経済運行状況についての分析

立 言


 今年上半期の中国の経済運行統計指標が顕示しているように、内需が不振で、消費がなかなか拡大されず、国際経済環境が依然として厳しいという状況のもとで、上半期は並大抵でない成果を挙げた。これは昨年以来のマクロ規制政策が積極的成果を挙げたことを示している。しかし、警戒に値するのは、三月以後の統計諸指標がはっきり示しているように、経済成長がスローダウンし、有効需要が不足し、政府の拡張的財政政策がまだ刺激的効果を十分に挙げていないということである。 

当面の経済運行態勢

 政府が内需を積極的に拡大する政策をとったため、中国の経済運行態勢は昨年下半期から今年の一、二月にかけて明らかに好転し、昨年の国内総生産(GDP)の伸び率は七・八%に達し、今年の一、二月は八・四%にも達した。

 しかし、三、四月に入ってから、特に四月以降、新しい問題が現れた。その中で比較的際立った問題は次の四点である。

 一、輸出が著しく減り、外資実際利用額もかなり大幅に小さくなった。

 二、投資の増加がスローダウンし、特に全社会固定資産投資の中で大きな比重を占める国有以外の投資が依然として有効に動き出していない。

 三、消費需要が依然として不振であり、市場全体の売れ行きが鈍る一方である。

 四、全国の商品小売価格と住民消費価格の全般的水準が低下を続け、商品小売価格指数は二十一カ月連続して下落し、生産財の価格は三十八カ月連続して下がり、銀行の預金が貸付を上回る状況が日ましに重大になっている。

 六月末現在、GDPは三兆六千百八十九億元で、比較可能な価格で計算すると、前年同期より七・六%伸びた。輸出額は八百三十億ドルで、前年同期比四・六%下がり、契約ベースの外国直接投資は百九十四億ドルで、前年同期比一九・九%下がり、外資実際利用額は百八十六億ドルで、同じく九・二%減った。商品小売価格は前年同期比三・二%下がり、住民消費価格は一・八%下がった。

下落の勢いをどう見るか

 李暁西国務院政策研究室研究員によると、もし年間に全社会固定資産投資一二%増という年初の計画を達成し、輸出が前年並みで、社会商品小売額の実際増加幅が一〇%であれば、年間の経済成長は予定の七%の実現が期待できる。しかし、予測によると、第一に、年間の輸出と貿易出超が減る可能性があり、外国直接投資も減る可能性がある。第二に、一歩進んで財政措置をとらなければ、国有企業の固定資産投資は一五%前後しか伸びないが、集団と都市・農村の個人投資の伸び幅が昨年とほぼ同じであれば、全社会固定資産投資の今年の伸び幅は計画より低いものになる。第三に、たとえ今年は収入を増加し、消費を刺激する措置を取っても、収入と支出の予期が不確実であるため、社会商品小売総額の実際の伸びが前年と大体同じであると見られる。この三つの方面の予測によると、経済成長率七%で行くなら、需要は足りなくなる。それには輸出需要の減少によってもたらされる不足、外資直接利用額の減少によってもたらされる不足、国有企業の固定資産投資によって形成される不足などが含まれている。

 経済学者は基本建設投資の角度から次のように語った。

 中国の基本建設周期は大体三年半で、一年目の投資は投資総額の一〇ないし一五%を占め、二年目は四〇%を占め、三年目は四〇ないし五〇%を占める。二年目と三年目の伸び幅は明らかに比較的大きい。昨年、政府は一千億元の国債を発行し、それを公共投資に用いたが、その多くは建設中のプロジェクトである。投資が経済を促進するのを保証するには、引き続き投資を増やし、慣性作用を形成しなければならない。

 しかし、林兆木国家発展計画委員会マクロ経済研究院副院長はこう指摘する。

 投資、消費、輸出の三大需要は、経済成長を促進する三つの原動力であり、九〇年代以来の経済運行の状況から見て、消費需要の作用は比較的安定し、輸出需要の変動はわりに大きく、投資需要は経済成長の変動の中で重要な役割を果たしている。一九九六年から一九九八年までの中国の輸出総額がGDPに占める比率は平均一九%で、今後の輸出継続拡大には余地はあるが、複雑多変の国際経済環境の中で輸出の比率を高めるのは非常に難しい。投資需要の増加は、短期的に見れば内需拡大の重点であるが、現在、中国の投資率がすでに非常に高く、今後引き続き投資率を高める余地は大きくない。つまりこの三つの原動力のうち、消費需要拡大の潜在力が一番大きい。一九八一年から一九九七年までのGDPに占める最終消費の比率は六七・五%から五八・七%に下がり、住民消費の比率は五三・一%から四七・五%に下がった。国際では、この二つの比率の平均水準は七〇%前後と六〇%前後である。今後の若干年内に、この二つの比率が国際平均水準に近付くまで毎年一ポイントずつ上昇するならば、消費需要の拡大が十年以上も中国の経済成長を促進できるはずである。

利率を引き下げて消費を刺激

 六月十日、中国人民銀行は再び金融機関の預金・貸付利率を大幅かつ全面的に引き下げた。これは一九九六年以来の七回目の利率引き下げである。

 以前預金利率の引き下げ幅がわりに小さく、貸付利率の引き下げ幅がわりに大きかったのと違って、今回の利率引き下げは、預金利率は平均一ポイント、貸付利率は平均〇・七五ポイント引き下げられた。そのため、資金の主要な供給者としての預金者の利子収入が減った。国が銀行から一部の資金を捻出して、消費と投資を刺激するのを希望しているのは明らかである。

 中国の株式市場が好況に向かうにつれて、利率引き下げによる捻出効果ははっきり現れている。山東省が三百四十八世帯の都市と農村の預金者を対象に行った調査によると、二五%の預金者は現在の預金利率が低すぎるとし、手持ち現金と満期の預金を株式・債券投資と保険買入れなどに用いると言っているが、約一〇%の人は消費を適当に拡大すると表明した。江蘇省省都の南京市では、五年来まれにみる預金のマイナス増加現象が現れた。中国銀行江蘇省支店の貯蓄観測資料によると、この支店は以前、毎月増加した貯蓄は約五億元で、六月十八日の貯蓄預金は五十六億二千万元に達したが、六月二十八日になると、預金は増加しないばかりでなく、逆に五十四億元に減った。資金が主に株式市場に流れていったのは明らかである。なぜなら、南京市の五十余社の証券公司がこの期間に毎日ばら客の資金を二百万ないし三百万元吸収したからである。

 今回の利率引き下げ後、株式市場の反響が大きく、株式指数が持続的に上昇しているが、消費市場では反応があまり見られず、売れ行きが低迷状態を呈している。このことに対する消費者の答えは、消費したくないのではなく、賃金に限りがある一方で金が必要なところがたくさんあり、やたらに使うことができず、金があれば銀行に預けざるを得ないというものであった。中国人民銀行の五月下旬に行ったアンケート調査によると、住民は収入増加に対しあまり自信をもっていない。そのうち、月収が三百元ないし千五百元の中低所得階層は、当面の収入と未来の収入に対しいずれも自信を持てない。見たところ、実際の収入が限られ、予期の支出が増えることは、消費を制約する主な原因である。

 専門家の考えでは、収入面で民衆の自信を増強するため、利率引き下げによって効果的に消費を刺激するには、同時にその他の補助措置もとらなければならない。これらの措置は、職員の賃金を増加すること、証券市場の念入りな育成、都市サービス消費の拡大を通じて、農村の余剰労働力の就業ルートを増加し、農村人口の収入水準を高めることを含む。

消費のその他の手段を始動

 銀行の利率引き下げのほか、内需を拡大する手段は次の四点がある。

 一、起債。需要不振の状況の下で、国債の発行増加を通じて内需を拡大することは、国際通用のやり方である。現在、中国の累計した国債残高は当年のGDPの一〇・九%しか占めておらず、国際公認の六〇%という警戒線より明らかに低いものである。だから、今年さらに一部の国債を発行するのはリスクがなく、また必要なことでもある。

 二、税率調整。税収を適当に増やし、企業の納税構成を適当に調整し、納税面で企業の技術革新を奨励するように気を配るべきである。

 三、賃上げ。財政支出を通じて一時帰休者、停年退職者、公務員および科学・教育・文化・医療衛生事業体の従業員の賃金を増加し、企業の賃金を適当に自由化させ、確実に農民の負担を軽減する。

 四、貸付増加。金融機関はハイテク産業と中小企業に対する貸付を適当に増加するべきであり、同時に教育、観光などの新興産業に信用貸付面から必要な支持を与えるべきである。

内需拡大の財政政策

 七月初め、財政部の責任者は北京で、政府は内需拡大を重点目標とする積極的な財政政策を引き続き実行することを表明した。この政策は主に次の七点に現れている。

 一、赤字を増加する。予算赤字は一千五百三億元で、昨年より五百四十三億元増える。今年は中国の赤字の規模が最大の年となる。

 二、基盤施設への投資を引き続き増加する。一九九八年に一千億元の国債を増発したあと、政府は次々と一部の基盤施設プロジェクトの建設を始めた。これらのプロジェクトが期限通りに完工し、効果を挙げるようにするため、中央財政は昨年の基礎の上に、これらのプロジェクトに投入する資金をさらに二百五十億元増加する。

 三、農業・林業・水利と生態環境保全への投入を増やす。昨年の特大水害の教訓と河川堤防の実状にかんがみて、今年、中央財政は洪水予防と天然林保護への投入を約三百億元増加する。

 四、輸出戻し税率をさらに引き上げる。今年、政府は機械設備、電器、電子製品及び繊維品など二十種の製品の輸出戻し税率を引き続き引き上げ、総合戻し税率は平均二・五六ポイント引き上げられる。

 五、科学・教育による国家振興の戦略を支持する。今年、中央財政は教育事業費を二十六億元増やし、科学技術への投入を八億二千万元増加する。

 六、国有企業の一時帰休者の生活補助と再就業支出を増加する。

 七、貧困地区の移転のための支出を増やす。今年、中央財政は地方に返還する税金を五十六億元増やし、民族地区と経済未発達地区への貧困対策資金と移転のための支出を二十二億元増加する。

 

 

 

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