中国電信の開放と自由化
今年以来、中国電信業の発展は社会から広く注目されている。なぜなら電信業自体が対外開放、中国電信再編、料金調整、電信法規の制定と整備といった未曾有の改革を盛んに行っているからである。
電信市場の開放
一九九七年二月、WTOが主宰する世界基礎電信サービス交渉が終わり、世界電信市場で九〇%以上のシェアを占める六十九カ国は、二〇〇〇年までに各自の電信サービス市場を開放することを決定した。電信開放はすでに世界各国が広く受け入れる原則となっている。
中国は、WTO加盟の過程で、電信市場の開放が重要な一環であることを非常にはっきりと意識している。三月中旬、朱鎔基総理は全国人民代表大会後の記者会見で、中国電信業は運営面を拡大し、外資を導入することを承諾した。
三月三十一日、米商務長官のデーリー氏が上海を訪問した期間に、上海市郵電管理局、上海情報投資有限公司は米AT&T社と協力取り決めを結んだ。これによると、三者は上海浦東陸家嘴で合資公司を設立し、上海浦東付加価値増加電信業務を合資経営するが、その中に、IP(Internet Protocolネットワーク取り決め)電話業務も含まれている。AT&T社は早くから中国に進出したが、上海浦東での業務は主として通信設備とコンピューター業務である。世界で電信業務を広く取り扱っているAT&T社は中国では「10810」(着信側料金徴収電話)など少数のサービス業務に限られていた。
四月二、三の両日、朱鎔基総理の訪米直前に、中国情報産業部と米商務省は広州で「一九九九年中米電信ハイレベル会議」を共催した。呉基伝情報産業部部長は会議で、国際投資者の中国電信市場進出が認められるだろうと述べた。三百人以上の中米両国政府と電信企業の代表が会議に出席し、彼らの中には、中国聯通に投資したスプリント(Sprint)などアメリカの金融機構の関係者もいれば、中国国際金融投資公司など中国の金融機構の関係者もいる。これは明らかに中国の電信融資市場の継続対外開放を意味している。会議期間に、中米は総額約一億六千万ドルの通信協力プロジェクト契約を結び、中国側はモトローラ、ヒューレット・パッカート、IBM、コンパックなどのアメリカの企業から多くの移動通信ステーション設備と郵便総合コンピューター・ネットワーク設備を購入した。
一九九九年の中米電信ハイレベル会議後、呉基伝部長は記者会見で、上海とAT&Tの協力意向は五年間も話し合ってきたが、今回結んだのは取り決めであって契約ではなく、政府の認可を得てはじめて発効できると述べた。IP電話を含む中国電信付加価値増加業務に国外投資者が進出し、一部の市場経営権を獲得するのを認めることは、政府が市場について論証を行った結果である。これは突破的な進展であり、中国通信運営市場の初めての外資導入であり、正式の対外開放であり、また今後の中国電信業が国外資本を比較的多く導入するための準備でもあると言うべきである。もちろん、中国は、外資が運営業に参与する場合、いかに協力、管理、操作するかなどの問題を探究する必要がある。現在、中国は、外国の企業が中外合資の電信公司で最高三五%の株式を保有することを認めており、五年後に持ち株の限度額を徐々に緩めていく予定である。
中国電信を四つの公司に分割
電信業の対外開放の前に、国内市場を完全に独占するという「中国電信」の地位はすでに揺さぶられている。
中国では、携帯電話、商業電話、家庭電話、呼び出し、データ通信などを含むすべての近代的な通信業務の消費者は、つい最近まではほとんど「中国電信」のユーザーであった。これは高度の独占で、平等競争の相手のないぼう大な国有資産の組合せであった。一九九五年、郵電部は「中国電信」というブランドを独立法人として登録したとき、その従業員は百万人、固定資産は六千余億元に達した。
多くの人は、中国の電信料金が高く、サービスがあまりよくない責任を中国電信の独占的地位に帰している。そのため、独占の打破と改革の声はずっと続いている。一九九八年から消費者が絶えずマスメディアを通じて中国電信に苦情をいう背景の下で、中国電信を分割する構想がいよいよはっきりしてきた。
一九九九年二月四日、呉基伝部長は国務院新聞弁公室の行った記者会見で、次のように披露した。
中国電信は中国電信グループ公司(主に固定ネットワークを経営する)、中国移動通信グループ公司、中国呼び出し通信グループ公司、中国衛星通信グループ公司という四つの公司に「縦切りされる」。それに中国聯通公司などその他の電信付加価値増加業務を経営する公司を加えて、独立採算、自主経営の五大市場競争主体を形成する。
改革案によると、新たに設立された公司は二年後には、相手方の業務分野に進出することができる。言い換えれば、中国の電信業が業務独占を真に打破するのは二年後のことになるだろう。
業界筋によると、分割後の中国電信市場のうち、最初に競争が現れるのは移動通信市場である。ここ数年、中国電信以外で移動通信業務を経営する聯通公司は、たゆまずにもがき、開拓しても、移動通信市場では五%のシェアしか占めることができなかった。現在、やっと中国移動通信グループ公司と平等に電信基礎ネットワークに入ることができ、これ以上競争で劣勢に立たされなくなった。
しかし、独占を打破しただけではまだ足りない。中国電信は近年、数千億元を投じて、国外から多くの先進的な電信設備を導入したが、総体的に経営状況と従業員の仕事の効率は、ともに満足できるものではない。国家発展計画委員会の研究報告によると、中国の千台当たり電話幹線の電信従業員の人数はフランス、日本、カナダなど先進国の十数倍であるだけでなく、タイのような発展途上国の数倍でもある。
料金引き下げ
国内電信市場開放のもう一つの重要なメルクマールは電信料金の引き下げである。
三月初めに、情報産業部は新しい電信料金調整案を公布したが、その内容は固定電話取り付け費用引き下げ、同じ名前・住所の二台目の電話取り付け無料、携帯電話加入料金と一部の国際電話料金引き下げ、地元電話料金基準の規範化、インターネット接続料金と使用料金の引き下げなどを含んでいる。
北京市は市内電話取り付け費を五千元から一千元に引き下げてから、電話取り付けブームを盛り上げた。三月二日、市電話局の営業ホールは七千二百二十四戸の申し込みを受理し、史上最高を記録した。説明によると、費用調整後の最初の月に北京市の電話取り付け申し込み者は十万戸以上に達し、そのうちの三分の一は同じ住所の二台目の電話取り付けである。
近年の中国電信業の成果は衆目の認めるところである。一九九七年には中国でアメリカに次ぐ世界第二の大プログラム制御電話ネットワークが完成し、ユーザーは八千三百五十万戸に達した。中国電信の業務総量と収入額はともに千五百億元を超え、世界第十二位にランクされた。
しかし、中国電信のスケール経済が消費者に品物がよく値段も安いというメリットをもたらさなかったのも事実である。通信料金と消費者の収入を参考基準とすれば、中国はおそらく世界で通信料金の最高の国である。サラリーマンの月給を一千元として計算すると、アメリカの一人当たり収入の十分の一しかないが、国際長距離電話の平均料金は、アメリカは一分間〇・五八ドルであるのに対し、中国は二十余元で、アメリカの五倍に相当する。つまり一般の中国人の一日の給料は国際長距離電話を一回かけることもできないのである。
電信部門の料金の高いことに不平を最も多く抱いているのは、最初にインターネットに接続した二百余万の「インターネットユーザー」である。一月十七日、浙江省省都の杭州市では、千人以上のインターネットユーザーはインターネット使用停止の方式で電信料金の高いことに抗議した。中国科学院と中国工程院の三十二人のアカデミー会員も今年の初めに、連名で意見書を提出し、中国電信の電話とインターネットの料金が高すぎて、負担しきれないと言った。ある人は推算してみたが、毎日インターネットに一時間接続すれば、中国電信の電話をダイヤルしてインターネットに接続するユーザーは、毎月三百九十元ないし六百元の高い料金を支払わなければならない。
。。そのため、価格設定を主管する国家発展計画委員会と中国電信の主管部門である情報産業部は昨年末、北京で「郵便電信費用公聴会」を開き、価格調整を決定した。
北京市電信管理局の責任者によると、現在、中国の住宅電話は百戸当たり十一台であるが、日本は九十六・二台、アメリカは百台以上。同時に、中国の通信消費量も世界とかなり大きな差がある。一九九八年、北京市の毎日の市内電話の使用時間は一台当たり二十五分間足らず、長距離電話は三分間以下で、先進国の九〇年代初期の住宅電話の平均水準に達していない。これは、中国通信消費市場の潜在力が非常に大きく、今回の電信料金調整が新たな電信消費ブームを形成する可能性があることを物語っている。
四月二十八日、IP電話は中国でテストを始めた。中国電信の一七九〇〇は二十五の都市で開通し、中国聯通の一七九一〇と中国吉通の一七九二〇もそれぞれ十二の都市で開通した。テスト期間のIP電話業務の料金基準は次のように暫定する。国内長距離電話料は一分間〇・三元、国際長距離電話料は一分間四・八元、香港・澳門地区と台湾地区は一分間二・五元。IP電話の料金は普通の長距離電話の料金よりはるかに安いため(ほぼ四分の一ないし三分の一に相当する)、IP電話の出現で電信料金調整の参照数値が一つ増えたと言える。
電信立法
電信立法も注目されていることである。呉基伝部長によると、目下情報産業部は「電信法」の起草に拍車をかけており、国の立法機構もすでに、「電信法」を近い将来に制定する法律の一つとしている。法によって情報通信市場を規範化させるため、「電信法」を制定する前に、今年上半期にはまず「電信管理条例」を公布、施行する。
中国電信の関係データ
1998年の新規増加数 総 数 1999年の新規増加予定数
電話ユーザー 2834万戸 8502万戸
携帯電話ユーザー 1132万戸 2498万戸 1470万戸
データ及び
マルチメディア
通信ユーザー 100万戸 154万戸 300万戸
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1998年 前年比伸び率 1999年の目標
通信業務収入 2295億元 25% 2852億元
通信固定資産投資 1754億元 39%
電話普及率 10.4% 12%
市内電話普及率 27% 29%