の小企業六万五千余りを閉鎖し、汚染の深刻化と資源浪費の勢いを緩和した。

。。重点的な流域、地域の汚染予防処理も著しく進展している。国が確定した「三河」(淮河、遼河、海河)、「三湖」(太湖、てん池、巣湖)、「二区」(酸性雨抑制区、二酸化硫黄抑制区)、「一市」(北京市)は汚染の予防処理を全面的に展開している。一九九七、九八の二年間には淮河、太湖流域で強力な措置を講じて、排出基準に到達しなかった企業の操業停止を強制執行した。淮河流域の水質汚染の予防処理にはすでに資金四十四億八千五百万元(五億四千万ドル)が投入され、汚染企業二千六百社が処分を受け、年生産量五千トン以下の小化学製漿工場千百十一を含む汚染企業五千七百余が閉鎖され、流域汚染物荷重の四〇%が減らされ、全流域で一九九七年工業汚染源の排出基準に到達する目標が達成され、主流の水質はいくらか改善された。太湖の水質汚染の予防処理も大きな家畜飼育および魚類進展を遂げた。沿岸の工業企業、集約化された家畜養殖場、湖畔のホテル、旅館が排出基準に到達し、流域内の汚染小企業七百十六社と排出基準に到達しなかった百余社がすべて操業停止となった。湖底のヘドロを掘り起こし、生態農業を確立し、リンを含む洗濯剤の使用を禁止するなどの措置によって、太湖と湖に流れ込む主な河川の水質が著しく好転している。そのうち東太湖の水質は国のB類からC類までの基準に到達した。

 北京、上海などの十余都市は鉛を含むガソリンの使用を禁止した。北京、南京などの四十六カ都市は定期的に社会に向けて空気質週報を公表している。北京市は昨年十二月大気汚染抑制の緊急措置十八カ条を制定し、所期の成果をあげた。今年一月、窒素酸化物(NOX)、二酸化硫黄、一酸化炭素(CO)の濃度は昨年十二月と比べ、一〇%以下に下がった。最近、北京市は第二段階の大気汚染抑制の目標を公表し、その主な内容は砂煙汚染の予防処理を重点とし、同時に引き続きばい煙型汚染と自動車排出ガス汚染の処理に力を入れ、十月までに環境質が著しく改善するよう努力する。

 生態環境の建設と保護の面では、全国で植樹造林を広く展開している。現在、森林カバー率は一三・九二%に達し、中国北部の保安林体系は全長四千五百余キロに達するものとなった。全国にはさまざまな種類の自然保安区が九百二十六カ所あり、国土面積の七・六四%を占めている。長白山、シーサンパンナなど十カ所の自然保護区は「世界生物圏保護区ネットワーク」に組み入れられている。全国生態農業の実験区は二千余カ所あり、五十余の生態農業試験県と百五の生態モデル区の建設も初歩的な成果を収めた。総合的処理を経た全国の水土流失面積は七千余万ヘクタールに達し、一部のひどく破壊された生態環境も回復しつつある。

 中国は環境保全の面で国際協力と交流を重視している。中国は「オゾン層破壊物質に関するモントリオール議定書」、「気候変動に関する国連枠組み条約」など十八の国際環境条約に調印し、「中国アジェンダ21」、「中国における生物多様化」など十余の実施案と規定を制定し、二十三カ国と二国間の環境協力協定を結んだ。

 代表たちによると、多くの省・市は環境保全を地元の経済社会発展の年度計画と中・長期計画に組み入れている。そのうち上海市は、「社会の協調的発展、生態環境の最適化の都市生活体系を基本的に形成する」ことを同市の発展の戦略的な目標に組み入れ、二〇〇〇年までに上海を「生態都市」に建設するよう努力している。

 汪嘯風代表(海南省省長)は、海南省は生態省を建設する目標を明らかにし、何期かの政府の努力によって、海南省の環境の総合的な質が引き続き全国一の水準を保つようにし、生態産業が一定の規模を形成するようにし、生態文化を発展させ、健康的で快適な生活環境を創り出すと語った。

中国の環境保全の歩み

 中華人民共和国の環境保全事業は七〇年代から発展し始めた。

 一九七二年、中国は代表団を派遣し、ストックホルムで開かれた第一回国連人類環境会議に出席させた。

 一九七三年、国務院は第一回全国環境保全会議を開いた。

 一九八二年、中国に都市・農村建設環境保護部が設けられた。

 一九九一年、中国政府の発起で北京で第一回発展途上国環境・発展閣僚会議が開催され、「北京宣言」が採択された。

 一九九二年、リオテジャネイロで開かれた国連環境開発会議で、中国政府は「アジェンダ21」などの関連文書に調印した。同年、国務院は「中国のアジェンダ21」を公布した。

 一九九三年、国家環境保護局と国家計画発展委員会は共同で「中国環境保全行動計画(一九九一〜二〇〇〇)」を制定した。国家環境保護局はさらに詳しい「全国環境保全活動要綱(一九九三〜一九九八)」を制定した。

 一九九四年、中国政府は「中国二十一世紀人口・環境と発展白書」を発表した。同年、中国は環境のロゴ制度を実施し始めた。

 一九九六年、中国政府は内外に向けて「中国の環境保全白書」を発表した。同年、第四回全国環境保全会議で、国務院は全社会に働きかけて、環境汚染に総攻撃を展開した。同年八月、国務院は「環境保全のいくつかの問題に関する決定」を公表した。

 一九九七年一月一日、「中華人民共和国環境騒音汚染の予防処理法」が実施された。同年、建国以来、規模最大の河川汚水排出口のサンプリング調査が完了した。全人代で初めて環境と資源をひどく破壊する行為を犯罪と認定した。

 一九九八年、長江、嫩江、松花江で史上まれに見る特大級の洪水に見舞われた。この大災害のあと、中国政府は生態保全と水利建設にさらに力を入れるために具体的な配置を行った。

 一九九九年三月、中央人口・資源・環境座談会が開かれた。続いて、環境保全を全面的に推し進めるため、全国環境保全会議が開かれた。

 

 

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