科学・技術による貿易振興戦略を構築
対外貿易経済合作部副部長 張 祥
貿易の情勢は深刻
当面の中国の輸出と外資導入の情勢はかなり厳しい。今年一月から四月まで、中国の輸出入総額は九百八十八億四千七百万ドルで、昨年同期に比べて一・二%伸びた。そのうち輸出額は五百二十億二千五百万ドルで昨年同期比べ七・八%減となった。輸入額は四百六十八億二千百万ドルで一三・六%増えた。新規契約ベース外資額は百十四億一千八百万ドルで一五・八%減り、実質使用外資額は百二億四千万ドルで一二・六%下がった。これは主として国際市場の不振と中国輸出商品の構成が最適化されていないことなどの客観的な原因によるものであり、それと同時にアジア金融危機の影響が引き続き深化していることを示すものである。
当然のことながら、中国の輸出と外資導入には有利な要素も少なくない。それらは、@経済グローバル化の進展は中断されていない。A欧米とその他の多くの国の経済が成長を保っている。B国内経済が引き続き良好な局面を維持している。C中国は政治が安定し、社会が安定し、通貨が安定し、市場の潜在力が大きく、外国業者に対する吸引力は依然として強い――などである。当面、対外経済貿易部門はこれらのプラスの要素を生かして、輸出と外資導入のために良好な環境を創り出し、年間を通しての輸出額の増加を実現すると同時に、かなり規模の外資導入を保つことを目指している。
対外技術貿易の発展
外国の先進的技術を導入して、中国の建設に奉仕することは、中国経済を発展させる客観的需要である。新中国の建国以来、中国は一貫して技術導入の仕事を非常に重要視してきた。とりわけ改革・開放以来、中国の国民経済が目覚ましい発展を遂げ、対外開放の水準が絶えず高められてきた。中国はエネルギー、交通、通信、石油、化学工業、原材料など国民経済の中で優先的に発展する業種の技術導入の度合いを大きくし、自動電話交換機、マイクロ・エレクトロニクス、幹線航空機とローカル線航空機の製造、宇宙航空技術、核エネルギーなどハイテクの導入の比重を大きくし、積極的に先進的技術を導入して機械製造、自動車、冶金(やきん)など従来の工業を改造し、発展させてきた。一九七九年から九八年まで、中国は外国との技術導入契約を合わせて二万七千八百二十五件締結し、契約ベース金額は一千四十九億七千万ドルに達した。そのうち、一九九八年の契約件数は六千二百五十四件で、契約ベース金額は百六十三億七千五百万ドルに達した。実践が立証しているように、技術の導入は、中国の支柱産業の振興と発展を加速し、新たな経済成長要素を生み、助成する上で極めて大きな役割を果たし、効果的に中国製品の国際市場における競争力を強め、輸出を拡大した。
中国の技術輸出は一九八〇年からスタートしたが、ここ十数年来、中国の経済力、科学技術力の絶え間ない向上とともに、速やかな発展を遂げた。昨年末現在、中国が達成した技術輸出は九千百九十八件にのぼり、契約ベースの金額は二百八十二億二千万ドルに達した。技術輸出を受けた国と地域は百を超えた。技術輸出の内容と方式は単なる「ソフトとしての性格を持つ」技術の輸出からプラントの輸出、ハイテク製品の輸出、技術サービスの貿易といったさまざまな方式に転換した。昨年、中国の技術輸出契約は二千五百件で、契約ベースの金額は六十六億八千七百万ドルに達し、前年同期より二一・一%増えて、全国の輸出入総額の三・六%を占めた。
見てとらなければならないのは、中国の対外技術貿易は急速な発展を遂げたとは言うものの、全般的に見て、国民経済の客観的必要や世界のその他の国の発展水準と比べて、一層の発展が待たれる空間が依然として大きいことである。
科学技術による貿易振興の戦略
中国の対外貿易事業は、ますます激しくなる国際競争の挑戦に直面している。いかにして対外貿易の急速かつ健全な発展を保ち続けるか、対外貿易を発展させる新たな成長ポイントがどこにあるかということに関係して、対外貿易経済合作部は今年「科学技術による貿易振興」の戦略を大いに実施することを打ち出したが、それは中国が世紀にまたがる対外貿易の持続的発展を実現するための新たな戦略とされている。
「科学技術による貿易振興」の戦略を実施するには、科学技術とその産業の優位を十分に生かし、中国の優位を持つ技術分野で、国際競争力が強く、付加価値が高く、輸出量が多く、自主的な知的所有権があるハイテクの輸出製品と企業を多く育て、中国のハイテク製品の輸出を増やし、中国が貿易大国から貿易強国に転じることを促し、輸出の持続的、安定的、急速な増加を促さなければならない。
「科学技術による貿易振興」戦略の実施は当面と今後の中国の対外貿易の発展にとって非常に重要な意義を持っており、中国が国際競争に適応するのに欠かせない必要である。
周知の通り、当面の世界各国の経済力をめぐる競争はとどのつまり科学技術の競争である。国際市場の競争では、科学技術が日増しに一番重要な決め手となる要素の一つとなった。今回のアジア金融危機を見ても分かるように、原材料の生産と在来製品の国際貿易が受けたショックは一番大きく、貿易量が普遍的に減少し、価格が大幅に落ち込むという現象が現れたが、一方ハイテク製品が受けた打撃は極めて小さかった。昨年の中国の対外貿易の実績を見ると、輸出は全般としてかなり大きな打撃を受けたとは言え、ハイテク製品と技術の含有量が高い機械・電子製品の輸出は安定的で急速な増加を保った。
対外貿易経済合作部は「科学技術による貿易振興」戦略を推し進めるため、科学技術部、情報産業部などの部門との協力を強化し、部と部の間の連合事務制度を確立し、ハイテク製品の輸出を共同で進める方針を取っている。現在、作成済みの「科学技術による貿易振興の行動計画」は次の諸面で「科学技術による貿易振興」戦略の実施を推し進めている。
一、 ハイテク製品の輸出を増やし、在来輸出商品の技術含有量を高める。対外経済貿易部門は科学技術部門とともに、国際市場における需要のある、売れ行きがよいハイテク製品の研究・開発を強化し、国際市場を極力開拓するよう、関係科学研究部門と企業を積極的に推進させている。また、商品構成を最適化し、ハイテクを在来の輸出商品の中に浸透させ、輸出商品の科学技術の含有量、グレード、付加価値を高める。以上は「科学技術による貿易振興」戦略を実施するための二つの主な内容である。
二、 ハイテク製品の輸出を優先的に促進する「五つを決めること」の案を実際に移す。同案の内容は、国際市場を導きとし、中国が優位に立つ技術分野から競争力があり、付加価値が高く、中国の輸出市場開拓にとって大きな役割を果たすハイテク製品を選んで製品、企業、市場、目標、時間を決めるという方式を取って、短期間に一定の輸出の規模を形成するものである。現在、情報、バイオ・医薬、新素材、消費財としての電子製品、家庭用電器といった五つの分野が輸出促進の重点企業に指定されている。
三、 ハイテク産業の発展、ハイテク製品輸出の拡大を奨励、助成する政策と措置を制定する。対外経済貿易部門は輸出入の経営権、外国での展覧会参加と開催、貿易人材の養成、国際市場の販売促進などの面でハイテク企業に大いなるサポートを与え、またさらに一段と審査・認可の手続きを簡略化させ、科学研究所や科学研究類の企業に輸出入経営権を与える歩みを加速する。ハイテク輸出製品の研究、開発は投入が大きく、リスクが高いことから、政府はハイテク企業が外資を導入し、国際金融市場から融資するよう奨励する。現在、北京、天津、上海など十五の市を試行都市に指定し、優遇政策の制定を通じてこれら十五市のハイテク製品の輸出を推進し、全国で導きとモデルとしての役割を果たすことになっている。
四、 ハイテク製品の輸出を拡大するために情報サービスを提供する。対外貿易経済合作部が科学技術部、関連産業部門と連携を強め、外国駐在公館商務部、科学技術部もそれに積極的に呼応して、共同でハイテク製品の全世界の市場の状況および中国主要メーカーの競争力などの専門テーマについて調査、研究を着実に進めた上で、中国ハイテク製品の輸出市場の計画を提出し、適時に最新の市場情報を各方面に提供する。
五、 国際市場向けのハイテク園とハイテク企業を上手に運営する。対外経済貿易部門はアメリカ、シンガポール、台湾などにおけるハイテク園設置の経験を参考にして、条件の整った若干のハイテク園が国際市場に進出し、ハイテク製品の輸出を拡大するのを重点的に助成する。
六、 国際間のハイテク製品の経済貿易交流を強める。今年から毎年の秋、中国政府は深せんで国際ハイテク成果交易会を開催し、中国のハイテク製品の国際市場への進出のためにPRの舞台を提供する。毎年五月の「北京ハイテク産業国際週間」もこういった経済貿易交流活動の重要な一環であり、対外貿易経済合作部としては引き続きそれを重視し、支持を与える。