貯蓄から投資へ


 九〇年代末、中国の一般庶民はある悩みを持ち始めた。それは余った金をどう使うか、銀行に預けるかあるいは株や切手収集に投資するかといったものである。投資ルートの多様化は、一般庶民の財布が膨らみ、人々の生活が豊かになったことを物語っている。

 五〇年代には、貯蓄は政治的自覚を表すものであった。第一次五カ年計画期(一九五三〜五七年)に、国は当時差し迫って必要とされた国家建設の資金を調達するため、一九五四年から五八年までに五回の「国民経済建設公債」を発行した。当時の庶民はだれしも生活にゆとりがなかったが、それでも先を競って公債を購入した。その思いはただ、国家建設に貧者の一灯をささげたいということだけであった。そのころは、貯蓄は愛国貯蓄とも呼ばれていた。

 「勤勉・節約で家事の切り盛り」は六〇年代に流行したキャッチフレーズで、人々は収入が少なくても節約して残した金を銀行に預けた。しかし、節約して残したわずかな現金を自宅にに置いていた人も少なからずいた。そういった人々は、自宅が一番安全な場所だと思っていたのである。なぜならその当時、銀行の預金利息は一種の搾取だと考えられたからである。ある地域の銀行では「有利息預金」と「無利息預金」の二つの窓口を同時に設けたりした。そのため一九七二年、人民銀行は貯蓄預金規則を改正し、貯蓄の「自主的預金、出し入れ自由、預金は利息付き、秘密厳守」という原則を打ち出した。それによって預金者は、利息を正当なものとして受け取れるようになった。

 七〇年代中期以降、国の経済は次第に好転し、四十九年前後に生まれた子供が次々に社会人となって家庭の負担を軽減するようになり、一般庶民もいくらか生活がよくなってきた。人々は余った金を銀行に預けて金をため、その当時三種の神器といわれた自転車、腕時計、ミシンを購入したものである。

 八〇年代には、銀行預金が依然として主要な投資スタイルではあったが、新しいスタイルも絶えず出現するようになった。その時に先取りした人々が、後になって先に豊かになった人々となるのである。

 国庫債券 一九八一年、国は国庫債券の発行を開始し、二十年余り後に国が初めて発行した国債となった。国庫債券の発行は、はじめは行政による割り当て方式を採用していた。当時、国は国債二級市場を開放しておらず、そのことが国庫債券の流通に影響して、人々の国庫債券の購入意欲は高くはなかった。後に国は関係市場を逐次開放し、国庫債券の流通性が強められ、それに加えて収益も同期の銀行の預金利率よりも高くなって国庫債券の売買が盛んになり、国債は人々にとって「黄金の債券」となった。

 切手市場 切手はコレクターの収蔵品となると同時に、それが金もうけのチャンスになることに気づく人も現れはじめた。郵便局の入り口にはいつも人々が群がって切手を売買したりするなどして、切手も額面以上の価値を持つようになった。一シート(八十枚)の額面が六元四十銭の庚申(こうしん)年の猿のデザインの切手の価格は、なんと二万一千元にまで膨れ上がった。広東省では切手新聞を創刊して切手の市場価格を載せた人もおり、そういった人々は切手売買人から切手を契約購入してそれを再びコレクターに売り、数百万元をもうけた人もいた。

 コインと古美術品 切手と同様、古銭、記念貨幣、名人の書画、文物・古美術品は財産を残しまたは増やすことができるものと見なされてきたが、それに投資するには資金力だけでなく鑑識能力も必要であるために、それに手を出そうとする人は少なかった。

 株式市場 新しい投資スタイルのうち、多くの人々を引き付けているのは株式市場である。一九八四年、飛楽者響公司が上海で正式に開業し、工商銀行上海支店を通して一万株の株券を一株五十元で発行したが、これが改革・開放以来中国で初めての株式発行となった。

 だが、一般庶民が株を積極的に購入するようになるのは、株の出現から数年たってからのことであった。一九八六年に深発展株が発行され、共産党員と幹部が率先して購入するよう要求され、株の購入を政治的任務と見なされるようになり、多くの機関の幹部が愛国行為として株を買った。当時の株は株の名称、額面価格、発行企業の名前のが印刷された紙切れであった。人々は貯金をはたいてこのような「紙切れ」を一束買って帰ったが、そのようなものを大切に扱ってはいなかった。当時はこれらの「紙切れ」の価格が後に百倍にも膨れ上がるなどと想像できた人は何人もいなかったが、一部の人は気にとめないでいるうちに億万長者になった。

 数年後、目が覚めた中国人たちは、株が金もうけの千載一遇のチャンスであると認識するようになった。深せんでは新しい株が発行される度、株式市場の門前にはいつも長い行列ができて取引開始を待つようになり、後には全国の株取引の場所や取引手段も絶えず完全なものとなっていった。

 九〇年代には保険や為替取引など、多くの新しい投資ルートがさらに出現した。また、海外からの帰国者が増えるにつれて、一般庶民も一定の外貨を持つようになり、外貨取り引きを学ぶ人も現れはじめた。

 最近ではインターネットも人々の財テクに入り込むようになり、ネット上での投資や株取り引きが最も時流にかなったスタイルになろうとしている。

 

 

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