2000年問題に立ち向かう


 六月十二日、この日に世界の十九の国の少なくとも百九十の銀行が二〇〇〇年問題(Y2K問題)の対策としてのテスト演習を行った。一週間後の六月十九日の正午十二時から翌二十日正午十二時まで、中国の各商業銀行、都市信用協同組合、農村信用協同組合、郵便貯金窓口などが二十四時間営業をストップして最初のテストを行った。このテストの主な対象は二〇〇〇年一月一日、二月二十九日などエラーが起こりやすい十三の日付である。北京市商業銀行計算センターはテストに当たって七百口以上の模擬取引を行い、一口の金額はそれほど大きくはないが、ほとんど銀行業務のあらゆる面に及ぶものであった。中国人民銀行(中央銀行)関係責任者はテスト終了後に、テスト作業がスムーズに進み、各銀行の主要業務のシステムはすべてY2K問題のテストに順調にパスし、ただ一部の局部的問題はさらなる解決を必要とするものであったが、営業ストップによるテストは一応所期の目的を達成した。中国銀行業はまた七月十七日と十八日、九月十八日と十九日に二回目と三回目のテストを行う予定である。

中国はY2K問題を重視している

 コンピューターが直面しているY2K問題はシステムのハードウェア、ソフトウェア、開発手段、プログラム、通信システムなど諸方面に及んでおり、コンピューター業の飛躍的発展とコンピューターの普及とともに、Y2K問題は単なる技術問題から社会問題に格上げされ、世界各国の普遍的重視と高度の警戒を引き起こした。

 昨年七月、中国は情報産業部所属のコンピューターY2K問題事務所を発足させ、全国で確定された銀行、証券、電信など十八のY2K問題重点部門がスタッフを同事務所に派遣した。同事務所にはソフトウェアテストセンター、システムテストセンター、コンピューター周辺設備テストセンターが設置されており、すべてのコンピューター製品はY2K問題が存在しているかどうかを確める必要がある場合、ここでテストを行うことができる。テストセンターが今年作業に入ってから、その仕事ぶりは良好で、数回にわたる大がかりのチェックを進め、重点業種に多少問題が存在していることを発見し、その解決に着手した。政府の定めたスケジュールでいくと、二〇〇〇年がやってきた時点に大きな問題が発生しないことを確保することができ、安全な移行を実現することができる。

 北京市コンピューターY2K問題事務所の高志超さんの話では、北京市も昨年八月にY2K問題事務所を設置し、しかも給水・給電・暖房、交通・通信、銀行・保険、医療衛生、放送局、テレビ局などを含む都市運営面の二十一の重点部門を確定した。北京市Y2K問題事務所はこれら部門のコンピューターシステムにホし評定を行うと同時に技術面のサポートを提供し、ほとんど毎月一回これらの部門を訪問し、問題が見つかったら一カ月以内にそれを解決することになっている。

 高志超さんはまた次のように語った。北京市は米ガートナー・グループのY2K諮問サービスと使用契約を結んで北京市と全国のために使用している。事務所に問い合わせの電話が殺到し、援助を求めてきたのは北京のユーザーだけでなく、山西省太原市政府、広東省広州市救助局、貴州省赤水県、江蘇省張家港市など全国各地のユーザーも含まれる。 

 「それと同時に、全市の範囲で無料トレーニングを進めており、その目的は企業・事業体がコンピューターY2K問題を重視するよう促すためである。トレーニングの規模は大きく、フォーラム、講義、専門家による質疑応答などさまざまな形のものであった。現在までのところこのトレーニングを受けたのは一万人を上回った」と高志超さんはこうつづけた。

対 策

 銀行 中国人民銀行科学技術司の陳静司長は銀行業界のY2K問題を解決する仕事を主管しており、氏は次のように語った。

 Y2K問題を解決することは中国の銀行業にとってチャレンジであり、すばらしい発展のチャンスでもある。中央銀行としての中国人民銀行はそのためにすでに五十億元以上を投資し、段階的成果を収めた。

 現在、中央銀行のワークステーションの主体がシステム内部のテスト段階に置かれ、中央銀行の統一的に開発した二十二の主要応用システムもプログラムの手直し作業を完成し、銀行間のネットワーク接続、貨幣の発行、国庫、外資金融機構の監督管理などのシステムは予定を繰り上げてシステム内部のテストを完成し、中国人民銀行の各支店が各自で開発した業務システムもプログラム手直しの作業を完成して、テスト段階に入っている。

 工商銀行、農業銀行、中国銀行、建設銀行、交通銀行の五大商業銀行は業務の範囲が広く、コンピューターシステムの規模が大きく、運行に入った時期が早かったため、Y2K問題を解決する任務は極めて重い。現在、この五大銀行のシステム改造がほぼ完成し、システムのテスト段階に入った。

 中央銀行は昨年第4・四半期に応急計画の作成に取りかかり、各銀行が今年第1・四半期に当銀行の主要業務を中断せずに運行できる応急対策を制定するよう要求した。現在、各国有商業銀行、政策的銀行、その他の商業銀行は計画通りに応急案(初案)を制定し、その充実をめざしている。

 二〇〇〇年問題が現れる日付は先送りすることができないので、銀行業界は必ず九月末までに休業によるテストを完成し、さらに生産システムにおいてY2K問題の手直しに対し最終的検証を行う。次に今年の下半期に銀行業の応急計画に対するトレーニングと実演を行う。第三に、情報の開示を強め、透明度を増やして中国銀行に対する人々の信頼を増強し、各銀行はありのままに国外銀行のアンケート調査に記入し、中央銀行は引き続き『金融時報』と中央銀行のホームページに定期的にY2K問題解決の進展とその次の活動計画を公表する。第四に、銀行業の電信、電力など政府部門のサービスに対する依存度が大きいため、銀行業はこれらの部門との協力、協調を強化する。

 VISA(中国)有限公司の熊安平社長は五月のある演説会で次のように語った。現在、人々が使用しているVISAカードの期限切れは二〇〇〇年一月以後になるが、VISA社はY2K問題に対し十分な対応策を取った。中国ではVISA社は十五種類の会員カードを計三千万枚以上発行し、昨年のVISAカードの取引高は三百六十億元と六億九千万ドルに達した。世界においてVISAカードは六億枚以上発行されている。「使用範囲と使用量がこれほど大きいのだから、Y2K問題に対応するのは単なる技術問題ではなく、管理という大きい問題になるのだ」。熊社長の説明によると、VISA社は全世界において八つのY2K問題緊急対策センターを発足させ、今年十二月下旬から来年一月上旬まで、発生しうる問題に対応するため、スタンバイの態勢をととのえている。現在、はっきり言えるのはVISAカードがPOSに使用することには問題はないということである。

 民間航空業界 民間航空のY2K問題工作グループ長の呂宗平氏は、現在、民間航空の各システムの二〇〇〇年問題の解決はスムーズに進められており、すでにシステムの手直し、テスト、認証の段階に入ったと語った。

 座席予約システム  中国民航の座席予約システムの二〇〇〇年問題の手直し作業、中国国際航空公司、東方航空公司、南方航空公司、香港ドラゴン航空、国泰航空公司、中華航空公司、国外のGDSシステムとの共同テスト作業がすでに完了した。今年二月末までに、システム内の二〇〇〇年にまたがる座席予約記録は千百を上回り、旅客人数は三万人以上であったが、何ら問題も現れずに済んだ。三月十八日、同システムは民航総局専門家グループの認証と検査にパスした。

 決済システム  民航の収入決済システムの二〇〇〇年問題解決の作業が六月末までに完成した。決済システムの大型コンピューターと中小型コンピューターシステムは基本ソフト(OS)のグレードアップを完了し、Y2Kをサポートするようになった。Y2Kをサポートできない一部のパソコンはすでに換えられ、決済システムから姿を消した。

 航空管制システム  今年五月から九月にかけて民航航空管制システムの二〇〇〇年問題解決の作業が「テストと認証」の段階に入り、現在この作業の進展と質は国際民用航空機構と同じ歩調を取っている。今年九月から来年三月まで、民航航空管制システムの二〇〇〇年問題解決の作業が「実施と応急」の段階に入り、その間の主な仕事は改造されたすべての設備を運行に投入させ、「システム設備のY2K応急措置」を実施し、「航空管制Y2K応急指揮計画」の布石を行い、国と地区別の応急指揮センターを設置し、管制員とパイロットをトレーニングし、総合演習を手配し、応急指揮計画を実施するかひいては中止することなどである。

 搭載設備  民用航空総局は四回もテーマ会議を開き、ボーイング、エアバス、西安飛行機などの航空機製造会社およびアライドシグナル、コリングなどの搭載設備メーカーを招いて自社製品の二〇〇〇年問題解決の状況を報告してもらった。現在までに、民用航空総局は、いかなる国の関連部門が搭載設備の二〇〇〇年問題について発表したそれについての指令もまだ受け取っていないし、航空機のオペレーターに改装を強制したこともなかった。

 電力業種 電力業界に存在している二〇〇〇年問題に対する基本的分析に基づいて、国家電力公司は二〇〇〇年問題を解決する重点を、電力網配電自動化システム、発電所と変電所の監視・コントロールシステム、電力利用負荷管理システム、パソコン継電保護システム、電力通信システム、管理情報システムなどに置いている。確定された目標は二〇〇〇年になった時点(Y2K問題と関連ある時間帯を含む)に電力業界では二〇〇〇年問題を原因とする運行事故や人類の障害が起こったりすることを発生しないということである。

 おおざっぱな統計によると、電力網の省クラス以上の運行システムの中で、九七%がテストを行い、五六%のEMS/SCADAシステムはほぼ二〇〇〇年問題を解決した。

 国家電力公司はテスト、手直し、グレードアップを進めると同時に、応急措置の制定に取りかかり、最悪の状況が現れた場合の応急案を検討している。現在、一部の企業は事故対応の演習の下準備を進めている。

 国家電力公司の関係責任者は次のように説明した。挿入式チップが電力企業に大量に存在しているし、これら応用チップの仕様と生産メーカーを完全に統計できないため、システムの手直しが難しくなる。このほか、一部の外国業者は二〇〇〇年問題の解決をビジネスチャンスと思い込んで、システムのグレードアップに高い値段をつけがちなため、二〇〇〇年問題解決のコストが高くなっている。電力関連部門で二〇〇〇年問題を徹底的に解決するのにはまだまだ多くの仕事をする必要がある。

 医療部門 北京市医療・衛生部門二〇〇〇年問題事務所の情報によると、北京市の各病院は二〇〇〇年問題の解決を急いでおり、二〇〇〇年になっても二〇〇〇年問題がまだ解決されていないままの医療器械は使用中止となる。

 同仁病院コンピューター室の屈建国主任は次のように語った。現在、医療器械に存在している二〇〇〇年問題はおおむね次の三つが考えられる。 器械に入力された日付はエラーが起こることであるが、その機能は影響を受けない。例えば、レントゲン機器、CTスキャナーなどがそれである。 二〇〇〇年問題が発生した場合、機器が正常に稼働できないことである。例えば、骨密度測定器は二〇〇〇年問題の発生で検査対象の年齢に対する判断を妨げる。 上記の二つよりひどいもので、患者の健康に危害を与える可能性があるもの。例えば、呼吸装置、点滴ポンプ、麻酔装置などの医療器械は患者の体に直接介入して稼働するものだから、二〇〇〇年問題の発生で手術中に器械が稼働を中止したら、患者の生命にさえ危険を及ぼしかねない。

 医療器械の二〇〇〇年問題を解決するには生産メーカーの進んだ協力が必要である。宣武病院コンピューター室の責任者はこう語った。宣武病院で使われている大中型医療設備はいずれもシーメンス社とヒューレット・パッカード社の製品で、当初アフターサービスの問題を念頭に置いて購入した。今年初め、シーメンス社医療エンジニアリング部の経理から書簡が届き、宣武病院の購入したどのシーメンス社の製品が二〇〇〇年問題の影響を受け、どれが受けないかがはっきり書かれており、影響を受ける設備はシーメンス社が責任をもってその基本ソフト(OS)をグレードアップさせると言ってきた。

 北京市医療部門の二〇〇〇年問題事務所の専門家として、屈建国氏が一番心配しているのは、一部の病院が使っている医療設備のブランドがさまざまで、生産メーカーが倒産したものもあり、購入したのが中古品であるものもあって、もうメーカーをさがしても見つからない。こうしたことがあって、二〇〇〇年問題事務所は全市の各医療機構が二〇〇〇年問題を抱える自社の医療設備を漏れないようにメモにとどめてそれを報告し、専門家たちが統一的に解決案をまとめることになっている。

 

 

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