北京で日本の対中投資ハイレベル・セミナ


 多国籍企業フォーラムおよびジェトロ(日本貿易振興会)共催の「日本企業の改革および対中投資」をテーマとするハイレベルのセミナーが六月三十日、北京市政協ホールで開催された。中国側からは経済主管諸部門の責任者、企業の責任者、エコノミストらが参加した。日本側からは、谷野作太郎日本国中国駐在大使が出席し、祝辞を述べる予定であったが、公務のため急きょ帰国され、津上俊哉参事官が祝辞を代読した。日本側からは平田絋ソニー(中国)有限公司董事長、浅野健一トヨタ自動車中国部部長、三崎均東芝国際渉外担当グループ長、服部健治日中投資促進機構北京事務所首席代表らが参加した。

 開幕式のあと、(日本企業の改革と対中国戦略の調整)というテーマのもとで第一セッションのパネリスト発言が行われた。まず、王志楽中国対外経済貿易研究院教授が「日本企業の改革とそこから啓発されること」というテーマで要旨次のような発言を行った。

 九〇年代におけるグローバリゼーションと情報化の進展によって企業の競争の環境に変化が起こり、企業の競争のルールも変わった。一般の製造業の収益には収益の漸減の動きが現われ、知識集約型サービス業の収益が漸増する動きが目につくようになった。九〇年代の初期に、いくつかのアメリカ企業がまっ先にこの変化を感じ取り、GE、IBM、STCなどが戦略の調整とマネジメントの改革に乗り出した。こうして率先して戦略の調整と改革に着手したため、欧米諸国の企業の経営状況が改善され、とくに情報化時代の企業の競争力にとって決定的な影響を及ぼすといわれる創造能力が目に見える形で増強された。日本の多くの企業は戦略の調整とマネジメントの改革を行なかったので、経営状況は思わしくなくなった。日本はバブルがはじけてからは、経済は長期間低迷しつづけている。日本は九〇年代の世界の政治、経済と技術の変化によってもたらされた挑戦に直面しており、日本の企業はアメリカ、ヨーロッパの企業の戦略の調整とマネジメントの改革によってもたらされた挑戦に直面している。ソニー、トヨタなど少数の企業を除く多くの日本企業は九〇年代以降、タイムリーにグローバリゼーションと情報化に適応する調整と改革を行わなかった。日本の企業の七〇年代末および八〇年代における国際競争の中での成功体験は、九〇年代の競争環境に新たな変化を冷徹に読み取る面で妨げとなった。九〇年代のなかば以降、とりわけ東アジア金融危機によって、日本の企業に内在する問題が日日のもとにさらけ出された。日本の企業は今後は企業の経営目的の調整、発展戦略の調整、世界市場をターゲットとしたグローバリゼーションを目指すこと、企業のマネジメント構造の改革、財務制度の改革(企業財務の透明度を増強し、連結結算制度を導入する)、人事制度の改革などに力を入れる動きが出ている。日本企業はこのような戦略の調整と管理の改革を経ることによって、競争力を取り戻し、競争力をさらに強めることになろう。そして、そうした成果を踏まえて、これまでの対中投資のプラスの経験と問題点を総括し、対中投資の成果を打ち固め、対中投資への取り組みをさらに強化し、サービス業などの新たな投資分野と中・西部などの新たな投資地域において中国の企業と協力し、新しい世紀の到来の際に、対中投資の新たな高揚をもたらすことを願っている。

 平田絋ソニー(中国)有限公司董事長は、ソニーにおける企業改革と企業価値の創造というテーマで発言し、ソニーの変革の理念について語った。また、ソニーの企業内部における分社制などの新たな試みについても、OHPを使って詳しく説明した。

 浅野健一トヨタ自動車中国部部長は、「グローバル化の競争の時代の企業の戦略――トヨタ自動車の取り組みについて」というテーマで、要旨次のように発言した。

 二十一世紀の挑戦を受けて立つため、いろいろな業種、業界では国境を越えての合縦連衝の動きが見られる。自動車産業も例外ではなく、五ないし六つの主なグループからなる世界的規模の「メガ・コンペティション」の時代がすでに見え隠れしている。

 トヨタとしては、環境保全、安全、情報化などの先端技術の開発分野で、デファクト・スタンダードといわれるものを手中に収めるために努力している。。

 二十一世紀においては、環境やエネルギーの問題を解決できる企業でなければグローバリゼーションの中で伸びることはできない。トヨタとしては二〇〇五年までに、「ハーモニック・グロース(協調的発展)」を実現するために改革に取り組んでいる。そして、お客様にもっとも近いところで車をつくることを考えている。そのため、かなり大きな発展の可能性を秘めた潜在的市場を掘り起こしていくことも考えている。

 中国においては、中国の自動車産業政策にもとづいて、基礎的な部品産業から始めて、すでに中国で六つの会社を設立している。そのうち、天津には部品関係の企業が四社、技術開発会社が一社ある。昨年末には四川省にコースターを製造する合弁会社を設立した。トヨタは、自動車産業に必要とされる人材の育成、部品産業の育成などから取り組み、中国の自動車産業の近代化に協力していきたいと考えている。

 三崎均東芝(株)国際渉外担当グループ長は、「東芝の経営の変革」というテーマで、東芝における改革の動きについて語った。 午後の第二セッションは「日本企業の対中投資の成功した経験と直面している挑戦」というテーマのもとで、まず、張仲文松下電器(中国)有限公司副董事長が、松下の経験について語った。中国側から役員として経営に参加し、日本側の人たちと苦楽を共にして合弁企業を育ててきた張氏の発言は、現実味のある体験談であるとともに、二つの異なった社会文化、企業文化を上手にドッキングさせて、合弁企業を立ち上げ、発展させ、さらにまた中国市場の変化に対応して、前進、小休止、さらに前進というギアチェンジを巧みに進めてきた企業人の体験談でもあった。これはケース・スタディーとして記録にとどめ、他の企業にも参考にしてもらう価値がある、と思う。

 今回のセミナーでは、「ボストン・コンサルティング・グループ」というボストンに本拠を置き、スタッフを世界各国に派遣している会社の今村英明氏(バイス・プレジデント)が参加し、発言したことは、中国の改革、開放の深まりと中国市場への国際社会の関心度を示すものといえよう。今村氏は中国の標準語、英語を自由自在にこなし、この日は流暢な中国語で発言し、さまざまな統計データを駆使しながら、プラス面、マイナス面から中国市場を分析し、中国の各層の人たちの所得水準、地域的分布から中国市場の可能性、そして後進性について短刀直入に発言した。ビジネスの世界ではこのような分析が大いに必要であると感じた。

 最近、北京では今回のセミナーのような会合がつづいているが、中日双方の出席者がまったく腹蔵なく発言をするようになったことは、大きな前進だと思う。中国は投資環境をさらに改善し、本当の意味で法律にしたがってビジネスをすすめるようになるには、このような学習が必要である。とくに、むやみやたらな、どう見ても理屈が通らない費用の徴収、法規解釈のブレなどを迅速に改善しないと、金の鳥は他の投資場所に逃げてしまうかもしれない。その点、重慶、瀋陽の責任者の発言にはたいへん啓発された。重慶、瀋陽では国際慣行にしたがって投資環境の整備に取り組んでいる。中国国内の競争の激化も、ある意味では本当の対外開放を定着させる促進剤の役割を果たすことになろう。

 

 

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